JP5110746B2 - フルオロエラストマー - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フルオロビニルエーテル、それらを製造する方法およびそれから得られうるポリマーに関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
ペルフルオロアルキルビニルエーテル、特にテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロペンが、オレフィン共重合用モノマーとして用いられることはよく知られている。プラストマーのポリマー中への少量のペルフルオロアルキルビニルエーテルの導入は、より高いポリマー加工性と、より良い熱機械特性を意味する。架橋可能なフルオロポリマーへの多量のペルフルオロビニルエーテルの導入は、低温でのフッ素化ゴムのゴム状弾性を与える。
【0003】
フッ素化ポリマー材料の分野において、低温での向上した物性を有するエラストマーを製造する必要性が感じられていた。そのような物性は、一般に、ガラス転移温度Tgにより表される。
【0004】
より低いTgにより、より低温で用いることができるポリマーを得ることができ、従って広範な使用範囲を有するエラストマーを入手可能にさせる。上記物性の組み合わせを得るために、フルオロビニルエーテルは、主鎖物性を改質するための高い単一の能力、ならびにエラストマーのフルオロポリマーにおいて、コモノマーとして用いられる高い反応性を有さなければならない。一定の工程数を有する簡単な方法で得られうるビニルエーテルを利用可能にするのが望ましい。好ましくは、該ビニルエーテルを製造する連続的方法を利用可能にするのが望ましい。
【0005】
上記技術的問題を解決するために、異なる構造物性を有するフルオロビニルエーテルが先行技術において提案されていた。しかし、先行技術から、以下に記述するように、様々な未解決問題がペルフルオロビニルエーテル製造において、および上記物性の組み合わせを有する相当するポリマーの製造において、存在している。
【0006】
米国特許第3,132,123号には、ペルフルオロアルキルビニルエーテル、相当するホモポリマーおよびTFEとのコポリマーの製造が記載されている。ホモポリマーは厳しい実験条件下で、4,000〜18,000atmの重合圧力を用いて得られる。ペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)ホモポリマーは、エラストマーである;Tgは報告されていない。記載のビニルエーテルの一般式は、以下:
CF2=CFOR0 F
[式中、R0 Fは、ペルフルオロアルキル基、好ましくは1〜5の炭素原子のペルフルオロアルキル基である]である。これらビニルエーテルの製造法は、米国特許第3,291,843号に記載されており、その出発物のフッ化アシルは、溶媒存在下に、炭酸塩を加塩され、熱分解される。この方法により、所望でない水素化された副産物が得られる。
【0007】
米国特許第3,450,684号は、式:
CF2=CFO(CF2CFX0O)n'CF2CF20
[式中、X0=F、Cl、CF3、Hおよびn’は1〜20の範囲であってもよい]を有するビニルエーテルに関する。UV重合により得られたホモポリマーも報告されている。例示されたコポリマーは低温でのそれらの機械およびエラストマーの物性で特性化されていない。
【0008】
米国特許第3,635,926号は、ペルフルオロビニルエーテルのTFEとの乳化共重合に関し、−COFフッ化アシル末端基の存在がポリマーを不安定にすることを示している。同じ現象が米国特許第3,085,083号に、溶媒中のペルフルオロビニルエーテル重合系において既に報告されている。
【0009】
米国特許第3,817,960号は、式
CF3O(CF2n''CF2CF2OCF=CF2
[式中、n’’は1〜5である]
を有するペルフルオロビニルエーテルの製造および重合に関する。化合物合成は複雑で、3つの工程を必要とする。出発化合物CF3O(CF2O)n''CF2C(O)Fの製造は、低温でU.V.放射の存在下に酸化することにより行われる;そのうえ、HFPO(ヘキサフルオロプロペンオキシド)との縮合、続くアルカリ熱分解が必要である。上記物性に関するデータは報告されていない。これに関しては、DE第19,713,806号参照。
【0010】
米国特許第3,896,179号は、ペルフルオロビニルエーテルの「一次」異性体、例えばCF3CF2CF2OCF=CF2の、対応する安定性のより低い「二次」異性体CF3(CF3)CFOCF=CF2からの分離に関する。後者は、ポリマー製造と、得られたポリマーの乏しい物性との両方に関して、望ましくない生成物である。
【0011】
米国特許第4,340,750号は、式
CF2=CFOCF20 f1
[式中、R0 fは、酸素を任意に含有するC1〜C20ペルフルオロアルキルであり、X1=H、Cl、Br、F、COOR0、CONR0R’[ここで、R0はC1〜C10アルキル基であり、R’はHまたはC1〜C10アルキル基を意味する]]
を有するペルフルオロビニルエーテルの製造に関する。これら化合物の製造において、フッ化アシルとヨウ素およびテトラフルオロエチレンを用い、低収率で起こる脱ヨウ化フッ素反応により、ペルフルオロプロペンエポキシドから由来するフッ化アシル熱分解の最終工程を避ける。
【0012】
米国特許第4,487,903号は、式:
CF2=CF(OCF2CFY0n 0OX2
[式中、n0は1〜4の範囲であり;Y0=F、Cl、CF3、H;X2はC1〜C3ペルフルオロアルキル基、C1〜C3ω−ヒドロペルフルオロアルキル基、C1〜C3ω−クロロペルフルオロアルキル基である]
を有するペルフルオロビニルエーテルを用いるフッ化エラストマーコポリマーの製造に関する。ポリマーは、15〜50モル%の範囲のフルオロビニルエーテル単位の含有量を有する。これらビニルエーテルは、上記ペルフルオロビニルエーテルPVE(ペルフルオロプロピルビニルエーテル)およびMVEタイプのものより良い物性を低温で有するコポリマーを与える。この特許中には、低温で良い物性を得るために、二重結合に隣接する側鎖において少なくとも2つのエーテル結合の存在が必要であることが記載されている。さらに、その特許より、4より高いn0値ではモノマーを精製することが困難となり、ポリマーTgの減少に対する効果が低いという結果になっている。そのうえ、記載したビニルエーテルの反応性が非常に低く、示した適用に対する良好なエラストマー物性を与え得る高い分子量を有するポリマーを得ることが困難である。
【0013】
−32℃のTgを有するTFE/ペルフルオロビニルエーテルコポリマー(n0=2)31/69重量%が例示されている。しかし、そのポリマーは非常に長い反応時間で得られる(96時間の重合)。また、この場合硬化されたエラストマーの特性データは得られていない。
【0014】
EP130,052号には、ペルフルオロビニルポリエーテル(PVPE)重合が−15〜−100℃の範囲のTgを有する非晶質ペルフルオロポリマーを生じることが記述されている。記載のポリマーは−76℃に達するTg値を有する;さらなるTg減少が可塑剤としてペルフルオロポリエーテルを用いることで得られる。その特許において、式
CF2=CFO(CF2CF(CF3)O)n'''0 f'
[式中、n’’’は3〜30の範囲であり、R0 f'はペルフルオロアルキル基である]
を有するビニルエーテル(PVPE)とのTFEおよびMVEのコポリマーとターポリマーが記載されている。精製の困難性から、用いたビニルエーテルは、異なるn’’’値を有するビニルエーテル混合物である。該特許によれば、Tg減少についての最も顕著な効果は、n’’’が3と等しいかまたはそれより大きい、好ましくは4より大きいとき、示される。該特許中に記載された重合実施例によれば、最終的な塊のポリマーは、未反応のモノマー(PVPE)全てを除去するために、熱および真空処理下の他にも、フレオン(登録商標)TFでその後洗浄しなければならない。実施例から、全ての記載されたモノマー(PVPE)の反応性が乏しいこととなる。
【0015】
米国特許第4,515,989号は、フルオロビニルエーテル合成の新規中間体の製造に関する。その特許によれば、ビニルエーテル合成は、より容易に脱炭酸しうる中間体を用いることにより向上する。その製造に、式
【化1】
Figure 0005110746
[式中、X3=Cl、Br]
のフルオロエポキシドを用いる。
【0016】
米国特許第4,766,190号は、得られたポリマーの機械的性質を増加させるために、米国特許第4,487,903号のものと類似の、低い割合のペルフルオロプロペンとTFEとのペルフルオロビニルポリエーテル(PVPE)の重合に関する。
【0017】
EP第338,755号は、部分的なフッ素化コポリマーの直接のフッ素化を用いるペルフルオロコポリマーの製造に関する。より反応性な部分的にフッ素化されたモノマーを用いると、得られたポリマーは元素のフッ素でフッ素化される。フッ素化工程には付加工程で、そのうえ、この工程では、高度な酸化ガスである元素のフッ素が使用され、その使用は注意が必要である。そのうえ、本特許には、フッ素化反応および得られるポリマーの物性の妥協をさせ、その発明の方法ではポリマー中のコモノマーの割合が50モル%を越えないようにすることが述べられている。
【0018】
米国特許第5,268,405号は、ペルフルオロ化ゴム(TFE/MVEコポリマー)の可塑剤として高い粘度のペルフルオロポリエーテルの使用により、低いTgを有するペルフルオロ化ゴムの製造を報告している。しかし、使用の間、ペルフルオロポリエーテルの流出は起こる。これは、特に、低い分子量(低い粘度)を有するPFPEについては真実である:該特許において、従って、高い粘度のPFPEの使用が示唆され、従って低い粘度のPFPEはあらかじめ除去されなければならない。
【0019】
米国特許第5,350,497号は、元素のフッ素によるヒドロフルオロクロロエーテルのフッ素化および次いでの脱塩素化による、ペルフルオロアルキルビニルエーテルの製造に関する。
米国特許第5,401,818号は、式:
1 f(OCF2CF2CF2m'−OCF=CF2
(式中、R1 fはC1〜C3ペルフルオロアルキル基であり、m’は1〜4の範囲の整数である)
のペルフルオロビニルエーテル、および低温で向上した物性を有する対応したコポリマーの製造に関する。該ペルフルオロビニルエーテルの製造は、7工程で行われ、そのうち幾つかは非常に低収率で、また元素F2でのフッ素化を含む。該ペルフルオロビニルエーテルの反応性はとにかく低い。
【0020】
上記先行技術から示されるように、ペルフルオロビニルエーテル合成は一般に、多工程を含み、低収率で(米国特許第3,132,123号および米国特許第3,450,684号)、所望でない異性体を除去するためのさらなる精製(米国特許第3,896,179号)を伴い、所望でない水素化された副生成物を調節する必要がある(米国特許第3,291,843号)。代わりに、合成において、中間体として作用する物質は、適当に製造され、該欠点(米国特許第4,340,750号、米国特許第4,515,989号)を除去することができるものが、用いられる。
【0021】
さらに、ある場合には、ビニルエーテル精製のために部分的にフッ素化された中間体の元素のフッ素(米国特許第5,350,497号)によるフッ素化が必要とされるか、またはペルフルオロビニルエーテルの合成および低反応性問題を避けるために、部分的にフッ素化されたポリマーのフッ素化が示唆されている(EP第338,755号)。
【0022】
先行技術に示された他の問題は、ペルフルオロビニルエーテルの低反応性に関する。それにより反応生成物から未反応のモノマーの回収が必要となり(UK第1,514,700号)、−C(O)F末端基を有するポリマーの安定性が問題となる(米国特許第3,635,926号)。これらの最後は、フッ素化ポリマーの安定性を増加させるために適当な反応剤によりさらに変換されることができる(EP178,935号)。
ペルフルオロオキシアルキルビニルエーテルは、さらに、フッ素化ゴムに低温での良好な物性、特にガラス転移温度を下げるものを与えるのに用いられる。
【0023】
側鎖のペルフルオロオキシアルキル置換基を形成するペルフルオロオキシアルキル単位を増加させることにより、それぞれ得られうる非晶質コポリマーのTgが減少し、しかし同時にビニルエーテル反応性が劇的に減少し、所望のエラストマー物性を有するポリマーを与えるのに十分高い分子量を有するポリマーを得るのが困難または不可能となり、そのうえ、重合生成物またはポリマー自身から未反応モノマーの回収について先に示した問題がより明白になる(米国特許第4,487,903号−EP第130,052号)。ある場合、モノマーが真空下での簡単な除去で完全に除去できないとき、ポリマー塊から未反応ビニルエーテルを完全に除去するために、フッ素化溶媒でさらなる洗浄を行わなくてはならない。
【0024】
ペルフルオロメチルビニルエーテルとのTFEの非晶質コポリマーは、0℃付近またはわずかに低いTgを有する(Maskornik, M ら、「ECD-006 Fluoroelastomer-A high performance engineering material」, Soc. Plast Eng. Tech. Pao. (1974), 20, 675-7)。
MVEホモポリマーのTg推定値は、約−5℃である(J. Macromol. Sci.-Phys., B1(4), 815〜830, Dec. 1967)。
【0025】
米国特許第5,296,617号および第5,235,074号において、不飽和生成物に対するハイポフルオライトCF2(OF)2[これにより、ジオキソラン誘導体の生成とオレフィン自体のフッ素化化合物が同時に導かれる]の反応性が記載されている。EP第683,181号において、オレフィンに対するCF2(OF)2[これにより、対称ジエンの製造用の、1つのハイポフルオライト分子と、同じオレフィンの2つの分子の間の直鎖状反応化合物の生成が導かれる]の反応性が記載されている。
【0026】
より詳細には、例えばメチルビニルエーテルのようなフッ化ビニリデン(VDF)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、ペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)および任意にテトラフルオロエチレン(TFE)から誘導されるモノマー単位をベースにし、イオン性ルートで硬化可能な、O−リング製造に適したフルオロエラストマーが、低温および高温において高いゴム状弾性を有し、良好な加工性、例えば硬化後の離型の向上を示す(米国特許第5,260,393号参照)。該フルオロエラストマーは、O−リング製造に用いられるVFDおよびHFP単位で形成されたコポリマーに関して向上した物性を示す。実際、該最後のコポリマーは良好な熱物性を示し、しかし低温では乏しい物性を示した。
【0027】
また、より良い冷物性を有するフルオロエラストマーが、VDF、PAVEおよび任意にTFE単位をベースとし、過酸化物および架橋剤によるラジカル性ルートで硬化されうるものであることが知られている。
【0028】
しかし、この種類の架橋により、製品を製造する方法はイオン型の架橋に関してより複雑になる。
フッ化ビニリデン(VDF)由来のモノマー単位をベースとしたフルオロエラストマーは、イオン性ルートにより硬化可能であり、シャフトシールや燃料ホースの製造に適しており(米国特許第5,260,392号参照)、知られている。
【0029】
知られているように、そのような製品の製造には、以下の物性:
モーター油および/ガソリンに対する良好な耐性、高温での良好な耐性、ならびに特にシャフトシールのような製品の冷時挙動、圧縮成形および射出成形の両方における良好な加工性、および良好な硬化速度の最適な組み合わせを有するエラストマーを必要とする。
【0030】
VDF、ペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)およびテトラフルオロエチレン(TFE)のモノマー単位により形成されたフルオロエラストマーをそのような製品に用いることが知られている。
該コポリマーは低温で良好な物性を有し、しかしそれらは過酸化物のルートによってのみ硬化可能であるという欠点を示し、例えば配合操作における温度を注意深く調節する必要性や、短いスコーチおよび熱活性化時間のような該硬化方法による欠点を全て有する。
【0031】
イオン性および過酸化のルートの両方により硬化可能な、向上した加工性ならびに、非常に良好な機械およびエラストマーの物性を有するフルオロエラストマーも知られている。
フルオロエラストマー加工性における向上は、異なる分子量分布を有するポリマーを適当に混合することにより得られうることも知られている。これは、押出の後の膨張現象のほかに、必然的に機械的物性および最終生成物の鋳造可能性における悪化を意味する。
【0032】
該フルオロエラストマーは、特にブレンド圧延の間、非常に良好な離型と共に、押出成形および射出成形の間の非常に良好な機械的および運転可能性と組み合わせた向上した加工性を示す。これらのフルオロエラストマーは少量のビス−オレフィンをポリマー鎖中に導入することにより得られる(米国特許第5,585,449号)。
【0033】
しかし、上記フルオロエラストマーは、例えば材料が、以下の物性:
− アルコールまたはMBTEまたは他の極性化合物を添加したガソリンに対する化学的耐性、
− 例えばTR10(ASTM D1329法)により示されたような低温での高度な耐性、
− 非常に低いTg
− 特に高温における、例えば機械特性および封止性のような、良好なエラストマー性の維持
の組み合わせを有することを必要とする車産業における、低温における耐性という最も切迫した必要性を未だ満足させていない低温での物性を示すという欠点を有する。
【0034】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、驚いたことに、かつ予期せぬことに、以下に記述するように、容易に合成でき、連続的な方法により得ることができる特定のフルオロビニルエーテルを用いることにより、上記技術的問題を解決することが可能であることを見出した。
【0035】
【発明の実施の形態】
本発明の目的は、ポリマー鎖が、一般式:
CFX=CXOCF2OR (I)
[式中、RはC2〜C6直鎖状もしくは分岐状あるいはC5〜C6環状(ペル)フルオロアルキル基、または1〜3の酸素原子を含むC2〜C6直鎖状もしくは分岐状(ペル)フルオロオキシアルキル基であり;Rが上で定義したフルオロアルキルまたはフルオロオキシアルキル基であるとき、これらの基はH、Cl、BおよびIから選択され、互いに等しくまたは異なる1〜2の原子を含むことができる;X=F、H]
のフルオロビニルエーテルから誘導される単位からなるフルオロエラストマーである。
【0036】
一般式:
CFX=CXOCF2OCF2CF2Y (II)
[式中、Y=F、OCF3;Xは上記のとおり]
のフルオロビニルエーテルが式(I)の化合物の中で好ましい。
【0037】
式:
CF2=CFOCF2OCF2CF2Y (III)
[式中、Yは上記のとおりである]
のペルフルオロビニルエーテルが更に好ましい。
式:
CF2=CFOCF2OCF2CF3 (IV)
を有するペルフルオロビニルエーテルが、よりさらに好ましい。
【0038】
驚いたことに、本発明によるビニルエーテルは、公知のビニルエーテルに関して以下に示す利点を示す。
得られうる利点は、エチレン不飽和に直接結合した−OCF2O−単位に起因する。
【0039】
本発明のビニルエーテルで得られるTg低下は、不飽和に直接結合する(−OCF2O−)単位の存在に関係している。Tg低下は驚いたことに、非常に明らかであるので一次的な効果と定義される。
実際、2つの酸素原子を有する本発明のビニルエーテル:
CF2=CF−O−CF2−O−CF2CF3 (MOVE1)
を用いると、
約46重量%の割合のビニルエーテルを有するTFEとのコポリマーにおいて、Tg低下は、PVE
CF2=CF−O−CF2CF2CF3 (PVE)
に関して35℃であり、
同じ式を有するが、異なる位置における第2の酸素原子を有して特徴的な単位(−OCF2O−)を示さないビニルエーテル
CF2=CF−O−CF2CF2−O−CF3 (β−PDE)
に関して15℃である。
【0040】
さらに驚いたことに、MVE
CF2=CF−O−CF3
に関して、β−PDEビニルエーテルはTgに関して利点を示さないことが判明した。
逆に、(−OCF2O−)単位の一次効果は、本発明のビニルエーテル(MOVE)では非常に明らかである。
【0041】
本発明のビニルエーテルのエチレン不飽和に結合した(−OCF2O−)単位が、不安定性を生じるCOFへの転位を減少させるビニルエーテルの反応性を増加させることが見出された。
【0042】
本発明のポリマーの利点は以下に要約することができる:
− 新規モノマーの反応性のため、カルボン酸基、または−C(O)F、−COO−のようなその誘導体の非常に低い含有量を有するコポリマーを製造することができる。TFEとのコポリマー中のカルボン酸基含有量は、同じ条件下で、ただしPVEをフルオロビニルエーテルの代わりに用いて製造したコポリマー(実施例参照)のものより約10倍低くなる。低含有量のカルボン酸基または相当する誘導体(アミド、エステル等)の存在により、より安定なポリマーを得ることができる。
【0043】
− 式(I)のモノマーの反応性は驚くほど高い(実施例を参照)。
− 非晶質ポリマーを得るためには、ある量の本発明のビニルエーテルは、結晶領域の消失を引き起こすものでなければならない。当該分野の当業者には、そのような結果を得るのに必要な本発明のビニルエーテルの量を、容易に見出すことができる。通常、非晶質ポリマーを得るためのビニルエーテルの量は10モル%より高く、好ましくは約15〜20モル%の範囲またはそれ以上である。
− 本発明のポリマーの低温での物性(Tg)は、同じMVE含有量を有するコポリマー(実施例参照)に関して、およびまた、驚いたことに、CF2=CFOCF2CF2OCF3(β−PDE)の場合のように(実施例参照)、酸素原子が等しいペルフルオロビニルエーテルが不飽和に直接結合する−OCF2O−基を示さないコポリマーの両方に関して、明らかに良好な結果となる。
【0044】
− 本発明のフルオロビニルエーテル(I)のさらなる利点は、以下に示すように、その製造が限定した数の工程で連続的なプラント中で行われることに存在する。さらに、使用された原料が安価である。以下のものが例として挙げられる:
CF2(OF)2、CF2=CF2、CF2=CFOCF3、CHCl=CFCl、CFCl=CFCl、CF2=CFCl、CF2=CFH、CF2=CH2、CHCl=CHClおよび他のオレフィンである。
これらの反応剤の使用は、本発明のビニルエーテルの合成方法において明記されている。
【0045】
本発明のコポリマーは、一般式(I)〜(IV)のフルオロビニルエーテルを、適当なコモノマーと重合することにより得られうる。本発明のフルオロエラストマーを得るために、コモノマー混合物中で用いる式(I)〜(IV)のコモノマーの量は、結晶領域の消失を引き起こすような量である。通常、その量は10モル%より大きい。
【0046】
コポリマーとは、本発明のビニルエーテルおよび1またはそれ以上のコモノマーを含むポリマーを意味する。
コモノマーとは、分子中に、任意に水素および/または塩素および/または臭素および/またはヨウ素および/または酸素を含む、重合性二重結合C=Cを少なくとも1つ有するフッ素化された化合物を意味する。該コモノマーはラジカル開始剤の存在下に(コ)ポリマーを製造することができる。
任意の共重合性コモノマーは、エチレン、プロピレン、イソブチレンのようなフッ素化されていないC2〜C8オレフィンである。
【0047】
使用可能なコモノマーの中で、以下:
− C2〜C8ペルフルオロオレフィン、例えばテトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロペン(HEP)、ヘキサフルオロイソブテン;
− C2〜C8水素化フルオロオレフィン、例えばフッ化ビニル(VF)、フッ化ビニリデン(VDF)、トリフルオロエチレン、CH2=CH−R2 fペルフルオロアルキルエチレン[式中、R2 fはC1〜C6ペルフルオロアルキルである];
− C2〜C8クロロ−および/またはブロモ−および/またはヨード−フルオロオレフィン、例えばクロロトリフルオロエチレン(CTFE)およびブロモトリフルオロエチレン;
− CF2=CFOR2 f(ペル)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)[式中、R2 fはC1〜C6(ペル)フルオロアルキル、例えばトリフルオロメチル、ブロモジフルオロメチルまたはヘプタフルオロプロピルである];
− CF2=CFOXa(ペル)フルオロ−オキシアルキルビニルエーテル
[式中、Xaは:1以上のエーテル基を有する、C1〜C12アルキル、またはC1〜C12オキシアルキル、またはC1〜C12(ペル)フルオロオキシアルキルであり、例えばペルフルオロ−2−プロポキシプロピル];
− 構造CF2=CFOXbSO2
[式中、Xb=CF2CF2、CF2CF2CF2、CF2CF(CF2c)[ここで、Xc=F、Cl、Br]]
を有するスルホン酸系モノマー;
− 一般式:
I 1I 2C=CRI 3−Z−CRI 4=CRI 5I 6 (IA)
[式中、RI 1、RI 2、RI 3、RI 4、RI 5、RI 6は、同一または互いに異なって、HまたはC1〜C5アルキルであり;
Zは、任意に酸素原子を含み、好ましくは少なくとも部分的にフッ素化された、C1〜C18直鎖状もしくは分岐状アルキレンもしくはシクロアルキレン基または、(ペル)フルオロポリオキシアルキレン基である]
を有するビスオレフィン;
が挙げられる。
【0048】
式(IA)において、ZはC4〜C12ペルフルオロアルキレン基が好ましく、一方RI 1、RI 2、RI 3、RI 4、RI 5、RI 6は、水素が好ましい。
Zが(ペル)フルオロポリオキシアルキレン基であるとき、式:
−(Q)P−CF2O−(CF2CF2O)ma(CF2O)na−CF2−(Q)P
(IIA)
[式中、
QはC1〜C10アルキレンまたはオキシアルキレン基であり;
pは0または1であり;
maおよびnaは、ma/na比が0.2〜5となるような整数である]
を有するのが好ましく、該(ペル)フルオロポリオキシアルキレン基の分子量は500〜10,000、好ましくは1,000〜4,000の範囲である。Qは、以下の群:
−CH2OCH2−;−CH2O(CH2CH2O)S
[s=1〜3]
から選択されるのが好ましい。
【0049】
Zがアルキレンまたはシクロアルキレン基である式(IA)のビス−オレフィンは、例えば、ソ連邦科学アカデミ−会誌、化学シリーズ 1964(2),384−6に記載されたI.L.Knunyantsらの方法により製造することができ、一方、(ペル)フルオロポリオキシアルキレン序列を含むビス−オレフィンは米国特許第3,810,874号に記載されている。
鎖中の該ビス−オレフィンから誘導される単位の量は、一般的に0.01〜1.0モルの範囲である。
ペルフルオロビニルエーテルと重合可能な、上記で示されたコモノマーは、単独または他のコモノモマーと混合して使用することができる。
【0050】
フルオロエラストマー基本構造は、特に以下:
(1) C2〜C8のペルフルオロオレフィン、例えばテトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロペン(HFP);
2〜C8のクロロ−および/またはブロモ−および/またはヨード−フルオロオレフィン、例えばクロロトリフルオロエチレン(CTFE)およびブロモトリフルオロエチレン;
CF2=CFORt f(ペル)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)
[式中、Rt fは、C1〜C6の(ペル)フルオロアルキル、例えばトリフルオロメチル、ブロモジフルオロメチル、ペンタフルオロプロピルである];
CF2=CFOXtペルフルオロ−オキシアルキルビニルエーテル
[式中、Xtは、1またはそれ以上のエーテル基を有する、C1〜C12のペルフルオロ−オキシアルキル、例えばペルフルオロ−2−プロポキシ−プロピルである];
2〜C8の非フッ素化オレフィン(O1)、例えばエチレンおよびプロピレン:から選択されるコモノマーの少なくとも1つと共にVDFが共重合された、VDFをベースとするコポリマー、
(2) CF2=CFORt f(ペル)フルオロアルキル−ビニルエーテル(PAVE)
[式中、Rt fは、上で定義したとおりである];
CF2=CFOXtペルフルオロ−オキシアルキルビニルエーテル
[式中、Xtは、上で定義したとおりである];
水素および/または塩素および/または臭素および/またはヨウ素原子を含むC2〜C8のフルオロオレフィン;
2〜C8の非フッ素化オレフィン(O1):
から選択されるコモノマーの少なくとも1つと共に、TFEが共重合された、TFEをベースとするコポリマー
から選択することができる。
【0051】
上記で定義されたいくつかのフルオロエラストマー群のうち、好ましい基本モノマー組成(%)は次の通りである。
Figure 0005110746
HFP+PAVE+MOVEの合計は最大45モル%;または
Figure 0005110746
PAVE+MOVEの合計は最大50モル%である。
【0052】
本発明のフルオロエラストマーは、好ましくは過酸化ルートで硬化される。
それらがイオン性ルートで硬化される場合、好ましい組成(モル%で表現される)は、フルオロエラストマーがO−リング製造のため使用される場合、以下のとおりである。
【0053】
Figure 0005110746
PAVE+MOVEの合計は10モル%またはそれ以下である。
【0054】
フルオロエラストマーが、シャフトのシールまたは燃料ホースを得るために使用される場合、以下の組成(モル%)が好ましい:
Figure 0005110746
PAVE+MOVEの合計は20モル%またはそれ以下である。
【0055】
フルオロエラストマーが過酸化ルートで硬化される場合、上述の少量のビス−オレフィンを添加することが好ましい。
良好な硬化の度合いを達成するためには、鎖中に反応部位、すなわちヨウ素および/もしくは臭素、好ましくはヨウ素を含むフルオロエラストマー(硬化部位モノマー)を使用することが適している。
またヨウ化または/あるいは臭化連鎖移動剤も使用できる。
【0056】
本発明によるフッ素化ポリマーの製造方法は、ここに引例として取りこむ米国特許第4,864,006号および第5,182,342号に記載のように、有機溶媒中の重合により行うことができる。有機溶媒はクロロフルオロカーボン、ペルフルオロポリエーテル、ヒドロフルオロカーボンおよびヒドロフルオロエーテルからなる群から選択される。
【0057】
代わりに、本発明のフルオロエラストマーの製造法は、当該分野でよく知られた方法に従い、任意に鉄、銅もしくは銀塩または他の容易に酸化されうる金属と組み合わせた、ラジカル開始剤(例えば、アルカリまたはアンモニウムの過硫酸塩、過燐酸塩、過ホウ酸塩あるいは過炭酸塩)の存在下で、水性エマルジョン中でのモノマーの共重合により行うことができる。また反応媒体中には、各種の界面活性剤が通常存在し、そのうち式:
3 f−X-+
[式中、R3 fはC5〜C16(ペル)フルオロアルキル鎖または(ペル)フルオロポリオキシアルキル鎖であり、X-は−COO-または−SO3 -であり、M+はH+、NH4 +、アルカリ金属イオンから選択される]
のフッ素化界面活性剤が特に好ましい。
【0058】
最も一般的に使用されるもののうち、アンモニウムペルフルオロオクタネート、1またはそれ以上のカルボン酸基を末端として有する(ペル)フルオロポリオキシアルキレンがあげられる。米国特許第4,990,283号および米国特許第4,864,006号を参照。
重合の終点で、フルオロエラストマーは、電解質の添加または冷却による凝固のような、通常の方法でエマルジョンから分離される。
代わりに、重合は、よく知られた技術により、ラジカル開始剤が存在する有機液体中において、塊重合または懸濁重合で行うことができる。
重合反応は一般的に、10Mpaまでの圧力下、25℃から150℃の温度範囲で行われる。
本発明のフルオロエラストマーの製造は、好ましくは、米国特許第4,789,717号および米国特許第4,864,006号に従い、ペルフルオロポリオキシアルキレンのエマルジョン、分散またはマイクロエマルジョンの存在下、水性エマルジョン中で行われる。
【0059】
高分子鎖中および/または末端位にヨウ素および/または臭素原子、好ましくはヨウ素原子を有する、本発明のフルオロエラストマーは、過酸化ルートで硬化されることが好ましい。そのようなヨウ素および/または臭素原子の導入は、2〜10の炭素原子を有するブロモおよび/またはヨード オレフィン(例えば、米国特許第4,035,565号および米国特許第4,694,045号に記載のような)、またはヨードおよび/またはブロモフルオロアルキルビニルエーテル(米国特許第4,745,165号、米国特許第4,564,662号およびEP第199,138号に記載のような)のような、ヨウ化および/または臭化硬化部位コモノマーを、最終生成品中の硬化部位コモノマーの含有量は、一般的に他の基本モノマー単位100モルに対し0.05〜2モルの範囲であるような量で、反応混合物中に添加することで行われる。
【0060】
代わりに、あるいはまた硬化部位コモノマーと組み合わせて、例えば、式Rb f(I)x(Br)y'[式中、Rb fは炭素数1〜8の(ペル)フルオロアルキルまたは(ペル)フルオロクロロアルキルであり、一方xとyは0と2の範囲の整数で、1≦x+y≦2である]の化合物のようなヨウ素化および/または臭素化連鎖移動剤を、反応混合物に添加することで、ヨウ素および/または臭素末端原子を導入することができる(例えば、米国特許第4,243,770号および米国特許第4,943,662号を参照)。
米国特許第5,173,553号によれば、アルカリまたはアルカリ土類金属のヨウ化物および/または臭化物も連鎖移動剤として使用できる。
【0061】
代わりに、あるいはまたヨウ素および/または臭素を含む連鎖移動剤と組み合わせて、酢酸エチル、マロン酸ジエチル等のような当該分野で知られている他の連鎖移動剤も使用できる。
公知の技術に従い、加熱によりラジカルを発生しうる適当な過酸化物を添加することで、過酸化ルートの硬化が行われる。
【0062】
最も一般的使用されるもののうち、例えばジtert−ブチルパーオキサイドおよび2,5−ジメチルー2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサンのようなジアルキルパーオキサイド;ジクルミルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド;ジtert−ブチルパーベンゾエート、ジ−[1,3−ジメチル−3−(tert−ブチルパーオキシ)ブチル]カーボネートが考えられる。その他の過酸化物系は、例えば、ヨーロッパ特許出願第EP136,596号およびEP第410,351号に記載されている。
【0063】
硬化ブレンドへ、
(a)ポリマーに対して一般的には0.5〜10重量%、好ましくは1〜7%の範囲の量の硬化補助剤;なかでも、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリス(ジアリルアミン)−S−トリアジン;トリアリルフォスファイト;N,N−ジアリルアクリルアミド;N,N,N',N'−テトラアリルマロンアミド;トリビニルイソシアヌレート;および4,6−トリビニルメチルトリシロキサンなどが一般的に使用されるが、TAICが特に好まれる;
(b)任意に、例えばBa、Na、K、Pb、Caのステアリン酸塩、安息香酸塩、炭酸塩、蓚酸塩、亜リン酸塩等のような弱酸塩との組み合わせて、ポリマーに対して1〜15重量%、好ましくは2〜10%の範囲の量の、例えばMg、Zn、Ca、またはPbのような二価の金属の酸化物および水酸化物から選択される金属化合物
(c)粘度付与剤、顔料、酸化防止剤、安定剤などのような他の通常の添加剤
のような他の化合物を次いで添加する。
【0064】
本発明のフルオロエラストマーはイオン性ルートでも硬化できる。当該分野でよく知られた適当な硬化剤および促進剤は、ポイント(b)および(c)で上述した製品の他に、硬化ブレンドに添加される。硬化剤として、例えばEP第335,705号および米国特許第4,233,427号に記載されているように、例えば芳香族または脂肪族ポリヒドロキシ化化合物またはそれらの誘導体が使用可能である。なかでも、ジ−、トリ−およびテトラ−ヒドロキシベンゼン、ナフタレン、またはアントラセン;脂肪族、環状脂肪族または芳香族の2価の基か、または1つの酸素もしくは硫黄原子、または1つのカルボニル基で、2つの芳香環が互いに結合しているビスフェノールが、特に挙げられる。芳香環は、1またはそれ以上の塩素、フッ素、臭素原子またはカルボニル、アルキル、アシルと置き換えることができる。
【0065】
反応促進剤として、例えばアンモニウム、ホスホニウム、アルソニウムおよびアンチモンの第4級塩(例えば、EP第335,705号および米国特許第3,876,654号を参照)、アミノホスホニウム塩(例えば、米国特許第4,259,463号を参照)、ホスホラン(例えば、米国特許第3,752,787号を参照)、EP第182,299号およびEP第120,462号に記載のイミン化合物などが使用できる。また反応促進剤と硬化剤との付加物も使用でき、ここに引例として取りこむ米国特許第5,648,429号、米国特許第5,430,381号、米国特許第5,648,430号を参照。
【0066】
EP第136,596号に記載されているように、イオン性と過酸化物の両方の混合硬化系も使用できる。
【0067】
新しいペルフルオロビニルエーテルの製造法は、式R12C=CR34を有するフッ素化オレフィンとのハイポフルオライトの反応で中間体ハイポフルオライトF−CR12−CR34−OCF2OFを得、
この化合物と式R56C=CR78の第二のフッ素化オレフィンとの続く反応で中間体F−CR12−CR34−OCF2O−CR56−CR78−Fを得、
それを続く脱ハロゲン化または脱ハロゲン化水素により、新しいペルフルオロビニルエーテルを得ることからなる。
【0068】
この製造の一般的な反応式は、以下:
【化2】
Figure 0005110746
である。
この製造反応式中:
− 化合物の式(VII)に関して、
− R1、R4は同一または異なって、H、Fであり;R2、R3は同一または異なって、H、Clであり、以下の条件下:
(1)最終反応が脱ハロゲン化のときR2、R3=Clであり、
(2)最終反応が脱ハロゲン化水素のとき、R2、R3の2つの置換基の一つがHであり、他がClである;
【0069】
− R5、R6、R7、R8は:
− F、またはそれらの一つはC1〜C4直鎖状もしくは分岐状ペルフルオロアルキル基または1〜3の酸素原子を含むC1〜C4直鎖状もしくは分岐状ペルフルオロオキシアルキル基であるか、または
5およびR7、またはR6およびR8は、互いに結合してC2およびC1と共にC5〜C6環状ペルフルオロアルキル基を形成し;
【0070】
− R5〜R8基の一つがC2〜C4直鎖状または分岐状フルオロアルキルであるとき、または1〜3の酸素原子を含むC2〜C4直鎖状または分岐状フルオロオキシアルキル基であるとき、他のR5〜R8の1または2は、Fであり、残りの1または2は同一または互いに異なって、H、Cl、Br、ヨウ素から選択され;H、Cl、Br、ヨウ素から選択される基が2つであるとき、それらは両方とも同じ炭素原子に結合し;R5およびR7、またはR6およびR8は、互いに結合してC2およびC1と共にC5〜C6環状フルオロアルキル基を形成し、2つの遊離置換基R6、R8またはR5、R7の一つは、Fであり、他はH、Cl、Br、ヨウ素から選択される;
【0071】
− 反応a)で用いられるフルオロアルケンは、その後の反応b)のものと置き換えることができる;この場合、R1〜R4基、およびR5〜R8基のそれぞれの置換基で定義された意味は、互いに相互交換可能であり、ただし、中間化合物(VII)の鎖上の−OCF2O−に関する各2つの基R1〜R4およびR5〜R8の各基の位置は、上記反応式に従い合成が起こり、2つのオレフィンが互いに反応すると占める位置と同一である。
【0072】
上記で説明した反応式の最初の反応a)において、不活性流体で適当に希釈されたハイポフルオライトガス流CF2(OF)2は、出口を備えた適当な反応器中で、同じものの底で(第一の反応器)、任意に不活性流体中で希釈された、R12C=CR34オレフィン流と接触して、化学反応a)を起こさせ、中間体ハイポフルオライト(VI)を生成させる。反応を化学量論的にさせるために、反応物は、ほぼ単位モル比かまたはCF2(OF)2を過剰に、反応器中に導入されなければらない。反応器中の混合物の滞留時間は、オレフィンの反応性、反応温度および任意な反応溶媒の存在に応じて100分の2,3秒〜約120秒の範囲である。
【0073】
反応温度は、−40〜−150℃、好ましくは−80〜−130℃の範囲であることができる。
化合物(VI)は通常反応生成物から分離されず、連続的な方法で工程b)で記載した次の反応に移される。
【0074】
第1の反応器からの生成物の混合物は、第2の反応器に供給する前に室温で加熱することができる。
第2の工程b)において、第2のオレフィンR56C=CR78は純粋または溶液で、第一の反応で得られた生成物と反応して化合物(VII)を得る。
オレフィンは、連続的に供給され、反応器中でその濃度を一定に維持することができる。反応b)の温度は、−20〜−130℃、好ましくは−50〜−130℃の範囲である。オレフィンの濃度は、0.01Mと同じかまたはそれ以上であり、好ましくは濃度は3Mより高く、より好ましくは純粋な化合物を用いることである。
【0075】
工程a)およびb)において用いる溶媒は、ペルフッ素化されたもしくはクロロヒドロフッ素化された溶媒またはヒドロフルオロカーボンである。該溶媒の例は、CF2Cl2、CFCl3、CF3CFH2、CF3CF2CF3、CF3CCl2H、CF3CF2Clである。
【0076】
工程c)において、化合物(VII)は、工程a)およびb)において用いるオレフィンに依存して、反応原料からの蒸留後に、脱塩素または脱塩化水素に付され式(I)のビニルエーテルを得る。
この最後の工程は、当該分野で広く記載されている反応を用いて行うことができる。合成における2つのオレフィン中の置換基R1〜R8の適当な選択により、本発明のビニルエーテルを得ることができる。
【0077】
本発明の別の目的は、
式X12C(OF)2
[式中、X1およびX2は同一または異なってF、CF3である]
のハイポフルオライトと、それぞれの
式RA 1A 2C=CRA 3A 4およびRA 5A 6C=CRA 7A 8
[式中、RA 1〜RA 8は同一または異なって、F、H、Cl、Br、I、−CF2OSO2F、−SO2F、−COF、C1〜C5直鎖状または分岐鎖状のペルフルオロアルキルまたはオキシペルフルオロアルキル基である]
の2つのフルオロアルケンを、脱ハロゲン化と脱ハロゲン化水素化工程を除いて、工程a)およびb)に従い反応させ、
一般式(VIII)
F−CRA 1A 2−CRA 3A 4−OCF2O―CRA 5A 6−CRA 7A 8−F
の化合物を得る方法である。
【0078】
【実施例】
以下の実施例は、本発明を説明する目的で報告するものであり、その範囲を限定するものではない。
実施例中、熱重量分析TGAは10℃/分の速度を用いて行った。
【0079】
実施例1
CF 3 CF 2 OCF 2 OCFClCF 2 Clペルフルオロ−1,2−ジクロロ−3,5−ジオキサヘプタンの合成
用いた反応器は、300mlの全容量を有し、磁気ドラッキング機械的攪拌機と、反応器の頂部から20cmのところに設置された反応ガスの再利用のタービンと、内部熱電対と、タービンから約1mmのところで終結している反応物供給用の2つの内部銅パイプと、底からの生成物出口とを備えた円筒型である。反応器中、内部の温度は−114℃に保たれ、1.1L/h(リットル/時間)のCF2(OF)2および3.3L/hのHeを2つの入り口パイプの一つを通して導入し;1.1L/hのCF2=CF2および0.7L/hのHeの流れを第2の入り口パイプを通して維持する。供給を6.6時間維持する。
【0080】
反応器中の2つの供給パイプの出口と、排出パイプの入り口との間の反応帯中における輸送ガスの滞留時間は、約4秒である。
反応器の底で、反応生成物は室温になり、ガスクロマトグラフィーで監視されているガス混合物気流を、機械的攪拌下に、連続して、機械的攪拌機と、熱電対と、反応混合物用のディッピング入り口と、不活性ガスの頂部に出口とを備え、−70℃の温度に維持され250mlの容量を有する第2の反応器中に、供給する。反応器は72.6gのジクロロジフルオロエチレンCFCl=CFClを含む。
【0081】
第2の反応器への反応ガスの添加の終点において、未処理の反応材料を段塔で常圧で蒸留し、41.5gの所望な生成物(沸点91℃)を集めた。
ペルフルオロ−1,2−ジクロロ−3,5−ジオキサヘプタンの収率は、CF2(OF)2に関して計算して36%である。
【0082】
ペルフルオロ−1,2−ジクロロ−3,5−ジオキサヘプタンの特性付け
常圧での沸点:91℃
ppmでの19F−NMRスペクトル(CFCl3=0に関して):
【数1】
Figure 0005110746
【0083】
質量スペクトル(E.I.電子衝撃)、主ピークおよび相対的強度:
【数2】
Figure 0005110746
【0084】
IRスペクトル(cm-1)強度:(w)=弱い、(m)=中程度、(s)=強い、(vs)=非常に強い:
【数3】
Figure 0005110746
【0085】
実施例2
CF 3 OCF 2 CF 2 OCF 2 OCFClCF 2 Clペルフルオロ−1,2−ジクロロ−3,5,8−トリオキサノナン(異性体A)およびCF 3 OCF(CF 3 )OCF 2 OCFClCF 2 Clペルフルオロ−1,2−ジクロロ−3,5,7−トリオキサ−6−メチルオクタン(異性体B)の合成
実施例1で用いたのと同一の反応器中、−114℃の同じ温度で維持し、1.55L/hのCF2(OF)2と4.5L/hのHeを2つの入り口パイプの1つを通して導入し;第2の入り口パイプを通して1.4L/hのCF2=CF−OCF3と0.7L/hのHeを4.5時間導入した。
反応器中の出口と、2つの供給パイプの端との間の反応帯中における輸送ガスの滞留時間は、約3秒である。
【0086】
反応器の底で、反応生成物は室温になり、ガスクロマトグラフィーで監視されているガス混合物気流を、機械的攪拌下に、連続して、実施例1の同じ工程で用いたものと同一な第2の反応器中に、供給する。内部は−70℃の温度に維持し、51gのジクロロフルオロエチレンCFCl=CFClが存在する。
【0087】
第2の反応器への反応ガスの添加の終点において、未処理の反応材料を段塔で250mmHgの減圧下に蒸留した。2つの異性体、それぞれ異性体A)ペルフルオロ−1,2−ジクロロ−3,5,8−トリオキサノナンと異性体B)ペルフルオロ−1,2−ジクロロ−3,5,7−トリオキサ−6−メチルオクタンとからなる50gの混合物を得た。混合物の組成はガスクロマトグラフィーで測定し、以下:異性体A79%、異性体B21%であった。用いたCF2(OF)2に関してA+Bのモル収率は、38%である。用いたペルフルオロメチルビニルエーテルに関するA+Bのモル収率は、42%である。異性体は、分取ガスクロマトグラフィーで分離した。
【0088】
生成物AとBの特性付け
250mmHgの減圧での混合物沸点(A79%、B21%):82℃
異性体Aのppmでの19F−NMRスペクトル(CFCl3=0に関して):
【数4】
Figure 0005110746
異性体Bのppmでの19F−NMRスペクトル(CFCl3=0に関して):
【数5】
Figure 0005110746
【0089】
質量スペクトル(E.I.電子衝撃)、主ピークおよび相対的強度:
生成物A:
【数6】
Figure 0005110746
生成物B:
【数7】
Figure 0005110746
【0090】
混合物A79%、B21%のIRスペクトル(cm-1)強度:(w)=弱い、(m)=中程度、(s)=強い、(vs)=非常に強い:
【数8】
Figure 0005110746
【0091】
実施例3
CF 3 OCF 2 CF 2 OCF 2 OCHClCHFClペルフルオロ−1,2−ジクロロ−1,2−ジヒドロ−3,5,8−トリオキサノナン(異性体C)とCF 3 OCF(CF 3 )OCF 2 OCHClCHFClペルフルオロ−1,2−ジクロロ−1,2−ジヒドロ−3,5,7−トリオキサ−6−メチルオクタン(異性体D)の合成
実施例1で用いたのと同一の反応器中、−112℃の同じ温度で維持し、1.55L/hのCF2(OF)2と4.5L/hのHeを2つの入り口パイプの一つを通して導入し;第2の入り口パイプを通して1.4L/hのCF2=CF−OCF3と0.7L/hのHeを5時間導入した。
反応器中の出口と、2つの供給パイプの端との間の反応帯中における輸送ガスの滞留時間は、約3秒である。
【0092】
反応器の底で、反応生成物は室温になり、ガスクロマトグラフィーで監視されているガス混合物気流を、機械的攪拌下に、連続して、実施例1の同じ工程で用いたものと同一な第2の反応器中に、供給する。内部は−70℃の温度に維持し、50gの1,2−ジクロロエチレンCClH=CClHと50gのCFCl3が存在する。
【0093】
第2の反応器への反応ガスの添加の終点において、常圧で溶媒を蒸留した後、未処理の反応材料を段塔で100mmHgの減圧下に蒸留した。43.5gの所望の生成物の混合物(異性体C78%、異性体D22%、ガスクロマトグラフィーで測定)を集めた。用いたCF2(OF)2に関してC+Dのモル収率は、33%である。異性体は、分取ガスクロマトグラフィーで分離した。
【0094】
生成物CとDの特性付け
100mmHgの減圧での混合物沸点(C78%、D22%):71℃
異性体Cペルフルオロ−1,2−ジクロロ−1,2−ジヒドロ−3,5,8−トリオキサノナンのppmでの19F−NMRスペクトル(CFCl3=0に関して):
【数9】
Figure 0005110746
異性体Dペルフルオロ−1,2−ジクロロ−1,2−ジヒドロ−3,5,7−トリオキサ−6−メチルオクタンのppmでの19F−NMRスペクトル(CFCl3=0に関して):
【数10】
Figure 0005110746
【0095】
異性体CおよびDのppmでの1H−NMRスペクトル(TMSに関して):6.28/6.05(1H−CHFCl);6.02/5.95(1H−CHCl−)。
【0096】
質量スペクトル(電子衝撃)、主ピークおよび相対的強度:
【数11】
Figure 0005110746
【0097】
IRスペクトル(cm-1)強度:(w)=弱い、(m)=中程度、(s)=強い、(vs)=非常に強い:
【数12】
Figure 0005110746
【0098】
実施例4
ペルフルオロ−1,2−ジクロロ−3,5−ジオキサヘプタンの脱ハロゲン化
機械的攪拌機と、温度計と、滴下ロートと、水冷却機および−78℃に保たれた収集トラップを備えた蒸留塔とを備え、機械的真空ポンプに接続した、25mLの3つ口フラスコ中、150mLのDMF、15gの粉末Zn、0.5gのK2CO3および100mgのI2を導入した。内部温度を80℃にし、50gのペルフルオロ−1,2−ジクロロ−3,5−ジオキサヘプタンを滴下して加えた。
滴下が終了したとき、混合物を約30分間反応させる。終点で、内部圧力は徐々に760mmHgから300mHgになった。約20分後、34.2gのペルフルオロ−3,5−ジオキサ−1−ヘプテン(MOVE1)を含む収集トラップを分離した。
脱ハロゲン化収率は85%である。
【0099】
ペルフルオロ−3,5−ジオキサ−1−ヘプテン(MOVE1)の特性付け
常圧での沸点:41.9℃
ppmでの19F−NMRスペクトル(CFCl3=0に関して):
【数13】
Figure 0005110746
【0100】
質量スペクトル(電子衝撃)、主ピークおよび相対的強度:
【数14】
Figure 0005110746
【0101】
IRスペクトル(cm-1)強度:(w)=弱い、(m)=中程度、(s)=強い、(vs)=非常に強い:
【数15】
Figure 0005110746
【0102】
実施例5
実施例2で得た異性体混合物A+B(ペルフルオロ−1,2−ジクロロ−3,5,8−トリオキサノナンCF 3 OCF 2 CF 2 CF 2 OCFClCF 2 Cl+およびペルフルオロ−1,2−ジクロロ−3,5,7−トリオキサ−6−メチルオクタンCF 3 OCF(CF 3 )OCF 2 OCFClCF 2 Cl)の脱ハロゲン化
先の実施例4で記載したように備えられた250mLのフラスコ中、110mLのDMF、10gの粉末Znおよび0.3mLのBr2を導入した。内部温度を75℃にし、先の実施例2で分離した2成分の混合物A+Bの30.3gを滴下して加えた。滴下が終了したとき、混合物を約3時間反応させた。終点で、内部圧力は−79℃で、徐々に760mmHgから200mmHgへ低下した。約30分後、収集トラップを分離した。対応する含有物を水で洗浄し、回収した。終点で、79%(ガスクロマトグラフィーで測定)のペルフルオロ−3,5,8−トリオキサ−1−ノネン(MOVE2)CF3OCF2CF2OCF2OCF=CF2(異性体A’)および21%のペルフルオロ−3,5,7−トリオキサ−6−メチル−1−オクテン(MOVE2a)CF3OCF(CF3)OCF2O−CF=CF2(異性体B’)から形成される混合物24.0gを得、それらを次いで分取ガスクロマトグラフィーで分離した。
【0103】
生成物A’とB’の特性付け
常圧での異性体混合物の沸点の範囲:72.5〜74.5℃
異性体A’のppmでの19F−NMRスペクトル(CFCl3=0に関して):
【数16】
Figure 0005110746
異性体B’のppmでの19F−NMRスペクトル(CFCl3=0に関して):
【数17】
Figure 0005110746
【0104】
異性体A’の質量スペクトル(電子衝撃)、主ピークおよび相対的強度:
【数18】
Figure 0005110746
異性体B’の質量スペクトル(電子衝撃)、主ピークおよび相対的強度:
【数19】
Figure 0005110746
【0105】
IRスペクトル(cm-1)強度:(w)=弱い、(m)=中程度、(s)=強い、(vs)=非常に強い:
【数20】
Figure 0005110746
【0106】
実施例6
実施例3で得た異性体C+D混合物(CF 3 OCF 2 CF 2 OCF 2 OCHClCHFClペルフルオロ−1,2−ジクロロ−1,2−ジヒドロ−3,5,8−トリオキサノナン(異性体C)+CF 3 OCF(CF 3 )OCF 2 OCHClCHFClペルフルオロ−1,2−ジクロロ−1,2−ジヒドロ−3,5,7−トリオキサ−6−メチルオクタン(異性体D))の脱ハロゲン化
機械的攪拌機と、温度計と、滴下ロートと、水冷却機および−78℃に保たれた収集トラップを備えた蒸留塔とを備えた、500mLの3つ口フラスコ中、250mLのDMF、30gの粉末Znおよび300mgのI2を導入した。
温度を100℃にし、実施例3で得た異性体混合物56.9gを滴下して加えた。
滴下が終了したとき、反応器内部温度を120℃にし、攪拌を24時間攪拌を維持した。終点で、微量の溶媒を含み、−78℃に保たれたトラップ中に集められた反応生成物を蒸留した。水で洗浄した後、ペルフルオロ−1,2−ジヒドロ−3,5,8−トリオキサ−1−ノネン(異性体C’、79モル%)とペルフルオロ−1,2−ジヒドロ−3,5,7−トリオキサ−5−メチル−1−オクテン(異性体D’、21モル%)の混合物35gを回収した。異性体を分取ガスクロマトグラフィーで分離した。
脱ハロゲン化反応収率は76%である。
【0107】
生成物C’とD’の特性付け
常圧での異性体C’79%、D’21%の混合物の沸点の範囲:90.0〜92.0℃
異性体C’ ペルフルオロ−1,2−ジヒドロ−3,5,8−トリオキサ−1−ノネンのppmでの19F−NMRスペクトル(CFCl3=0に関して):
【数21】
Figure 0005110746
異性体D’ ペルフルオロ−1,2−ジヒドロ−3,5,7−トリオキサ−6−メチル−1−オクテンのppmでの19F−NMRスペクトル(CFCl3=0に関して):
【数22】
Figure 0005110746
【0108】
質量スペクトル(電子衝撃)、主ピークおよび相対的強度:
【数23】
Figure 0005110746
【0109】
異性体混合物(C’79%、D’21%)のIRスペクトル(cm-1)強度:(w)=弱い、(m)=中程度、(s)=強い、(vs)=非常に強い:
【数24】
Figure 0005110746
【0110】
実施例7
ペルフルオロ−3,5−ジオキサ−1−ヘプテン(MOVE1)のホモ重合
磁気攪拌機と反応物供給用および排出用入り口とを備えた、20mLの容量を持つ重合用のガラス反応器中、CFCl2CF2Cl中3重量%のペルフルオロプロピオニルペルオキシドを60μlとMOVE1を3gを連続的に導入した。そのようにして満たされた反応器を−196℃にし、脱気し、室温にし、それら全てを2回行った。脱気操作の終点で、反応器を30℃の温度でサーモスタットで調温し、その混合物を磁気攪拌下これらの条件下に2日間反応させた。
【0111】
最終的に回収された未処理の反応材料は、わずかに粘性で、無色透明で、均一溶液に見えた。
未反応モノマーの蒸留次いで真空下に150℃で3時間除去した後、180mgのポリマーを分離した。
得られたポリマーのIR分析によれば、スペクトル中、フッ素化された二重結合の領域に吸収帯が欠落している。
66中に溶解させたポリマーに行った19F−NMR分析は、分子量50,000を有するホモポリマー構造と一致している。分析により、未反応モノマーの存在は示されなかった。
DSCグラフにより、溶融吸熱曲線は全く示されず、従ってポリマーは非晶質である。ポリマーTg'は、DSCで測定して、−35.4℃であった。熱重量分析(TGA)によれば、332℃で2%、383℃で10%の重量損失が示された。
【0112】
実施例8
ペルフルオロ−3,5,8−トリオキサ−1−ノネンCF 3 OCF 2 CF 2 OCF 2 OCF=CF 2 (MOVE2)およびペルフルオロ−3,5,7−トリオキサ−6−メチル−1−オクテンCF 3 OCF(CF 3 )OCF 2 O−CF=CF 2 (MOVE2a)の間のコポリマー
実施例7で記載したのと同じ特徴を有する反応器中、CFCl2CF2Cl中3重量%のペルフルオロプロピオニルペルオキシド150μlおよび実施例5の工程により製造され、83%のMOVE2と17%のMOVE2aを含む混合物3.2gを導入した。反応器を次いで脱気し、冷却して先の実施例7で記述したように次の反応を行う。
未処理の反応材料はわずかに粘性で、無色透明で、均一溶液に見えた。未反応のモノマーは蒸留され、真空下に150℃で3時間にわたる除去を連続して行った。最終的に350mgのポリマーが分離された。
【0113】
ポリマースペクトル中のIR分析によれば、フッ素化された二重結合の領域に吸収帯が欠落している。
19F−NMR分析は、平均分子量35,000を有するコポリマー構造と一致し、MOVE2/MOVE2a含有量は反応混合物の割合と等しかった;未反応モノマーは明白ではなかった。
DSCグラフにより、溶融吸熱曲線は全く示されず、従ってポリマーは非晶質である。ポリマーTg'は、DSCで測定して、−52.6℃であった。熱重量分析(TGA)によれば、280℃で2%、327℃で10%の重量損失が示された。
【0114】
実施例9
MOVE1とTFEの間の非晶質コポリマー
磁気攪拌機、圧力変換器および反応物を供給したり排出するための入り口を備えた、40mLの容量を有するAISI−316重合反応器中、CFCl2CF2Cl中3重量%のペルフルオロプロピオニルペルオキシド250μl、MOVE1を9.8ミルモルおよびテトラフルオロエチレン18ミリモルを導入した。
反応器を−196℃の温度に冷却し、脱気し、次いで室温にして再度冷却し、これらを2回繰り返した。
【0115】
脱気操作の終点で、反応器を30℃でサーモスタットで調温し、反応混合物を磁気攪拌下に保った。初期圧力は、約8時間(反応時間)で6.4atm〜4.7atmに低下した。
未反応モノマーの蒸留および150℃で3時間の真空下でのポリマー除去の後、1,100mgのポリマーを回収し、それは無色透明ゴムとしての外観を有した。
【0116】
66中加熱下に溶解させたポリマーの19F−NMR分析により、ポリマー中のMOVE1のモル割合は24%と測定された。
IR分析により、ポリマーのスペクトル中、フッ素化された二重結合の領域中に吸収帯は示されず、カルボキシルシグナルの領域中に非常に小さい吸収帯の存在が示された。これらのシグナルの強度は、比較実施例1のポリマーで得られた同じ厚さのフィルムから得られる類似のものと比べて、これら後者の約1/10に等しい。
【0117】
DSCグラフにより、溶融吸熱曲線は全く示されず、従ってポリマーは非晶質である。DSCで測定したTgは、−21.4℃であった。
TGAにより、450℃で2%、477℃で10%の重量損失が示された。従って、ポリマーは比較実施例(以下参照)に比べて、熱的により安定となった。
フルオリネルト(Fluorinert)(登録商標)FC−75で30℃で測定したポリマー固有粘度は、35.5mL/gであった。
【0118】
実施例10
MOVE1とTFEの間の非晶質ポリマー
先の実施例9で記載したのと同一のAISI−316重合反応器中、CFCl2CF2Cl中3重量%のペルフルオロプロピオニルペルオキシド250μl、MOVE1を9.75ミルモルおよびテトラフルオロエチレンを9ミリモルを連続的に導入した。
先の実施例9に既に記載した方法に、攪拌下に30℃でサーモスタットで調温する工程まで従った。反応の間、初期圧力は、約8時間で3.4atm〜2.9atmに低下した。
未反応モノマーを蒸留した終点で、ポリマーを150℃で3時間真空下で除去した。
480mgのポリマーを分離した。
【0119】
66中加熱下に溶解させたポリマーの19F−NMR分析により、ポリマー中のMOVE1のモル割合は39%であることが測定された。
IR分析により、ポリマーのスペクトル中、フッ素化された二重結合の領域中に吸収帯が不在であることが示された。
DSCグラフにより、溶融吸熱曲線は全く示されず、従ってポリマーは非晶質である。DSCで測定したTgは、−29.8℃であった。
TGAにより、435℃で10%の重量損失が示された。
【0120】
実施例11
MOVE1とCF 2 =CH 2 の間の非晶質コポリマー
先の実施例9で記載したのと同一の重合反応器中、CFCl2CF2Cl中3重量%のペルフルオロプロピオニルペルオキシド250μl、MOVE1を10ミルモルおよびVDFを18ミリモルを連続的に導入した。
先の実施例9に既に記載した方法に、攪拌下に30℃でサーモスタットで調温する工程まで従った。反応の間(約8時間)、初期圧力は6.8atm〜5.0atmに低下した。
未反応モノマーの蒸留および150℃で3時間の真空下でのポリマー除去の後、1,600mgのポリマーを分離し、それは無色透明ゴムとしての外観を有した。
【0121】
66中に溶解させたポリマーに行った19F−NMR分析により、ポリマー中のMOVE1のモル割合は40%であると測定された。
DSCグラフにより、溶融吸熱曲線は全く示されず、従ってポリマーは非晶質である。DSCで測定したTgは、−47℃であった。
TGAにより、428℃で2%、455℃で10%の重量損失が示された。
【0122】
実施例12
MOVE2/MOVE2a/TFE非晶質ターポリマー
先の実施例9で記載したのと同一の重合反応器中、CFCl2CF2Cl中6重量%のペルフルオロプロピオニルペルオキシド100μl、実施例5による方法に従って製造したMOVE2(83%)とMOVE2a(17%)の混合物を10ミルモル、およびテトラフルオロエチレン(TFE)を18ミリモルを連続的に導入した。
先の実施例9に既に記載した方法に、攪拌下に30℃でサーモスタットで調温するまで従った。反応の間(約8時間)、初期圧力は、6.1atm〜3.9atmに低下した。
未反応モノマーの蒸留および150℃で3時間の真空下でのポリマー除去の後、ポリマーを分離した。
【0123】
66中に溶解させたポリマーに行った19F−NMR分析により、ポリマー中のMOVE2+MOVE2aペルフルオロビニルエーテルの全モル割合は22%であった。ポリマー中のMOVE2/MOVE2aモル比は83/17であり、出発した供給混合物のものと等しかった。
未反応モノマーの存在が明白でなかった。
IR分析により、ポリマーのスペクトル中、フッ素化された二重結合の領域中に吸収帯が示されず、カルボキシルシグナルの領域中に非常に小さい吸収帯の存在を示した。これらのシグナルの強度は、比較実施例1のポリマーで得られた同じ厚さのフィルムから得られる類似のものと比べて、これら後者の約1/10に等しい。
DSCグラフにより、溶融吸熱曲線は全く示されず、従ってポリマーは非晶質である。DSCで測定したTgは、−37.5℃であった。
TGAにより、473℃で10%の重量損失が示された。
フルオリネルト(登録商標)FC−75で30℃で測定したポリマー固有粘度は、40.0mL/gであった。
【0124】
実施例13
MOVE2/MOVE2a/TFE非晶質ターポリマー
先の実施例9で記載したのと同一の重合反応器中、CFCl2CF2Cl中6重量%のペルフルオロプロピオニルペルオキシド100μl、実施例5による方法に従って製造したMOVE2(83%)とMOVE2a(17%)の混合物を9.7ミルモル、およびテトラフルオロエチレン(TFE)を10ミリモルを連続的に導入した。
先の実施例9に既に記載した方法に、攪拌下に30℃でサーモスタットで調温する工程まで従った。反応の間(約8時間)、初期圧力は、3.6atm〜2.7atmに低下した。
未反応モノマーの蒸留および150℃で3時間の真空下でのポリマー除去の後、652mgのポリマーを分離した。
【0125】
66中に溶解させたポリマーに行った19F−NMR分析により、ポリマー中のMOVE2+MOVE2aペルフルオロビニルエーテルの全モル割合は37%であった。ポリマー中のMOVE2/MOVE2aモル比は83/17であり、出発した供給混合物のものと等しかった。
未反応モノマーの存在は明白でなかった。
IR分析により、ポリマーのスペクトル中、フッ素化された二重結合の領域中に吸収帯が示されなかった。
DSCグラフにより、溶融吸熱曲線は全く示されず、従ってポリマーは非晶質である。DSCで測定したTgは、−44.5℃であった。
TGAにより、451℃で10%の重量損失が示された。
フルオリネルト(登録商標)FC−75で30℃で測定したポリマー固有粘度は、16.7mL/gであった。
【0126】
実施例14
モル比88/12のペルフルオロ−1,2−ジヒドロ−3,5,8−トリオキサ−1−ノネン(MOVE2)およびペルフルオロ−1,2−ジヒドロ−3,5,7−トリオキサ−6−メチル−1−オクテン(MOVE2a)の間の非晶質コポリマー
先の実施例7で記載したのと同一の重合反応器中、CFCl2−CF2Cl中3重量%のペルフルオロプロピオニルペルオキシド200μl、H−MOVE2/H−MOVE2aの88/12の混合物の3.1gを導入した。
実施例7に既に記載した方法に従った。
【0127】
回収された未処理の反応材料は、わずかに粘性で、無色透明で、均一溶液に見えた。
未反応モノマーの蒸留次いで真空下に150℃で3時間除去した後、120mgのポリマーを分離した。
得られたポリマーのIR分析によれば、スペクトル中、フッ素化された二重結合の領域に吸収帯が欠落している。
19F−NMR分析は、モノマーH−MOVE2の含有量とH−MOVE2aが等しく、H−MOVE2aの割合が反応混合物におけるものと同じであるコポリマー構造と一致している。分析により、未反応モノマーの存在は示されなかった。
DSCグラフにより、溶融吸熱曲線は全く示されず、従ってポリマーは非晶質である。ポリマーTgは、DSCで測定して、−58.0℃であった。熱重量分析(TGA)によれば、307℃で10%の重量損失が示された。
【0128】
実施例15
H−MOVE2/H−MOVE2a/TFEターポリマー
先の実施例9で記載したのと同様な重合反応器中、CFCl2CF2Cl中6重量%のペルフルオロプロピオニルペルオキシド100μl、H−MOVE2(88%)とH−MOVE2a(12%)の混合物を5ミルモル、およびテトラフルオロエチレンを18ミリモルを導入した。
実施例9に記載した方法に従った。
脱気の終点において、反応器を磁気攪拌下に30℃の温度にサーモスタットで調温した。約6時間(反応時間)、初期圧力は、6.8atm〜6.5atmに低下した。
未反応モノマーの蒸留および150℃で3時間の真空下でのポリマー除去の後、300mgのポリマーを分離した。
【0129】
66中に加熱して溶解させたポリマーの19F−NMR分析により、ポリマー中に含まれるペルフルオロビニルエーテル(H−MOVE2+H−MOVE2a)のモル割合は33%であった。ポリマー中のH−MOVE2/H−MOVE2aモル比は、供給混合物のものと等しかった。未反応モノマーの存在は明白でなかった。
IR分析により、ポリマーのスペクトル中、フッ素化された二重結合の領域中に吸収帯が示されなかった。
DSCグラフにより、溶融吸熱曲線は全く示されず、従ってポリマーは非晶質である。DSCで測定したTgは、−44.5℃であった。
TGAにより、450℃で10%の重量損失が示された。
【0130】
実施例1(比較例)
PVE/TFEコポリマー
先の実施例9で記載したのと同一の重合反応器中、CFCl2CF2Cl中3重量%のペルフルオロプロピオニルペルオキシド250μl、PVEを9.8ミルモルおよびテトラフルオロエチレンを18ミリモルを連続的に導入した。
先の実施例9に既に記載した方法に、攪拌下に30℃でサーモスタットで調温するまで従った。反応時間は8時間であった。
未反応モノマーの蒸留および150℃で3時間の真空下での除去の後、540mgのポリマーを分離した。
【0131】
66中に溶解させたポリマーに行った19F−NMR分析により、ポリマー中に含まれるPVEのモル割合は23%と計算された。
IR分析により、ポリマーのスペクトル中、カルボキシル領域中に吸収帯があり、その強度は実施例9により製造され、同じ厚さを有するMOVE1/TFEコポリマーフィルムから得られたものより10倍高かった。
DSCグラフにより、溶融吸熱曲線は全く示されず、従ってポリマーは非晶質である。TGAにより、427℃で2%、463℃で10%の重量損失が示された。DSCで測定されたTgは、+15℃であった。
フルオリネルト(登録商標)FC−75で30℃で測定したポリマー固有粘度は、51mL/gであった。
【0132】
実施例2(比較例)
β−PDE(CF 3 OCF 2 CF 2 OCF=CF 2 )/TFEの間のコポリマー
先の実施例9で記載したのと同一の重合反応器中、CFCl2−CF2Cl中3重量%のペルフルオロプロピオニルペルオキシド250μl、β−PDEを10ミルモルおよびテトラフルオロエチレンを18ミリモルを連続的に導入した。
先の実施例9に既に記載した方法に、攪拌下に30℃でサーモスタットで調温する工程まで従った。
【0133】
先の実施例で記載された方法によりモノマーから精製されたポリマーについて行った19F−NMR分析により、ポリマー中に含まれるβ−PDEのモル割合は23%と計算された。
DSCグラフにより、溶融吸熱曲線は全く示されず、従ってポリマーは非晶質である。DSCで測定したTgは、−4.8℃であった。
このTg値は本発明のビニルエーテルで得られるものより明らかに高い(先を参照)。

Claims (7)

  1. ポリマー鎖が、式:
    CFX=CXOCF2OR (I)
    [式中、RはC2〜C6直鎖状もしくは分岐状あるいはC5〜C6環状(ペル)フルオロアルキル基、または1〜3の酸素原子を含むC2〜C6直鎖状もしくは分岐状(ペル)フルオロオキシアルキル基であり;Rが上で定義したフルオロアルキルまたはフルオロオキシアルキル基であるとき、これらの基はH、Cl、BrおよびIから選択される同一または異なる1〜2の原子を含むことができる;X=F、H]
    のフルオロビニルエーテルの少なくとも1つに由来するポリマー鎖中の繰り返し単位、およびビニリデンフルオライドに由来する繰り返し単位を含むフルオロエラストマー。
  2. ポリマー鎖が、式:
    CFX=CXOCF2OCF2CF2Y (II)
    [式中、Y=F、OCF3;Xは上記のとおり]
    のフルオロビニルエーテルに由来する繰り返し単位、ならびにテトラフルオロエチレンおよびビニリデンフルオライドから選択されるフッ素化化合物に由来する繰り返し単位を含む、請求項1に記載のフルオロエラストマー。
  3. ポリマー鎖が、式:
    CF2=CFOCF2OCF2CF2Y (III)
    [式中、Yは上記のとおりである]
    のフルオロビニルエーテルに由来する、請求項1または2に記載のフルオロエラストマー。
  4. ポリマー鎖が、式:
    CF2=CFOCF2OCF2CF3 (IV)
    のフルオロビニルエーテルに由来する、請求項1〜3のいずれか1つに記載のフルオロエラストマー。
  5. 結晶領域の消失を引き起こすような量のフルオロビニルエーテルを用いて、コモノマーと共に、請求項1〜4のいずれか1つに記載したフルオロビニルエーテルを重合することにより得られうる請求項1〜4のいずれか1つに記載のフルオロエラストマー。
  6. フルオロビニルエーテルの量が10モル%より高い請求項5に記載のフルオロエラストマー。
  7. 以下の基本モノマー組成(モル%):
    VDF 45〜85
    ヘキサフルオロプロペン(HFP)および/またはPAVE 0〜45
    TFE 0〜30
    MOVE 1〜45
    O1 0〜40
    HFP+PAVE+MOVEの合計は最大45モル
    有する請求項1〜6のいずれか1つに記載のフルオロエラストマー。
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