JP5101854B2 - チタニルフタロシアニン結晶の製造方法 - Google Patents
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Description
また、かかるフタロシアニン系顔料には、その化学構造によって、無金属フタロシアニン化合物、銅フタロシアニン化合物、チタニルフタロシアニン化合物等が存在するとともに、それぞれのフタロシアニン化合物が、その製造条件の違いによって種々の結晶型をとり得ることが知られている。
このように結晶型が異なる多数種のフタロシアニン化合物結晶が存在する中で、電荷発生剤として、Y型結晶構造を有するチタニルフタロシアニンを使用した感光体を製造した場合、他の結晶型のチタニルフタロシアニンを使用した場合と比較して、感光体における電気特性が向上することが知られている。
例えば、X線回折スペクトルにおいてCu−Kα線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)=27.3゜に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニンであって、フタロシアニン環を形成し得る有機化合物と、チタン化合物と、を尿素又はアンモニアを添加したジアルキルアミノアルコール中で、130℃、4時間程度の条件で反応させてなるY型結晶の製造方法が開示されている(例えば、特許文献1)。
より具体的には、CuKα特性X線回折スペクトルにおけるピークを所定の範囲に有し、示差走査熱量分析において50〜400℃の範囲内における温度変化のピークを有しないチタニルフタロシアニン結晶の製造方法が開示されている。
すなわち、本発明の目的は、有機溶媒中での貯蔵安定性に優れたチタニルフタロシアニン結晶の製造方法を提供することにある。
そして、チタニルフタロシアニン結晶を構成するチタニルフタロシアニン化合物の構造が、下記一般式(1)で表され、さらに、下記工程(a)〜(b)を含むことを特徴とするチタニルフタロシアニン結晶の製造方法が提供され、上述した問題を解決することができる。
(b)(a)工程において製造したチタニルフタロシアニン化合物に対して、酸処理を実施し、チタニルフタロシアニン結晶を製造する工程
このように実施することにより、かかる尿素化合物と、原料物質とが相互作用を発揮し、有機溶媒中に、例えば、7日以上の長期にわたって浸漬した場合であっても、α型結晶及びβ型結晶への結晶転移が起こりにくいチタニルフタロシアニン結晶を効率的に得ることができる。その結果、貯蔵安定性が向上したチタニルフタロシアニン結晶を、より安価に製造することができる。
このように実施することにより、反応系から蒸気として発生する生成物を系外へ除去することができ、原料物質としてのチタンアルコキシドまたは四塩化チタンと、尿素化合物とが反応しやすくなる。
このように実施することにより、尿素化合物とチタンアルコキシドまたは四塩化チタンとの反応によって生成するアンモニアが、さらにチタンアルコキシドまたは四塩化チタンと錯体を形成しやすくなる。その結果、反応が十分進んで、有機溶媒中であっても結晶転移しにくいチタニルフタロシアニン結晶を、効率的かつ短時間に製造することができる。
本発明の第1の参考実施形態は、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°にピークを有するとともに、示差走査熱量分析において、吸着水の気化に伴なうピーク以外に270〜400℃の範囲内に、1つのピークを有することを特徴とするチタニルフタロシアニン結晶である。
以下、第1の参考実施形態のチタニルフタロシアニン結晶について、各構成要件に分けて説明する。
(1)光学特性
本発明としてのチタニルフタロシアニン結晶は、光学特性として、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°にピークを有することを特徴とする(第1の光学特性)。
また、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=26.2°にピークを有さないことが好ましい(第2の光学特性)。
さらに、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=7.2°にピークを有さないことが好ましい(第3の光学特性)。
この理由は、かかる第1の光学特性を備えない場合には、このような光学特性を有するチタニルフタロシアニン結晶と比較して、有機溶媒中における安定性が著しく低下する傾向にあるためである。逆に言えば、第1の光学特性、より好ましくは、第2の光学特性及び第3の光学特性を備えることにより、有機溶媒中における貯蔵安定性を向上させることができるためである。
また、有機溶媒中に7日間浸漬した後に回収したチタニルフタロシアニン結晶が、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、少なくともブラッグ角2θ±0.2°=27.2°にピークを有するとともに、26.2°にピークを有さないことが好ましい。
この理由は、有機溶媒中において7日間浸漬した場合であっても、チタニルフタロシアニン結晶が、上述した特性を保持できることによって、チタニルフタロシアニン結晶の有機溶媒中における結晶転移を、さらに確実に制御することができるためである。
なお、チタニルフタロシアニン結晶の貯蔵安定性を評価する基準となる有機溶媒への浸漬実験評価は、例えば、電子写真用感光体を作成するための感光層用塗布液(以下、感光層用塗布液)を実際に保管する条件と、同一条件で実施することが好ましい。したがって、例えば、温度23±1℃、相対湿度50〜60%RHの条件下で、密閉系中において、チタニルフタロシアニン結晶の貯蔵安定性を評価することが好ましい。
この理由は、かかる有機溶媒を感光層用塗布液における有機溶剤として用いた場合に、特定のチタニルフタロシアニン結晶の安定性をより確実に判断することができるとともに、特定のチタニルフタロシアニン結晶、電荷輸送剤、及び結着樹脂等における相溶性が良好となるためである。したがって、特定のチタニルフタロシアニン結晶及び電荷輸送剤等の特性を、より有効に発揮させる感光体を形成することができ、さらに電気特性及び画像特性に優れた電子写真感光体を、安定して製造することができるためである。
また、本発明としてのチタニルフタロシアニン結晶は、熱特性として、示差走査熱量分析において、吸着水の気化に伴なうピーク以外に270〜400℃の範囲内に、1つのピークを有することを特徴とする。
この理由は、かかる光学特性及び熱特性を有するチタニルフタロシアニ結晶であれば、有機溶媒中に添加して長時間放置した場合であっても、結晶構造が、α型結晶及びβ型結晶への結晶転移することを有効に抑制することができるためである。したがって、このようなチタニルフタロシアニン結晶を用いることによって、貯蔵安定性に優れた感光層用塗布液を得るこができ、その結果、電気特性や画像特性に優れた電子写真感光体を安定して製造することができる。
なお、吸着水の気化に伴うピーク以外のピークであって、270〜400℃の範囲内に現れる1つのピークは、290〜400℃の範囲内に現れることがより好ましく、300〜400℃の範囲内に現れることがさらに好ましい。
また、CuKα特性X線回折スペクトルにおけるブラッグ角の具体的な測定方法、及び、示差走査熱量分析の具体的な方法については、後述する実施例において詳述する。
また、チタニルフタロシアニン化合物の構造が、上述した一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
この理由は、このような構造のチタニルフタロシアニン化合物を用いることによって、特定のチタニルフタロシアニン結晶の安定性をさらに向上させることができるばかりでなく、かかる特定のチタニルフタロシアニン結晶を安定して製造することができるためである。
また、特に、チタニルフタロシアニン化合物の構造が、下記一般式(2)で表されることが好ましい。その中でも特に、下記式(3)で表される無置換のチタニルフタロシアニン化合物であることが好ましい。
この理由は、このような構造のチタニルフタロシアニン化合物を用いることによって、より安定した性質を備えた特定のチタニルフタロシアニン結晶をさらに容易に製造することができるためである。
第2の実施形態は、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°にピークを有するとともに、26.2°にピークを有さず、示差走査熱量分析において、吸着水の気化に伴なうピーク以外に270〜400℃の範囲内に、1つのピークを有し、かつ、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、トルエン、1,4−ジオキサン、1−メトキシ−2−プロパノールからなる群の少なくとも1種である有機溶媒に7日間浸漬した後も、少なくともブラッグ角2θ±0.2°=27.2°にピークを有し、26.2°にピークを有さないチタニルフタロシアニン結晶の製造方法である。
そして、チタニルフタロシアニン結晶を構成するチタニルフタロシアニン化合物の構造が、下記一般式(1)で表され、かつ、下記工程(a)〜(b)を含むことを特徴とするチタニルフタロシアニン結晶の製造方法である。
(b)(a)工程において製造したチタニルフタロシアニン化合物に対して、酸処理を実施し、チタニルフタロシアニン結晶を製造する工程
チタニルフタロシアニン化合物の製造方法としては、かかる分子の製造材料としてのo−フタロニトリルまたはその誘導体、もしくは1,3−ジイミノイソインドリンまたはその誘導体と、チタンアルコキシドまたは四塩化チタンと、を尿素化合物の存在下において反応させて、チタニルフタロシアニン化合物を製造することを特徴とする。
ここで、式(3)で表されるチタニルフタロシアニン化合物を例にとって、その製造方法を具体的に説明する。
すなわち、式(3)で表されるチタニルフタロシアニン化合物を製造する場合には、下記反応式(1)又は下記反応式(2)に準じて実施することが好ましい。なお、反応式(1)及び反応式(2)においては、チタンアルコキシドとして、一例ではあるが、式(5)で表されるチタンテトラブトキシドを用いている。
したがって、反応式(1)に示すように、式(4)で表されるo−フタロニトリルと、式(5)で表されるチタンアルコキシドとしてのチタンテトラブトキシドとを反応させるか、反応式(2)において示すように、式(6)で表される1,3−ジイミノイソインドリンと、式(5)で表されるチタンテトラブトキシド等のチタンアルコキシドとを反応させて、式(3)で表されるチタニルフタロシアニン化合物を製造することが好ましい。
なお、式(5)で表されるチタンテトラブトキシド等のチタンアルコキシドの替わりに、四塩化チタンを用いてもよい。
また、式(5)で表されるチタンテトラブトキシド等のチタンアルコキシドまたは四塩化チタンの添加量を、式(4)で表されるo−フタロニトリルまたはその誘導体、もしくは式(6)で表される1,3−ジイミノイソインドリンまたはその誘導体1モルに対して、0.40〜0.53モルの範囲内の値とすることを特徴とする。
この理由は、式(5)で表されるチタンテトラブトキシド等のチタンアルコキシドまたは四塩化チタンの添加量を、式(4)で表されるo−フタロニトリルまたはその誘導体、もしくは式(6)で表される1,3−ジイミノイソインドリンまたはその誘導体に対して、1/4モル当量を超えた過剰量を添加することにより、後述する尿素化合物との相互作用が効果的に発揮されるためである。なお、かかる相互作用については、尿素化合物の項で詳述する。
したがって、式(5)で表されるチタンテトラブトキシド等のチタンアルコキシドまたは四塩化チタンの添加量を、式(4)で表されるo−フタロニトリルまたは式(6)で表される1,3−ジイミノイソインドリン等1モルに対して、0.43〜0.50モルの範囲内の値とすることがより好ましく、0.45〜0.47モルの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、工程(a)を、尿素化合物の存在下において行うことを特徴とする。この理由は、尿素化合物の存在下において製造されたチタニルフタロシアニン化合物を用いることにより、尿素化合物とチタンアルコキシドまたは四塩化チタンにおける相互作用が発揮されるため、特定のチタニルフタロシアニン結晶を効率的に得ることができるためである。
すなわち、かかる相互作用とは、尿素化合物とチタンアルコキシドまたは四塩化チタンとの反応によって生成するアンモニアが、さらにチタンアルコキシドまたは四塩化チタンと錯体を形成し、かかる物質が反応式(1)及び(2)で表される反応をより促進させる作用である。そして、このような促進作用のもとに、原料物質を反応させることにより、有機溶媒中であっても、結晶転移しにくいチタニルフタロシアニン結晶を効率的に製造することができる。
また、工程(a)で使用される尿素化合物が、尿素、チオ尿素、O−メチルイソ尿素硫酸塩、O−メチルイソ尿素炭酸塩、及びO−メチルイソ尿素塩酸塩からなる群の少なくとも1種であることが好ましい。
この理由は、かかる尿素化合物を、反応式(1)及び(2)中の尿素化合物として用いることにより、反応の過程で生成するアンモニアが、より効率的にチタンアルコキシドまたは四塩化チタンと錯体を形成し、かかる物質が反応式(1)及び(2)で表される反応をさらに促進させるためである。
すなわち、原料物質としてのチタンアルコキシドまたは四塩化チタンと、尿素化合物とが反応して生成するアンモニアが、さらに効率的にチタンアルコキシド等と錯体化合物を形成するためである。したがって、かかる錯体化合物が反応式(1)及び(2)で表される反応をさらに促進させるためである。
なお、かかる錯体化合物は、180℃以上の高温条件で反応させた場合に、特異的に生成しやすいことが判明している。そのため、沸点が180℃以上の含窒素化合物中、例えば、キノリン(沸点::237.1℃)やイソキノリン(沸点:242.5℃)、あるいはこれらの混合物(重量比10:90〜90:10)中で実施することがより有効である。
よって、反応促進剤としてのアンモニアや、それに起因した錯体化合物がさらに生成しやすいことから、上述した尿素化合物の中でも、尿素を用いることがより好ましい。
また、工程(a)で使用する尿素化合物の添加量を、o−フタロニトリルまたはその誘導体、もしくは1,3−ジイミノイソインドリンまたはその誘導体1モルに対して、0.1〜0.95モルの範囲内の値とすることを特徴とする。
この理由は、尿素化合物の添加量をかかる範囲内の値とすることにより、上述した尿素化合物の作用をより効率的に発揮させることができるためである。
したがって、かかる尿素化合物の添加量を、o−フタロニトリルまたはその誘導体、もしくは1,3−ジイミノイソインドリンまたはその誘導体1モルに対して、0.3〜0.8モルの範囲内の値とすることがより好ましく、0.4〜0.7モルの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、工程(a)で使用する溶媒としては、例えば、キシレン、ナフタレン、メチルナフタレン、テトラリン、及びニトロベンゼン等の炭化水素系溶剤、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ジブロモベンゼン、及びクロロナフタレン等のハロゲン化炭化水素系溶剤、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、及びジエチレングリコール等のアルコール系溶剤、シクロヘキサノン、アセトフェノン、1−メチル−2−ピロリドン、及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等のケトン系溶剤、ホルムアミド、及びアセトアミド等のアミド系溶剤、ピコリン、キノリン、及びイソキノリン等の窒素含有溶剤からなる群の1種または2種以上の任意の組み合わせが挙げられる。
特に、沸点が180℃以上の含窒素化合物、例えば、キノリンやイソキノリンであれば、原料物質としてのチタンアルコキシドまたは四塩化チタンと、尿素化合物とが反応して生成するアンモニアが、さらに効率的にチタンアルコキシド等と錯体化合物を形成しやすくなることから好適な溶媒である。
また、工程(a)における反応温度を150℃以上の高温とすることが好ましい。この理由は、かかる反応温度が150℃未満、特に135℃以下となると、原料物質としてのチタンアルコキシドまたは四塩化チタンと、尿素化合物とが反応して、錯体化合物を形成しにくくなるためである。したがって、かかる錯体化合物が反応式(1)及び(2)で表される反応をさらに促進させることが困難となって、有機溶媒中であっても、結晶転移しにくいチタニルフタロシアニン結晶を効率的に製造することが困難となるためである。
したがって、工程(a)における反応温度を180〜250℃の範囲内の値とすることがより好ましく、200〜240℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、工程(a)における反応時間は、反応温度にもよるが、0.5〜10時間の範囲とすることが好ましい。この理由は、かかる反応時間が0.5時間未満となると、原料物質としてのチタンアルコキシドまたは四塩化チタンと、尿素化合物とが反応して、錯体化合物を形成しにくくなるためである。したがって、かかる錯体化合物が反応式(1)及び(2)で表される反応をさらに促進させることが困難となって、有機溶媒中であっても、結晶転移しにくいチタニルフタロシアニン結晶を効率的に製造することが困難となるためである。一方、かかる反応時間が10時間を越えると、経済的に不利となったり、あるいは生成した錯体化合物が減少したりする場合があるためである。
したがって、工程(a)における反応時間を0.6〜3.5時間の範囲内の値とすることがより好ましく、0.8〜3時間の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
次いで、上述した工程において製造されたチタニルフタロシアニン化合物に対して、後処理としての酸処理を実施し、チタニルフタロシアニン結晶を得ることを特徴とする。
また、酸処理を実施する前段階として、上述した反応によって得たチタニルフタロシアニン化合物を水溶性有機溶媒中に加え、加熱下で一定時間、攪拌処理し、ついで当該攪拌処理よりも低温の温度条件下で一定時間、液を静置して安定化処理する酸処理前工程を行うことが好ましい。
また、酸処理前工程に使用する水溶性有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、及びイソプロパノールなどのアルコール類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオン酸、酢酸、N−メチルピロリドン、及びエチレングリコール等の1種または2種以上が挙げられる。なお水溶性有機溶媒には、少量であれば、非水溶性の有機溶媒を添加してもよい。
さらにまた、攪拌処理後の安定化処理の条件も特に限定されないが、およそ10〜50℃程度、特に好ましくは23±1℃前後の温度範囲の一定温度条件下で、5〜15時間程度、液を静置して安定化させるのが好ましい。
次いで、酸処理工程を以下のように実施することが好ましい。
すなわち、上述した酸処理前工程で得られたチタニルフタロシアニン結晶を酸に溶解させた後、当該溶液を、水に対して滴下して再結晶させ、次いで得られたチタニルフタロシアニン結晶をアルカリ水溶液中で洗浄することが好ましい。具体的には、得られた粗結晶を酸に溶解し、この溶液を氷冷下の水中に滴下したのち一定時間にわたって攪拌し、さらに10〜30℃の範囲内の温度で静置して再結晶させることが好ましい。次いで、乾燥させず、水が存在した状態において、非水系溶媒中で、30〜70℃で2〜8時間攪拌することが好ましい。
この理由は、かかる強酸を酸処理に用いることによって、不純物を十分に分解することができる一方、特定のチタニルフタロシアニン結晶の分解は抑えることができるためである。よって、より高純度かつ結晶特性に優れたチタニルフタロシアニン結晶を得ることができるためである。
また、洗浄処理に使用するアルカリ水溶液としては、例えばアンモニア水溶液、水酸化ナトリウム水溶液等の一般的なアルカリ水溶液を用いることが好ましい。
この理由は、酸処理後の特定のチタニルフタロシアニン結晶を、かかるアルカリ水溶液を用いて洗浄することによって、当該結晶の環境を酸性から中性とすることができるためである。その結果、次工程における当該結晶の取り扱いが容易となるとともに、当該結晶の安定性を向上させることができるためである。
また、攪拌処理のための非水系溶媒としては、例えばクロロベンゼン、及びジクロロメタン等のハロゲン系溶媒が挙げられる。
第3の参考実施形態は、導電性基体上に感光層を有するとともに、当該感光層がCuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°にピークを有するとともに、示差走査熱量分析において、吸着水の気化に伴なうピーク以外に270〜400℃の範囲内に、1つのピークを有するチタニルフタロシアニン結晶を、感光層を形成する結着樹脂100重量部に対して0.1〜50重量部の範囲で含有することを特徴とする電子写真感光体である。
以下、第1の参考実施形態及び第2の実施形態において既に説明した内容については省略し、第3の参考実施形態として、上述の電子写真感光体について説明する。
なお、有機感光体には、単層型感光体と積層型感光体とがあるが、本発明はこのいずれにも適用可能である。
(1)基本的構成
図1(a)に示すように、単層型感光体10は、導電性基体12上に単一の感光体層14を設けたものである。かかる感光層14は、電荷発生剤としての特定のチタニルフタロシアニン結晶、電荷輸送剤及び結着樹脂を同一の層に含有したものである。
また、感光層の厚さを5〜100μmの範囲内の値とすることが好ましく、10〜50μmの範囲内の値とすることがより好ましい。
また、図1(b)に示すように、導電性基体12と感光層14との間に、感光体の特性を阻害しない範囲でバリア層16が形成されている感光体10´でもよい。また、図1(c)に示すように、感光層14の表面には、保護層18が形成されている感光体10´´でもよい。
この理由は、かかるチタニルフタロシアニン結晶の特性を十分に発揮させつつも、後述する積層型感光体と比較して、その製造を安定的、かつ経済的に実施することができるためである。すなわち、電荷発生剤としての特定のチタニルフタロシアニン結晶が有する特性を十分に発揮した良好な電気特性及び画像特性を有する電子写真感光体を、安定的、かつ経済的に製造することができるためである。
また、電荷輸送剤として、正孔輸送剤及び電子輸送剤の両方を含有することも好ましい。
この理由は、特定のチタニルフタロシアニン結晶の特性を十分に発揮させつつ、露光工程においてかかるチタニルフタロシアニン結晶から発生した電荷を、より効率的に輸送することができるためである。その結果、さらに良好な電気特性及び画像特性を有する電子写真感光体を得ることができるためである。
(2)−1 種類
本発明としての感光体に用いられる電荷発生剤としては、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°にピークを有するとともに、示差走査熱量分析において、吸着水の気化に伴なうピーク以外に270〜400℃の範囲内に、1つのピークを有するチタニルフタロシアニン結晶を用いることを特徴とする。
この理由は、かかる条件を満足しており、有機溶媒中であっても結晶型が変化しにくく、安定した特性を有するチタニルフタロシアニン結晶を、電荷発生剤として用いることによって、良好な電気特性及び画像特性を安定的に有する電子写真感光体を得ることができるためである。
なお、かかる特定のチタニルフタロシアニン結晶の詳細については、第1の参考実施形態及び第2の実施形態において既に記載したため、重複を避けて省略する。
また、電荷発生剤の添加量としては、後述する結着樹脂100重量部に対して0.1〜50重量部の範囲内の値とすることを特徴とする。
この理由は、電荷発生剤の添加量をかかる範囲内の値とすることによって、感光体への露光をした際に、当該電荷発生剤が効率的に電荷を発生することができるためである。
すなわち、かかる電荷発生剤の添加量が、結着樹脂100重量部にたいして0.1重量部未満となると、電荷発生量が、感光体上に静電潜像を形成するのに不十分となる場合があるためである。一方、かかる電荷発生剤の添加量が、結着樹脂100重量部に対して50重量部を超えると、感光層用塗布液中に均一に分散することが困難になる場合があるためである。
よって、結着樹脂100重量部に対する電荷発生剤の添加量を、0.5〜30重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
なお、電荷発生剤の添加量は、電荷発生剤として本発明のチタニルフタロシアニン結晶のみを用いる場合は、当該チタニルフタロシアニン結晶の添加量であり、チタニルフタロシアニン結晶と他の電荷発生剤とを併用する場合は、両者の合計の添加量である。
結着樹脂としては、例えばスチレン系重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル系重合体、スチレン−アクリル系共重合体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、アルキッド樹脂、ポリアミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、及びポリエーテル樹脂などの熱可塑性樹脂や、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、及びその他架橋性の熱硬化性樹脂、さらにエポキシ−アクリレート、及びウレタン−アクリレートなどの光硬化性樹脂などがあげられる。これら結着樹脂は単独で使用できるほか、2種以上を併用することもできる。
(4)−1 種類
電子輸送剤としては、従来公知の種々の電子輸送性化合物がいずれも使用可能である。特にベンゾキノン系化合物、ジフェノキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、マロノニトリル、チオピラン系化合物、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、フルオレノン系化合物〔例えば2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノンなど〕、ジニトロベンゼン、ジニトロアントラセン、ジニトロアクリジン、ニトロアントラキノン、無水こはく酸、無水マレイン酸、ジブロモ無水マレイン酸、2,4,7−トリニトロフルオレノンイミン系化合物、エチル化ニトロフルオレノンイミン系化合物、トリプトアントリン系化合物、トリプトアントリンイミン系化合物、アザフルオレノン系化合物、ジニトロピリドキナゾリン系化合物、チオキサンテン系化合物、2−フェニル−1,4−ベンゾキノン系化合物、2−フェニル−1,4−ナフトキノン系化合物、5,12−ナフタセンキノン系化合物、α−シアノスチルベン系化合物、4−ニトロスチルベン系化合物、及びベンゾキノン系化合物の陰イオンラジカルとカチオンとの塩などの電子吸引性化合物が好適に使用される。これらはそれぞれ単独で使用される他、2種以上を併用することもできる。
中でも特に下記式(7)〜(21)で表される電子輸送剤(ETM−1〜15)が、いずれも本発明としてのチタニルフタロシアニン結晶との相溶性等の相性がよく、かつ電子輸送能に優れた電子輸送剤として、好適に使用される。
また、電子輸送剤の添加量としては、結着樹脂100重量部に対して20〜500重量部の範囲内の値とすることが好ましく、30〜200重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。なお、電子輸送剤と、後述の正孔輸送剤とを併用する場合には、その合計量を、結着樹脂100重量部に対して20〜500重量部の範囲内の値とすることが好ましく、30〜200重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
また、電子輸送剤と、後述する正孔輸送剤とを併用して用いる場合、電子輸送剤の添加量を、正孔輸送剤100重量部に対して10〜100重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
(5)−1 種類
また正孔輸送剤としては、従来公知の種々の正孔輸送性化合物がいずれも使用可能である。特にベンジジン系化合物、フェニレンジアミン系化合物、ナフチレンジアミン系化合物、フェナントリレンジアミン系化合物、オキサジアゾール系化合物〔例えば2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなど〕、スチリル系化合物〔例えば9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセンなど〕、カルバゾール系化合物〔例えばポリ−N−ビニルカルバゾールなど〕、有機ポリシラン化合物、ピラゾリン系化合物〔例えば1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリンなど〕、ヒドラゾン系化合物、トリフェニルアミン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、トリアゾール系化合物、ブタジエン系化合物、ピレン−ヒドラゾン系化合物、アクロレイン系化合物、カルバゾール−ヒドラゾン系化合物、キノリン−ヒドラゾン系化合物、スチルベン系化合物、スチルベン−ヒドラゾン系化合物、及びジフェニレンジアミン系化合物などが好適に使用される。これらはそれぞれ単独で使用される他、2種以上を併用することもできる。
中でも特に下記式(22)〜(46)で表される正孔輸送剤(HTM−1〜25)が、いずれも前述のチタニルフタロシアニン結晶との相溶性等の相性がよく、かつ正孔輸送能に優れた正孔輸送剤として、好適に使用される。
また、正孔輸送剤の添加量としては、結着樹脂100重量部に対して20〜500重量部の範囲内の値とすることが好ましく、30〜200重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。なお、正孔輸送剤と、上述の電子輸送剤とを併用する場合には、その合計量を、結着樹脂100重量部に対して20〜500重量部の範囲内の値とすることが好ましく、30〜200重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
また、感光層には、上述の各成分の他に、例えば増感剤、フルオレン系化合物、紫外線吸収剤、可塑剤、界面活性剤、レベリング剤などの種々の添加剤を添加することもできる。また感光体の感度を向上させるために、例えばターフェニル、ハロナフトキノン類、及びアセナフチレンなどの増感剤を、電荷発生剤と併用してもよい。
上述の感光層が形成される導電性基体としては、導電性を有する種々の材料を使用することができる。例えば鉄、アルミニウム、銅、スズ、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、及び真鍮などの金属にて形成された導電性基体や、上述の金属が蒸着またはラミネートされたプラスチック材料からなる基体、あるいはヨウ化アルミニウム、酸化スズ、及び酸化インジウムなどで被覆されたガラス製の基体などが例示される。
すなわち、基体自体が導電性を有するか、あるいは基体の表面が導電性を有していればよい。また、導電性基体は、使用に際して、充分な機械的強度を有するものが好ましい。
また、導電性基体の形状は使用する画像形成装置の構造に合わせて、シート状、及びドラム状などのいずれであってもよい。
単層型感光体を製造するにあたり、結着樹脂と、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、さらに必要に応じて電子輸送剤と、を溶媒に添加して、分散混合し、感光層用塗布液とする。すなわち、単層型感光体を塗布方法により形成する場合には、電荷発生剤としてのチタニルフタロシアニン結晶、電荷輸送剤、及び結着樹脂等を適当な溶剤とともに、公知の方法、例えばロールミル、ボールミル、アトライタ、ペイントシェーカー、及び超音波分散機等を用いて分散混合して分散液を調整し、これを公知の手段により塗布して乾燥させればよい。
また、感光層用塗布液を作るための溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、トルエン、1,4−ジオキサン、及び1−メトキシ−2−プロパノール等の1種または2種以上が挙げられる。
さらに、感光層用塗布液中に、電荷輸送剤や電荷発生剤の分散性や感光体層表面の平滑性を良好なものとするために、界面活性剤やレベリング剤等を添加してもよい。
(1)基本的構成
図2に示すように、積層型感光体20は、基体12上に、蒸着または塗布等の手段によって、電荷発生剤としての特定のチタニルフタロシアニン結晶を含有する電荷発生層24を形成し、次いでこの電荷発生層24上に、電荷輸送剤等と、結着樹脂を含む感光層用塗布液を塗布し、それを乾燥させて電荷輸送層22を形成することによって作製することができる。
また、上述の構造とは逆に、図2に示すように、基体12上に電荷輸送層22を形成し、その上に電荷発生層24を形成してもよい。
ただし、電荷発生層24は、電荷輸送層22に比べて膜厚がごく薄いため、その保護のためには、図2に示すように、電荷発生層24の上に電荷輸送層22を形成することがより好ましい。
このように構成することにより、上述したチタニルフタロシアニン結晶と、電荷輸送剤等との相性等を特別に考慮する必要がなく、また、かかるチタニルフタロシアニン結晶に対して相性がよい結着樹脂、及び溶剤等を用いて感光層を構成することができる。よって、かかるチタニルフタロシアニン結晶の特性を、より効果的に発揮させて、電気特性、及び画像特性に優れた電子写真感光体を安定的に得ることができる。
また、このような感光体層が形成される基体としては、上述した単層型感光体の基体と同様のものを用いることができる。
本発明の積層型感光体を構成するにあたり、電荷発生剤、正孔輸送剤、結着樹脂、及びその他の添加剤等の種類については、上述した単層型感光体と基本的に同様の内容とすることができる。
また、本発明の積層型感光体に用いられる電荷発生剤の添加量は、電荷発生層を構成する結着樹脂100重量部に対して、5〜1000重量部の範囲内の値とすることが好ましく、30〜500重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
また、電荷輸送層を構成する電荷輸送剤と結着樹脂とは、電荷の輸送を阻害しない範囲、及び結晶化しない範囲で、種々の割合で配合することができるが、光照射により電荷発生層で生じた電荷が容易に輸送できるように、電荷輸送剤の添加量を、結着樹脂100重量部に対して10〜500重量部の範囲内の値とすることが好ましく、25〜200重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
なお、電荷輸送剤の添加量とは、電子輸送剤の添加量と正孔輸送剤の添加量の合計を示しており、電子輸送剤または正孔輸送剤のどちらかのみが添加されている場合は、添加されている電荷輸送剤のみの添加量を示す。
電荷発生層、電荷輸送層、及び中間層等の製造方法は、それぞれ結着樹脂、及びその他の添加物を適当な分散媒とともに、公知の方法を用いて分散混合して感光層用塗布液を調製し、次に、それぞれ公知の手段で塗布、及び乾燥すればよい。
[実施例1]
1.チタニルフタロシアニンの製造
アルゴン置換したフラスコ中に、o−フタロニトリル22g(0.17モル)と、チタンテトラブトキシド25g(0.073モル)と、尿素2.28g(0.038モル)とキノリン300gとを加え、攪拌しつつ150℃まで昇温した。次に、反応系から発生する蒸気を系外へ留去しながら215℃まで昇温した後、この反応温度を維持しつつさらに2時間、攪拌して反応させた。
反応終了後、150℃まで冷却した時点で反応混合物をフラスコから取り出し、ガラスフィルターによってろ別し、得られた固体をN,N−ジメチルホルムアミド、およびメタノールで順次洗浄したのち真空乾燥して、青紫色の固体24gを得た。
(1)酸処理前工程
上述したチタニルフタロシアニン化合物の製造で得られた青紫色の固体10gを、N,N−ジメチルホルムアミド100ミリリットル中に加え、攪拌しつつ130℃に加熱して2時間、攪拌処理を行った。次に、2時間経過した時点で加熱を停止し、23±1℃まで冷却した後、攪拌を停止し、この状態で12時間、液を静置して安定化処理を行った。次いで、安定化された液をガラスフィルターによってろ別し、得られた固体をメタノールで洗浄した後、真空乾燥して、チタニルフタロシアニン化合物の粗結晶9.83gを得た。
上述した酸処理前工程で得られたチタニルフタロシアニンの粗結晶5gを、濃硫酸100ミリリットルに加えて溶解した。次に、この溶液を、氷冷下の水中に滴下したのち室温で15分間攪拌し、さらに23±1℃付近で30分間、静置して再結晶させた。次に、上述した液をガラスフィルターによって濾別し、得られた固体を洗浄液が中性になるまで水洗した後、乾燥させずに水が存在した状態で、クロロベンゼン200ミリリットル中に分散させて50℃に加熱して10時間攪拌した。次いで、液をガラスフィルターによって濾別したのち、得られた固体を50℃で5時間、真空乾燥させて、式(3)で表される無置換のチタニルフタロシアニンの結晶(青色粉末)4.1gを得た。
(1)CuKα特性X線回折スペクトル測定
また、得られた、製造後60分以内のチタニルフタロシアニン0.3gを、テトラヒドロフラン5g中に分散させ、温度23±1℃、相対湿度50〜60%RHの条件下、密閉系中で7日間、保管した後、X線回折装置(理学電機(株)製のRINT1100)のサンプルホルダーに充填して測定を行った。
なお、測定条件は、初期測定、再測定ともに下記の通りとした。
X線管球:Cu
管電圧:40kV
管電流:30mA
スタート角度:3.0°
ストップ角度:40.0°
走査速度:10°/分
また、CuKα特性X線回折スペクトルを、下記の基準に沿って評価した。なお、得られた結果は表1及び図3に示す。
○:ブラッグ角2θ±0.2=27.2に強いピークを有するとともに、7.2°及び26.2°においてピークを有さない。
×:ブラッグ角2θ±0.2=27.2におけるピークが小さく、26.2°に強いピークを有する。
また、示差走査熱量計(理学電機(株)製のTAS−200型、DSC8230D)を用いて、得られたチタニルフタロシアニン結晶の示差走査熱量分析を行った。測定条件は下記の通りである。なお、図4に、得られた示差走査熱量分析チャートを示すが、296℃において1つのピークが観察された。
サンプルパン:アルミニウム製
昇温速度:20℃/分
また、得られたチタニルフタロシアニン結晶5重量部を、式(22)で表される正孔輸送剤(HTM−1)70重量部と、式(7)で表される電子輸送剤(ETM−1)30重量部と、結着樹脂であるポリカーボネート(帝人化成(株)製 TS2020)100重量部とを、800重量部のテトラヒドロフランとともに、超音波分散機を用いて混合、分散させて単層型感光層用の塗布液を製造した。
次いで、この感光層用塗布液を製造直後、およそ60分以内に、導電性基体としての直径30mm、全長254mmのアルミニウム製のドラム状支持体に対し、ディップコート法にて塗布した。その後、130℃で、30分間熱処理して、膜厚25μmの単層型感光層を有する電子写真感光体を作製した。
(1)電気特性
また、製造直後の単層型感光層用の感光層用塗布液を用いて形成した感光層の明電位Vr1(V)と、7日間貯蔵後の感光層用塗布液を用いて形成した感光層の明電位Vr2(V)とをそれぞれ以下の条件下で測定した。
すなわち、常温常湿下(温度:20℃、湿度:60%)にて、作製した電子写真感光体を、ドラム感度試験機を用いて、コロナ放電により、表面電位+700Vに帯電させた。
次いで、バンドパスフィルターを用いて波長780nm、半値幅20nmに単色化した光強度8μW/cm2の光を、電子写真感光体の表面に1.5秒間、露光しつつ、露光開始から0.5秒後の表面電位を明電位として測定した。そして、ΔVr(V)(=Vr2−Vr1)を算出して、その明電位変化の絶対値から、感光層の電気特性として、下記の基準に沿って評価した。得られた結果を表1に示す。
○:明電位変化の絶対値が、10V未満である。
×:明電位変化の絶対値が、10V以上である。
また、7日間貯蔵後の感光層用塗布液を用いて作成した電子写真感光体を搭載したプリンターFS1010(京セラミタ(株)製)を用いて、高温高湿下(温度:35℃、湿度:85%)にて画像形成を行い、ISO5%連続20万枚印字及びISO2%間欠5万枚印字を行った。
次に、分光光度計SpectroEye(グレタグマクベス(株)製)にて、ISO5%連続20万枚印字及びISO2%間欠5万枚印字時における、非印字領域の濃度を測定し、下記の基準に沿って画像かぶりを評価した。得られた結果は、表1に示す。
○:非印字領域の濃度が0.008未満であり、かぶり不良が全く観察されない。
△:非印字領域の濃度が0.008以上0.015未満であり、かぶり不良が少々観察される。
×:非印字領域の濃度が0.15以上であり、顕著なかぶり不良が観察される。
実施例2〜21では、正孔輸送剤及び電子輸送剤の種類の影響を検討した。すなわち、感光体を製造する際に、実施例1で使用した正孔輸送剤(HTM−1)、及び電子輸送剤(ETM−1)のかわりに、それぞれ表1に示すように正孔輸送剤(HTM−1〜7)、及び電子輸送剤(ETM−1〜3)を使用したほかは、それぞれ実施例1と同様にチタニルフタロシアニン結晶の製造、及び単層型感光体の製造を行い、評価した。得られた結果を表1に示す。
なお、実施例2〜21で用いたチタニルフタロシアニン結晶は、実施例1におけるものと同一であるため、CuKα特性X線回折スペクトル及び示差走査熱量分析チャートは実施例1におけるものと同様である。
実施例22〜42では、チタニルフタロシアニン化合物を製造する際に用いた尿素の添加量の影響を検討した。
すなわち、尿素の添加量を、実施例1〜21においては2.28g(0.038モル)としたかわりに、5.70g(0.095モル)としたほかは、それぞれ実施例1〜21と同様にチタニルフタロシアニン結晶の製造、及び単層型感光体の製造を行い、評価した。得られた結果を表1、図5、及び図6に示す。
実施例43〜63では、チタニルフタロシアニン化合物を製造する際に用いた尿素の添加量の影響をさらに検討した。
すなわち、チタニルフタロシアニン化合物を製造する際に用いた尿素の添加量を、実施例1〜21においては2.28g(0.038モル)としたかわりに、8.40g(0.14モル)としたほかは、それぞれ実施例1〜21と同様にチタニルフタロシアニン結晶の製造、及び単層型感光体の製造を行い、評価した。得られた結果は表1、図7、及び図8に示す。
比較例1〜21では、チタニルフタロシアニン化合物を製造する際に尿素を用いなかったほかは、それぞれ実施例1〜21と同様にチタニルフタロシアニン結晶の製造、及び単層型感光体の製造を行い、評価した。得られた結果は表2、図9、及び図10に示す。
比較例22〜42では、チタニルフタロシアニン結晶を製造する際に、比較例1〜21における酸処理前工程の前段階における非結晶性のチタニルフタロシアニン化合物2gをガラスビーカーに入れ、ジエチレングリコールジメチルエーテルを、総量が200ミリリットルになるまで加えた。次いで、これを、23±1℃で24時間、攪拌してチタニルフタロシアニンの結晶を得た。そのほかはそれぞれ比較例1〜21と同様にチタニルフタロシアニン結晶の製造、及び単層型感光体の製造を行い、評価した。得られた結果は表2、図11、及び図12に示す。
比較例43〜63では、チタニルフタロシアニン結晶を製造する際に、比較例1〜21における酸処理前工程後におけるチタニルフタロシアニン粗結晶5gを、ジクロロメタンとトリフルオロ酢酸との混合溶媒(体積比4:1)100ミリリットルに加えて溶解した。次に、この溶液を、メタノールと水の混合貧溶媒(体積比1:1)中に滴下したのち、室温で15分間、攪拌し、さらに23±1℃で、30分間、静置して再結晶させた。次に、上述した液をガラスフィルターによってろ別し、得られた固体を洗浄液が中性になるまで水洗したのち、乾燥させずに水が存在した状態で、クロロベンゼン200ミリリットル中に分散させて室温で1時間、攪拌した。次いで、液をガラスフィルターによってろ別したのち、得られた固体を50℃で5時間、真空乾燥させて、式(3)で表される無置換のチタニルフタロシアニンの結晶(青色粉末)4.2gを得た。
そのほかは、それぞれ比較例1〜21と同様にチタニルフタロシアニン結晶の製造、及び単層型感光体の製造を行い、評価した。得られた結果は表2、図13、及び図14に示す。
比較例64〜84では、チタニルフタロシアニン化合物を製造する際に用いたテトラブトキシドの添加量を、実施例22〜42においては25g(0.073モル)としたかわりに、15.0g(0.044モル)としたほかは、それぞれ実施例22〜42と同様にチタニルフタロシアニン結晶の製造、及び単層型感光体の製造を行い、評価した。得られた結果は表3、図15及び図16に示す。
比較例85〜105では、チタニルフタロシアニン化合物を製造する際に用いた尿素の添加量を、実施例1〜21においては2.28g(0.038モル)としたかわりに、20.25g(0.342モル)としたほかは、それぞれ実施例1〜21と同様にチタニルフタロシアニン結晶の製造、及び単層型感光体の製造を行い、評価した。得られた結果は表3、図17、及び図18に示す。
実施例64では、実施例1〜21と同様にチタニルフタロシアニン結晶を製造して電荷発生剤として用いるとともに、正孔輸送剤として式(22)で表される正孔輸送剤(HTM−1)を用いて以下に示すようにして積層型感光体を製造した。また、画像かぶり評価における評価機として、沖電気(株)製 Microline 22Nを用いたほかは、実施例1〜21と同様に評価した。結果は表4に示す。
なお、用いたチタニルフタロシアニン結晶が、実施例1〜21におけるものと同一であるため、CuKα特性X線回折スペクトル及び示差走査熱量分析チャートの提示は省略する。以下に、実施例64の積層型感光体の製造方法を示す。
(1)中間層
アルミナとシリカで表面処理した後、メチルハイドロジェンポリシロキサンを用いて表面処理した酸化チタン(テイカ(株)製 MT−02(数平均一次粒径10nm))2.5重量部と、6、12、66、610四次元重合ポリアミド樹脂であるアミラン CM8000(東レ(株)製)1重量部と、メタノール10重量部と、ブタノール2.5重量部とを、ペイントシェーカー内に収容した後、10時間分散させ、中間層用感光層用塗布液を調製した。
得られた中間層用の感光層用塗布液を、5ミクロンのフィルタにてろ過した後、導電性基体としての直径30mm、全長238.5mmのアルミニウム製のドラム状支持基体に対し、ディップコート法にて塗布した。その後、130℃で、30分間、熱処理して、膜厚2μmの中間層を形成した。
次に、電荷発生剤として実施例1にて製造したチタニルフタロシアニン結晶1重量部と、結着樹脂であるポリビニルアセタール樹脂(エスレック(株)製 KS−5 積水化学工業)1重量部と、分散媒であるプロピレングリコールモノメチルエーテル60重量部と、テトラヒドロフラン20重量部と、を混合した後、ボールミルにて48時間分散させ、電荷発生層用の感光層用塗布液を作成した。
得られた感光層用塗布液を、3ミクロンのフィルタにてろ過後、上述した中間層上に、ディップコート法にて塗布し、80℃で5分間乾燥させて、膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
次に、式(22)で表される正孔輸送剤(HTM−1)70重量部と、結着樹脂であるポリカーボネート100重量部とを、460重量部のテトラヒドロフランとともに、混合融解して、電荷輸送層用の感光層用塗布液を製造した。
次いで、この感光層用塗布液を製造してから60分以内に、電荷発生層用感光層用塗布液と同様にして電荷発生層上に塗布した。その後、130℃で、30分間、乾燥して、膜厚20μmの電荷輸送層を形成して、全体として積層型感光層を有する電子写真感光体とした。
実施例65〜70では、感光体を製造する際に、実施例64で使用した正孔輸送剤(HTM−1)のかわりに、表4で示す正孔輸送剤(HTM−2〜7)をそれぞれ使用したほかは、それぞれ実施例64と同様に積層型感光体の製造を行い、評価した。結果は表4に示す。
なお、用いたチタニルフタロシアニン結晶は、実施例1〜21におけるものと同一であるため、CuKα特性X線回折スペクトル及び示差走査熱量分析チャートの提示は省略する。
実施例71〜77では、実施例22〜42と同様にチタニルフタロシアニン結晶を製造したほかは、それぞれ実施例64〜70と同様に積層型感光体の製造を行い、評価した。得られた結果は表4に示す。
なお、用いたチタニルフタロシアニン結晶が、実施例22〜42におけるものと同一であるため、CuKα特性X線回折スペクトル及び示差走査熱量分析チャートの提示は省略する。
実施例78〜84では、実施例43〜63と同様にチタニルフタロシアニン結晶を製造したほかは、それぞれ実施例64〜70と同様に積層型感光体の製造を行い、評価した。結果は表4に示す。
なお、用いたチタニルフタロシアニン結晶が、実施例43〜63におけるものと同一であるため、CuKα特性X線回折スペクトル及び示差走査熱量分析チャートの提示は省略する。
比較例106〜112では、比較例1〜21と同様にチタニルフタロシアニン結晶を製造したほかは、それぞれ実施例64〜70と同様に積層型感光体の製造を行い、評価した。結果は表4に示す。
なお、用いたチタニルフタロシアニン結晶が、比較例1〜21におけるものと同一であるため、CuKα特性X線回折スペクトル及び示差走査熱量分析チャートの提示は省略する。
比較例113〜119では、比較例22〜42と同様にチタニルフタロシアニン結晶を製造したほかは、それぞれ実施例64〜70と同様に積層型感光体の製造を行い、評価した。結果は表4に示す。
なお、用いたチタニルフタロシアニン結晶が、比較例22〜42におけるものと同一であるため、CuKα特性X線回折スペクトル及び示差走査熱量分析チャートの提示は省略する。
比較例120〜126では、比較例43〜63と同様にチタニルフタロシアニン結晶を製造したほかは、それぞれ実施例64〜70と同様に積層型感光体の製造を行い、評価した。結果は表4に示す。
なお、用いたチタニルフタロシアニン結晶が、比較例43〜63におけるものと同一であるため、CuKα特性X線回折スペクトル及び示差走査熱量分析チャートの提示は省略する。
比較例127〜133では、比較例64〜84と同様にチタニルフタロシアニン結晶を製造したほかは、それぞれ実施例64〜70と同様に積層型感光体の製造を行い、評価した。結果は表4に示す。
なお、用いたチタニルフタロシアニン結晶が、比較例64〜84におけるものと同一であるため、CuKα特性X線回折スペクトル及び示差走査熱量分析チャートの提示は省略する。
比較例134〜140では、比較例85〜105と同様にチタニルフタロシアニン結晶を製造したほかは、それぞれ実施例64〜70と同様に積層型感光体の製造を行い、評価した。結果は表4に示す。なお、用いたチタニルフタロシアニン結晶が、比較例85〜105におけるものと同一であるため、CuKα特性X線回折スペクトル及び示差走査熱量分析チャートの提示は省略する。
また、本発明のチタニルフタロシアニン結晶の製造方法によれば、o−フタロニトリルまたはその誘導体、もしくは1,3−ジイミノイソインドリンまたはその誘導体と、チタンアルコキシドまたは四塩化チタンと、を尿素化合物の存在下に、所定以上の温度で反応させてチタニルフタロシアニン化合物を製造することにより、有機溶媒中であってもβ型のみならずα型にも結晶転移しにくいチタニルフタロシアニン結晶が、極めて効率的かつ安価に得られるようになった。
したがって、このように製造されたチタニルフタロシアニン結晶を用いた電子写真感光体は、複写機やプリンター等の各種画像形成装置における電気特性や画像特性の向上のみならず、製造管理を容易にし、さらには経済的効果に著しく寄与することが期待される。
10´:単層型感光体
10´´:単層型感光体
12:導電性基体
14:感光層
16:バリア層
18:保護層
20:積層型感光体
20´:積層型感光体
20´´:積層型感光体
22:電荷輸送層
24:電荷発生層
25:中間層
Claims (4)
- CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°にピークを有するとともに、26.2°にピークを有さず、示差走査熱量分析において、吸着水の気化に伴なうピーク以外に270〜400℃の範囲内に、1つのピークを有し、
かつ、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、トルエン、1,4−ジオキサン、1−メトキシ−2−プロパノールからなる群の少なくとも1種である有機溶媒に7日間浸漬した後に、少なくともブラッグ角2θ±0.2°=27.2°にピークを有する一方、26.2°にピークを有さないチタニルフタロシアニン結晶の製造方法であって、
前記チタニルフタロシアニン結晶を構成するチタニルフタロシアニン化合物の構造が、下記一般式(1)で表され、
(一般式(1)中、X 1 、X 2 、X 3 、及びX 4 はそれぞれ同一または異なってもよい置換基であり、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、またはニトロ基を示し、繰り返し数a、b、c及びdはそれぞれ1〜4の整数を示し、それぞれ同一または異なってもよい。)
さらに、下記工程(a)〜(b)を含むことを特徴とするチタニルフタロシアニン結晶の製造方法。
(a)o−フタロニトリルまたはその誘導体、もしくは1,3−ジイミノイソインドリンまたはその誘導体1モルに対して、チタンアルコキシドまたは四塩化チタンを0.40〜0.53モルの範囲内の値で添加し、かつ、前記o−フタロニトリルまたはその誘導体、もしくは1,3−ジイミノイソインドリンまたはその誘導体1モルに対して尿素化合物を0.1〜0.95モルの範囲内の値で添加して反応させ、チタニルフタロシアニン化合物を製造する工程
(b)(a)工程において製造したチタニルフタロシアニン化合物に対して、酸処理を実施し、チタニルフタロシアニン結晶を製造する工程 - 前記尿素化合物として、尿素、チオ尿素、O−メチルイソ尿素硫酸塩、O−メチルイソ尿素炭酸塩、及びO−メチルイソ尿素塩酸塩からなる群の少なくとも1種を使用することを特徴とする請求項1に記載のチタニルフタロシアニン結晶の製造方法。
- 前記工程(a)における反応温度を150℃以上の値とすることを特徴とする請求項1または2に記載のチタニルフタロシアニン結晶の製造方法。
- 前記(a)工程を、沸点が180℃以上の含窒素化合物中で実施することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のチタニルフタロシアニン結晶の製造方法。
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