JP2012074173A - 絶縁電線 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐熱性に優れた架橋シリコーンゴムを含む絶縁層を有する絶縁電線において、高い温度で絶縁層におけるゴムの架橋反応を行った場合であっても、発泡による外観不良が発生せず、未架橋の状態でも粘着し難くハンドリング性の良好な絶縁電線を提供する。
【解決手段】導体の周囲が架橋ゴムを含む少なくとも2層の絶縁層で被覆されている絶縁電線であって、内層が架橋シリコーンゴムを含む絶縁層であり、外層が架橋アクリルゴムを含む絶縁層であり、少なくとも内層又は外層に難燃剤として水酸化マグネシウムを含有せしめて絶縁電線を構成した。
【選択図】なし
【解決手段】導体の周囲が架橋ゴムを含む少なくとも2層の絶縁層で被覆されている絶縁電線であって、内層が架橋シリコーンゴムを含む絶縁層であり、外層が架橋アクリルゴムを含む絶縁層であり、少なくとも内層又は外層に難燃剤として水酸化マグネシウムを含有せしめて絶縁電線を構成した。
【選択図】なし
Description
本発明は、絶縁電線に関し、更に詳しくは特に自動車、電気・電子機器等に好適に使用される耐熱性に優れた絶縁電線に関する。
自動車、電気・電子機器等に使用される部材や絶縁材料には、機械特性、難燃性、耐熱性、耐寒性等の種々の特性が要求されている。従来、そのような材料としてポリ塩化ビニル化合物や、分子中に臭素原子や塩素原子を含むハロゲン系難燃剤を配合したコンパウンドが主として使用されてきた。
このようなハロゲン原子を含む材料は、焼却廃棄した際に多量の腐食ガスを発生する虞がある。このため特許第3555101号公報(特許文献1)に記載されているように、腐食ガスが発生する虞のないノンハロゲン系難燃材料が提案されている。
上記従来の特許文献1に記載されているノンハロゲン難燃材料においては、シリコーンゴムに難燃剤として水酸化アルミニウムを添加している。しかしながら水酸化アルミニウムの添加は、水酸化アルミニウムの脱水温度が低いことから、架橋反応の際に、水酸化アルミニウムが脱水により発泡し、外観不良となる虞があるという問題があった。
また架橋シリコーンゴムを使用した絶縁電線の場合、架橋前の絶縁層組成物は、未架橋のシリコーンゴム特有の粘着性があり、ローラー等に組成物が付着し易く、ハンドリング性が悪いという問題があった。そのため、導体に絶縁層をコーティングした後、粘着性を低減させるために、オンラインである程度絶縁層のシリコーンゴムを架橋させる必要があった。
本発明の解決しようとする課題は、上記問題点を解決しようとするものであり、耐熱性に優れた架橋シリコーンゴムを含む絶縁層を有する絶縁電線において、高い温度で絶縁層におけるゴムの架橋反応を行った場合であっても、発泡による外観不良が発生せず、ハンドリング性の良好な絶縁電線を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明の絶縁電線は、導体の周囲が架橋ゴムを含む少なくとも2層の絶縁層で被覆されている絶縁電線であって、内層が架橋シリコーンゴムを含む絶縁層であり、外層が架橋アクリルゴムを含む絶縁層であり、少なくとも内層又は外層に難燃剤として水酸化マグネシウムを含有することを要旨とするものである。
上記絶縁電線において、前記内層の厚みが絶縁層全体の厚みの1/2以上であることが好ましい。
上記絶縁電線において、前記難燃剤を含有する絶縁層が、前記内層であることが好ましい。
上記絶縁電線において、前記表面処理水酸化マグネシウムの前記絶縁層中の含有量が、前記架橋ゴム100質量部に対し、0.1〜100質量部の範囲内であることが好ましい。
上記絶縁電線において、前記表面処理水酸化マグネシウムの有機高分子表面処理剤が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、及びそれらの誘導体からなる群から選択されるいずれか1種類以上を含有することが好ましい。
上記絶縁電線に置いて、前記表面処理水酸化マグネシウムにおける前記有機高分子表面処理剤のコート量が、前記水酸化マグネシウムと前記有機高分子表面処理剤の合計量に対する0.1〜10質量%であることが好ましい。
本発明の絶縁電線は、導体の周囲が内層と外層の少なくとも2層の架橋ゴムを含む絶縁層で被覆されており、内層が架橋シリコーンゴムを含み、外層が架橋アクリルゴムを含むことにより、従来の架橋シリコーンゴムの被覆層のみから絶縁層が構成されている絶縁電線と比較して、被覆層のゴムが未架橋の状態であっても、最外層はアクリルゴムを含有する層であり、シリコーンを含む層が内層に位置し表面に露出しない。そのため、絶縁電線のゴム成分が未架橋の状態でも未架橋シリコーンゴムによる粘着性は問題にならない。本発明の絶縁電線は、ゴム成分が未架橋の状態でも表面が粘着し難いので、ハンドリング性が良好である。その結果、未架橋の状態で取り扱う際にローラー等にゴム成分が付着するおそれがない。
また従来のシリコーンゴムを含む絶縁層の場合、導体にコーティングした後、粘着性低減のため、オンラインである程度架橋する必要があったが、本発明は外層にはアクリルゴムを含む絶縁層が形成されるので、未架橋のアクリルゴムは粘着性が小さいのでハンドリング性に優れ、オンラインで絶縁層を架橋する必要がないという利点がある。
更に本発明の絶縁電線は、前記内層又は外層のいずれか一方の絶縁層に難燃剤として水酸化マグネシウムを含有するものであるから、従来の水酸化アルミニウムを難燃剤として添加したシリコーンゴムを含む絶縁層を有する絶縁電線と比較して、高い温度で絶縁層におけるゴムの架橋反応を行った場合であっても、絶縁層では脱水による発泡が起こらないので外観不良が発生せず、外観の優れた難燃性を有する絶縁電線が得られる。絶縁電線において、外観不良による各種物性の低下が生じる虞はない。
すなわち水酸化マグネシウムは、脱水する温度が水酸化アルミニウムの脱水温度と比較して高温である。水酸化マグネシウムは、シリコーンゴムの架橋反応程度の温度では、水酸化アルミニウムのように脱水することはない。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本実施例の絶縁電線は、導体と、該導体の周囲を被覆する絶縁層とを有している。絶縁層は、導体の周囲を被覆する内層と、該内層の周囲を被覆する外層の2層の絶縁層により構成されている。内層は架橋シリコーンゴムを含む絶縁層であり、外層は架橋アクリルゴムを含む絶縁層である。外層の架橋アクリルゴムを含む絶縁層は、絶縁電線の最外層として、表面に露出している。
さらに、絶縁電線は、内層の架橋シリコーンゴムを含む絶縁層、或いは外層の架橋アクリルゴムを含む絶縁層に、難燃剤として水酸化マグネシウムが有機高分子表面処理剤により表面処理された表面処理水酸化マグネシウムを含有している。表面処理水酸化マグネシウムは、外層に含有していても、内層に含有していても、外層及び内層の両方の絶縁層に含有していても、いずれでもよい。難燃剤を添加する層が外層又は内層のいずれか一方である場合は、難燃剤は、内層の架橋シリコーンゴムを含む絶縁層に添加するのが、耐熱性向上の点から好ましい。
内層である架橋シリコーンゴムを含む絶縁層と、外層である架橋アクリルゴムを含む絶縁層の厚みは特に限定されない。架橋シリコーンゴムを含む絶縁層は、架橋アクリルゴムを含む絶縁層よりも耐熱性が高い。そのため内層である架橋シリコーンゴムを含む絶縁層の厚みを、絶縁層全体の厚みの1/2以上に形成すると、耐熱性が良好である点から好ましい。より好ましい内層の厚みは、絶縁層全体の厚みの55%以上であり、更に好ましくは60%以上である。
絶縁電線は、シリコーンゴムを含む絶縁層組成物或いはアクリルゴムを含む絶縁層組成物を用いて導体或いは絶縁層の周囲に、シリコーンゴムを含む絶縁層及びアクリルゴムを含む絶縁層をそれぞれ押出し被覆した後、加熱等の架橋手段により各絶縁層のシリコーンゴム及びアクリルゴムを架橋することで、架橋シリコーンゴムを含む絶縁層及び架橋アクリルゴムを含む絶縁層が形成される。シリコーンゴムとアクリルゴムは、加熱等により架橋することが可能であるが、上記各絶縁層組成物には、必要に応じ架橋剤(架硫剤)等を添加してもよい。
上記シリコーンゴムを含む絶縁層組成物に用いられるシリコーンゴムは、未架橋シリコーンゴムが用いられる。未架橋シリコーンゴムは、架橋剤を混練した後、加熱架橋させることで弾性体となるミラブル型(加熱架橋型)、或いは架橋前は液状である液状ゴム型のいずれを用いてもよい。液状ゴム型シリコーンゴムは、室温付近で架橋が可能な室温架橋型(RTV)と、混合後100℃付近で加熱すると架橋する低温架橋型(LTV)がある。
上記シリコーンゴムを含む絶縁層組成物において用いるシリコーンゴムは、ミラブル型シリコーンゴムを用いることが好ましい。これは、液状ゴム型シリコーンゴムは、架橋温度が通常120℃程度と低温であるため、安定性が低く混練の際の発熱を低く抑制する必要があり、温度の管理などが煩わしくなる虞がある。これに対しミラブル型シリコーンゴムは、架橋温度が180℃以上と比較的高温であり安定性が良いので、混練の際の混合がし易く、作業性に優れるという利点がある。ミラブル型シリコーンゴムは、直鎖状のオルガノポリシロキサンを主原料(生ゴム)として、補強充填剤、増量充填剤、分散促進剤、その他添加剤等を配合したゴムコンパウンドとして市販されているものを用いてもよい。
架橋シリコーンゴムは、架橋アクリルゴムよりも耐熱性が優れている。しかし、未架橋の状態ではシリコーンゴム特有の粘着性がある、これに対し架橋アクリルゴムは耐熱性が、ある程度優れていると共に、未架橋の状態ではシリコーンゴムのような粘着性の問題がない。上記アクリルゴムを含む絶縁層組成物において用いるアクリルゴムは、アクリル酸エステルを主成分とする弾性体であり、架橋アクリルゴムは耐熱性、柔軟性等が優れている。アクリルゴムは加熱することで架橋することが可能である。上記アクリルゴムを含む絶縁層がシリコーンゴムを含む絶縁層を被覆して最表層に位置しているので、未架橋のシリコーンゴム特有の粘着性を改良することができる。アクリルゴムを含む絶縁層組成物は、絶縁層組成物を混合後、ペレタイズした場合に、組成物のペレットが粘着しないので、ペレットの取り出し、押出機への投入、ローラーによる運搬等の際のハンドリング性が良好である。
上記アクリルゴムは、例えばアクリル酸エチルを主成分とし、アクリル酸ブチル、アクリロニトリル等の他のモノマーと、架橋を行うためのコモノマーと共重合させたものが挙げられる。アクリルゴムの架橋を行うためのコモノマーとしては、2−クロロエチルビニルエーテル等の含ハロゲン化合物、グリシジルアクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物、エチリデンノルボルネン等のジエン系化合物等が挙げられる。
絶縁層中の表面処理水酸化マグネシウムの含有量は、架橋シリコーンゴム又は架橋アクリルゴム等の架橋ゴム100質量部に対し、0.1〜100質量部の範囲とするのが好ましい。表面処理水酸化マグネシウムの含有量は、更に好ましくは0.5〜95質量部である。絶縁層中の表面処理水酸化マグネシウムの含有量が、0.1質量部未満では難燃性が悪くなる虞があり、また100質量部を超えると、耐熱性が悪くなる虞がある。
表面処理水酸化マグネシウムは、有機高分子表面処理剤で表面処理されているため、ゴム中における分散性が優れている。表面処理水酸化マグネシウムに用いられる表面処理前の水酸化マグネシウムは、海水から結晶成長法で合成するもの、塩化マグネシウムと水酸化カルシウムの反応で合成するもの等の合成水酸化マグネシウム、或いは天然に産出する鉱物を粉砕した天然水酸化マグネシウム等を用いることができる。
表面処理前の未処理の水酸化マグネシウムは、通常、平均粒径が0.1〜20μmであり、好ましくは0.2〜10μm、更に好ましくは0.5〜5μmである。水酸化マグネシウムの平均粒径が、0.1μm未満では二次凝集が起こり易く、組成物の機械的特性が低下する虞がある。また水酸化マグネシウムの平均粒径が20μmを超えると、絶縁電線の絶縁層として用いた場合に、得られた電線の外観が不良になる虞がある。
水酸化マグネシウムの表面処理に用いられる有機高分子表面処理剤は、パラフィン系樹脂、オレフィン系樹脂等の炭化水素系樹脂が好ましい。炭化水素系樹脂は、具体的には、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン等のα−オレフィンの単独重合体、もしくは相互共重合体、或いはそれらの混合物、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)及びそれらの誘導体等が挙げられる。表面処理剤は、少なくとも上記樹脂の1種類以上を含有していればよい。
上記有機高分子表面処理剤は変性されていてもよい。変性剤としては、不飽和カルボン酸やその誘導体を用いることができる。具体的には不飽和カルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。上記不飽和カルボン酸の誘導体としては、無水マレイン酸(MAH)、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステル等が挙げられる。このうちで好ましいのは、マレイン酸、無水マレイン酸等である。なおこれらの有機高分子表面処理剤の変性剤は1種単独で使用しても、2種以上を併用してもいずれでもよい。
有機高分子表面処理剤に酸を導入する方法としては、グラフト法や直接法等が挙げられる。また酸変性量としては、有機高分子表面処理剤の0.1〜20質量%、好ましくは0.2〜10質量%、さらに好ましくは0.2〜5質量%である。
水酸化マグネシウムに対する表面処理剤による表面処理方法としては、特に限定されるものではない。水酸化マグネシウムの表面処理方法は、例えば、所定の粒径の水酸化マグネシウムに表面処理してもよいし、合成時に同時に処理してもよい。また処理方法としては、溶媒を用いた湿式処理でもよいし、溶媒を用いない乾式処理でもよい。湿式処理の際、好適な溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒等を用いることができる。また、絶縁層組成物を調製する際に、表面処理剤を他のゴム原料等の材料と同時に混練してもよい。
表面処理水酸化マグネシウムにおいて、有機高分子表面処理剤の水酸化マグネシウムに対するコート量(表面処理剤の添加量)は、水酸化マグネシウムと有機高分子表面処理剤の合計量に対する0.1〜10質量%の範囲であることが好ましい。有機高分子表面処理剤のコート量が、0.1質量%未満では分散不良となる虞があり、10質量%を超えると凝集する虞がある。
有機高分子表面処理剤により表面処理された表面処理水酸化マグネシウムを用いることにより、ゴムと難燃剤等からなる絶縁層を構成する組成物を混合する場合、ゴム中における分散性に優れ、分散性が良好であるから耐寒性等の優れた絶縁電線が得られる。
更に絶縁層組成物中における難燃剤の分散性が良好であると、絶縁層の組成物を混合する場合にミキサー等で混練する際の負荷が小さくなり、温度上昇を抑制することができる。そのため、温度上昇に敏感な材料等を使用することが可能となり、絶縁電線として利用できる材料の幅が広がるという効果が得られる。
シリコーンゴムを含む絶縁層組成物或いはアクリルゴムを含む絶縁層組成物に添加される架橋剤は、シリコーンゴム又はアクリルゴムの種類、架橋条件等に応じて適宜選択することができ、特に限定されるものではない。上記架橋剤の種類としては、例えば、有機過酸化物等のラジカル発生剤、金属石けん、アミン、チオール、チオカルバミン酸塩、有機カルボン酸等の化合物が挙げられる。架橋剤は、有機過酸化物等の有機過酸化物系架橋剤が、架橋速度の向上の点から好ましい。
上記有機過酸化物としては、例えば、ジへキシルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等のジアルキルパーオキサイド、n−ブチル4,4−ジ(t―ブチルパーオキサイド)バレレート等のパーオキシケタール等が挙げられる。
シリコーンゴムを含む絶縁層組成物、アクリルゴムを含む絶縁層組成物には、シリコーンゴム、アクリルゴム、難燃剤、架橋剤以外に、絶縁層の特性を損なわない範囲で、各種の添加剤等を添加してもよい。このような添加剤としては、例えば電線被覆材として用いられる、一般的な顔料、充填剤、酸化防止剤、老化防止剤等が挙げられる。
また絶縁層組成物における上記架橋剤の配合量は、適宜決定することができる。架橋剤の配合量は、通常、架橋ゴムと架橋剤の合計量に対し、0.01〜10質量%の範囲で添加するのが好ましい。
以下、上記の絶縁電線の製造方法について説明する。絶縁電線は、シリコーンゴムを含む組成物、或いはアクリルゴムを含む組成物として、未架橋のゴム、難燃剤及び架橋剤等の各成分を混練し、導体の周囲に内層、外層を順次押し出し形成し、各絶縁層を形成した後、加熱等の手段で各絶縁層のシリコーンゴムとアクリルゴムを架橋させることで得られる。
上記混練方法としては、例えば、 バンバリーミキサー、加圧ニーダー、混練押し出し機、二軸混練押し出し機、ロール等の通常の混練機で溶融混練して均一に分散する方法等を用いることができる。上記混練の際は、水冷等を行い50℃〜60℃程度で行うことが望ましい。
絶縁層組成物を導体の周囲に押し出して絶縁層を形成するには、通常の絶縁電線の製造に用いられる電線押出成形機等を用いることができる。絶縁電線に用いられる導体は、通常の絶縁電線に使用されるものが利用できる。また絶縁電線の導体の径や絶縁層の厚み等は、特に限定されず、絶縁電線の用途等に応じて適宜決めることができる。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。例えば、上記態様の絶縁電線は、被覆層を2層の絶縁層から構成したが、本発明の絶縁電線は、被覆層を3層以上の絶縁層から構成してもよい。その場合、少なくとも最外層として表面に露出する層は架橋アクリルゴムを含む層とし、架橋シリコーンゴムを含む層が最外層に位置しないように形成すればよい。
また上記態様の絶縁電線は、難燃剤として表面処理水酸化マグネシウムを用いるものであるが、難燃剤は未処理の水酸化マグネシウムを用いてもよい。また絶縁層が3層以上の層から構成されている場合、難燃剤はどの層に含有せしめてもよい。
本発明絶縁電線は、自動車、電子・電気機器に使用される絶縁電線に利用することができる。特に高い耐熱性と難燃性を要求される用途の絶縁電線として好適である。例えば自動車用絶縁電線において、このような高い耐熱性が要求される用途としては、ハイブリッド車や電気自動車のエンジンとバッテリを繋ぐパワーケーブル等のような高電圧、大電流の用途等が挙げられる。
以下、本発明の実施例、比較例を示す。
〔実施例1〜7〕
表1に示す内層の成分組成のシリコーンゴム1〜2、PE5%コート水マグ(表面処理水酸化マグネシウム)、架橋剤等を、バンバリーミキサーを用いて常温で混合して、シリコーンゴム組成物を調製した。また、表1に示す外層の成分組成のアクリルゴム1、2、PE5%コート水マグ(表面処理水酸化マグネシウム)、架橋剤等を、バンバリーミキサーを用いて常温で混合してアクリルゴム組成物を調製した。その後、押出し成形機を用いて、軟銅線を7本撚り合わせた軟銅より線の導体(断面積0.5mm2)の外周に、上記シリコーンゴム組成物を表1に示す厚みに押出し被覆して内層を形成し、該内層の表面に押出し成形機を用いて上記アクリルゴム組成物を押し出して、絶縁層全体の厚みが0.2mmの厚さとなるようにアクリルゴムを含む絶縁層を形成した。その後200℃×4時間加熱処理してシリコーンゴムとアクリルゴムの架橋を完了させて、実施例1〜7の絶縁電線を得た。
〔実施例1〜7〕
表1に示す内層の成分組成のシリコーンゴム1〜2、PE5%コート水マグ(表面処理水酸化マグネシウム)、架橋剤等を、バンバリーミキサーを用いて常温で混合して、シリコーンゴム組成物を調製した。また、表1に示す外層の成分組成のアクリルゴム1、2、PE5%コート水マグ(表面処理水酸化マグネシウム)、架橋剤等を、バンバリーミキサーを用いて常温で混合してアクリルゴム組成物を調製した。その後、押出し成形機を用いて、軟銅線を7本撚り合わせた軟銅より線の導体(断面積0.5mm2)の外周に、上記シリコーンゴム組成物を表1に示す厚みに押出し被覆して内層を形成し、該内層の表面に押出し成形機を用いて上記アクリルゴム組成物を押し出して、絶縁層全体の厚みが0.2mmの厚さとなるようにアクリルゴムを含む絶縁層を形成した。その後200℃×4時間加熱処理してシリコーンゴムとアクリルゴムの架橋を完了させて、実施例1〜7の絶縁電線を得た。
〔比較例1〜7〕
表2に示す被覆材の成分組成のシリコーンゴム1〜4、水酸化アルミニウム、架橋剤等をバンバリーミキサーを用いて常温で混合してシリコーンゴムを含む絶縁層の組成物を調製した。その後、押出し成形機を用いて、軟銅線を7本撚り合わせた軟銅より線の導体(断面積0.5mm2)の表面に押し出して、絶縁層が0.2mmの厚さとなるように形成した。その後200℃×4時間加熱処理してシリコーンゴムの架橋を完了させて、比較例1〜7の絶縁電線を得た。
表2に示す被覆材の成分組成のシリコーンゴム1〜4、水酸化アルミニウム、架橋剤等をバンバリーミキサーを用いて常温で混合してシリコーンゴムを含む絶縁層の組成物を調製した。その後、押出し成形機を用いて、軟銅線を7本撚り合わせた軟銅より線の導体(断面積0.5mm2)の表面に押し出して、絶縁層が0.2mmの厚さとなるように形成した。その後200℃×4時間加熱処理してシリコーンゴムの架橋を完了させて、比較例1〜7の絶縁電線を得た。
実施例1〜7、比較例1〜7の絶縁電線について、耐寒性試験、電線外観試験、ハンドリング性試験を行い評価した。また実施例1〜7については、更に耐熱性試験を行った。その結果を表1及び表2に合わせて示す。尚、表1及び表2の各成分組成、試験方法及び評価は、下記の通りである。
〔表1及び表2の成分〕
・シリコーンゴム1[信越化学社製、商品名「931」]
・シリコーンゴム2[信越化学社製、商品名「541」]
・シリコーンゴム3[東芝社製、商品名「2267」]
・シリコーンゴム4[東芝社製、商品名「2277」]
・アクリルゴム1[電気化学社製、商品名「4200」]
・アクリルゴム2[日本ゼオン社製、商品名「Nipol AR14」]
・PE5%コート水マグ[表面処理水酸化マグネシウム、表面処理剤:ポリエチレン、表面処理量:5質量%]
上記表面処理水酸化マグネシウムの水酸化マグネシウムは、結晶成長法による平均粒径1.0μmのものを用いた。また表面処理剤のポリエチレンは、三井化学社製、商品名「800P」を用いた。また、表面処理量は、ポリエチレンと水酸化マグネシウムの合計量に対する質量%である。
・水酸化アルミニウム[昭和電工社製、商品名「ハイジライトH42」
・架橋剤[日本油脂社製、商品名「パーへキシルD」(ジ−t−へキシルパーオキサイド)]
・シリコーンゴム1[信越化学社製、商品名「931」]
・シリコーンゴム2[信越化学社製、商品名「541」]
・シリコーンゴム3[東芝社製、商品名「2267」]
・シリコーンゴム4[東芝社製、商品名「2277」]
・アクリルゴム1[電気化学社製、商品名「4200」]
・アクリルゴム2[日本ゼオン社製、商品名「Nipol AR14」]
・PE5%コート水マグ[表面処理水酸化マグネシウム、表面処理剤:ポリエチレン、表面処理量:5質量%]
上記表面処理水酸化マグネシウムの水酸化マグネシウムは、結晶成長法による平均粒径1.0μmのものを用いた。また表面処理剤のポリエチレンは、三井化学社製、商品名「800P」を用いた。また、表面処理量は、ポリエチレンと水酸化マグネシウムの合計量に対する質量%である。
・水酸化アルミニウム[昭和電工社製、商品名「ハイジライトH42」
・架橋剤[日本油脂社製、商品名「パーへキシルD」(ジ−t−へキシルパーオキサイド)]
〔耐寒性試験方法〕
JIS C3055に準拠して行った。すなわち作製した絶縁電線を38mmの長さに切断し試験片とした。この試験片を耐寒性試験機に装着し、所定の温度まで冷却し、打撃具で打撃して、試験片の打撃後の状態を観察した。5本の試験片を用いて、5本の試験片が全て割れた温度を耐寒温度とした。
JIS C3055に準拠して行った。すなわち作製した絶縁電線を38mmの長さに切断し試験片とした。この試験片を耐寒性試験機に装着し、所定の温度まで冷却し、打撃具で打撃して、試験片の打撃後の状態を観察した。5本の試験片を用いて、5本の試験片が全て割れた温度を耐寒温度とした。
〔電線外観試験方法〕
電線の外径変動として、外径が0.15〜0,25mmの範囲内である場合は「良好」とし、それ以外は「不良」とした。
電線の外径変動として、外径が0.15〜0,25mmの範囲内である場合は「良好」とし、それ以外は「不良」とした。
〔ハンドリング性試験方法〕
未架橋の組成物をさいころ状に切断して圧力を加えて接着しなかった場合を「良好」とし、それ以外は「不良」とした。
未架橋の組成物をさいころ状に切断して圧力を加えて接着しなかった場合を「良好」とし、それ以外は「不良」とした。
〔耐熱性試験方法〕
絶縁電線を200℃の恒温槽に1日入れた後の被覆を観察し、被覆がぼろぼろになるかどうかで判断した。まったく異常がない場合を「◎」とし、ほとんど異常がない場合を「○」とした。
絶縁電線を200℃の恒温槽に1日入れた後の被覆を観察し、被覆がぼろぼろになるかどうかで判断した。まったく異常がない場合を「◎」とし、ほとんど異常がない場合を「○」とした。
実施例1〜7の絶縁電線は表1に示すように、いずれも耐寒性、電線外観及びハンドリング性が良好であった。また耐熱性試験の結果は、内層の厚みが厚い実施例3、4が、特に優れていた。これに対し比較例1〜7の絶縁電線は表2に示すように、難燃剤として水酸化アルミニウムを用いたものであるため、架橋時の加熱による発泡により電線外観が不良であり、耐寒性も低いものであった。更に比較例1〜7の絶縁電線は、ハンドリング性が不良であった。
Claims (7)
- 導体の周囲が架橋ゴムを含む少なくとも2層の絶縁層で被覆されている絶縁電線であって、内層が架橋シリコーンゴムを含む絶縁層であり、外層が架橋アクリルゴムを含む絶縁層であり、少なくとも内層又は外層に難燃剤として水酸化マグネシウムを含有することを特徴とする絶縁電線。
- 前記内層の厚みが絶縁層全体の厚みの1/2以上であることを特徴とする請求項1記載の絶縁電線。
- 前記難燃剤を含有する絶縁層が、前記内層であることを特徴とする請求項1又は2記載の絶縁電線。
- 前記難燃剤が有機高分子表面処理剤により表面処理された表面処理水酸化マグネシウムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の絶縁電線。
- 前記表面処理水酸化マグネシウムの前記絶縁層中の含有量が、前記架橋ゴム100質量部に対し、0.1〜100質量部の範囲内であることを特徴とする請求項4記載の絶縁電線。
- 前記表面処理水酸化マグネシウムの有機高分子表面処理剤が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、及びそれらの誘導体からなる群から選択されるいずれか1種類以上を含有することを特徴とする請求項4又は5に記載の絶縁電線。
- 前記表面処理水酸化マグネシウムにおける前記有機高分子表面処理剤のコート量が、前記水酸化マグネシウムと前記有機高分子表面処理剤の合計量に対する0.1〜10質量%であることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の絶縁電線。
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