JP5107584B2 - 機能性ゼリー組成物とその製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、これまでの取り組みは、生成したゲルの強度や食感を利用するものがほとんどであり、ゲルの強度や硬さを制御して、ゲル自体に機能性を持たせるような試みはあまりなされて来なかった。特に、医薬品の分野においては、特許文献1に見られるような腸溶性ゼリー製剤などの試みが散見されるような状況であった。このようにゼリー組成物は医療用としての機能化についてほとんど研究が進められていない。
そこでまずは、低温充填、崩壊性向上につき研究し、最終目標を崩壊性の制御つまり腸溶性に置いた。ゼリーを医療用製剤として使用するにあたりこれらの問題に付き様々なアプローチを行った。
ゼリー組成物の機能化においてはゲルの強度や硬さによって変化する。即ち、ゲルの機能は、主にはゲルのマトリックス構造に依拠する所が大きいと考えられるので、ゲル・マトリックス構造の制御の仕方によっては、色々な新しい機能、特徴をゲルに付与することができるものと考えられる。
そこで、ゲル・マトリックスの構築方法として、今後の検討が行いやすい低温充填が可能な構築方法として、ゲル化剤と多価金属イオンによるマトリックス構築を検討することとした。即ち、ジェランガム、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、カラギーナンから選択されるゲル化剤とカルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン等の多価陽イオンが反応して生成するゲル・マトリックスについて、いくつかの検討を行うこととした。
そこで、これまでのゲル・マトリックスの崩壊促進に関する先行文献を整理した。しかし、このような先行技術文献はほとんど見出すことができなかった。例えば、速崩壊性ゲルについての特許文献は、検索を行ったが見出すことができなかった。一方、崩壊性ゲルについては、検索を行うと、わずかに特許文献2と3が見出されたが、これらは口腔内洗浄用組成物に関するものであり、しかもゲルのマトリックス構造が弱くなって崩壊し易くなっていると言うことではなく、口腔内を洗浄するために、口腔内で噛み砕いてゲル・マトリックスを崩壊させることを表しているに過ぎない。即ち、噛み砕くためのゲルと言う意味で、崩壊性ゲルと言う言葉を使用している。
また、これらのゲルには、口腔内の清掃助剤として沈降性シリカ、ジルコノシリケート、アルミノシリケート、リン酸カルシウム等を配合しても良い旨の記載があるが、実施例には全く開示がなく、ゲルに対する影響も全く記載されていない状況である。
[1]基盤となるゲル・マトリックスの設定:
(熱付加逆性ゲル:ゲル化剤/多価金属イオン)
(1)ゲル化剤:ペクチン、ジェランガム、アルギン酸、アルギン酸塩、グルコマンナン、カラギーナン、カルボキシビニルポリマー等
(2)多価金属イオン:アルカリ土類金属イオン
カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン
[2]マトリックス構造の崩壊性機能付与の手段:
(微粉末状固形物の添加によるゲル崩壊性の制御)
(1)微粉末難溶性固体の添加:
無機材料:二酸化ケイ素、カオリン、沈降性シリカ、ジルコノシリケート等
有機材料:結晶セルロース、活性炭、難溶有機低分子化合物等
(2)微粒子状常温固形脂肪の添加:
難溶性脂肪族有機酸:ステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸等
高級アルコール:ステアリルアルコール、サラシミツロウ等
他の脂肪:パラフィン、ワセリン、ラノリン等
次に、ゲル化剤を多価金属イオンで架橋したゼリー組成物はアルカリ土類金属塩の種類によっては、低温充填可能なゼリー組成物となりうる。しかしながら本来ゲル化剤を多価金属イオンで架橋したゼリーは胃におけるpHでも腸におけるpHでも崩壊しづらく腸溶性を意味する日本薬局方崩壊試験液1液(pH1.2)中に120分浸漬攪拌すると崩壊せず、日本薬局方崩壊試験液2液(pH6.8)中に浸漬攪拌すると120分以内に崩壊するという崩壊挙動にはならない。そこで、そのゲル化剤を多価金属イオンで架橋したゼリー組成に微粉末組成物を添加すると日本薬局方崩壊試験液2液での崩壊性のみが向上し、上述の腸溶性を示すゼリー組成物となり本発明を完成した。
このようにして、マトリックスの構造緩和剤として微粉末状固形物を添加したゼリー組成物は、十分なゼリー強度を保ちつつも崩壊性を有し、さらには低温充填のできる腸溶ゼリーなどにも応用できる機能性ゼリー組成物であることを見出した。
[1]ゲル化剤としてアルギン酸ナトリウム、カラギーナン、ペクチン、カルボキシビニルポリマーの中から一つ又は複数が選択され、ゲル・マトリックスの崩壊剤としての微粉末状固形物と、アルカリ土類金属塩と、水とを含有するゼリー組成物であって、
(1)日本薬局方崩壊試験液1液(pH1.2)中に120分浸漬攪拌しても崩壊せず、
(2)日本薬局方崩壊試験液2液(pH6.8)中に浸漬攪拌すると120分以内に崩壊する、
ことを特徴とする、ゼリー組成物。
[2]薬効成分が添加されている、上記[1]に記載のゼリー組成物。
[3]アルカリ土類金属塩が親水性溶剤に分散して添加されている、上記[1]又は[2]に記載のゼリー組成物。
[4]親水性溶剤が濃グリセリンである、上記[1]〜[3]のいずれかに記載のゼリー組成物。
[5]アルカリ土類金属塩がカルシウム塩である、上記[1]〜[4]のいずれかに記載のゼリー組成物。
[6]カルシウム塩がクエン酸カルシウムである、上記[1]〜[5]のいずれかに記載のゼリー組成物。
[7]ゲル化試剤が、アルギン酸ナトリウムである、上記[1]〜[6]のいずれかに記載のゼリー組成物。
[8]アルギン酸ナトリウムがゼリー組成物の0.5〜4.0w/w%である、上記[1]〜[7]のいずれかに記載のゼリー組成物。
[9]微粉末状固形物として、結晶セルロース、二酸化ケイ素、ステアリン酸の中から一つ又は複数が選択されるものである、上記[1]〜[8]のいずれかに記載のゼリー組成物。
[10]糖又は糖アルコールが添加されている、上記[1]〜[9]のいずれかに記載のゼリー組成物。
[11]防腐剤が添加されている、上記[1]〜[13]のいずれかに記載のゼリー組成物。
a)ゲル化剤としてアルギン酸ナトリウム、カラギーナン、ペクチン、カルボキシビニルポリマーの中から一つ又は複数を選択し、ゲル・マトリックスの構造緩和剤としての微粉末状固形物と、水とを混合し、加温して均一分散溶液とする、
b)該均一分散溶液を冷却した後、低温下で薬効成分を含有する溶液を加えて攪拌する、c)低温下でアルカリ土類金属塩を加えて攪拌し均一分散溶液とする、
d)アルカリ土類金属塩添加後の均一分散溶液を容器に充填し、容器中でゲル化させる、
ことによる、
(1)日本薬局方崩壊試験液1液(pH1.2)中に120分浸漬攪拌しても崩壊せず、
(2)日本薬局方崩壊試験液2液(pH6.8)中に浸漬攪拌すると120分以内に崩壊する、
との物性を有する、ゼリー組成物の製造方法。
[13]アルカリ土類金属塩が親水性溶剤に分散されて添加される、上記[12]に記載の製造方法。
[14]アルカリ土類金属塩がカルシウム塩である、上記[12]又は[13]に記載の製造方法。
[15]カルシウム塩がクエン酸カルシウムである、上記[12]〜[14]のいずれかに記載の製造方法。
[16]ゲル化試剤が、アルギン酸ナトリウムである、上記[12]〜[15]のいずれかに記載の製造方法。
[17]微粉末状固形物として、結晶セルロース、二酸化ケイ素、ステアリン酸の中から一つ又は複数が選択されるものである、上記[12]〜[16]のいずれかに記載の製造方法。
[18]低温が、氷冷または室温の範囲である、上記[12]〜[17]のいずれかに記載の製造方法。
[19]糖または糖アルコールが添加されている、上記[12]〜[18]のいずれかに記載の製造方法。
[20]アルギン酸ナトリウムがゼリー組成物の0.5〜4.0w/w%である、上記[12]〜[19]のいずれかに記載の製造方法。
[21]キレート剤またはpH調節剤が添加されている、上記[12]〜[20]のいずれかに記載の製造方法。
[22]キレート剤またはpH調節剤防腐剤として、クエン酸が添加されている、上記[12]〜[21]のいずれかに記載の製造方法。
特に、本発明のpH感受性ゼリー組成物はpHに依存し、日本薬局方崩壊試験液1液(pH1.2)中に120分浸漬攪拌しても本発明のゼリー製剤は崩壊せず、また、日本薬局方崩壊試験液2液(pH6.8)中に120分浸漬攪拌すると崩壊して均一の溶液となることができる。そのため、効果的な腸溶性ゼリー製剤として有用な経口製剤を提供できる。更に、本発明のpH感受性ゼリー剤は、上記酸性条件下で、ゼリー剤内部への酸性溶液の浸潤が抑制されており、胃の中での薬効成分に対する胃酸の影響が極力抑えられて、腸管内に薬剤成分を送達できるので、より有効性の高い腸溶性ゼリー剤のDDSが提供できる。
本発明の第一の態様は機能性ゼリー組成物に関するものである。
本発明において「微粉末状固形物」とは、微粉末状の形状の、水に難溶な物質で常温で固体のものを言う。微粉末状とは、粒子径が1〜500μmのものを言い、なるべく細かな粒子径のものが望ましい。常温で固体の水に難溶な物質とは、水に難溶又は不溶な無機材料であり、または水に難溶又は不溶な有機材料を言う。これらの材料はゼリー組成物を形成する液性によって、溶解度は変化するが、特に言及しない限り、中性の水の溶解度として取り扱う。なお、水に難溶とは、一般的に水に難溶であることを言い、例えば溶解度として3w/w%以下(冷水100g中に溶解する溶質の量が3g以下)のものを「水に難溶」であると言う。好ましくは1w/w%以下であることが好ましい。
常温で固体の水に難溶な物質の中で、無機材料としては、例えば二酸化ケイ素、カオリン(石膏)、珪藻土、タルク、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、活性炭等のものを挙げることができる。有機材料としては、例えば:結晶セルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、でんぷん、難溶有機低分子化合物等を挙げることができる。なお、難溶有機低分子化合物の中で、微粒子状の常温固形脂肪として、ステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸等の脂肪族カルボン酸、ステアリルアルコール、サラシミツロウ等の高級アルコール、パラフィン、ワセリン、ラノリン等の他の脂肪、としてステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等の難溶性の脂肪酸塩を使用することができる。更には、界面活性剤のフリーの有機酸で難溶の常温固体の化合物も使用することが可能である。
これらのうち、腸溶性を示すゼリー製剤の微粉末状固形物としてはステアリン酸が好ましい。
これらの微粉末状固形物のゼリー組成物への添加方法として、高温で液体となる物質においては液を高温にして乳化させることにより、微粉形成させ、その後に降温し低温下で添加させなければならない薬物等を添加し、充填する方法がある。この方法で添加するともともと微粉末でない固形物も微粉化して配合することができる。このようにして乳化させる時の乳化剤として、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルなどが挙げられる。特にポリビニルアルコールは好ましい。
なお、添加量を増減させることにより、ゲルの崩壊性を制御することができる。
また、ゲル化剤を多価金属イオンで架橋したゼリー組成に微粉末組成物を添加すると腸溶を意味する日本薬局方崩壊試験液1液(pH1.2)中に120分浸漬攪拌しても崩壊せず、また、日本薬局方崩壊試験液2液(pH6.8)中に浸漬攪拌すれば120分以内に崩壊し均一溶液となるようなのゲル・マトリックスを作製することができる。
アルギン酸ナトリウムは、カルシウムイオンと反応して急速にゲル化することが知られており、ゲル化速度を調整するための工夫が色々なされている。本発明では、ゲル化速度を制御するため、約6前後のpHで、ゆっくりと溶解するアルカリ土類金属塩を使用することが本発明の一つの特徴である。即ち、アルギン酸ナトリウム等が溶解したゲル・ベースに対して、アルカリ土類金属塩の微細粉末を固体で投入し、ゆっくりと溶解させる必要がある。従って、本発明で使用されるアルカリ土類金属塩は、ゲル・ベースの液性(pH5.5〜7.0)に応じて、ゆっくり溶解するものが望ましい。例えば、カルシウム塩の場合、pH6以上で水に難溶なカルシウム塩としては、クエン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム2水和物、硫酸カルシウム2水和物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムカルシウム(ドロマイト)、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等が挙げられ、水に不溶性のカルシウム塩としては、無水リン酸1水素カルシウムを挙げることができる。
なお、水に可溶性のカルシウム塩を使用する場合、例えば塩化カルシウム6水和物、グルクロン酸カルシウム、乳酸カルシウム等を使用する場合には、キレート剤を添加して、ゲル化速度を調整することができる。
このように、本発明で使用可能なアルカリ土類金属塩は、上記の中から1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。アルカリ土類塩の選定については、ゲル・ベースの液性(pH)等に大きく影響を受けるので、液性にあったものを選択する必要がある。
本発明に用いられる好ましいアルカリ土類金属としては、例えばカルシウムを挙げることができ、好ましいアルカリ土類金属塩としては、有機酸アルカリ土類金属塩を挙げることができる。より好ましい有機アルカリ土類金属塩としては、例えばクエン酸カルシウムを挙げることができる。
なお、ゲル・ベース等の液性は、pHメーター等の通常の液性測定機器で測定することができ、上記の液性になるよう調整することができる。
特に薬効成分を溶解させたゲル・ベースの液性が中性に近く、また、アルカリ土類金属塩を溶解させて生成したゲル組成物も中性に近いものであれば、一般に薬効成分は安定と考えられる。従って、少なくともゲル・ベースと最終ゲル組成物の液性を中性になるように添加する試剤とアルカリ土類金属塩の量比を工夫することが好ましい。これらの制御を行うことにより、例えば、酸と熱によって影響を受けやすい低分子化合物やたんぱく質、オリゴペプチド類も使用することができることになる。更に、本発明のゼリー組成物は腸溶性製剤としても使用することが可能であるので、例えばトラニラスト等の低分子化合物や、例えばトロンビン、カルシトニン等のたんぱく質やペプチド類、乳酸菌等に適用することができる。-
なお、薬効成分は、薬効成分の熱安定性にもよるが、通常、ゲル化剤と微粉末状固形物の均一分散溶液の冷却後、アルカリ土類金属塩を添加する前に、添加し溶解させておくことが望ましい。
これらの薬効成分は、水に溶解性の高いものは、アルギン酸ナトリウムと共に溶解させてカルシウムイオンとの反応に使用することができる。水に溶解性が悪い薬効成分の場合には、親水性の溶剤に溶解して使用することができる。親水性で薬効成分を溶解できるものであれば、特に限定されるものではないが、経口用として使用可能なものを用いるとよい。例えば濃グリセリン、グリセリン、ポリビニルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコール等の多価アルコールが挙げられる。好ましくは濃グリセリン、ポリビニルアルコールを挙げることができる。
pH調整剤としては、例えば、クエン酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸等の有機酸とそれらのアルカリ金属塩からなる緩衝剤や例えば、リン酸等の無機酸とそれらのアルカリ金属塩の緩衝剤を挙げることができる。本発明のゼリー組成物の液性はpHが約3〜7.5の範囲に調整されることが望ましい傾向にある。特に、pHが約6前後に調整されることがより好ましい。
防腐剤としては、例えば安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸、パラオキシ安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル(プロピルパラベン)、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸イソブチル、プロピオン酸、プロピオン酸ナトリウム等を挙げることができる。
これらの添加剤を均一に溶解させるために、適宜、溶解助剤を使用することができる。ここで使用される溶解助剤とは、水あるいは親水性の油状溶剤のことであり、例えば濃グリセリン、グリセリン、ポリビニルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコール等の多価アルコールが挙げられる。好ましくは濃グリセリン、ポリビニルアルコールを挙げることができる。
また、本発明のゼリー組成物に腸溶性を示す基剤を配合することもできる。例えば、セルロース誘導体であるメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート、ヒプロメロースフタル酸エステルやメタアクリル酸−エチルアクリレートコポリマー等を腸溶性の補助として配合することができる。
本発明のゼリー製剤は水溶性高分子を配合することができる。例えばカルメロースナトリウム、カルメロース、キサンタンガム、ラムダカラギーナン、ポビドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸等が挙げられる。
本発明のゼリー組成物にタンパク質を配合することができる。例えばカゼイン、アルブミン、コラーゲン等を配合することができる。
本発明において「加温」とは、ゲル化剤を溶解させ均一溶液とするために必要な加熱のことを言い、例えば、60℃以上の温度になるように加熱することを言う。好ましくは70〜85℃までの温度範囲で加熱することが望ましい。
本発明において「低温」とは、薬効成分が安定に存在し得る低温を言い、通常は室温から氷冷下の温度範囲のことを言う。
本発明において「容器」とは、小分けして分包できる袋状のものを言い、例えば最内層がポリエチレンで被覆されたアルミラミネートフィルム容器等のものである。分注後は熔封圧着シールして保存する。従って、ゲル化は、それぞれの分注された容器の中で反応が進行する。ゲル化の速度はアルカリ土類金属塩の添加量と容器の温度によって影響される。
本発明において「アルカリ土類金属塩を加えて攪拌」とは、前述のようにアルカリ土類金属塩を固体微粉末で添加しても良く、親水性溶剤に分散させて添加しても良い。好ましくは、親水性溶剤に分散させて添加することが望ましい。
以下の表1(表中の数値はg数を表す)の組成で各試剤を秤取する。まず、アルギン酸ナトリウム、ソルビトール液、濃グリセリン、精製水、ポリビニルアルコール、プロピルパラベン、クエン酸を混合し、80℃で30分間加熱攪拌して均一溶液とする。その後、溶液を室温に冷却して、微粉末のクエン酸カルシウムを添加して3分間攪拌した。その後、ガラス製の容器に分注して室温でゲル化を進行させ、ゼリー組成物を得た。
その結果を併せて表1に記載した。
液性は、ゲル・ベース(クエン酸Caの添加前の溶液)のpH値、最終ゲル製剤のpH値を表す。
試料No.1〜4のいずれにおいても、しっかりした強度を持ったゼリー組成物が製造できた。
以下の表2(表中の数値はg数を表す)の組成で各試剤を秤取する。まず、アルギン酸ナトリウム、ソルビトール液、濃グリセリン、精製水、ポリビニルアルコール、プロピルパラベン、クエン酸を混合し、80℃で30分間加熱攪拌して均一溶液とする。更に、ステアリン酸を加え、必要に応じて結晶セルロース、二酸化ケイ素を添加して80℃で30分間加熱攪拌する。その後、溶液を室温に冷却して、微粉末のクエン酸カルシウムを添加して3分間攪拌した。その後、ガラス製の容器に分注して室温でゲル化を進行させ、ゼリー組成物を得た。
得られたゼリー組成物を約2g分取し、それぞれを溶出試験機に掛けた。ゼリー組成物を日本薬局方崩壊試験液2液(pH6.8)中に浸漬して、ゼリー組成物の崩壊性を評価した。ゼリー組成物が2液に完全に溶解した場合には、溶解するまでの所要時間(崩壊時間)でゼリー組成物の崩壊性を表すこととした。その結果を併せて表2に記載した。
液性は、ゲル・ベース(クエン酸Caの添加前の溶液)のpH値、最終ゲル製剤のpH値を表す。
×:2液中で浸漬攪拌を2時間行ったが残存するゼリー組成物が残ったことを表す。
残存量が測定できる場合には、溶液中に溶解した組成物量を%で表す。
更にこれまでの結果を参照すると、微粉末状固形物の添加量にも大きな影響を受けるが、ステアリン酸はゼリー組成物の崩壊性に大きい影響を与える崩壊性加速因子であり、結晶セルロースや二酸化ケイ素は崩壊性加速因子に該当するほどではないが、ステアリン酸と共存して、より崩壊性を促進できる補助因子であることが示されている。
なお、ステアリン酸は細かい粒子となって、ゼリー組成物中に縣濁しており、白濁して見える。ステアリン酸が細かく分散すれば良好な崩壊性が得られる傾向にあり、ステアリン酸の分散性にポリビニルアルコールが寄与している傾向が見られた。
以下の表3と表4(表中の数値はg数を表す)の組成で各試剤を秤取し、まず、アルギン酸ナトリウム、ソルビトール液、濃グリセリン、精製水、ポリビニルアルコール、プロピルパラベン、クエン酸を混合し、80℃で30分間加熱攪拌して均一溶液とする。更に、結晶セルロースまたは二酸化ケイ素を添加して80℃で30分間加熱攪拌する。その後、溶液を室温に冷却して、微粉末のクエン酸カルシウムを添加して3分間攪拌した。その後、ガラス製の容器に分注して室温でゲル化を進行させ、ゼリー組成物を得た。
その結果を表3と表4に示す。
液性は、ゲル・ベース(クエン酸Caの添加前の溶液)のpH値、最終ゲル製剤のpH値を表す。
液性は、ゲル・ベース(クエン酸Caの添加前の溶液)のpH値、最終ゲル製剤のpH値を表す。
この結果、固形添加物の如何に係らず、しっかりした強度のゼリー組成物が形成できた。
以下の表5(表中の数値はg数を表す)の組成で各試剤を秤取し、まず、アルギン酸ナトリウム、ソルビトール液、濃グリセリン、精製水、ポリビニルアルコール、プロピルパラベン、クエン酸を混合し、80℃で30分間加熱攪拌して均一溶液とする。更に、ステアリン酸を添加して80℃で30分間加熱攪拌する。その後、溶液を室温に冷却して、微粉末のクエン酸カルシウムを添加して3分間攪拌した。その後、ガラス製の容器に分注して室温でゲル化を進行させ、ゼリー組成物を得た。また、ゼリー組成物の崩壊性も、実施例2と同様に評価した。その結果を併せて表5に記載した。
液性は、ゲル・ベース(クエン酸Caの添加前の溶液)のpH値、最終ゲル製剤のpH値を表す。
×:2液中で浸漬攪拌を2時間行ったが残存するゼリー組成物が残ったことを表す。
残存量が測定できる場合には、溶液中に溶解した組成物量を%で表す。
この結果、微粉末状固形物(ステアリン酸)の添加量が増大するに従い、速崩壊性が向上し、2液での崩壊時間は短縮することが示された。
カルシウム塩の添加量変化により、ゼリー組成物の崩壊性がどのように影響を受けるかを確認するため、以下の表6と表7(表中の数値はg数を表す)の組成で各試剤を秤取し、実施例1と同様にゼリー組成物を作成した。なお、ゼリー組成物の崩壊性は、2液中での浸漬攪拌の2時間後に、残存ゼリー組成物の量を秤量し、2液中に溶解した組成物の溶解率(%)を崩壊性の尺度とした。また、2時間以内に完全に溶解してゼリー組成物が消失した場合には、消失するまでに要した時間を示す。その結果を併せて表6に記載した。これらの結果を表6と表7に記載した。
液性は、ゲル・ベース(クエン酸Caの添加前の溶液)のpH値、最終ゲル製剤のpH値を表す。
この結果、クエン酸Caは、アルギン酸Naの重量を1として、0.05ではゲル化が困難であることが分かった。また、0.2以上あるとゲル化することが示された。
ゼリー組成物に対する糖アルコール(ソルビトール)の添加効果を確認するため、以下の表8(表中の数値はg数を表す)の組成で各試剤を秤取し、実施例4と同様にゼリー組成物を作成した。ゼリー組成物の崩壊性も、実施例5と同様に評価した。その結果を併せて表8に記載した。
×:2液中で浸漬攪拌を2時間行ったが残存するゼリー組成物が残ったことを表す。
残存量が測定できる場合には、溶液中に溶解した組成物量を%で表す。
この結果、糖アルコール(ソルビトール)の添加量が増大してくると、ゼリー組成物が安定化し、崩壊性が阻害されるようになることが分かった。アルギン酸Naの添加量を1として、ソルビトール液の重量が30以下、好ましくは20以下であることが好適であることが分かった。
ゼリー組成物に対する濃グリセリンの添加効果を確認するため、以下の表9(表中の数値はg数を表す)の組成で各試剤を秤取し、実施例4と同様にゼリー組成物を作成した。また、ゼリー組成物の崩壊性も、実施例5と同様に評価した。その結果を併せて表9に記載した。
×:2液中で浸漬攪拌を2時間行ったが残存するゼリー組成物が残ったことを表す。
残存量が測定できる場合には、溶液中に溶解した組成物量を%で表す。
この結果、濃グリセリンの量が増えるとベル型の曲線を描き、アルギン酸Naの重量を1とすると濃グリセリンの添加量が5から10の範囲で崩壊性が良好となり、20を超えるようになると崩壊性が悪くなる傾向が認められた。
実施例6と7によれば、ゼリー組成物の崩壊時間に関して糖アルコールと濃グリセリンは、アルギン酸Naを1重量部として、それぞれ20〜30を添加すると崩壊性が悪くなることが分かった。そこで、ゼリー組成物中に糖アルコールと濃グリセリンが共存する場合に、相加効果か、相乗効果のどちらが生じるのかを確認することを行った。そこで、実施例6の糖アルコールの結果に基づき、ソルビトールが好ましい添加量(5〜20)内で、濃グリセリンの量を変化させた。これを行うため、以下の表10(表中の数値はg数を表す)の組成で各試剤を秤取し、実施例4と同様にゼリー組成物を作成した。ゼリー組成物の崩壊性も、実施例5と同様に評価した。その結果を併せて表10に記載した。
×:2液中で浸漬攪拌を2時間行ったが残存するゼリー組成物が残ったことを表す。
残存量が測定できる場合には、溶液中に溶解した組成物量を%で表す。
この結果、糖アルコールと濃グリセリンが共存する場合には相加効果的であることが分かった。
ゼリー組成物の崩壊性に影響を与える主な因子はステアリン酸であるが、結晶セルロースはその崩壊性をどのように加速させるかを検討した。このために、以下の表11(表中の数値はg数を表す)の組成で各試剤を秤取し、まず、アルギン酸ナトリウム、ソルビトール液、濃グリセリン、精製水、ポリビニルアルコール、プロピルパラベン、クエン酸を混合し、80℃で30分間加熱攪拌して均一溶液とする。更に、結晶セルロース、ステアリン酸を添加して80℃で30分間加熱攪拌する。その後、溶液を室温に冷却して、微粉末のクエン酸カルシウムを添加して3分間攪拌した。その後、ガラス製の容器に分注して室温でゲル化を進行させ、ゼリー組成物を得た。ゼリー組成物の崩壊性も、実施例5と同様に評価した。その結果を併せて表11に記載した。
×:2液中で浸漬攪拌を2時間行ったが残存するゼリー組成物が残ったことを表す。
残存量が測定できる場合には、溶液中に溶解した組成物量を%で表す。
この結果、結晶セルロースを添加するとゲル・マトリックスの崩壊性が向上しており、その結果、崩壊時間が短くなっている。
以下の表12(表中の数値はg数を表す)の組成で各試剤を秤取し、まず、アルギン酸ナトリウム、κλカラギーナン、クエン酸、クエン酸Na、リン酸、リン酸水素ナトリウム、ポリビニルアルコール、プロピルパラベン、精製水を混合し、80℃で30分間攪拌した後、結晶セルロース、ステアリン酸を添加して80℃で30分間攪拌する。混合溶液を冷却して室温に下げた後、BSAと濃グリセリンを室温下で添加し攪拌した。その後、微粉末のクエン酸カルシウムを添加して3分間攪拌した。得られたクエン酸Caの均一分散溶液を、ガラス製の容器に分注して室温下でゲル化を進行させ、ゼリー組成物を得た。その結果を表12に記載した。
液性は、ゲル・ベース(クエン酸Caの添加前の溶液)のpH値、最終ゲル製剤のpH値を表す。
得られたゲル組成物は、しっかりしたゲル強度を持つものであり、アルギン酸Naの濃度が1%程度以上であれば充分な強度のものであることが分かった。
Claims (10)
- ゲル化剤としてアルギン酸ナトリウムを有し、かつ、構造緩和剤としてステアリン酸を含有するゼリー組成物を以下の工程で作製する製造方法であって、
a)ゲル化剤としてアルギン酸ナトリウムを選択し、ゲル・マトリックスの構造緩和剤としてステアリン酸と、水とを混合し、加温して均一分散溶液とする、
b)該均一分散溶液を冷却した後、低温下で薬効成分を含有する溶液を加えて攪拌する、
c)低温下でアルカリ土類金属塩を加えて攪拌し均一分散溶液とする、
d)アルカリ土類金属塩添加後の均一分散溶液を容器に充填し、容器中でゲル化させる、
ことによる、
(1)日本薬局方崩壊試験液1液(pH1.2)中に120分浸漬攪拌しても崩壊せず、
(2)日本薬局方崩壊試験液2液(pH6.8)中に浸漬攪拌すると120分以内に崩壊する、
との物性を有する、ゼリー組成物の製造方法。 - アルカリ土類金属塩が親水性溶剤に分散されて添加される、請求項1記載の製造方法。
- アルカリ土類金属塩がカルシウム塩である、請求項1又は2に記載の製造方法。
- カルシウム塩がクエン酸カルシウムである、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- 構造緩和剤として、結晶セルロース及び/又は二酸化ケイ素が更に添加されている、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
- 低温が、氷冷または室温の範囲である、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
- 糖または糖アルコールが添加されている、請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
- アルギン酸ナトリウム量がゼリー組成物の0.5〜4.0w/w%である、請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
- キレート剤またはpH調節剤が添加されている、請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
- pH調節剤として、クエン酸が添加されている、請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。
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