JP2007291182A - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】
耐加水分解性に優れ、かつ、色調、特に溶融時着色が改良された、脂環式ポリエステル樹脂を含む樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】
第一発明は、脂環式ジカルボン酸成分(a’)を主成分とするジカルボン酸成分(a)と、脂環式ジオール成分(b’)を主成分とするジオール成分(b)からなる脂環式ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、脂環式エポキシ化合物(B)0.05ないし5.0質量部配合されてなる樹脂組成物であり、第二発明は、第一発明に係る樹脂組成物にさらに芳香族ポリカーボネート樹脂(C)が配合されてなる樹脂組成物である。
【選択図】なし

Description

本発明は、熱可塑性樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、特に色調、耐加水分解性が改良された、脂環式ジカルボン酸をジカルボン酸成分とし、脂環式ジオールをジオール成分とする脂環式ポリエステル樹脂よりなる熱可塑性樹脂組成物、および、この脂環式ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂とよりなる熱可塑性樹脂組成物に関する。
ポリエステル樹脂はフィルム、繊維、成形体など広い分野で利用されている。中でも1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(以下、1,4−CHDAと略記することがある)を主たるジカルボン酸成分とし、脂環式ジオールを主たるジオール成分とするポリエステルは透明性や耐熱性、耐候性がすぐれ用途が拡がりつつある。
しかしながら、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を主たるジカルボン酸成分とし、脂環式ジオールを主たるジオール成分とする脂環式ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートのような芳香族ポリエステルに比べて重縮合反応時や溶融成形時に着色しやすいという欠点がある。
また、ポリエステル樹脂は、比較的加水分解され易く、比較的溶融粘度が低いことから、ポリエステル樹脂の耐加水分解性の改良や溶融粘度を上昇させる目的で、ポリエステル樹脂にエポキシ化合物を配合する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、脂肪族または脂環式ジオールと芳香族ジカルボン酸とからなるポリエステル樹脂に、ラクトン鎖を有する(脂環式)エポキシ化合物を配合することによって、ポリエステル樹脂の高温での流動性の変動が少なく、耐加水分解性に優れ、揮発分の少ない樹脂組成物とする技術が記載されている。また、特許文献2には、脂肪族ポリエステルのカルボキシル基末端を、エポキシ化合物により封鎖して耐加水分解性を向上する技術が記載されている。
しかし、特許文献1の記載の技術は、ポリエステル樹脂が芳香族ポリエステル樹脂のみであって、脂環式ポリエステル樹脂については記載されていない。また、特許文献2に記載の技術は、脂肪族ポリエステル樹脂の改良についてのみの記載であり、脂環式ジカルボン酸成分を主成分とするジカルボン酸成分と脂環式ジオール成分を主成分とするジオール成分からなる脂環式ポリエステル樹脂についての記載はまったくない。さらに、特許文献2には、ポリエステル樹脂の色調改良については全く記載されていない。
一方、脂環式ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂とは、任意の配合割合で透明性を保って相溶するので、ポリカーボネート樹脂の耐候性改良の目的と、脂環式ポリエステル樹脂の耐衝撃性改良の目的で、両樹脂を混合した樹脂組成物がよく使用される(例えば、特許文献3)。しかしながら、脂環式ポリエステル樹脂と芳香族ポリカーボネート樹脂とを混合した樹脂組成物は、溶融時に着色し易いという欠点がある。また、ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂とを混合した樹脂混合物は、ポリエステル樹脂を製造する際に使用した触媒残渣、特に金属化合物が、ポリエステル樹脂自体の熱分解を促進し、従って樹脂混合物の熱安定性を悪化させるという欠点がある。
特開2002−194184号公報 特開2001−335626号公報 特開2005−133070号公報
本発明の目的は、次のとおりである。
1.耐加水分解性に優れ、かつ、色調、特に溶融時着色が改良された、脂環式ジカルボン酸成分を主成分とするジカルボン酸成分と、脂環式ジオール成分を主成分とするジオール成分からなる脂環式ポリエステル樹脂を含む、熱可塑性樹脂組成物を提供すること。
2.脂環式ポリエステル樹脂と芳香族ポリカーボネート樹脂とを含み、溶融時の着色性が改良された熱可塑性樹脂組成物を提供すること。
上記課題を解決するために、第一発明では、脂環式ジカルボン酸成分(a’)を主成分とするジカルボン酸成分(a)と、脂環式ジオール成分(b’)を主成分とするジオール成分(b)からなる脂環式ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、脂環式エポキシ化合物(B)0.05ないし5.0質量部配合されてなることを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物を提供する。
さらに第二発明では、脂環式ジカルボン酸成分(a’)を主成分とするジカルボン酸成分(a)と、脂環式ジオール成分(b’)を主成分とするジオール成分(b)からなる脂環式ポリエステル樹脂(A)90〜10質量部、および、芳香族ポリカーボネート樹脂(C)10〜90質量部からなる樹脂組成物100質量部に対し、脂環式エポキシ樹脂(B)0.01〜5.0質量部配合されてなることを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物を提供する。
本発明は、以下に詳細に説明するとおりであり、次のような特別に有利な効果を奏し、その産業上の利用価値は極めて大である。
1.本発明の第一発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、色調、特に溶融時着色が改良されているので、外観の美麗な製品(成形品)が得られる。
2.本発明の第一発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、耐加水分解性に優れ、その用途が制約されることがない。
3.本発明の第二発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、色調、特に溶融時着色が改良されているので、外観の美麗な製品(成形品)が得られる。
4.本発明の第二発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、耐加水分解性に優れ、その用途が制約されることがない。
以下、本発明を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件(実施態様)の説明は、本発明の実施態様の代表例であり、本発明はこれらの記載内容に限定されるものではない。本発明の第一発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、脂環式ジカルボン酸成分(a’)を主成分とするジカルボン酸成分(a)と、脂環式ジオール成分(b’)を主成分とするジオール成分(b)からなる脂環式ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、脂環式エポキシ化合物(B)0.05ないし5.0質量部が配合されてなるものである。
<ジカルボン酸成分>
本発明におけるジカルボン酸成分(a1)は、脂環式ジカルボン酸成分(a’)を主成分とする。主成分とするとは、全ジカルボン酸成分に対して、脂環式ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体が80モル%以上であり、残りが他のジカルボン酸であることを意味する。全ジカルボン酸成分に対して、脂環式ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体80モル%以上であると、透明性および耐熱性の双方に優れたポリエステル樹脂が得られるので好ましく、中でも、90モル%以上が一層好ましい。
脂環式ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体は、脂環式構造にカルボキシル基が2つ結合したものであれば特に限定されるものではない。具体的には、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、1,5−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、2,6−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、2,7−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、およびそれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。これらの中でも、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、およびそのエステル形成性誘導体は、得られるポリエステル樹脂の成形温度が、従来のポリエステル樹脂の成形温度に近く、また、工業的に入手しやすい点で好ましい。1,4−シクロヘキサンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体は、異性体としてトランス体とシス体があるが、得られるポリエステル樹脂の耐熱性の観点から、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体のトランス体とシス体との比率は80/20〜100/0の範囲が好ましく、より好ましいのは85/15〜100/0であり、特に好ましいのは90/10〜100/0である。特に、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸は、そのエステル形成性誘導体に比較してコストが安いので好ましい。
その他のジカルボン酸成分は、全ジカルボン酸成分に対して20モル%以下の芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、およびそのエステル形成性誘導体などを含んでいてもよい。他のジカルボン酸成分の具体例としては、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、フェニレンジオキシカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルケトンジカルボン酸、4,4’−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等芳香族ジカルボン酸、および、コハク酸、グルタン酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカジカルボン酸、ドデカジカルボン酸、およびこれらの炭素数1〜4程度のアルキルエステルなどが挙げられる。
<ジオール成分>
本発明におけるジオール成分(b)は、脂環式ジオール成分(b’)を主成分とする。主成分とするとは、全ジオール成分に対して脂環式ジオール成分(b’)が80モル%以上であり、残りが他のジオール、少量の共重合体成分などであることを意味する。全ジオール成分に対する脂環式ジオール成分(b’)の割合は90モル%以上が好ましく、より好ましくは95モル%以上であり、特に好ましいのは97モル%以上である。脂環式ジオール成分(b’)としては、脂環式構造にヒドロキシ基が2つ結合したものであれば特に限定されるものではなく、5員環または6員環に水酸基が2つ結合したジオールが好ましい。
脂環式ジオール成分(b’)が、5員環または6員環の脂環式ジオールであることにより、得られるポリエステル樹脂の耐熱性を向上させることができる。このような脂環式ジオール成分(b’)としては、例えば、1,2−シクロペンタンジメタノール、1,3−シクロペンタンジメタノール、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ、[5.2.1.0]デカンなどの5員環ジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパンなどの6員環ジオールが挙げられる。これらの中でも、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましく、特に1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。1,4−シクロヘキサンジメタノールは、メチロール基がパラ位にあるので反応性が高く、高重合度ポリエステル樹脂が得やすいこと、高いガラス転移温度のポリエステル樹脂が得られること、および工業生産品であり入手が容易であるという利点があるからである。1,4−シクロヘキサンジメタノールにはトランス体とシス体の異性体があり、トランス体とシス体のモル比は60/40〜100/0の範囲内のものが好ましい。
本発明においてその他のジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオールなどの脂肪族ジオール類が挙げられる。さらに、前記ジオール成分およびジカルボン酸成分以外の少量の共重合成分として、例えば、グリコール酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸やアルコキシカルボン酸、および、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、ステアリン酸、ベヘン酸、安息香酸、t−ブチル安息香酸、ベンゾイル安息香酸などの単官能成分、トリカルバリル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ナフタレンテトラカルボン酸、没食子酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、シュガーエステルなどの三官能以上の多官能成分が挙げられる。
<脂環式ポリエステル樹脂の製造>
本発明における脂環式ポリエステル樹脂(A)は、ジカルボン酸成分(a)とジオール成分(b)とを、エステル化反応またはエステル交換反応させ、引き続いて重縮合反応をすることにより製造することができる。エステル化またはエステル交換反応は、ジカルボン酸成分(a)とジオール成分(b)とを、攪拌機および留出管を備えたエステル化反応槽に仕込み、触媒を加え、不活性ガス雰囲気下、常圧または減圧下攪拌しつつ、反応により生じた水分などの副生成物を反応系外に留去しながら反応を進行させることにより行う。原料の使用比率、すなわち、ジカルボン酸成分(a)の合計に対するジオール成分(b)の合計のモル比は、通常、1.0〜2.0モル倍である。
ポリエステル樹脂(A)を製造する際に十分な反応速度とするために、反応系に触媒を添加するのが好ましい。触媒としては、通常、エステル化またはエステル交換反応に使用される触媒であれば特に限定されない。例えば、チタン化合物、ゲルマニウム化合物、アンチモン化合物、スズ化合物などが挙げられる。また必要に応じてナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、などのアルカリ性金属の化合物を使用することもできる。
チタン化合物は、エステル化またはエステル交換反応、引き続いて行われる重縮合反応の両反応において、活性が高いことから好ましい。チタン化合物の具体例としては、テトラ−n−プロピルチタネート、テトラ−i−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、これらの有機チタネートの加水分解物などが挙げられる。ゲルマニウム化合物は、色調の良好なポリエステル樹脂が得られやすく好ましい。ゲルマニウム化合物の具体例としては、酸化ゲルマニウムや塩化ゲルマニウムなどの無機ゲルマニウム化合物、テトラアルコキシゲルマニウムなどの有機ゲルマニウム化合物が挙げられる。価格や入手の容易さなどから、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム、およびテトラブトキシゲルマニウムなどが好ましく、特に、酸化ゲルマニウムおよびそのアルコール溶液、水溶液が好ましい。
触媒は二種類以上組み合わせてもよく、また、必要に応じ、マグネシウム化合物やリン化合物などと組み合わせてもよい。触媒の添加量は、生成するポリエステル樹脂に対し、通常50ppm〜2000ppm、好ましくは100ppm〜1000ppmである。エステル化またはエステル交換反応の触媒は、そのまま重縮合反応触媒としても使用することもできる。反応温度は、通常150〜230℃、好ましくは180℃〜220℃であり、反応圧力は50KPa〜500KPa、反応時間は、通常10分から10時間、好ましくは30分から5時間である。エステル化反応またはエステル交換反応終了時の反応率は90〜100%である。ここで、反応率は、仕込んだ全カルボン酸成分に対し、反応によりエステル化またはエステル交換されたカルボン酸成分の比を百分率で表す。
ポリエステル樹脂(A)を製造する際、重縮合反応は、エステル化またはエステル交換反応終了後の反応液を、攪拌機、留出管および減圧付加装置を備えた重縮合槽に移送し、これに必要に応じ、触媒を添加し、重縮合槽内を徐々に減圧にしながら反応を進行させることにより行う。十分な反応速度とするために、触媒を添加するのが好ましい。触媒としては、通常、重縮合反応に使用される触媒であれば特に限定されず、上記のエステル化またはエステル交換反応において例示した触媒と同じものを、そのまま重縮合反応触媒として使用することができる。また、好ましい触媒についても上記した通りである。重縮合反応で新たに触媒を添加する場合の量は、生成するポリエステルに対し、通常、50〜2000ppm、好ましくは100〜1000ppmである。
重縮合反応は、反応槽内を徐々に減圧にしながら行う。槽内の圧力は、大気圧雰囲気下から最終的には1KPa以下で行い、特に0.5KPa以下とするのが好ましい。反応温度は、上記のエステル化またはエステル交換反応の反応終了後の温度ないし300℃、好ましくは反応終了後の温度ないし265℃である。反応時間は、通常、10分から10時間の範囲内、好ましくは30分から5時間である。
なお、エステル化反応槽に減圧付加装置を備え、一槽でエステル化またはエステル交換反応と重縮合反応を行うことも可能である。また、エステル化、エステル交換、重縮合反応は、回分方式でも連続方式でもよい。反応終了後は、例えば、回分式の場合、槽底部から反応生成物を抜き出すことにより回収する。通常はストランド状に抜き出し、水冷しながら切断してペレット状の脂環式ポリエステル樹脂(A)を得ることが
できる。また樹脂ペレットを必要に応じて固相重縮合にかけることができる。
得られたポリエステル樹脂(A)の固有粘度は、通常、0.3〜1.5dl/g、好ましくは0.4〜1.0dl/gである。固有粘度が0.3dl/g未満の場合は、これを含む熱可塑性樹脂組成物を原料として溶融成形法によって成形品を製造するとき、その機械的強度が十分でなく、1.5dl/gより大きい場合は、溶融時の流動性が低下して成形性に劣る。
<脂環式エポキシ化合物(B)>
本発明において脂環式エポキシ化合物(B)は、熱可塑性樹脂組成物の色調、特に溶融時着色を向上させるように機能する。脂環式エポキシ化合物(B)としては、水添ビスフェノールA型エポキシ、水添ビスフェノールF型エポキシ、オレフィン酸化型エポキシである3,4−エポキシシクロヘキサン誘導体などが挙げられる。中でも、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、および、そのカプロラクトン、メチルカプロラクトン、トリメチルカプロラクトン、バレロラクトンなどの環状エステルによる変性物、3,4−エポキシ−1-(ヒドロキシアルキル)シクロヘキサンと有機カルボン酸とのエステル、3,4−エポキシシクロヘキサンモノカルボン酸とアルコールとのエステルなどは、熱可塑性樹脂組成物の色調が良好(黄味が少ない)で、かつ、この熱可塑性樹脂組成物を溶融したときの着色も少なく好ましい。特に、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、および/または、3,4−エポキシ−1-(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンとアジピン酸とのジエステルが、工業的に入手し易く好ましい。
<樹脂組成物>
本発明の第一発明に係る熱可塑性樹脂組成物(I)は、上記で得られる脂環式ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、脂環式エポキシ化合物(B)0.05〜5.0質量部を配合したものである。脂環式エポキシ化合物(B)が0.05質量部未満であると、熱可塑性樹脂組成物の色調の改良効果が不十分なうえ、さらに耐加水分解性も不十分である。脂環式エポキシ化合物(B)が5.0質量部を越えると、溶融粘度が上昇し、成形性に劣る。脂環式エポキシ化合物(B)は、好ましくは0.1〜2.5質量部である。
<芳香族ポリカーボネート樹脂(C)>
本発明において芳香族ポリカーボネート樹脂(C)は、芳香族ジヒドロキシ化合物をホスゲン、または炭酸ジエステルと反応させることによって得られ、この製造方法としては、ホスゲン法、エステル交換法などがあり、その製造方法は特に限定されない。芳香族ポリカーボネート樹脂(C)は、分岐したものであってもよく、直鎖状のものと分岐したものとの混合物であってもよい。
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=テトラブロモビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタンなどで例示されるビス(ヒドロキシアニリール)アルカン類;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−5−トリメチルシクロヘキサン等で例示されるビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;4−4‘−ジヒドロキシフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3‘−ジメチルフェニルエーテルなどで例示されるジヒドロキシジアリールエーテル類;4,4’−ジヒドロキシフェニルスルフィド、4,4‘−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルフェニルスルフィド等で例示されるジヒドロキシジアリールスルフィド類;4,4‘−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3‘−ジメチルジフェニルスルホキシド等で例示されるジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンなどで例示されるジヒドロキシジアリールスルホン類;ハイドロキノン、レゾルシン、4,4‘−ジヒドロキシジフェニルなどが挙げられる。
これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は、必要に応じて二種以上混合したものであってもよい。これらの中では特に、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)が好適である。また、分岐した芳香族ポリカーボネート樹脂を得るには、フロログルシン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−3−ヘプテン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ヘプテン、1,3,5−トリス(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾール、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、α,α',α“−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼンなどで例示されるポリヒドロキシ化合物、3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチンビスフェノール、5,7−ジクロルイサチンビスフェノール、5−ブロムイサチンビスフェノールなどを分岐に対応する量使用すればよい。
本発明の第二発明に係る熱可塑性樹脂組成物(II)は、前記方法で得られる脂環式ポリエステル樹脂(A) 90〜10質量部、および上記芳香族ポリカーボネート樹脂(C)10〜90質量部からなる熱可塑性樹脂組成物100質量部に対し、脂環式エポキシ樹脂(B)0.01〜5.0質量部配合したものである。熱可塑性樹脂組成物(II)は、色調が良好であり、かつ溶融時の熱安定性が良好である。脂環式エポキシ化合物(B)は、第二発明に係る熱可塑性樹脂組成物(II)の場合は、あらかじめ脂環式ポリエステル樹脂(A)と混合した後、さらに芳香族ポリカーボネート樹脂(C)を混合してもよいし、脂環式ポリエステル樹脂(A)、芳香族ポリカーボネート樹脂(C)および脂環式エポキシ化合物(B)を、一緒に混合してよい。
<触媒失活剤>
ポリエステル樹脂組成物(II)には、さらに触媒失活剤(D)を配合し、熱可塑性樹脂(III)とするのが好ましい。触媒失活剤(D)とは、前記ポリエステル樹脂(A)の製造時に使用された触媒残渣の反応活性を抑制する効果のあるものをいう。触媒失活剤(D)を配合することにより、ポリエステル樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(C)と脂環式エポキシ化合物(B)とを溶融配合する時や、熱可塑性樹脂組成物(III)を溶融成形するときに、着色が抑制される。ポリエステル樹脂自体の熱分解を促進する触媒残渣としては、すず、亜鉛、チタン、マンガンなどの金属化合物が挙げられる。触媒失活剤(D)の配合量は、熱可塑性樹脂組成物(II)100質量部に対し、0.01〜5.0質量部の範囲で選ぶものとする。
本発明における触媒失活剤(D)としては、リン酸、亜リン酸、および、これらのエステル金属塩、中でも次の構造式(1)から(4)で表されるリン酸エステル金属塩が好ましい。
Figure 2007291182
Figure 2007291182
Figure 2007291182
Figure 2007291182
リン酸エステル金属塩に関し、構造式(1)、(2)、(3)および(4)において、R1〜R14は、それぞれ独立に選ばれる炭素数1〜50のアルキル基を示し、炭素数の下限は好ましくは10、さらに好ましくは、16であり、好ましい上限は30、さらに好ましくは24である。このようなアルキル基として、n−オクチル、イソオクチル、2−エチルへキシル、tert−オクチル、n−デシル、イソノニル、イソデシル、n−ドデシル、イソトリデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシル、n−オクタデシル、イソオクタデシル、n−エイコシル、n−ドコシル、n−トリコシル、n−テトラコシル、ヘキサコシル、トリアコンチルなどが挙げられる。入手の容易さから、R1〜R14が同一の基であるのが好ましい。また、Mは、アルカリ土類金属または亜鉛からなる群から選ばれる金属を示し、アルカリ土類金属として、マグネシウム、カルシウムなどが挙げられる。リン酸エステル金属塩は、得られる熱可塑性樹脂組成物の色調の点(黄味が少ない)から、好ましくは、亜鉛またはアルミニウムの塩であり、より好ましくは亜鉛塩である。好ましいリン酸エステル金属塩としては、モノステアリルリン酸の亜鉛塩、ジステアリルリン酸の亜鉛塩、およびそれらの混合物、モノステアリルリン酸のアルミニウム塩、ジステアリルリン酸のアルミニウム塩およびそれらの混合物が挙げられる。
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物(II)、熱可塑性樹脂組成物(III)の調製方法としては、例えば、(1)各成分をタンブラー、ヘンシェルミキサーなどを使用して混合する方法、(2)(1)の方法で混合した混合物を、フィーダーにより定量的に押出機ホッパーに供給し、溶融・混練する方法などが挙げられる。溶融・混練方法としては、一軸押出機、二軸押出機などを使用する方法が挙げられる。溶融・混練温度としては、脂環式ポリエステル樹脂(A)、芳香族ポリカーボネート樹脂(C)の熱安定性が維持できる温度範囲であれば特に限定されず、混練機中の温度は230〜350℃の範囲で選ぶのが好ましい。このような樹脂温度とするためには、例えば、混練機としてスクリュ直径100mm以下の二軸混練機を使用する場合、通常、バレル設定温度を230〜300℃の範囲に設定することにより達成される。
上記(1)の方法で調製した混合物を溶融・混練する場合には、あらかじめポリエステル樹脂組成物を乾燥するか、溶融・混練時に水分、ガスなどを除去する方が好ましい。後者の方法としては、例えば、混練機をベント装置付きのもので行う方法が簡便である。ベント装置は、二カ所以上に設置された混練機を用いることもできる。このベント装置を使って減圧により強制的に排除するか、または開放系で行っても、水分、ガスなどが系外に放出されるので効果がある。
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物(I)、熱可塑性樹脂組成物(II)、および、熱可塑性樹脂組成物(III)は、各種の成形品(製品)の成形(製造)用材料として使用できる。成形品を成形する際に適用できる方法としては、押出成形法、射出成形法、ブロー成形法、中空成形法、回転成形法、圧縮成形法など、従来から知られている成形方法が挙げられる。
以下、本発明を実施例に基いてさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の記載例に限定されるものではない。なお、以下の諸例で使用した熱可塑性樹脂組成物の構成成分、熱可塑性樹脂組成物および成形品などの評価項目、評価方法は次のとおりである。
<樹脂組成物の構成成分>
[脂環式ポリエステル樹脂 (A)の製造例]
攪拌機、留出管、加熱装置、圧力計、温度計および減圧装置を有する容量が100リットルのステンレス製反応器を準備した。この反応器に、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(トランス体:シス体のモル比が96:4)101.5質量部、1,4−シクロヘキサンジメタノール(トランス体:シス体のモル比が69:31)85質量部およびテトラ−n−ブチルチタネートの6重量%ブタノール溶液1質量部を仕込み、反応器内を窒素ガスで置換した。反応器内を窒素ガスでシールしながら、内温を30分間で150℃に昇温し、さらに150℃から200℃まで1時間かけて昇温した。次いで、200℃で1時間保持してエステル化反応を行った後、200℃から250℃へ45分間で昇温しつつ、反応器内の圧力を徐々に減圧しながら重縮合反応を行った。反応機内圧力を絶対圧力0.1kPa、反応温度を250℃に保って、重縮合反応を3.7時間行った。重縮合反応終了後、得られたポリエステル樹脂を水中にストランド状に抜き出し、切断してペレット化した。得られたポリエステル樹脂を、後記する方法で分析した。固有粘度は1.027dl/g、末端カルボン酸濃度は31.2当量/トン、ペレットの色相(YI)は8、融点は217.3℃であった。
[エポキシ化合物(B)]
(B−1)3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル化学工業社、商標名:セロキサイド2021P)である。
(B−2)ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート(ダウ・ケミカル日本社製、銘柄名:ERL−4299)である。
(B−3)エポキシ当量が205g/当量の、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、銘柄名:YX−8000)である。
(B−4)エポキシ当量が190g/当量の、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、銘柄名:E828US)である。
(C)芳香族ポリカーボネート樹脂
(C−1)三菱エンジニアリングプラスチックス社製、ユーピロン(登録商標)S−3000Fである。
[触媒失活剤(D)]
(D−1)リン酸エステル亜鉛塩(モノステアリルリン酸の亜鉛塩とジステアリルリン酸の亜鉛塩の混合物、堺化学工業社製、銘柄名:LBT−1830)である。
(D−2)亜リン酸(和光純薬社製、試薬)である。
<評価項目と評価方法>
(1)固有粘度(IV)の測定方法:試料約0.25gを、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタンの混合溶媒(重量比1/1)を用いて、濃度が約1.00g/dlとなるように溶解させ、濃度C(g/dL)を算出した。この溶液を30℃まで冷却、保持し、全自動溶液粘度計(センテック社製、型式:2CH型DJ504)によって、試料溶液の落下秒数(t)、および溶媒のみの落下秒数(t0)を測定し、次式すなわち、IV={(1+4Kηsp0.5−1}/(2KC)、により算出した。ここで、ηspは(t/t0−1)であり、ηは試料溶液の落下秒数、η0は溶媒のみの落下秒数、Cは試料溶液濃度(g/dL)、Kはハギンズの定数で、0.33を採用した。
(2)末端カルボン酸濃度(AV)の測定方法:試験管にペレット0.4gを採取し、ベンジルアルコール25mlに加え、195±3℃に設定したオイルバス中で、7〜9分間加熱し溶解した。得られた溶解溶液を、常温まで放冷し、エチルアルコール2mlを加え、自動滴定装置(東亜ディケーケー社製、型式:AUT−501)によって、複合pH電極を用いて、0.01規定の水酸化ナトリウム・ベンジルアルコール溶液で滴定した。
なお、0.01規定の水酸化ナトリウム・ベンジルアルコール溶液は、JIS K8006に準拠して調製、標定を行い、ファクターを算出した。得られた滴定曲線の変曲点から滴定量を求め、次式すなわち、末端カルボン酸濃度(AV)={(A−B)×0.01N×F}/W
、に基づいて算出した。この式において、Aは測定滴定量(ml)、Bはブランク滴定量(ml)、Fは0.01規定の水酸化ナトリウム・ベンジルアルコール溶液力価、Wはペレット重量である。
(3)融点(単位:℃)の測定方法:JIS K7121に準拠し、示差走査熱量計(セイコーインスツルメント社製、型式:DSC220)を使用して、次のようにして測定した。試料のペレットから約10mgをカッターナイフで切り出し、アルミニウムパンに入れて密封し、昇温速度20℃/分で室温から300℃まで加熱し、300℃で3分間保持した後に、降温速度20℃/分で300℃から25℃まで冷却し、さらに昇温速度20℃/分で300℃まで昇温した。融点は、二回目の昇温時の値を採用し、融解熱ピークの極大部分の温度を融点(単位:℃)とした。
(4)色相(YI):JIS K7103に準拠し、光電色彩計(日本電色工業社製、型式:ND−300)を用いて、試料ペレットを直径30mm、高さ18mmの円柱状の石英セルに充填し、約90度ずつ回転させながら4回平均で三刺激値X、Y、Zを測定し、色相(YI、イエローネスインデックス)は、次式すなわち、YI=100(1.28X−1.06Z)/Y、によって計算した。
(5)耐加水分解性(IV保持率、単位:%):試料のペレットを、飽和型プレッシャークッカー試験機(平山製作所社製、型式:PC−242)に入れ、120℃、水蒸気圧0.11MPaで24時間処理した。耐加水分解性は、試料の処理前の固有粘度(IV)に対する処理後の固有粘度(IV)の保持率{(IV)/(IV)}(単位:%)で示した。この数値(保持率)が高いほど、耐加水分解性に優れている。
(6)熱溶融時の滞留安定性(ΔYI):真空乾燥機で100℃、5時間乾燥した試料ペレットを、枝付きガラス管に40g入れ、空気中280℃のオイルバス中に1時間保持した。その後、ガラス管下部を切断し、試料を水槽の中にストランド状で抜き出した。得られたストランドを、超小型ペレタイザー(テクノサプライ製、ミニチョッパー)で切断してペレットとした。得られたペレットを、前述の色相(YI、イエローネスインデックス)の測定方法に従い、測定した。滞留安定性(ΔYI)は、滞留試験後のイエローネスインデックス(YI)と滞留試験前のイエローネスインデックス(YI)の差{(ΔYI)=(YI)−(YI)}で示した。この数値(ΔYI)が小さいほど、滞留安定性が優れている。
(7)熱溶融時の滞留安定性(IV保持率、単位:%):上記(6)の滞留安定性試験前の試料の固有粘度(IV)と、滞留安定性試験後の固有粘度(IV)を測定し、固有粘度の保持率{(IV)/(IV)}(単位:%)で示した。この数値(保持率)が高いほど、滞留安定性に優れている。
[実施例1〜実施例5、比較例1〜比較例3]
上記製造例に記載の方法で製造した脂環式ポリエステル樹脂(A)と、脂環式エポキシ化合物(B)とを、表−1の各実施例、比較例に記載の配合量に従って秤量し、タンブラーミキサーで均一に混合して混合物とした。得られた混合物を、脱気装置を備えた二軸混練機(日本製鋼所社製、型式:TEX30−42BW)のホッパーに供給し、シリンダー設定温度240℃、スクリュ回転数150rpm、吐出量15kg/hrの条件下で溶融・混練し、ストランド状に押し出し、ストランドを冷却してカッターで切断し、ペレットを得た。
得られたペレットについて、上記(4)〜(7)の評価項目の評価試験を行い、評価試験結果を表−1に記載した。
Figure 2007291182
表−1より、次のことが明らかとなる。
1.本発明の第一発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、脂環式ポリエステル樹脂(A)に、脂環式エポキシ化合物(B)を請求項1で規定する量で配合されているので、耐加水分解性に優れ、かつ、色調、特に滞留安定性に優れている(実施例1〜実施例5参照)。
2.一方、脂環式エポキシ化合物(B)を配合しない場合(比較例1)、および、これを配合しても請求項1で規定する量の下限未満である場合(比較例2)は、耐加水分解性に劣り、滞留安定性にも劣る。
3.また、脂環式ポリエステル樹脂(B)にエポキシ化合物を配合しても、この化合物が脂環式エポキシ化合物でない場合(比較例3)は、ペレットは黄色を帯び、滞留安定性にも劣る。
[実施例6]
上記実施例1の記載の方法で調製した脂環式ポリエステル樹脂組成物30質量部、芳香族ポリカーボネート樹脂(C)70質量部、および触媒失活剤としての(D−1)を、0.1質量部秤量し、タンブラーミキサーで均一に混合して混合物とした。得られた混合物を、脱気装置を備えた二軸混練機(日本製鋼所社製、型式:TEX30−42BW)のホッパーに供給し、シリンダー設定温度280℃、スクリュ回転数150rpm、吐出量15kg/hrの条件下で溶融・混練し、ストランド状に押し出し、ストランドを冷却してカッターで切断し、ペレットを得た。
得られたペレットについて、上記(4)〜(7)の評価項目の評価試験を行い、評価試験結果を表−2に記載した。
[実施例7]
実施例6に記載の例において、脂環式ポリエステル樹脂組成物を、実施例2に記載の方法で調製した樹脂組成物に変更したほかは、同例におけると同様の手順でペレットとし、得られたペレットについて、上記(4)〜(7)の評価項目の評価試験を行い、評価試験結果を表−2に記載した。
[実施例8]
実施例6に記載の例において、脂環式ポリエステル樹脂組成物を、実施例3に記載の方法で調製した樹脂組成物に変更したほかは、同例におけると同様の手順でペレットとし、得られたペレットについて、上記(4)〜(7)の評価項目の評価試験を行い、評価試験結果を表−2に記載した。
[実施例9]
実施例6に記載の例において、触媒失活剤としての(D−1)を(D−2)0.025質量部に変更したほかは、同例におけると同様の手順でペレットとし、得られたペレットについて、上記(4)〜(7)の評価項目の評価試験を行い、評価試験結果を表−2に記載した。
[実施例10]
実施例6に記載の例において、触媒失活剤としての(D−1)を配合しなかったほかは、同例におけると同様の手順でペレットとし、得られたペレットについて、上記(4)〜(7)の評価項目の評価試験を行い、評価試験結果を表−2に記載した。
[実施例11]
実施例6に記載の例において、脂環式ポリエステル樹脂組成物を、実施例4に記載の方法で調製した樹脂組成物に変更したほかは、同例におけると同様の手順でペレットとし、得られたペレットについて、上記(4)〜(7)の評価項目の評価試験を行い、評価試験結果を表−2に記載した。
[実施例12]
実施例6に記載の例において、脂環式ポリエステル樹脂組成物を、実施例5に記載の方法で調製した樹脂組成物に変更したほかは、同例におけると同様の手順でペレットとし、得られたペレットについて、上記(4)〜(7)の評価項目の評価試験を行い、評価試験結果を表−2に記載した。
[比較例4]
実施例6に記載の例において、脂環式ポリエステル樹脂組成物を、比較例1に記載の方法で調製した樹脂組成物に変更したほかは、同例におけると同様の手順でペレットとし、得られたペレットについて、上記(4)〜(7)の評価項目の評価試験を行い、評価試験結果を表−2に記載した。
[比較例5]
比較例4に記載した例において、触媒失活剤としての(D−1)を(D−2)0.025質量部に変更したほかは、同例におけると同様の手順でペレットとし、得られたペレットについて、上記(4)〜(7)の評価項目の評価試験を行い、評価試験結果を表−2に記載した。
[比較例6]
実施例6に記載の例において、脂環式ポリエステル樹脂組成物を、比較例2に記載の方法で調製した樹脂組成物に変更したほかは、同例におけると同様の手順でペレットとし、得られたペレットについて、上記(4)〜(7)の評価項目の評価試験を行い、評価試験結果を表−2に記載した。
[比較例7]
実施例6に記載の例において、脂環式ポリエステル樹脂組成物を、比較例1に記載の方法で調製した樹脂組成物に変更し、かつ、触媒失活剤としての(D−1)を配合しなかったほかは、同例におけると同様の手順でペレットとし、得られたペレットについて、上記(4)〜(7)の評価項目の評価試験を行い、評価試験結果を表−2に記載した。
[比較例8]
実施例6に記載の例において、脂環式ポリエステル樹脂組成物を、比較例3に記載の方法で調製した樹脂組成物に変更ししたほかは、同例におけると同様の手順でペレットとし、得られたペレットについて、上記(4)〜(7)の評価項目の評価試験を行い、評価試験結果を表−2に記載した。
Figure 2007291182
表−1および表−2より、つぎのことが明らかとなる。
1.本発明の第二発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、脂環式ポリエステル樹脂(A)と、芳香族ポリカーボネート樹脂(C)とよりなる樹脂混合物に、脂環式エポキシ化合物(B)を請求項6で規定する量で配合しているので、耐加水分解性に優れ、かつ、色調、特に滞留安定性に優れている(実施例6〜実施例12参照)。
2.これに対して、樹脂混合物に、脂環式エポキシ化合物(B)を配合しない場合(比較例4、比較例5、比較例7)、および、これを配合しても請求項6で規定する量の下限未満である場合(比較例6)には、耐加水分解性に劣り、滞留安定性にも劣る。
3.また、樹脂組成物に、脂環式ポリエステル樹脂(B)にエポキシ化合物を配合しても、この化合物が脂環式エポキシ化合物でない場合(比較例8)は、ペレットは黄色を帯び、滞留安定性にも劣る。
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物(I)、熱可塑性樹脂組成物(II)、および、熱可塑性樹脂組成物(III)は、各種の成形品(製品)の成形(製造)用材料として使用できる。成形方法は、熱可塑性樹脂材料から成形品を成形する従来から知られている成形方法が、制限なく適用できる。具体的には、一般的な射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシストなどの中空成形法、断熱金型を用いた成形法、急速加熱金型を用いた成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、インモールドコーティング(IMC)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法などが挙げられる。各種製品(成形品)としては、各種医療機器、各種光学機器部品、電気・電子機器部品、OA機器、機械部品、車輌外装・外板部品、車輌内装部品、建築部材、各種容器、レジャ−用品・雑貨類、携帯電話などの各種ハウジングなどが挙げられる。

Claims (9)

  1. 脂環式ジカルボン酸成分(a’)を主成分とするジカルボン酸成分(a)と、脂環式ジオール成分(b’)を主成分とするジオール成分(b)からなる脂環式ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、脂環式エポキシ化合物(B)0.05ないし5.0質量部配合されてなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
  2. 脂環式ジカルボン酸成分(a’)が、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸成分であリ、脂環式ジオール成分(b’)が、1,4-シクロヘキサンジメタノールである、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 脂環式エポキシ化合物(B)が、オレフィン酸化型エポキシ化合物である、請求項1ないし請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 脂環式エポキシ化合物(B)が、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート及びそのカプロラクトン、メチルカプロラクトン、トリメチルカプロラクトン、バレロラクトンなどの環状エステル変性物、3,4−エポキシ−1-(ヒドロキシアルキル)シクロヘキサンと有機カルボン酸とのエステル、3,4−エポキシシクロヘキサンモノカルボン酸とアルコールとのエステル、または、これらの2種以上の混合物である、請求項1または請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 脂環式エポキシ化合物(B)が、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、および/または、3,4−エポキシ−1-(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンとアジピン酸とのジエステルである、請求項1または請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. 脂環式ジカルボン酸成分(a’)を主成分とするジカルボン酸成分(a)と、脂環式ジオール成分(b’)を主成分とするジオール成分(b)からなる脂環式ポリエステル樹脂(A)90〜10質量部、および、芳香族ポリカーボネート樹脂(C)10〜90質量部からなる熱可塑性樹脂組成物100質量部に対し、脂環式エポキシ樹脂(B)0.01〜5.0質量部配合されてなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
  7. 請求項1ないし請求項6のいずれが一項に記載のポリエステル樹脂組成物に、さらに触媒失活剤(D)を0.01〜5.0質量部配合してなる熱可塑性樹脂組成物。
  8. 触媒失活剤(D)が、下記構造式(1)、(2)、(3)または(4)で示される少なくとも1種のリン酸エステル金属塩である、請求項7に記載の熱可塑性樹脂組成物。
    Figure 2007291182
    Figure 2007291182
    Figure 2007291182
    Figure 2007291182
  9. 脂環式ポリエステル樹脂(A)が、チタン元素を含有する請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
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