JP5107585B2 - 低温充填ゼリー組成物とその製造方法 - Google Patents
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(1)熱可逆性ゲル(ゲル化剤):カラギーナン、ファーセレラン、カードラン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、ゼラチン、寒天、でんぷん等
(2)熱不可逆性ゲル(ゲル化剤/金属イオン):低メトキシ化ペクチン(LMペクチン)、ジェランガム、アルギン酸、アルギン酸塩、グルコマンナン等
熱不可逆性ゲルは通常ゲル化剤を金属イオンにより架橋してゲル化する原理であり、金属イオンの溶出速度をコントロールして液状で充填し、充填後に金属イオンが溶出しゲル化する方法である。すなわち、熱可塑性ゲルのように高温状態で液化したものを充填する必要はなく、むしろ 逆に金属イオンの溶出を押さえるためにも低温で充填する必要がある。
例えば、特許文献2では、アルギン酸、ジェランガム等の増粘多糖類を温水に溶解し、必要に応じて甘味料、色素等を添加した後、微細に粉砕した炭酸カルシウム等のカチオン素材を添加し、均一に分散させた分散溶液を作製している。そして、次に、分散溶液の液性を酸性側に下げることのできるジュース等を添加して、所望のゼリー食品を常温で製造することができると報告している。
そして、上記のように、カチオン素材が分散した分散溶液とジュース等の酸性溶液を混合し、混合液の液性を酸性として、分散したカチオンをイオン化させて、熱付加逆性のゼリーを調整している。このように混合溶液の反応とすることで、カチオンの溶出速度を揃え、混合溶液全体が同時にゲル化して、ゲル特性にむらのない均一なゼリーを作成することが可能になると記載されている。
しかしながら、最終ゲル化物のpHは、添加したカルシウム塩が解離する状態にあることが望ましいとされており、望ましいものとしてpHとして3.0〜4.2が推奨されている。
従って、医薬品の薬効成分を含有する低温充填可能なゼリー製剤を作成するためには、ゲル組成物の好適なpH、ゲル化試剤の選択とゲル化の方法の選択等、まだまだ解決すべき課題が残されていた。
[1]アルギン酸ナトリウムが0.5〜3.0w/w%であり、クエン酸カルシウムが0.1〜1.5w/w%であり、液性がpH5.5〜7.0である、低温充填ゼリー組成物。
[2]薬効成分が添加されている、上記[1]記載の低温充填ゼリー組成物。
[3]糖又は糖アルコールが添加されている、上記[1]又は[2]記載の低温充填ゼリー組成物。
[5]アルギン酸又はアルギン酸ナトリウムの水溶液をpH5.5〜7.0に調整し、低温下で、アルカリ土類金属塩の微細粉末を添加攪拌し、アルカリ土類金属塩の均一分散溶液を容器に充填し、容器中でゲル化させることを特徴とする、低温充填ゼリー組成物の製造方法。
[6]薬効成分が低温で、アルカリ土類金属塩の添加前に加えられていることを特徴とする、上記[5]記載の製造方法。
[7]アルカリ土類金属塩が親水性溶剤に分散して添加されている、上記[5]又は[6]記載の製造方法。
[8]親水性溶剤が濃グリセリンである、上記[5]〜[7]のいずれかに記載の製造方法。
[9]アルカリ土類金属塩がカルシウム塩である、上記[5]〜[8]のいずれかに記載の製造方法。
[10]カルシウム塩がクエン酸カルシウムである、上記[5]〜[9]のいずれかに記載の製造方法。
[11]水溶液の液性が、pH5.8〜6.9である、上記[5]〜[10]のいずれかに記載の製造方法。
[12]アルギン酸ナトリウムを1重量部とすると、アルカリ土類金属塩が0.2重量部以上である、上記[5]〜[11]のいずれかに記載の製造方法。
[13]pH調節剤が添加されている、上記[5]〜[12]のいずれかに記載の製造方法。
[14]糖又は糖アルコールが添加されている、上記[5]〜[13]のいずれかに記載の製造方法。
[15]防腐剤が添加されている、上記[5]〜[14]のいずれかに記載の製造方法。
[17]容器が、最内層がポリエチレンのアルミラミネートフィルム容器である、上記[5]又は[16]記載の製造方法。
また、本発明の製剤は、ゼリー状であるため、水を必要とせず、誤飲しやすい老齢の患者に対しての適切な経口製剤を提供できる。
また、アルギン酸の溶液濃度によっても、ゲル組成物の強度は影響を受ける。例えば、アルギン酸ナトリウムを用いた場合、アルギン酸ナトリウムの含量が、ゲル組成物中の0.5〜3.0重量%の範囲にあれば好適なゲル組成物ができる。これを超える量のアルギン酸ナトリウムが存在すれば、ゲルの食感が硬くなり、口当たりの良くないゲル組成物ができることになる。
アルギン酸ナトリウムは、カルシウムイオンと反応して急速にゲル化することが知られており、ゲル化速度を調整するための工夫が色々なされている。本発明では、ゲル化速度を制御するため、約6前後のpHで、ゆっくりと溶解するアルカリ土類金属塩を使用することが本発明の一つの特徴である。即ち、アルギン酸ナトリウム等が溶解したゲル・ベースに対して、アルカリ土類金属塩の微細粉末を固体で投入し、ゆっくりと溶解させる必要がある。従って、本発明で使用されるアルカリ土類金属塩は、ゲル・ベースの液性(pH5.5〜7.0)に応じて、ゆっくり溶解するものが望ましい。例えば、カルシウム塩の場合、pH6以上で水に難溶なカルシウム塩としては、クエン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム2水和物、硫酸カルシウム2水和物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムカルシウム(ドロマイト)が挙げられ、水に不溶性のカルシウム塩としては、無水リン酸1水素カルシウムを挙げることができる。
なお、水に可溶性のカルシウム塩を使用する場合、例えば塩化カルシウム6水和物、グルクロン酸カルシウム、乳酸カルシウム等を使用する場合には、キレート剤を添加して、ゲル化速度を調整することができる。
このように、本発明で使用可能なアルカリ土類金属塩は、上記の中から1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。アルカリ土類塩の選定については、ゲル・ベースの液性(pH)等に大きく影響を受けるので、液性にあったものを選択する必要がある。
本発明に用いられる好ましいアルカリ土類金属としては、例えばカルシウムを挙げることができ、好ましいアルカリ土類金属塩としては、有機酸アルカリ土類金属塩を挙げることができる。より好ましい有機アルカリ土類金属塩としては、例えばクエン酸カルシウムを挙げることができる。
なお、ゲル・ベース、最終ゲル組成物の液性は、pHメーター等の通常の液性測定機器で測定することができ、上記の液性になるよう調整することができる。
薬効成分は、熱安定性にもよるが、通常は、均一溶液の冷却後、アルカリ土類金属塩を添加する前に、添加し溶解させておくことが望ましい。これらの薬効成分は、水に溶解性の高いものは、アルギン酸ナトリウムと共に溶解させてカルシウムイオンとの反応に使用することができる。水に溶解性が悪い薬効成分の場合には、親水性の溶剤に溶解して使用することができる。親水性溶剤で薬効成分を溶解できるものであれば、特に限定されるものではないが、経口用として使用可能なものを用いるとよい。例えば濃グリセリン、グリセリン、ポリビニルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコール等の多価アルコールが挙げられる。好ましくは濃グリセリン、ポリビニルアルコールを挙げることができる。
pH調整剤としては、例えば、クエン酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸等の有機酸とそれらのアルカリ金属塩からなる緩衝剤や例えば、リン酸等の無機酸とそれらのアルカリ金属塩の緩衝剤を挙げることができる。本発明のゼリー組成物の液性はpHが約5.8〜約6.9の範囲に調整されることが望ましい傾向にある。特に、pHが約6前後に調整されることがより好ましい。
防腐剤としては、例えば安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸、パラオキシ安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル(プロピルパラベン)、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸イソブチル、プロピオン酸、プロピオン酸ナトリウム等を挙げることができる。
これらの添加剤を均一に溶解させるために、適宜、溶解助剤を使用することができる。ここで使用される溶解助剤とは、水あるいは親水性の油状溶剤のことであり、例えば濃グリセリン、グリセリン、ポリビニルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコール等の多価アルコールが挙げられる。好ましくは濃グリセリン、ポリビニルアルコールを挙げることができる。
本発明において「容器」とは、小分けして分包できる袋状のものを言い、例えば最内層がポリエチレンで被覆されたアルミラミネートフィルム容器等のものである。分注後は熔封圧着シールして保存する。従って、ゲル化は、それぞれの分注された容器の中で反応が進行する。ゲル化の速度はアルカリ土類金属塩の添加量と容器の温度によって影響される。
以下の表1(表中の数値はg数を表す)の組成で各試剤を秤取する。まず、アルギン酸ナトリウム、ソルビトール液、濃グリセリン、精製水、ポリビニルアルコール、プロピルパラベン、クエン酸を混合し、80℃で30分間加熱攪拌して均一溶液とする。その後、溶液を室温に冷却して、微粉末のクエン酸カルシウムを添加して3分間攪拌した。その後、ガラス製の容器に分注して室温でゲル化を進行させ、ゼリー組成物を得た。
その結果を併せて表1に記載した。
液性は、ゲル・ベース(クエン酸Caの添加前の溶液)のpH値、最終ゲル製剤のpH値を表す。
試料No.1〜4のいずれにおいても、しっかりした強度を持ったゼリー組成物が製造できた。
以下の表2と表3(表中の数値はg数を表す)の組成で各試剤を秤取し、まず、アルギン酸ナトリウム、ソルビトール液、濃グリセリン、精製水、ポリビニルアルコール、プロピルパラベン、クエン酸を混合し、80℃で30分間加熱攪拌して均一溶液とする。更に、結晶セルロースまたは二酸化ケイ素を添加して80℃で30分間加熱攪拌する。その後、溶液を室温に冷却して、微粉末のクエン酸カルシウムを添加して3分間攪拌した。その後、ガラス製の容器に分注して室温でゲル化を進行させ、ゼリー組成物を得た。
液性は、ゲル・ベース(クエン酸Caの添加前の溶液)のpH値、最終ゲル製剤のpH値を表す。
液性は、ゲル・ベース(クエン酸Caの添加前の溶液)のpH値、最終ゲル製剤のpH値を表す。
この結果、固形添加物の如何に係らず、しっかりした強度のゼリー組成物が形成できた。
ゼリー組成物に対するカルシウム塩の添加量効果を確認するために、以下の表4と表5(表中の数値はg数を表す)の組成で各試剤を秤取し、実施例1と同様にゼリー組成物を作成した。その結果を表4と表5に記載した。
液性は、ゲル・ベース(クエン酸Caの添加前の溶液)のpH値、最終ゲル製剤のpH値を表す。
この結果、クエン酸Caは、アルギン酸Naの重量を1として、0.05ではゲル化が困難であることが分かった。また、0.2以上あるとゲル化することが示された。
以下の表6(表中の数値はg数を表す)の組成で各試剤を秤取し、まず、アルギン酸ナトリウム、ソルビトール液、濃グリセリン、精製水、ポリビニルアルコール、プロピルパラベン、クエン酸を混合し、80℃で30分間加熱攪拌して均一溶液とする。更に、ステアリン酸を添加して80℃で30分間加熱攪拌する。その後、溶液を室温に冷却して、微粉末のクエン酸カルシウムを添加して3分間攪拌した。その後、ガラス製の容器に分注して室温でゲル化を進行させ、ゼリー組成物を得た。
その結果を表6に記載した。
液性は、ゲル・ベース(クエン酸Caの添加前の溶液)のpH値、最終ゲル製剤のpH値を表す。
この結果、ステアリン酸の添加量の増加があっても、ゲル形成にはあまり大きな影響がないことが示された。
以下の表7(表中の数値はg数を表す)の組成で各試剤を秤取し、まず、アルギン酸ナトリウム、κλカラギーナン、クエン酸、クエン酸Na、リン酸、リン酸水素ナトリウム、ポリビニルアルコール、プロピルパラベン、精製水を混合し、80℃で30分間攪拌した後、結晶セルロース、ステアリン酸を添加して80℃で30分間攪拌する。混合溶液を冷却して室温に下げた後、BSAと濃グリセリンを室温下で添加し攪拌した。その後、微粉末のクエン酸カルシウムを添加して3分間攪拌した。得られたクエン酸Caの均一分散溶液を、ガラス製の容器に分注して室温下でゲル化を進行させ、ゼリー組成物を得た。その結果を表7に記載した。
液性は、ゲル・ベース(クエン酸Caの添加前の溶液)のpH値、最終ゲル製剤のpH値を表す。
得られたゲル組成物は、しっかりしたゲル強度を持つものであり、アルギン酸Naの濃度が3%であれば充分な強度のものであることが分かった。
Claims (6)
- アルギン酸ナトリウムが0.5〜3.0w/w%であり、クエン酸カルシウムが0.1〜1.5w/w%であり、液性がpH5.5〜7.0である、経口用低温充填ゼリー組成物の製造方法であって、
低温下で薬効成分をアルギン酸又はアルギン酸ナトリウムの水溶液に加え、pH5.5〜7.0に調整し、
アルギン酸ナトリウムを1重量部とすると、クエン酸カルシウムが0.2重量部以上の量の微細粉末を添加攪拌し、クエン酸カルシウムの均一分散溶液を容器に充填して、容器中でゲル化させることを特徴とする低温充填ゼリー組成物の製造方法。 - クエン酸カルシウムが親水性溶剤に分散して添加されている、請求項1記載の製造方法。
- 親水性溶剤が濃グリセリンである、請求項1又は2に記載の製造方法。
- 水溶液の液性が、pH5.8〜6.9である、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- 糖又は糖アルコールが添加されている、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
- アルギン酸又はアルギン酸ナトリウムと、糖又は糖アルコールと、pH調節剤と、防腐剤との水溶液に、低温で薬効成分の水溶液又は親水性溶剤溶液を加えて、pHを5.5〜7.0に調整し、アルギン酸ナトリウムを1重量部とすると、0.2重量部以上のクエン酸カルシウムを、低温下で加えて攪拌し、クエン酸カルシウムの均一分散溶液を容器に充填し、容器中でゲル化させることを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
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