JP6587880B2 - 機械要素材料の品質保証方法および装置 - Google Patents
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Description
前記鋼材の介在物に係る情報を取得する介在物検査過程(ステップS1)と、
前記鋼材を前記機械要素の形状に加工する鍛造のシミュレーションを行って前記鍛造の後のファイバーフロ−の方向の情報を取得する鍛造シミュレーション過程(ステップS2)と、
前記介在物検査過程で得た介在物に係る情報と前記鍛造シミュレーション過程で得たファイバーフロ−の方向の情報とから、前記鋼材が前記機械要素に製品化された状態における前記転動面の表面から一定の深さに位置する前記介在物の分布状態を調べる分布状態シミュレーション過程(ステップS3)と、
前記転動面で転動が行われた場合に前記機械要素にき裂が進展し得る介在物に係るデータベースの蓄積情報、および前記分布状態シミュレーション(ステップS3)で得られた介在物の分布状態から、前記製品の軌道面から一定深さに位置する、き裂が進展し得る介在物の存在確率を求めるき裂進展介在物存在確率推定過程(ステップS6)と、
この求められた存在確率が一定値以下であるか否かを判定する転動疲労寿命確保過程(ステップ8)とを含み、
前記鋼材の介在物に係る情報として、任意検査面積における種類、大きさ、アスペクト比、分布密度を含む。
このように、鋼材の介在物検査を実施することにより、製品の軌道面からの一定深さに位置するき裂が進展し得る非金属介在物の存在確率を一定値以下に保証することにより、安定的な転動疲労寿命を確保することができる。
これにより、き裂が進展し得る介在物の存在確率を、より一層精度良く求め、転動疲労寿命の推定の精度を高めることができる。
この方法の場合、き裂が進展し得る介在物の前記データベースを、使用条件、介在物緒元毎に検索可能に構築でき、き裂が進展し得る介在物の存在確率、しいては転動疲労寿命を、さらに一層精度良く求めることができる。
この場合、任意の鋼材を用いて任意の製品を加工した場合の転動疲労寿命が一定水準に達しているかを判定することができるため、安定的な転動疲労寿命を確保することができる。
この発明方法は、転動面を有する機械要素の材料であれば適用することができ、軸受部品の他に、等速ジョイントの継手部材等にも適用できるが、前記機械要素が転がり軸受の軌道輪または転動体である場合に、転動疲労寿命を推定することが強く求められ、その要求に良好に対応することができる。
前記鋼材の介在物に係る情報を記憶する介在物検査情報記憶手段21と、
前記鋼材を前記機械要素の形状に加工する鍛造のシミュレーションを行って前記鍛造の後のファイバーフロ−の方向の情報を取得する鍛造シミュレーション手段22と、
前記介在物検査情報記憶手段21に記憶された介在物に係る情報と前記鍛造シミュレーション手段22で得たファイバーフロ−の方向の情報とから、前記鋼材が前記機械要素に製品化された状態における前記転動面の表面から一定の深さに位置する前記介在物の分布状態を調べる分布状態シミュレーション手段23と、
前記転動面で転動が行われた場合に前記機械要素にき裂が進展し得る介在物に係るデータベース25の蓄積情報、および前記分布状態シミュレーションで得られた介在物の分布状態から、前記製品の軌道面から一定深さに位置する、き裂が進展し得る介在物の存在確率を求めるき裂進展介在物存在確率推定手段26と、
この求められた存在確率が一定値以下であるか否かを判定する転動疲労寿命確保手段28、とを含み、
前記鋼材の介在物に係る情報として、任意検査面積における種類、大きさ、アスペクト比、分布密度を含む。
「鋼材の介在物検査過程」(ステップS1)分布介在物情報の取得
前記鋼材の介在物に係る情報を取得する過程である。この過程では、検査対象の鋼材を、検査面が鋼材軸方向に対して平行、すなわちファイバーフロー方向と平行になるように切断して、試料を作製する。試料の硬度を確保するために、焼入を実施する。検査面を研磨および琢磨工程により、観察可能な鏡面に仕上げる。光学顕微鏡もしくはSEM−EDX(走査電子顕微鏡)を用いて、試料検査面を観察し、任意検査面積における種類、大きさ、アスペクト比、分布密度などの介在物情報を取得する。光学顕微鏡を用いた際の介在物の種類の決定は、介在物の色味による識別で実施する。一方、SEM−EDXを用いた際は、EDXによる元素分析を実施し識別する。
前記鋼材を前記機械要素の形状に加工する鍛造のシミュレーションを行って前記鍛造の後のファイバーフロ−の方向の情報を取得する過程である。
鋼材状態から鍛造を経て、製品形状におけるファイバーフローがどのように変化するかを、DEFORM(総合加工シミュレーションシステム)をはじめとするCAE(computer aided engineering)ソフトを用いてシミュレーションを実施する。シミュレーション結果から軌道面直下のファイバーフロー方向情報を取得する。図2に鍛造シミュレーション結果の一例を示す。同図は、車輪用軸受における外輪を鍛造する場合の例であり、製品状態で突出している箇所は、外輪の外周のフランジとなる部分である。鍛造シミュレーションが困難な場合は、鋼材ではなく、鍛造後の製品形状の介在物検査を実施することにより得られる介在物の角度情報を代替情報として採用する。
鋼材の介在物検査から得られた種類、大きさ、アスペクト比、分布密度と、鍛造シミュレーションから得られたファイバーフロー方向の情報とを用いて、前記鋼材が機械要素に製品化された状態における、軌道面直下の一定の深さに位置する介在物の分布状態のシミュレーションを実施する。
介在物の分布状態シミュレーションとして、モンテカルロ法を用いた乱数シミュレーションなどがあげられる。この場合、乱数を用いた複数回の試行により、前記転動面の表面から一定の深さに位置する前記介在物の分布状態を定める。続けて、機械要素の製品形状において介在物検査を実施することにより、鋼材状態の介在物情報から得られた介在物の分布状態のシミュレーション結果の精度を確認することも可能である。
任意の使用条件(荷重や摩擦係数など) における、任意の緒元の介在物周りの応力拡大係数振幅を有限要素法により算出する。算出された応力拡大係数振幅と、論文などで報告されている既知の下限界応力拡大係数の比較により、き裂の進展の有無を判断する。例えばモードIIの場合、非特許文献2で報告されている実験から求めたJIS−SUJ2のモードII下限界応力拡大係数(ΔKth=3MPa√m)と比較して、算出された応力拡大係数振幅が大きい場合に、転動によりき裂が進展し得る介在物であると判断する。
この検討を、使用条件、介在物緒元毎に実施し、この使用条件、介在物緒元毎に、き裂が進展し得る介在物のデータベースを構築する。(ステップS5)
軌道面直下の介在物の分布状態のシミュレーション結果と、き裂が進展し得る介在物のデータベースを練成、つまり照合して検討することにより、き裂が進展し得る介在物の存在確率を導出することができる。そのため、軌道面からの一定深さに位置するき裂が進展し得る介在物の存在確率を保証することができる。
荷重などの試験条件や鍛流線方向をパラメータとして、転動疲労寿命試験を実施し、き裂が進展し得る介在物の存在確率と転動疲労寿命との関係のデータベースを構築する。(ステップS7)
そのデータベースと照合することにより、任意の鋼材を用いて任意の製品を加工した場合の転動疲労寿命が一定水準に達しているかを判定することができるため、安定的な転動疲労寿命を確保することができる。(ステップS8)
この機械要素材料の品質保証装置20は、転動面を有する機械要素の材料である鋼材が、鍛造を経て前記機械要素に製品化された場合に、転動疲労寿命が一定の水準に達しているか否かの判定を行う装置であって、介在物検査情報記憶手段21、鍛造シミュレーション手段22、分布状態シミュレーション手段23、データベース25、き裂進展介在物存在確率推定手段26、寿命試験結果記憶手段27、および転動疲労寿命確保手段28を備える。
前記鍛造シミュレーション手段22は、前記鋼材を前記機械要素の形状に加工する鍛造のシミュレーションを行って前記鍛造の後のファイバーフロ−の方向の情報を取得する手段であり、図1のステップS2の処理を行う。
なお、この機械要素材料の品質保証装置20は、1台のパーソナルコンピュータ等のコンピュータで構成されていても、互いにネットワークで接続された複数台のコンピュータで構成されていても良い。
20…機械要素材料の品質保証装置
21…介在物検査情報記憶手段
22…鍛造シミュレーション手段
23…分布状態シミュレーション手段
25…データベース
26…き裂進展介在物存在確率推定手段
27…寿命試験結果記憶手段
28…転動疲労寿命確保手段
F…ファイバーフロ−
Claims (6)
- 転動面を有する機械要素の材料である鋼材が、鍛造を経て前記機械要素に製品化された場合に、転動疲労寿命が一定の水準に達しているか否かの判定を行う機械要素材料の品質保証方法であって、
前記鋼材の介在物に係る情報を取得する介在物検査過程と、
前記鋼材を前記機械要素の形状に加工する鍛造のシミュレーションを行って前記鍛造の後のファイバーフロ−の方向の情報を取得する鍛造シミュレーション過程と、
前記介在物検査過程で得た介在物に係る情報と前記鍛造シミュレーション過程で得たファイバーフロ−の方向の情報とから、前記鋼材が前記機械要素に製品化された状態における前記転動面の表面から一定の深さに位置する前記介在物の分布状態を調べる分布状態シミュレーション過程と、
前記転動面で転動が行われた場合に前記機械要素にき裂が進展し得る介在物に係るデータベースの蓄積情報、および前記分布状態シミュレーションで得られた介在物の分布状態から、前記製品の軌道面から一定深さに位置する、き裂が進展し得る介在物の存在確率を求めるき裂進展介在物存在確率推定過程と、
この求められた存在確率が一定値以下であるか否かを判定する転動疲労寿命確保過程、 とを含み、
前記鋼材の介在物に係る情報として、任意検査面積における種類、大きさ、アスペクト比、分布密度を含む、
機械要素材料の品質保証方法。 - 請求項1に記載の機械要素材料の品質保証方法において、前記分布状態シミュレーション過程では、乱数を用いた複数回の試行により、前記転動面の表面から一定の深さに位置する前記介在物の分布状態を定める機械要素材料の品質保証方法。
- 請求項1または請求項2に記載の機械要素材料の品質保証方法において、前記データベースの構築については、任意の使用条件における、任意の緒元の介在物周りの応力拡大係数振幅を有限要素法により算出し、算出された応力拡大係数振幅と、既知の下限界応力拡大係数との比較により、前記応力拡大係数振幅が大きい場合に、転動によりき裂が進展し得る介在物であると判断し、この検討を、使用条件、介在物緒元毎に実施し、き裂が進展し得る介在物の前記データベースを構築する機械要素材料の品質保証方法。
- 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の機械要素材料の品質保証方法において、転動疲労寿命試験の実施によって、き裂が進展し得る介在物の存在確率と転動疲労寿命との関係のデータベースを構築し、このデータベースと、前記き裂進展介在物存在確率推定過程で求めた前記き裂が進展し得る介在物の存在確率とを照合することにより、転動疲労寿命が一定水準に達しているかを判定する過程を含む機械要素材料の品質保証方法。
- 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の機械要素材料の品質保証方法において、前記機械要素が転がり軸受の軌道輪または転動体である機械要素材料の品質保証方法。
- 転動面を有する機械要素の材料である鋼材が、鍛造を経て前記機械要素に製品化された場合に、転動疲労寿命が一定の水準に達しているか否かの判定を行う機械要素材料の品質保証装置であって、
前記鋼材の介在物に係る情報を記憶する介在物検査情報記憶手段と、
前記鋼材を前記機械要素の形状に加工する鍛造のシミュレーションを行って前記鍛造の後のファイバーフロ−の方向の情報を取得する鍛造シミュレーション手段と、
前記介在物検査情報記憶手段に記憶された介在物に係る情報と前記鍛造シミュレーション手段で得たファイバーフロ−の方向の情報とから、前記鋼材が前記機械要素に製品化された状態における前記転動面の表面から一定の深さに位置する前記介在物の分布状態を調べる分布状態シミュレーション手段と、
前記転動面で転動が行われた場合に前記機械要素にき裂が進展し得る介在物に係るデータベースの蓄積情報、および前記分布状態シミュレーションで得られた介在物の分布状態から、前記製品の軌道面から一定深さに位置する、き裂が進展し得る介在物の存在確率を求めるき裂進展介在物存在確率推定手段と、
この求められた存在確率が一定値以下であるか否かを判定する転動疲労寿命確保手段、 とを備え、
前記鋼材の介在物に係る情報として、任意検査面積における種類、大きさ、アスペクト比、分布密度を含む、
機械要素材料の品質保証装置。
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