上述の空気調和装置では、低圧から中間圧になるまで冷媒を加圧する低段側圧縮機と、中間圧から高圧になるまで冷媒を加圧する高段側圧縮機と、が冷媒の流通に沿うように直列に接続されている。ここで、このように、低段側圧縮機と高段側圧縮機とが直列に接続された圧縮部を、冷媒の流通に対して並列となるように複数台配置することも可能である。この場合、複数台の圧縮部の起動時は、タイミングをずらすことが可能になる。
ところが、後発的に起動する後発起動圧縮機の吸入部分や吐出部分は、既に起動している他の圧縮部により圧縮された冷媒による加圧もしくは吸入されるために冷媒が減圧されることによる影響を受けてしまう。このため、後発起動圧縮機中の冷凍機油が流出していってしまい、冷凍機油不足の状態になるおそれがある。
本発明の課題は、低段側圧縮機と直列に接続された後段側圧縮機との圧縮機の組が、冷媒の流れに対して並列に配置された冷凍装置において、既に起動している圧縮機が存在している状態で停止中の圧縮機が存在する場合であっても、停止中の圧縮機からの冷凍機油の流出を抑えることが可能な冷凍装置を提供することにある。
第1の発明にかかる冷凍装置は、超臨界状態の過程を含んで作動する冷媒を用いた冷凍装置であって、圧縮機構と、熱源側熱交換器と、膨張機構と、利用側熱交換器と、合流回路と、分岐回路と、遮断弁とを備えている。圧縮機構は、冷媒の圧力を高める第1低圧圧縮要素と第1低圧圧縮要素よりもさらに冷媒の圧力を高める第1高圧圧縮要素と冷凍機油とを有する第1圧縮部と、冷媒の圧力を高める第2低圧圧縮要素と第2低圧圧縮要素よりもさらに冷媒の圧力を高める第2高圧圧縮要素と冷凍機油とを有する第2圧縮部とを含んでいる。熱源側熱交換器は、冷媒の冷却器又は加熱器として機能する。膨張機構は、冷媒を減圧する。利用側熱交換器は、冷媒の加熱器又は冷却器として機能する。合流回路は、第1低圧圧縮要素から吐出された冷媒と第2低圧圧縮要素から吐出された冷媒とを合流点で合流させる。分岐回路は、合流点を通過した冷媒を分岐点で分岐させて第1高圧圧縮要素と第2高圧圧縮要素とにそれぞれ導く。遮断弁は、第1圧縮部内から前記第1圧縮部外に流れる冷媒流れを遮断することができる。そして、第2低圧圧縮要素の吸入側と第1圧縮部の第1低圧圧縮要素の吸入側とが繋がっている。第2高圧圧縮要素の吐出側と第1圧縮部の第1高圧圧縮要素の吐出側とが合流している。遮断弁は、分岐点から第2高圧圧縮要素までの間の冷媒流れを遮断する中間遮断弁を有している。ここで、「圧縮機構」とは、複数の圧縮要素が一体に組み込まれた圧縮機や、単一の圧縮要素が組み込まれた圧縮機及び/又は複数の圧縮要素が組み込まれた圧縮機を複数台接続したものを含む構成を意味している。
この冷凍装置では、第1低圧圧縮要素の吐出側と、第2低圧圧縮要素の吐出側と、第1高圧圧縮要素の吸入側と、第2高圧圧縮要素の吸入側と、が合流回路および分岐回路を介して冷媒の流通が可能となるように接続されている。ここで、例えば、第1圧縮部が駆動しており、第2圧縮部が停止している状態では、第2圧縮部の第2低圧圧縮要素の吐出側と第2高圧圧縮要素の吸入側に対しては、第1圧縮部の第1低圧圧縮要素や第1高圧圧縮要素が駆動していることによる圧力が作用している。このため、停止している第2圧縮部が有している冷凍機油が、第1圧縮部の第1低圧圧縮要素や第1高圧圧縮要素が駆動していることによる圧力によって第2圧縮部外に押し出されたり第2圧縮部外に引き抜かれたりするおそれがある。
これに対して、この冷凍装置では、第1圧縮部内から前記第1圧縮部外に流れる冷媒流れを遮断する遮断弁を備えている。このため、第1圧縮部が駆動しており第2圧縮部が停止している状態から第2圧縮部が停止している状態であっても、第2圧縮部内から第2圧縮部外に向けて流れ出る冷媒流れを遮断することができる。これにより、第2圧縮部内から第2圧縮部外に向けて流れ出る冷媒とともに、第2圧縮部の冷凍機油が流出してしまうことを抑えることができ、第1圧縮部が駆動中で第2圧縮機が停止中であっても、第2圧縮部の冷凍機油の流出を抑えて、第2圧縮部の冷凍機油不足を抑えることができる。
また、この冷凍装置では、中間遮断弁を備えている。この中間遮断弁は、分岐点から第2高圧圧縮要素までの間の冷媒流れを遮断することができる。このため、第1低圧圧縮要素から吐出された冷媒は、合流点および分岐点を経て、中間遮断弁手前まで流れていく。しかし、この流れは、中間遮断弁によって遮断されるため、停止中の第2高圧圧縮要素の吸入側に流れ込み、第2圧縮部外(例えば、第2高圧圧縮要素の吐出側等)に向けて冷媒が流れる状態を回避することができる。
これにより、第2高圧圧縮要素が起動している場合には中間遮断弁を開けることで吸入側から冷媒を吸い込む冷媒の流れを許容しつつ、第2高圧圧縮要素が停止している際に第2高圧圧縮要素の吐出側から冷媒とともに冷凍機油が流出することを防ぐことができる。
第2の発明にかかる冷凍装置は、第1の発明にかかる冷凍装置において、遮断弁は、第2低圧圧縮要素の吐出側の冷媒流れを遮断する第1遮断弁、第2低圧圧縮要素の吸入側の冷媒流れを遮断する第2遮断弁、第2高圧圧縮要素の吐出側の冷媒流れを遮断する第3遮断弁および第2高圧圧縮要素の吸入側の冷媒流れを遮断する第4遮断弁の少なくともいずれか1つを有している。
この冷凍装置では、第1遮断弁、第2遮断弁、第3遮断弁および第4遮断弁の少なくともいずれか1つを有している。このため、第2低圧圧縮要素の吐出側の冷媒流れを遮断するか、第2低圧圧縮要素の吸入側の冷媒流れを遮断するか、第2高圧圧縮要素の吐出側の冷媒流れを遮断するか、第2高圧圧縮要素の吸入側の冷媒流れを遮断するというなかの少なくともいずれかの効果が得られる。
なお、これらの組み合わせにより、冷凍機油の第2圧縮部からの流出をより効果的に抑えることも可能になる。
第3の発明にかかる冷凍装置は、第1の発明もしくは第2の発明にかかる冷凍装置において、遮断弁は、第2低圧圧縮要素の吐出側から合流点に向かう冷媒流れのみを許容する第1逆止弁を有している。
この冷凍装置では、逆止弁を備えている。この逆止弁は、第2低圧圧縮要素から吐出された冷媒が合流点に向かう方向の流れのみを許容しているため、合流点から第2低圧圧縮要素側に向けて流れる冷媒流れを遮断させることができる。このため、第1低圧圧縮要素から吐出された冷媒が停止中の第2低圧圧縮要素の吐出側に流れ込み、第2圧縮部外(例えば、第2低圧圧縮要素の吸入側等)に向けて冷媒が流れる状態を回避することができる。
これにより、第2低圧圧縮要素が起動している場合の吐出側から合流点に向かう冷媒の流れを許容しつつ、第2低圧圧縮要素が停止している際に第2低圧圧縮要素の吸入側から冷媒とともに冷凍機油が流出することを防ぐことができる。
第4の発明にかかる冷凍装置は、第1の発明にかかる冷凍装置において、中間遮断弁を閉じたまま第2圧縮部を起動させることなく第1圧縮部を起動させる状態から、中間遮断弁を開いたまま第1圧縮部および第2圧縮部を起動させる状態へと移行させる開閉起動制御部をさらに備えている。
この冷凍装置では、開閉起動制御部が、中間遮断弁を閉じたまま第2圧縮部を起動させることなく第1圧縮部を起動させる状態から、第1圧縮部および第2圧縮部を起動させる状態へと移行させる際に、中間遮断弁を開いたままに制御することができる。これにより、停止中の第2高圧圧縮要素の吸入側に冷媒が流れ込んで吐出側から流れ出ることで冷凍機油が持ち出されていくことを防ぐことができるようになる。
制御により、第2圧縮部の停止状態においては第2圧縮部からの冷凍機油の流出を防ぎつつ、第1圧縮部および第2圧縮部の両方が起動させて中間圧を共通化させることができるようになる。
第5の発明にかかる冷凍装置は、第1の発明から第3の発明のいずれかにかかる冷凍装置において、第2圧縮部を起動させることなく第1圧縮部を起動させる状態から、第1圧縮部および第2圧縮部を起動させる状態へと移行させる起動制御部をさらに備えている。
この冷凍装置では、起動制御部が、第2圧縮部を起動させることなく第1圧縮部を起動させる状態から、第1圧縮部および第2圧縮部を起動させる状態へと移行させる。これにより、制御により、第2圧縮部を起動させることなく第1圧縮部を起動させる状態から、第1圧縮部および第2圧縮部を起動させる状態へと移行させることが可能になる。
なお、第1圧縮部だけでなく第2圧縮部をも起動させることで、能力制御を行うことも可能になる。
第6の発明にかかる冷凍装置は、第1の発明から第5の発明のいずれかにかかる冷凍装置において、第1高圧圧縮要素、第1低圧圧縮要素、第2高圧圧縮要素および第2低圧圧縮要素は、それぞれ回転駆動することで圧縮仕事を行うための回転軸を有している。第1高圧圧縮要素の回転軸と第1低圧圧縮要素の回転軸とが共通であるか、第2高圧圧縮要素の回転軸と第2低圧圧縮要素の回転軸とが共通であるか、の少なくともいずれか一方である。
この冷凍装置では、第1高圧圧縮要素の回転軸と第1低圧圧縮要素の回転軸とが共通であるか、第2高圧圧縮要素の回転軸と第2低圧圧縮要素の回転軸とが共通であるか、の少なくともいずれか一方の形態が採用されている。このため、1つの駆動力によって第1高圧圧縮要素の回転軸と第1低圧圧縮要素の回転軸との両方を駆動させることが可能になるか、1つの駆動力によって第2高圧圧縮要素の回転軸と第2低圧圧縮要素の回転軸との両方を駆動させることが可能になるか、の少なくともいずれか一方の効果が得られる。
第7の発明にかかる冷凍装置は、第1の発明から第6の発明のいずれかにかかる冷凍装置において、熱源側熱交換器又は利用側熱交換器から膨張機構に送られる冷媒を分岐させて、分岐点と合流点との間、もしくは、分岐点と第1高圧圧縮要素との間および分岐点と第2高圧圧縮要素との間に導くためのインジェクション管をさらに備えている。
この冷凍装置では、インジェクション管から第1高圧圧縮要素および/または第2高圧圧縮要素に冷媒が導かれることで、外部に熱を捨てることなく閉じた冷凍サイクル内での熱の受け渡しを行うことができる。このため、第1高圧圧縮要素および/または第2高圧圧縮要素に吸入される冷媒を冷却させることができ、圧縮機構から吐出される冷媒の温度をより確実に低く抑えることが可能になる。
第8の発明にかかる冷凍装置は、第7の発明にかかる冷凍装置において、熱源側熱交換器又は利用側熱交換器から膨張機構に送られる冷媒とインジェクション管を流れる冷媒との熱交換を行うエコノマイザ熱交換器をさらに備えている。
この冷凍装置では、エコノマイザ熱交換器は、インジェクション管を流れる冷媒によって熱源側熱交換器又は利用側熱交換器から膨張機構に送られる冷媒を冷却することができる。さらに、エコノマイザ熱交換器は、インジェクション管を流れる冷媒を加熱することができる。このため、冷凍装置の運転効率をさらに向上させることができる。
なお、冷却運転時においては、利用側熱交換器における冷媒の単位流量当たりの冷却能力を高くすることができ、また、加熱運転時においては、後段側の圧縮要素から吐出される冷媒の流量を増加させることができる。
第9の発明にかかる冷凍装置は、第8の発明にかかる冷凍装置において、エコノマイザ熱交換器は、熱源側熱交換器又は利用側熱交換器から膨張機構に送られる冷媒とインジェクション管を流れる冷媒とが対向するように流れる流路を有する熱交換器である。
この冷凍装置では、エコノマイザ熱交換器における熱源側熱交換器又は利用側熱交換器から膨張機構に送られる冷媒とインジェクション管を流れる冷媒との温度差を小さくすることができる。このため、エコノマイザ熱交換器における熱交換効率を向上させることができる。
第10の発明にかかる冷凍装置は、第8の発明または第9の発明にかかる冷凍装置において、インジェクション管は、熱源側熱交換器又は利用側熱交換器から膨張機構に送られる冷媒がエコノマイザ熱交換器において熱交換される前に熱源側熱交換器又は利用側熱交換器から膨張機構に送られる冷媒を分岐するように設けられている。
この冷凍装置では、熱源側熱交換器又は利用側熱交換器から膨張機構に送られる冷媒の流量を少なくすることができる。これにより、エコノマイザ熱交換器における、熱源側熱交換器又は利用側熱交換器から膨張機構に送られる冷媒と、インジェクション管を流れる冷媒と、の間の熱交換量を小さくすることができる。これにより、エコノマイザ熱交換器のサイズを小さくすることができる。
第11の発明にかかる冷凍装置は、第9の発明または第10の発明にかかる冷凍装置において、通過する冷媒の冷却を行い、分岐点と合流点との間に配置された中間冷却器をさらに備えている。そして、インジェクション管は、熱源側熱交換器又は利用側熱交換器から膨張機構に送られる冷媒を分岐させて、中間冷却器と合流点との間、もしくは、中間冷却器と第1高圧圧縮要素との間および中間冷却器と第2高圧圧縮要素との間に導くように設けられている。
この冷凍装置では、第1圧縮部では、第1低圧圧縮要素から吐出された冷媒は、第1高圧圧縮要素にいたる前に、中間冷却器を通過する。そして、第1低圧圧縮要素から吐出された冷媒は、中間冷却器を通過する際に冷やされる。このため、第1高圧圧縮要素に吸入される冷媒の温度が低くなる。したがって、このような中間冷却器を設けない場合に比べて、最終的に圧縮機構から吐出される冷媒の温度を低く抑えることができる。これにより、冷媒の温度が低下することで冷媒密度が向上しているため、第1圧縮部の運転効率を向上させることができる。
同様に、第2圧縮部でも、第2低圧圧縮要素から吐出された冷媒は、第2高圧圧縮要素にいたる前に、中間冷却器を通過する。そして、第2低圧圧縮要素から吐出された冷媒は、中間冷却器を通過する際に冷やされる。このため、第2高圧圧縮要素に吸入される冷媒の温度が低くなる。したがって、このような中間冷却器を設けない場合に比べて、最終的に圧縮機構から吐出される冷媒の温度を低く抑えることができる。これにより、冷媒の温度が低下することで冷媒密度が向上しているため、第2圧縮部の運転効率を向上させることができる。
そして、ここでは、中間冷却器は、第1圧縮部の第1低圧圧縮要素から第1高圧圧縮要素に至る一部を冷却するだけでなく、第2圧縮部の第2低圧圧縮要素から第2高圧圧縮要素に至る一部をも冷却させることができる。このため、第1圧縮部および第2圧縮部の各圧縮部毎にそれぞれ中間冷却器を別個に備えさせる場合と比較して、省スペース化を図ることができている。
これにより、超臨界状態の過程を含んで作動する冷媒を使用した冷凍装置において、装置の大型化を抑えつつ、多段圧縮式の圧縮要素による冷媒循環量の調整自由度を増大させ、運転効率を向上させることが可能になる。
なお、冷却運転時においては、圧縮機構から吐出される冷媒の温度は、中間冷却器の冷却効果により低く抑えられる。これにより、冷媒の冷却器として機能する熱源側熱交換器における放熱ロスが小さくなり、運転効率を向上させることができる。
さらに、この冷凍装置では、熱源側熱交換器又は利用側熱交換器から膨張機構に送られる冷媒を分岐させ、インジェクション管を通じて、中間冷却器と合流点との間、もしくは、中間冷却器と第1高圧圧縮要素との間および中間冷却器と第2高圧圧縮要素との間に導くことができる。これにより、中間冷却器によって冷媒を冷却できるだけでなく、インジェクション管を通じて冷媒が中間冷却器と合流点との間、もしくは、中間冷却器と第1高圧圧縮要素との間および中間冷却器と第2高圧圧縮要素との間に導かれることで冷媒の冷却を行うことも可能になる。このため、冷媒を段階的に冷却する場合の効率を向上させることができる。
第12の発明にかかる冷凍装置は、超臨界状態の過程を含んで作動する冷媒を用いた冷凍装置であって、圧縮機構と、熱源側熱交換器と、膨張機構と、利用側熱交換器と、合流回路と、分岐回路と、遮断弁と、中間冷却器とを備えている。圧縮機構は、冷媒の圧力を高める第1低圧圧縮要素と第1低圧圧縮要素よりもさらに冷媒の圧力を高める第1高圧圧縮要素と冷凍機油とを有する第1圧縮部と、冷媒の圧力を高める第2低圧圧縮要素と第2低圧圧縮要素よりもさらに冷媒の圧力を高める第2高圧圧縮要素と冷凍機油とを有する第2圧縮部とを含んでいる。熱源側熱交換器は、冷媒の冷却器又は加熱器として機能する。膨張機構は、冷媒を減圧する。利用側熱交換器は、冷媒の加熱器又は冷却器として機能する。合流回路は、第1低圧圧縮要素から吐出された冷媒と第2低圧圧縮要素から吐出された冷媒とを合流点で合流させる。分岐回路は、合流点を通過した冷媒を分岐点で分岐させて第1高圧圧縮要素と第2高圧圧縮要素とにそれぞれ導く。遮断弁は、第1圧縮部内から前記第1圧縮部外に流れる冷媒流れを遮断することができる。そして、第2低圧圧縮要素の吸入側と第1圧縮部の第1低圧圧縮要素の吸入側とが繋がっている。第2高圧圧縮要素の吐出側と第1圧縮部の第1高圧圧縮要素の吐出側とが合流している。遮断弁は、分岐点から第2高圧圧縮要素までの間の冷媒流れを遮断する中間遮断弁を有している。中間冷却器は、通過する冷媒の冷却を行い、分岐点と合流点との間に配置されている。中間冷却器は、第1圧縮部と第2圧縮部とを有する圧縮機構に対して1つだけ設けられている。ここで、「圧縮機構」とは、複数の圧縮要素が一体に組み込まれた圧縮機や、単一の圧縮要素が組み込まれた圧縮機及び/又は複数の圧縮要素が組み込まれた圧縮機を複数台接続したものを含む構成を意味している。
この冷凍装置では、第1低圧圧縮要素の吐出側と、第2低圧圧縮要素の吐出側と、第1高圧圧縮要素の吸入側と、第2高圧圧縮要素の吸入側と、が合流回路および分岐回路を介して冷媒の流通が可能となるように接続されている。ここで、例えば、第1圧縮部が駆動しており、第2圧縮部が停止している状態では、第2圧縮部の第2低圧圧縮要素の吐出側と第2高圧圧縮要素の吸入側に対しては、第1圧縮部の第1低圧圧縮要素や第1高圧圧縮要素が駆動していることによる圧力が作用している。このため、停止している第2圧縮部が有している冷凍機油が、第1圧縮部の第1低圧圧縮要素や第1高圧圧縮要素が駆動していることによる圧力によって第2圧縮部外に押し出されたり第2圧縮部外に引き抜かれたりするおそれがある。
これに対して、この冷凍装置では、第1圧縮部内から前記第1圧縮部外に流れる冷媒流れを遮断する遮断弁を備えている。このため、第1圧縮部が駆動しており第2圧縮部が停止している状態から第2圧縮部が停止している状態であっても、第2圧縮部内から第2圧縮部外に向けて流れ出る冷媒流れを遮断することができる。これにより、第2圧縮部内から第2圧縮部外に向けて流れ出る冷媒とともに、第2圧縮部の冷凍機油が流出してしまうことを抑えることができ、第1圧縮部が駆動中で第2圧縮機が停止中であっても、第2圧縮部の冷凍機油の流出を抑えて、第2圧縮部の冷凍機油不足を抑えることができる。
また、この冷凍装置では、第1圧縮部では、第1低圧圧縮要素から吐出された冷媒は、第1高圧圧縮要素にいたる前に、中間冷却器を通過する。そして、第1低圧圧縮要素から吐出された冷媒は、中間冷却器を通過する際に冷やされる。このため、第1高圧圧縮要素に吸入される冷媒の温度が低くなる。したがって、このような中間冷却器を設けない場合に比べて、最終的に圧縮機構から吐出される冷媒の温度を低く抑えることができる。これにより、冷媒の温度が低下することで冷媒密度が向上しているため、第1圧縮部の運転効率を向上させることができる。
同様に、第2圧縮部でも、第2低圧圧縮要素から吐出された冷媒は、第2高圧圧縮要素にいたる前に、中間冷却器を通過する。そして、第2低圧圧縮要素から吐出された冷媒は、中間冷却器を通過する際に冷やされる。このため、第2高圧圧縮要素に吸入される冷媒の温度が低くなる。したがって、このような中間冷却器を設けない場合に比べて、最終的に圧縮機構から吐出される冷媒の温度を低く抑えることができる。これにより、冷媒の温度が低下することで冷媒密度が向上しているため、第2圧縮部の運転効率を向上させることができる。
そして、ここでは、中間冷却器は、第1圧縮部の第1低圧圧縮要素から第1高圧圧縮要素に至る一部を冷却するだけでなく、第2圧縮部の第2低圧圧縮要素から第2高圧圧縮要素に至る一部をも冷却させることができる。このため、第1圧縮部および第2圧縮部の各圧縮部毎にそれぞれ中間冷却器を別個に備えさせる場合と比較して、省スペース化を図ることができている。
これにより、超臨界状態の過程を含んで作動する冷媒を使用した冷凍装置において、装置の大型化を抑えつつ、多段圧縮式の圧縮要素による冷媒循環量の調整自由度を増大させ、運転効率を向上させることが可能になる。
なお、冷却運転時においては、圧縮機構から吐出される冷媒の温度は、中間冷却器の冷却効果により低く抑えられる。これにより、冷媒の冷却器として機能する熱源側熱交換器における放熱ロスが小さくなり、運転効率を向上させることができる。
なお、この第13の発明が第8の発明に適用された場合には、冷却運転時においては、圧縮機構から吐出される冷媒の温度は、中間冷却器による冷却効果にさらにインジェクション管により第1高圧圧縮要素および/または第2高圧圧縮要素に導かれる冷媒によってよりいっそう低く抑えられる。これにより、冷媒の冷却器として機能する熱源側熱交換器における放熱ロスがさらに小さくなり、運転効率をさらに向上させることができる。また、加熱運転時においては、圧縮機構から吐出される冷媒の温度が低くなることから、利用側熱交換器における冷媒の単位流量当たりの加熱能力は小さくなるが、後段側の圧縮要素から吐出される冷媒の流量が増加するため、利用側熱交換器における加熱能力が確保されて、運転効率を向上させることができる。
また、この冷凍装置では、中間冷却器が1つだけであるため、多数設けられる場合よりもコストを抑えることが可能になる。
第13の発明にかかる冷凍装置は、第12の発明にかかる冷凍装置において、切換機構と、中間冷却機能切換手段とを備えている。切換機構は、圧縮機構、熱源側熱交換器、膨張機構、利用側熱交換器の順に冷媒を循環させる冷却運転状態と、圧縮機構、利用側熱交換器、膨張機構、熱源側熱交換器の順に冷媒を循環させる加熱運転状態とを切り換える。中間冷却機能切換手段は、切換機構を冷却運転状態にしている際に中間冷却器を冷却器として機能させ、切換機構を加熱運転状態にしている際に中間冷却器を冷却器として機能させないようにする。ここで、「冷却器として機能させないようにする」とは、冷却器としての機能が全く発揮されない状態にする場合だけでなく、いくらかは冷却器としての機能は発揮される場合であっても、中間冷却器への冷却源の供給が停止されている場合等のように、中間冷却器が正常な状態で使用されておらず、実質的に冷却器として機能していないとみなされる状態も含まれる。
冷凍装置において、仮に、中間冷却器だけを設けた場合には、高圧側の圧縮要素に吸入される冷媒の温度が低くなるため、中間冷却器を設けない場合に比べて、最終的に圧縮機構から吐出される冷媒の温度を低く抑えることができる。これにより、冷却運転時において、冷媒の冷却器として機能する熱源側熱交換器における放熱ロスが小さくなるため、運転効率を向上させることができる。しかし、加熱運転時においては、中間冷却器を設けない場合であれば、利用側熱交換器において利用できるはずの熱を、中間冷却器から外部に放熱してしまうことになる。これにより、利用側熱交換器における加熱能力が低くなるため、運転効率が低下してしまうことになる。
そこで、この冷凍装置では、中間冷却器だけでなく中間冷却機能切換手段を設けて、この中間冷却機能切換手段を用いて、切換機構を冷却運転状態にしている際に中間冷却器を冷却器として機能させ、切換機構を加熱運転状態にしている際に中間冷却器を冷却器として機能させないようにしている。このため、この冷凍装置では、冷却運転時においては、圧縮機構から吐出される冷媒の温度を低く抑えることができ、加熱運転時においては、外部への放熱を抑えて、圧縮機構から吐出される冷媒の温度の低下を抑えることができる。
これにより、この冷凍装置では、冷却運転時においては、冷媒の冷却器として機能する熱源側熱交換器における放熱ロスを小さくして、運転効率を向上させることができる。また、加熱運転時には、加熱能力の低下を抑えて、運転効率の低下を防ぐことができる。
第14の発明にかかる冷凍装置は、第1の発明から第13の発明のいずれかにかかる冷凍装置において、超臨界状態の過程を含んで作動する冷媒は、二酸化炭素である。
以上の説明に述べたように、本発明によれば、以下の効果が得られる。
第1または第14の発明では、第2圧縮部内から第2圧縮部外に向けて流れ出る冷媒とともに、第2圧縮部の冷凍機油が流出してしまうことを抑えることができ、第1圧縮部が駆動中で第2圧縮機が停止中であっても、第2圧縮部の冷凍機油の流出を抑えて、第2圧縮部の冷凍機油不足を抑えることができる。また、第2高圧圧縮要素が起動している場合には中間遮断弁を開けることで吸入側から冷媒を吸い込む冷媒の流れを許容しつつ、第2高圧圧縮要素が停止している際に第2高圧圧縮要素の吐出側から冷媒とともに冷凍機油が流出することを防ぐことができる。
第2の発明では、第2低圧圧縮要素の吐出側の冷媒流れを遮断するか、第2低圧圧縮要素の吸入側の冷媒流れを遮断するか、第2高圧圧縮要素の吐出側の冷媒流れを遮断するか、第2高圧圧縮要素の吸入側の冷媒流れを遮断するというなかの少なくともいずれかの効果が得られる。
第3の発明では、第2低圧圧縮要素が起動している場合の吐出側から合流点に向かう冷媒の流れを許容しつつ、第2低圧圧縮要素が停止している際に第2低圧圧縮要素の吸入側から冷媒とともに冷凍機油が流出することを防ぐことができる。
第4の発明では、停止中の第2高圧圧縮要素の吸入側に冷媒が流れ込んで吐出側から流れ出ることで冷凍機油が持ち出されていくことを防ぐことができるようになる。
第5の発明では、制御により、第2圧縮部を起動させることなく第1圧縮部を起動させる状態から、第1圧縮部および第2圧縮部を起動させる状態へと移行させることが可能になる。
第6の発明では、1つの駆動力によって第1高圧圧縮要素の回転軸と第1低圧圧縮要素の回転軸との両方を駆動させることが可能になるか、1つの駆動力によって第2高圧圧縮要素の回転軸と第2低圧圧縮要素の回転軸との両方を駆動させることが可能になるか、の少なくともいずれか一方の効果が得られる。
第7の発明では、第1高圧圧縮要素および/または第2高圧圧縮要素に吸入される冷媒を冷却させることができ、圧縮機構から吐出される冷媒の温度をより確実に低く抑えることが可能になる。
第8の発明では、冷凍装置の運転効率をさらに向上させることができる。
第9の発明では、エコノマイザ熱交換器における熱交換効率を向上させることができる。
第10の発明では、エコノマイザ熱交換器のサイズを小さくすることができる。
第11の発明では、冷媒を段階的に冷却する場合の効率を向上させることができる。
第12の発明では、第2圧縮部内から第2圧縮部外に向けて流れ出る冷媒とともに、第2圧縮部の冷凍機油が流出してしまうことを抑えることができ、第1圧縮部が駆動中で第2圧縮機が停止中であっても、第2圧縮部の冷凍機油の流出を抑えて、第2圧縮部の冷凍機油不足を抑えることができる。また、冷媒の冷却器として機能する熱源側熱交換器における放熱ロスが小さくなり、運転効率を向上させることができる。また、多数設けられる場合よりもコストを抑えることが可能になる。
第13の発明では、冷却運転時においては、冷媒の冷却器として機能する熱源側熱交換器における放熱ロスを小さくして、運転効率を向上させることができる。また、加熱運転時には、加熱能力の低下を抑えて、運転効率の低下を防ぐことができる。
以下、図面に基づいて、本発明にかかる冷凍装置の実施形態について説明する。
(1)空気調和装置の構成
図1は、本発明にかかる冷凍装置の一実施形態としての空気調和装置1の概略構成図である。空気調和装置1は、冷房運転と暖房運転を切り換え可能に構成された冷媒回路10を有し、超臨界域で作動する冷媒(ここでは、二酸化炭素)を使用して二段圧縮式冷凍サイクルを行う装置である。
空気調和装置1の冷媒回路510は、主として、圧縮機構302と、切換機構3と、熱源側熱交換器4と、ブリッジ回路17と、レシーバ18と、レシーバ入口膨張機構5aと、レシーバ出口膨張機構5bと、後段側インジェクション管19と、エコノマイザ熱交換器20と、利用側熱交換器6と、中間冷却器7とを有している。
<圧縮機構>
圧縮機構302は、多段(ここでは、2段)圧縮式の圧縮機構を複数系統(ここでは、2系統)並列に接続した並列多段圧縮式の圧縮機構であり、本実施形態において、圧縮要素303c、303dを有する二段圧縮式の第1圧縮機構303と、圧縮要素304c、304dを有する二段圧縮式の第2圧縮機構304とから構成されている。
第1圧縮機構303は、本実施形態において、2つの圧縮要素303c、303dで冷媒を二段圧縮する圧縮機36から構成されており、圧縮機構302の吸入母管302aから分岐された第1吸入枝管303a、及び、圧縮機構302の吐出母管302bに合流する第1吐出枝管303bに接続されている。第2圧縮機構304は、本実施形態において、2つの圧縮要素304c、304dで冷媒を二段圧縮する圧縮機37から構成されており、圧縮機構302の吸入母管302aから分岐された第2吸入枝管304a、及び、圧縮機構302の吐出母管302bに合流する第2吐出枝管304bに接続されている。
圧縮機36は、ケーシング36a内に、圧縮機駆動モータ36bと、駆動軸36cと、圧縮要素303c、303dとが収容された密閉式構造となっている。圧縮機駆動モータ36bは、駆動軸36cに連結されている。そして、この駆動軸36cは、2つの圧縮要素303c、303dに連結されている。すなわち、圧縮機36は、2つの圧縮要素303c、303dが単一の駆動軸36cに連結されており、2つの圧縮要素303c、303dがともに圧縮機駆動モータ36bによって回転駆動される、いわゆる一軸二段圧縮構造となっている。そして、圧縮機36は、第1吸入枝管303aから冷媒を吸入し、この吸入された冷媒を圧縮要素303cによって圧縮した後に中間冷媒管8を構成する第1入口側中間枝管81に吐出し、第1入口側中間枝管81に吐出された冷媒を中間冷媒管8を構成する中間母管82及び第1出口側中間枝管83を通じて圧縮要素303dに吸入させて冷媒をさらに圧縮した後に第1吐出枝管303bに吐出するように構成されている。
圧縮機37は、ケーシング37a内に、圧縮機駆動モータ37bと、駆動軸37cと、圧縮要素304c、304dとが収容された密閉式構造となっている。圧縮機駆動モータ37bは、駆動軸37cに連結されている。そして、この駆動軸37cは、2つの圧縮要素304c、304dに連結されている。すなわち、圧縮機37は、2つの圧縮要素304c、304dが単一の駆動軸37cに連結されており、2つの圧縮要素304c、304dがともに圧縮機駆動モータ37bによって回転駆動される、いわゆる一軸二段圧縮構造となっている。そして、圧縮機37は、第1吸入枝管304aから冷媒を吸入し、この吸入された冷媒を圧縮要素304cによって圧縮した後に中間冷媒管8を構成する第2入口側中間枝管84に吐出し、第2入口側中間枝管84に吐出された冷媒を中間冷媒管8を構成する中間母管82及び第2出口側中間枝管85を通じて圧縮要素304dに吸入させて冷媒をさらに圧縮した後に第2吐出枝管304bに吐出するように構成されている。
中間冷媒管8は、本実施形態において、圧縮要素303d、304dの前段側に接続された圧縮要素303c、304cから吐出された冷媒を、圧縮要素303c、304cの後段側に接続された圧縮要素303d、304dに吸入させるための冷媒管であり、主として、第1圧縮機構303の前段側の圧縮要素303cの吐出側に接続される第1入口側中間枝管81と、第2圧縮機構304の前段側の圧縮要素304cの吐出側に接続される第2入口側中間枝管84と、両入口側中間枝管81、84が合流点Xで合流する中間母管82と、中間母管82から分岐点Yで分岐されて第1圧縮機構303の後段側の圧縮要素303dの吸入側に接続される第1出口側中間枝管83と、中間母管82から分岐されて第2圧縮機構304の後段側の圧縮要素304dの吸入側に接続される第2出口側中間枝管85とを有している。
すなわち、中間冷却器7は、合流点Xと分岐点Yとの間に設けられているといえる。
また、吐出母管302bは、圧縮機構302から吐出された冷媒を切換機構3に送るための冷媒管であり、吐出母管302bに接続される第1吐出枝管303bには、第1油分離機構341と第1逆止機構342とが設けられており、吐出母管302bに接続される第2吐出枝管304bには、第2油分離機構343と第2逆止機構344とが設けられている。
第1油分離機構341は、第1圧縮機構303から吐出される冷媒に同伴する冷凍機油を冷媒から分離して圧縮機構302の吸入側へ戻す機構であり、主として、第1圧縮機構303から吐出される冷媒に同伴する冷凍機油を冷媒から分離する第1油分離器341aと、第1油分離器341aに接続されており冷媒から分離された冷凍機油を圧縮機構302の吸入側に戻す第1油戻し管341bとを有している。
第2油分離機構343は、第2圧縮機構304から吐出される冷媒に同伴する冷凍機油を冷媒から分離して圧縮機構302の吸入側へ戻す機構であり、主として、第2圧縮機構304から吐出される冷媒に同伴する冷凍機油を冷媒から分離する第2油分離器343aと、第2油分離器343aに接続されており冷媒から分離された冷凍機油を圧縮機構302の吸入側に戻す第2油戻し管343bとを有している。
本実施形態において、第1油戻し管341bは、第2吸入枝管304aに接続されており、第2油戻し管343cは、第1吸入枝管303aに接続されている。このため、第1圧縮機構303内に溜まった冷凍機油の量と第2圧縮機構304内に溜まった冷凍機油の量との間に偏りに起因して第1圧縮機構303から吐出される冷媒に同伴する冷凍機油の量と第2圧縮機構304から吐出される冷媒に同伴する冷凍機油の量との間に偏りが生じた場合であっても、圧縮機構303、304のうち冷凍機油の量が少ない方に冷凍機油が多く戻ることになり、第1圧縮機構303内に溜まった冷凍機油の量と第2圧縮機構304内に溜まった冷凍機油の量との間の偏りが解消されるようになっている。
また、本実施形態において、第1吸入枝管303aは、第2油戻し管343bとの合流部から吸入母管302aとの合流部までの間の部分が、吸入母管302aとの合流部に向かって下り勾配になるように構成されており、第2吸入枝管304aは、第1油戻し管341bとの合流部から吸入母管302aとの合流部までの間の部分が、吸入母管302aとの合流部に向かって下り勾配になるように構成されている。このため、圧縮機構303、304のいずれか一方が停止中であっても(ここでは、第1圧縮機構303が優先的に運転されるため、第2圧縮機構304が停止中となる)、運転中の第1圧縮機構303に対応する第1油戻し管341bから停止中の第2圧縮機構304に対応する第2吸入枝管304aに戻される冷凍機油は、吸入母管302aに戻ることになり、運転中の第1圧縮機構303の油切れが生じにくくなっている。油戻し管341b、343bには、油戻し管341b、343bを流れる冷凍機油を減圧する減圧機構341c、343cが設けられている。逆止機構342、344は、圧縮機構303、304の吐出側から切換機構3への冷媒の流れを許容し、かつ、切換機構3から圧縮機構303、304の吐出側への冷媒の流れを遮断するための機構である。
このように、圧縮機構302は、本実施形態において、2つの圧縮要素303c、303dを有するとともにこれらの圧縮要素303c、303dのうちの前段側の圧縮要素から吐出された冷媒を後段側の圧縮要素で順次圧縮するように構成された第1圧縮機構303と、2つの圧縮要素304c、304dを有するとともにこれらの圧縮要素304c、304dのうちの前段側の圧縮要素から吐出された冷媒を後段側の圧縮要素で順次圧縮するように構成された第2圧縮機構304とを並列に接続した構成となっている。
<切換機構>
切換機構3は、冷媒回路510内における冷媒の流れの方向を切り換えるための機構であり、冷房運転時には、熱源側熱交換器4を圧縮機構302によって圧縮される冷媒の冷却器として、かつ、利用側熱交換器6を熱源側熱交換器4において冷却された冷媒の加熱器として機能させるために、圧縮機構302の吐出側と熱源側熱交換器4の一端とを接続するとともに圧縮機21の吸入側と利用側熱交換器6とを接続し(図1の切換機構3の実線を参照、以下、この切換機構3の状態を「冷却運転状態」とする)、暖房運転時には、利用側熱交換器6を圧縮機構302によって圧縮される冷媒の冷却器として、かつ、熱源側熱交換器4を利用側熱交換器6において冷却された冷媒の加熱器として機能させるために、圧縮機構302の吐出側と利用側熱交換器6とを接続するとともに圧縮機構302の吸入側と熱源側熱交換器4の一端とを接続することが可能である(図1の切換機構3の破線を参照、以下、この切換機構3の状態を「加熱運転状態」とする)。本実施形態において、切換機構3は、圧縮機構302の吸入側、圧縮機構302の吐出側、熱源側熱交換器4及び利用側熱交換器6に接続された四路切換弁である。尚、切換機構3は、四路切換弁に限定されるものではなく、例えば、複数の電磁弁を組み合わせる等によって、上述と同様の冷媒の流れの方向を切り換える機能を有するように構成したものであってもよい。
このように、切換機構3は、冷媒回路510を構成する圧縮機構302、熱源側熱交換器4、膨張機構5a、5b、及び利用側熱交換器6だけに着目すると、圧縮機構302、熱源側熱交換器4、膨張機構5a、5b、利用側熱交換器6の順に冷媒を循環させる冷却運転状態と、圧縮機構302、利用側熱交換器6、膨張機構5a、5b、熱源側熱交換器4の順に冷媒を循環させる加熱運転状態とを切り換えることができるように構成されている。
<熱源側熱交換器>
熱源側熱交換器4は、冷媒の冷却器又は加熱器として機能する熱交換器である。熱源側熱交換器4は、その一端が切換機構3に接続されており、その他端がブリッジ回路17及びエコノマイザ熱交換器20を介してレシーバ入口膨張機構5aに接続されている。尚、ここでは図示しないが、熱源側熱交換器4には、熱源側熱交換器4を流れる冷媒と熱交換を行う冷却源又は加熱源としての水や空気が供給されるようになっている。
<ブリッジ回路>
ブリッジ回路17は、熱源側熱交換器4と利用側熱交換器6との間に設けられており、レシーバ18の入口に接続されるレシーバ入口管18a、及び、レシーバ18の出口に接続されるレシーバ出口管18bに接続されている。ブリッジ回路17は、本実施形態において、4つの逆止弁17a、17b、17c、17dを有している。そして、入口逆止弁17aは、熱源側熱交換器4からレシーバ入口管18aへの冷媒の流通のみを許容する逆止弁である。入口逆止弁17bは、利用側熱交換器6からレシーバ入口管18aへの冷媒の流通のみを許容する逆止弁である。すなわち、入口逆止弁17a、17bは、熱源側熱交換器4及び利用側熱交換器6の一方からレシーバ入口管18aに冷媒を流通させる機能を有している。出口逆止弁17cは、レシーバ出口管18bから利用側熱交換器6への冷媒の流通のみを許容する逆止弁である。出口逆止弁17dは、レシーバ出口管18bから熱源側熱交換器4への冷媒の流通のみを許容する逆止弁である。すなわち、出口逆止弁17c、17dは、レシーバ出口管18bから熱源側熱交換器4及び利用側熱交換器6の他方に冷媒を流通させる機能を有している。
<膨張機構及びレシーバ>
レシーバ入口膨張機構5aは、レシーバ入口管18aに設けられた冷媒を減圧する機構であり、本実施形態において、電動膨張弁が使用されている。レシーバ入口膨張機構5aは、その一端がエコノマイザ熱交換器20及びブリッジ回路17を介して熱源側熱交換器4に接続され、その他端がレシーバ18に接続されている。また、本実施形態において、レシーバ入口膨張機構5aは、冷房運転時には、熱源側熱交換器4において冷却された高圧の冷媒を利用側熱交換器6に送る前に減圧し、暖房運転時には、利用側熱交換器6において冷却された高圧の冷媒を熱源側熱交換器4に送る前に減圧する。
レシーバ18は、レシーバ入口膨張機構5aで減圧された後の冷媒を一時的に溜めるために設けられた容器であり、その入口がレシーバ入口管18aに接続されており、その出口がレシーバ出口管18bに接続されている。また、レシーバ18には、レシーバ18内から冷媒を抜き出して圧縮機構302の吸入母管302a(すなわち、圧縮機構302の前段側の圧縮要素303c、304cの吸入側)に戻すことが可能な吸入戻し管18cが接続されている。この吸入戻し管18cには、吸入戻し開閉弁18dが設けられている。吸入戻し開閉弁18dは、本実施形態において、電磁弁である。
レシーバ出口膨張機構5bは、レシーバ出口管18bに設けられた冷媒を減圧する機構であり、本実施形態において、電動膨張弁が使用されている。レシーバ出口膨張機構5bは、その一端がレシーバ18に接続され、その他端がブリッジ回路17を介して利用側熱交換器6に接続されている。また、本実施形態において、レシーバ出口膨張機構5bは、冷房運転時には、レシーバ入口膨張機構5aによって減圧された冷媒を利用側熱交換器6に送る前に低圧になるまでさらに減圧し、暖房運転時には、レシーバ入口膨張機構5aによって減圧された冷媒を熱源側熱交換器4に送る前に低圧になるまでさらに減圧する。
<利用側熱交換器>
利用側熱交換器6は、冷媒の加熱器又は冷却器として機能する熱交換器である。利用側熱交換器6は、その一端がブリッジ回路17を介してレシーバ入口膨張機構5aに接続されており、その他端が切換機構3に接続されている。尚、ここでは図示しないが、利用側熱交換器6には、利用側熱交換器6を流れる冷媒と熱交換を行う加熱源又は冷却源としての水や空気が供給されるようになっている。
このように、ブリッジ回路17、レシーバ18、レシーバ入口管18a及びレシーバ出口管18bによって、切換機構3を冷却運転状態にしている際には、熱源側熱交換器4において冷却された高圧の冷媒が、ブリッジ回路17の入口逆止弁17a、レシーバ入口管18aのレシーバ入口膨張機構5a、レシーバ18、レシーバ出口管18bのレシーバ出口膨張機構5b及びブリッジ回路17の出口逆止弁17cを通じて、利用側熱交換器6に送ることができるようになっている。また、切換機構3を加熱運転状態にしている際には、利用側熱交換器6において冷却された高圧の冷媒が、ブリッジ回路17の入口逆止弁17b、レシーバ入口管18aのレシーバ入口膨張機構5a、レシーバ18、レシーバ出口管18bのレシーバ出口膨張機構5b及びブリッジ回路17の出口逆止弁17dを通じて、熱源側熱交換器6に送ることができるようになっている。
<後段側インジェクション管>
後段側インジェクション管19は、熱源側熱交換器4又は利用側熱交換器6において冷却された冷媒を分岐して圧縮機構30の後段側の圧縮要素303d、304dに戻す機能を有している。本実施形態において、後段側インジェクション管19は、レシーバ入口管18aを流れる冷媒を分岐して後段側の圧縮要素303d、304dの吸入側に戻すように設けられている。より具体的には、後段側インジェクション管19は、レシーバ入口管18aのレシーバ入口膨張機構5aの上流側の位置(すなわち、切換機構3を冷却運転状態にしている際には、熱源側熱交換器4とレシーバ入口膨張機構5aとの間、また、切換機構3を加熱運転状態にしている際には、利用側熱交換器6とレシーバ入口膨張機構5aとの間)から冷媒を分岐して中間冷媒管8の中間冷却器7の下流側の位置(すなわち、合流点Xと分岐点Yの間)に戻すように設けられている。この後段側インジェクション管19には、開度制御が可能な後段側インジェクション弁19aが設けられている。後段側インジェクション弁19aは、本実施形態において、電動膨張弁である。
<エコノマイザ熱交換器>
エコノマイザ熱交換器20は、熱源側熱交換器4又は利用側熱交換器6において冷却された冷媒と後段側インジェクション管19を流れる冷媒(より具体的には、後段側インジェクション弁19aにおいて中間圧付近まで減圧された後の冷媒)との熱交換を行う熱交換器である。本実施形態において、エコノマイザ熱交換器20は、レシーバ入口管18aのレシーバ入口膨張機構5aの上流側の位置(すなわち、切換機構3を冷却運転状態にしている際には、熱源側熱交換器4とレシーバ入口膨張機構5aとの間、また、切換機構3を加熱運転状態にしている際には、利用側熱交換器6とレシーバ入口膨張機構5aとの間)を流れる冷媒と後段側インジェクション管19を流れる冷媒との熱交換を行うように設けられており、また、両冷媒が対向するように流れる流路を有している。また、本実施形態において、エコノマイザ熱交換器20は、レシーバ入口管18aの後段側インジェクション管19の上流側に設けられている。このため、熱源側熱交換器4又は利用側熱交換器6において冷却された冷媒は、レシーバ入口管18aにおいて、エコノマイザ熱交換器20において熱交換される前に後段側インジェクション管19に分岐され、その後に、エコノマイザ熱交換器20において、後段側インジェクション管19を流れる冷媒と熱交換を行うことになる。
<中間冷却器>
中間冷却器7は、本実施形態において、中間冷媒管8を構成する中間母管82に設けられており、第1圧縮機構303の前段側の圧縮要素303cから吐出された冷媒と第2圧縮機構304の前段側の圧縮要素304cから吐出された冷媒とが合流したものを冷却する熱交換器である。すなわち、中間冷却器7は、2つの圧縮機構303、304に共通の冷却器として機能するものとなっている。尚、ここでは図示しないが、中間冷却器7には、中間冷却器7を流れる冷媒と熱交換を行う冷却源としての水や空気が供給されるようになっている。このように、中間冷却器7は、冷媒回路510を循環する冷媒を用いたものではないという意味で、外部熱源を用いた冷却器ということができる。
このため、多段圧縮式の圧縮機構303、304を複数系統並列に接続した並列多段圧縮式の圧縮機構302に対して中間冷却器7を設ける際の圧縮機構302周りの回路構成の簡素化が図られている。
また、中間冷媒管8を構成する第1入口側中間枝管81には、第1圧縮機構303の前段側の圧縮要素303cの吐出側から中間母管82側への冷媒の流れを許容し、かつ、中間母管82側から前段側の圧縮要素303cの吐出側への冷媒の流れを遮断するための逆止機構81aが設けられており、中間冷媒管8を構成する第2入口側中間枝管84には、第2圧縮機構303の前段側の圧縮要素304cの吐出側から中間母管82側への冷媒の流れを許容し、かつ、中間母管82側から前段側の圧縮要素304cの吐出側への冷媒の流れを遮断するための逆止機構84aが設けられている。本実施形態においては、逆止機構81a、84aとして逆止弁が使用されている。
また、第2出口側中間枝管85には、開閉弁85aが設けられており、後述のように、第1圧縮機構303が運転中で、かつ、第2圧縮機構304が停止中の場合には、この開閉弁85aによって第2出口側中間枝管85内の冷媒の流れを遮断することができるようになっている。尚、本実施形態においては、開閉弁85aとして電磁弁が使用されている。
(起動バイパス管86)
また、本実施形態では、第2圧縮機構304の前段側の圧縮要素304cの吐出側と後段側の圧縮要素304dの吸入側との間を接続する起動バイパス管86が設けられている。
具体的には、起動バイパス管86は、第2圧縮機構304の前段側の圧縮要素304cの吐出側と逆止機構84aとの間の第2低圧吐出バイパス点Z1と、開閉弁85aと後段側の圧縮要素304dの吸入側との間の第2高圧吸入バイパス点Z2と、を接続させている。
この起動バイパス管86には、開閉弁86aが設けられており、後述のように、第2圧縮機構304が停止中の場合には、この開閉弁86aによって起動バイパス管86内の冷媒の流れを遮断し、かつ、開閉弁85aによって第2出口側中間枝管85内の冷媒の流れを遮断するようにし、第2圧縮機構304を起動する際に、開閉弁86aによって起動バイパス管86内に冷媒を流すことができる状態にすることで、第2圧縮機構304の前段側の圧縮要素304cから吐出される冷媒を第1圧縮機構303の前段側の圧縮要素304cから吐出される冷媒に合流させることなく、起動バイパス管86を通じて後段側の圧縮要素304dに吸入させる運転を行うことができるようになっている。尚、本実施形態において、起動バイパス管86は、その一端が第2出口側中間枝管85の開閉弁85aと第2圧縮機構304の後段側の圧縮要素304dの吸入側との間に接続され、その他端が第2圧縮機構304の前段側の圧縮要素304cの吐出側と第2入口側中間枝管84の逆止機構84aとの間に接続されている。また、本実施形態においては、開閉弁86aとして電磁弁が使用されている。
また、中間冷媒管8には、中間冷却器7をバイパスするように、中間冷却器バイパス管9が接続されている。この中間冷却器バイパス管9は、中間冷却器7を流れる冷媒の流量を制限する冷媒管である。そして、中間冷却器バイパス管9には、中間冷却器バイパス開閉弁11が設けられている。中間冷却器バイパス開閉弁11は、本実施形態において、電磁弁である。この中間冷却器バイパス開閉弁11は、基本的には、切換機構3を冷却運転状態にしている際に閉め、切換機構3を加熱運転状態にしている際に開ける制御がなされる。すなわち、中間冷却器バイパス開閉弁11は、冷房運転を行う際に閉め、暖房運転を行う際に開ける制御がなされる。
また、中間冷媒管8には、中間冷却器バイパス管9との接続部から中間冷却器7側の位置(すなわち、中間冷却器7の入口側の中間冷却器バイパス管9との接続部から中間冷却器7の出口側の接続部までの部分)に、冷却器開閉弁12が設けられている。この冷却器開閉弁12は、中間冷却器7を流れる冷媒の流量を制限する機構である。冷却器開閉弁12は、本実施形態において、電磁弁である。この冷却器開閉弁12は、後述の除霜運転のような一時的な運転を行う場合を除いて、基本的には、切換機構3を冷却運転状態にしている際に開け、切換機構3を加熱運転状態にしている際に閉める制御がなされる。すなわち、冷却器開閉弁12は、冷房運転を行う際に開け、暖房運転を行う際に閉める制御がなされる。尚、冷却器開閉弁12は、本実施形態において、中間冷却器7の入口側の位置に設けられているが、中間冷却器7の出口側の位置に設けられていてもよい。
さらに、空気調和装置1には、各種のセンサが設けられている。具体的には、中間冷媒管8又は圧縮機構302には、中間冷媒管8を流れる冷媒の圧力を検出する中間圧力センサ54が設けられている。エコノマイザ熱交換器20の後段側インジェクション管19側の出口には、エコノマイザ熱交換器20の後段側インジェクション管19側の出口における冷媒の温度を検出するエコノマイザ出口温度センサ55が設けられている。また、空気調和装置1は、ここでは図示しないが、圧縮機構302、切換機構3、膨張機構5a、5b、後段側インジェクション弁19a、中間冷却器バイパス開閉弁11、冷却器開閉弁12、開閉弁85a、86a等の空気調和装置1を構成する各部の動作を制御する制御部99を有している。
(2)空気調和装置の動作
次に、本実施形態の空気調和装置1の動作について、図1〜図5を用いて説明する。ここで、図2は、冷房運転時の冷凍サイクルが図示された圧力−エンタルピ線図であり、図3は、冷房運転時の冷凍サイクルが図示された温度−エントロピ線図であり、図4は、暖房運転時の冷凍サイクルが図示された圧力−エンタルピ線図であり、図5は、暖房運転時の冷凍サイクルが図示された温度−エントロピ線図である。尚、以下の冷房運転や暖房運転における運転制御は、上述の制御部(図示せず)によって行われる。また、以下の説明において、「高圧」とは、冷凍サイクルにおける高圧(すなわち、図2、3の点D、E、Hにおける圧力や図4、5の点D、F、Hにおける圧力)を意味し、「低圧」とは、冷凍サイクルにおける低圧(すなわち、図2、3の点A、F、F’における圧力や図4、5の点A、E、E’における圧力)を意味し、「中間圧」とは、冷凍サイクルにおける中間圧(すなわち、図2〜5の点B1、C1、G、J、Kにおける圧力)を意味している。
<冷房運転>
冷房運転時は、切換機構3が図1の実線で示される冷却運転状態とされる。レシーバ入口膨張機構5a及びレシーバ出口膨張機構5bは、開度調節される。そして、切換機構3が冷却運転状態となるため、冷却器開閉弁12が開けられ、また、中間冷却器バイパス管9の中間冷却器バイパス開閉弁11が閉められることによって、中間冷却器7が冷却器として機能する状態とされる。また、開閉弁85aが開けられ、開閉弁86aが閉められた状態とされる。さらに、後段側インジェクション弁19aも、開度調節される。より具体的には、本実施形態において、後段側インジェクション弁19aは、エコノマイザ熱交換器20の後段側インジェクション管19側の出口における冷媒の過熱度が目標値になるように開度調節される、いわゆる過熱度制御がなされるようになっている。本実施形態において、エコノマイザ熱交換器20の後段側インジェクション管19側の出口における冷媒の過熱度は、中間圧力センサ54により検出される中間圧を飽和温度に換算し、エコノマイザ出口温度センサ55により検出される冷媒温度からこの冷媒の飽和温度値を差し引くことによって得られる。尚、本実施形態では採用していないが、エコノマイザ熱交換器20の後段側インジェクション管19側の入口に温度センサを設けて、この温度センサにより検出される冷媒温度をエコノマイザ出口温度センサ55により検出される冷媒温度から差し引くことによって、エコノマイザ熱交換器20の後段側インジェクション管19側の出口における冷媒の過熱度を得るようにしてもよい。
この冷媒回路510の状態において、低圧の冷媒(図1〜図3の点A参照)は、吸入母管302aから圧縮機構302の圧縮機構303、304に吸入され、まず、圧縮要素303c、304cによって中間圧力まで圧縮された後に、中間冷媒管8に吐出される(図1〜図3の点B1参照)。この前段側の圧縮要素303c、304cから吐出された中間圧の冷媒は、中間冷却器7において、冷却源としての空気又は水と熱交換を行うことで冷却される(図1〜図3の点C1参照)。この中間冷却器7において冷却された冷媒は、後段側インジェクション管19から後段側の圧縮機構303d、304dに戻される冷媒(図1〜図3の点K参照)と合流することでさらに冷却される(図1〜図3の点G参照)。次に、後段側インジェクション管19から戻る冷媒と合流した中間圧の冷媒は、圧縮要素303c、304cの後段側に接続された圧縮要素303d、304dに吸入されてさらに圧縮されて、吐出枝管303a、304a、油分離器341a、343b、及び、逆止機構342、344を通じて、圧縮機構303、304から、吐出母管302bに吐出される(図1〜図3の点D参照)。ここで、圧縮機構302から吐出された高圧の冷媒は、第1圧縮機構303の圧縮要素303c、303d、及び、第2圧縮機構304の圧縮要素304c、304dによる二段圧縮動作によって、臨界圧力(すなわち、図2に示される臨界点CPにおける臨界圧力Pcp)を超える圧力まで圧縮されている。そして、この圧縮機構302から吐出された高圧の冷媒は、切換機構3を経由して、冷媒の冷却器として機能する熱源側熱交換器4に送られて、冷却源としての空気又は水と熱交換を行って冷却される(図1〜図3の点E参照)。そして、熱源側熱交換器4において冷却された高圧の冷媒は、ブリッジ回路17の入口逆止弁17aを通じてレシーバ入口管18aに流入し、その一部が後段側インジェクション管19に分岐される。そして、後段側インジェクション管19を流れる冷媒は、後段側インジェクション弁19aにおいて中間圧付近まで減圧された後に、エコノマイザ熱交換器20に送られる(図1〜図3の点J参照)。また、後段側インジェクション管19に分岐された後のレシーバ入口管18aを流れる冷媒は、エコノマイザ熱交換器20に流入し、後段側インジェクション管19を流れる冷媒と熱交換を行って冷却される(図1〜図3の点H参照)。一方、後段側インジェクション管19を流れる冷媒は、レシーバ入口管18aを流れる冷媒と熱交換を行って加熱されて(図1〜図3の点K参照)、上述のように、中間冷却器7において冷却された冷媒に合流することになる。そして、エコノマイザ熱交換器20において冷却された高圧の冷媒は、レシーバ入口膨張機構5aによって飽和圧力付近まで減圧されてレシーバ18内に一時的に溜められる(図1〜図3の点I参照)。そして、レシーバ18内に溜められた冷媒は、レシーバ出口管18bに送られて、レシーバ出口膨張機構5bによって減圧されて低圧の気液二相状態の冷媒となり、ブリッジ回路17の出口逆止弁17cを通じて冷媒の加熱器として機能する利用側熱交換器6に送られる(図1〜図3の点F参照)。そして、利用側熱交換器6に送られた低圧の気液二相状態の冷媒は、加熱源としての水又は空気と熱交換を行って加熱されて、蒸発することになる(図1〜図3の点A参照)。そして、この利用側熱交換器6において加熱された低圧の冷媒は、切換機構3を経由して、再び、圧縮機構302に吸入される。このようにして、冷房運転が行われる。
このように、空気調和装置1では、第1圧縮機構303だけでなく、さらに第2圧縮機構304を設けている。そして、空気調和装置1の制御部99は、これら第1圧縮機構303および第2圧縮機構304の両方を同時に駆動状態とさせる制御を行うことができる。これにより、空気調和装置1の循環冷媒量が、第1圧縮機構303のみの場合と比べて、増大している。よって、冷凍能力を向上させることができている。また、第1圧縮機構303と第2圧縮機構304との駆動状況を制御部99が調節することで、いずれも停止している流量0の状態から、いずれも最大出力で運転している流量MAXの状態まで、流量の調整自由度の幅が広がっている。
また、空気調和装置1では、圧縮要素303c、304cから吐出された冷媒を圧縮要素303d、304dに吸入させるための中間冷媒管8に中間冷却器7を設けるとともに、切換機構3を冷却運転状態にした冷房運転において、冷却器開閉弁12を開け、また、中間冷却器バイパス管9の中間冷却器バイパス開閉弁11を閉めることによって、中間冷却器7を冷却器として機能する状態にしているため、中間冷却器7を設けなかった場合に比べて、圧縮要素2cの後段側の圧縮要素2dに吸入される冷媒の温度が低下し(図3の点B1、C1参照)、圧縮要素2dから吐出される冷媒の温度も低下することになる。このため、この空気調和装置1では、高圧の冷媒の冷却器として機能する熱源側熱交換器4において、中間冷却器7を設けなかった場合に比べて、冷却源としての水や空気と冷媒との温度差を小さくすることが可能になり、放熱ロスを小さくできることから、運転効率を向上させることができる。
ここでは、流量を増大させたり流量調節の自由度を増大させるために、第1圧縮機構303だけでなく、さらに第2圧縮機構304をも備えさせているため、これ以上の装置の大型化は避けたいところである。これに対して、本実施形態の空気調和装置1では、能力向上のための中間冷却器7を、各圧縮機構303、304に共通化させて、1台のみ設けている。これにより、省スペース化を図ることができている。
しかも、本実施形態の構成では、後段側インジェクション管19を設けて熱源側熱交換器4から膨張機構5a、5bに送られる冷媒を分岐して後段側の圧縮要素5dに戻すようにしているため、中間冷却器7のような外部への放熱を行うことなく、後段側の圧縮要素303d、304dに吸入される冷媒の温度をさらに低く抑えることができる(図3の点C1、G参照)。これにより、圧縮機構302から吐出される冷媒の温度がさらに低く抑えられ、後段側インジェクション管19を設けていない場合に比べて、放熱ロスをさらに小さくできることから、運転効率をさらに向上させることができる。
さらに、本実施形態の構成では、熱源側熱交換器4から膨張機構5a、5bに送られる冷媒と後段側インジェクション管19を流れる冷媒との熱交換を行うエコノマイザ熱交換器20をさらに設けているため、後段側インジェクション管19を流れる冷媒によって熱源側熱交換器4から膨張機構5a、5bに送られる冷媒を冷却することができ(図2、図3の点E、点H参照)、中間冷却器7、後段側インジェクション管19及びエコノマイザ熱交換器20を設けない場合に比べて、利用側熱交換器6における冷媒の単位流量当たりの冷却能力を高くすることができる。
これにより、圧縮機構303および第2圧縮機構304の両方を駆動させることで流量を増大させるだけでなく、吐出冷媒を冷却させることで冷媒密度を上昇させているため、単位体積当たりの冷媒重量が増大していることからも、相乗的な冷凍能力の増大効果が得られている。
<暖房運転>
暖房運転時は、切換機構3が図1の破線で示される加熱運転状態とされる。レシーバ入口膨張機構5a及びレシーバ出口膨張機構5bは、開度調節される。そして、切換機構3が加熱運転状態となるため、冷却器開閉弁12が閉められ、また、中間冷却器バイパス管9の中間冷却器バイパス開閉弁11が開けられることによって、中間冷却器7が冷却器として機能しない状態とされる。また、開閉弁85aが開けられ、開閉弁86aが閉められた状態とされる。さらに、後段側インジェクション弁19aも、冷房運転時と同様の過熱度制御によって開度調節される。
この冷媒回路510の状態において、低圧の冷媒(図1、図4、図5の点A参照)は、吸入母管302aから圧縮機構302の圧縮機構303、304に吸入され、まず、圧縮要素303c、304cによって中間圧力まで圧縮された後に、中間冷媒管8に吐出される(図1、図4、図5の点B1参照)。この前段側の圧縮要素2cから吐出された中間圧の冷媒は、冷房運転時とは異なり、中間冷却器7を通過せずに(すなわち、冷却されることなく)、中間冷却器バイパス管9を通過して(図1、図4、図5の点C1参照)、後段側インジェクション管19から後段側の圧縮機構303d、304dに戻される冷媒(図1、図4、図5の点K参照)と合流することで冷却される(図1、図4、図5の点G参照)。次に、後段側インジェクション管19から戻る冷媒と合流した中間圧の冷媒は、圧縮要素303c、304cの後段側に接続された圧縮要素303d、304dに吸入されてさらに圧縮されて、吐出枝管303a、304a、油分離器341a、343b、及び、逆止機構342、344を通じて、圧縮機構303、304から、吐出母管302bに吐出される(図1、図4、図5の点D参照)。ここで、圧縮機構302から吐出された高圧の冷媒は、冷房運転時と同様、第1圧縮機構303の圧縮要素303c、303d、及び、第2圧縮機構304の圧縮要素304c、304dによる二段圧縮動作によって、臨界圧力(すなわち、図4に示される臨界点CPにおける臨界圧力Pcp)を超える圧力まで圧縮されている。そして、この圧縮機構2から吐出された高圧の冷媒は、切換機構3を経由して、冷媒の冷却器として機能する利用側熱交換器6に送られて、冷却源としての水又は空気と熱交換を行って冷却される(図1、図4、図5の点F参照)。そして、利用側熱交換器6において冷却された高圧の冷媒は、ブリッジ回路17の入口逆止弁17bを通じてレシーバ入口管18aに流入し、その一部が後段側インジェクション管19に分岐される。そして、後段側インジェクション管19を流れる冷媒は、後段側インジェクション弁19aにおいて中間圧付近まで減圧された後に、エコノマイザ熱交換器20に送られる(図1、図4、図5の点J参照)。また、後段側インジェクション管19に分岐された後のレシーバ入口管18aを流れる冷媒は、エコノマイザ熱交換器20に流入し、後段側インジェクション管19を流れる冷媒と熱交換を行って冷却される(図1、図4、図5の点H参照)。一方、後段側インジェクション管19を流れる冷媒は、レシーバ入口管18aを流れる冷媒と熱交換を行って加熱されて(図1、図4、図5の点K参照)、上述のように、前段側の圧縮要素2cから吐出された中間圧の冷媒に合流することになる。そして、エコノマイザ熱交換器20において冷却された高圧の冷媒は、レシーバ入口膨張機構5aによって飽和圧力付近まで減圧されてレシーバ18内に一時的に溜められる(図1、図4、図5の点I参照)。そして、レシーバ18内に溜められた冷媒は、レシーバ出口管18bに送られて、レシーバ出口膨張機構5bによって減圧されて低圧の気液二相状態の冷媒となり、ブリッジ回路17の出口逆止弁17dを通じて冷媒の加熱器として機能する熱源側熱交換器4に送られる(図1、図4、図5の点E参照)。そして、熱源側熱交換器4に送られた低圧の気液二相状態の冷媒は、加熱源としての空気又は水と熱交換を行って加熱されて、蒸発することになる(図1、図4、図5の点A参照)。そして、この熱源側熱交換器4において加熱された低圧の冷媒は、切換機構3を経由して、再び、圧縮機構302に吸入される。このようにして、暖房運転が行われる。
このように、空気調和装置1では、圧縮要素303c、304cから吐出された冷媒を圧縮要素303d、304dに吸入させるための中間冷媒管8に中間冷却器7を設けるとともに、切換機構3を加熱運転状態にした暖房運転において、冷却器開閉弁12を閉め、また、中間冷却器バイパス管9の中間冷却器バイパス開閉弁11を開けることによって、中間冷却器7を冷却器として機能しない状態にしているため、中間冷却器7だけを設けた場合や上述の冷房運転と同様に中間冷却器7を冷却器として機能させた場合に比べて、圧縮機構2から吐出される冷媒の温度の低下が抑えられる。このため、この空気調和装置1では、中間冷却器7だけを設けた場合や上述の冷房運転と同様に中間冷却器7を冷却器として機能させた場合に比べて、外部への放熱を抑え、冷媒の冷却器として機能する利用側熱交換器6に供給される冷媒の温度の低下を抑えることが可能になり、加熱能力の低下を抑えて、運転効率の低下を防ぐことができる。
しかも、本実施形態の構成では、後段側インジェクション管19を設けて利用側熱交換器6から膨張機構5a、5bに送られる冷媒を分岐して後段側の圧縮要素303d、304dに戻すようにしているため、圧縮機構302から吐出される冷媒の温度が低くなり、これによって、利用側熱交換器6における冷媒の単位流量当たりの加熱能力は小さくなるが、後段側の圧縮要素303d、304dから吐出される冷媒の流量は増加するため、利用側熱交換器6における加熱能力が確保されて、運転効率を向上させることができる。
また、本実施形態の構成では、利用側熱交換器6から膨張機構5a、5bに送られる冷媒と後段側インジェクション管19を流れる冷媒との熱交換を行うエコノマイザ熱交換器20をさらに設けているため、利用側熱交換器6から膨張機構5a、5bに送られる冷媒によって後段側インジェクション管19を流れる冷媒を加熱することができ(図4、図5の点J、点K参照)、後段側インジェクション管19及びエコノマイザ熱交換器20を設けない場合に比べて、後段側の圧縮要素2dから吐出される冷媒の流量を増加させることができる。
また、冷房運転及び暖房運転に共通する利点として、本実施形態の構成では、エコノマイザ熱交換器20として、熱源側熱交換器4又は利用側熱交換器6から膨張機構5a、5bに送られる冷媒と後段側インジェクション管19を流れる冷媒とが対向するように流れる流路を有する熱交換器を採用しているため、エコノマイザ熱交換器20における熱源側熱交換器4又は利用側熱交換器6から膨張機構5a、5bに送られる冷媒と後段側インジェクション管19を流れる冷媒との温度差を小さくすることができ、高い熱交換効率を得ることができる。また、本実施形態の構成では、熱源側熱交換器4又は利用側熱交換器6から膨張機構5a、5bに送られる冷媒がエコノマイザ熱交換器20において熱交換される前に熱源側熱交換器4又は利用側熱交換器6から膨張機構5a、5bに送られる冷媒を分岐するように後段側インジェクション管19を設けているため、エコノマイザ熱交換器20において後段側インジェクション管19を流れる冷媒と熱交換を行う熱源側熱交換器4又は利用側熱交換器6から膨張機構5a、5bに送られる冷媒の流量を少なくすることができ、エコノマイザ熱交換器20における交換熱量を小さくすることができ、エコノマイザ熱交換器20のサイズを小さくすることができる。
<圧縮機構の起動>
次に、上述のような冷房運転や暖房運転を行う際の圧縮機構302の起動時の動作について説明する。ここで、本実施形態の空気調和装置1は、第1圧縮機構303が第2圧縮機構304よりも優先的に運転される構成となっている。
具体的には、圧縮機構302の起動時には、まず、第1圧縮機構303から起動され、第2圧縮機構304は停止した状態となっている。そして、さらに能力を付加させるために、続いて第2圧縮機構304が起動され、第1圧縮機構303と第2圧縮機構304との両方が同時に運転している状態とされるようになっている。
まず、第1圧縮機構303を起動する際には、開閉弁85a及び開閉弁86aが閉められた状態(すなわち、第2出口側中間枝管85及び起動バイパス管86を冷媒が流れない状態)にされる。そして、第1圧縮機構303を起動すると、吸入母管302a及び第1吸入枝管304aを通じて、低圧の冷媒は、第1圧縮機構303の圧縮要素303cに吸入され、圧縮要素303cによって中間圧力まで圧縮された後に、第1入口側中間枝管81に吐出される。この第1入口側中間枝管81に吐出された中間圧の冷媒は、逆止機構81aを通じて中間母管82に送られる。そして、冷房運転時には中間冷却器7を通じた後、又は、暖房運転時には中間冷却器バイパス管9を通じた後に、さらに、後段側インジェクション管19から戻る冷媒と合流する。このように合流した冷媒は、第1出口側中間枝管83に送られる。この第1出口側中間枝管83に送られた中間圧の冷媒は、圧縮要素303cの後段側に接続された圧縮要素303dに吸入されてさらに圧縮される。この圧縮要素303dによってさらに圧縮された冷媒は、吐出枝管303a、油分離器341a、及び、逆止機構342を通じて、圧縮機構303から、吐出母管302bに吐出される。
(第2逆止機構84aの機能)
このような第1圧縮機構303だけが運転中の状態(すなわち、第2圧縮機構304が停止中の状態)において、仮に、第2逆止機構84aが設けられていない場合には、運転中の第1圧縮機構303の前段側の圧縮要素303cから吐出された冷媒が中間冷媒管8を通じて、停止中の第2圧縮機構304の前段側の圧縮要素304cの吐出側に達してしまう。そうすると、運転中の第1圧縮機構303の前段側の圧縮要素303cから吐出された冷媒が、停止中の第2圧縮機構304の前段側の圧縮要素304c内を通じて圧縮機構302の吸入側に抜けるおそれがある。これにより、圧縮機構302の吸入側に抜ける冷媒が冷凍機油を伴うことにより、停止中の第2圧縮機構304の冷凍機油が流出する現象が生じて、停止中の第2圧縮機構304を起動する際の冷凍機油の不足が生じるおそれがある。
しかし、本実施形態の空気調和装置1では、第2逆止機構84aが設けられているため、運転中の第1圧縮機構303の前段側の圧縮要素303cから吐出された冷媒が中間冷媒管8を通じて、停止中の第2圧縮機構304の前段側の圧縮要素304cの吐出側に達することがない。このため、運転中の第1圧縮機構303の前段側の圧縮要素303cから吐出された冷媒が、停止中の第2圧縮機構304の前段側の圧縮要素304c内を通じて圧縮機構302の吸入側に抜けて停止中の第2圧縮機構304の冷凍機油が流出するということが生じることはない。これにより、停止中の第2圧縮機構304を起動する際の冷凍機油の不足が生じる事態を未然に防ぐことができている。
尚、本実施形態のように、第1圧縮機構303を優先的に運転する圧縮機構とする場合には、逆止機構81aを設けることなく、第2圧縮機構304に対応する逆止機構84aだけを設けるようにしてもよい。
(開閉弁85aの機能)
また、このような第1圧縮機構303だけが運転中の状態(すなわち、第2圧縮機構304が停止中の状態)において、仮に、停止中の第2圧縮機構304に対応する第2出口側中間枝管85に開閉弁85aが設けられていない場合には、中間冷媒管8が圧縮機構303、304に共通に設けられていることから、運転中の第1圧縮機構303に対応する前段側の圧縮要素303cから吐出された冷媒が中間冷媒管8の第2出口側中間枝管85を通じて、停止中の第2圧縮機構304の後段側の圧縮要素304dの吸入側に達することになる。これにより、運転中の第1圧縮機構303の前段側の圧縮要素303cから吐出された冷媒が、停止中の第2圧縮機構304の後段側の圧縮要素304d内を通じて圧縮機構302の吐出側に抜けるおそれがある。この場合には、圧縮機構302の吐出側に抜ける冷媒が、停止中の第2圧縮機構304の冷凍機油を伴うことで冷凍機油が流出して、停止中の第2圧縮機構304を起動する際の冷凍機油の不足が生じるおそれがある。
しかし、本実施形態では、運転中の第1圧縮機構303に対応する前段側の圧縮要素303cから吐出された冷媒が中間冷媒管8の第2出口側中間枝管85を通じて、停止中の第2圧縮機構304の後段側の圧縮要素304dの吸入側に達することがない。これにより、運転中の第1圧縮機構303の前段側の圧縮要素303cから吐出された冷媒が、停止中の第2圧縮機構304の後段側の圧縮要素304d内を通じて圧縮機構302の吐出側に抜けて停止中の第2圧縮機構304の冷凍機油が流出して、停止中の第2圧縮機構304を起動する際の冷凍機油の不足の事態が生じることを、未然に防いでいる。
(後発圧縮機の起動付加低減機能)
次に、第1圧縮機構303が起動された状態から第2圧縮機構304を起動する際には、第2出口側中間枝管85の開閉弁85aを閉めたままで、起動バイパス管86の開閉弁86aを開けることによって、起動バイパス管86内に冷媒を流すことができる状態にする。すると、第2圧縮機構304の前段側の圧縮要素304cから吐出される冷媒が第1圧縮機構303の前段側の圧縮要素304cから吐出される冷媒に合流することなく、起動バイパス管86を通じて後段側の圧縮要素304dに吸入されることになる。もしくは、少なくとも、第2圧縮機構304の前段側の圧縮要素304cから吐出される冷媒のほとんどが第1圧縮機構303の前段側の圧縮要素304cから吐出される冷媒に合流することなく、起動バイパス管86を通じて後段側の圧縮要素304dに吸入される冷媒流れが主な流れになる。
ここで、仮に、起動バイパス管86の開閉弁86aを閉止した状態で、第2出口側中間枝管85の開閉弁85aを開けた状態にしたとする。そうすると、中間冷媒管8が圧縮機構303、304に共通に設けられていることに起因して、第2圧縮機構304の前段側の圧縮要素303cの吐出側の圧力及び後段側の圧縮要素303dの吸入側の圧力が、前段側の圧縮要素303cの吸入側の圧力及び後段側の圧縮要素303dの吐出側の圧力よりも高くなった状態で、第2圧縮機構304が起動することになり、起動時の負荷が大きい等、安定的に第2圧縮機構304を起動することが難しくなる。
しかし、本実施形態では、第2出口側中間枝管85の開閉弁85aを閉めたままで、起動バイパス管86の開閉弁86aを開けて、第2圧縮機構304を起動するようにしているため、第2圧縮機構304の前段側の圧縮要素303cの吐出側の圧力及び後段側の圧縮要素303dの吸入側の圧力が、前段側の圧縮要素303cの吸入側の圧力及び後段側の圧縮要素303dの吐出側の圧力よりも高くなった状態が速やかに解消される。そして、圧縮機構302の運転状態が安定した状態(例えば、第2圧縮機構304の起動時から所定時間経過したことを制御部99が判断した後や、圧縮機構302の吸入圧力、吐出圧力及び中間圧力が所定圧力で安定したことを制御部99が把握した状態等)となる。そして、圧縮機構302の運転状態が安定した状態を検知した場合には、開閉弁86aを閉めることによって起動バイパス管86内の冷媒の流れを遮断し、かつ、開閉弁85aを開けることによって第2出口側中間枝管85内の冷媒の流れを第2圧縮機構304の後段側の圧縮要素304dに吸入させる。このようにして、第1圧縮機構303のみが稼働している状態から、第1圧縮機構303および第2圧縮機構304の両方が稼働している通常の冷房運転や暖房運転に移行する。
このように、本実施形態では、上述のように、第1圧縮機構303の運転中において、第2圧縮機構304の起動が行いにくい場合が生じるが、上述のような開閉弁85a、86aの操作により、第2圧縮機構304の起動を確実に行うことができるようになっている。
なお、ここで、圧縮機構302の運転状態が安定した状態を検知した場合には、制御部99は、以下の2通りの制御のうち、いずれか一方の制御を行う。
1つめの制御としては、制御部99が圧縮機構302の運転状態が安定した状態を検知した場合に、制御部99が、起動バイパス管86の開閉弁86aを閉める動作と、第2出口側中間枝管85の開閉弁85aを開く動作と、が同時に行われるように開閉制御を行う。
2つめの制御としては、制御部99が圧縮機構302の運転状態が安定した状態を検知した場合に、制御部99が、第2出口側中間枝管85の開閉弁85aを開く動作を開始した後(もしくは開く動作を終えた後)に、起動バイパス管86の開閉弁86aを閉める動作が行われるように開閉制御を行う。
ここでは、制御部99は、第2出口側中間枝管85の開閉弁85aを開く動作を行う前に、起動バイパス管86の開閉弁86aを閉める動作が行われることがないように制御される。これは、第1圧縮機構303の低段側の圧縮要素303cが駆動しており停止中の第2圧縮要素304の後段側の圧縮要素304dを駆動させようとする場合、後段側の圧縮要素304dの起動時に、第2出口側中間枝管85の開閉弁85aおよび起動バイパス管86の開閉弁86aの両方が閉じた状態となっていると、第2圧縮機構304の後段側の圧縮要素304dが吸入する側の空間が閉じられた空間となっていることから、第2圧縮機構304の後段側の圧縮要素304dを起動させることが困難になるためである。
(3)変形例1
上述の実施形態における冷媒回路510(図1参照)では、1つの利用側熱交換器6が接続された構成となっている場合を例に挙げて説明した。
しかし、本発明はこれに限られる物ではなく、例えば、図6に示されるように、複数の利用側熱交換器6を接続するとともに、これらの利用側熱交換器6を個別に発停させることができるように構成した冷媒回路710にしてよい。
具体的には、二段圧縮式の圧縮機構2が採用された上述の実施形態にかかる冷媒回路510(図1参照)において、2つの利用側熱交換器6が接続されるとともに、各利用側熱交換器6のブリッジ回路17側端に対応して利用側膨張機構5cが設けられ、レシーバ出口管18bに設けられていたレシーバ出口膨張機構5bが削除され、さらに、ブリッジ回路17の出口逆止弁17dに代えて、ブリッジ出口膨張機構5dが設けられた冷媒回路710にしてもよい。
そして、本変形例の構成においては、冷房運転時において、ブリッジ出口膨張機構5dが全閉状態にされる点と、上述の実施形態におけるレシーバ出口膨張機構5bの代わりに、利用側膨張機構5cがレシーバ入口膨張機構5aによって減圧された冷媒を利用側熱交換器6に送る前に低圧になるまでさらに減圧する動作を行う点とが、上述の実施形態における冷房運転時の動作と異なるが、その他の動作については、上述の実施形態における冷房運転時の動作(図1〜3及びその関連記載)と基本的に同じである。また、暖房運転時においては、各利用側熱交換器6を流れる冷媒の流量を制御するために利用側膨張機構5cの開度調節がなされる点と、変形例7におけるレシーバ出口膨張機構5bの代わりに、ブリッジ出口膨張機構5dがレシーバ入口膨張機構5aによって減圧された冷媒を熱源側熱交換器4に送る前に低圧になるまでさらに減圧する動作を行う点とが、上述の実施形態における暖房運転時の動作と異なるが、その他の動作については、上述の実施形態における暖房運転時の動作(図1、図4、図5及びその関連記載)と基本的に同じである。
そして、本変形例の構成においても、上述の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
また、ここでは、詳しい説明を省略するが、二段圧縮式の圧縮機構303、304に代えて、三段圧縮式や四段圧縮式等のような二段圧縮式よりも多段の圧縮機構を採用してもよい。
(4)変形例2
上述の実施形態における冷媒回路510(図1参照)では、第2圧縮機構304の前段側の圧縮要素304cの吐出側から合流点Xまでの間に、合流点Xに向かう流れのみを許容する逆止機構84aが設けられた場合を例に挙げて説明した。
しかし、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、図7に示されるように、逆止機構に限られるものではなく、上記実施形態で記載した逆止機構84の代わりに、開閉を切り換えることにより冷媒の流通を遮断させることが可能な第2低圧吐出遮断機構684aが設けられた冷媒回路610であってもよい。
具体的には、冷媒回路610では、図7に示すように、第2圧縮機構304の前段側の圧縮要素304cの吐出側から合流点Xまで延びている第2入口側中間枝管84の途中に第2低圧吐出遮断機構684aが設けられている。
この場合、低段側の圧縮要素303cからの吐出圧力の影響を低段側の圧縮要素304cの吐出側が受ける場合にだけ閉じるように、制御部99が制御するような構成であってもよい。
(5)変形例3
上述の実施形態における冷媒回路510(図1参照)では、第2圧縮機構304の前段側の圧縮要素304cの吐出側から合流点Xまでの間に、合流点Xに向かう流れのみを許容する逆止機構84aが設けられた場合を例に挙げて説明した。
しかし、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、図8に示されるように、逆止機構に限られるものではなく、圧縮要素304cの吐出側が起動時バイパス管86と接続された状態と、圧縮要素304cの吐出側が合流点X側と接続された状態とを切り換える三方弁のようなバイパス切換機構884aが設けられた冷媒回路810であってもよい。この場合、低段側の圧縮要素303cからの吐出圧力の影響を低段側の圧縮要素304cの吐出側が受ける場合にだけバイパス切換機構884aが起動時バイパス管86側に接続されるように、制御部99が制御するような構成であってもよい。
(6)変形例4
上述の実施形態における冷媒回路510(図1参照)では、中間冷却器7を機能させないようにする切り換えを可能にするため中間冷却器バイパス管9が設けられた場合を例に挙げて説明した。
しかし、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、図9に示されるように、中間冷却バイパス管9が設けられていない冷媒回路910であってもよい。この場合であっても、T−S線図やT−H線図の挙動は変化するが、第1圧縮機構303と第2圧縮機構304とが、中間冷却器7を共通に利用することができることに変わりはない。
(7)変形例5
上述の実施形態における冷媒回路510(図1参照)では、圧縮要素304dの吐出側に冷凍機油が抜けるのを防止するため、開閉弁85aが設けられた場合を例に挙げて説明した。
しかし、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、図10に示されるように、第2圧縮部304の低段側の圧縮要素304cの吸入側に向けて冷凍機油が抜けるのを防止するため、第2吐出枝管304bのうち第2圧縮部304の低段側の圧縮要素304cの吸入側に接続されている部分の途中に、冷媒の流通を遮断可能な開閉弁385aが設けられた冷媒回路310であってもよい。
(8)変形例6
上述の実施形態における冷媒回路510(図1参照)では、圧縮要素304dの吐出側に冷凍機油が抜けるのを防止するため、開閉弁85aが設けられた場合を例に挙げて説明した。
しかし、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、図11に示されるように、圧縮要素304dの吐出側に冷凍機油が抜けるのを防止するため、第2吐出枝管304bのうち第2圧縮部304の後段側の圧縮要素304dの吐出側に接続されている部分の途中に、冷媒の流通を遮断可能な開閉弁485aが設けられた冷媒回路410であってもよい。
(9)変形例7
上述の実施形態における冷媒回路510(図1参照)では、第1圧縮機構303を起動する際、開閉弁85a及び開閉弁86aが閉められた状態(すなわち、第2出口側中間枝管85及び起動バイパス管86を冷媒が流れない状態)にされる場合を例に挙げて説明した。
しかし、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、このように制御されるのは、第2圧縮機構304を駆動させる直前だけであってもよい。すなわち、第1圧縮機構303のみを開閉弁85a及び開閉弁86aを開けたまま起動させた後、第2圧縮機構304を起動させようとする直前(第2圧縮機構304を起動させる所定時間前等)に開閉弁85a及び開閉弁86aを閉めた状態にするようにしてもよい。
(10)他の実施形態
以上、本発明の実施形態及びその変形例について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態及びその変形例に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、上述の実施形態及びその変形例において、利用側熱交換器6を流れる冷媒と熱交換を行う加熱源又は冷却源としての水やブラインを使用するとともに、利用側熱交換器6において熱交換された水やブラインと室内空気とを熱交換させる二次熱交換器を設けた、いわゆる、チラー型の空気調和装置に本発明を適用してもよい。
また、冷房専用の空気調和装置等のような上述のチラータイプの空気調和装置とは異なる型式の冷凍装置であっても、本発明を適用可能である。
また、超臨界域で作動する冷媒としては、二酸化炭素に限定されず、エチレン、エタンや酸化窒素等を使用してもよい。