以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る薬剤情報印刷システム10の全体構成を示している。薬剤情報印刷システム10は、病院1で発行された処方箋5に基づいて調剤した薬剤6を患者に投薬(販売)する薬局2(調剤薬局)に設置されている。
薬剤情報印刷システム10は、投薬する薬剤に関する情報を記載した薬剤情報提供書(印刷物7、8)を発行して患者に提供するためのシステムであり、情報提供が必須でない事項などに対しては印刷して受け取るか否かを患者自身が判断可能でその判断結果が印刷に反映される機能と、印刷されない事項についても課金を前提として別途入手可能とする機能とを有している。
上記の機能を実現するために、薬剤情報印刷システム10は、端末装置11と、プリンタ12、13と、入力端末14と、ベンダ機器15(コインベンダ)とを備えている。
端末装置11とプリンタ12は薬局2の事務室2Aに設置されている。プリンタ13、入力端末14、ベンダ機器15は薬局2の待合室2Bに設置されており、入力端末14とベンダ機器15はプリンタ13に接続されている。また、端末装置11とプリンタ12、13とはネットワークを介して相互に通信可能に接続されている。さらに端末装置11は、薬剤情報データベース3および患者履歴データベース4ともネットワークなどを介して相互に通信可能なように接続されている。
薬剤情報データベース3は、各種の薬剤に関する情報、たとえば、薬剤の名称、主成分、製造メーカ名、ロット番号、薬剤の外観、効能、副作用、注意事項及びアレルギー症例などを薬剤毎にデータベース化して登録・管理している。
患者履歴データベース4は、患者への投薬に関する情報(投薬履歴データ)、たとえば、投薬日、病名、投薬内容、処方箋発行医療機関などを患者毎にデータベース化して登録・管理している。
図2は、患者履歴データベース4に登録される投薬履歴データの一例を示している。図2に示すように、患者履歴データベース4には、患者ID(Identifier)番号、投薬ID番号、投薬日、病名、処方箋発行医療機関、投薬内容(薬剤の名称、主成分、製造メーカ、ロット番号、服用方法)が登録される。
患者ID番号は患者を識別するめのID番号であり、一人の患者に対してユニークなID番号が発行される。投薬ID番号は投薬履歴を識別するためのID番号であり、1回の投薬に対してユニークなID番号が発行される。たとえば、同一の患者では、投薬を受ける毎に新たな投薬ID番号が発行され、その都度、投薬履歴(投薬日、病名、処方箋発行医療機関、投薬内容)が患者履歴データベース4に新たに追加・登録されていく。したがって、同一の患者が複数回投薬を受けた場合には、患者ID番号が同一で投薬ID番号の異なる複数の投薬履歴が患者履歴データベース4に登録されることになる。
この薬剤情報データベース3と患者履歴データベース4は、薬局2の内部または外部の何れに設置されてもよい。また、患者履歴データベース4は薬局2の内部に設置し、薬剤情報データベース3は薬局2の外部、たとえば病院1などの医療機関やデータ管理機関(サービスセンタ)などに設置されたものを利用するようにしてもよい。
図3は、端末装置11の制御系の構成をブロック図で示している。端末装置11は汎用のPC(Personal Computer)などで構成されており、OS(Operating System)上で動作するアプリケーション・プログラムによって薬剤情報提供書の印刷データを作成する機能や、印刷を実行する際に印刷データをネットワークを介してプリンタ12、13に送信する機能などを有している。この端末装置11は、CPU(Central Processing Unit)21と、ROM(Read Only Memory)22と、RAM(Random Access Memory)23と、HDD(Hard Disk Drive)24と、表示部25と、操作部26と、インターフェース部27とを備えており、それらはデータを伝送するためのバス28を介して相互に接続されている。
CPU21は、プログラムに従って上記各部の制御や各種の演算処理を行う機能を果たす。ROM22は、CPU21が実行するプログラム、および、プログラムを実行する際に使用する各種データなどを格納する機能を果たす。
RAM23は、CPU21の作業領域として一時的にプログラムやデータを記憶する機能を果たす。またRAM23には、薬剤情報データベース3や患者履歴データベース4から取得されたデータも記憶される。HDD24は、OSやOS上で動作するアプリケーション・プログラムなどの各種プログラム、OSがプリンタ12、13を制御するための橋渡しを行なうプリンタドライバ、RAM23に記憶されたデータの中で保存する薬剤情報データなどを含む各種データ、装置固有の各種パラメータなどを格納する機能を果たす。HDD24に格納されているプログラムやプリンタドライバは、端末装置11の立ち上げ時にCPU21内の起動プログラムが実行されることで、HDD24内からRAM23に展開されて動作するようになっている。
表示部25は、液晶ディスプレイなどで構成されており、OSやアプリケーション・プログラムの操作画面などを表示する機能を果たす。操作部26は、キーボードやマウスなどで構成されており、オペレータ(薬剤師)が行う各種の操作や情報入力などを受け付ける機能を果たす。インターフェース部27は、ネットワークなどを介して接続されたプリンタ12、13、薬剤情報データベース3、患者履歴データベース4を含む外部機器との間で行う通信やデータの転送を制御する機能を果たす。
図4は、プリンタ13の制御系の構成とプリンタ13に接続された入力端末14およびベンダ機器15を示している。なお、プリンタ12はプリンタ13と同一構成であり、プリンタ12の構成についてはプリンタ13と共に説明する。
プリンタ12、13は、端末装置11からネットワークなどを介して印刷データを受信し、その印刷データに基づく画像や文書を用紙に印刷して出力する機能を備えている。このプリンタ12、13は、CPU31と、ROM32と、RAM33と、HDD34と、操作表示部35と、印刷部36と、インターフェース部37とを備えており、それらはデータを伝送するためのバス38を介して相互に接続されている。
CPU31は、演算処理機能、プリンタ12、13の動作を制御する制御部としての機能、端末装置11から転送された印刷データを画像データに展開する機能、各種の画像処理を行う画像処理機能などを備えている。ROM32は、CPU31が実行する制御やデータの展開、画像処理などに関するプログラム、および、プログラムを実行する際に使用する各種データなどを格納する機能を果たす。RAM33は、CPU31の作業領域として一時的にプログラムやデータを記憶する機能と、展開された画像データを一時的に記憶する画像メモリとしての機能を果たす。
HDD34は、OSやOS上で動作するアプリケーション・プログラムなどの各種プログラム、印刷データなどを含む各種データ、装置固有の各種パラメータなどを格納する機能を果たす。
操作表示部35は、画像表示およびタッチ操作が可能なタッチパネル式のオペレーションパネルとして構成されており、プリンタ12、13の動作状態や操作方法、警告、エラーなどに関する各種表示を行うと共に、オペレータからの入力操作を受け付ける機能を果たす。
印刷部36は、画像データに基づく画像を電子写真プロセスなどにより用紙に印刷して出力する機能を果たす。インターフェース部37は、ネットワークなどを介して接続された端末装置11を含む外部機器との間で行う通信やデータの転送を制御する機能を果たす。
また、プリンタ13に接続されている入力端末14は、画像表示およびタッチ操作が可能なタッチパネルと、キー入力を受け付けるキーボタンとを備えており(何れも図示省略)、オペレータ(患者)からの入力操作を受け付ける機能を有している。この入力端末14は、プリンタ13のインターフェース部37に接続されており、ネットワークなどを介してプリンタ13と通信可能にされている。また、バーコードの読み取りによって情報入力を行う場合には、入力端末14にバーコードリーダを接続するようにしてもよい。
ベンダ機器15は、硬貨や紙幣の投入を受け付けてそれらを管理する機能を有している。このベンダ機器15は、入力端末14と通信可能に接続され入力端末14に連動するようになっている。
プリンタ13は、入力端末14およびベンダ機器15を装備した所謂コインベンダ付プリンタとして構成されており、課金を前提とした印刷においては、入力端末14による入力操作とベンダ機器15への料金投入に応じて所定の印刷動作を行うようになっている。
なお、上記のプリンタ12、13は、原稿を読み取って対応する画像を用紙上に印刷して出力するコピー機能や、スキャナ機能、プリンタ機能、ファクシミリ機能などを備えた複合機などで構成してもよい。また、入力端末14とバーコードリーダはプリンタ13(または複合機)に接続する代わりに、事務室2A側の端末装置11に接続するようにしてもよい。また、本実施の形態では課金システムを導入した構成を例示しているが、課金システムを導入しない場合にはベンダ機器15は不要になる。
次に、薬剤情報印刷システム10の動作について説明する。
図5は、薬剤情報印刷システム10による薬剤情報の判定および印刷動作の処理の流れを示している。図6〜図8は、薬局2における事務室2A側のプリンタ12によって印刷される薬剤情報提供書(印刷物7)の一例を示している。
まず、患者は病院1で医師により作成された処方箋5を受け取った後、薬局2にて処方箋5を薬剤師に渡す(図1参照)。薬剤師は患者から受け取った処方箋5に基づいて投薬する薬剤6を調剤すると共に、調剤した薬剤6のロット番号、および処方箋5に記載されている内容(処方箋発行医療機関、病名、服用方法など)を薬局2の端末装置11に入力し、さらに薬剤6に関する情報を記載した薬剤情報提供書を発行するために、端末装置11を操作して以下の処理を行う。
患者の過去の投薬履歴を調べるために、端末装置11は薬剤師による操作で患者履歴データベース4にアクセスし、この患者の患者ID番号に対応する投薬履歴データ(投薬ID番号、投薬日、病名、処方箋発行医療機関、投薬内容など(図2参照))を取得する(ステップS101/図1のP1)。また、端末装置11は薬剤師による操作で薬剤情報データベース3にアクセスし、処方箋5に記載されている今回投薬する薬剤6に関する情報(薬剤の名称、主成分、製造メーカ名、薬剤の外観、効能、副作用、注意事項及びアレルギー症例など)を取得する(ステップS102/図1のP2)。
次に、投薬する薬剤6に関する重要項目と非重要項目の分離を行う(ステップS103)。この「重要項目」と「非重要項目」については、医療機関として情報提供が必須であるか否かなどを目安に薬局側で任意に設定する。
たとえば、処方箋5に記載されている薬剤の名称や服用方法については情報提供が必須であり「重要項目」にする。薬剤の主成分、製造メーカ名、薬剤の外観、効能、副作用、注意事項・アレルギー症例については情報提供が必須ではないが、本薬局2ではたとえば、薬剤の主成分、薬剤の外観、注意事項・アレルギー症例は「重要項目」に組み入れることとし、製造メーカ名、効能、副作用は「非重要項目」とする。
◇重要項目:薬剤の名称/成分、服用方法、薬剤の外観、注意事項・アレルギー症例
◇非重要項目:製造メーカ名、効能、副作用
ただし、投薬する薬剤が劇薬に該当する場合は全てを重要項目として扱う。また、処方箋5の記載されている服用方法は端末装置11に手入力されるデータであり、その他の薬剤情報は薬剤情報データベース3から取得されるデータである。これらの各データは、薬局側で予め設定した上記の重要/非重要項目に端末装置11が自動的に振り分ける。なお、上記データの振り分けは手動で行うようにしてもよい。また、自動的に重要/非重要項目に振り分けられたデータの一部を必要に応じて入れ替えたり削除したりするなどの例外的な操作を手動で行うようにしてもよい。
本実施形態の端末装置11には、薬剤情報提供書の印刷モードとして、重要項目および非重要項目を印刷する第1印刷モードと、非重要項目は印刷を省略し重要項目のみを印刷する第2印刷モードとが用意されている。
端末装置11は、第1/第2印刷モードを選択するために、詳細には第1/第2印刷モードを患者に選択(判断)させるまたは第2印刷モードを自動的に選択するために、処方箋5に基づいて入力されたデータ(処方箋発行医療機関、病名)と、データベースから取得したデータ(患者の投薬履歴、薬剤情報)を使用し、患者への過去の薬剤情報の提供状況に基づいて以下の判定を行う。
まず、患者の投薬履歴と照らし合わせて、本薬局2における薬剤の処方がその患者に対して初めてであるか否かを判定する(ステップS104)。初めての場合には(ステップS104;Yes)、ステップS109に移行し、該当しない場合(2回目以降の場合)には(ステップS104;No)、次のステップS105に移行する。なお、処方が同じであっても薬局が異なる場合は「初めて」に該当する。
ステップS105では、患者の投薬履歴と照らし合わせて、今回の処方箋5を発行した医療機関が初めてであるか否かを判定する。初めての場合には(ステップS105;Yes)、ステップS109に移行し、該当しない場合(2回目以降の場合)には(ステップS105;No)、次のステップS106に移行する。
ステップS106では、薬剤情報と照らし合わせて、使用する薬剤6の効能に変化が認められるか否かを判定する。変化が認められる場合には(ステップS106;Yes)、ステップS109に移行し、該当しない場合には(ステップS106;No)、次のステップS107に移行する。なお、製造メーカが異なる場合や製造メーカが同じであってもその製造方法に変化がある場合は「変化が認められる」に該当する。
ステップS107では、患者の投薬履歴と照らし合わせて、前回の処方時から一定期間が経過したか否かを判定する。一定期間が経過した場合には(ステップS107;Yes)、ステップS109に移行し、該当しない場合には(ステップS107;No)、次のステップS108に移行する。なお、この判定ステップは一定期間の経過によって薬剤情報に対する患者自身の記憶が薄れると予測されるために設けている。また、「一定期間」については、たとえば日本の医療システムにおいて保険証の再提示が必要な「1ヶ月」などに設定してもよい。
ステップS108では、患者の投薬履歴と照らし合わせて、患者の受診した病名が異なり、薬剤に求められる効能(効果)が過去と異なるか否かを判定する。該当する場合、または、薬剤に求められる効能(効果)は同じであっても同時に処方される他の薬剤との組み合わせが異なる場合には(ステップS108;Yes)、ステップS109に移行し、該当しない場合には(ステップS108;No)、ステップS114に移行する。
以上の判定により、ステップS104〜ステップS108の何れかで肯定判定(Yes)となった場合には、ステップS109に移行して患者による判断(意思確認)を行う。具体的には、今回の処方で投薬される薬剤6の情報について、重要項目に加えて非重要項目も必要であるか否かを薬剤師が患者に問い合わせて患者自身が判断する。
薬剤師は、非重要項目の要否に対する患者の返答(判断)を受けると、端末装置11の操作部26を操作して患者の判断結果に対応する第1/第2印刷モードの何れかを選択する。この選択操作を受けた端末装置11は、投薬日および新たな投薬ID番号を自動発行すると共に、その投薬ID番号に対応し、かつ選択された印刷モードに応じた薬剤情報提供書の印刷データを自動作成する。
患者が非重要項目を要求した場合には(ステップS109;Yes)、第1印刷モードが手動選択され、端末装置11は重要項目に非重要項目を加えた印刷データを作成する(ステップS110)。この場合、重要項目と非重要項目を別ページに分けて印刷すると紙資源が無駄に消費されるため、重要項目と非重要項目を併せたレイアウトで1枚の薬剤情報提供書に記載できるように印刷データを作成する。さらに、印刷データには患者名、投薬日、投薬ID番号、薬局名なども明記される(図6参照)。
薬剤師による操作で印刷が指示されると、端末装置11は印刷データをプリンタ12に送信し、プリンタ12は受信した印刷データに基づく薬剤情報提供書(印刷物7)を印刷出力する。すなわち、今回投薬する薬剤6に関する重要項目と非重要項目を記載した薬剤情報提供書を印刷出力する。なお、非重要項目として製造メーカ名などを記載する場合には、製造メーカのURL(Uniform Resource Locator)を付加情報として印刷するようにしてもよい。
この段階で、端末装置11は患者の今回の投薬に対する投薬履歴データ(患者ID番号、投薬ID番号、投薬日、病名、処方箋発行医療機関、投薬内容(薬剤の名称、主成分、製造メーカ、ロット番号、服用方法)など)を患者履歴データベース4に送信し、患者履歴データベース4は受信した投薬履歴データを新規追加する(ステップS111/図2参照)。そして、端末装置11では今回取得した薬剤情報の全データ(重要項目および非重要項目の各データ)を削除し(ステップS112)、本処理を終了する。
一方、患者が非重要項目を要求しない場合には(ステップS109;No)、第2印刷モードが手動選択され、端末装置11は非重要項目を省略した重要項目のみの印刷データを作成する(ステップS113)。また、ステップS104〜ステップS108まで全て否定判定(No)となった場合には、患者による判断(意思確認)を経ずに端末装置11は第2印刷モードを自動選択し、非重要項目を省略した重要項目のみの印刷データを作成する(ステップS114)。
重要項目のみを印刷する場合も、1枚の薬剤情報提供書に記載できるように印刷データが作成され、印刷データには患者名、投薬日、投薬ID番号、薬局名なども明記される(図7/図8参照)。また、この印刷データに記載される投薬ID番号は、非重要項目を別途入手するための識別情報としても機能する。
薬剤師による操作で印刷が指示されると、端末装置11は印刷データをプリンタ12に送信し、プリンタ12は受信した印刷データに基づく薬剤情報提供書(印刷物7)を印刷出力する。すなわち、今回投薬する薬剤6に関する重要項目のみを記載した薬剤情報提供書を印刷出力する。
この段階で、端末装置11は患者の今回の投薬に対する投薬履歴データを患者履歴データベース4に送信し、患者履歴データベース4は受信した投薬履歴データを新規追加する(ステップS115/図2参照)。
また、端末装置11では今回取得した薬剤情報のデータのうち、薬剤の名称と非重要項目(省略された記載項目)のデータ以外を削除すると共に(薬剤の成分、服用方法、薬剤の外観、注意事項・アレルギー症例の各データを削除)、削除していないデータを投薬ID番号(識別情報)と関連付けしてHDD24に記憶し、一定期間保存する(ステップS116/S117)。なお、ここでの「一定期間」は、たとえば24H/48H/72Hなど任意に設定することができる。そして、一定期間を経過すると保存していた上記データを投薬ID番号と共にHDD24から削除し(ステップS112)、本処理を終了する。
図6は、上記処理のステップS110にて印刷される重要項目および非重要項目が記載された薬剤情報提供書の印刷レイアウト(印刷データ画面レイアウト)の一例を示している。
重要項目および非重要項目が記載される薬剤情報提供書では、図6に例示するように、患者名、投薬日、投薬ID番号、薬局名、投薬する薬剤に関する重要項目(薬剤の名称/成分、服用方法、薬剤の外観、注意事項・アレルギー症例)と非重要項目(製造メーカ名、効能、副作用)がレイアウトされる。
また、薬局2が患者履歴データベース4を所持すると共に、インターネット上での患者ID番号とパスワードの認証により、その患者ID番号に対応する投薬履歴データへのアクセスを可能とし、投薬ID番号の入力によって対応する個々の投薬履歴を表示する、などの投薬履歴情報提供システムを導入している場合には、例示のようにインターネット上における投薬履歴の公開先(URL)を加えるようにしてもよい。これにより、患者は自己所有のPCなどからWeb(ウェブ)を通して自分の投薬履歴に関する詳細情報を閲覧できるようになる。また、この場合の表示フォーマットは、患者履歴データベース4に登録されている投薬履歴データ(図2参照)を表示する形式とする。
なお、薬剤情報提供書には投薬ID番号を記載しているが、記載に当たっては番号だけでなくバーコードリーダなどのスキャン機器によって読取可能なデータ(バーコード)を併記するようにしてもよい。また、この薬剤情報提供書には薬剤に関する重要項目と非重要項目が記載されており、患者が薬剤に関する情報の再提供を要求する可能性は低いと想定されるため、上記の投薬履歴情報提供システムを導入していない場合などには投薬ID番号は記載しないようにしてもよい。
図7は、上記処理における患者の判断を経たステップS113にて印刷される重要項目のみが記載された薬剤情報提供書の印刷レイアウト(印刷データ画面レイアウト)の一例を示している。
この重要項目のみが記載された薬剤情報提供書では、図7に例示するように、患者名、投薬日、投薬ID番号、薬局名、投薬する薬剤に関する重要項目(薬剤の名称/成分、服用方法、薬剤の外観、注意事項・アレルギー症例)、インターネット上での投薬履歴の公開先(URL)がレイアウトされる。さらに、(1)付加情報(非重要項目)が患者の判断で省略されたこと、(2)付加情報を印刷して改めて取り出す場合の取出方法、(3)付加情報を印刷して取り出す場合には別途料金がかかる旨とその金額、(4)付加情報の保存期間、が記載される。なお、薬局の経営方針などによって付加情報の印刷出力を課金しない場合には(3)の記載は省かれる。
また、インターネット上で過去の投薬履歴が閲覧できる環境を整備している場合には、表示フォーマットは図5に示した処理における患者の判断結果(ステップS109;No)に関わりなく、患者履歴データベース4に登録されている投薬履歴データ(図2参照)を表示する形式とする。
図8は、上記処理における患者の判断を経ないステップS114(端末装置11による第2印刷モードの自動選択)にて印刷される、重要項目のみが記載された薬剤情報提供書の印刷レイアウト(印刷データ画面レイアウト)の一例を示している。
この重要項目のみが記載された薬剤情報提供書では、図8に例示するように、患者名、投薬日、投薬ID番号、薬局名、投薬する薬剤に関する重要項目(薬剤の名称/成分、服用方法、薬剤の外観、注意事項・アレルギー症例)、インターネット上における患者本人の投薬履歴の公開先(URL)が図7と同様にレイアウトされる。さらに、(1)重要項目の他に付加情報(非重要項目)が存在して患者の判断により取り出し可能であること、(2)付加情報を印刷して取り出す場合の取出方法、(3)付加情報を印刷して取り出す場合には別途料金がかかる旨とその金額、(4)付加情報の保存期間、が記載される。また図7の場合と同様に、薬局の経営方針などで付加情報の印刷出力を課金しない場合には(3)の記載は省かれる。
また、インターネット上で過去の投薬履歴が閲覧できる環境を整備している場合には、表示フォーマットは図5に示した処理における判定結果(ステップS104〜ステップS108;全てNo)に関わりなく、患者履歴データベース4に登録されている投薬履歴データ(図2参照)を表示する形式とする。
図6〜図8に例示した薬剤情報提供書(印刷物7)がプリンタ12から出力されると、薬剤師は調剤した薬剤6と共に薬剤情報提供書を患者に渡す。ここで、たとえば患者が図7に例示した薬剤情報提供書を見て、改めて非重要項目の内容を印刷物として受け取りたいと考え直すことが想定される。また、患者が図8に例示した薬剤情報提供書を見て、重要項目として記載された内容を確認し、更に非重要項目の内容を印刷物として受け取りたいと希望する場合が想定される。これらの場合、患者は薬局2の待合室2Bに設置されているプリンタ13の入力端末14を操作して非重要項目が記載された薬剤情報提供書を入手することができる。
以下に、非重要項目が記載された薬剤情報提供書を入手する手順について説明する。
図9は、非重要項目が記載された薬剤情報提供書を出力するときの入力端末14およびベンダ機器15を含むプリンタ13全体の動作の処理の流れを示している。図10および図11は、図9の処理にて入力端末14のタッチパネルに表示される操作/案内画面を示している。
入力端末14は、タッチパネルにおけるデフォルト画面がたとえば図10に示す画面で表示される(ステップS121)。このデフォルト画面では、プリンタ13による印刷を行うためのスタートボタン40、途中でキャンセルの操作を行うためのキャンセルボタン41、キーボタン(またはバーコードリーダによる読み込み)によって入力された投薬ID番号が表示される投薬ID番号表示部42、投薬ID番号入力の完了の操作を行うための入力完了ボタン43が表示されている。また、デフォルト画面の表示中はスタートボタン40が無効化されている。
非重要項目が記載された薬剤情報提供書を入手しようとする患者は、入力端末14のキーボタンを操作して先に受け取った薬剤情報提供書(図7および図8参照)に記載されている投薬ID番号を入力し、入力完了ボタン43を押下する。なお、薬剤情報提供書に投薬ID番号を示すバーコードが記載されており、入力端末14にバーコードリーダが接続されている場合には、上記のキー入力に代えて薬剤情報提供書に記載されているバーコードをバーコードリーダに読み込ませることにより投薬ID番号を入力端末14に入力するようにしてもよい。
入力端末14は、投薬ID番号の入力を受け付けると(ステップS122)、タッチパネルに表示していた投薬ID番号表示部42および入力完了ボタン43の画面を図11に示す料金の投入案内画面に切り替える(ステップS123)。この案内画面では、たとえば「料金が20円かかります。ベンダーユニットにお金を投入してください。」といった料金の投入を促す旨のメッセージ44(案内文)が表示される。
入力端末14に連動するベンダ機器15は、上記の案内画面の表示に伴い、料金の投入を受け付ける待機状態になる。待機中にキャンセルボタン41が押下されると(ステップS124;Yes)、入力端末14はキャンセルを受け付けてタッチパネルの表示をデフォルト画面(図10参照)に戻し(ステップS131)、本処理を終了する。キャンセルボタン41が押下されなければ(ステップS124;No)、ベンダ機器15に指定金額が投入されるまで(ステップS125;No)、図11に示す案内画面を表示したまま待機状態を継続する。
ベンダ機器15に指定金額(たとえば20円)が投入されると(ステップS125;Yes)、入力端末14はタッチパネルに表示していたスタートボタン40を有効(アクティブ)にし、スタートボタン40の押下を受け付け可能な状態にする(ステップS126)。
スタートボタン40が押下されず(ステップS127;No)、キャンセルボタン41も押下されない場合には(ステップS129;No)、スタートボタン40の有効化状態を継続する。キャンセルボタン41が押下された場合には(ステップS129;Yes)、ベンダ機器15に投入された金額を返却し、タッチパネルの表示をデフォルト画面(図10参照)に戻して(ステップS131)、本処理を終了する。
スタートボタン40が押下されると(ステップS127;Yes)、入力端末14は印刷の指示を受け付けてプリンタ13に印刷開始を指示し、プリンタ13は印刷を開始する(ステップS128)。プリンタ13による印刷が開始されると、入力端末14はタッチパネルの表示をデフォルト画面に戻して(ステップS131)、本処理を終了する。
プリンタ13による印刷動作では、まず入力端末14が投薬ID番号とそれに対応する非重要項目を記載した印刷データのプリンタ13による印刷要求を端末装置11に送信する。端末装置11は、上記の投薬ID番号および印刷要求を受信すると、受信した投薬ID番号に対応する薬剤の名称および非重要項目のデータをHDD24から読み出し、そのデータを使用して所定フォーマットの印刷データを作成する(図12参照)。そして端末装置11は、作成した印刷データをプリンタ13に送信し、プリンタ13は受信した印刷データに基づく薬剤情報提供書(印刷物8)を印刷出力する。
図12は、上記処理により印刷される非重要項目が記載された薬剤情報提供書の印刷レイアウト(印刷データ画面レイアウト)の一例を示している。この非重要項目が記載される薬剤情報提供書では、図12に例示するように、患者名、投薬日、今回の投薬ID番号、薬局名、薬剤の名称と非重要項目(製造メーカ名、効能、副作用)、前回の投薬ID番号(投薬履歴ID)、インターネット上における患者本人の投薬履歴の公開先(URL)がレイアウトされる。
以上の手順で患者はプリンタ13から出力された薬剤情報提供書を受け取り、投薬された薬剤6に関する情報のうちの非重要項目の内容を入手することができる。
また、図13は図9に示した処理の変形例である課金システムが導入されていない場合の処理の流れを示している。
入力端末14では、タッチパネルにデフォルト画面(図10参照)が表示されており(ステップS141)、患者によるキー入力、または、入力端末14に接続されたバーコードリーダによる薬剤情報提供書(図7および図8参照)に記載されたバーコードの読み取りによって投薬ID番号が入力されると(ステップS142)、無効になっていたスタートボタン40が有効に切り替わる。
スタートボタン40が押下されず(ステップS143;No)、キャンセルボタン41も押下されない場合には(ステップS144;No)、スタートボタン40の有効化状態を継続する。キャンセルボタン41が押下された場合には(ステップS144;Yes)、タッチパネルの表示をデフォルト画面に戻して(ステップS146)、本処理を終了する。
スタートボタン40が押下された場合には(ステップS143;Yes)、入力端末14は印刷を受け付けてプリンタ13に印刷を指示し、プリンタ13は印刷を開始する(ステップS145)。プリンタ13による印刷が開始されると、入力端末14はタッチパネルの表示をデフォルト画面に戻して(ステップS146)、本処理を終了する。
以上説明したように、本実施の形態に係る薬剤情報印刷システム10では、投薬する薬剤6に関する重要項目と非重要項目を印刷する第1印刷モードと、非重要項目は印刷を省略し重要項目のみを印刷する第2印刷モードとを設けていることで、第2印刷モードによる印刷では第1印刷モードに比べて記載する項目(情報量)が少なくなり、印刷に要するトナーなどを節約することができる。
また、第2印刷モードを自動的に選択するか否かについては、過去に提供した薬剤情報の提供状況に基づいて行っている。すなわち、図5に示したように、薬局の利用状況(ステップS104)、医療機関の利用状況(ステップS105)、薬剤の効能の変化(ステップS106)、前回の処方時からの経過期間(ステップS107)、薬剤に求められる効能(効果)の差異(ステップS108)を判定することで行っている。これにより、たとえば過去に提供していない、あるいは前回の提供から一定期間が経過している情報は印刷を省略せず、前回の提供から一定期間が経過していない情報は印刷が省略可能であるなど、今回の薬剤情報の提供において、未提供情報の提供漏れや既提供情報の重複提供(過剰提供)などを回避した適切な印刷モードが選択されるようになる。
また、患者の判断に基づいて薬剤師が端末装置11を操作し印刷モードを選択(最終決定)する場合には、患者の判断(意思)が反映されるようになり、印刷時点で患者の要求に即した薬剤情報を印刷できるようになる。特に、医療機関として情報提供が必須である項目を含む重要度の高いグループ(重要項目)と、情報提供が必須でない重要度の低いグループ(非重要項目)とに分けると共に、患者には重要度の低いグループに対してグループ単位で印刷の要否を判断させるようにしていることで、患者側にとってはその重要度の低いグループが入手すべき情報であるか否かを明確に認識できるようになり、印刷の要否判断が容易に行えるようになる。さらに、上記のような情報提供が必須であるか否かに基づく重要/非重要項目の分け方であれば、最初の印刷時点で重要項目があれば十分であると判断される可能性を高められ、非重要項目の要求を抑えることができて、印刷に要する資源の節約効果をより高めることができる。
また、患者の判断で印刷が省略された非重要項目のデータは、端末装置11のHDD24に一定期間保存されているため、一定期間内であれば患者自身が入力端末14を操作しプリンタ13によって非重要項目に関する情報を印刷出力し入手することができる。これにより、印刷が省略された情報を別途入手したいという要求にも対応できるようになる。
また、端末装置11内に保存するデータ(薬剤の名称および非重要項目)には投薬ID番号を付加していることで、HDD24内の所望データへのアクセスが投薬ID番号に基づいて容易に行えるようになる。
また、患者に提供する薬剤情報提供書には投薬ID番号を記載していることで、患者は薬剤情報提供書に記載された投薬ID番号に基づいて、印刷の省略された非重要項目に関する情報を簡単に入手できるようになる。
また、第1印刷モードで印刷される薬剤情報提供書には薬剤に関する重要項目と非重要項目が記載されるため、患者が薬剤に関する情報提供を再度要求する可能性は低いと想定される。そのため、第1印刷モードでは印刷した薬剤情報(記載項目)のデータを端末装置11のHDD24に保存しないことにより、必要性の低いデータの保存によるHDD24の残り空き容量の低下を抑えることができる。
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は実施の形態に示したものに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
たとえば、実施の形態に係る薬剤情報印刷システムでは、薬剤情報提供書を発行して患者(被提供者)に提供するに当たり、印刷を省略できる情報(非重要項目)の要否を患者自身が判断できるように構成されているが、特許文献1のように印刷の省略を装置が自動的に判断する場合にも、印刷が省略された情報を保存する構成とすれば、その印刷の省略された情報を患者が別途入手したいという要求に応えられるようになる。
また実施の形態では、薬剤情報提供書を処方箋に基づいて作成する場合で説明したが、処方箋に代えて、たとえば上記特許文献1のように医療機関が患者に交付したIC(Integrated Circuit)カードを使用し、ICカードに記録された医療情報に基づいて薬剤情報提供書を作成するようにしてもよい。
また実施の形態では、第2印刷モードで印刷する場合は薬剤情報のデータの中の薬剤の名称と非重要項目(印刷が省略された記載項目)のデータを保存して別途印刷できるように構成したが、この第2印刷モードで印刷する場合に薬剤情報のデータを全て保存しておき、全ての情報または任意に選択した1つ以上の情報を別途印刷できるように構成してもよい。
また実施の形態では、薬局2の待合室2Bに専用の入力端末14、ベンダ機器15、およびプリンタ13を設置して患者自身の操作により薬剤情報を別途入手できるように構成したが、これらの機器を設置しない場合には、薬剤師が患者から薬剤情報を別途入手したい旨の依頼を受けて端末装置11を操作しプリンタ12による印刷出力を行って印刷物を患者に手渡すことでも、薬剤情報を別途入手したいという患者の要求に応えることができる。
また、本発明に係る薬剤情報印刷システムは、実施の形態で説明したような薬剤を調剤して患者に投薬する調剤薬局への導入に限らず、市販の薬剤を販売する一般の薬局においても、販売する薬剤に関する薬剤情報提供書を発行して購買者に提供するようなサービスを行う薬局であれば導入可能である。