JP5095272B2 - 電磁波対策電線 - Google Patents

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本発明は、導体から発生する電磁波を効果的に遮蔽するとともに、耐コロナ性にも優れた、特に、高周波高電圧の用途で好適に使用可能な電磁波対策電線と、その製造方法に関する。
近年、加熱調理器具においては、電気加熱を利用したものが多数現れており、特にIH(Induction Heating)式調理器の普及は目覚しい。このIH式調理器のインバータとコイルの間を電気接続する電線には、高周波高電圧がかけられるため、電線の導体から多量の電磁波が発生することになり、その対策が必要とされている。
従来から知られている電磁波対策としては、例えば特許文献1に示すような、フェライトコアを使用したものがある。これは、電線の所々にフェライトコアを配置し、それにより導体から発生する電磁波を吸収するものである。
また、本件に関連する技術として、特許文献2がある。これは、シリコーンゴム絶縁体上に施されたガラス編組にフェライトを高充填したシリコーンワニスを塗布して焼き付けたEMI(Electro Magnetic Interference)遮蔽付シリコーン電線に関するものである。
また、本件に関連する技術として、特許文献3がある。これは、非導電性繊維よりなる芯線の周囲をフェライトゴムで被覆し、この上に金属線を軸方向の巻装し、この巻線導体を絶縁体で被覆してなる雑音防止高圧抵抗電線に関するものである。
実開平2−84306号公報 実開平1−176313号公報 特公昭62−23409号公報
ここで、特に昨今のIH式調理器具においては、熱量増加の要求に伴いコイルを高出力とするため、インバータとコイルの間の電線には、さらに高周波高電圧がかけられるようになってきた(具体的には、1kV,20kHzから3.7kV,90kHz)。これにより、導体から発生する電磁波も、特に高周波のノイズにおいて非常に多くなり、上記特許文献1のような所々に配置したフェライトコアだけでは抑えきれないようになってきた。
また、特許文献2のような電線を使用したとしても、この電線には、ガラス編組の目の間にはシリコーンワニスが付き難いため、シールドが完全なものにならないとともに、塗布という態様である限り、シリコーンワニスの厚さにも限界があるという問題点がある。このような点より、電磁波を吸収するフェライトの絶対量が不足することになるため、特に高周波高電圧においては充分に対策がなされた電線とは言い難い。
また、特許文献3のような電線においても、中心線としてフェライトゴムを使用していることから、電磁波を吸収するフェライトの絶対量が不足することになる。また、外部に拡散する電磁波を吸収するためには、その位置的にも不利な配置となっている。そのため、特に高周波高電圧においては充分に対策がなされた電線とは言い難い。
そして、上記のような高周波高電圧がかかる電線においては、電磁波対策のみならず、その高電圧に起因したコロナの発生を防止するため、耐コロナ性についても必要となる。この耐コロナ性に関しては、特許文献1〜3の何れにも示唆されていない。
本発明はこのような従来技術の問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、導体から発生する電磁波を効果的に遮蔽するとともに、耐コロナ性にも優れた、特に、高周波高電圧の用途で好適に使用可能な電磁波対策電線と、その製造方法に関する。
上記目的を達成するべく、本発明の請求項1による電磁波対策電線は、導体と、該導体の外周に形成されたシリコーンゴムからなる内層と、該内層の外周に形成されたフェライト入りシリコーンゴムからなる外層と、からなり、上記内層と上記外層とが、分離していることを特徴とするものである。
また、請求項記載の電磁波対策電線は、上記導体が、円形圧縮されていることを特徴とするものである。
また、請求項記載の電磁波対策電線は、平均粒径が1μm〜10μmであるとともに、上記フェライト入りシリコーンゴムは、シリコーンゴム100重量部に対し、フェライト25〜85重量部が配合されていることを特徴とするものである。
また、請求項記載の電磁波対策電線は、上記外層の外周に、繊維による編組被覆からなる保護層が形成されていることを特徴とするものである。
また、請求項記載の電磁波対策電線の製造方法は、導体の外周にシリコーンゴムを押出成形し架橋を施して内層を形成した後、該内層の外周にフェライト入りシリコーンゴムを押出成形し架橋を施して外層を形成し、上記内層と上記外層とが、分離した構造とするものである。
本発明による電磁波対策電線は、導体を外層のフェライト入りシリコーンゴムで完全に覆っている構成である。そのため、導体から発生する電磁波を効果的に遮断することができ、外部に電磁波障害を与えることを防止することができる。また、内層を耐コロナ性の高いシリコーンゴムで構成し、外層についてもシリコーンゴムを基本構成としている。そのため、高電圧がかかってもコロナの発生を防止でき、耐コロナ性に優れたものである。
また、内層と外層が分離した構成であれば、万が一、外層に傷が生じたとしても、裂けが外層のみに止まり内層にまで達しないため、絶縁機能が完全に損なわれることを防止することができる。
また、導体が円形圧縮加工されていれば、導体外径を小さくすることができるため、同じ電線外径のものと比べて、その分内層又は外層の厚さを厚くすることができ、耐コロナ性や絶縁破壊電圧を向上させることができる。更に、コロナは導体の尖形部分から発生することが多いため、円形圧縮加工をして尖形部分をなくすことで、コロナの発生をより防止することができる。
以下、本発明の構成について図1を参照して説明する。
導体2としては、従来公知のものが使用できる。材料としては、例えば、銅、銅合金、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金等やこれらの表面に、ニッケル、スズ、銅、銀等がコーティングされたものなどが考えられる。また、その構成についても、1本の線材からなるものでも良いし、複数本を引き揃え又は撚り合せたものなどを使用しても良い。併せて、非金属繊維からなる抗張力体などを使用しても構わない。
導体2として、複数本を撚り合わせたものを使用する場合、円形圧縮加工を施すことが好ましい。これにより、導体2の外径を小さくすることができるため、同じ電線外径のものと比べて、その分内層又は外層の厚さを厚くすることができ、耐コロナ性や絶縁破壊電圧を向上させることができる。更に、コロナは導体2の尖形部分から発生することが多いため、円形圧縮加工をして尖形部分をなくすことで、コロナの発生をより防止することができる。
上記導体2の外周には、内層3が形成される。この内層3の材料としては、シリコーンゴムが選択される。シリコーンゴムは耐コロナ性が高く、導体2に高周波高電圧をかけたとしてもコロナの発生を抑えることができるためである。また、シリコーンゴムは耐熱性も高いため、IH式調理器具への使用など、高温下に晒される環境においても使用が可能である。また、シリコーンゴムは柔軟性に優れているため、組立時や配線時の作業性も良好なものとなる。内層3の形成にあたっては、押出成形等の公知の成形方法によって成形した後、架橋を施すことが一般的である。
上記内層3の外周には、外層4が形成される。この外層4の材料としては、フェライト入りシリコーンゴムが選択される。シリコーンゴムは耐コロナ性が高く、導体2に高周波高電圧をかけたとしてもコロナの発生を抑えることができるためである。また、シリコーンゴムは耐熱性も高いため、IH式調理器具への使用など、高温下に晒される環境においても使用が可能である。また、シリコーンゴムは柔軟性に優れているため、組立時や配線時の作業性も良好なものとなる。フェライトは、Mn−Zn系、Ni−Zn系、Cu−Zn系など種々のものがあり、適宜選択すれば良い。また、フェライトの平均粒径について、粒径が大きい方が電磁波遮蔽効果は高くなる傾向にあるが、大きすぎると外層4の柔軟性や成形性が悪化する原因となる。そのため、フェライトの平均粒径は、1μm〜10μmのものが好ましい。また、シリコーンゴムへのフェライトの配合量は、シリコーンゴム100重量部に対し、フェライト25〜85重量部とすることが好ましい。フェライトの配合量が少ないと電磁波遮蔽効果が充分でなく、フェライト配合量が多すぎると、外層4の柔軟性や成形性が悪化する原因となる。外層4の形成にあたっては、押出成形等の公知の成形方法によって成形した後、架橋を施すことが一般的である。
ここで、内層3と外層4は、分離した構成であることが好ましい。ここで、分離した構成とは、内層3と外層4とが接着等されておらず容易に剥離可能な状態であることを示す。シリコーンゴムは一般的に裂け易い性質を有しているため、僅かな傷が生じたとしても、そこを基点に大きな裂けへと発展してしまう。シリコーンゴムで構成される複数層が接着等で一体化している場合、このような現象は複数層全体に及ぶことになり、一部の層の傷が層全体の裂けに発展してしまうことになる。これに対し、上記のように内層3と外層4とが分離した構成であれば、万が一、外層4に傷が生じたとしても、裂けが外層4のみに止まり内層3にまで達しないため、絶縁機能が完全に損なわれることを防止することができる。内層3と外層4とが分離した構成にするためには、導体2の外周にシリコーンゴムを押出成形し架橋を施して内層3を形成した後、内層3の外周にフェライト入りシリコーンゴムを押出成形し架橋を施して外層4を形成することが考えられる。内層3の外周に外層4を形成した後、これらに一括して架橋を施すと、内層3と外層4とが一体化し、分離した構成ではなくなってしまうためあまり好ましくない。
外層4の外周には、外傷の防止のため、他の高分子材料による押出被覆やチューブの被覆、或いは、ガラス繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維などの非金属繊維による編組被覆等を施し、保護層(図示しない)を形成しても良い。但し、金属線の編組等、導電材料で保護層を形成すると、万が一、コロナが発生した際には、リーク電流が保護層に流れ、感電の可能性が高くなってしまうため好ましくない。
以下、本発明の実施例について図面を参照にして説明する。
(実施例1)
0.32mmφのスズメッキ軟銅線45本を撚り合わせ、平均外径2.51mmの導体2とした。この導体2の外周に、シリコーンゴムを平均厚さ1.79mmで押出被覆した後、架橋を施し、内層3とした。この内層3の外周に、フェライト入りシリコーンゴムを平均厚さ1.01mmで押出被覆した後、架橋を施し、外層4とした。尚、フェライトは、平均粒径3.8μmのMn−Zn―Fe系ものを使用し、シリコーンゴム100重量部に対し、フェライト70重量部を配合した。このようにして仕上外径8.10mmの電線1を得た。
(実施例2)
0.32mmφのスズメッキ軟銅線45本を圧縮集合撚りによって撚り合わせ、平均外径2.28mmの導体2とした。この導体2の外周に、シリコーンゴムを平均厚さ1.90mmで押出被覆した後、架橋を施し、内層3とした。この内層3の外周に、フェライト入りシリコーンゴムを平均厚さ1.01mmで押出被覆した後、架橋を施し、外層4とした。尚、フェライトは、平均粒径3.8μmのMn−Zn―Fe系系ものを使用し、シリコーンゴム100重量部に対し、フェライト70重量部を配合した。このようにして仕上外径8.10mm電線1を得た。
(比較例1)
0.32mmφのスズメッキ軟銅線45本を撚り合わせ、平均外径2.51mmの導体とした。この導体の外周に、シリコーンゴムを平均厚さ1.93mmで押出被覆した後、架橋を施し、絶縁層とした。このようにして仕上外径8.10mm電線を得た。この電線の一部に、内径約16mm、厚さ約4mm、幅約12mmのフェライトコアリングを備え付けた。
(比較例2)
フェライトコアリングを備え付けなかった他は、比較例1と同様である。
実施例1と実施例2について、耐コロナ性を測るため、以下のようにコロナ発生点確認試験を行った。まず、図2に示すように長さ500mmに電線1を採り、片端を100mmストリップして導体2を露出するとともに、電線1の略中央部に幅50mmのアルミ箔5を巻き付ける。このアルミ箔5と導体2の間に、50kHzの略正弦波の電圧を1秒間に約1,000V上昇するように印加し、4mAの電流が流れたときの電圧を測定する。尚、この測定は、導体2とアルミ箔5の距離Aを適宜変化させて行う。併せて、絶縁破壊電圧を測るため、以下のように水中BDV(絶縁破壊電圧)測定を行った。まず、長さ1000mmに電線1を採り、両端をストリップして導体2を露出し、電線1の中央部200mmを水中に浸す。導体2と水中との間に、60Hzの略正弦波の電圧を1秒間に1000V上昇するように印加し、絶縁破壊した時の電圧を測定する。尚、この測定は、5回の測定の平均値を算出して結果とする。これら試験結果を表1に示す。
Figure 0005095272
上記表1より、実施例1、実施例2ともに、優れた耐コロナ性及び絶縁破壊電圧を有していることが確認された。特に、導体に円形圧縮加工を行った実施例2は、耐コロナ性及び絶縁破壊電圧において実施例1よりも更に優れた値であることが確認された。
次いで、実施例1、比較例1、比較例2について、電磁波遮蔽効果を測るため、以下のように減衰量測定を行った。長さ560mmの電線について、ワニ口クリップによって、片端に標準信号発生器を接続し、もう片端に測定用受信機を接続する。標準信号発生器から0dBmの信号を電線に入力し、入力した信号が電線を通じどれだけ減衰したかを測定用受信機にて測定する。尚、入力信号の周波数は、0.1GHz〜3.0GHzの範囲で可変させた。この試験の結果について、減衰量と周波数の関係を表すグラフとして、図3に示す。
図3に示す通り、特に1.60GHz以上の高周波数領域において、実施例1は比較例1及び比較例2よりも減衰量の値が大きくなっており、実施例1は優れた電磁波遮蔽効果を有していることが確認された。
次いで、実施例1において、シリコーンゴム100重量部に対し、フェライト85重量部を配合して外層4としたものについて、実施例3とした。また、実施例1において、シリコーンゴム100重量部に対し、フェライト25重量部を配合して外層4としたものについて、実施例4とした。これらについても上記同様、減衰量測定を行った。実施例1、実施例3、実施例4を比較したデータについて、減衰量と周波数の関係を表すグラフとして、図4に示す。
図4より、フェライトの配合量が増加するほど減衰量の値が大きくなっており、実施例1は優れた電磁波遮蔽効果を有していることが確認された。しかしながら、実施例1及び実施例4にかかる電線1は、押出成形性に優れ、電線1の表面も平滑なものになったが、フェライトの配合量が85重量部の実施例3にかかる電線1は、外径にやや変動が見られ、表面も若干荒れた状態となってしまっていた。尚、シリコーンゴム100重量部に対し、フェライト90重量部を配合して外層4としてものについて、作成を試みたが、押出成形後に外層4が内層3から容易に剥がれ落ちたため、電線1とすることが困難であった。
以上詳述したように本発明によれば、導体から発生する電磁波を効果的に遮蔽するとともに、耐コロナ性にも優れた電磁波対策電線とその製造方法を得ることができる。そのため、この電磁波対策電線は、高周波高電圧の用途で好適に使用可能である。特に、IH式調理器具のインバータとコイルの間を電気接続する電線、電子レンジのセンサー用リード線に好適に使用することができるものである。
本発明の実施の形態による電磁波対策電線の構成を示す一部切欠斜視図である。 コロナ発生点確認試験(耐コロナ性)の説明図である。 減衰量測定(電磁波遮蔽効果)の結果を示すグラフである。 減衰量測定(電磁波遮蔽効果)の結果を示すグラフである。
符号の説明
1 電磁波対策電線
2 導体
3 内層
4 外層

Claims (5)

  1. 導体と、該導体の外周に形成されたシリコーンゴムからなる内層と、該内層の外周に形成されたフェライト入りシリコーンゴムからなる外層と、からなり、上記内層と上記外層とが、分離していることを特徴とする電磁波対策電線。
  2. 上記導体が、円形圧縮されていることを特徴とする請求項1記載の電磁波対策電線。
  3. 上記フェライト入りシリコーンゴムに配合されるフェライトが、Mn−Zn−Fe系のものであるとともに、平均粒径が1μm〜10μmであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電磁波対策電線。
  4. 上記外層の外周に、繊維による編組被覆からなる保護層が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3何れか記載の電磁波対策電線。
  5. 導体の外周にシリコーンゴムを押出成形し架橋を施して内層を形成した後、該内層の外周にフェライト入りシリコーンゴムを押出成形し架橋を施して外層を形成し、上記内層と上記外層とが、分離した構造とする電磁波対策電線の製造方法。
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