しかしながら、特許文献1では、止め紐及び背もたれ用シートの上端部に設けられたホック金具により背もたれ用シートを子供用椅子の背もたれに取り付けると、背もたれ用シートや止め紐が引っ張られた場合にホック金具が外れやすく、背もたれ用シートが背もたれから外れる可能性がある。
また、特許文献2では、補助用シートを面状ファスナーからなるテープ状止め具で子供用椅子の枠体に取り付けると、テープ状止め具の合わせ位置がずれることにより、補助用シートの子供用椅子の枠体への取り付け位置がずれる可能性がある。また、補助用シートやテープ状止め具が引っ張られた場合などにテープ状止め具が外れやすく、補助用シートが子供用椅子から外れる可能性がある。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、クッションの取り付け位置がずれるのを防止すると共に、クッションが子供乗せ装置から外れることを抑制することができる子供乗せ装置及び二輪車を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、二輪車本体に取り付けられた子供乗せ装置であって、子供が着席したときに身体の一部を支持する支持部材と、前記支持部材に取り付けられるクッションと、前記クッションに設けられ、前記クッションの背面が前記支持部材に接触した状態で前記支持部材に形成された被係止部に係止される係止部と、を備え、前記被係止部が前記支持部材の側面から突設された略L字状の引掛け部であり、前記係止部が、前記クッションに形成された凹部の開口側へ延びるように形成された係止片であり、前記凹部に前記引掛け部を挿入し、前記クッションを前記支持部材に沿って移動させ、かつ前記引掛け部の先端部の向きと交差する方向へ前記係止片を移動させることにより、前記係止片を前記引掛け部に係止させる構成とされていることを特徴としている。
請求項1に記載の発明では、子供が子供乗せ装置に着席したときに身体の一部が支持部材に支持される。支持部材には側面から突設された略L字状の引掛け部が形成されており、クッションに形成された凹部の開口側へ延びるように係止片が形成されている。クッションを支持部材に取り付ける際には、凹部に引掛け部を挿入し、支持部材に沿ってクッションを移動させ、かつ引掛け部の向きと交差する方向へ係止片を移動させることにより、クッションの背面が支持部材に接触した状態でクッションに設けられた係止片が引掛け部に係止される。すなわち、引掛け部の向きと交差する方向へクッションを移動させることでクッションの係止片が支持部材の引掛け部に係止されるので、係止片の引掛け部への係止が安定化すると共に、クッションの背面と支持部材との間に隙間が生じることが抑制され、クッションの支持部材への取り付け位置がずれるのを抑制することができる。また、クッションの係止片が支持部材の引掛け部から外れにくく、クッションが子供乗せ装置から外れることを抑制することができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の子供乗せ装置において、前記クッションが前記支持部材に取り付けられた状態で、前記引掛け部の先端部の向きが前記クッションの内側方向を向いていることを特徴としている。
請求項2に記載の発明では、クッションが支持部材に取り付けられた状態で、引掛け部の先端部の向きがクッションの内側方向を向いている。その際、引掛け部の先端部の向きは、クッションを支持部材に取り付けた状態でクッション自体に引き剥がすような外力が加わった場合に、引掛け部にかかる負荷が最も小さくなるような向きとなる。例えば、先端部の向きがクッションの外側方向を向いた外側向き引掛け部を設けた場合には、クッションの端部(外側部分)をつかんで引き剥がすような外力が加わったときに、略L字状の外側向き引掛け部が開かれる方向に外力が加わり、外側向き引掛け部が弱くなる。これに対して、クッションの内側方向を向いた引掛け部では、引掛け部が開かれる方向の外力が加わりにくく、引掛け部にかかる負荷を低減することができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に子供乗せ装置において、前記支持部材の前記引掛け部から離れた位置に形成された貫通孔と、前記係止片が前記引掛け部に係止された状態で、前記支持部材の側から前記貫通孔へ挿入されて前記クッションに係止又は締結されることにより、前記支持部材に前記クッションを固定する固定手段と、を有することを特徴としている。
請求項3に記載の発明では、支持部材には、引掛け部と離れた位置に貫通孔が形成されており、クッションの係止片が支持部材の引掛け部に係止された状態で、固定手段を支持部材の側から貫通孔へ挿入してクッションに係止又は締結させることにより、クッションが支持部材に固定される。これにより、クッションを支持部材に少ない工程で取り付けることができると共に、クッションの支持部材への取り付け位置がずれるのを防止することができる。また、クッションの係止片が支持部材の引掛け部に係止された状態では、係止片の引掛け部への係止方向と、固定手段の貫通孔への挿入方向とが交差する方向となるので、支持部材に取り付けられたクッションが移動しにくい。このため、クッションが引っ張られて支持部材から外れることをより一層抑制することができる。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の子供乗せ装置において、前記クッションの背面に、前記係止片が前記引掛け部に係止されたときに前記貫通孔と一致すると共に、前記固定手段が係止又は締結される穴部を備え、前記穴部の縁部から前記貫通孔へ挿入される係合突起が突出していることを特徴としている。
請求項4に記載の発明では、クッションの背面に固定手段が係止又は締結される穴部が設けられており、クッションの係止片が支持部材の引掛け部に係止されたときにクッションの穴部が支持部材の貫通孔と一致する。クッションの背面には、穴部の縁部から係合突起が突出しており、係止片が引掛け部に係止された状態で、係合突起が支持部材の貫通孔に挿入される。そして、固定手段が支持部材の側から貫通孔に挿入されてクッションの穴部に係止又は締結されることにより、クッションが支持部材に固定される。係合突起が支持部材の貫通孔に挿入されることにより、固定手段を貫通孔へ挿入してクッションの穴部に係止又は締結させる際に、支持部材の貫通孔とクッションの穴部がずれることを抑制することができる。このため、固定手段を取り付ける際の作業性が向上する。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の子供乗せ装置において、前記係止片及び前記穴部が合わせて3つ設けられていることを特徴としている。
請求項5に記載の発明では、係止片及び穴部が合わせて3つ設けられているので、クッションが3点で支持部材に取り付けられる。このため、クッションの支持部材への取り付けが安定化すると共に、クッションが支持部材から外れるのをより一層防止又は抑制することができる。
請求項6に記載の発明は、請求項4又は請求項5に記載の子供乗せ装置において、前記固定手段は係止ピンであり、前記係止ピンが前記穴部の周縁に着脱可能に係止されることを特徴としている。
請求項6に記載の発明では、固定手段としての係止ピンが被係止穴の周縁に着脱可能に係止されているので、係止ピンを着脱させることによって、クッションを支持部材へ装着し、クッションを支持部材から取り外すことができる。
請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の子供乗せ装置において、前記支持部材が、子供の少なくとも頭部を保護するヘッドガードであり、前記クッションが、側頭部用クッションであることを特徴としている。
請求項7に記載の発明では、支持部材は子供の少なくとも頭部を保護するヘッドガードであり、ヘッドガードに側頭部用クッションが取り付けられる。これにより、側頭部用クッションのヘッドガードへの取り付け位置がずれるのを防止することができると共に、側頭部用クッションがヘッドガードから外れることを抑制することができる。
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の子供乗せ装置において、座部を備えた子供乗せ装置本体に子供が着座したとき、前記クッションの子供の少なくとも後頭部と対向する位置に、子供が着用するヘルメットと干渉しないように窪んだ逃げ部が設けられていることを特徴としている。
請求項8に記載の発明では、クッションの子供の少なくとも後頭部と対向する位置に、子供が着用するヘルメットと干渉しないように窪んだ逃げ部が設けられているので、子供乗せ装置本体の座部に子供が着座したときに、子供が着用するヘルメットがヘッドガードの逃げ部に納まり、ヘルメットとヘッドガードとが干渉することが防止又は抑制される。このため、子供がヘルメットを着用した状態で子供乗せ装置本体の座部に着座しても、ヘルメットがヘッドガード面に押されて子供の頭部が前方に傾くような不自然な姿勢になりにくく、子供が楽な姿勢を保つことができる。また、窪み形状の逃げ部を設けずにヘッドガード全体を後方側にずらした場合と比較して、子供がヘルメットを着用せずに乗車しても逃げ部での頭部の納まりが良く、頭部全体が後方側に移動することが抑制される。
請求項9に記載の発明は、請求項7又は請求項8に記載の子供乗せ装置において、前記ヘッドガードが、前記子供乗せ装置本体に形成されたレール部に沿って上下方向にスライド可能に設けられ、前記ヘッドガードを上下方向にスライドさせて前記レール部の所定の位置で固定する高さ調整機構を有することを特徴としている。
請求項9に記載の発明では、ヘッドガードが、子供乗せ装置本体に形成されたレール部に沿って上下方向にスライド可能に設けられており、ヘッドガードを所定の位置にスライドさせて、高さ調整機構によりヘッドガードをレール部に固定することができる。これにより、子供の成長や身長、体格に合わせて、ヘッドガードを適切な高さに調整することが可能となり、子供の頭部を適切に保護することができる。
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の子供乗せ装置において、前記高さ調整機構は、前記レール部と、前記ヘッドガードに設けられ、前記レール部に沿ってスライドする摺動部と、前記ヘッドガードの前記子供乗せ装置本体と反対側に上下方向に形成された複数の係合部と、前記ヘッドガードと対向して設けられ、前記係合部に係合される被係合部が形成された押し当て部材と、前記子供乗せ装置本体の前記ヘッドガードと反対側に設けられ、前記押し当て部材と連結される回転軸を有する調整ノブと、前記調整ノブの前記子供乗せ装置本体と対向する面に設けられたロック解除面と、前記調整ノブの前記ロック解除面から突出する突出部と、前記子供乗せ装置本体の前記調整ノブと対向する面に設けられ、前記突出部が乗り上げる当接部と、を備え、前記調整ノブの回転操作によりロック時には前記突出部が前記当接部に乗り上げ、前記押し当て部材が前記ヘッドガード側に移動して前記被係合部が前記係合部に係合され、前記調整ノブの回転操作によりロック解除時には前記ロック解除面に前記当接部が入り込み、前記押し当て部材が前記ヘッドガードと反対側に移動して前記係合部と前記被係合部との係合が外れ、前記子供乗せ装置本体に対して前記ヘッドガードがスライド可能とされることを特徴としている。
請求項10に記載の発明は、ヘッドガードに設けられた摺動部が子供乗せ装置本体のレール部に沿ってスライドすることにより、ヘッドガードが子供乗せ装置本体に対して上下方向にスライドする。ヘッドガードの子供乗せ装置本体と反対側には、上下方向に複数の係合部が形成されており、ヘッドガードと対向して設けられた押し当て部材の被係合部が係合可能となっている。子供乗せ装置本体のヘッドガードと反対側には、押し当て部材と連結される回転軸を備えた調整ノブが設けられており、調整ノブの子供乗せ装置本体と対向する面にロック解除面と、ロック解除面から突出する突出部とが設けられている。子供乗せ装置本体の調整ノブと対向する面には、突出部が乗り上げる当接部が設けられている。そして、調整ノブを回転操作により回転させると、ロック時には調整ノブの突出部が子供乗せ装置本体の当接部に乗り上げ、押し当て部材がヘッドガード側に移動して被係合部が係合部に係合される。これにより、調整ノブと押し当て部材との間で子供乗せ装置本体とヘッドガードとが挟持され、ヘッドガードが固定される。このため、任意の係合部に被係合部を係合することで、ヘッドガードが任意の位置で子供乗せ装置本体に固定され、子供乗せ装置本体に対するヘッドガードの高さを調整することが可能となる。
また、調整ノブを回転操作により回転させると、ロック解除時には調整ノブの突起部が子供乗せ装置本体の当接部から外れて、調整ノブのロック解除面に当接部が入り込み、押し当て部材がヘッドガードと反対側に移動して係合部と被係合部との係合が外れる。これにより、子供乗せ装置本体に対してヘッドガードがスライド可能となる。
このため、簡単な操作によりヘッドガードの高さを調整することができると共に、調整ノブと押し当て部材との間にヘッドガードと子供乗せ装置本体とを挟持することにより、ヘッドガードを安定して固定することができ、ヘッドガードのガタツキの発生やヘッドガードの係合が不安定になることを抑制することができる。
請求項11に記載の発明に係る二輪車は、二輪車本体に請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の子供乗せ装置が取り付けられていることを特徴としている。
請求項11に記載の発明に係る二輪車では、二輪車本体に請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の子供乗せ装置が取り付けられているので、クッションの支持部材への取り付け位置がずれるのを防止することができると共に、従来の止め紐のホック金具や面状ファスナーからなるテープ状止め具に比べて、クッションが支持部材から外れることを抑制することができる。
請求項1の発明に係る子供乗せ装置では、クッションの支持部材への取り付け位置がずれるのを防止することができると共に、クッションが支持部材から外れることを抑制することができる。
請求項2の発明に係る子供乗せ装置では、クッションの支持部材への取り付け時にクッションを引き剥がすような外力が加わった場合でも、引掛け部にかかる負荷を低減することができる。
請求項3の発明に係る子供乗せ装置では、クッションの支持部材への取り付け位置がずれるのを防止することができると共に、クッションが支持部材から外れることをより一層抑制することができる。
請求項4の発明に係る子供乗せ装置では、固定手段を係止又は締結する際に、支持部材の貫通孔とクッションの穴部がずれることを抑制することができ、クッションの取付時の作業性が向上する。さらにクッションの支持部材に対する貫通孔と交差する方向の強度部材にもなるのでクッションの取付強度が増大する。
請求項5の発明に係る子供乗せ装置では、クッションが支持部材から外れるのをより一層防止又は抑制することができる。
請求項6の発明に係る子供乗せ装置では、係止ピンを着脱させることによりクッションの支持部材への装着及びクッションの支持部材からの取り外しを容易に行うことができる。
請求項7の発明に係る子供乗せ装置では、側頭部用クッションのヘッドガードへの取り付け位置がずれるのを防止することができると共に、側頭部用クッションがヘッドガードから外れることを抑制することができる。
請求項8の発明に係る子供乗せ装置では、子供が着用するヘルメットがヘッドガード面に押されて頭部が前方に傾くような不自然な姿勢になりにくく、子供が楽な乗車姿勢を保つことができる。
請求項9の発明に係る子供乗せ装置では、子供の成長や身長、体格に合わせて、ヘッドガードを適切な高さに調整することが可能となり、子供の頭部を適切に保護することができる。
請求項10の発明に係る子供乗せ装置では、簡単な操作によってヘッドガードを子供乗せ装置本体に対して上下方向にスライドさせてヘッドガードの高さを調整できると共に、ヘッドガードのガタツキを抑制し、ヘッドガードを安定状態で子供乗せ装置本体に固定することができる。さらに、押し当て部材等の薄肉化が可能であり、高さ調整機構のコンパクト化を実現できる。
請求項11の発明に係る二輪車によれば、クッションの支持部材への取り付け位置がずれるのを防止することができると共に、クッションが支持部材から外れることを抑制することができる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、図において適宜示される矢印Rは子供乗せバスケット後方側を示しており、矢印UPは子供乗せバスケット上方側を示しており、矢印Wは子供乗せバスケット幅方向外側又は内側を示している。
図1には、本発明の第1実施形態であるバスケットを兼用した子供乗せバスケット10が取り付けられた二輪車1が示されている。
二輪車1には、前輪3側にヘッドパイプ2が配設されている。ヘッドパイプ2の上部には、子供乗せバスケット10に設けられた子供乗せバスケット本体12の下部が取付金具4によって固定支持されている。ヘッドパイプ2の上部には、ハンドルバー6が子供乗せバスケット本体12の両側に略逆L字状に延びるように配設されている。
図2〜図4に示されるように、子供乗せバスケット本体12は、子供が着席可能な座部12Aと、この座部12Aの後方から上方側に起立するように延びた背凭れ部12Bと、この背凭れ部12Bから両サイドを囲むように延びたサイド部12Cと、を備えている。座部12Aと背凭れ部12Bとサイド部12Cは連続して湾曲面を形成するように設けられており、背凭れ部12Bとサイド部12Cの高さはほぼ同じで、サイド部12Cの前方側の高さがやや低くなるように形成されている。座部12Aの前方側には、子供の足部が置載される足載せ部14が設けられており、座部12Aの前方下部から斜め下方側に延設されたベース部材16に沿って足載せ部14がスライド可能となっている。サイド部12Cの前端部には、足載せ部14と対向する位置に子供の脚部が挿通される開口部17が形成されており、さらに子供乗せバスケット本体12の開口部17の上方側には、幅方向に沿って透明素材からなるカウリング18が取り付けられている。
子供乗せバスケット本体12の背凭れ部12Bの内側面(前方側の面)の上方部には、子供乗せバスケット本体12の内側面と一部が重なり合うように支持部材としてのヘッドガード20が配設されている。このヘッドガード20は、子供乗せバスケット本体12に着席した子供の頭部を保護するものである。また、サイド部12Cの前端付近の上部には、カウリング18より後方に、子供が握ることができ、また子供の前方側をガードするハンドルバー22が掛け渡されている。ハンドルバー22を設けることで、子供が着座したときにハンドルバー22を握って自身の身体を支えることができ、子供に安心感を与えることができる。なお、図示を省略するが、ハンドルバー22は両端部の軸部を支点として前後方向に回動可能に構成されている。
子供乗せバスケット10は、子供乗せバスケット本体12に子供が着席可能な椅子としての機能と、子供乗せバスケット本体12に荷物を入れる荷物籠としての機能と、を備えている。すなわち、ベース部材16に沿って足載せ部14をスライドさせて所定位置で固定することにより、子供が子供乗せバスケット本体12の座部12Aに着席し、足部を子供乗せバスケット本体12の開口部17から出して足載せ部14に載置することができる。また、足載せ部14をベース部材16の最上部へスライドさせて固定することにより、子供の脚部が挿通される開口部17が塞がり、子供乗せバスケット本体12内に荷物を入れることができる。
図5に示されるように、子供乗せバスケット10には、ヘッドガード20を子供乗せバスケット本体12の内側面に沿って上下方向にスライドさせて所定の位置で固定する高さ調整装置30が設けられている。ヘッドガード20は、着席した子供の後頭部と対向する後方部20Aと、後方部20Aから子供の側頭部に沿って両サイド側に湾曲するように延びた翼部20Bと、後方部20Aの中央部から下方側に延びた下方延設部20Cと、を備えている。高さ調整装置30は、子供乗せバスケット本体12の背凭れ部12Bの中央部に上下方向に沿って形成された凹状のレール部12Dを備えており、また、ヘッドガード20の背面側に、子供乗せバスケット本体12のレール部12Dに挿入される凸状の摺動部20Dを備えている。そして、レール部12Dに沿って摺動部20Dが移動することで、ヘッドガード20が子供乗せバスケット本体12に対して上下方向にスライド可能となっている。高さ調整装置30の詳細については後述する。
ヘッドガード20の内側面の上部には、摺動部20Dの両側に後方側に凹んだ2つの凹部56が形成されている。摺動部20D及びその両側の2つの凹部56は、子供乗せバスケット本体12に子供が着席したときに、子供の頭部に対応する面に設けられている。2つの凹部56は、湾曲面状であり、左右対称に形成されている。
図3及び図4に示されるように、子供乗せバスケット本体12の上部におけるレール部12Dの両側には、2つの凹部70が形成されている。2つの凹部70は、後方側に湾曲面状に凹んでおり、左右対称に形成されている。すなわち、2つの凹部70は、凹部56とほぼ同形状で、凹部56よりも若干大きく形成されている。これにより、ヘッドガード20を子供乗せバスケット本体12側の最下部にスライドさせたときに、2つの凹部56が2つの凹部70内に納まり、ヘッドガード20の凹部56と子供乗せバスケット本体12とが干渉するのを防止することができる。
また、図4及び図5に示されるように、ヘッドガード20の後方部20Aには、摺動部20Dの両側にシートベルト(図示省略)を取付けるための1対の取付孔50が上下方向に2箇所設けられている。取付孔50は、幅方向端部が斜め下方に傾斜するように設けられている。
図5に示されるように、ヘッドガード20の内側(子供の身体と対向する側)には、ヘッドガード20の後方部20A及び下方延設部20Cに装着される後頭部用クッション200と、両サイドの翼部20Bに装着される一対の側頭部用クッション201、202と、が設けられている。後頭部用クッション200及び側頭部用クッション201、202は、内部に発泡性ポリウレタンなどの弾性体が装填された衝撃吸収部材である。側頭部用クッション201、202が本発明の「クッション」である。
後頭部用クッション200の上部の背面側は、ヘッドガード20の摺動部20D及びその両側の2つの凹部56に沿った湾曲形状となるように形成されている。また、後頭部用クッション200の上部の内面側には、ヘッドガード20の摺動部20D及びその両側の2つの凹部56と対応する位置に、凹状の湾曲形状となるように窪んだ凹状部200Aが形成されている。凹状部200Aは、子供が頭部にヘルメットを着用して子供乗せバスケット本体12に着席したときに、子供が着用するヘルメットの逃げ部となり、ヘルメットと後頭部用クッション200とが干渉するのを防止することができる。また、後頭部用クッション200の両側には、上下に1対の取付孔50とそれぞれ干渉しないように開口204が設けられている。
図6に示されるように、ヘッドガード20の翼部20Bの後方部20A側には略L字状に形成された被係止部としての引掛け部206が上下に2個設けられている。引掛け部206の先端部の向きは、ヘッドガード20の幅方向外側、すなわち、ヘッドガード20の翼部20Bに取り付けられる側頭部用クッション201、202の内側方向を向いている。翼部20Bの先端側には、2個の引掛け部206の上下方向中間部の延長線上に円形の貫通孔208が1個設けられている。
また、図7〜図13に示されるように、自転車の前進方向に対して左側の側頭部用クッション201と右側の側頭部用クッション202は左右対称であるので、左側の側頭部用クッション202を例に説明する。側頭部用クッション202は、自転車幅方向に沿った断面が略L字状に形成されている。側頭部用クッション202の背面(ヘッドガード20と面する位置)には、2個の引掛け部206に対応する位置に、引掛け部206が挿入される凹部210と、側頭部用クッション202の背面から凹部210内に延びて引掛け部206が係止される係止部としての係止片212とが設けられている。すなわち、凹部210と係止片212とは、断面が略L字状の側頭部用クッション202の幅方向一端部と幅方向他端部に形成されている。係止片212は、凹部210におけるヘッドガード20の幅方向外側に、凹部210を覆うように形成されている。これによって、側頭部用クッション202の背面を、ヘッドガード20の引掛け部206が凹部210に挿入されるようにヘッドガード20に接触させ、この状態で側頭部用クッション202をヘッドガード20の下方側へスライドさせることで、係止片212が引掛け部206に係止されるようになっている。すなわち、側頭部用クッション202の背面をヘッドガード20に接触させた状態で、側頭部用クッション202を引掛け部206の向きと交差(本実施形態では直交する方向)する方向へスライドさせることで、係止片212が引掛け部206に係止されるように設定されている。
また、図7に示されるように、側頭部用クッション202の背面の先端部202Aには、係止片212が引掛け部206に係止されたときに、貫通孔208と一致する穴部214が設けられている。図13に示されるように、側頭部用クッション202は、クッション本体202Bの背面側に凹状の湾曲面を有するように窪んだ凹状部214Aが形成されている。クッション本体202Bの背面には、クッション本体202Bよりも剛性が大きい内側裏板202Cが接合されており、内側裏板202Cの背面にクッション本体202Bよりも剛性が大きい外側裏板202Dが接合されている。内側裏板202Cには、凹状部214Aの縁から張り出した壁部203が形成されており、壁部203の中央部に円形開口203Aが形成されている。壁部203はクッション本体202Bに対して背面側に円形状に突出しており、外側裏板202Dには、壁部203の周囲に嵌り込む円形開口202Eが形成されている。壁部203の円形開口203Aには、円筒状のカラー216が挿通されており、カラー216の端部に形成されたフランジ部216Aが壁部203の内側に接合されている。カラー216の筒部216Bは、側頭部用クッション202の背面から突出した係合突起として機能している。また、カラー216の穴とクッション本体202Bの凹状部214Aとで本発明の穴部214が構成されている。カラー216の筒部216Bは、係止片212が引掛け部206に係止されたときに、ヘッドガード20の貫通孔208の内壁面に挿入されるようになっている。
図14に示されるように、ヘッドガード20の背面側から貫通孔208に挿入されて穴部214に係止される固定手段としての係止ピン218が設けられている。図15及び図16に示されるように、係止ピン218は、ヘッドガード20の貫通孔208の径よりも大きい頭部218Aと、頭部218Aに連結されると共に頭部218Aより小径に形成された軸部218Bと、軸部218Bの先端に形成された鍔状の係止部218Cと、を備えている。本実施形態では、係止ピン218は樹脂で形成されている。図14に示されるように、カラー216の内壁面には、係止ピン218の鍔状の係止部218Cが係止される段差面216Cが形成されている。すなわち、この段差面216Cが本発明の穴部214の周縁を構成している。係止ピン218の係止部218Cが段差面216Cに係止されることにより、頭部218Aとの間でヘッドガード20と側頭部用クッション202とを挟持し、側頭部用クッション202がヘッドガード20に固定されるようになっている。その際、係止片212が引掛け部206に係止される方向と、係止ピン218の貫通孔208及び穴部214の挿入方向とが直交する方向に設定されており、側頭部用クッション202がヘッドガード20から外れにくくなる。係止ピン218は、穴部214の段差面216Cに係止されたときに、側頭部用クッション202の通常時の装着状態では係止が外れることはないが、側頭部用クッション202を強い力で引っ張ることにより、係止ピン218の係止が外れるようになっている。これにより、側頭部用クッション202をヘッドガード20に着脱可能に取り付けることが可能である。
ここで、後頭部用クッション200を取り付ける構成についても説明する。図17に示されるように、ヘッドガード20の下方延設部20Cの下端部には、矩形状の開口220が形成されており、開口220の内側に略水平に架け渡された被係止部としての横部材222が1個設けられている。また、ヘッドガード20の後方部20Aの上部の両側に円形の貫通孔224が2個設けられている。
また、図18及び図19(A)に示されるように、後頭部用クッション200の背面(ヘッドガード20と面する位置)の下部には、ヘッドガード20の横部材222に係止される係止部としてのL字状のフック部226が設けられている。フック部226の先端は、子供乗せバスケット本体12の下方側に向いている。後頭部用クッション200の背面の上部の両側には、フック部226がヘッドガード20の横部材222に係止されたときに、ヘッドガード20の2個の貫通孔224と一致する穴部214が設けられている。貫通孔224の孔軸と直交する方向に後頭部用クッション200を移動させてフック部226をヘッドガード20の横部材222に係止するように設定されている。穴部214の周囲には、カラー216の筒部216Bが後頭部用クッション200の背面から突出するように設けられている。2個の筒部216Bは、フック部226がヘッドガード20の横部材222に係止されたときに、ヘッドガード20の貫通孔224の内壁面にそれぞれ挿入されるようになっている。
なお、フック部226の先端は下方側に向いているが、上向き(クッションの内側向き)に設定してもかまわない。ただし、この場合は、クッションの下端部(座面とほぼ同じ位置)に対して引き剥がす方向へ外力が負荷される可能性が低いこと、上向きにすると一旦フック部を横部材222より下方に位置させる必要があるので、その分の空間的な余裕を座面との間に持たせる必要があること、などを考慮したものである。なお、この後頭部用クッション200は、フック部226の引掛け方向と同じ方向に移動させて係止させるという一般的な構成であり本発明とは異なる。
図19(B)に示されるように、ヘッドガード20の背面側から貫通孔224に挿入されて穴部214に係止される係止ピン218が設けられており、カラー216の内壁面には、係止ピン218の鍔状の係止部218Cが係止される段差面216Cが形成されている。
図17〜図19に示されるように、後頭部用クッション200をヘッドガード20の後方部20A及び下方延設部20Cの内側に取り付ける際には、後頭部用クッション200の背面の下部に設けられたフック部226をヘッドガード20の下端部の開口220に挿入し、フック部226をヘッドガード20の横部材222に係止させる。この状態で、後頭部用クッション200の背面をヘッドガード20の後方部20A及び下方延設部20Cの内側面に接触させると、後頭部用クッション200の背面の上部に形成された2個の穴部214がヘッドガード20の2個の貫通孔224と一致する。後頭部用クッション200の穴部214の周囲には、カラー216の筒部216Bが突出しており、筒部216Bをヘッドガード20の貫通孔224の内壁面に係合させる。
そして、図19(B)に示されるように、2個の係止ピン218をそれぞれヘッドガード20の背面側から貫通孔224に貫通させて穴部214に挿入する。これにより、係止ピン218の係止部218Cが穴部214内の段差面216Cに係止され、係止ピン218の頭部218Aがヘッドガード20の凹状面217に接触することで、後頭部用クッション200がヘッドガード20の後方部20A及び下方延設部20Cの内側に固定される。その際、筒部216Bがヘッドガード20の貫通孔224の内壁面に係合されているので、貫通孔224と穴部214の位置がずれることを抑制することができ、係止ピン218を係止する際の作業性及び強度が向上する。これにより、後頭部用クッション200をヘッドガード20に少ない工程で容易に取り付けることができ、後頭部用クッション200のヘッドガード20への取り付け位置がずれるのを防止することが可能となる。また、後頭部用クッション200がフック部226及び穴部214の3点でヘッドガード20に取り付けられるため、後頭部用クッション200のヘッドガード20への取り付けが安定化する。
また、子供乗せバスケット10では、高さ調整装置30によってヘッドガード20が子供乗せバスケット本体12に対して上下方向にスライド可能に設けられており、子供の成長や異なる身長の子供の体格に合わせてヘッドガード20を適切な高さに調整することができる。その際、図5に示されるように、ヘッドガード20の内側面の上部には、摺動部20Dの両側に2つの凹部56が形成されており、後頭部用クッション200がヘッドガード20の内側面に装着されると、後頭部用クッション200の凹状部200Aが形成された部分がヘッドガード20の摺動部20Dと2つの凹部56内に嵌まり込む。子供が頭部にヘルメットを着用して子供乗せバスケット本体12に着席したときに、ヘルメットが凹状部200A内に納まる。すなわち、凹状部200Aは、子供が着用するヘルメットの逃げ部となり、ヘルメットと後頭部用クッション200とが干渉するのを防止することができる。このため、子供がヘルメットを着用した状態で子供乗せバスケット本体12に着席しても、ヘルメットがヘッドガード20の内側面に押されて子供の頭部が前方に傾くような不自然な姿勢になりにくい。従って、子供が楽な乗車姿勢を保つことができる。
また、ヘッドガード20が子供乗せバスケット本体12に対して上下方向にスライド可能であるので、ヘルメットを着用した子供が子供乗せバスケット本体12に着席したときに、ヘルメットが後頭部用クッション200の凹状部200A内に納まるようにヘッドガード20の上下方向の位置を調整することができる。このため、子供の頭部が前方に傾くような不自然な姿勢になるのをより確実に抑制できる。
次に、高さ調整装置30の詳細について説明する。図5及び図20〜図22に示されるように、高さ調整装置30には、ヘッドガード20の摺動部20Dの内側面(子供乗せバスケット本体12と反対側の面)に上下方向に複数形成された係合凹部32と、この係合凹部32と対向する位置(ヘッドガード20の前方側)に配設された押し当て部材34と、子供乗せバスケット本体12の背面側に取り付けられた円形状の取付部材86と、取付部材86に回転可能に設けられた調整ノブ36と、が設けられている。調整ノブ36には、押し当て部材34と連結される回転軸37が設けられている。ヘッドガード20の摺動部20Dの中央部には、上下方向に沿って長孔20Eが形成されており、複数の係合凹部32は、長孔20Eの両側に左右1対となるように水平方向の位置を合わせて設けられている。また、図23に示されるように、取付部材86と子供乗せバスケット本体12には、回転軸37が挿通される円形状の孔86Dと孔12Eが形成されている。図25に示されるように、回転軸37は、取付部材86の孔86Dと、子供乗せバスケット本体12の孔12Eと、ヘッドガード20の長孔20Eと、押し当て部材34の孔35に挿通されており、回転軸37の先端のねじ部には押し当て部材34の抜け止め用のナット38が締結されている。なお、調整ノブ36は内部に六角ボルトをインサート成形しており、調整ノブ36の回転軸37の補強及び回転軸37先端のねじ部となっている。調整ノブ36を回転させるとこの六角ボルトも一体に回転する。
図21及び図22に示されるように、押し当て部材34は、外形が略矩形状の部材からなり、押し当て部材34のヘッドガード20と対向する面には、幅方向に配置された一対の第1凸部34Aが上端部と下端部にそれぞれ設けられており、上端部と下端部の第1凸部34Aの間であって、回転軸37が挿通される孔35の両側には、第2凸部34Bが設けられている。また、第2凸部34Bは、第1凸部34Aよりもヘッドガード20側への突出高さが低く形成されている。これらの第1凸部34Aと第2凸部34Bは、ヘッドガード20に形成された係合凹部32に係合可能となっている。
押し当て部材34の上端部の第1凸部34Aと第2凸部34Bの間には、孔35の両側に、第1凸部34Aと第2凸部34Bとを上下に分割する略L字状のスリット85Aが左右対称に形成されている。また、押し当て部材34の下端部の第1凸部34Aと第2凸部34Bの間には、孔35の両側に、第1凸部34Aと第2凸部34Bとを上下に分割する略L字状のスリット85Bが左右対称に形成されている。押し当て部材34の第2凸部34Bの上下にスリット85A、85Bが形成されることで、押し当て部材34の第2凸部34Bが設けられた部分は略T字状となっている。また、左右の第1凸部34Aの間の部分には薄肉部84Aが形成されている。
一方、押し当て部材84の第2凸部34Bの背面側には、孔35の両側に左右方向に向かって補強用のリブ84Bが形成されている。これにより、第2凸部34Bの周囲の剛性を高くすることができる。従って、スリット85A、85B及び薄肉部84Aにより押し当て部材34の上端部及び下端部の第1凸部34Aが第2凸部34Bよりもヘッドガード20に接触及び後退する方向に弾性変形しやすくなる。また、第2凸部34Bは、第1凸部34Aよりもヘッドガード20側への突出高さが低く形成されている。
図22及び図23に示されるように、子供乗せバスケット本体12の背面側(調整ノブ36側)には、孔12Eの周囲に環状の壁部90が形成されており、壁部90の内側に前述の取付部材86が取り付けられている。取付部材86は、取付部材86に設けられた凸部(図示省略)が子供乗せバスケット本体12の凹部(図示省略)に係合されることで、子供乗せバスケット本体12に固定されている。そして、取付部材86上を調整ノブ36が摺動しながら回転するように構成されている。
図23に示されるように、取付部材86の表面の上半分と下半分には、調整ノブ36の回転方向に沿って調整ノブ36側に突出した傾斜面86Aが形成されている。傾斜面86Aには、取付部材86の上下(図23中の孔12Eの上部と下部)に調整ノブ36側に突出した頂部86Bと、取付部材86の左右(図23中の孔12Eの左側と右側)に調整ノブ36に対して後退した底部86Cと、が形成されている。傾斜面86Aの頂部86Bが本発明の当接部となっている。頂部86Bには、取付部材86の上下方向に沿って第1凹状湾曲面87Aが形成されており、底部86Cには、取付部材86の横方向に沿って第2凹状湾曲面87Bが形成されている。また、取付部材86の中央部には、子供乗せバスケット本体12の孔12Eと合致する位置に、調整ノブ36の回転軸37が挿通する孔86Dが形成されている。
図21、図22及び図24に示されるように、調整ノブ36の取付部材86と対向する面には、回転軸37の上下に、取付部材86側に突出する2つの突出部88Aが設けられている。突出部88Aには、第1凹状湾曲面87Aと第2凹状湾曲面87Bと係合可能な凸状湾曲面89Aが形成されている。突出部88Aの凸状湾曲面89Aがヘッドガード20をロックするためのロック面となっている。また、調整ノブ36の取付部材86と対向する面には、回転軸37の左右に、取付部材86に対して後退する方向に窪んだ窪み部88Bが設けられている。調整ノブ36の2つの突出部88Aの間の窪み部88B付近が、ヘッドガード20をロック解除するロック解除面となっている。また、調整ノブ36の表面(子供乗せバスケット本体12と反対側)には、操作者が把持するためのツマミ36Dが直径方向に設けられている。
調整ノブ36は、左右両方向に回転するものであり、どちらか一方に動かすと、突出部88Aによるヘッドガード20のロックと、窪み部88B(ロック解除面)によるヘッドガード20のロック解除を繰り返す構成となっている。ロック解除時には、押し当て部材34の第2凸部34Bとヘッドガード20の係合凹部32との係合が完全に外れると共に、第1凸部34Aと係合凹部32との係合が外れないように構成されている。また、図25に示されるように、押し当て部材34は、回転軸37のねじ部に締結されたナット38によって抜け止めされており、押し当て部材34の孔35内を回転軸37が回転可能となっている。また、押し当て部材34は矩形状で、ヘッドガード20の摺動部20Dの左右の側壁(凹形状)の間に適度な隙間をもって配置されており、摺動部20Dの左右の側壁により、押し当て部材34の回転が抑制されている。
図2〜4に示されるように、子供乗せバスケット本体12のレール部12Dの両側部には、ヘッドガード20のスライド方向に長円形状のスライド孔13が形成されている(図2〜4では手前側のみ図示)。このスライド孔13には、摺動部20Dに設けられたガイドピン21が上下方向にスライド可能に係止されている。これにより、ヘッドガード20は、ガイドピン21によってレール部12Dの2箇所でスライド孔13に案内されながら、上下方向にスライドする。図2及び図3に示されるように、ヘッドガード20は、ガイドピン21がスライド孔13の最上部に移動した位置と、ガイドピン21がスライド孔13の最下部に移動した位置との間をスライド可能となっている。
次に、上記のような構成の子供乗せバスケット10の作用について説明する。
側頭部用クッション201、202は左右対称で、ヘッドガード20への取付方法は同じであるので、ここでは、側頭部用クッション201を例として説明する。図10に示されるように、側頭部用クッション201をヘッドガード20の翼部20Bの内側に取り付ける際には、側頭部用クッション201の幅方向外側の背面をヘッドガード20の翼部20Bの幅方向外側に接触させる。そして、側頭部用クッション201の背面をヘッドガード20の翼部20Bに接触させた状態で側頭部用クッション201をヘッドガード20の後方側(自転車後方側)へスライドさせることで、図11に示されるように、側頭部用クッション201の背面に形成された2個の凹部210にヘッドガード20の翼部20Bに設けられた2個の引掛け部206がそれぞれ挿入される。そして、側頭部用クッション201を子供乗せバスケット本体12の下方側(図9中の矢印A方向)へスライドさせることにより、図12に示されるように、側頭部用クッション201の背面がヘッドガード20の翼部20Bに接触した状態で係止片212が引掛け部206に係止される。その際、引掛け部206の先端部の向きと交差する方向(本実施形態では、直交する方向)へ側頭部用クッション201を移動させて係止片212を引掛け部206に係止するので、側頭部用クッション201の背面とヘッドガード20の翼部20Bとの間に隙間ができにくく、係止片212と引掛け部206との係止が外れにくい。このため、側頭部用クッション201のヘッドガード20の翼部20Bへの取り付け位置がずれにくい。
引掛け部206が係止片212に係止されたときに、側頭部用クッション201の背面の先端部202Aに設けられた穴部214が、ヘッドガード20の貫通孔208と一致する。側頭部用クッション201の穴部214の周囲には、カラー216の筒部216Bが突出しており、筒部216Bをヘッドガード20の貫通孔208内に挿入し、貫通孔208の内壁面に係合させる。
そして、図14に示されるように、係止ピン218をヘッドガード20の背面側から貫通孔208に貫通させて穴部214に挿入する。これによって、係止ピン218の係止部218Cが穴部214内の段差面216Cに係止され、係止ピン218の頭部218Aがヘッドガード20の凹状面217に接触することで、側頭部用クッション201がヘッドガード20の翼部20Bの内側に固定される。その際、筒部216Bがヘッドガード20の貫通孔208の内壁面に係合されているので、貫通孔208と穴部214の位置がずれることを抑制することができ、係止ピン218を係止する際の作業性及び強度が向上する。
このため、側頭部用クッション201をヘッドガード20に少ない工程で容易に取り付けることができると共に、側頭部用クッション201のヘッドガード20への取り付け位置がずれるのを防止することができる。側頭部用クッション201に直接係止ピンを取り付ける場合に比べて、係止ピン218をヘッドガード20の背面側から貫通孔208に貫通させて穴部214に挿入するので、側頭部用クッション201のヘッドガード20への取り付けを容易に行うことができる。また、引掛け部206の先端部の向きが側頭部用クッション201の内側方向を向いており、側頭部用クッション201自体に引き剥がすような外力が加わった場合に、引掛け部206の先端部の向きが引掛け部206にかかる負荷が最も小さくなるような向きとなる。例えば、側頭部用クッション201の端部(外側部分)をつかんで引き剥がすような外力が加わった場合、側頭部用クッション201の内側方向を向いた引掛け部206では、引掛け部206が開かれる方向の外力が加わりにくく、引掛け部206にかかる負荷を低減することができる。
一方、第1比較例として、図28〜図31に示されるように、引掛け部310の先端部の向きと同方向に側頭部用クッション300を移動させる構成について説明する。なお、側頭部用クッション201と同一の部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
図28に示されるように、側頭部用クッション300の背面には、幅方向一端部側に上下2つの凹部302が形成されており、凹部302の幅方向内側(側頭部用クッション300の内側方向)に係止片304が設けられている。図29に示されるように、ヘッドガード20には、凹部302の開口部分の幅と略同じ長さの幅に形成された引掛け部310が設けられている。引掛け部310の先端部は側頭部用クッション300の内側方向を向いている。
図29に示されるように、側頭部用クッション300の背面をヘッドガード20の翼部20Bに接触させた状態で、側頭部用クッション300をヘッドガード20の後方側へスライドさせる。そして、図30に示されるように、側頭部用クッション300の背面に形成された2個の凹部302にヘッドガード20の翼部20Bに設けられた2個の引掛け部310をそれぞれ挿入する。さらに、側頭部用クッション300を子供乗せバスケット本体12の幅方向内側(図30中の矢印方向)へスライドさせることで、図31に示されるように、側頭部用クッション300に設けられた係止片304が引掛け部310に係止される。その際、側頭部用クッション300の背面とヘッドガード20の翼部20Bとの間に隙間ができ、側頭部用クッション300の背面をヘッドガード20の翼部20Bにぴったりと沿わせることができない。
これに対して、本実施形態の側頭部用クッション201、202では、引掛け部206の先端部の向きと交差する方向(本実施形態では、直交する方向)へ側頭部用クッション201、202を移動させて係止片212を引掛け部206に係止させるので、側頭部用クッション201、202の背面をヘッドガード20の翼部20Bに隙間なく接触させることができる。
第2比較例として、図32(A)、(B)に示されるように、引掛け部330の先端部が側頭部用クッション320の外側方向(ヘッドガード20の幅方向内側)を向いた構成では、側頭部用クッション320に設けられた凹部322の端部側(側頭部用クッション320の外側方向)に係止片324が形成されている。この構成では、側頭部用クッション320の背面をヘッドガード20の翼部20Bに接触させた状態で、ヘッドガード20の引掛け部330を側頭部用クッション320の係止片324に係止することができるが、側頭部用クッション320の端部(外側部分)をつかんで引き剥がすような外力が加わった場合、略L字状の引掛け部330が開かれる方向に力332が加わり、引掛け部330としては強度的に不利である。すなわち、引掛け部330が開かれる方向に力332が加わると、引掛け部330の腕の長さ分のモーメントが引掛け部330の根元に加わる。
これに対して、本実施形態では、引掛け部206が側頭部用クッション201、202の内側方向を向いているので、引掛け部206が開かれる方向の外力が加わりにくく、引掛け部206にかかる負荷を低減することができる。
また、側頭部用クッション201、202の通常時の装着状態では係止ピン218の穴部214の段差面216Cへの係止が外れることはないが、側頭部用クッション201、202を強い力で引っ張ることにより、係止ピン218の係止を外すことができる。これにより、側頭部用クッション201、202をヘッドガード20の翼部20Bに着脱可能に取り付けることができる。
このような側頭部用クッション201、202では、係止部としての2個の係止片212と被係止穴としての1個の穴部214が設けられており、係止片212及び穴部214が合わせて3個設けられているので、側頭部用クッション201、202が3点でヘッドガード20の翼部20Bに取り付けられる。このため、側頭部用クッション201、202のヘッドガード20の翼部20Bへの取り付けが安定化すると共に、側頭部用クッション201、202がヘッドガード20の翼部20Bから外れるのを防止又は抑制することができる。
ここで、ヘッドガード20の高さを調整する動作について説明する。子供乗せバスケット本体12に対してヘッドガード20の高さを調整するときは、高さ調整装置30の調整ノブ36を回転させる。調整ノブ36は、左右両方向に回転するものであり、調整ノブ36をどちらか一方に回転させると、調整ノブ36に形成された突出部88Aの凸状湾曲面89Aが取付部材86の傾斜面86Aを摺動する。そして、突出部88Aの凸状湾曲面89Aが傾斜面86Aの頂部86Bに形成された第1凹状湾曲面87Aに係合することで調整ノブ36の回転が規制される。これにより、調整ノブ36の回転軸37の先端に設けられた押し当て部材34がヘッドガード20の係合凹部32に近づく方向に移動し、押し当て部材34の第1凸部34A及び第2凸部34Bがヘッドガード20の係合凹部32に係合される(ロック状態)。なお、押し当て部材34がヘッドガード20の係合凹部32に近づく方向に移動するとき、押し当て部材34の第1凸部34Aの周囲が弾性変形する。これによって、調整ノブ36と押し当て部材34との間で子供乗せバスケット本体12とヘッドガード20とが挟持され、ヘッドガード20が固定される。押し当て部材34の第1凸部34A及び第2凸部34Bがヘッドガード20の任意の係合凹部32に係合されることで、図2及び図3に示されるように、ヘッドガード20が任意の位置で子供乗せバスケット本体12に固定され、子供乗せバスケット本体12に対するヘッドガード20の高さを調整することができる。
一方、ヘッドガード20の高さを調整する際には、調整ノブ36の回転操作により調整ノブ36をどちらかの方向に回転させる。これにより、突出部88Aの凸状湾曲面89Aが頂部86Bの第1凹状湾曲面87Aから外れて、突出部88Aの凸状湾曲面89Aが傾斜面86Aの底部86C側に摺動する。そして、突出部88Aの凸状湾曲面89Aが底部86Cの第2凹状湾曲面87Bに係合することで、調整ノブ36の回転が規制される。その際、傾斜面86Aの頂部86Bは、調整ノブ36の窪み部88Bと対向する位置となり、ロック解除面に移動している。この状態では、調整ノブ36の回転軸37の先端に設けられた押し当て部材34がヘッドガード20から後退する方向に移動する。これにより、押し当て部材34の第2凸部34Bとヘッドガード20の係合凹部32との係合が完全に外れ(ロック解除状態)、子供乗せバスケット本体12に対してヘッドガード20がスライド可能となる。
このとき、押し当て部材34の第1凸部34Aとヘッドガード20の係合凹部32との係合が外れないので、ヘッドガード20が自重でずり落ちることを防止することができる。
ヘッドガード20を子供乗せバスケット本体12のレール部12Dに沿って上下方向にスライドさせると、第1凸部34Aの弾性変形により係合凹部32との係合が外れて次の係合凹部32に係合され、これを繰り返しながらヘッドガード20が上下方向にスライドする。
その際、図2に示されるように、ヘッドガード20は、中央部付近のレール部12Dの2箇所で、ガイドピン21がスライド孔13に係止された状態でスライドする。これにより、ヘッドガード20を子供乗せバスケット本体12に対してスムーズにスライドさせることができると共に、ヘッドガード20のガタツキを抑制できる。
そして、ヘッドガード20を所望の位置にスライドさせ、調整ノブ36をどちらかの方向に回転すると、前述のロック状態となり、ヘッドガード20が子供乗せバスケット本体12に固定される。これにより、簡単な操作によってヘッドガード20の高さを調整することができる。
このような高さ調整装置30では、突出部88Aの凸状湾曲面89Aを傾斜面86Aの頂部86Bと底部86Cとの間を摺動させるので、調整ノブ36をスムーズに回転させることができ、操作性が良い。
また、押し当て部材34には、スリット85A、85Bが形成されており、第1凸部34Aが弾性変形しやすい。このため、ロック時には、第1凸部34Aのヘッドガード20側への弾性復元力により、第1凸部34Aがヘッドガード20の係合凹部32にしっかりと係合すると共に、第2凸部34Bがヘッドガード20の係合凹部32に係合してヘッドガード20が固定される。また、ロック解除時には、ヘッドガード20を上下方向にスライドさせると、第1凸部34Aがヘッドガード20から後退する側へ弾性変形し、第1凸部34Aとヘッドガード20の係合凹部32との係合が外れやすい。ただし、ヘッドガード20が自重でずり落ちるほどではない。このため、ヘッドガード20を上下方向へスムーズにスライドさせることができる。
このように、ヘッドガード20を子供乗せバスケット本体12に対して上下方向にスライドさせることにより、子供の成長や異なる身長の子供の体格に合わせてヘッドガード20を適切な高さに調整することができる。これにより、子供の体格に合わせて頭部が適切に保護され、走行時や転倒時に安全性を確保することができる。
また、側頭部用クッション201、202に、後頭部用クッション200と同様に、子供が頭部にヘルメットを着用して子供乗せバスケット本体12に着席したときに、ヘルメットの逃げ部となる凹状部を設けることができる。凹状部を設けることにより、ヘルメットと側頭部用クッション201、202とが干渉するのを防止することができ、ヘルメットがヘッドガード20の内側面に押されて子供の頭部が前方に傾くような不自然な姿勢により一層なりにくくなる。従って、子供がより一層楽な乗車姿勢を保つことができる。
次に、本発明の第2実施形態である側頭部用クッションについて説明する。なお、第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
図26及び図27に示されるように、側頭部用クッション250の背面の先端部には、係止片212が引掛け部206に係止されたときに、貫通孔208と一致する穴部252が設けられている。また、側頭部用クッション250を構成する内側裏板202Cからクッション本体202Bの凹状部214A側とは逆側に張り出した壁部203には、筒状のカラー254が装着されている。円筒状のカラー254は、壁部203の円形開口203Aに挿通されており、カラー254の端部に形成されたフランジ部254Aが壁部203の内側に接合されている。カラー254の筒部254Bは、側頭部用クッション250の背面から突出した係合突起として機能している。また、カラー254の穴とクッション本体202Bの凹状部214Aとで本発明の穴部252が構成されている。カラー254の筒部254Bは、係止片212が引掛け部206に係止された状態で、ヘッドガード20の貫通孔208の内壁面に挿入されるようになっている。カラー254の内壁には雌ネジ部が形成されており、図27に示されるように、固定手段としてのビス260が、カラー254の雌ネジ部に螺合されるようになっている。
図26に示されるように、ビス260はヘッドガード20の背面側から貫通孔208に挿入されて、穴部252を構成するカラー254の雌ネジ部に螺合され、ビス260の頭部260Aがヘッドガード20の背面の凹状面217に接触する。これにより、側頭部用クッション250がヘッドガード20に固定される。このような側頭部用クッション250では、ビス260を用いることで、側頭部用クッション250をヘッドガード20により強固に固定することができる。
なお、上記実施形態では、ヘッドガード20に取付けられる側頭部用クッション201、202に本発明を適用したが、これに限定されず、他の部材に取り付けられるクッションに本発明を適用してもよい。例えば、後頭部用クッションや子供乗せバスケット本体12用のクッションに本発明を適用してもよい。
なお、上記実施形態では、押し当て部材34に第1凸部34Aと第2凸部34Bが形成され、ヘッドガード20に係合凹部32が形成されていたが、この構成に限定するものではない。例えば、押し当て部材34に係合凹部を形成し、ヘッドガード20に係合凸部を形成する構成でもよい。
なお、上記実施形態では、調整ノブ36の突出部を湾曲形状の凸状面とし、子供乗せバスケット本体12から突出する当接部の先端に凹状面を設けたが、この構成に限定するものではない。例えば、子供乗せバスケット本体12の当接部を湾曲形状の凸状面とし、調整ノブ36に突出部を形成して凹状面を設けてもよい。
なお、上記実施形態では、ヘッドガード20を子供乗せバスケット本体12に対して上下方向にスライドさせる構成であるが、この構成に限定するものではない。例えば、ショルダーガード部とヘッドガード部とを一体に構成したガード部材を子供乗せバスケット本体12に対して上下方向にスライドさせる機構にもヘッドガード部に本発明を適用可能である。