以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図面では同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。なお、調剤業界では「調剤」と「調製」との語が区別して用いられる場合があるが、本明細書では「調剤」を広義の意味で用いており、本明細書における「調剤」には、狭義の意味での「調剤」(すなわち「調製」と区別される「調剤」)と、「調製」との両方が含まれることとする。
[1.全体構成]図1は、本発明の実施形態に係る調剤制御システムの構成について説明するための図である。図1には、本発明の実施形態に係る調剤制御システム1と、上位システム2とが示されている。
図1に示すように、調剤制御システム1は制御装置10とデータベース17と調剤装置20とを含み、調剤処理を調剤装置20に実行させるための制御を行うシステムである。
制御装置10は1又は複数のコンピュータによって実現される。図1に示すように、制御装置10は制御部11、記憶部12、通信部13、操作部14、表示部15、及び印刷部16を含む。
制御部11は1又は複数のマイクロプロセッサを含み、記憶部12に記憶されたプログラムに従って処理を実行する。記憶部12は、例えば主記憶(RAM等)及び補助記憶(ハードディスクドライブ又はソリッドステートドライブ等)の情報記憶媒体を含み、制御部11によって実行されるプログラムを記憶する。記憶部12は制御部11のワークメモリとしても動作する。通信部13は他の装置と通信ネットワークを介してデータ通信するためのものである。
例えば、プログラム又はデータは通信ネットワークを介して制御装置10に提供される。なお、制御装置10は、例えばメモリカード又は光ディスク等のコンピュータで読み取り可能な情報記憶媒体に記憶されたプログラム又はデータを読み出すための構成要素を含むようにしてもよい。そして、プログラム又はデータが情報記憶媒体を介して制御装置10に提供されるようにしてもよい。
操作部14はユーザの操作を受け付けるためのものであり、例えばキーボード、マウス、タッチパッド、又はタッチパネル等である。表示部15は制御部11からの指示に従って画面を表示するものであり、例えば液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等である。印刷部16は制御部11からの指示に従って印刷を行うものであり、例えばプリンタ装置等である。
制御装置10はデータベース17にアクセスすることが可能である。データベース17は制御装置10で実現されていてもよいし、制御装置10とは別のコンピュータで実現されていてもよい。データベース17に記憶されるデータについては後述する(図5〜11,15,16参照)。
調剤装置20(調剤実行手段の一例)は、調剤処理を実行する装置であって、例えば、処方データに基づいて調剤処理を人の操作(作業)を要することなく全自動で実行することが可能な装置である。なお、調剤装置20は「調剤システム」と称されるものであってもよい。
調剤処理は、例えば、散薬(散剤)の調剤・分包、錠剤の調剤・分包、水剤の調剤・分注、抗癌剤の混注、又は、調剤された各種薬品の鑑査等の少なくとも一つを含む。また、調剤装置20は、例えば、散薬(散剤)の自動調剤・分包装置、錠剤の自動調剤・分包装置、水剤の自動調剤・分注装置、抗癌剤の自動混注装置、又は、調剤鑑査装置等である。または、調剤装置20は、これらの装置のうちのいずれか一種類の装置が複数接続されたものであってもよい。あるいは、調剤装置20は、これらの装置のうちの複数種類の装置が接続されたものであってもよい。
例えば、調剤装置20は単腕又は双腕型のロボットを含み、当該ロボットによって調剤処理が実行されるような調剤装置である。より具体的には、例えば、ロボットが装置の筐体内に設置された複数の薬剤容器に種類毎に収納された散薬を用いて散薬の秤量及び分包等を行うような散薬の自動調剤・分包装置が調剤装置20の一例に相当する。また例えば、ロボットが装置の筐体内に設置された複数の薬剤を混合して抗癌剤を調剤するような抗癌剤の自動混注装置も調剤装置20の一例に相当する。
調剤装置20はロボットを利用したものに限られない。例えば、ロボット以外の特定の機構によって、装置の筐体内に設置された複数の薬剤容器から対象の錠剤が自動的に取り出されて分包されるような錠剤の自動調剤・分包装置も調剤装置20の一例に相当する。
なお、図1では制御装置10と調剤装置20とが別個の装置として示されているが、制御装置10と調剤装置20とは一体的に構成されていてもよい。すなわち、制御装置10は調剤装置20の調剤実行機能を備えるようにしてもよい。言い換えれば、調剤装置20が制御装置10の機能を備えるようにしてもよい。
上位システム2では処方データが入力され、上位システム2で入力された処方データは鑑査された後、調剤制御システム1に提供される。例えば、上位システム2の端末が病院内の診療部門に設置され、調剤制御システム1は病院内の調剤部門に設置される。また例えば、上位システム2は病院に設置され、調剤制御システム1は調剤薬局に設置される。
調剤制御システム1でも処方データを入力することが可能である。すなわち、調剤制御システム1では、処方データの入力を受け付けるための入力画面(図示せず)が表示部15に表示されるようになっており、調剤制御システム1の使用者は、紙で発行された処方箋を患者から受け取り、当該処方箋を参照しながら処方データを入力することが可能である。つまり、調剤制御システム1では、上位システム2で入力された処方データに基づいて調剤処理を調剤装置20に実行させることも可能であるし、調剤制御システム1で入力された処方データに基づいて調剤処理を調剤装置20に実行させることも可能である。なお、上位システム2は必須のものではなく、上位システム2を設置しなくてもよい。
[2.機能概要]調剤制御システム1は、調剤装置20に調剤処理を自動的に開始させることが可能な自動開始機能を備えている。調剤制御システム1では、使用者が自動開始機能を任意にON/OFFできるようになっている。
自動開始機能がOFFに設定されていると、制御装置10は、所定の権限を有する使用者(権限者)から調剤処理の開始指示を受け付けるのを待って、調剤装置20に調剤処理を開始させる。
調剤制御システム1では、使用者がログインして所定の操作を行うことによって、例えば図2に示すような一覧画面G1が表示部15に表示される。なお、調剤制御システム1へのログインは、使用者がログイン画面(図示せず)に使用者ID及びパスワードを入力することによって行われるようにしてもよいし、使用者が予め配布されたIDカードをカード読み取り部に読み取らせることによって行われるようにしてもよい。ただし、後者の場合には、制御装置10が、カードに記録された情報を接触方式又は非接触方式で読み取るためのカード読み取り部を備える必要がある。
図2に示すように、一覧画面G1には、調剤処理が実行されていない処方データの一覧が表示される。図2に示す例では、処方データA,B,Cが一覧画面G1に表示されている。なお図2では、説明の簡便のため、各処方データを示す情報として「処方データA」、「処方データB」、「処方データC」等のテキストが表示されているが、実際の一覧画面G1には、例えば患者名や処方内容の一部が各処方データを示す情報として表示されることになる。
使用者が一覧画面G1に表示される処方データのうちのいずれかを選択すると、例えば図3に示すような指示画面G2が表示される。指示画面G2は、処方データの調剤処理の開始指示を受け付けるための画面である。
図3に示すように、指示画面G2には、一覧画面G1で選択された処方データの詳細が表示される。例えば、患者の情報(例えば氏名、性別、年齢、生年月日、及び薬歴等)や、処方内容(例えば医療機関、診療科、薬剤、用法、用量、日数、及び数量)が表示される。
また、指示画面G2は、コメントの入力を受け付けるためのコメント欄P21を含む。使用者は必要に応じてコメントをコメント欄P21に入力できる。さらに、指示画面G2は実行ボタンP22と戻るボタンP23とを含む。戻るボタンP23は一覧画面G1に戻るためのボタンである。実行ボタンP22は調剤処理の開始指示を行うためのボタンである。使用者が実行ボタンP22を押下すると、指示画面G2に表示されている処方データの調剤処理が調剤装置20によって開始される。
一方、自動開始機能がONに設定されていると、上位システム2で入力された処方データが調剤制御システム1に供給された場合や、調剤制御システム1で入力画面を介して処方データが入力された場合に、調剤制御システム1は、原則として、自動的に、当該処方データに基づいて調剤装置20に調剤処理を開始させる。すなわち、調剤制御システム1は、原則として、所定の権限を有する使用者(権限者)から調剤処理の開始指示を受け付けるのを待つことなく、処方データに基づいて調剤装置20に調剤処理を開始させる。
調剤制御システム1では、このような機能を備えることにより、使用者が所定の権限者によって処方情報が確認された後で調剤処理を開始させることを望む場合に、使用者は自動開始機能がOFFに設定することによって、自らの要望通りに調剤制御システムを使用できるようになる。一方、使用者が調剤処理を自動的に開始させることを望む場合に、使用者は自動開始機能がONに設定することによって、自らの要望通りに調剤制御システムを使用できるようになる。
また、調剤制御システム1では、自動開始機能がONに設定されている場合であっても、特定の場合には、例外的に調剤処理の自動開始を制限できるようになっている。このため、特定の場合(例えば、特に注意を要する薬品が処方データに含まれている場合等)には所定の権限者によって処方情報が確認された後で調剤処理を開始させ、それ以外の場合には調剤処理を自動的に開始させることを使用者が望む場合、使用者はこの機能を利用することによって、自らの要望通りに調剤制御システムを使用できるようになる。
調剤業務に関しては薬剤師法等の法律が存在しているが、上記に説明した機能が調剤制御システム1に備えられる結果として、使用者は適法性や自動化による調剤作業の効率化等を考慮しつつ調剤制御システム1の使用の仕方を決定し、その使用の仕方で調剤制御システム1を使用することができる。
また、調剤制御システム1では、人が服用する「薬品」という生命に直結するものを生成するため、人が介在して行うことによって安全性を十分に確保すべき場合と、調剤作業を自動化して効率化を図る場合との境界が非常に重要になるが、上記に説明した機能が調剤制御システム1に備えられる結果として、原則として、調剤処理を自動的に開始させるようにして効率化を図りつつ、安全性を十分に確保すべく人が介在して調剤処理を実行すべき特定の場合には、確実に人を介して調剤処理が実行されるように図ることもできる。
[3.機能ブロック]上記に説明した機能を実現する構成について説明する。図4は、調剤制御システム1で実現される機能のうち、上記機能に関連するものを主に示す機能ブロック図である。
[3−1.データ記憶部]図4に示すように、調剤制御システム1はデータ記憶部100を含む。例えば、データ記憶部100は主にデータベース17によって実現される。データ記憶部100は各種データを記憶する。図5〜11はデータ記憶部100に記憶されるデータの例を示す。
図5は使用者テーブルD1の一例を示す。使用者テーブルD1は、調剤制御システム1を使用可能な者(言い換えれば、調剤制御システム1にログインすることが可能な者)のリストを示す。図5に示す使用者テーブルD1は「使用者ID」、「氏名」、「パスワード」、及び「権限レベル」フィールドを含む。
「使用者ID」フィールドは、使用者を一意に識別する識別情報を示す。「氏名」フィールドは使用者の氏名を示す。「パスワード」フィールドは使用者のパスワードを示す。例えば、使用者自身又はシステム管理者によって設定されたパスワードが暗号化された状態で「パスワード」フィールドに登録される。調剤制御システム1を使用する場合、使用者はログイン画面で自らの使用者ID及びパスワードを入力することによって認証を受ける必要がある。なお、使用者が予め配布されたIDカードをカード読み取り部に読み取らせることによって、使用者の認証や特定が行われるようにしてもよい。
「権限レベル」フィールドは使用者の権限レベルを示す。使用者に設定された権限レベルによって、当該使用者が調剤制御システム1で行うことが可能な操作が制限される。例えば、「1」〜「6」の値が権限レベルとして設定される。「6」は最も高い権限レベルであり、「1」は最も低い権限レベルである。
権限レベル「6」の使用者は、調剤制御システム1であらゆる操作を行うことができる。例えば、データ記憶部100に記憶されるマスタデータ(使用者テーブルD1等)の編集は権限レベル「6」の使用者のみに許可される。すなわち、新たな使用者を使用者テーブルに登録したり、各使用者の権限レベルを設定・変更したりすることは権限レベル「6」の使用者のみに許可される。
また、権限レベル「5」の使用者は、マスタデータの編集以外の操作を行うことができる。例えば、調剤装置20内の薬剤容器への薬剤の充填は権限レベル「5」又は「6」の使用者のみに許可される。
また、権限レベル「4」の使用者は、マスタデータの編集及び薬剤の充填以外の操作を行うことができる。例えば、特別に注意を要する特定の操作(ここでは「特別操作」と呼ぶ。)は権限レベル「4」〜「6」の使用者のみに許可される。
また、権限レベル「3」の使用者は、マスタデータの編集、薬剤の充填、及び特別操作以外の操作を行うことができる。例えば、注意を要する特定の操作(ここでは「要注意操作」と呼ぶ。)は権限レベル「3」〜「6」の使用者のみに許可される。
また、権限レベル「2」の使用者は、マスタデータの編集、薬剤の充填、特別操作、及び要注意操作以外の操作を行うことができる。また、権限レベル「1」の使用者は、制限された簡易な操作のみを行うことができる。
例えば、調剤制御システム1を管理する役割を担う者(システム管理者)には権限レベル「6」が設定される。また、システム管理者以外の薬剤師には権限レベル「2」〜「5」のいずれかが設定される。具体的には、経験が比較的浅い薬剤師には権限レベル「2」が設定され、ある程度の経験を有する薬剤師には権限レベル「3」が設定される。また、権限レベル「2」又は「3」の薬剤師を管理する役割を担い、経験が豊富な薬剤師には権限レベル「4」が設定される。そして、権限レベル「4」の薬剤師も管理する役割を担い、経験が非常に豊富な薬剤師には権限レベル「5」が設定される。例えば、個々の調剤現場においてその調剤現場で業務を行う薬剤師を管理する役割を担う薬剤師(現地管理者)には権限レベル「4」が設定される。そして、複数の調剤現場にわたっての全体的な管理を行う役割、すなわち、それら複数の調剤現場の各々で業務する全薬剤師を管理する役割を担う薬剤師(管理者)には権限レベル「5」が設定される。なお、薬剤師以外の使用者であって、例えば薬剤師を補助すべく簡単な操作を行う役割を担う者(操作者)には権限レベル「1」が設定される。
図6は患者テーブルD2の一例を示す。患者テーブルD2は患者のリストを示す。図6に示す患者テーブルD2は「患者ID」、「氏名」、「性別」、「年齢」、「生年月日」、及び「薬歴」フィールドを含む。「患者ID」フィールドは、患者を一意に識別する識別情報を示す。「氏名」、「性別」、「年齢」、及び「生年月日」フィールドはそれぞれ患者の氏名、性別、年齢、及び生年月日を示す。「薬歴」フィールドは、これまでに患者に処方された薬の履歴を示す。例えば、患者が調剤薬局に初めて訪れた際に当該患者のデータが患者テーブルD2に登録される。
図7は処方データテーブルD3の一例を示す。処方データテーブルD3は、調剤制御システム1で入力された処方データと、上位システム2で入力されて調剤制御システム1に提供された処方データとのリストを示す。図7に示す処方データテーブルD3は「処方データID」、「登録日時」、「入力システムフラグ」、「鑑査結果フラグ」、「DO処方フラグ」、「患者」、「処方内容」、「自動開始フラグ」、「実行状況フラグ」フィールドを含む。
「処方データID」フィールドは、処方データを一意に識別する識別情報を示す。「登録日時」フィールドは、処方データが処方データテーブルD3に登録された日時を示す。
「入力システムフラグ」フィールドは、処方データが入力されたシステムを示す。具体的には、「入力システム」フィールドは、処方データが調剤制御システム1で入力されたものであるか、又は、上位システム2で入力されたものであるかを示す。例えば、処方データが調剤制御システム1で入力されたものである場合には、値「0」が「入力システムフラグ」フィールドに登録される。一方、処方データが上位システム2で入力されたものである場合には、値「1」が「入力システムフラグ」フィールドに登録される。
「鑑査結果フラグ」フィールドは、上位システム2での処方データの鑑査結果を示す。上位システム2では、処方データを調剤制御システム1に提供する前に処方データの鑑査が行われる。例えば、注意を要する処方データの条件が予め定められており、当該条件を満足する処方データに関しては警告が発せされる。警告対象になった処方データに関しては、薬剤師による再確認が行われた後、特に問題がなければ、そのまま調剤制御システム1に提供され、もし問題があれば、修正された後で調剤制御システム1に提供される。例えば、処方データが上位システム2で入力されたものであって、上位システム2での鑑査結果が「警告あり」である場合には、値「1」が「鑑査結果フラグ」フィールドに登録され、上位システム2での鑑査結果が「警告あり」でない場合には、値「0」が「鑑査結果フラグ」フィールドに登録される。
「DO処方フラグ」フィールドは、処方データがDO処方機能を用いて入力(生成)されたものであるか否かを示す。調剤制御システム1及び上位システム2はDO処方機能を備えている。DO処方機能とは、同一の患者に対する過去の処方データを複製することによって同一内容の処方データを容易に入力できるようにする機能である。例えば、処方データがDO処方機能を用いて入力されたものである場合には、値「1」が「DO処方フラグ」フィールドに登録され、それ以外の場合には、値「0」が「DO処方フラグ」フィールドに登録される。
「患者」フィールドは、処方データの対象である患者(患者ID)を示す。「処方内容」フィールドは、処方内容(例えば医療機関、診療科、薬剤、用法、用量、日数、及び数量)を示す。
「自動開始フラグ」フィールドは、処方データの調剤処理を自動的に開始することが可能であるか否かを示す。例えば、調剤処理を自動的に開始することが可能である場合には、値「1」が「自動開始フラグ」フィールドに登録され、調剤処理を自動的に開始することが可能でない場合には、値「0」が「自動開始フラグ」フィールドに登録される。
「実行状況フラグ」フィールドは、処方データの調剤処理の実行状況を示す。例えば、調剤処理を開始する前の状態にある処方データに関しては、値「0」が「実行状況フラグ」フィールドに登録される。また、調剤処理を実行中の状態にある処方データに関しては、値「1」が「実行状況フラグ」フィールドに登録され、調剤処理が終了した状態にある処方データに関しては、値「2」が「実行状況フラグ」フィールドに登録される。
図8は実行履歴テーブルD4の一例を示す。実行履歴テーブルD4は調剤処理の実行履歴を示す。図8に示す実行履歴テーブルD4は「実行履歴ID」、「対象処方データ」、「自動開始フラグ」、「開始指示者」、「権限レベル」、「コメント」、「開始日時」、及び「終了日時」フィールドを含む。
「実行履歴ID」フィールドは、個々の実行履歴を一意に識別する識別情報を示す。「対象処方データ」フィールドは、調剤処理の対象となった処方データを示す。例えば、調剤処理の対象となった処方データの処方データIDが「対象処方データ」フィールドに登録される。
「自動開始フラグ」フィールドは、調剤処理が自動開始されたものであるか否かを示す。例えば、調剤処理が自動開始機能によって自動開始されたものである場合には、値「1」が「自動開始フラグ」フィールドに登録される。一方、調剤処理が自動開始機能によって自動開始されたものでなく、所定の権限者によって開始指示が行われたことによって実行されたものである場合には、値「0」が「自動開始フラグ」フィールドに登録される。
また、「開始指示者」フィールドは、調剤処理の開始指示を行った者(開始指示者)を示し、「権限レベル」フィールドは、調剤処理の開始指示を行った時点における開始指示者の権限レベルを示す。例えば、開始指示者の使用者IDが「開始指示者」フィールドに登録される。さらに、その時点での開始指示者の権限レベルが「権限レベル」フィールドに登録される。また、「コメント」フィールドは開始指示者によって入力されたコメントを示す。すなわち、指示画面G2のコメント欄P21に入力されたコメントが「コメント」フィールドに登録される。なお、調剤処理が自動開始機能によって自動開始されたものである場合、「開始指示者」、「権限レベル」、及び「コメント」フィールドは空欄となる。また、「開始日時」及び「終了日時」フィールドは、調剤処理が開始及び終了された日時を示す。
図4に示すように、データ記憶部100は設定データ記憶部101を含む。設定データ記憶部101は設定データを記憶する。設定データは、調剤処理の自動開始を制限するか否かを判断するために設定されたデータである。図9及び図10は設定データの一例を示す。
図9は自動開始機能フラグD5の一例を示す。先述の通り、調剤制御システム1は、調剤装置20に調剤処理を自動的に開始させることが可能な自動開始機能を備えている。自動開始機能フラグD5はこの自動開始機能がON/OFFのいずれに設定されているのかを示す。例えば、自動開始機能フラグは値「0」又は「1」をとる。値「1」は、自動開始機能がONに設定されていることを示す。一方、値「0」は、自動開始機能がOFFに設定されていることを示す。このため、自動開始機能フラグに「0」が設定されている場合には、調剤制御システム1は、調剤装置20に調剤処理を自動的に開始させずに、調剤処理の開始指示を所定の権限者から受け付けるのを待って、調剤装置20に調剤処理を開始させる。
例えば、自動開始機能フラグD5の初期値は「0」に設定され、権限レベル「6」の使用者は所定の設定画面を介して自動開始機能フラグD5を「1」に変更できる。なお、自動開始機能フラグD5の初期値は「1」に設定されるようにしてもよい。
図10は例外条件テーブルD6の一例を示す。先述の通り、自動開始機能がONに設定されている場合、調剤制御システム1は、原則として、調剤装置20に調剤処理を自動的に開始させる。この点、例外条件テーブルには、自動開始機能がONに設定されている場合であっても、例外的に調剤処理の自動開始を制限すべき場合の条件(例外条件)が登録される。なお、例えば権限レベル「6」の使用者は所定の設定画面を介して例外条件を例外条件テーブルに設定できる。
図10に示す例外条件テーブルD6は「例外条件ID」及び「例外条件」フィールドを含む。「例外条件ID」フィールドは、例外条件テーブルD6に登録される例外条件を一意に識別する識別情報を示す。「例外条件」フィールドは例外条件を示す。「例外条件」フィールドには、例外条件がコンピュータ(制御部11)により認識可能な形式で登録される。なお以下では、便宜上、例外条件IDが「ECn」である例外条件のことを「例外条件ECn」と記載する。
例えば、例外条件テーブルD6には、調剤処理の自動実行を制限する必要のある処方データに関する条件が例外条件として登録される。図10に示す例外条件EC1〜EC6は、それぞれ、調剤処理の自動実行を制限する必要のある処方データに関する条件になっている。また、例外条件EC1〜EC5は、調剤処理の対象である対象処方データに関する条件になっており、例外条件EC6は、直前に実行された調剤処理の対象であった処方データに関する条件になっている。以下、例外条件EC1〜EC6について説明する。
例外条件EC1,EC2は、調剤処理の対象である対象処方データに特定の薬剤が患者に提供されるべき薬剤として含まれているか否かに関する条件である。具体的には、例外条件EC1は「対象処方データに薬剤Aが含まれている」との条件である。一方、例外条件EC2は「対象処方データに薬剤Bが含まれている」との条件である。
ここで、「薬剤A」とは、例えば取り扱いに特に注意を要する薬剤である。また、「薬剤B」とは、例えば薬剤Aに比べると注意度は低いものの、取り扱いには注意を要する薬剤である。このような薬剤A又は薬剤Bが対象処方データに含まれている場合には注意が必要となるが、例外条件EC1,EC2が設定されることにより、薬剤A又は薬剤Bが含まれている処方データに関しては、自動開始機能がONに設定されていたとしても、調剤処理が自動的に開始されず、所定の権限者による開始指示がなければ調剤処理が開始されないようになる。
例外条件EC3は、対象処方データに含まれる患者データに関する条件である。具体的には、例外条件EC3は「対象処方データの患者が10歳未満である」との条件である。
一般的に患者の年齢が低い場合には注意が必要となるが、例外条件EC3が設定されることにより、患者が10歳未満である処方データに関しては、自動開始機能がONに設定されていたとしても、調剤処理が自動的に開始されず、所定の権限者による開始指示がなければ調剤処理が開始されないようになる。なお、患者の性別又は薬歴等に関する条件が例外条件として設定されるようにしてもよい。
例外条件EC4は、対象処方データが、調剤制御システム1で入力画面を介して手入力された処方データと、上位システム2によって提供された処方データとのいずれであるのかの条件である。具体的には、例外条件EC4は「対象処方データが手入力されたものである」との条件である。
上位システム2で鑑査された後に提供された処方データに比べて、調剤制御システム1で入力画面を介して手入力された処方データには誤りが含まれている場合があり、注意が必要となるが、例外条件EC4が設定されることにより、調剤制御システム1で入力画面を介して手入力された処方データに関しては、自動開始機能がONに設定されていたとしても、調剤処理が自動的に開始されず、所定の権限者による開始指示がなければ調剤処理が開始されないようになる。
例外条件EC5は、上位システム2での対象処方データに対する監査結果が所定の結果であったか否かの条件である。具体的には、例外条件EC5は「上位システム2での対象処方データの鑑査結果が「警告あり」である」との条件である。
上位システム2での対象処方データの鑑査結果が「警告あり」である場合には注意が必要となるが、例外条件EC5が設定されることにより、上位システム2での鑑査結果が「警告あり」である処方データに関しては、自動開始機能がONに設定されていたとしても、調剤処理が自動的に開始されず、所定の権限者による開始指示がなければ調剤処理が開始されないようになる。
例外条件EC6は、直前に実行された調剤処理の対象であった処方データに関する条件である。具体的には、例外条件EC6は「直前処方データに薬剤Cが含まれている」との条件である。
ここで、「薬剤C」とは、例えば、調剤処理の際に薬剤と触れる調剤装置20の部分(薬剤投入部等)に薬剤が残っていることがないように特に注意を要する薬剤である。直前に実行された調剤処理の対象処方データに薬剤Cが含まれていた場合には薬剤Cが薬剤投入部等に残っていないことを確認する必要があるが、例外条件EC6が設定されることにより、直前に実行された調剤処理の対象処方データに薬剤Cが含まれていた場合には、自動開始機能がONに設定されていたとしても、調剤処理が自動的に開始されず、所定の権限者による開始指示がなければ調剤処理が開始されないようになる。
また図4に示すように、データ記憶部100は権限者特定データ記憶部102を含む。権限者特定データ記憶部102は、処方データに関する条件と関連付けて、権限者特定データを記憶する。権限者特定データは、処方データの調剤処理の開始を指示することが可能な権限者を特定するためのデータである。
図11は、権限者特定データの一例である権限者特定テーブルD7の一例を示す。権限者特定テーブルD7は、調剤処理の開始指示を行うことが可能な権限者を特定するためのテーブルである。なお、例えば権限レベル「6」の使用者は所定の設定画面を介して権限者特定テーブルD7を設定できる。
自動開始機能がOFFに設定されている場合には、権限者特定テーブルD7に基づいて、調剤処理の開始指示を行うことが可能な権限者が特定され、当該権限者からの開始指示を待って調剤処理が実行される。同様に、自動開始機能がONに設定されている場合であっても、例外条件テーブルD6の例外条件を満足することによって例外的に自動開始機能が制限される場合には、権限者特定テーブルD7に基づいて、調剤処理の開始指示を行うことが可能な権限者が特定され、当該権限者からの開始指示を待って調剤処理が実行される。
図11に示す権限者特定テーブルD7は「条件ID」、「条件」、及び「必要権限レベル」フィールドを含む。「条件ID」フィールドは、権限者特定テーブルD7に登録される条件を一意に識別する識別情報を示す。「条件」フィールドは条件を示す。「条件」フィールドには、条件がコンピュータ(制御部11)により認識可能な形式で登録される。「必要権限レベル」フィールドは、調剤処理の開始指示を行うために必要な権限レベル(必要権限レベル)を示す。なお以下では、便宜上、条件IDが「Cn」である条件のことを「条件Cn」と記載する。
図11に示す権限者特定テーブルD7では、条件C1〜C6が図10に示す例外条件テーブルD6の例外条件EC1〜EC6と同じになっているため、ここでは説明を省略する。なお、権限者特定テーブルD7に登録される条件は、例外条件テーブルD6に登録される例外条件と異なっていてもよい。
図11に示す権限者特定テーブルD7では条件C1〜C6の他に条件C7,C8が設定されている。このうち、条件C7は「対象処方データに薬剤Dが含まれている」との条件である。ここで、「薬剤D」とは、例えば、薬剤A,Bに比べると注意度は低いものの、取り扱いにはある程度の注意を要するような薬剤である。また、条件C8は条件C1〜C7以外の場合である。
図11に示す権限者特定テーブルD7では、条件C7には必要権限レベルとして「3〜6」が関連付けられている。これは、条件C7が満足される場合には、権限レベル「3」〜「6」の使用者が権限者(調剤処理の開始指示を行うことができる者)として設定されることを示す。また、条件C2〜C5には必要権限レベルとして「4〜6」が関連付けられている。これは、権限レベル「4」〜「6」の使用者が権限者として設定されることを示す。例えば、薬剤Bは薬剤Dに比べて取り扱いに注意を要するため、条件C2には条件C7よりも高い必要権限レベルが関連付けられている。
また、条件C1,C6には必要権限レベルとして「5〜6」が関連付けられている。これは、条件C1又はC6が満足される場合には、権限レベル「5」〜「6」の使用者が権限者として設定されることを示す。薬剤A,Cは薬剤Bよりもさらに取り扱いに注意を要するため、条件C1,C6に対しては条件C2よりも高い必要権限レベルが関連付けられている。
また、条件C8には必要権限レベルとして「2〜6」が関連付けられている。これは、条件C1〜C7のいずれも満足されない場合には、権限レベル「2」〜「6」の使用者が権限者として設定されることを示す。
なお、先述の通り、権限者特定テーブルD7の条件C1〜C6は例外条件テーブルD6の例外条件EC1〜EC6と同じである。この点、権限者特定テーブルD7では、条件C1に必要権限レベルとして「5〜6」が関連付けられているため、実質的に、例外条件EC1に必要権限レベルとして「5〜6」が関連付けられていることになる。例外条件EC1を満足する場合には、自動開始機能がONに設定されている場合であっても、例外的に自動開始機能が制限され、所定の権限者による開始指示を待って、調剤処理が開始されることになるが、この場合には、権限レベル「5」〜「6」の使用者が権限者として設定されることになる。
本実施形態では、例外条件テーブルD6と権限者特定テーブルD7とを別個に設けるようにしたが、これらを一体的に設けるようにしてもよい。例えば、例外条件テーブルD6を省略し、権限者特定テーブルD7のみを設けるようにしてもよい。この場合、例えば、必要権限レベルが「4〜6」又は「5〜6」に関連付けられている条件を「例外条件」とみなすようにしてもよい。
[3−2.データ記憶部以外の機能ブロック]図4に示すように、調剤制御システム1は入力画面表示制御部103、処方データ取得部104、判断部107、対象処方データ判定部108、直前処方データ判定部109、開始制御部110、権限者設定部113、開始指示受付部114、及び実行履歴登録部115を含む。これらの機能ブロックは主に制御部11によって実現される。すなわち、制御部11がプログラムに従って処理を実行することによって、制御部11がこれらの機能ブロックとして機能する。
入力画面表示制御部103は入力画面を表示部15に表示させる。入力画面は処方データの入力を受け付けるための画面である。調剤制御システム1の使用者は、紙で発行された処方箋を患者から受け取り、当該処方箋を参照しながら患者情報や処方情報(医療機関、診療科、医者、薬剤、用法、用量、日数、数量等)を入力画面で入力できる。
処方データ取得部104は、調剤処理の対象となる対象処方データを取得する。図4に示すように、処方データ取得部104は第1処方データ取得部105及び第2処方データ取得部106を含む。
第1処方データ取得部105は、上記入力画面を介して入力された処方データを対象処方データとして取得する。
第2処方データ取得部106は、上位システム2(他のシステムの一例)で入力された処方データを対象処方データとして取得する。例えば、第2処方データ取得部106は、上位システム2から送信された処方データを受信して対象処方データとして取得する。または、第2処方データ取得部106は、上位システム2で入力された処方データが保存された記憶装置にアクセスして、当該処方データを対象処方データとして取得する。
判断部107は、設定データ記憶部101に記憶された設定データに基づいて、調剤処理の自動開始を制限するか否か(言い換えれば、調剤処理の自動開始を許容するか否か)を判断する。
例えば、判断部107は、図9に示した自動開始機能フラグD5(設定データの一例)に基づいて、調剤処理の自動開始を制限するか否かを判断する。具体的には、自動開始機能フラグが「0」である場合に、判断部107は調剤処理の自動開始を制限すると判断する。一方、自動開始機能フラグが「1」である場合に、原則として、判断部107は調剤処理の自動開始を制限しないと判断する。
また例えば、判断部107は、後述の対象処方データ判定部108の判定結果に基づいて、調剤処理の自動開始を制限するか否かを判断する。
対象処方データ判定部108は、対象処方データが、設定データ記憶部101に記憶された設定データに設定された条件を満足するか否かを判定する。先述の通り、設定データ記憶部101に記憶された設定データには、調剤処理の自動開始を制限する必要のある処方データに関する条件、又は、調剤処理の自動開始を制限する必要のない処方データに関する条件が設定されており、対象処方データ判定部108は対象処方データが当該条件を満足するか否かを判定する。
例えば、対象処方データ判定部108は、図10に示した例外条件テーブルD6(設定データの一例)に設定された例外条件EC1〜EC5のいずれかを対象処方データが満足するか否かを判定する。自動開始機能フラグが「1」であったとしても、対象処方データが例外条件EC1〜EC5のいずれかを満足すると対象処方データ判定部108によって判定された場合には、判断部107は調剤処理の自動開始を制限すると判断する。
また例えば、判断部107は、後述の直前処方データ判定部109の判定結果に基づいて、調剤処理の自動開始を制限するか否かを判断する。
直前処方データ判定部109は、直前に実行された調剤処理の対象であった処方データ(直前処方データ)が、設定データ記憶部101に記憶された設定データに設定された条件を満足するかを判定する。先述の通り、設定データ記憶部101に記憶された設定データには、調剤処理の自動開始を制限する必要のある処方データに関する条件、又は、調剤処理の自動開始を制限する必要のない処方データに関する条件が設定されており、直前処方データ判定部109は直前処方データが当該条件を満足するか否かを判定する。
例えば、直前処方データ判定部109は、図10に示した例外条件テーブルD6(設定データの一例)に設定された例外条件EC6を直前処方データが満足するか否かを判定する。自動開始機能フラグが「1」であったとしても、直前処方データが例外条件EC6を満足すると直前処方データ判定部109によって判定された場合には、判断部107は調剤処理の自動開始を制限すると判断する。
開始制御部110は、対象処方データを対象とする調剤処理を調剤装置20(調剤実行手段の一例)に開始させる。図4に示すように、開始制御部110は第1開始制御部111と第2開始制御部112とを含む。
調剤処理の自動開始を制限しないと判断部107によって判断された場合に、第1開始制御部111は、自動的に、対象処方データの調剤処理を調剤装置20に開始させる。すなわち、対象処方データが取得された場合に、第1開始制御部111は、調剤処理の開始指示を所定の権限者から受け付けるのを待つことなく、当該対象処方データの調剤処理を調剤装置20に開始させる。
一方、調剤処理の自動開始を制限すると判断部107によって判断された場合に、第2開始制御部112は、調剤処理の開始指示を所定の権限者から受け付けた場合に、対象処方データの調剤処理を調剤装置20に開始させる。すなわち、対象処方データが取得された場合に、第2開始制御部112は、直ちに調剤処理を調剤装置20に開始させることはせずに、調剤処理の開始指示を所定の権限者から受け付けたか否かを監視し、調剤処理の開始指示を所定の権限者から受け付けるのを待って、調剤処理を調剤装置20に開始させる。この場合、「権限者」は後述の権限者設定部113によって対象処方データ又は直前処方データに合わせて設定される。
権限者設定部113は、対象処方データに基づいて権限者(すなわち調剤処理の開始指示を行うことができる者)を設定する。例えば、権限者設定部113は、対象処方データと、権限者特定データ記憶部102に記憶された権限者特定データとに基づいて、権限者を設定する。先述の通り、権限者特定データ記憶部102には、処方データに関する条件と関連付けて権限者特定データが記憶されている。権限者設定部113は、対象処方データが満足する条件と関連付けられた権限者特定データに基づいて、権限者を設定する。
例えば、図11に示した権限者特定テーブルD7では、条件C1に対して必要権限レベル「5〜6」が関連付けられている。このため、対象処方データが当該条件C1を満足する場合に、権限者設定部113は、権限レベル「5」〜「6」の使用者を権限者として設定する。
なお、権限者設定部113は、直前に実行された調剤処理の対象であった処方データ(直前処方データ)に基づいて権限者を設定するようにしてもよい。例えば、権限者設定部113は、直前処方データと、権限者特定データ記憶部102に記憶された権限者特定データとに基づいて、権限者を設定するようにしてもよい。先述の通り、権限者特定データ記憶部102には、処方データに関する条件と関連付けて権限者特定データが記憶されている。権限者設定部113は、直前処方データが満足する条件と関連付けられた権限者特定データに基づいて、権限者を設定するようにしてもよい。
例えば、図11に示した権限者特定テーブルD7では、条件C6に対して必要権限レベル「5〜6」が関連付けられている。このため、直前処方データが当該条件C6を満足する場合に、権限者設定部113は、権限レベル「5」〜「6」の使用者を権限者として設定する。
なお、ここでは、権限者が権限者設定部113によって対象処方データ又は直前処方データに応じて設定されることとして説明したが、権限者は予め設定された特定の使用者であってもよい。例えば、対象処方データ又は直前処方データに関係なく、権限レベル「5」〜「6」の使用者を権限者として予め定めておくようにしてもよい。
開始指示受付部114は調剤処理の開始指示を受け付ける。例えば、開始指示受付部114は、例えば図3に示した指示画面G2を表示部15に表示させる。先述の通り、指示画面G2は、調剤処理の開始指示を受け付けるための画面である。指示画面G2の実行ボタンP22が押下された場合に、開始指示受付部114は調剤処理の開始指示を受け付けたと判定する。
先述の通り、第2開始制御部112は、権限者設定部113によって設定された権限者から調剤処理の開始指示を受け付けた場合に調剤処理を調剤装置20に開始させる。すなわち、権限者設定部113によって設定された権限者によって指示画面G2の実行ボタンP22が押下された場合に、第2開始制御部112は調剤処理を調剤装置20に開始させる。
一方、第2開始制御部112は、権限者設定部113によって設定された権限者以外の使用者(非権限者)から調剤処理の開始指示を受け付けた場合には調剤処理を調剤装置20に開始させない。すなわち、仮に、非権限者によって指示画面G2の実行ボタンP22が押下されたとしても、第2開始制御部112は調剤処理を調剤装置20に開始させない。この場合には、開始指示を行う権限がない旨のエラーメッセージが表示される。
なお、開始指示受付部114は、非権限者から調剤処理の開始指示を受け付けないようにしてもよい。例えば、実行ボタンP22は、権限者設定部113によって設定された権限者がログインしている場合にのみ押下できるようにしてもよい。具体的には、ログインしている使用者が非権限者である場合には、実行ボタンP22を表示しないようにしたり、実行ボタンP22を押下できない状態(例えばグレーアウトの状態)で表示するようにしたりしてもよい。または、ログインしている使用者が非権限者である場合には、一覧画面G1から指示画面G2への画面遷移、又は、他の画面(メニュー画面等)から一覧画面G1への画面遷移を禁止するようにしてもよい。
実行履歴登録部115は、調剤処理の実行履歴をデータ記憶部100(所定の記憶手段の一例)に登録する。すなわち、実行履歴登録部115は、調剤処理の対象である対象処方データと、調剤処理の開始指示を行った権限者に関する権限者データと、当該権限者によって入力されたコメントデータとを関連付けてデータ記憶部100に登録する。より具体的には、実行履歴登録部115は、調剤処理の実行履歴を図8に示した実行履歴テーブルD4に登録する。
[4.処理]調剤制御システム1で実行される処理の一例について説明する。図12及び図13は、調剤制御システム1で実行される処理の一例を示すフロー図である。制御部11が図12及び図13に示す処理をプログラムに従って実行することによって、図4に示した機能ブロック(データ記憶部100を除く)が実現される。
[4−1]図12は、処方データが調剤制御システム1(入力画面)で入力された場合や、上位システム2で入力された処方データが調剤制御システム1に供給された場合に調剤制御システム1で実行される処理の一例を示すフロー図である。
図12に示すように、まず、制御部11は対象処方データを処方データテーブルD3に登録する(S100)。例えば、制御部11は新たなレコードを処方データテーブルD3に追加し、当該新たなレコードに対象処方データを登録する。
ステップS100の実行後、制御部11は自動開始機能フラグD5を参照し、自動開始機能がONに設定されているか否かを判定する(S101)。すなわち、制御部11は自動開始機能フラグが「1」であるか否かを判定する。
自動開始機能がONに設定されている場合、制御部11は例外条件テーブルD6を参照し、いずれかの例外条件が満足されるか否かを判定する(S102)。
いずれの例外条件も満足されない場合、制御部11は、対象処方データの調剤処理を調剤装置20に開始させる(S103)。例えば、制御部11は、対象処方データの調剤処理の開始を要求する要求データを調剤装置20に送信することによって、当該調剤処理を調剤装置20に開始させる。なお、この場合、制御部11は処方データテーブルD3にアクセスし、対象処方データの自動開始フラグ及び実行状況フラグをそれぞれ「1」に設定する。
その後、制御部11は調剤処理が完了したか否かを監視する(S104)。例えば、調剤装置20は調剤処理を完了した場合にその旨を制御部11に通知するようになっており、制御部11は当該通知を調剤装置20から受信したか否かを監視する。
調剤処理が完了した場合、制御部11は調剤処理の実行結果を実行履歴テーブルD4に登録する(S105)。例えば、制御部11は新たなレコードを実行履歴テーブルD4に追加し、当該新たなレコードに今回の調剤処理の実行結果を登録する。この場合、制御部11は処方データテーブルD3にもアクセスし、対象処方データの実行状況フラグを「2」に更新する。
なお、ステップS101において、自動開始機能がONに設定されていないと判定された場合、すなわち、自動開始機能がOFFに設定されている場合、制御部11はステップS102〜S105を実行することなく(すなわち、調剤処理を調剤装置20に開始させることなく)、本処理を終了する。この場合、制御部11は処方データテーブルD3にアクセスし、対象処方データの自動開始フラグ及び実行状況フラグをそれぞれ「0」に設定する。
また、ステップS102において、いずれかの例外条件が満足されたと判定された場合も、制御部11はステップS103〜S105を実行することなく(すなわち、調剤処理を調剤装置20に開始させることなく)、本処理を終了する。この場合も、制御部11は処方データテーブルD3にアクセスし、対象処方データの自動開始フラグ及び実行状況フラグをそれぞれ「0」に設定する。
[4−2]図13は、一覧画面G1を表示するための操作が行われた場合に調剤制御システム1で実行される処理の一例を示すフロー図である。
図13に示すように、まず、制御部11は一覧画面G1を表示部15に表示する(S110)。この場合、制御部11は処方データテーブルD3にアクセスし、自動開始フラグ及び実行状況フラグが「0」である処方データの一覧を一覧画面G1に表示する。ここで、自動開始フラグ及び実行状況フラグが「0」である処方データとは、調剤処理が自動的に開始されなかった処方データである。
一覧画面G1が表示されている間、制御部11は、一覧画面G1に表示されている処方データのいずれかが使用者によって選択されたか否かを監視する(S111)。
いずれかの処方データが使用者によって選択された場合、制御部11は、選択された処方データの調剤処理の開始指示を行うことが可能な権限者を特定する(S112)。具体的には、制御部11は権限者特定テーブルD7を参照し、選択された処方データの調剤処理の開始指示を行うために必要な権限レベル(必要権限レベル)を取得する。例えば図11に示す権限者特定テーブルD7の場合であれば、制御部11は条件C1〜C7のいずれかが満足されているか否かを判定する。条件C1〜C7のいずれかが満足されている場合、制御部11は、当該条件に関連付けられた必要権限レベルを取得する。一方、条件C1〜C7のいずれも満足されていない場合、制御部11は、条件C8に関連付けられた必要権限レベルを取得する。そして、取得された必要権限レベルを有する使用者が上記権限者として特定される。
ステップS112の実行後、制御部11は、現在の使用者(ログイン中の使用者)がステップS112で特定された権限者であるか否かを判定する(S113)。具体的には、制御部11は、現在の使用者の権限レベルがステップS112で取得された必要権限レベルであるか否かを判定する。この場合、現在の使用者の権限レベルが必要権限レベルであれば、現在の使用者は権限者であると判定される。
現在の使用者が権限者でない場合、制御部11は指示画面G2を表示部15に表示する(S119)。ただし、この場合、制御部11は実行ボタンP22を指示画面G2に表示しない。なお、制御部11は実行ボタンP22を押下不可の状態(例えばグレーアウトの状態)で指示画面G2に表示するようにしてもよい。
一方、現在の使用者が権限者である場合、制御部11は指示画面G2を表示部15に表示する(S114)。この場合、制御部11は実行ボタンP22を指示画面G2に表示する。そして、制御部11は、実行ボタンP22が使用者によって押下されたか否かを監視する(S115)。実行ボタンP22が押下された場合、制御部11は、ステップS111で選択された処方データの調剤処理を調剤装置20に開始させる(S116)。その後、制御部11は調剤処理が完了したか否かを監視し(S117)、調剤処理が完了した場合、制御部11は調剤処理の実行結果を実行履歴テーブルD4に登録する(S118)。
ステップS116〜S118は図12のステップS103〜S105と同様である。ただし、ステップS118では、実行ボタンP22を押下した使用者の使用者ID及び権限レベルが実行履歴テーブルD4の「開始指示者」や「権限レベル」フィールドに登録される。また、指示画面G2のコメント欄P21に入力されたコメントが実行履歴テーブルD4の「コメント」フィールドに登録される。さらに、値「0」が実行履歴テーブルD4の「自動開始フラグ」フィールドに登録される。
図13では、ステップS113の処理をステップS114の前に実行するようになっているが、ステップS113の処理を、ステップS114の前に実行するのではなく、ステップS115で実行ボタンP22が押下されたと判定された場合に実行するようにし、ステップS119の処理を省略するようにしてもよい。この場合のステップS113の処理で現在の使用者が権限者であると判定されたら、ステップS116の処理を実行し、現在の使用者が権限者でないと判定されたら、その旨のエラーメッセージを表示して処理を終了するようにしてもよい。
なお、指示画面G2が表示されている間には、使用者によって入力されたコメントをコメント欄P21に表示する処理、戻るボタンP23が押下されたか否かを監視する処理や、戻るボタンP23が押下された場合に一覧画面G1を表示部15に表示させるため処理も実行されるが、説明の簡便のため、図13では省略している。
[5.まとめ]以上説明した調剤制御システム1によれば、自動開始機能フラグD5と判断部107とを備えることにより、使用者は、調剤処理を自動的に開始させるのか、所定の権限者が処方情報を確認した後で調剤処理を開始させるのかを選択することが可能になる。すなわち、調剤処理の開始の仕方を使用者の要望に合わせることが可能になる。その結果、使用者の利便性を向上することが可能になる。
また、調剤制御システム1によれば、例外条件テーブルD6と判断部107(及び対象処方データ判定部108又は直前処方データ判定部109)とを備えることにより、原則として、調剤処理の自動開始機能をONに設定し、特定の場合に限って、例外的に、調剤処理を自動的に開始させずに、所定の権限者が処方情報を確認した後で調剤処理を開始させることが可能になる。
例えば、注意を要する特定の薬剤が対象処方データに含まれている場合(例外条件EC1,EC2)や、対象処方データの患者が注意を要する特定の患者である場合(例外条件EC3)には、例外的に、所定の権限者による開始指示がなければ調剤処理を開始させないようにすることが可能になる。すなわち、所定の権限者が患者情報や処方内容を十分に確認した上で調剤処理が実行されるように図ることが可能になる。
また、対象処方データが調剤制御システム1の入力画面を介して手入力されたものである場合(例外条件EC4)や、上位システム2での鑑査結果が「警告あり」であった場合(例外条件EC5)にも、例外的に、所定の権限者による開始指示がなければ調剤処理を開始させないようにすることが可能になる。すなわち、所定の権限者が処方情報に問題がないことを改めて確認した上で調剤処理が実行されるように図ることが可能になる。
さらに、調剤処理の際に薬剤と触れる調剤装置20の部分(薬剤投入部等)に薬剤が残っていることがないように特に注意を要する薬剤が直前処方データに含まれている場合(例外条件EC6)にも、例外的に、所定の権限者による開始指示がなければ調剤処理を開始させないようにすることが可能になる。すなわち、所定の権限者が薬剤投入部等に薬剤が残っていないことを十分に確認した上で調剤処理が実行されるように図ることが可能になる。
調剤業務に関しては薬剤師法等の法律が存在しているが、以上に説明した機能が調剤制御システム1に備えられる結果として、使用者は適法性や自動化による調剤作業の効率化等を考慮しつつ調剤制御システム1の使用の仕方を決定し、その使用の仕方で調剤制御システム1を使用することが可能になる。
また、調剤制御システム1では、人が服用する「薬品」という生命に直結するものを生成するため、人が介在して行うことによって安全性を十分に確保すべき場合と、調剤作業を自動化して効率化を図る場合との境界が非常に重要になる。この点、以上に説明した機能が調剤制御システム1に備えられる結果として、原則として、調剤処理を自動的に開始させるようにして効率化を図りつつ、安全性を十分に確保すべく人が介在して調剤処理を実行すべき特定の場合には、確実に人を介して調剤処理が実行されるように図ることが可能になる。
さらに、調剤制御システム1によれば、権限者特定テーブルD7と権限者設定部113とを備えることにより、対象処方データ又は直前処方データに合わせて、適切な権限者を設定することが可能になる。例えば、特別に注意を要する場合(条件C1,C6)には、特に経験豊富な薬剤師のみが調剤処理の開始指示を行うことができるようにし、通常の場合(条件C8)には、特に経験豊富な薬剤師でなくても調剤処理の開始指示を行うことができるようにすることが可能になる。
先述の通り、調剤制御システム1では、人が服用する「薬品」という生命に直結するものを生成するため、人が介在して行うことによって安全性を十分に確保すべき場合と、調剤作業を自動化して効率化を図る場合との境界が非常に重要になる。この点、以上に説明した機能が調剤制御システム1に備えられる結果として、安全性を十分に確保すべく人が介在して調剤処理を実行すべき場合には、その際の状況(対象処方データ又は直前処方データ)に合った適切な人を介して調剤処理が実行されるように図ることが可能になる。
[6.変形例]本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではない。
[6−1.変形例1]自動開始機能がONに設定されているにもかかわらず、例外条件EC1〜EC6のいずれかによって調剤処理の自動開始が制限(抑止)された処方データに関しては、一覧画面G1において、その旨や当該例外条件に関する情報を表示するようにしてもよい。このようにすることによって、調剤処理の自動開始が制限(抑止)されたことやその理由を使用者が把握し易くなるようにしてもよい。
[6−2.変形例2]例えば、図1には1台の調剤装置20のみが示されているが、複数台の調剤装置20が調剤制御システム1(制御装置10)によって制御されるようにしてもよい。図14は変形例を示しており、図14では、調剤制御システム1が第1調剤装置20Aと第2調剤装置20Bとを含んでいる。この場合、実行履歴テーブルD4には、調剤処理を実行した調剤装置20を示す「調剤装置」フィールドを追加することによって、調剤処理がどの調剤装置20で実行されたかを後で特定できるようにしてもよい。
[6−3.変形例2A]図14に示す調剤制御システム1において、第2調剤装置20Bは、人の操作を要することなく調剤処理を全自動で行うものでなくてもよい。すなわち、第2調剤装置20Bは、主に人が装置による補助を受けながら調剤処理を行うようなものであってもよい。また、この場合の例外条件テーブルD6には、図15に示すような例外条件EC7を設定するようにしてもよい。
図15に示す例外条件EC7は「対象処方データの予測調剤時間が20分以上である」との条件である。この場合、対象処方データ判定部108は、対象処方データの処方内容に基づいて、第1調剤装置20A(すなわち、調剤処理を全自動で行う調剤装置)によって対象処方データの調剤処理を実行した場合に要する時間を予測し、当該時間(予測調剤時間)が20分以上であるか否かを判定する。そして、例外条件EC7が満足されると判定された場合、判断部107は、対象処方データの調剤処理の自動開始を制限すると判断する。
第1調剤装置20Aに調剤処理を実行させた場合に多くの時間がかかってしまうような処方データに関しては、使用者が第2調剤装置20Bで調剤処理を行った方が短い時間で調剤を行うことができて効率的な場合がある。この点、上記のようにすれば、第1調剤装置20Aに調剤処理を実行させた場合に多くの時間がかかってしまうような場合には、自動開始機能がONに設定されていたとしても、例外的に、第1調剤装置20Aに調剤処理を実行させないようになる。その結果として、使用者が第2調剤装置20Bで調剤処理を行うことができるようになり、調剤業務の効率化を図ることができるようになる。
[6−4.変形例3]図10及び図15に示す例外条件テーブルD6は、自動開始機能がONに設定されている場合であっても、例外的に調剤処理の自動開始を制限する場合の条件を示すデータであったが、自動開始機能がOFFに設定されている場合であっても、例外的に調剤処理の自動開始を制限しない場合の条件を示す例外条件テーブルが設定データ記憶部101に記憶されるようにしてもよい。
図16はこの場合の例外条件テーブルD8の一例を示す。なお、例外条件テーブルD8は例外条件テーブルD6とともに設けるようにしてもよいし、例外条件テーブルD6の代わりに設けるようにしてもよい。また、図17はこの場合の機能ブロック図を示す。図17に示す機能ブロック図は、日時判定部116を含む点で図4に示す機能ブロック図と異なる。日時判定部116は、現在が、設定データ記憶部101に記憶される設定データに設定された条件を満足するか否かを判定する。詳細については後述する。
例外条件テーブルD8には、調剤処理の自動開始を制限する必要のない処方データに関する条件が設定される。また、例外条件テーブルD8には、調剤処理の自動開始を制限する必要のある日又は時刻に関する条件、又は、調剤処理の自動開始を制限する必要のない日又は時刻に関する条件が設定される。図16に示す例外条件テーブルD8では例外条件EC11,EC12,及びEC13が設定されている。例外条件EC11,EC12は、調剤処理の自動開始を制限する必要のない処方データに関する条件に相当する。例外条件EC13は、調剤処理の自動開始を制限しない方がよい日(曜日)に関する条件に相当する。
例外条件EC11は「対象処方データが同一の患者に過去に処方された処方データと同一である」との条件である。ここで、対象処方データが同一の患者に過去に処方された処方データと同一である場合とは、対象処方データが同一の患者に過去に処方された処方データと処方内容が同一である場合である。なお、例えば、医療機関、診療科、医師、薬剤、用法、用量、日数、及び数量のすべてが同一である場合に処方内容が同一であるとみなすようにしてもよいし、これらの項目のうちの特定の一部項目が同一である場合に処方内容が同一であるとみなすようにしてもよい。
このような例外条件EC11が設定されている場合、例えば、対象処方データ判定部108は対象処方データのDO処方フラグを参照することによって、対象処方データがDO処方機能によって入力(生成)されたものであるか否かを判定する。そして、対象処方データがDO処方機能によって入力されたものである場合に、対象処方データ判定部108は例外条件EC11が満足されたと判定する。
または、対象処方データ判定部108は処方データテーブルD3を参照することによって、同一の患者に過去に処方された処方データのうちに対象処方データと同一の処方データが存在するか否かを判定するようにしてもよい。そして、上記のような処方データが存在する場合に、対象処方データ判定部108は例外条件EC11が満足されたと判定するようにしてもよい。
なお、例えば国及び特定地域等によって構築され、医療・調剤業界で共有される公共データベースに、患者に過去に処方された処方データが保存されている場合、対象処方データ判定部108は当該公共データベースにアクセスすることによって、同一の患者に過去に処方された処方データのうちに対象処方データと同一の処方データが存在するか否かを判定するようにしてもよい。そして、上記のような処方データが存在する場合に、対象処方データ判定部108は例外条件EC11が満足されたと判定するようにしてもよい。
例外条件EC11が満足されると判定された場合、自動開始機能がOFFになっていたとしても、例外的に、判断部107は対象処方データの調剤処理の自動開始を制限しないと判断し、第1開始制御部111が自動的に対象処方データの調剤処理を調剤装置20に開始させる。一般的に、同一の患者に過去に処方された処方データと同一の処方データに関しては、改めて確認する必要性が低いと考えられるところ、上記のような例外条件EC11を設定することにより、そのような場合に、例外的に、調剤処理を自動的に開始させることが可能になる。
なお、例外条件EC11は「対象処方データが同一の患者に過去に処方された処方データと同一又は類似である」との条件としてもよい。ここで、対象処方データが同一の患者に過去に処方された処方データと類似である場合とは、対象処方データが同一の患者に過去に処方された処方データと同一ではないが、同一とみなしても問題がないような場合である。
また、例外条件EC11の代わりに、「対象処方データと同一又は類似の処方データの調剤処理が過去に調剤装置20によって実行されたことがある」との例外条件を設定するようにしてもよい。このような例外条件が設定されている場合、対象処方データ判定部108は処方データテーブルD3(及び実行履歴テーブルD4)を参照することによって、対象処方データと同一又は類似の処方データの調剤処理が過去に調剤装置20によって実行されたことがあるか否かを判定するようにすればよい。そして、対象処方データと同一又は類似の処方データの調剤処理が過去に調剤装置20によって実行されたことがある場合に、例外的に判断部107が調剤処理の自動開始を制限しないと判断するようにしてもよい。
なお、上記のような例外条件とともに、「現在の使用者(現在ログインしている使用者)が、対象処方データと同一又は類似の処方データの調剤処理が過去に調剤装置20によって実行された際に当該調剤制御システムにログインしていた使用者と同一である」との例外条件も設定するようにしてもよい。そして、対象処方データと同一又は類似の処方データの調剤処理が過去に調剤装置20によって実行されたことがあり、かつ、その際の使用者(その際にログインしていた使用者)が現在の使用者と同一である場合に例外的に判断部107が調剤処理の自動開始を制限しないと判断するようにしてもよい。
また、例外条件EC11の代わりに、「対象処方データが同一の患者に過去に処方された処方データと同一又は類似であり、対象処方データと同一又は類似の処方データの調剤処理が過去に調剤装置20によって実行されたことがある」との例外条件を設定するようにしてもよい。ここで、処方データが同一である場合とは、患者が同一であり、かつ、処方内容が同一である場合である。なお、例えば、医療機関、診療科、医師、薬剤、用法、用量、日数、及び数量のすべてが同一である場合に処方内容が同一であるとみなすようにしてもよいし、これらの項目のうちの特定の一部項目が同一である場合に処方内容が同一であるとみなすようにしてもよい。また、処方データが類似である場合とは、患者が同一であって、かつ、処方内容が同一でなかったとしても、処方内容が同一であるとみなしても問題がないような場合である。
このような例外条件が設定されている場合、対象処方データ判定部108は先述の公共データベースにアクセスすることによって、対象処方データが同一の患者に過去に処方された処方データと同一又は類似であるか否かを判定するようにしてもよい。または、対象処方データ判定部108は処方データテーブルD3(及び実行履歴テーブルD4)を参照することによって、対象処方データと同一又は類似の処方データの調剤処理が過去に調剤装置20によって実行されたことがあるか否かを判定するようにしてもよい。
そして、対象処方データが同一の患者に過去に処方された処方データと同一又は類似であり、かつ、対象処方データと同一又は類似の処方データの調剤処理が過去に調剤装置20によって実行されたことがある場合に、例外的に判断部107が調剤処理の自動開始を制限しないと判断するようにしてもよい。
一方、対象処方データが同一の患者に過去に処方された処方データと同一又は類似であったとしても、対象処方データと同一又は類似の処方データの調剤処理が過去に調剤装置20によって実行されたことがなければ、判断部107は調剤処理の自動開始を制限すると判断するようにしてもよい。すなわち、対象処方データが同一の患者に過去に処方された処方データと同一又は類似であったとしても、それが自らの病院又は調剤薬局で調剤したものでなければ(他の病院又は調剤薬局で調剤されたものであれば)、調剤処理を自動的に開始させず、所定の権限者からの開始指示を待って、調剤処理を開始させるようにしてもよい。
また、例外条件EC12は「対象処方データが上位システム2から提供されたものである」との条件である。このような例外条件E12が設定されている場合、例えば、対象処方データ判定部108は処方データテーブルD3にアクセスし、対象処方データの入力システムフラグを参照することによって、対象処方データが上位システム2から提供されたものであるか否かを判定する。そして、対象処方データが上位システム2から提供されたものである場合に、対象処方データ判定部108は例外条件EC12が満足されたと判定する。
例外条件EC12が満足されたと判定された場合、自動開始機能がOFFになっていたとしても、例外的に、判断部107は対象処方データの調剤処理の自動開始を制限しないと判断し、第1開始制御部111が自動的に対象処方データの調剤処理を調剤装置20に開始させる。上位システム2から提供された処方データに関しては、上位システム2側でも鑑査が行われていることから、改めて確認する必要性が低いと考えられるところ、上記のような例外条件EC12を設定することにより、そのような場合に、例外的に、調剤処理を自動的に開始させることが可能になる。
また、例外条件EC13は「本日が月曜日である」との条件である。このような例外条件E13が設定されている場合、日時判定部116は、例えばコンピュータに備えられている計時機能等を用いて、本日が月曜日であるか否かを判定する。本日が月曜日である場合には例外条件EC13が満足されたと判定される。
判断部107は、日時判定部116の判定結果に基づいて、調剤処理の自動開始を制限するか否かを判断する。例えば、例外条件EC13が満足されたと日時判定部116によって判定された場合、自動開始機能がOFFになっていたとしても、例外的に、判断部107は対象処方データの調剤処理の自動開始を制限しないと判断し、第1開始制御部111が自動的に対象処方データの調剤処理を調剤装置20に開始させる。一般的に、月曜日は病院で受診する患者が多くなり、調剤処理の件数が多くなることが見込まれるところ、上記のような例外条件EC13を設定することにより、そのような場合に、例外的に、調剤処理を自動的に開始させることが可能になる。
例外条件EC13は一例にすぎず、調剤処理の件数が多くなることが見込まれる期間(繁忙期間)を例外条件として設定してもよい。また、営業時間外の時間帯を例外条件として設定することによって、営業時間外の時間帯に調剤処理が自動的に開始されるようにしてもよい。
なお、図16に示したような例外条件テーブルD8が設定されている場合、図12に示す処理では下記に説明するような処理が実行される。
具体的には、ステップS101において、自動開始機能がONに設定されていないと判定された場合(自動開始機能がOFFに設定されている場合)に、例えば図18に示すような処理が実行される。すなわち、まず、制御部11は図16に示した例外条件テーブルD8を参照し、例外条件EC11〜EC13のいずれかが満足されるか否かを判定する(S120)。
そして、例外条件EC11〜EC13のいずれかが満足されていれば、制御部11は対象処方データの調剤処理を調剤装置20に開始させる(S121)。その後、制御部11は調剤処理が完了したか否かを監視し(S122)、調剤処理が完了した場合に、制御部11は調剤処理の実行結果を実行履歴テーブルD4に登録する(S123)。これらのステップS121〜S123は図12のステップS103〜S105と同様である。
一方、例外条件EC11〜EC13のいずれも満足されていなければ、制御部11はステップS121〜S123を実行することなく(すなわち、調剤処理を調剤装置20に開始させることなく)、処理を終了する。なお、この場合、制御部11は処方データテーブルD3にアクセスし、対象処方データの自動開始フラグ及び実行状況フラグをそれぞれ「0」に設定する。
このような変形例3によれば、例外条件テーブルD8を備えることにより、原則として、調剤処理の自動開始機能をOFFに設定し、特定の場合に限って、例外的に、調剤処理を自動的に開始させることが可能になる。
例えば、対象処方データが特定の処方データである場合(例外条件EC11,EC12)に限って、例外的に、調剤処理の自動的に開始させることが可能になる。具体的には、対象処方データが同一の患者に過去に処方された処方データと同一である場合や、対象処方データが上位システム2から提供されたものである場合のように、改めて処方情報を確認する必要性が低い場合(言い換えれば、改めて処方情報を確認しなくても安全性が十分に確保される場合)に、例外的に、調剤処理を自動的に開始させることが可能になり、その結果として調剤業務の効率化を図ることが可能になる。
また、病院で受診する患者が多くなる月曜日のように、調剤処理の件数が多くなることが見込まれるような場合(例外条件EC13)にも、例外的に、調剤処理を自動的に開始させることが可能になり、その結果として調剤業務の効率化を図ることが可能になる。
先述の通り、調剤制御システム1では、人が服用する「薬品」という生命に直結するものを生成するため、人が介在して行うことによって安全性を十分に確保すべき場合と、調剤作業を自動化して効率化を図る場合との境界が非常に重要になる。この点、変形例3によれば、原則として、人を介して調剤処理が開始されるようにして安全性を十分に確保しつつ、人が介在して調剤処理を実行する必要性が低い場合に限って、調剤処理が自動的に開始させるようにして効率化を図ることが可能になる。
[6−5.変形例4]調剤制御システム1(制御装置10)は、実行履歴テーブルD4に登録された調剤処理の実行履歴を表示部15に表示したり、印刷部16に印刷させたりする実行履歴出力制御部を備えるようにしてもよい。
例えば、使用者が検索条件を指定できるようにし、実行履歴出力制御部は、検索条件を満足する実行履歴の一覧を表示又は印刷させるようにしてもよい。または、実行履歴出力制御部は、検索条件を満足する実行履歴の集計を表示又は印刷させるようにしてもよい。なお、検索条件としては、例えば、期間、患者、開始指示者、権限レベル、自動開始であるか否か等を指定できるようにしてもよい。
また、変形例2Aの場合、実行履歴出力制御部は、第1調剤装置20Aで実行された調剤処理(すなわち、装置が主体となって全自動で行われた調剤処理)の一覧や件数と、第2調剤装置20Bで実行された調剤処理(すなわち、装置の補助を受けながら人が主体となって行われた調剤処理)の一覧や件数とを表示又は印刷させるようにしてもよい。
なお、調剤処理の実行履歴だけでなく、調剤制御システム1で行われた各種操作の履歴もデータ記憶部100に登録するようにしてもよい。また、操作履歴を表示部15に表示したり、印刷部に印刷させたりする操作履歴出力制御部を備えるようにしてもよい。
[6−6.変形例5]1件の処方データの調剤処理が実行されるごとに強制的に使用者のログオフが行われるようにしてもよい。
調剤制御システム1のようなシステムでは、ある使用者がログインした状態のままで使用されることによって、システム上は当該使用者が調剤処理の開始指示を行ったことになっているにもかかわらず、実際には別の使用者が調剤処理の開始指示を行っているという運用が行われるおそれがある。この点、1件の処方データの調剤処理が実行されるごとに強制的に使用者のログオフが行われるようにすれば、調剤処理の開始指示を行うために毎回ログインが必要になるため、上記のような運用が行われ難くなる。
なお、この変形例では、調剤処理の完了後に直ちにログオフが行われるようにしてもよいし、調剤処理の完了後に所定時間が経過したらログオフが行われるようにしてもよい。例えば、調剤処理の完了後に所定時間(例えば20秒等)にわたって操作が行われなかった場合にログオフが行われるような構成とすることにより、調剤処理の完了後に所定時間内に操作を行えば次の調剤処理を連続して実行させることが可能となるようにしてもよい。また、強制ログオフの有無、強制ログオフの仕方、及び上記所定時間に関しては、所定の権限を有する使用者(例えば権限レベル「6」の使用者)が任意に設定できるようにしてもよい。