JP2007087733A - 電磁波遮蔽ケーブル - Google Patents

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Shigeki Isono
重樹 磯野
Hiroki Shimotori
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Abstract

【課題】金属編組やフェライトコアを用いずに電磁波が漏洩し難い電磁波遮蔽ケーブルを提供すること。
【解決手段】導体2と、フェライト粒子またはカーボン粒子を含有する樹脂組成物からなり前記導体2を被覆する電磁波遮蔽層3と、好ましくは、フェライト粒子およびカーボン粒子のいずれも含有しない樹脂組成物からなり電磁波遮蔽層を被覆する絶縁層4と、を有する電磁波遮蔽ケーブル1。本発明の電磁波遮蔽ケーブルは、電力線搬送通信(PLC)用のケーブルとして特に有用である。
【選択図】図1

Description

本発明は、電磁波遮蔽ケーブルに関し、特に電力線搬送通信(PLC)用の電磁波遮蔽ケーブルに関する。
従来、ケーブルの電磁波遮蔽対策として、ケーブルにシールド層を形成することが行われている。図5はそのようなケーブルの長手方向に垂直な断面図である。このケーブル10の芯材としての導体20は、絶縁層30、シールド層40およびシース50で順次被覆されている。シールド層40は金属編組などで構成される。このシールド層40のアンテナ効果によりコモンモードノイズが発生する。そこで、シールド層のアンテナ効果を低減させる手段として、フェライトコアをケーブルに挿通させる方法が採用されている。しかし、フェライトコアの保持方法(樹脂モールド成形、カバーケースなど)の如何にかかわらず、外観上好ましい形態とならず、またケーブルアセンブリにおいてもフェライトコアの割れなどの取扱上の問題が多い。
図6は従来のケーブルの断面図である。このケーブル11はVFF(ビニル平形コード)構造といい、複数本の導体20が一括して絶縁層30で被覆されている。図7も従来のケーブルの断面図である。このケーブル12はVCTFK(ビニルキャブタイヤ長円形コード)構造といい、複数の導体20がそれぞれ独立に絶縁層30で被覆され、さらに全体が一括してシース50で被覆されていて楕円形の断面を構成している。図8も従来のケーブルの断面図である。このケーブル13はVCTF(ビニルキャブタイヤ丸形コード)構造といい、複数の導体20がそれぞれ独立に絶縁層30で被覆され、さらに全体を一括してシース50が囲んでいて円形の断面を構成している。
上述の問題が生じにくいケーブルとして、特許文献1には、絶縁電線を金属編組線のシールド、次いで、磁性紛混合樹脂層で被覆してなるケーブルが開示されている。
また、特許文献2には、導電性材料の芯材の外側に、順次、磁性体含有絶縁樹脂層、金属編祖からなる層、絶縁被覆層が設けられているケーブルが開示されている。
さらに、特許文献3には、撚り合わされた複数本の導体をアルミニウム箔とポリエステルテープからなるラミネートテープで被覆しさらに編組の導電性シールで包囲してなる構造をもつケーブルが開示されている。
近時、電力線搬送通信(Power Line Communication;PLC)の検討が進められている。PLCは電源ケーブルに電力のみならずデータ用の電気信号を乗せる技術であり、典型的には、オフィスや一般家庭に引き込まれている商用電源ラインに電力とともにデータの信号を乗せることによって、電力線を通信回線として共用しようとする技術である。具体的には、電力を供給するとともに、短波帯(2〜30MHz)の周波数の搬送信号波を電力線に乗せて、データ信号を送受信することによって、インターネット等への高速接続を可能ならしめることが検討されている。PLC実用化のための課題として、他の電子機器の誤動作を防止するために、電力線に乗せる電気信号の該電力線からの漏洩を極力低減すべきことが挙げられる。
特開2004−158328号公報 特開平6−131921号公報 特開平7−85733号公報
図6〜図8に示すような従来技術のケーブルでは、PLCにおいて使用される2〜30MHzの電磁波の漏洩が生じ易い。また、特許文献1〜3に記載されるような金属編組を有するケーブルは、構造が複雑でありそれ故高コストであり、PLCの普及の妨げになりかねない。ケーブルをフェライトコアに貫通させる従来技術もあるが、フェライトコアを保持する部材が必要であるから機械的強度および外観に優れたケーブルを構成できない。
本発明の課題は、金属編組やフェライトコアを用いずに電磁波が漏洩し難い電磁波ケーブルを提供することである。
本発明は以下の特徴を有する。
(1)導体と、フェライト粒子またはカーボン粒子を含有する樹脂組成物からなり前記導体を被覆する電磁波遮蔽層と、を有する電磁波遮蔽ケーブル。
(2)上記樹脂組成物がフェライト粒子およびカーボン粒子を含有する(1)記載の電磁波遮蔽ケーブル。
(3)上記樹脂組成物が、100重量部の有機樹脂と、100〜700重量部のフェライト粒子と、30〜70重量部のカーボン粒子と、を含有する(2)記載の電磁波遮蔽ケーブル。
(4)さらに、フェライト粒子およびカーボン粒子のいずれも含有しない樹脂組成物からなり電磁波遮蔽層を被覆する絶縁層を有する(1)〜(3)のいずれかに記載の電磁波遮蔽ケーブル。
(5)電力線搬送通信用である(1)〜(4)のいずれかに記載の電磁波遮蔽ケーブル。
本発明によれば、機械的強度や外観を損ねたりコスト高の原因となるフェライトコアや金属編祖などを用いずに、電磁波が漏れ難い電磁波遮蔽ケーブルが提供される。本発明の電磁波遮蔽ケーブルは、短波帯(2〜30MHz)の周波数の電磁波の遮蔽に優れており、PLC用のケーブルとして適している。
図1は、本発明の電磁波遮蔽ケーブルの部分切欠図である。本発明によれば、電磁波遮蔽ケーブル1は芯材としての導体2をほぼ中心に有している。後述する特定の樹脂組成物からなる電磁波遮蔽層3が導体2を被覆している。好ましくは、電磁波遮蔽層3は導体2に直接接触して被覆している。好ましくは、電磁波遮蔽層3を絶縁層4が被覆している。本発明の電磁波遮蔽ケーブル1は、さらにシース5を有していてもよい。
導体2は、単線、撚線、または他の適当な構造のいずれであってもよく、例えばスズめっき軟銅の撚線が用いられる。
電磁波遮蔽層3を構成する樹脂組成物は、フェライト粒子またはカーボン粒子を含有する。前記樹脂組成物には電気絶縁性を有する有機樹脂が含まれる。そのような有機樹脂は特に限定なく、具体的には、塩化ビニル樹脂、架橋塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、架橋ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
フェライトは、3価の鉄と、2価の金属との複合酸化物であり、フェリ磁性を呈する酸化物である。「2価の金属」としては、例えば、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛などが挙げられる。フェライト粒子の大きさ(1次粒径)は、好ましくは2〜5μm程度である。電磁波遮蔽層3を構成する樹脂組成物には、上述の有機樹脂100重量部に対してフェライト粒子が、好ましくは100〜700重量部、より好ましくは500〜600重量部含まれる。上記範囲内の量であれば、電磁波の良好な遮蔽と成形のし易さとが両立し、さらに引張強さや伸びといった機械的強度の低下を抑制することができる。
カーボン粒子としては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック等のカーボンブラックやグラファイト等のカーボン粒子が用いられる。カーボン粒子の大きさ(1次粒径)は、好ましくは10〜50nm程度である。電磁波遮蔽層3を構成する樹脂組成物には、上述の有機樹脂100重量部に対してカーボン粒子が、好ましくは30〜70重量部、より好ましくは40〜60重量部含まれる。上記範囲内の量であれば、電磁波の良好な遮蔽と成形のし易さとが両立し、さらに引張強さや伸びといった機械的強度の低下を抑制することができる。
好ましくは、電磁波遮蔽層3を構成する樹脂組成物は、フェライト粒子とカーボン粒子とを両方とも含有する。フェライト粒子またはカーボン粒子の片方のみを含有するのとは異なり、フェライト粒子とカーボン粒子とを両方とも含有することで、ε'、ε''が増加するから必要な遮蔽効果を得るために要するフェライト粒子の混入量を減らすことができ、結果的に、ケーブルの軽量化や加工性の向上がもたらされる。より好ましくは、電磁波遮蔽層3を構成する樹脂組成物には、上述した有機樹脂100重量部に対して、100〜700重量部、さらに好ましくは400〜500重量部のフェライト粒子と、30〜70重量部、さらに好ましくは40〜60重量部のカーボン粒子とが含まれる。
電磁波遮蔽層3の被覆厚さは、好ましくは0.2〜0.8mmであり、より好ましくは0.4〜0.6mmである。上記範囲内であれば、加工し易くかつ電磁波の遮蔽が十分である。
本発明の好適態様によれば、上述した電磁波遮蔽層3は絶縁層4によって被覆される。特に、導体2が複数本存在する場合には、絶縁層4の存在によって導体2どうしの絶縁がより確実になる。絶縁層4は、フェライト粒子およびカーボン粒子のいずれも含有しない樹脂組成物からなる。絶縁層4を構成する樹脂組成物には、電気絶縁性を有する有機樹脂が含まれる。そのような有機樹脂は特に限定なく、具体的には、塩化ビニル樹脂、架橋塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、架橋ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
好ましくは、絶縁層4は電磁波遮蔽層3に直接接触して被覆する。そのような構成であれば、外径を小さく抑えて軽量化することができ、同時押出加工が可能であればケーブル製造のための工数を少なくすることもできる。
絶縁層4の被覆厚さは、好ましくは0.6〜0.8mmである。上記範囲内であればケーブルの取り扱い易さが損なわれることなく十分な絶縁性能が得られる。
図1に記載された電磁波遮蔽ケーブル1のように、絶縁層4はシース5に被覆されていてもよい。シース5は、電磁波遮蔽ケーブル1が外力によって損傷するのを防いだり、浸水などを防いだりするための被覆である。シース5を構成する材料には、老化防止剤、酸化防止剤、安定剤、難燃剤などの通常用いられる配合剤が添加されていてもよい。
本発明によれば、金属編組やフェライトコアを用いることなく電磁波を効率的に遮蔽することができる。好ましくは、本発明の電磁波遮蔽ケーブル1は金属編組を有さない。また、好ましくは本発明の電磁波遮蔽ケーブル1はフェライトコアを有さない。本発明の電磁波遮蔽ケーブルは押出法など公知のケーブル製造技術を適宜援用して製造することができる。
本発明によれば、電磁波遮蔽ケーブルは、種々のケーブル構造をとることができる。以下、各ケーブル構造を図面を用いて説明するが、その説明は、本発明のケーブル構造を限定することを意図していない。図2〜4は、種々の態様の本発明の電磁波遮蔽ケーブルの長手方向に垂直な断面図である。
図2は、VFF構造をもつ本発明の電磁波遮蔽ケーブル1の断面図である。導体2およびそれを被覆する電磁波遮蔽層3が2組あり、それらを一括して絶縁層4が被覆している。図3は、VCTFK構造をもつ本発明の電磁波遮蔽ケーブル1の断面図である。導体2ならびにそれを順次被覆する電磁波遮蔽層3および絶縁層4が2組あり、それらを一括してシース5が被覆して、全体として楕円形の断面を構成している。図4は、VCTF構造をもつ本発明の電磁波遮蔽ケーブル1の断面図である。導体2ならびにそれを順次被覆する電磁波遮蔽層3および絶縁層4が2組あり、それらを一括してシース50が囲んでいて、全体として円形の断面を構成している。
本発明の電磁波遮蔽ケーブルは、電力線搬送通信(Power Line Communication;PLC)用のケーブルとして特に有用である。従来技術の欄で説明したとおり、PLC用のケーブルには、電力を供給するための電流とデータ信号の送受信のための電流との両方が流される。電力供給のための電流としては、例えば屋内配線用であれば50〜60Hz程度の周波数の交流電流、例えば自動車内の配線であれば直流電流が一般的に挙げられる。データ送受信のための電流としては、例えば、短波帯(2〜30MHz)の周波数の電流などが挙げられる。本発明の電磁波遮蔽ケーブルは、該ケーブルからの電気信号の漏洩が少ないので、他の電子機器への誤動作を低減することができる。本発明の電磁波遮蔽ケーブルは金属編組やフェライトコアなどが不要であり、コンパクトな設計が可能なので、自動車内などといった配線用のスペースが限定される場所への適用に特に有用である。
本発明の電磁波遮蔽ケーブルの部分切欠図である。 VFF構造をもつ本発明の電磁波遮蔽ケーブルの断面図である。 VCTFK構造をもつ本発明の電磁波遮蔽ケーブルの断面図である。 VCTF構造をもつ本発明の電磁波遮蔽ケーブルの断面図である。 従来の電磁波遮蔽ケーブルの断面図である。 VFF構造をもつ従来の電磁波遮蔽ケーブルの断面図である。 VCTFK構造をもつ従来の電磁波遮蔽ケーブルの断面図である。 VCTF構造をもつ従来の電磁波遮蔽ケーブルの断面図である。
符号の説明
1 電磁波遮蔽ケーブル
2 導体
3 電磁波遮蔽層
4 絶縁層
5 シース
10、11、12、13 電磁波遮蔽ケーブル
20 導体
30 絶縁層
40 シールド層
50 シース

Claims (5)

  1. 導体と、フェライト粒子またはカーボン粒子を含有する樹脂組成物からなり前記導体を被覆する電磁波遮蔽層と、を有する電磁波遮蔽ケーブル。
  2. 上記樹脂組成物がフェライト粒子およびカーボン粒子を含有する請求項1記載の電磁波遮蔽ケーブル。
  3. 上記樹脂組成物が、100重量部の有機樹脂と、100〜700重量部のフェライト粒子と、30〜70重量部のカーボン粒子と、を含有する請求項2記載の電磁波遮蔽ケーブル。
  4. さらに、フェライト粒子およびカーボン粒子のいずれも含有しない樹脂組成物からなり電磁波遮蔽層を被覆する絶縁層を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の電磁波遮蔽ケーブル。
  5. 電力線搬送通信用である請求項1〜4のいずれか1項に記載の電磁波遮蔽ケーブル。
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