JP2012221607A - 絶縁電線 - Google Patents

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Abstract

【課題】架橋シリコーンゴムを含む絶縁層を有する絶縁電線において、架橋反応時に発泡することに起因する絶縁層の外観不良による各種物性の低下を抑えるとともに、耐寒性や耐摩耗性にも優れる絶縁電線を提供すること。
【解決手段】導体の周囲が架橋シリコーンゴムを含む絶縁層で被覆されている絶縁電線において、絶縁層が、有機高分子よりなる表面処理剤により水酸化マグネシウムが表面処理された表面処理水酸化マグネシウムおよびシリカ粉末を含有している。
【選択図】なし

Description

本発明は絶縁電線に関し、さらに詳しくは、自動車等の車両に好適に用いられる絶縁電線に関するものである。
自動車等の車両に使用される絶縁電線の絶縁材料には、機械特性、難燃性、耐熱性、耐寒性等の種々の特性が要求される。従来、この種の絶縁材料には、塩化ビニル樹脂やハロゲン系難燃剤を配合したコンパウンドなどのハロゲンを含むものが良く用いられている。
この種の絶縁材料は、ハロゲンを含むことから、焼却廃棄した場合に腐食性ガスを発生することがある。そこで、環境保護などの観点から、ハロゲンを含まない絶縁材料を用いる試みがある。
例えば特許文献1には、絶縁電線の絶縁材料として、未架橋のシリコーンゴムに水酸化アルミニウムを配合したノンハロゲン系の絶縁材料を用いることが記載されている。このノンハロゲン系の絶縁材料は、未架橋のシリコーンゴムを含むことから、導体の外周を被覆した後、加熱により未架橋のシリコーンゴムを架橋させる必要がある。
特許第3555101号公報
しかしながら、特許文献1に記載の絶縁材料では、未架橋のシリコーンゴムを架橋させる際の加熱により、水酸化アルミニウムの結晶水が放出されて脱水が起こり、発生した水によって絶縁材料が発泡するという問題がある。絶縁材料が発泡すると、絶縁層が外観不良となり、各種物性が低下するおそれがある。また、ゴム材料(シリコーンゴム)を用いているため、例えば塩化ビニル樹脂を用いた場合などに比べ、絶縁層が軟らかく、摩耗しやすいという問題がある。
本発明の解決しようとする課題は、架橋シリコーンゴムを含む絶縁層を有する絶縁電線において、架橋時に発泡することに起因する絶縁層の外観不良による各種物性の低下を抑えるとともに、耐寒性や耐摩耗性にも優れる絶縁電線を提供することにある。
上記課題を解決するため本発明に係る絶縁電線は、導体の周囲が架橋シリコーンゴムを含む絶縁層で被覆されている絶縁電線において、前記絶縁層が、有機高分子よりなる表面処理剤により水酸化マグネシウムが表面処理された表面処理水酸化マグネシウムとシリカ粉末とを含有していることを要旨とするものである。
この際、シリカ粉末の平均粒径が50μm以下であることが望ましい。また、シリカ粉末の含有量が、架橋シリコーンゴム100質量部に対し、0.1〜100質量部の範囲内であることが望ましい。
そして、表面処理水酸化マグネシウムの絶縁層中の含有量が、架橋シリコーンゴム100質量部に対し、0.1〜100質量部の範囲内であることが好ましい。
そして、表面処理水酸化マグネシウムの表面処理剤としての有機高分子が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、およびそれらの誘導体から選択される1種類以上であることが好ましい。
このとき、有機高分子よりなる表面処理剤の水酸化マグネシウムへのコート量が、表面処理水酸化マグネシウム全体に占める割合として、0.1〜10質量%の範囲内であることが好ましい。
本発明に係る絶縁電線は、架橋シリコーンゴムを含む絶縁層に、有機高分子よりなる表面処理剤により水酸化マグネシウムが表面処理された表面処理水酸化マグネシウムとシリカ粉末とを含有している。
水酸化マグネシウムは、シリコーンゴムの架橋時の加熱では、水酸化アルミニウムのように脱水することはない。すなわち水酸化マグネシウムが脱水する温度は、水酸化アルミニウムが脱水する温度と比較して高温であり、シリコーンゴムの加熱架橋の温度では水酸化アルミニウムのように脱水するおそれはない。したがって、本発明に係る絶縁電線によれば、水酸化マグネシウムの脱水による絶縁層の外観不良は発生せず、良好な外観が得られる。これにより、各種物性の低下が抑えられる。
また、水酸化マグネシウムは、有機高分子よりなる表面処理剤により表面処理されているため、シリコーンゴム中における水酸化マグネシウムの分散性に優れる。これにより、耐寒性に優れる。このように水酸化マグネシウムの分散性が良好であると、シリコーンゴムと水酸化マグネシウムとを混練する際の負荷が小さくなり、混練時の温度上昇を抑えることができる。これにより、温度上昇に敏感な材料等を使用することが可能となり、絶縁電線として利用できる材料の幅が広がるという効果が得られる。
さらに、水酸化マグネシウムとともにシリカ粉末を用いることで、難燃性を維持しつつ、絶縁層にゴム材料を用いた場合の耐摩耗性の低下を抑えることができる。
この際、シリカ粉末の平均粒径が50μm以下であると、より一層、耐摩耗性に優れる。また、シリカ粉末の含有量が特定範囲内にあると、耐摩耗性の向上を図りやすい。
次に、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明に係る絶縁電線は、導体と、この導体の周囲を被覆する絶縁層とを有している。絶縁層は、架橋シリコーンゴムと、難燃剤としての水酸化マグネシウムと、シリカ粉末とを含有している。水酸化マグネシウムは、有機高分子よりなる表面処理剤により表面処理されている。
この絶縁層は、未架橋のシリコーンゴムを含む絶縁層用のゴム組成物を用いて形成される。未架橋のシリコーンゴムは、架橋剤を混練した後、加熱架橋させることで弾性体となるミラブル型(加熱架橋型)、或いは架橋前は液状である液状ゴム型のいずれを用いてもよい。液状ゴム型シリコーンゴムは、室温付近で架橋が可能な室温架橋型(RTV)と、混合後100℃付近で加熱すると架橋する低温架橋型(LTV)がある。
未架橋のシリコーンゴムとしては、ミラブル型シリコーンゴムが好ましい。ミラブル型シリコーンゴムは、架橋温度が180℃以上と比較的高温であり安定性が良いので、混練の際の混合がし易く、作業性に優れるという利点がある。これに対し、液状ゴム型シリコーンゴムは、架橋温度が通常120℃程度と低温であるため、安定性が低く混練の際の発熱を低く抑制する必要があり、温度の管理などが煩わしくなるおそれがある。ミラブル型シリコーンゴムは、直鎖状のオルガノポリシロキサンを主原料(生ゴム)として、補強充填剤、増量充填剤、分散促進剤、その他添加剤などを配合したゴムコンパウンドとして市販されているものを用いてもよい。
水酸化マグネシウムは、海水から結晶成長法で合成するもの、塩化マグネシウムと水酸化カルシウムの反応で合成するものなどの合成水酸化マグネシウム、或いは天然に産出する鉱物を粉砕した天然水酸化マグネシウムなどを用いることができる。
水酸化マグネシウムの平均粒径は、0.1〜20μmの範囲内であることが好ましい。水酸化マグネシウムの平均粒径がこの範囲内にあれば、絶縁層の機械特性に影響を与えにくい。例えば水酸化マグネシウムの平均粒径が0.1μm未満の場合には、水酸化マグネシウム粒子の二次凝集が起こり易い。絶縁層中における水酸化マグネシウム粒子の分散性が低下すると、絶縁層の機械特性の低下が起こりやすい。また、耐寒性の低下が起こりやすい。例えば水酸化マグネシウムの平均粒径が20μmを超える場合には、絶縁層の外観が悪くなるおそれがある。水酸化マグネシウムの平均粒径としては、好ましくは0.2〜10μm、更に好ましくは0.5〜5μmである。
表面処理剤としての有機高分子は、パラフィン系樹脂、オレフィン系樹脂などの炭化水素系樹脂が好ましい。炭化水素系樹脂は、具体的には、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィンの単独重合体、もしくは相互共重合体、或いはそれらの混合物、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)及びそれらの誘導体などが挙げられる。表面処理剤は、少なくとも上記樹脂の1種類以上を含有していればよい。
表面処理剤としての有機高分子は変性されていてもよい。変性剤としては、不飽和カルボン酸やその誘導体を用いることができる。具体的には不飽和カルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。不飽和カルボン酸の誘導体としては、無水マレイン酸(MAH)、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステルなどが挙げられる。このうちで好ましいのは、マレイン酸、無水マレイン酸などである。なお、これらの表面処理剤としての有機高分子の変性剤は1種単独で使用しても、2種以上を併用してもいずれでもよい。
表面処理剤としての有機高分子に酸を導入する方法としては、グラフト法や直接法などが挙げられる。また酸変性量としては、表面処理剤としての有機高分子の0.1〜20質量%、好ましくは0.2〜10質量%、さらに好ましくは0.2〜5質量%である。
水酸化マグネシウムに対する表面処理剤による表面処理方法としては、特に限定されるものではない。水酸化マグネシウムの表面処理方法は、例えば、所定の粒径の水酸化マグネシウムに表面処理してもよいし、合成時に同時に処理してもよい。また処理方法としては、溶媒を用いた湿式処理でもよいし、溶媒を用いない乾式処理でもよい。湿式処理の際、好適な溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒などを用いることができる。また、絶縁層の組成物を調製する際に、表面処理剤を他のゴム原料などの材料と同時に混練してもよい。
表面処理剤の水酸化マグネシウムへのコート量(表面処理剤の添加量)は、表面処理水酸化マグネシウム全体に占める割合として、0.1〜10質量%の範囲であることが好ましい。有機高分子よりなる表面処理剤のコート量が、0.1質量%未満では分散不良となるおそれがあり、10質量%を超えると凝集するおそれがある。
表面処理水酸化マグネシウムの含有量は、架橋ゴム100質量部に対し、0.1〜100質量部の範囲であることが好ましい。表面処理水酸化マグネシウムの含有量は、さらに好ましくは0.5〜95質量部である。表面処理水酸化マグネシウムの含有量が、0.1質量部未満では絶縁層の難燃性が悪くなるおそれがあり、また100質量部を超えると、絶縁層の耐熱性が悪くなるおそれがある。
シリカ粉末としては、天然シリカや合成シリカを挙げることができる。また、結晶性シリカや非晶質性シリカを挙げることができる。また、球状シリカや非球状シリカを挙げることができる。合成シリカとしては、乾式法により合成された合成シリカや湿式法により合成された合成シリカを挙げることができる。
シリカ粉末の平均粒径は、50μm以下であることが好ましい。シリカ粉末の平均粒径が50μm以下であると、特に耐摩耗性に優れる。より好ましくは45μm以下、さらに好ましくは40μm以下である。一方、シリカ粉末の平均粒径の下限値は、特に限定されるものではないが、取り扱い性に優れるなどの観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1.0μm以上である。
シリカ粉末の含有量は、架橋シリコーンゴム100質量部に対し0.1〜100質量部の範囲内であることが好ましい。より好ましくは1〜95質量部の範囲内、さらに好ましくは5〜90質量部の範囲内である。シリカ粉末の含有量が特定範囲内にあると、耐摩耗性の向上を図りやすい。シリカ粉末の含有量が0.1質量部未満では、耐摩耗性を高める効果が低下しやすい。また、シリコーンゴムとの混練に時間がかかりやすい。一方、シリカ粉末の含有量が100質量部を超えると、耐摩耗性への影響は少ないが、破断伸びが悪化するおそれがある。この場合、耐寒性に影響する場合がある。
シリコーンゴムにシリカ粉末を配合することにより、耐摩耗性が向上する。これは、シリコーンゴムよりも削れにくいシリカ粉末を用いているためである。このシリカ粉末がゴム組成物から脱落することによってゴム組成物の摩耗が発生する。シリカ粉末は、シリコーンゴムに対して親和性を有する。このため、シリカ粉末はシリコーンゴムへの密着性に優れる。これにより、シリカ粉末はゴム組成物から脱落しにくくなっている。本発明においては、ベースとなるゴム材料がシリコーンゴムであることを巧みに利用して、これと親和性を有するシリカ粉末を補強材として用いることにより耐摩耗性を向上させている。このように軟らかいゴム材料を用いた組成物であっても、耐摩耗性を高めることで絶縁電線の被覆材に適用することができる。
シリカ粉末としては、例えば龍森社のクリスタライト5X(平均粒径1.0μm)、クリスタライトVX−S2(平均粒径5.0μm)、キクロスMSR−3500−TN(平均粒径32μm)、KA−LC−75(平均粒径80μm)などを挙げることができる。
絶縁層用のゴム組成物において、未架橋のシリコーンゴムは、加熱等により架橋することが可能であるが、架橋剤(加硫剤)を用いて架橋しても良い。
架橋剤は、未架橋のゴムの種類や架橋条件などに応じて適宜選択することができる。架橋剤としては、例えば、有機過酸化物などのラジカル発生剤、金属石けん、アミン、チオール、チオカルバミン酸塩、有機カルボン酸などの化合物を挙げることができる。架橋剤としては、有機過酸化物などが、架橋速度の向上の点から好ましい。
有機過酸化物としては、例えば、ジへキシルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンなどのジアルキルパーオキサイド、n−ブチル4,4−ジ(t―ブチルパーオキサイド)バレレートなどのパーオキシケタールなどを挙げることができる。
架橋剤の配合量は、適宜決定することができる。架橋剤の配合量は、例えば、未架橋のゴムと架橋剤の合計量に対し、0.01〜10質量%の範囲で配合するのが好ましい。
絶縁層は、架橋ゴム、特定の難燃剤の他に、絶縁層の特性を損なわない範囲で、各種の添加剤を含有していても良い。このような添加剤としては、絶縁電線の絶縁層に用いられる一般的な添加剤を挙げることができる。具体的には、他の難燃剤、架橋剤、充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、顔料などを挙げることができる。
本発明に係る絶縁電線は、例えば次のようにして製造することができる。すなわち、まず、絶縁層を形成するための絶縁層用のゴム組成物を調製する。次いで、調製したゴム組成物を導体の周囲に押出して、導体の周囲に未架橋ゴムを含む被覆層を成形する。次いで、加熱などの架橋手段により、被覆層の未架橋ゴムを架橋する。これにより、導体の周囲が架橋ゴムを含む絶縁層により被覆された絶縁電線を製造することができる。また、本発明に係る絶縁電線は、導体の周囲に絶縁層用のゴム組成物を塗工して被覆層を形成し、加熱などの架橋手段により被覆層の未架橋ゴムを架橋することによっても製造することができる。
絶縁層用のゴム組成物は、未架橋のシリコーンゴムと、水酸化マグネシウムと、シリカ粉末と、必要に応じて配合される架橋剤などの各種添加剤とを混練することにより調製することができる。ゴム組成物の成分を混練する際には、例えば、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、混練押出機、二軸混練押出機、ロールなどの通常の混練機を用いることができる。
絶縁層用のゴム組成物の押出成形には、通常の絶縁電線の製造に用いられる電線押出成形機などを用いることができる。導体は、通常の絶縁電線に使用されるものを利用できる。例えば、銅系材料やアルミニウム系材料よりなる単線の導体や撚線の導体を挙げることができる。また、導体の径や絶縁層の厚みなどは特に限定されず、絶縁電線の用途などに応じて適宜決めることができる。
以上の構成の本発明に係る絶縁電線は、架橋シリコーンゴムを含む絶縁層に、有機高分子よりなる表面処理剤により水酸化マグネシウムが表面処理された表面処理水酸化マグネシウムとシリカ粉末とを含有している。
水酸化マグネシウムは、シリコーンゴムの架橋時の加熱では、水酸化アルミニウムのように脱水することはない。すなわち水酸化マグネシウムが脱水する温度は、水酸化アルミニウムが脱水する温度と比較して高温であり、シリコーンゴムの加熱架橋の温度では水酸化アルミニウムのように脱水するおそれはない。したがって、本発明に係る絶縁電線によれば、水酸化マグネシウムの脱水による絶縁層の外観不良が発生せず、良好な外観が得られる。これにより、各種物性の低下が抑えられる。
また、水酸化マグネシウムは、有機高分子よりなる表面処理剤により表面処理されているため、シリコーンゴム中における水酸化マグネシウムの分散性に優れる。これにより、耐寒性に優れる。このように水酸化マグネシウムの分散性が良好であると、シリコーンゴムと水酸化マグネシウムとを混練する際の負荷が小さくなり、混練時の温度上昇を抑えることができる。これにより、温度上昇に敏感な材料等を使用することが可能となり、絶縁電線として利用できる材料の幅が広がるという効果が得られる。
さらに、水酸化マグネシウムとともにシリカ粉末を用いることで、難燃性を維持しつつ、絶縁層にゴム材料を用いた場合の耐摩耗性の低下を抑えることができる。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。例えば、上記態様の絶縁電線は、単一層の絶縁層から構成したが、本発明の絶縁電線は、2層以上の絶縁層から構成してもよい。
本発明に係る絶縁電線は、自動車、電子・電気機器に使用される絶縁電線に利用することができる。特に高い耐熱性と難燃性を要求される用途の絶縁電線として好適である。例えば自動車用絶縁電線において、このような高い耐熱性が要求される用途としては、ハイブリッド車や電気自動車のエンジンとバッテリを繋ぐパワーケーブルなどのような高電圧、大電流の用途などが挙げられる。
以下、本発明の実施例、比較例を示す。
〔実施例1〜11〕
表1に示す配合組成となるように各成分を混合することにより、未架橋のシリコーンゴム、水酸化マグネシウムおよびシリカ粉末を含む絶縁層用のゴム組成物を調製した。次いで、押出成形機を用いて、軟銅線を7本撚り合わせた軟銅撚線の導体(断面積0.5mm)の外周に絶縁層用のゴム組成物を押出することにより、未架橋のゴムを含む被覆層を形成した。次いで、200℃×4時間の条件で被覆層の熱処理を行うことにより、未架橋のゴムを架橋させた。これにより、実施例1〜11の絶縁電線を得た。
〔比較例1〜7〕
表2に示す配合組成となるように各成分を混合することにより、未架橋のシリコーンゴムおよび水酸化アルミニウムを含む絶縁層用の組成物を調製した。次いで、実施例と同様にして、比較例1〜7の絶縁電線を得た。
実施例1〜11、比較例1〜7の絶縁電線について、耐寒性試験、電線の外観観察、耐摩耗性試験を行い、評価した。その結果を表1及び表2に合わせて示す。尚、表1及び表2の各成分組成、試験方法及び評価は、下記の通りである。
〔表1及び表2の成分〕
・シリコーンゴム1:信越化学社製、931(組成:ジメチルシロキサン)
・シリコーンゴム2:信越化学社製、541(組成:ジメチルシロキサン)
・シリコーンゴム3:東芝社製、2267(組成:ジメチルシロキサン)
・シリコーンゴム4:東芝社製、2277(組成:ジメチルシロキサン)
・PE5%コート水酸化マグネシウム
水酸化マグネシウム:結晶成長法、平均粒径1.0μm
表面処理剤:ポリエチレン(三井化学社製、800P)
表面処理剤の使用量:ポリエチレンと水酸化マグネシウムの合計量の5質量%
・シリカ粉末1:龍森社製、MSR−3500−TN、平均粒径32μm
・シリカ粉末2:龍森社製、KA−LC−75、平均粒径80μm
・架橋剤:日本油脂社製、パーへキシルD(ジ−t−へキシルパーオキサイド)
・水酸化アルミニウム:昭和電工社製、ハイジライトH42
〔耐寒性試験方法〕
JIS C3055に準拠して行った。すなわち作製した絶縁電線を38mmの長さに切断し試験片とした。この試験片を耐寒性試験機に装着し、所定の温度まで冷却し、打撃具で打撃して、試験片の打撃後の状態を観察した。5本の試験片を用いて、5本の試験片が全て割れた温度を耐寒温度とした。
〔押出外観の評価〕
製品の表面に凹凸およびザラツキが見られない場合を良好「○」、製品の表面に凹凸およびザラツキが見られる場合を不良「×」とした。
〔耐摩耗性試験方法〕
社団法人自動車技術規格「JASO D618」に準拠して、ブレード往復法により試験を行った。すなわち、実施例、比較例の絶縁電線を750mmの長さに切り出して試験片とした。そして、23±5℃の室温下で試験片の被覆材(絶縁層)に対し軸方向に10mm以上の長さでブレードを毎分50回の速さで往復させ、導体に接するまでの往復回数を測定した。この際、ブレードにかかる荷重は、7Nとした。回数については200回以上のものを合格「○」とし、200回未満のものを不合格「×」とした。また、回数が300回以上のものは特に優れる「◎」とした。
Figure 2012221607
Figure 2012221607
表1に示すように実施例1〜11の絶縁電線は、いずれも電線の外観及び耐寒性が良好で耐摩耗性に優れることが確認できた。特に、シリカ粉末の平均粒径が50μm以下の場合には、より一層、耐摩耗性に優れることが確認できた。
これに対し、比較例1〜7の絶縁電線は、表2に示すように、絶縁層の表面に発泡が見られ外観が不良であった。また、比較例1〜7の絶縁電線の耐寒性、耐摩耗性は、それぞれ対応する実施例1〜7の絶縁電線の耐寒性、耐摩耗性と比較して、いずれも実施例よりも低下していた。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。

Claims (6)

  1. 導体の周囲が架橋シリコーンゴムを含む絶縁層で被覆されている絶縁電線において、
    前記絶縁層が、有機高分子よりなる表面処理剤により水酸化マグネシウムが表面処理された表面処理水酸化マグネシウムとシリカ粉末とを含有していることを特徴とする絶縁電線。
  2. 前記シリカ粉末の平均粒径が、50μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の絶縁電線。
  3. 前記シリカ粉末の含有量が、前記架橋シリコーンゴム100質量部に対し、0.1〜100質量部の範囲内であることを特徴とする請求項1または2に記載の絶縁電線。
  4. 前記表面処理水酸化マグネシウムの含有量が、前記架橋シリコーンゴム100質量部に対し、0.1〜100質量部の範囲内であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の絶縁電線。
  5. 前記表面処理剤としての有機高分子が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、およびそれらの誘導体から選択される1種類以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の絶縁電線。
  6. 前記表面処理剤の水酸化マグネシウムへのコート量が、前記表面処理水酸化マグネシウム全体に占める割合として、0.1〜10質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の絶縁電線。
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