近年では、子供が二輪車の子供用椅子に着席する際に、ヘルメットを着用することが多い。しかし、上記のような子供用椅子では、子供がヘルメットを着用した状態で着席すると、ヘルメット後部とヘッドレスト面や背凭れ面とが干渉し、ヘルメット後部がヘッドレスト面に押されて子供の頭部が前方に傾くような不自然な姿勢になりやすい。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、子供がヘルメットを着用した状態で着席しても子供の頭部が前方に傾くことを抑制できる子供乗せ装置及び二輪車を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、二輪車本体に取り付けられた子供乗せ装置であって、子供が着席可能な子供乗せ装置本体と、前記子供乗せ装置本体に設けられ、少なくとも頭部を保護するヘッドガードと、前記ヘッドガードに設けられ、前記子供乗せ装置本体に子供が着席したときに、子供が着用するヘルメットと干渉しないようにするための逃げ部と、を有し、前記逃げ部は、前記子供乗せ装置本体に子供が着席したときに、少なくとも子供の後頭部が面する面に形成された凹部であることを特徴としている。
請求項1に記載の発明では、子供乗せ装置本体に子供が着席可能であり、子供乗せ装置本体には少なくとも頭部を保護するヘッドガードが設けられている。ヘッドガードには、子供が着用するヘルメットと干渉しないようにするための逃げ部が設けられているので、子供乗せ装置本体に子供が着席したときに、子供が着用するヘルメットはヘッドガードの逃げ部に納まり、ヘルメットとヘッドガードとが干渉することが抑制される。このため、子供がヘルメットを着用した状態で子供乗せ装置本体に着席しても、頭部と肩部の背面の納まりがよく、ヘルメットがヘッドガード面に押されて頭部が前方に傾くような不自然な姿勢になりにくい。このため、子供が楽な姿勢を保つことができる。
また、逃げ部は、少なくとも子供の後頭部が面する面に形成された凹部であるので、子供がヘルメットを着用した状態で子供乗せ装置本体に着席したときに、ヘルメットの後部が凹部内に納まり、ヘルメットの後部がヘッドガード面に押されて子供の頭部が前方に傾くような不自然な姿勢になりにくい。また、凹部を設けずにヘッドガード全体を後方側にずらした場合と比較して、子供がヘルメットを着用せずに乗車しても凹部での頭部の納まりが良く、頭部全体が後方側に移動することが抑制される。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の子供乗せ装置において、前記凹部は、子供の後頭部及び側頭部に対応する面に形成されていることを特徴としている。
請求項2に記載の発明では、凹部は、子供の後頭部及び側頭部に対応する面に形成されているので、子供の後頭部及び側頭部に対応するヘルメットの後部及び側部が凹部内に納まり、ヘルメットの後部及び側部がヘッドガード面に押されて子供の頭部が前方に傾くような不自然な姿勢になることをより一層抑制できる。このため、子供が楽な乗車姿勢を保つことができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の子供乗せ装置において、前記凹部は、湾曲面状であることを特徴としている。
請求項3に記載の発明では、凹部が湾曲面状であるので、ヘルメットの外周面が湾曲面状の凹部内に納まり、ヘルメットが不自然な位置に傾くことを抑制できる。このため、子供の頭部が前方に傾くような不自然な姿勢になることをより確実に抑制でき、子供が楽な乗車姿勢を保つことができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の子供乗せ装置において、前記ヘッドガードが、前記子供乗せ装置本体に形成されたレール部に沿って上下方向にスライド可能に設けられ、前記ヘッドガードを上下方向にスライドさせて前記レール部の所定の位置で固定する高さ調整機構を有することを特徴としている。
請求項4に記載の発明では、ヘッドガードが、子供乗せ装置本体に形成されたレール部に沿って上下方向にスライド可能に設けられており、ヘッドガードを上下方向にスライドさせることで、高さ調整機構によりレール部の所定の位置でヘッドガードが固定される。これにより、子供の成長や身長、体格に合わせて、ヘッドガードを適切な高さに調整することが可能となり、頭部を適切に保護することができる。その際、子供がヘルメットを着用して子供乗せ装置本体に着席しても、ヘルメットはヘッドガードの逃げ部に納まり、ヘルメットとヘッドガードとが干渉することが抑制される。このため、ヘルメットがヘッドガード面に押されて頭部が前方に傾くような不自然な姿勢になることをより一層抑制でき、子供が楽な姿勢を保つことができる。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の子供乗せ装置において、前記子供乗せ装置本体に設けられ、前記ヘッドガードを前記子供乗せ装置本体側にスライドさせたときに前記凹部が干渉しないようにするための本体側逃げ部を有することを特徴としている。
請求項5に記載の発明では、子供乗せ装置本体には、ヘッドガードの凹部が干渉しないようにするための本体側逃げ部が設けられているので、ヘッドガードを子供乗せ装置本体側にスライドさせたときに凹部が本体側逃げ部に納まり、凹部と子供乗せ装置本体とが干渉することを防止できる。このため、ヘッドガードを子供乗せ装置本体側にスライドさせたときに、子供乗せ装置の省スペース化が可能となる。
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の子供乗せ装置において、前記高さ調整機構は、前記レール部と、前記ヘッドガードに設けられ、前記レール部に沿ってスライドする摺動部と、前記ヘッドガードの前記子供乗せ装置本体と反対側に上下方向に形成された複数の係合部と、前記ヘッドガードと対向して設けられ、前記係合部に係合される被係合部が形成された押し当て部材と、前記子供乗せ装置本体の前記ヘッドガードと反対側に設けられ、前記押し当て部材と連結される回転軸を有する調整ノブと、前記調整ノブの前記子供乗せ装置本体と対向する面に設けられたロック解除面と、前記調整ノブの前記ロック解除面から突出する突出部と、前記子供乗せ装置本体の前記調整ノブと対向する面に設けられ、前記突出部が乗り上げる当接部と、を備え、前記調整ノブの回転操作によりロック時には前記突出部が前記当接部に乗り上げ、前記押し当て部材が前記ヘッドガード側に移動して前記被係合部が前記係合部に係合され、前記調整ノブの回転操作によりロック解除時には前記ロック解除面に前記当接部が入り込み、前記押し当て部材が前記ヘッドガードと反対側に移動して前記係合部と前記被係合部との係合が外れ、前記子供乗せ装置本体に対して前記ヘッドガードがスライド可能とされることを特徴としている。
請求項6に記載の発明は、ヘッドガードに設けられた摺動部が子供乗せ装置本体のレール部に沿ってスライドすることにより、ヘッドガードが子供乗せ装置本体に対して上下方向にスライドする。ヘッドガードの子供乗せ装置本体と反対側には、上下方向に複数の係合部が形成されており、ヘッドガードと対向して設けられた押し当て部材の被係合部が係合可能となっている。子供乗せ装置本体のヘッドガードと反対側には、押し当て部材と連結される回転軸を備えた調整ノブが設けられており、調整ノブの子供乗せ装置本体と対向する面にロック解除面と、ロック解除面から突出する突出部とが設けられている。子供乗せ装置本体の調整ノブと対向する面には、突出部が乗り上げる当接部が設けられている。そして、調整ノブを回転操作により回転させると、ロック時には調整ノブの突出部が子供乗せ装置本体の当接部に乗り上げ、押し当て部材がヘッドガード側に移動して被係合部が係合部に係合される。これにより、調整ノブと押し当て部材との間で子供乗せ装置本体とヘッドガードとが挟持され、ヘッドガードが固定される。このため、任意の係合部に被係合部を係合することで、ヘッドガードが任意の位置で子供乗せ装置本体に固定され、子供乗せ装置本体に対するヘッドガードの高さを調整することが可能となる。
また、調整ノブを回転操作により回転させると、ロック解除時には調整ノブの突起部が子供乗せ装置本体の当接部から外れて、調整ノブのロック解除面に当接部が入り込み、押し当て部材がヘッドガードと反対側に移動して係合部と被係合部との係合が外れる。これにより、子供乗せ装置本体に対してヘッドガードがスライド可能となる。
このため、簡単な操作によりヘッドガードの高さを調整することができると共に、調整ノブと押し当て部材との間にヘッドガードと子供乗せ装置本体とを挟持することにより、ヘッドガードを安定して固定することができ、ヘッドガードのガタツキの発生やヘッドガードの係合が不安定になることが抑制される。
請求項7に記載の発明に係る二輪車は、二輪車本体に請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の子供乗せ装置が取り付けられていることを特徴としている。
請求項7に記載の発明に係る二輪車では、二輪車本体に請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の子供乗せ装置が取り付けられているので、子供がヘルメットを着用して子供乗せ装置本体に着席したときに、ヘルメットが逃げ部に収まり、ヘルメットとヘッドガードとが干渉することが防止される。このため、ヘルメットがヘッドガード面に押されて頭部が前方に傾くような不自然な姿勢になりにくく、子供が楽な乗車姿勢を保つことができる。
請求項1の発明に係る子供乗せ装置では、子供がヘルメットを着用して子供乗せ装置本体に着席しても、ヘルメットがヘッドガード面に押されて頭部が前方に傾くような不自然な姿勢になりにくく、子供が楽な乗車姿勢を保つことができる。
さらに、ヘルメットの後部が凹部内に納まり、ヘルメットの後部がヘッドガード面に押されて頭部が前方に傾くような不自然な姿勢になりにくい。また、子供がヘルメットを着用せずに乗車しても頭部の納まりが良い。
請求項2の発明に係る子供乗せ装置では、ヘルメットの後部及び側部の面が凹部内に納まり、子供の頭部が前方に傾くような不自然な姿勢になることをより一層抑制できる。
請求項3の発明に係る子供乗せ装置では、ヘルメットの外周面が湾曲面状の凹部内に納まり、頭部が不自然な状態に傾くことを抑制できる。
請求項4の発明に係る子供乗せ装置では、子供の成長や身長、体格に合わせて、ヘッドガードを適切な高さに調整することが可能となり、頭部を適切に保護することができる。
請求項5の発明に係る子供乗せ装置では、ヘッドガードを子供乗せ装置本体側にスライドさせたときに、子供乗せ装置の省スペース化が可能となる。
請求項6の発明に係る子供乗せ装置では、簡単な操作によってヘッドガードを子供乗せ装置本体に対して上下方向にスライドさせてヘッドガードの高さを調整できると共に、ヘッドガードのガタツキを抑制し、ヘッドガードを安定状態で子供乗せ装置本体に固定することができる。さらに、押し当て部材等の薄肉化が可能であり、高さ調整機構のコンパクト化を実現できる。
請求項7の発明に係る二輪車によれば、子供がヘルメットを着用して子供乗せ装置本体に着席しても、ヘルメットがヘッドガード面に押されて頭部が前方に傾くような不自然な姿勢になりにくく、子供が楽な乗車姿勢を保つことができる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1には、本発明の一実施形態であるバスケットを兼用した子供乗せバスケット10が取り付けられた二輪車1が示されている。
二輪車1には、前輪3側にヘッドパイプ2が配設されている。ヘッドパイプ2の上部には、子供乗せバスケット10に設けられた子供乗せバスケット本体12の下部が取付金具4によって固定支持されている。ヘッドパイプ2の上部には、ハンドルバー6が子供乗せバスケット本体12の両側に略逆L字状に延びるように配設されている。
図2〜図4に示されるように、子供乗せバスケット本体12は、子供が着席可能な座部12Aと、この座部12Aの後方から上方側に起立するように延びた背凭れ部12Bと、この背凭れ部12Bから両サイドを囲むように延びたサイド部12Cと、を備えている。座部12Aと背凭れ部12Bとサイド部12Cは連続して湾曲面を形成するように設けられており、背凭れ部12Bとサイド部12Cの高さはほぼ同じで、サイド部12Cの前方側の高さがやや低くなるように形成されている。座部12Aの前方側には、子供の足部が置載される足載せ部14が設けられており、座部12Aの前方下部から斜め下方側に延設されたベース部材16に沿って足載せ部14がスライド可能となっている。サイド部12Cの前端部には、足載せ部14と対向する位置に子供の脚部が挿通される開口部(図示省略)が形成されており、さらにその開口部の上部側に幅方向に沿って透明素材からなるカウリング18が取り付けられている。
子供乗せバスケット本体12の背凭れ部12Bの内側面(前方側の面)の上方部には、子供乗せバスケット本体12の内側面と一部が重なり合うようにヘッドガード20が配設されている。このヘッドガード20は、子供乗せバスケット本体12に着席した子供の頭部を保護するものである。また、サイド部12Cの前端付近の上部には、カウリング18より後方に、子供が握ることができ、また子供の前方側をガードするハンドルバー22が掛け渡されている。ハンドルバー22を設けることで、子供が着座したときにハンドルバー22を握って自身の身体を支えることができ、子供に安心感を与えることができる。なお、図示を省略するが、ハンドルバー22は両端部の軸部を支点として前後方向に回動可能に構成されている。
子供乗せバスケット10は、子供乗せバスケット本体12に子供が着席可能な椅子としての機能と、子供乗せバスケット本体12に荷物を入れる荷物籠としての機能と、を備えている。すなわち、ベース部材16に沿って足載せ部14をスライドさせて所定位置で固定することにより、子供が子供乗せバスケット本体12の座部12Aに着席し、足部を子供乗せバスケット本体12から出して足載せ部14に載置することができる。また、足載せ部14をベース部材16の最上部へスライドさせて固定することにより、子供の脚部が挿通される開口部(図示省略)が塞がり、子供乗せバスケット本体12内に荷物を入れることができる。
図5〜図7に示されるように、子供乗せバスケット10には、ヘッドガード20を子供乗せバスケット本体12の内側面に沿って上下方向にスライドさせて所定の位置で固定する高さ調整装置30が設けられている。高さ調整装置30は、子供乗せバスケット本体12の背凭れ部12Bの中央部に上下方向に沿って形成された凹状のレール部12Dを備えている。また、ヘッドガード20は、着席した子供の後頭部と対向する後方部20Aと、後方部20Aから子供の側頭部に沿って両サイド側に湾曲するように延びた翼部20Bと、後方部20Aの中央部から下方側に延びた下方延設部20Cと、を備えている。また、高さ調整装置30には、ヘッドガード20の背面側に、子供乗せバスケット本体12のレール部12Dに挿入される凸状の摺動部20Dが設けられている。そして、レール部12Dに沿って摺動部20Dが移動することで、ヘッドガード20が子供乗せバスケット本体12に対して上下方向にスライド可能となっている。
また、高さ調整装置30には、ヘッドガード20の摺動部20Dの内側面(子供乗せバスケット本体12と反対側の面)に上下方向に複数形成された係合凹部32と、この係合凹部32と対向する位置(ヘッドガード20の前方側)に配設された押し当て部材34と、子供乗せバスケット本体12の背面側に回転可能に設けられた調整ノブ36と、が設けられている。調整ノブ36には、押し当て部材34と連結される回転軸37が設けられている。ヘッドガード20の摺動部20Dの中央部には、上下方向に沿って長孔20Eが形成されており、複数の係合凹部32は、長孔20Eの両側に左右1対となるように水平方向の位置を合わせて設けられている。また、図9に示されるように、子供乗せバスケット本体12には、回転軸37が挿通される円形状の孔12Eが形成されている。図7に示されるように、回転軸37は、子供乗せバスケット本体12の孔12Eとヘッドガード20の長孔20Eと押し当て部材34の孔35に挿通されており、回転軸37の先端のねじ部には押し当て部材34の抜け止め用のナット38が締結されている。なお、図7に示されるように調整ノブ36は内部に六角ボルトをインサート成形しており、調整ノブ36の回転軸37の補強及び回転軸37先端のねじ部となっている。調整ノブ36を回転させるとこの六角ボルトも一体に回転する。
図8に示されるように、押し当て部材34は、矩形状の部材からなり、押し当て部材34のヘッドガード20と対向する面には、上端部と下端部に幅方向に配置された一対の第1凸部34Aがそれぞれ設けられている。押し当て部材34の上端部と下端部は薄板状で弾性変形が可能であり、第1凸部34Aが弾性的に変位可能に設けられている。押し当て部材34の中間部には、回転軸37が挿通される孔35の両側に第2凸部34Bが設けられている。また、第2凸部34Bは、第1凸部34Aよりもヘッドガード20側への突出高さが低く形成されている。これらの第1凸部34Aと第2凸部34Bは、ヘッドガード20に形成された係合凹部32に係合可能となっている。
図9に示されるように、子供乗せバスケット本体12の背面側(調整ノブ36側)には、孔12Eの周囲に略円形状に突出する突出面42が形成されており、この突出面42上を調整ノブ36が摺動しながら回転するように構成されている。突出面42の上下と左右には、孔12Eを中心として略90°の位置に4つの当接部44が設けられている。当接部44は、調整ノブ36(図7参照)側に突出する円弧状の凸状面からなり、円弧状の凸状面の斜面部分の傾斜の方向が略円形状の突出面42の周方向、すなわち調整ノブ36の回転方向に沿って配置されている。
図10〜図12に示されるように、調整ノブ36の子供乗せバスケット本体12と対向する面には、回転軸37を中心として略90°の位置に、子供乗せバスケット本体12側に突出する4つの突出部36Aが設けられている。4つの突出部36Aは、調整ノブ36の周縁付近に設けられている。突出部36Aの先端部には、当接部44が係合される円弧状の凹状面36Bが形成されている。また、調整ノブ36の子供乗せバスケット本体12と対向する面には、4つの突出部36Aの間にロック解除面36Cが設けられている。ロック解除面36Cは、突出部36Aに対して凹状に窪んだ形状となっている。図11では、分かりやすくするために、調整ノブ36の2つの突出部36Aと直交する方向に切断した断面が示されている。なお、後に詳述するが、突出部36Aの凹状面36Bは、ヘッドガード20をロックするためのロック面を構成している。また、調整ノブ36の表面(子供乗せバスケット本体12と反対側)には、操作者が把持するためのツマミ36Dが直径方向に設けられている。
調整ノブ36は、左右両方向に回転するものであり、どちらか一方に動かすと、突出部36Aによるヘッドガード20のロックと、ロック解除面36Cによるヘッドガード20のロック解除を繰り返す構成となっている。例えば、調整ノブ36を右方向(図12中の矢印A方向)に回転すると、図11(B)に示されるように、調整ノブ36の突出部36Aが子供乗せバスケット本体12の当接部44に乗り上げ、凹状面36Bが当接部44に係合される。そのとき、図7に示されるように、調整ノブ36の回転軸37の先端に設けられた押し当て部材34がヘッドガード20の摺動部20Dの内側面の係合凹部32に近づく方向に移動し、押し当て部材34の第1凸部34A及び第2凸部34Bがヘッドガード20の係合凹部32に係合されるようになっている。
また、調整ノブ36を右方向(図12中の矢印A方向)に回転すると、図11(A)に示されるように、突出部36Aの凹状面36Bが当接部44から外れて、ロック解除面36Cに当接部44が入り込み、調整ノブ36の回転軸37の先端に設けられた押し当て部材34がヘッドガード20の摺動部20Dの内側面の係合凹部32から離れる方向に移動する。これにより、押し当て部材34の第2凸部34Bとヘッドガード20の係合凹部32との係合が完全に外れると共に、第1凸部34Aと係合凹部32との係合が外れないように構成されている。また、図7に示されるように、押し当て部材34は、回転軸37のねじ部に締結されたナット38によって抜け止めされており、押し当て部材34の孔35内を回転軸37が回転可能となっている。また、押し当て部材34は矩形状で、ヘッドガード20の摺動部20Dの左右の側壁(凹形状)の間に適度な隙間をもって配置されており、摺動部20Dの左右の側壁により、押し当て部材34の回転が抑制されている。さらに、調整ノブ36を右方向(図12中の矢印A方向)に回転すると、突出部36Aによるヘッドガード20のロックと、ロック解除面36Cによるヘッドガード20のロック解除とが繰り返される。また、調整ノブ36を左方向(図12中の矢印Aと反対方向)に回転しても、突出部36Aによるヘッドガード20のロックと、ロック解除面36Cによるヘッドガード20のロック解除とが繰り返される。
図2、図3及び図14に示されるように、子供乗せバスケット本体12のレール部12Dの両側部には、ヘッドガード20のスライド方向に長円形状のスライド孔13が形成されている(図2、図3及び図14等では手前側のみ図示)。このスライド孔13には、摺動部20Dに設けられたガイドピン21が上下方向にスライド可能に係止されている。これにより、ヘッドガード20は、ガイドピン21によってレール部12Dの2箇所でスライド孔13に案内されながら、上下方向にスライドする。図2及び図14に示されるように、ヘッドガード20は、ガイドピン21がスライド孔13の最上部に移動した位置と、ガイドピン21がスライド孔13の最下部に移動した位置との間をスライド可能となっている。
また、図5及び図6に示されるように、ヘッドガード20の内側面の上部には、摺動部20Dの両側に後方側に凹んだ2つの凹部56が形成されている。図16及び図17に示されるように、2つの凹部56は、子供乗せバスケット本体12に子供が着席したときに、子供の頭部82のうち後頭部82A及び側頭部82Bに対応する面に設けられている。2つの凹部56は、湾曲面状であり、左右対称に形成されている。2つの凹部56は、子供が頭部82にヘルメット84を着用して子供乗せバスケット本体12に着席したときに、子供が着用するヘルメット84の逃げ部となり、ヘルメット84とヘッドガード20とが干渉するのを防止することができる。
図6に示されるように、子供乗せバスケット本体12の上部のレール部12Dの両側には、ヘッドガード20を子供乗せバスケット本体12側の最下部にスライドさせたときに、2つの凹部56の逃げ部となる2つの凹部70が形成されている。2つの凹部70は、後方側に湾曲面状に凹んでおり、左右対称に形成されている。すなわち、2つの凹部70は、凹部56とほぼ同形状で、凹部56よりも若干大きく形成されている。これにより、ヘッドガード20を子供乗せバスケット本体12側の最下部にスライドさせたときに、2つの凹部56が2つの凹部70内に納まり、ヘッドガード20の凹部56と子供乗せバスケット本体12とが干渉するのを防止することができる。
また、図5及び図6に示されるように、ヘッドガード20の後方部20Aには、摺動部20Dの両側にシートベルト90(図16参照)を取付けるための1対の取付孔50が上下方向に2箇所設けられている。取付孔50は、幅方向端部が斜め下方に傾斜するように設けられている。シートベルト90は、1対の取付孔50のうち下部の取付孔50に内側から一旦外側に通して、上部の取付孔50から内側に入れなおし、「日」の字形の金具92(図16参照)で止めるようになっており、この金具92でシートベルト90の長さを調節することができる。シートベルト90は、上下方向の2箇所に設けられた1対の取付孔50のどちらに取り付けてもよい。
図15に示されるように、ヘッドガード20の内側には、ヘッドガード20の上部の中央部に2つの凹部56と対応して装着されるクッション60Aと、両サイドの翼部20Bに装着されるクッション60Bと、凹部56の下部の後方部20Aに装着されるクッション60Cとが設けられている。また、クッション60Cの上部の両側には、上部側の取付孔50と干渉しないように切り欠き部61が設けられている。また、クッション60Cの中間部の両側には、下部側の取付孔50と干渉しないように開口62(図15では右側のみを図示)が設けられている。これらのクッション60A、60B、60Cは、内部に発泡性ポリウレタンなどの弾性体が装填された衝撃吸収部材であり、ヘッドガード20の内側面に図示しないマジックテープ(登録商標)によって着脱可能に装着されている。また、クッション60Aは、凹部56に沿った湾曲形状となるように形成されている。
次に、上記のような構成の子供乗せバスケット10の作用について説明する。
子供乗せバスケット10は、高さ調整装置30によってヘッドガード20が子供乗せバスケット本体12に対して上下方向にスライド可能に設けられており、子供の成長や異なる身長の子供の体格に合わせてヘッドガード20を適切な高さに調整することができる。その際、図16に示されるように、ヘッドガード20の内側面の上部には、摺動部20Dの両側に2つの凹部56が形成されているので、ヘルメット84を着用した子供が子供乗せバスケット本体12に着席したときに、ヘルメット84の後部と側部が凹部56内に納まり、ヘルメット84とヘッドガード20とが干渉することが防止される。このため、子供がヘルメット84を着用した状態で子供乗せバスケット本体12に着席しても、子供の後頭部82Aと肩部の背面の納まりがよく、ヘルメット84がヘッドガード20の内側面に押されて頭部82が前方に傾くような不自然な姿勢になりにくい。従って、子供が楽な乗車姿勢を保つことができる。
また、ヘッドガード20が子供乗せバスケット本体12に対して上下方向にスライド可能であるので、ヘルメット84を着用した子供が子供乗せバスケット本体12に着席したときに、ヘルメット84の後部と側部が凹部56内に納まるようにヘッドガード20の上下方向の位置を調整することができる。このため、子供の頭部82が前方に傾くような不自然な姿勢になるのをより確実に抑制できる。
また、図17に示されるように、ヘッドガード20全体ではなく、ヘルメット84の周囲のみが凹形状となっているので、子供がヘルメット84を着用せずに乗車してもヘッドガード20の凹部56付近の頭部82の納まりが良い。従って、例えば凹部56を設けずにヘッドガード全体を後方側にずらした構成と比較して、子供がヘルメット84を着用せずに乗車したときに、頭部82が後方側に移動しやすくなることを抑制できる。このため、子供の頭部82を適切に保護することができる。
また、図6に示されるように、子供乗せバスケット本体12の上部のレール部12Dの両側には2つの凹部70が設けられているので、ヘッドガード20を子供乗せバスケット本体12側の最下部にスライドさせたときに、ヘッドガード20の2つの凹部56が2つの凹部70内に納まり、ヘッドガード20の凹部56と子供乗せバスケット本体12とが干渉するのを防止することができる。このため、ヘッドガード20を子供乗せバスケット本体12側の最下部にスライドさせたときに子供乗せバスケット10の省スペース化が可能である。
ここで、ヘッドガード20の高さを調整する動作について説明する。子供乗せバスケット本体12に対してヘッドガード20の高さを調整するときは、高さ調整装置30の調整ノブ36を回転させる。調整ノブ36の回転操作により調整ノブ36を例えば右方向(図12中の矢印A方向)に回転すると、図11(B)に示されるように、調整ノブ36の突出部36Aが子供乗せバスケット本体12の当接部44に乗り上げ、突出部36Aの凹状面36Bが当接部44に係合される。そのとき、当接部44が円弧状の凸状面からなるので、調整ノブ36の回転がスムーズとなる。これにより、図7に示されるように、調整ノブ36の回転軸37の先端に設けられた押し当て部材34がヘッドガード20の摺動部20Dの内側面の係合凹部32に近づく方向に移動し、押し当て部材34の第1凸部34A及び第2凸部34Bがヘッドガード20の係合凹部32に係合される(ロック状態)。これによって、調整ノブ36と押し当て部材34との間で子供乗せバスケット本体12とヘッドガード20とが挟持され、ヘッドガード20が固定される。押し当て部材34の第1凸部34A及び第2凸部34Bがヘッドガード20の任意の係合凹部32に係合されることで、図2、図4、図13及び図14に示されるように、ヘッドガード20が任意の位置で子供乗せバスケット本体12に固定され、子供乗せバスケット本体12に対するヘッドガード20の高さを調整することができる。
一方、ヘッドガード20の高さを調整する際には、調整ノブ36の回転操作により調整ノブ36を左右どちらかの方向に回転させる。例えば、右方向(図12中の矢印A方向)に回転すると、図11(A)に示されるように、突出部36Aの凹状面36Bが子供乗せバスケット本体12の当接部44から外れて、調整ノブ36のロック解除面36Cに当接部44が入り込み、調整ノブ36の回転軸37の先端に設けられた押し当て部材34がヘッドガード20の摺動部20Dから後退する方向に移動する。これにより、押し当て部材34の第2凸部34Bとヘッドガード20の係合凹部32との係合が完全に外れ(ロック解除状態)、子供乗せバスケット本体12に対してヘッドガード20がスライド可能となる。
このとき、押し当て部材34の第1凸部34Aとヘッドガード20の係合凹部32との係合が外れないので、ヘッドガード20が自重でずり落ちることを防止することができる。
ヘッドガード20を子供乗せバスケット本体12のレール部12Dに沿って上下方向にスライドさせると、第1凸部34Aの弾性変形により係合凹部32との係合が外れて次の係合凹部32に係合され、これを繰り返しながらヘッドガード20が上下方向にスライドする。
その際、図2に示されるように、ヘッドガード20は、中央部付近のレール部12Dの2箇所で、ガイドピン21がスライド孔13に係止された状態でスライドする。これにより、ヘッドガード20を子供乗せバスケット本体12に対してスムーズにスライドさせることができると共に、ヘッドガード20のガタツキを抑制できる。
図7に示されるように、ヘッドガード20を所望の位置にスライドさせ、調整ノブ36を左右どちらかの方向に回転すると、第1凸部34Aと第2凸部34Bが係合凹部32に係合されると共に、調整ノブ36と押し当て部材34との間で子供乗せバスケット本体12とヘッドガード20とが挟持され、ヘッドガード20が子供乗せバスケット本体12に固定される。これにより、簡単な操作によってヘッドガード20の高さを調整することができる。
このように、ヘッドガード20を子供乗せバスケット本体12に対して上下方向にスライドさせることにより、子供の成長や異なる身長の子供の体格に合わせてヘッドガード20を適切な高さに調整することができる。これにより、子供の体格に合わせて頭部が適切に保護され、走行時や転倒時に安全性を確保することができる。
例えば、子供が子供乗せバスケット本体12に着座したときに、頭部がヘッドガード20にほぼ納まるようにヘッドガード20の高さを調整することで、頭部を保護することができる。
また、高さ調整装置30では、調整ノブ36にロック解除面36Cと突出部36Aを設け、突出部36Aの凹状面36Bに子供乗せバスケット本体12の当接部44が係合したときにロック状態とし、ロック解除面36Cにバスケット本体12の当接部44が入り込んだときにロック解除状態とされており、カム機構が調整ノブ36側に集約されている。このため、押し当て部材34等の薄肉化が可能であり、高さ調整装置30のコンパクト化を実現できる。
また、子供乗せバスケット本体12の当接部44を湾曲形状の凸状面とし、調整ノブ36に突出部36Aと凹状面36Bを設けたので、調整ノブ36を左右どちらかの方向に回転すると、ロック時には調整ノブ36の突出部36Aが当接部44の凸状面を摺動しながら乗り上げる。また、調整ノブ36を左右どちらかの方向に回転すると、ロック解除時には調整ノブ36の突出部36Aが当接部44の凸状面を摺動して当接部44との係合が外れる。このため、調整ノブ36をスムーズに回転させることができる。
なお、上記実施形態では、凹部56の形状を湾曲面状に形成したが、この構成に限定されず、子供が子供乗せバスケット本体12に着席したときに、ヘルメット84の逃げ部となるような形状であれば、他の形状に設定可能である。
なお、上記実施形態では、押し当て部材34に第1凸部34Aと第2凸部34Bが形成され、ヘッドガード20に係合凹部32が形成されていたが、この構成に限定するものではない。例えば、押し当て部材34に係合凹部を形成し、ヘッドガード20に係合凸部を形成する構成でもよい。
なお、上記実施形態では、子供乗せバスケット本体12の当接部44を湾曲形状の凸状面とし、調整ノブ36に突出部36Aと凹状面36Bを設けたが、この構成に限定するものではない。例えば、調整ノブ36の突出部を湾曲形状の凸状面とし、子供乗せバスケット本体12から突出する当接部の先端に凹状面を設けてもよい。これにより、調整ノブ36をスムーズに回転させることができる。
なお、上記実施形態では、ヘッドガード20を子供乗せバスケット本体12に対して上下方向にスライドさせる構成であるが、この構成に限定するものではない。例えば、ショルダーガード部とヘッドガード部とを一体に構成したガード部材を子供乗せバスケット本体12に対して上下方向にスライドさせる機構にもヘッドガード部に本発明を適用可能である。