JP5103720B2 - 樹脂組成物 - Google Patents
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Description
J.Phys.:Condens. Matter 8(1996) p3811-3827
又、特許文献3、4及び5等により、ある種の樹脂に有機リン酸エステル金属塩を配合した組成物が知られているが、芳香族ポリエステル樹脂と脂環式ポリエステル樹脂を含む樹脂組成物に有機リン酸エステル金属塩を配合すること、それによりエステル交換反応を抑制し、着色を抑え、かつ耐加水分解性を改善することは知られていない。
即ち、本発明は、着色が少なく透明性に優れ、かつ耐加水分解性及び耐薬品性に優れた樹脂組成物を提供すること、を目的とするものである。
し、Mは、アルカリ土類金属、及び亜鉛からなる群より選ばれる金属を示す。)
本発明の樹脂組成物における(A)芳香族ポリカーボネート樹脂は、芳香族環を有するポリ炭酸エステルであり、通常、芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲン又は炭酸ジエステルとを反応させることによって得られ、この製造方法としては、ホスゲン法、エステル交換法等特に限定されない。
炭酸ジエステルとしては、下記式(5)で表される化合物が挙げられる。
上記式(5)で表される炭酸ジエステルとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−t−ブチルカーボネート等のジアルキルカーボネート;ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリールカーボネート等が例示される。これらの炭酸ジエステルは、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよいが、これらの中では、ジフェニルカーボネート、置換ジフェニルカーボネートが好ましく、特にジフェニルカーボネートを用いるのが好ましい。
ロピルベンゼン等で例示される多価ヒドロキシ化合物、3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチンビスフェノール、5,7−ジクロルイサチンビスフェノール、5−ブロムイサチンビスフェノール等を分岐に対応する量使用すればよい。
末端停止剤又は分子量調整剤としては、一価のフェノール性水酸基を有する化合物等を用いることができ、一価のフェノール性水酸基を有する化合物としては、通常のフェノール、p−t−ブチルフェノール、トリブロモフェノール、長鎖アルキルフェノール、アルキルエーテルフェノール、ヒドロキシ安息香酸アルキルエステル等が挙げられる。
一価のフェノール性水酸基を有する化合物以外には脂肪族カルボン酸クロライド、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸等も使用することができる。
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂の場合、末端停止剤または分子量調整剤は、必要に応じて2種以上を混合して使用してもよい。
ポリカーボネート1gをメチレンクロライド100mlに溶解し、オストワルド粘度計でその比粘度(ηsp)を測定する。更に濃度(c)を変えて、同様に比粘度を測定し、各濃度(c)とその濃度で測定された比粘と濃度の比(ηsp/c)をグラフにプロットし、
極限粘度〔η〕=limηsp/c
c→O
を求める。
なお、ここで主成分とするとは、ジカルボン酸成分及びジオール成分に対し、夫々80モル%以上であることをいうものとする。(B)脂環式ポリエステル樹脂は、その性能を損なわない限り、用いられる原料中に上記のジカルボン酸成分およびジオール成分以外の成分を含むことが可能であるが、これら以外の成分は、通常、ジカルボンサン成分とジオール成分の合計のモル数に対して10モル%程度以下である。
なお、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及び/またはそのエステル形成性誘導体のトランス体とシス体との比率(トランス体:シス体)は、通常、80:20〜100:0の範囲であり、得られる脂環式ポリエステル樹脂の耐熱性の点から85:15〜100:0が好ましく、より好ましくは90:10〜100:0である。
このような脂環式ジオールとしては、例えば、1,2−シクロペンタンジメタノール、1,3−シクロペンタンジメタノール、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.0]デカン等の5員環含有ジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン等の6員環含有ジオール等が挙げられる。これらの中でも、6員環に水酸基が2つ結合したジオール、具体的には、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましく、特に1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。1,4−シクロヘキサンジメタノールは、メチロール基が1位と4位の位置にあるので反応性が高く、高重合度ポリエステルが得やすいこと、高いガラス転移温度のポリエステル樹脂が得られること、および工業生産品であり入手が容易であるという利点があるからである。
なお、1,4−シクロヘキサンジメタノールのトランス体とシス体の比率(トランス:シス)は、得られる脂環式ポリエステル樹脂のガラス転移温度の点から60:40〜100:0の範囲内にあることが好ましい。
なお、(B)脂環式ポリエステル樹脂としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を主成分とするジカルボン酸成分と、1,4−シクロヘキサンジメタノールを主成分とするジオール成分とから得られる脂環式ポリエステル樹脂が、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂との相溶性の点で好ましい。
上記のようにして得られた本発明の樹脂組成物は、プレッシャークッカー試験機内で120℃、0.11MPaの水蒸気雰囲気に24時間暴露した後の固有粘度保持率が70%以上であり、かつイエローネスインデックスが10以下であるのが好ましい。その測定条件は、後述の実施例に記載の通りである。固有粘度保持率が小さいことは耐水性が劣ることを意味し、イエローネスインデックス(YI)が大きいことは黄色味の着色が生じ、透明性も劣ることを意味するので、特に医療器具等の高温殺菌処理が必要な用途には好ましくない。上記固有粘度保持率及びイエローネスインデックス(YI)の樹脂組成物は、上記成分(A)、(B)及び(C)を含有する本発明の樹脂組成物の中でも、成分(C)の金属成分として亜鉛又はアルミニウムを選択することにより、好ましくは、その配合比を好ましい範囲に選択することで得ることができる。
なお、以下の諸例で使用した原材料及び評価方法は次の通りである。
また、樹脂組成物、成形品などの物性は、以下に記載した項目について、以下に記載の方法で評価した。
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂
(A−1)三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製 ユーピロン(登録商標)S−3000F
(B)脂環式ポリエステル樹脂
(B−1):下記製造例1に記載の脂環式ポリエステル樹脂
固有粘度=1.143dl/g、末端カルボン酸濃度=13.2当量/トン、YI(ペレット)=8.9、融点217.3℃
(B−2):下記製造例2に記載の脂環式ポリエステル樹脂
固有粘度=0.841dl/g、末端カルボン酸濃度=2.7当量/トン、YI(ペレット)=13.8、融点219.6℃
(C)リン酸エステル金属塩
(C−1)リン酸エステル亜鉛塩:堺化学工業社製LBT-1830
モノステアリルリン酸の亜鉛塩とジステアリルリン酸の亜鉛塩の混合物
(C−2)リン酸エステルアルミニウム塩:堺化学工業社製LBT-1813
モノステアリルリン酸のアルミニウム塩とジステアリルリン酸のアルミニウム塩の混合物
(C−3)リン酸エステルカルシウム塩:堺化学工業社製LBT-1820
モノステアリルリン酸のカルシウム塩とジステアリルリン酸のカルシウム塩の混合物
(D)リン酸エステル金属塩以外のリン化合物
(D−1)亜リン酸 :和光純薬社製
(D−2)ポリリン酸 :和光純薬社製
各種物性測定方法および分析方法
試料約0.25gを、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(重量比1/1)の混合溶媒を用いて、濃度が約1.00g/dLとなるように溶解させ濃度C(g/dL)を算出する。この溶液を、30℃まで冷却、保持し、全自動溶液粘度計(センテック社製「2CH型DJ504」)にて、試料溶液の落下秒数(t)及び溶媒のみの落下秒数(t0)を測定し、下式により算出した。
IV=((1+4KHηsp)0.5−1)/(2KHC)
ここで、 ηsp=t/t0−1 であり、ηは試料溶液の落下秒数、η0は溶媒のみの落下秒数、Cは試料溶液濃度(g/dL)、KHはハギンズの定数である。KHは0.33を採用した。
試験管にペレット0.4gを採取し、ベンジルアルコール25mlに加え、195±3℃に設定したオイルバス中で7〜9分間加熱し溶解する。得られた溶解溶液を、常温まで放冷し、エチルアルコール2mlを加え、自動滴定装置(東亜ディケーケー社製、形式:AUT−501)によって、複合pH電極を用いて、0.01規定の水酸化ナトリウム・ベンジルアルコール溶液で滴定した。
尚、0.01規定の水酸化ナトリウム・ベンジルアルコール溶液は、JIS K8006に準拠して調製、標定を行い、ファクターを算出した。得られた滴定曲線の変曲点から滴定量を求め、次式すなわち、
末端カルボン酸濃度(AV)={(A−B)×0.01N×F}/W
に基づいて、AVを算出した。
この式において、Aは、測定滴定量(ml)、Bはブランク滴定量(ml)、Fは、0.01規定の水酸化ナトリウム・ベンジルアルコール溶液力価、Wは、ペレット重量である。
JISK7103に従い、光電色彩計(日本電色工業社製ND−300)を用いて、試料ペレットを直径30mm、高さ18mmの円柱状の石英セルに充填し、約90度づつ回転させながら4回平均で三刺激値X、Y、Zを測定し、黄色度Y1は下式によって計算で求めた。
YI=100(1.28X−1.06Z)/Y
<融点の測定方法>
JIS K 7121に従い、示差走査熱量計(セイコーインスツルメント社製DSC220)を用いて以下のようにして測定した。
ペレット化した試料から約10mgをカッターナイフで切り出し、アルミパンに入れ密封し、昇温速度20℃/分で室温から300℃まで加熱し、300℃で3分間保持した後に、降温速度20℃/分で300℃から25℃まで冷却し、さらに昇温速度20℃/分で300℃まで昇温した。融点は、二回目の昇温時の値を採用し、融解熱ピークの極大部分の温度とした。
ペレットを飽和型プレッシャークッカー試験機(平山製作所社製、形式:PC−242)に入れ、120℃、水蒸気圧0.11MPaで24時間処理した。
耐加水分解性は、処理前の固有粘度(IVO)に対する処理後の固有粘度(IVI)の保持率(%)で示した。
攪拌機、留出管、加熱装置、圧力計、温度計および減圧装置を有する容量が100リットルのステンレス製反応器に、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(トランス体:シス体の比率が96:4)101.5重量部、1,4−シクロヘキサンジメタノール(トランス体:シス体の比率が69:31)87重量部およびテトラ−n−ブチルチタネートの6重量%ブタノール溶液0.005重量部を仕込み、反応器内を窒素ガスで置換した。反応器内を窒素ガスでシールしながら、内温を30分間で150℃に昇温し、さらに150℃から200℃まで1時間かけて昇温した。次いで、200℃で1時間保持してエステル化反応を行った後、200℃から250℃へ45分間で昇温しつつ、反応器内の圧力を徐々に減圧しながら重縮合反応を行った。反応機内圧力を絶対圧力0.1kPa、反応温度を250℃に保って、重縮合反応を3.7時間行った。重縮合反応終了後、得られた樹脂を水中にストランド状に抜き出し、切断してペレット化した。固有粘度および末端カルボン酸濃度は、それぞれ1.143dl/g、13.2当量/トン、YI(ペレット)=8
.9、融点217.3℃であった。
製造例1における1,4−シクロヘキサンジメタノールの仕込量を87.9重量部に、重縮合反応時間を3.7時間から4.5時間に変更したこと以外は、製造例1と同様に行った。固有粘度および末端カルボン酸濃度は、それぞれ0.841dl/g、2.7当量/トンであり、YI(ペレット)=13.8、融点219.6℃であった。
上記(A−1)の芳香族ポリカーボネート樹脂70重量部、上記(B−1)の脂環式ポリエステル樹脂30重量部及び上記(C−1)のリン酸エステル金属塩0.1重量部を秤量し、タンブラーミキサーで均一に混合して混合物とした。得られた混合物を、脱気装置を備えた二軸混練機(日本製鋼所社製TEX30-42W)のホッパーに供給した。二軸混練機はシリンダー設定温度280℃、スクリュ回転数150rpm、吐出量15kg/hrの条件で、溶融混練し、ストランド状に押し出し、カッターでペレット状にした。
得られたペレットを用いて、前述の耐加水分解性試験及びYIを測定し、結果を表1に記載した。
<実施例2〜6及び比較例1〜4>
実施例1の混練条件において、表1に記載の配合に従って同様にペレットを得た。
得られたペレットを用いて、上述の耐加水分解性試験及びYIを測定し、結果を表1に記載した。
Claims (6)
- (B)脂環式ポリエステル樹脂が、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体を主成分とするジカルボン酸成分と、1,4−シクロヘキサンジメタノールを主成分とするジオール成分とから得られる脂環式ポリエステル樹脂である請求項1に記載の樹脂組成物。
- (A)芳香族ポリカーボネート樹脂と(B)脂環式ポリエステル樹脂の重量比[(A):
(B)]が、90:10〜10:90であり、かつ(A)と(B)との合計100重量部
あたりの(C)の含有量が0.01〜5重量部である請求項1または2に記載の樹脂組成物。 - (B)脂環式ポリエステル樹脂が、融点210℃以上、末端カルボン酸濃度30当量/ton以下の脂環式ポリエステル樹脂である請求項1乃至3の何れか1項に記載の樹脂組成物。
- 1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体のトランス体とシス体の比率(トランス体:シス体)が85:15〜100:0であり、1,4−シクロヘキサンジメタノールのトランス体とシス体の比率(トランス体:シス体)が60:40〜100:0である請求項2乃至4の何れか1項に記載の樹脂組成物。
- プレッシャークッカー試験機内で120℃、0.11MPaの水蒸気雰囲気に24時間暴露した後の固有粘度保持率が70%以上であり、かつイエローネスインデックスが10以下である請求項1乃至5の何れか1項に記載の樹脂組成物。
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