JP7038463B2 - 絶縁電線 - Google Patents

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Description

本発明は絶縁電線に関するものであり、特に自動車・電気電子機器等に使用される、高電圧電力ケーブルに好適なものである。
自動車等の車両に使用される絶電電線は、機械特性、難燃性、耐熱性、耐寒性等、種々の特性が要求されている。
昨今は、電気によるモーター駆動を利用した電気自動車、モーター駆動と従来のガソリンエンジン駆動を併用したハイブリッド自動車が登場している。このようなモーター駆動を使用する自動車は、モーター駆動のために高電圧、大電流を供給する必要がある。一般的に、高電圧、大電流を供給する絶縁電線は、導体断面積が大きいものが使用され、電圧、電流の増加に伴い、高い絶縁性も要求される。
一方で、車内空間の確保やデザイン性の向上のため、絶縁電線の配設スペースが縮小される傾向もあり、これに対応するために短い長さ、小さな曲げ半径で配設が可能な絶縁電線も要求されている。
すなわち、太く、短い絶縁電線を小さな曲げ半径で曲げる必要があり、これに対応するには柔軟性に優れた絶縁電線を使用する必要がある。柔軟性に優れた絶縁電線を得るには、絶縁電線を構成する導体と絶縁層の少なくとも一方、好ましくは両方を柔軟にする必要がある。
導体を被覆する絶縁層を柔軟なものとする方法として、絶縁層を構成する材料にゴム材料を使用する方法が知られている。絶縁層に使用されるゴム材料として、フッ素ゴム、フロロシリコーンゴム、アクリルゴム、EPDM、シリコーンゴム等が挙げられる。
これらの材料の中から、柔軟性、絶縁性、耐熱性、耐寒性の観点で好ましいものを選択した場合、シリコーンゴムが好ましい材料であるが、シリコーンゴムを自動車用電線に使用する際には、以下の難点が存在するため、必ずしもこの好ましい選択とは言えないのが現状である。
シリコーンゴムは一般的に機械的強度が低く、一度傷が入ると引裂けやすい点、耐摩耗性が低いのが難点であり、絶縁体の損傷による絶縁不良が懸念される。
加えて、シリコーンゴムは耐油性、耐酸性に劣り、自動車に使用されるガソリン、ATF(自動変速機油)、エンジンオイルなどの付着による膨潤、劣化の懸念、硫酸を主成分とするバッテリー液の付着による加水分解の懸念も存在する。
機械的強度を上げる方法としては、シリコーン樹脂に、中空の球状酸化チタンや薄片状酸化チタンを添加する方法(特許文献1)がある。しかしながら、機械的強度が上がっても、シリコーン樹脂層に一度傷が入ってしまうと引裂けやすく、損傷による絶縁不良の懸念は残ったままである。
耐油性を上げる方法としては、シリコーンゴムの表面をポリウレタン樹脂の薄膜で被覆する(特許文献2)など、シリコーンゴムに耐油性を有する材料を被覆する方法など知られている。しかしながら、耐油性を有する材料は、柔軟性、耐熱性といった物性が必ずしもシリコーンゴムと同等のものではなく、使用環境が限られてしまう問題がある。
耐酸性(耐バッテリー液性)を上げる方法としては、絶縁電線の被覆として使用されるシリコーンゴムの表面にポリテトラフルオロエチレンを含む薄膜層を設ける方法(特許文献3)が知られているが、絶縁電線の変形に薄膜層が追従できず、薄膜層の剥がれ、割れが発生してシリコーンゴムが露出してしまい、耐バッテリー液性が低下するという問題が存在する。
さらに、シリコーンゴムを絶縁層に使用した絶縁電線は、シリコーンゴムが柔軟であるが故に、絶縁電線に瞬間的な強い衝撃が発生した場合、外力の影響が導体にも及び、導体の破損や、破損した導体による絶縁層の損傷の恐れもある。
シリコーンゴムに限らず、引裂けやすいゴム材料、耐摩耗性の低いゴム材料、柔軟性の高いゴム材料を絶縁層に使用する場合は、絶縁体の損傷による絶縁不良、衝撃による導体への悪影響が懸念される。
特開2004-91642号公報 特開平8-118417号公報 特開2016-149292号公報
本発明の課題は、引裂けやすいゴム材料、耐摩耗性の低いゴム材料を絶縁層に使用する場合でも、耐引裂き性と耐摩耗性が改善され、衝撃による導体への影響も抑制された絶縁電線を提供することにある。
本発明者は、絶縁電線の構造を鋭意検討した結果、ゴム材料で形成された絶縁層を複数層設け、層によってゴム材料の特性を変化させることで、従来の問題を解決するに至った。
本発明は、導体の周囲に絶縁層を被覆した絶縁電線であって、絶縁層は複数の層が積層されて構成されているとともに、絶縁層のうち少なくとも2層はゴム材料で形成された層であることを特徴とする。
本発明のより好ましい構成は、ゴム材料で形成された層の少なくとも1層は、ゴム材料で形成された他の層と硬度が異なっていることを特徴とする。
本発明の他の好ましい構成は、ゴム材料で形成された層の少なくとも1層に、フィラー(充填剤)が含有されていることを特徴とする。
本発明の絶縁電線にあっては、以下に記載した優れた効果が期待できる。

(1) 絶縁層を複数のゴム材料層で構成することで、単層のゴム材料層のみでは不十分であった耐引裂き性、耐摩耗性を改善できる。

(2)複数のゴム材料層に硬度の差を設けることで、絶縁層の反発弾性と衝撃吸収性を両立できる。

(3)ゴム材料層にフィラーを含有させることで、絶縁層に耐油性、耐酸性を付与することができる。
本発明の基本的構造で、絶縁層を2層とした場合である。 本発明の基本的構造の例で、絶縁層を3層とした場合である。 従来の絶縁電線の構造である
以下、本発明の基本的構成を、添付図面を参照しながら説明する。
図1、2において、1は本発明の絶縁電線、2は導体、3は絶縁層である。
図1においては、絶縁層3は第1絶縁層3aと第2絶縁層3bの2層構造となっている。
図2においては、絶縁層3は第1絶縁層3a、第2絶縁層3b、第3絶縁層3cの3層構造となっている。
本発明において、絶縁層3は2層構造と3層構造に限定されるものではなく、必要に応じて4層構造以上としても良い。
本発明で特徴的なことは、導体2の周囲に被覆された絶縁層3が、複数の層が積層されて構成されているとともに、絶縁層3のうち少なくとも2層はゴム材料で形成された層となっていることである。
すなわち、図1においては、第1絶縁層3aと第2絶縁層3bは両方ともゴム材料で形成される。
図2においては、第1~第3絶縁層3a~3cのうち、いずれか2層がゴム材料で形成されていればよく、残りの1層はゴム材料で形成されていても、その他の材料で形成されていても良い。
絶縁層3を積層構造とし、少なくとも2層をゴム材料で形成することで、絶縁層3をゴム材料1層のみで形成された絶縁電線と比較して、耐引裂き性と耐摩耗性が改善される。
図3に示したような、絶縁層3がゴム材料1層のみの絶縁電線1’の場合、一度絶縁層3に切り込み傷が入ってしまうと、絶縁層3にさらなる応力が加わった際に裂け(傷)が絶縁層3の厚み方向に伝播し、容易に導体2が露出して絶縁性が保てなくなる。
これに対し、図1に示した、絶縁層3が2層構造となっている絶縁電線1の場合は、第2絶縁層3bに傷が入っても、裂けの伝搬は第2絶縁層3bと第1絶縁層3aの界面で止まるため、導体2は露出せず、絶縁性が維持される。また、第2絶縁層3bの裂けが進行した状態でも、第2絶縁層3b自体は第1絶縁層3aの周囲に存在するため、第1絶縁層3aは第2絶縁層3bによって保護され、第1絶縁層3aの損傷を抑制することができる。耐摩耗性についても同様のことが言える。
図2に示した、絶縁層3が3層構造となっている絶縁電線1の場合は、層が増えることによってさらに高い耐引裂き性と耐摩耗性を得ることができる。
また、最外層である第3絶縁層3cを耐引裂き性の高いタイプのゴム材料で構成することによって、より高い耐引裂き性を得たり、第3絶縁層3cをフッ素ゴムで構成することによって、耐油性、耐酸性を得たりすることも可能である。
本発明の絶縁層3に使用されるゴム材料は、各層とも同種のゴム材料としても良いし、層によってゴム材料の物性、材料等を変化させて使用しても良い。
本発明においては、絶縁層3を構成する少なくとも2層のゴム材料の特性に差を持たせることで、さらに好ましい態様に変形することが可能である。
ゴム材料の物性の1つとして硬度が存在し、本発明においては絶縁層3を構成する少なくとも2層のゴム材料の硬度は等しくしても、異ならせても良い。
絶縁電線1の耐久性を高める観点では、絶縁層3を構成するゴム材料層の少なくとも1層を、他のゴム材料層と異なった硬度とした態様、すなわち、低硬度のゴム材料層と高硬度のゴム材料層を組み合わせて絶縁層3を形成した態様が好ましく利用できる。
一般的に高硬度のゴム材料は反発弾性が高い。絶縁層3を反発弾性の高い材料で構成することで、絶縁電線1が衝撃を受けた際の絶縁層3の変形を抑制することができる。その一方、絶縁層3に反発弾性の高い材料を使用した際、衝撃の影響が導体2に伝わりやすく、導体破損に繋がりやすいという難点がある。
一般的に低硬度のゴム材料は衝撃吸収性に優れる。絶縁層3を衝撃吸収性に優れた材料で構成することで、絶縁電線1が衝撃を受けた際の影響が導体2に伝わりにくくなり、導体変形を抑制できる。その一方、絶縁層3に衝撃吸収性の高い材料を使用した際、絶縁層3自体が変形してしまうという難点がある。
硬度が異なるゴム材料層を組み合わせて絶縁層3を形成することで、絶縁層3の変形抑制効果と、導体2の破損抑制効果を両立することができる。
ゴム材料の硬度を変化させる方法としては、フィラーの添加量を変える、構成分子の分子量を変える、架橋密度を変える、ゴム材料の種類を変えるといった方法が挙げられる。
本発明においては、フィラーの添加量を増やしてゴム材料の硬度を高める方法が特に好ましく利用できる。
ゴム材料の耐油性、耐酸性が乏しい場合、フィラーを添加することで、硬度の上昇とともに、耐油性、耐酸性がゴム材料に付加される。フィラーを含有するゴム材料層を絶縁層3の一部に使用することで、絶縁電線1の耐油性、耐酸性が改善される。
好適なフィラーの種類としては、シリカ、酸化チタン、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、タルク、クレー、酸化セリウム、窒化ホウ素、ガラスビーズ、アルミナ、酸化鉄などが挙げられる。
特に本発明では、鱗片状のフィラーが好適に利用できる。鱗片状フィラーは、フィラー粒子が一定の長さと幅を有し、その結果、一定の面積を有する形状となっている。
一定の面積を有する鱗片状フィラーを使用することで、その面積が油、酸に対する遮蔽壁として機能し、フィラーを添加したゴム材料層の耐油性、耐酸性を高めることができる。
鱗片状フィラーは、その長手方向が絶縁電線1の長さ方向に沿って配向されていることが好ましい。鱗片状フィラーの長手方向が絶縁電線の長さ方向に沿って配向していることで、絶縁電線の長さ方向の断面を見た際に、油、酸に対する遮蔽壁として機能する面積量が増加し、さらに耐油性、耐酸性が向上する。
この配向状態とするには、鱗片状フィラーを含有する絶縁層を、絶縁電線の被覆層を設ける方法として一般的な押出成型を用いて形成すればよい。絶縁層を押出す過程で鱗片状フィラーの長手方向が絶縁電線1の長さ方向に沿って配向される。
本発明において、絶縁層3を構成するゴム材料で形成された層は、ゴム材料で構成された層が隣接していると共に、層間が一体化されていることが望ましい。層間が一体化されていることで、層間の隙間が低減し、隙間におけるコロナ放電が抑制される。結果として絶縁電線の耐コロナ性が向上する。
ゴム材料で形成された層間が一体化されていても、元々積層されて構成された2つの層を一体化したものであれば、層間の隙間が低減しても、層の界面としての機能は有し、耐引裂き性と耐摩耗性の向上に寄与する。
層間を一体化する具体的な方法としては、2つのゴム材料層を共架橋といった方法で化学的に結合させる、化学的に密着させる方法が挙げられる。
一例として、導体2上にゴム材料層を押出成型した後、押出成型したゴム材料が熱硬化されていない状態でさらにもう1層のゴム材料層を押出成型し、その後熱処理を行い、熱硬化時に2つのゴム材料層を共架橋して一体化させる方法がある。
本発明で特に好適に使用できるゴム材料の1つはシリコーンゴムである。シリコーンゴムは一般的に柔軟性、絶縁性、耐熱性、耐寒性の観点で好ましいが、耐引裂き性、耐摩耗性、耐油性、耐酸性に劣っている。
本発明に使用するゴム材料としてシリコーンゴムを選択した場合、本発明によってシリコーンゴムの欠点を改善できるため、従来使用が困難とされていた環境においても、シリコーンゴム絶縁層を使用した絶縁電線が利用できる。
本発明で特に好適に使用できる他のゴム材料として、フッ素ゴムが挙げられる。
フッ素ゴムは一般的に耐引裂き性、耐摩耗性、耐油性、耐酸性、耐薬品性、耐熱性の観点で好ましいが、耐寒性に劣っている。
本発明に使用するゴム材料としてフッ素ゴムを使用する場合は、シリコーンゴムと併用することで、シリコーンゴムの欠点を補うことができる。
以下、本発明の実施例、参考例、比較例を示す。
参考例1、2]
参考例1、2として、第1絶縁層3a、第2絶縁層3bを有する絶縁電線1を作成する。
直径0.32mmの軟銅線を32本撚り合わせた子撚導体を準備し、この子撚導体を19本、同心撚り構造で撚り合わせ、断面積50mm2相当の導体2を形成した。
次いで、押出成型機を用いて、導体2の外周に、第1絶縁層3aとなるゴム材料を被覆したのち、ゴム材料に応じた熱処理を行って第1絶縁層3aを設けた。
さらに、第1絶縁層3aの外周に第2絶縁層3bとなるゴム材料を被覆し、熱処理を行って第2絶縁層3bを設け、第1絶縁層3a、第2絶縁層3bを有する絶縁電線1を得た。
参考例1、2の具体的な構成は、後掲の表1に示す。硬度はデュロメータ硬度Aである。特記が無い限り、材料、硬度が同じ絶縁層は、同一の物性を有する同一の材料を使用した。
[比較例1、2]
参考例1、2と同じ導体2に、ゴム材料で構成された絶縁層3を1層のみ被覆した絶縁電線1’を比較例1、2として作成した。
比較例1、2の具体的な構成は、後掲の表1に示す。参考例1、2は絶縁層3が2層構造であるのに対し、比較例1、2は絶縁層3が厚さ1.5mmの単層構造となっている。
以上のように作成した各絶縁電線に対して、以下に述べる試験を行い、各種性能を評価・比較した。
[耐摩耗性試験]
社団法人自動車技術会規格「JASO D618」に準拠して、試験を行った。
具体的方法は、絶縁電線を1mの長さに切り出して試験片とし、試験片の絶縁層に対し0.63Nの押付け力が発生するよう、絶縁電線の長さ方向に沿って、絶縁電線の長さ方向中心部にエンドレス摩耗テープを接触させ、1500mm/minの速度でテープを移動させた。
テープはJIS R6251に規定されるガーネットP150に準じたものを使用し、150mmの間隔で幅10mmの導体露出検知用導電部を設けた。
導体露出検知用導電部が導体2に接触するまでのテープの移動距離を測定し、以下のように評価を行った。

◎:移動距離 3000mm以上
○:移動距離 2000~3000mm
△:移動距離 1000~2000mm
×:移動距離 1000mm未満
[耐引裂き性試験]
絶縁電線から絶縁層3のみを、幅5mm、長さ100mmの短冊状に採取して試験片とした。
試験片の長さ方向の中央部表面に、長さ方向に直交する向きに深さ0.3mmの傷を刃物を用いて設け、試験片の両端を引張試験機のチャックで固定して、200mm/minの引張速度で引張試験を行った。
絶縁層3が完全に破断した際に引張試験機が示した値を、絶縁層3の引裂き強度とし、以下のように評価した。

◎:引裂き強度 50N/mm以上
○:引裂き強度 35~50N/mm
△:引裂き強度 20~35N/mm
×:引裂き強度 20N/mm未満
[耐衝撃性試験]
絶縁電線を50mmの長さに切断し、試験片とした。
絶縁電線の長さ方向の中心部に、2mの高さから、500gの分銅を落下させ、絶縁層3の表面状態を観察して以下のように評価した。

◎:傷、凹みともに無し
○:傷無し、凹み有り
△:傷、凹みとも有り
×:導体露出
[耐油性試験]
社団法人自動車技術会規格「JASO D618」に準拠して、試験を行った。
具体的方法は、絶縁電線を600mmに切断して試験片とし、ISO1817に規定されるガソリンに試験片を23±5℃で20時間浸漬した後、取り出して表面を拭い、室温で30分乾燥後、5分以内に絶縁電線の外径を測定し、式(1)に基づいて外径変化率を求め、以下のように評価した。

(式1)外径変化率=(浸漬後の外径-浸漬前の外径)/(浸漬前の外径)×100(%)

○:外径変化率 15%以下
×:外径変化率 15%超
[耐バッテリー液試験]
社団法人自動車技術会規格「JASO D618」に準拠して、試験を行った。
具体的方法は、絶縁電線を600mmに切断して試験片とし、長さ方向に100mmの間隔を空けて4箇所にバッテリー液(25%硫酸溶液、比重1.26)を滴下する。
その後、試験片を90℃に設定した試験炉に入れ、8時間放置する。
8時間後、試験炉から試験片を取り出し、バッテリー液を同じ箇所に滴下し、90℃に設定した試験炉に入れ、16時間放置する。
この手順を1サイクルとし、合計2サイクル行う。
その後、常温に戻した試験片のバッテリー液滴下場所を半径50mmに曲げて表面状態を確認した後、1kVにて絶縁電線の耐電圧試験を行い以下のように評価した。

◎:絶縁層表面にひび割れ無く、耐電圧試験合格
○:絶縁層表面にひび割れ有るが、耐電圧試験合格
×:絶縁層表面のひび割れ著しく導体露出、耐電圧試験不合格
試験結果を表1に示す。
Figure 0007038463000001
参考例1、2は比較例1と比べて、耐摩耗性、耐引裂き性、耐油性、耐バッテリー液性が著しく向上した。
参考例1、2は耐摩耗性、耐引裂き性、耐油性、耐バッテリー液性に優れるフッ素ゴムを併用しているため、各特性の向上は使用材料による影響も存在するが、第2絶縁層3bに損傷が発生しても、第1絶縁層3aによって、絶縁電線1の絶縁性が維持され、実使用上は問題なく使用できる点が特筆すべき効果と言える。
参考例1、2は比較例2と比べて、耐摩耗性は減少したものの、耐引裂き性が著しく向上している。耐摩耗性の減少は、実使用上問題のない範囲の減少であるため、比較例2と比べた場合、参考例1、2は耐引裂き性の向上によって、傷による絶縁層3の損傷を抑制した態様と言うことができる。
参考例3、実施例4
参考例3、実施例4として、第1絶縁層3a、第2絶縁層3b、第3絶縁層3cを有する絶縁電線1を作成する。
参考例1、2と同様に導体2の外周に第1絶縁層3a、第2絶縁層3bを設けた後、第2絶縁層3bの外周に第3絶縁層3cとなるゴム材料を被覆し、熱処理を行って第3絶縁層3cを設け、第1絶縁層3a、第2絶縁層3b、第3絶縁層3cを有する絶縁電線1を得た。
参考例3、実施例4の具体的な構成は、後掲の表2に示す。導体2は参考例1、2と同じものである。
[比較例3、4]
参考例1、2と同じ導体2に、ゴム材料で構成された絶縁層3を1層のみ被覆した絶縁電線1’を比較例3、4として作成した。
比較例3、4の具体的な構成は、後掲の表2に示す。参考例3、実施例4は絶縁層3が3層構造であるのに対し、比較例3、4は絶縁層3が厚さ1.5mmの単層構造となっている。
参考例3、実施例4、比較例3、4に対して先述した各種試験を行った結果を表2に示す。
Figure 0007038463000002
参考例3、実施例4は比較例3、4と比べて、耐摩耗性、耐引裂き性が著しく向上した。
参考例3、実施例4は第3絶縁層3cに耐引裂き性シリコーンゴムを使用しているため、耐引裂き性の向上は使用材料による影響も存在するが、第3絶縁層3cに損傷が発生しても、第1絶縁層3a、第2絶縁層3bによって、絶縁電線1の絶縁性が維持され、実使用上は問題なく使用できる点が特筆すべき効果と言える。
耐衝撃性については、評価上は参考例3、実施例4と比較例3、4とで顕著な差は見られなかったが、参考例3、実施例4は硬度の異なるシリコーンゴムを組み合わせて絶縁層3が形成されており、高硬度のシリコーンゴムが有する反発弾性と、低硬度のゴムが有する衝撃吸収性の相互作用によって、実際の耐衝撃性は向上していると考えられ、より強い衝撃を与えた時に耐衝撃性の差が表れると考えられる。
参考例3、実施例4は耐油性、耐バッテリー液性の向上を目的としたものではないので、この2点については比較例と大差が無い。耐油性、耐バッテリー液性の向上を意図したものとして、参考例5~7を示す。
参考例5~7]
参考例5~7は、絶縁層の一部にフィラーを添加した態様である。参考例5~7の具体的な構成は、後掲の表3に示す。導体2は参考例1、2と同じものである。
参考例5~7に使用したフィラーは以下の通りである。

・フィラー:球形酸化チタン
・鱗片状フィラー:鱗片状酸化鉄
[比較例5、6]
比較例5、6の具体的な構成は、後掲の表3に示す。導体2は実施例1、2と同じものである。参考例5~7は絶縁層3が厚さ0.5mmの層の3層構造であり、そのうち1層にフィラーが添加されているのに対し、比較例5、6は厚さ1.5mmの単層の絶縁層にフィラーを添加した構造となっている。
参考例5~7、比較例5、6に対して先述した各種試験を行った結果を表3に示す。
Figure 0007038463000003
参考例5は、耐油性は不十分であるものの、第3絶縁層3cにフィラーを添加することによる耐バッテリー液性の改善効果が確認できた。
参考例6はフィラーの添加量の増加に伴い、耐油性の改善効果が確認できた。
参考例7は、フィラーの添加量は参考例6と同じであるが、一定の面積を有する鱗片状フィラーを使用することで、参考例5では不十分であった耐油性の改善効果が確認できた。
比較例5、6もフィラー添加による耐油性、耐バッテリー液性の改善効果が確認されたが、絶縁層3が単層であるため、特に耐引裂き性は参考例5~7よりも劣る結果となった。
また、参考例5~7は比較例5、6と比べて、耐衝撃性が向上しており、硬度の異なるシリコーンゴム層を組み合わせることによる耐衝撃性の改善効果が確認できた。
参考例5~7は第3絶縁層3cにフィラーを添加した態様であるが、フィラーを添加する絶縁層は第3絶縁層3cに限定されるものではなく、第1、第2絶縁層に添加しても良い。
参考例8、9]
参考例8、9として、第1絶縁層3a~第3絶縁層3cの一部にフッ素ゴムを使用した絶縁電線1を示す。参考例8、9の具体的な構成は、後掲の表4に示す。導体2は実施例1、2と同じものである。
[比較例2]
先述した比較例2を。参考例8、9に対する比較例として、表4に再掲する。参考例8、9は絶縁層3が厚さ0.5mmの層の3層構造であり、そのうち1層にフッ素ゴムを用いたものであるのに対し、比較例2は絶縁層3が厚さ1.5mmのフッ素ゴム製単層構造となっている。
参考例8、9、比較例2に対して先述した各種試験を行った結果を表4に示す。
Figure 0007038463000004
参考例8、9は、耐油性、耐薬品性に優れたフッ素ゴム層が存在することで、耐油性、耐バッテリー液性の改善効果が確認できた。
比較例2も絶縁層にフッ素ゴムを使用しているため、耐油性、耐バッテリー液性は優れているが、絶縁層3が単層であるため、耐引裂き性は参考例8、9よりも劣る結果となった。
参考例1、2、8、9はシリコーンゴムとフッ素ゴムとで、絶縁層3を形成した態様であるが、本発明においては絶縁電線の使用場面に応じて、フッ素ゴム以外に、EPDMゴム、アクリルゴムといった各種のゴム材料を適宜選択して使用しても良い。
以上の例は、本発明の一例に過ぎず、本発明の思想の範囲内であれば、種々の変更および応用が可能であり、適宜変更されて供されることは言うまでもない。
本発明は特に、自動車・電気電子機器等に使用される、高電圧電力ケーブルに好適なものであるが、利用用途はこれらに限定されるものでなく、その他のケーブル、絶縁電線に本発明を適用しても良い。
1、1’ 絶縁電線
2 導体
3 絶縁層
3a 第1絶縁層
3b 第2絶縁層
3c 第3絶縁層

Claims (7)

  1. 導体の周囲に絶縁層を被覆した絶縁電線であって、該絶縁層は複数の層が積層されて構成されているとともに、該絶縁層のうち該導体を直接被覆する第1絶縁層は第1シリコーンゴム材料で形成され、該第1絶縁層の周囲に積層される第2絶縁層は第2シリコーンゴム材料で形成され、該第1絶縁層の肉厚は該第2絶縁層の肉厚以上であり、該第1絶縁層と該第2絶縁層とが一体化され、該第2シリコーンゴム材料のフィラー未添加の状態における硬度は第1シリコーンゴム材料よりも大きいことを特徴とする絶縁電線。
  2. 該第2絶縁層の周囲にゴム材料で形成された第3絶縁層が積層されていることを特徴とする、請求項1に記載の絶縁電線。
  3. 該第2絶縁層と該第3絶縁層とが一体化されていることを特徴とする、請求項2に記載の絶縁電線。
  4. 該第1絶縁層、及び該第2絶縁層の少なくとも1層に、フィラーが添加されていることを特徴とする、請求項1~3に記載の絶縁電線。
  5. 該第1~第3絶縁層の少なくとも1層に、フィラーが添加されていることを特徴とする、請求項2または3に記載の絶縁電線。
  6. 該フィラーの形状が鱗片状であることを特徴とする、請求項4または5に記載の絶縁電線。
  7. 該鱗片状フィラーの長手方向が、該絶縁電線の長さ方向に配向していることを特徴とする、請求項6に記載の絶縁電線。
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