JP2016219111A - 絶縁電線 - Google Patents

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Abstract

【課題】フッ素樹脂を含む絶縁層を有する絶縁電線において、耐熱性の低下を抑えつつ柔軟性を向上させた絶縁電線を提供すること。【解決手段】融点250℃以下のフッ素樹脂および架橋シリコーンゴムを含む絶縁層で導体の周囲が被覆されてなる絶縁電線とする。フッ素樹脂としては、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニリデン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン重合体、変性パーフルオロアルコキシ樹脂などが好適である。【選択図】なし

Description

本発明は絶縁電線に関し、さらに詳しくは、自動車等の車両に好適に用いられる絶縁電線に関するものである。
耐熱性、耐薬品性に優れるフッ素樹脂は、自動車等の車両に使用される絶縁電線の絶縁材料として用いられることがある。
特開2011−18634号公報
従来知られるフッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルコキシトリフルオロエチレンの共重合体(PFA)がある。これらは耐熱性に優れるが、柔軟性に劣っている。このため、これらは細径電線の絶縁材料として適用することができても、太物のパワーケーブルなどの絶縁材料としては、柔軟性の不足により適用することが困難である。
フッ素樹脂よりも柔軟性に優れるフッ素ゴムを絶縁材料として用いる場合、ゴムとして実用的な特性を発揮するために加硫(架橋)が必要であり、加硫(架橋)工程により生産性が悪くなり、製造コストが高くなる。また、フッ素ゴムは加硫(架橋)のために炭素−水素結合を有するので、耐熱性に劣る。また、加硫(架橋)に際し用いる加硫剤(架橋剤)や加硫助剤(架橋助剤)によりフッ素濃度が低下するため、耐熱性が低下するおそれもある。
本発明の解決しようとする課題は、フッ素樹脂を含む絶縁層を有する絶縁電線において、耐熱性の低下を抑えつつ柔軟性を向上させた絶縁電線を提供することにある。
上記課題を解決するため本発明に係る絶縁電線は、融点250℃以下のフッ素樹脂および架橋シリコーンゴムを含む絶縁層で導体の周囲が被覆されてなることを要旨とするものである。
前記フッ素樹脂は、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニリデン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン重合体、変性パーフルオロアルコキシ樹脂の少なくとも1種が好ましい。前記シリコーンゴムの含有量は、前記フッ素樹脂100質量部に対し10〜900質量部の範囲内が好ましい。
本発明に係る絶縁電線によれば、絶縁層において、フッ素樹脂に柔軟成分としてシリコーンゴムを添加しているので、耐熱性の低下を抑えつつ柔軟性を向上させることができる。よって、パワーケーブルなどの太物電線で柔軟化できる。フッ素樹脂の融点が高いので、フッ素樹脂と未架橋シリコーンゴムの混合時の温度でシリコーンゴムを架橋させることができる。これにより、成形時の架橋工程が省略できるため、生産性に優れる。フッ素樹脂の融点が高すぎると、フッ素樹脂と未架橋シリコーンゴムの混合時にフッ素樹脂の架橋が起き、硬くなりすぎてしまうが、フッ素樹脂の融点を250℃以下に抑えているため、その混合時にフッ素樹脂の架橋が抑えられる。これにより、柔軟性を確保することができる。
次に、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明に係る絶縁電線は、導体とこの導体の周囲を被覆する絶縁層とを有している。絶縁層は、融点250℃以下のフッ素樹脂および架橋シリコーンゴムを含む。柔軟成分としてシリコーンゴムを絶縁層に用いることで、耐熱性の低下を抑え、柔軟化することができる。
フッ素樹脂は、融点250℃以下であれば、特に限定されるものではない。フッ素樹脂としては、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニリデン共重合体(THV)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、クロロトリフルオロエチレン重合体(PCTFE)、変性パーフルオロアルコキシ樹脂などが挙げられる。PCTFEはホモポリマーであり、ETFEおよびECTFEは二元共重合体であり、THVは三元共重合体である。フッ素樹脂として上記する1種の重合体を用いてもよいし、2種以上の重合体を用いてもよい。上記するフッ素樹脂のうちでは、低コストである、入手しやすいなどの観点から、ETFE、THV、ECTFEが好ましい。また、より耐熱性に優れるなどの観点から、変性パーフルオロアルコキシ樹脂が好ましい。
ETFEとしては、ダイキン工業のEP−610(融点218℃)、EP−620(融点218℃)、旭硝子のHR−930(融点248℃)、LM−720AP(融点225℃)、LM−730AP(融点225℃)、LM−740AP(融点225℃)などが挙げられる。THVとしては、スリーエムジャパンのTHV500GZ(融点165℃)、THV8151GZ(融点225℃)などが挙げられる。ECTFEとしては、ソルベイのヘイラー902(融点225℃)、ヘイラー901(融点242℃)、ヘイラー300DA(融点242℃)、ヘイラー350LC(融点242℃)、ヘイラー500LC(融点242℃)、ヘイラー513LC(融点242℃)、ヘイラー1450LC(融点242℃)、ヘイラー1400LC(融点242℃)などが挙げられる。PCTFEとしては、ダイキン工業のM−300H(融点212℃)、M−300P(融点212℃)、M−300PL(融点212℃)、M−400H(融点212℃)などが挙げられる。変性パーフルオロアルコキシ樹脂としては、ダイキン工業のLP−1000(融点248℃)、LP−1000AS(融点248℃)、LP−1030(融点246℃)などが挙げられる。
フッ素樹脂の融点は、好ましくは240℃以下、さらに好ましくは230℃以下である。融点よりも20〜30℃低い温度で樹脂が軟化するので、フッ素樹脂の融点が好ましい範囲であれば、シリコーンゴムとの混合時の温度を低くして混合時におけるフッ素樹脂の架橋が抑えられやすい。また、耐熱性を確保するなどの観点から、フッ素樹脂の融点は、好ましくは150℃以上、より好ましくは170℃以上、さらに好ましくは200℃以上である。
シリコーンゴムは、熱硬化型(熱架橋型)シリコーンゴムが好ましく用いられる。熱硬化型シリコーンゴムとしては、ミラブル型、液状ゴム型が挙げられる。ミラブル型シリコーンゴムは、ロール(ロールミル)を用いて成形加工するシリコーンゴムであり、ロール作業で可塑化、加硫剤配合などを行う。液状ゴム型シリコーンゴムは、室温付近で架橋可能な室温架橋型(RTV)、100℃付近の比較的低温で架橋可能な低温架橋型(LTV)がある。シリコーンゴムとしては、耐熱性により優れる、250℃以下の範囲で比較的融点の高い(例えば融点150℃以上の)フッ素樹脂との混合を考慮すると、ミラブル型がより好ましい。混合しやすく、作業性に優れる。ミラブル型シリコーンゴムは、直鎖状のオルガノポリシロキサンを主原料(生ゴム)としてこれに補強充填剤、増量充填剤、分散促進剤、その他の添加剤を配合したゴムコンパウンドとして市販品を用いてもよい。
シリコーンゴムとしては、旭化成ワッカ―シリコーンのR170、R160、R150、R140、R130、R401−50、R401−60、R401−70、R401−80、モメンティブのTSE221−3U、TSE221−4U、TSE221−5U、TSE221−6U、TSE221−7U、TSE221−8U、KCCのSH0030U、SH0040U、SH0050U、SH0060U、SH0070U、SH0080U、SH1032U、SH1040U、SH1050U、SH1060U、SH1070U、SH1080U、信越化学のKE−655−U、KE−675−U、KE−931−U、KE−941−U、KE−951−U、KE−961−U、KE−971−U、KE−981−U、KE−742−U、KE−752−U、KE−762−U、KE−772−U、KE−782−U、東レダウコーニングのDY32−366U、DY32−403U、DY32−464U、DY32−502U、DY32−520U、DY32−540U、DY32−541U、DY32−625U、DY32−638Uなどが挙げられる。
シリコーンゴムの含有量は、特に限定されるものではないが、柔軟性をより向上させるなどの観点から、フッ素樹脂100質量部に対し10質量部以上であることが好ましい。より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上である。また、耐熱性、耐摩耗性をより向上させるなどの観点から、フッ素樹脂100質量部に対し900質量部以下であることが好ましい。より好ましくは700質量部以下、さらに好ましくは600質量部以下である。
シリコーンゴムの含有量は、柔軟性と耐熱性、耐摩耗性のバランスに優れるなどの観点から、フッ素樹脂100質量部に対し10〜900質量部の範囲内が好ましい。耐熱性、耐摩耗性がより求められる場合においては、シリコーンゴムの含有量は、フッ素樹脂100質量部に対し10〜300質量部の範囲内が好ましい。より好ましくは10〜100質量部の範囲内、さらに好ましくは10〜70質量部の範囲内である。また、柔軟性がより求められる場合においては、シリコーンゴムの含有量は、フッ素樹脂100質量部に対し70〜900質量部の範囲内が好ましい。より好ましくは100〜900質量部の範囲内、さらに好ましくは300〜900質量部の範囲内である。
シリコーンゴムは、加熱等により架橋することが可能なものであるが、必要に応じ、架橋剤(加硫剤)を用いて架橋してもよい。架橋剤は、特に限定されるものではない。架橋剤としては、有機過酸化物などのラジカル発生剤、金属石鹸、アミン、チオール、チオカルバミン酸塩、有機カルボン酸などが挙げられる。架橋剤としては、架橋速度などの観点から、有機過酸化物が好ましい。架橋剤の配合量は、特に限定されるものではないが、シリコーンゴム、架橋剤、シリコーンゴムコンパウンドに添加される充填剤、添加剤等の合計量に対し、0.01〜10質量%の範囲内であればよい。
有機過酸化物としては、ジへキシルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等のジアルキルパーオキサイド、n−ブチル4,4−ジ(t―ブチルパーオキサイド)バレレート等のパーオキシケタール等が挙げられる。また、日本油脂の製品名で示される、パーヘキシルD、パークミルD、パーヘキサV、パーブチルD、パーブチルC、パーヘキサ25Bなどが挙げられる。
シリコーンゴムの架橋は、耐熱性により優れる、250℃以下の範囲で比較的融点の高い(例えば融点150℃以上の)フッ素樹脂との混合(温度)を考慮すると、架橋剤を用いて180℃程度の温度で実施することが好ましい。そうすると、有機過酸化物の分解温度(1分間半減期温度)は、比較的高温であることが好ましい。よって、有機過酸化物としては、低温タイプのもの(分解温度(1分間半減期温度)が70〜100℃であるもの)より、高温タイプのもの(分解温度(1分間半減期温度)が150〜180℃であるもの)が好ましい。これにより、フッ素樹脂が十分に溶融している状態で混合時にシリコーンゴムを架橋できるため、架橋度、均一架橋性に優れる。
絶縁層は、融点250℃以下のフッ素樹脂および架橋シリコーンゴムを含有する樹脂組成物から形成される。この樹脂組成物には、本発明に係る絶縁電線の耐熱性、柔軟性に影響ない程度であれば、融点250℃以下のフッ素樹脂および架橋シリコーンゴム以外のポリマー成分が含有されてもよいが、本発明に係る絶縁電線の耐熱性、柔軟性を考慮すると、この樹脂組成物には、融点250℃以下のフッ素樹脂および架橋シリコーンゴム以外のポリマー成分が含有されていないほうが好ましい。なお、融点250℃以下のフッ素樹脂および架橋シリコーンゴム以外のポリマー成分としては、電線特性に優れるなどの観点から、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)などが挙げられる。
上記樹脂組成物には、融点250℃以下のフッ素樹脂および架橋シリコーンゴムなどのポリマー成分の他に、電線被覆材に配合される各種添加剤を配合することができる。この種の添加剤としては、難燃剤、加工助剤、滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、安定剤、充填剤(フィラー)などが挙げられる。
充填剤(フィラー)としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルク、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウムなどが挙げられる。これらは、上記樹脂組成物の耐摩耗性を向上する。フィラーの平均粒子径は、上記樹脂組成物中の分散性の観点から、1.0μm以下であることが好ましい。また、取扱い性などの観点から、0.01μm以上であることが好ましい。フィラーの平均粒子径は、レーザー光散乱法により測定することができる。
フィラーの含有量としては、耐摩耗性に優れるなどの観点から、融点250℃以下のフッ素樹脂および架橋シリコーンゴムなどのポリマー成分100質量部に対し、0.1質量部以上であることが好ましい。より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1.0質量部以上である。一方、外観悪化を抑える、柔軟性、耐寒性を確保するなどの観点から、融点250℃以下のフッ素樹脂および架橋シリコーンゴムなどのポリマー成分100質量部に対し、100質量部以下であることが好ましい。より好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下である。
充填剤(フィラー)は、凝集を抑える、融点250℃以下のフッ素樹脂および架橋シリコーンゴムとの親和性を高めるなどの観点から、表面処理されていてもよい。表面処理剤としては、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィンの単独重合体、もしくは相互共重合体、或いはそれらの混合物、脂肪酸、ロジン酸、シランカップリング剤などが挙げられる。
上記表面処理剤は、変性されていてもよい。変性剤としては、不飽和カルボン酸やその誘導体を用いることができる。具体的には不飽和カルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。不飽和カルボン酸の誘導体としては、無水マレイン酸(MAH)、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステルなどが挙げられる。このうちで好ましいのは、マレイン酸、無水マレイン酸などである。なお、これらの表面処理剤の変性剤は1種単独で使用しても、2種以上を併用してもいずれでもよい。
表面処理剤に酸を導入する方法としては、グラフト法や直接法などが挙げられる。また酸変性量としては、表面処理剤の0.1〜20質量%、好ましくは0.2〜10質量%、さらに好ましくは0.2〜5質量%である。
表面処理剤による表面処理方法としては、特に限定されるものではない。例えば、上記フィラーに表面処理してもよいし、上記フィラーの合成時に同時に処理してもよい。また処理方法としては、溶媒を用いた湿式処理でもよいし、溶媒を用いない乾式処理でもよい。湿式処理の際、好適な溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒などを用いることができる。また、絶縁層の樹脂組成物を調製する際に、表面処理剤を融点250℃以下のフッ素樹脂およびシリコーンゴムなどの材料と同時に混練してもよい。
炭酸カルシウムには、化学反応によって作られる合成炭酸カルシウムと、石灰石を粉砕して作られる重質炭酸カルシウムとがある。合成炭酸カルシウムは、脂肪酸やロジン酸やシランカップリング剤などの表面処理剤で表面処理を行うことによりサブミクロン以下(数十nm程度)の一次粒子径の微粒子として用いることができる。表面処理された微粒子の平均粒径は一次粒子径で表される。一次粒子径は、電子顕微鏡観察により測定することができる。重質炭酸カルシウムは粉砕品であり、特段、脂肪酸などで表面処理を行わなくてもよく、数百nm〜1μm程度の平均粒径の粒子として用いることができる。炭酸カルシウムとしては、合成炭酸カルシウムおよび重質炭酸カルシウムのいずれを用いることもできる。
炭酸カルシウムとしては、具体的には、例えば、白石カルシウム社製の白艶華CC(平均粒径=0.05μm)、白艶華CCR(平均粒径=0.08μm)、白艶華DD(平均粒径=0.05μm)、Vigot10(平均粒径=0.10μm)、Vigot15(平均粒径=0.15μm)、白艶華U(平均粒径=0.04μm)などが挙げられる。
酸化マグネシウムとしては、具体的には、例えば、宇部マテリアルズ社製のUC95S(平均粒径=3.1μm)、UC95M(平均粒径=3.0μm)、UC95H(平均粒径=3.3μm)などが挙げられる。
水酸化マグネシウムは、海水から結晶成長法で合成するもの、塩化マグネシウムと水酸化カルシウムの反応で合成するものなどの合成水酸化マグネシウム、或いは天然に産出する鉱物を粉砕した天然水酸化マグネシウムなどを用いることができる。上記フィラーとしての水酸化マグネシウムとしては、具体的には、例えば、宇部マテリアルズ社製のUD−650−1(平均粒径=3.5μm)、UD653(平均粒径=3.5μm)などが挙げられる。
絶縁層は、例えば次のようにして形成することができる。すなわち、まず、絶縁層を形成するための絶縁層用の上記樹脂組成物を調製する。次いで、調製した上記樹脂組成物を導体の周囲に押出して、導体の周囲に絶縁層を成形する。上記樹脂組成物は、融点250℃以下のフッ素樹脂およびシリコーンゴムと、必要に応じて配合される架橋剤、フィラーなどの添加剤とを混練することにより調製することができる。上記樹脂組成物の成分を混練する際には、例えば、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、混練押出機、二軸混練押出機、ロールなどの通常の混練機を用いることができる。
絶縁層用の上記樹脂組成物の押出成形には、通常の絶縁電線の製造に用いられる電線押出成形機などを用いることができる。導体は、通常の絶縁電線に使用されるものを利用できる。例えば、銅系材料やアルミニウム系材料よりなる単線の導体や撚線の導体を挙げることができる。また、導体の径や絶縁層の厚みなどは特に限定されず、絶縁電線の用途などに応じて適宜決めることができる。
以上のような本発明に係る絶縁電線によれば、絶縁層において、フッ素樹脂に柔軟成分としてシリコーンゴムを添加しているので、耐熱性の低下を抑えつつ柔軟性を向上させることができる。よって、パワーケーブルなどの太物電線で柔軟化できる。フッ素樹脂の融点が高いので、フッ素樹脂と未架橋シリコーンゴムの混合時の温度でシリコーンゴムを架橋させることができる。これにより、成形時の架橋工程が省略できるため、生産性に優れる。フッ素樹脂の融点が高すぎると、フッ素樹脂と未架橋シリコーンゴムの混合時にフッ素樹脂の架橋が起き、硬くなりすぎてしまうが、フッ素樹脂の融点を250℃以下に抑えているため、その混合時にフッ素樹脂の架橋が抑えられる。これにより、柔軟性を確保することができる。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。例えば、上記態様の絶縁電線は、単一層の絶縁層から構成したが、本発明の絶縁電線は、2層以上の絶縁層から構成してもよい。
本発明に係る絶縁電線は、自動車、電子・電気機器に使用される絶縁電線に利用することができる。特に、フッ素樹脂の耐熱性を維持したまま柔軟性を向上させた絶縁電線であるため、耐熱性および柔軟性が要求されるところに適用される絶縁電線として好適である。このような絶縁電線としては、パワーケーブルなどが挙げられる。パワーケーブルは、ハイブリッド車や電気自動車のエンジンとバッテリーとを繋ぐものであり、高電圧、大電流の電気が流れるため、比較的太物の絶縁電線となる。そして、高い耐熱性と太物でも柔軟性に優れる特性が求められる。
パワーケーブルなどに好適な比較的径が太い絶縁電線の導体断面積は、3mm以上である。この場合、絶縁層の厚みは、導体断面積に応じて適宜設定される。例えば導体断面積が3mmの場合、絶縁層の厚みとしては、0.5mm以上である。また、導体断面積が15mmの場合、絶縁層の厚みとしては、1.0mm以上である。
以下、本発明の実施例、比較例を示す。
〔実施例1〜11〕
表1に示す配合組成となるように、二軸混練機を用い、フッ素樹脂、シリコーンゴム、架橋剤、フィラー(必要に応じて添加される)を200℃で混合した後、ペレタイザーでペレット状に成形して、絶縁層用の組成物を調製した。その後、押出成形機により、軟銅線を171本撚り合わせた軟銅撚線の導体(断面積15mm)の外周に1.1mm厚で押出被覆した。以上により、実施例1〜11の絶縁電線を得た。
〔比較例1〜6〕
実施例と同様に、表2に示すフッ素樹脂を導体(断面積15mm)の外周に押出被覆した。
〔表1及び表2の成分〕
(フッ素樹脂)
・EP−610(ETFE):ダイキン工業製、融点218℃
・HR−930(ETFE):ダイキン工業製、融点248℃
・THV8151GZ(THV):スリーエムジャパン製、融点225℃
・ヘイラー902(ECTFE):ソルベイ製、融点225℃
・LP−1000(変性パーフルオロアルコキシ樹脂):ダイキン工業製、融点248℃
・M−300H(PCTFE):ダイキン工業製、融点212℃
(シリコーンゴム)
・R160:旭化成ワッカ―シリコーン製
・TSE−221−4U:モメンティブ製
・SH0040U:東レダウコーニング製
(フィラー)
・白艶華CC:白石カルシウム製、炭酸カルシウム(平均粒径0.05μm)
(架橋剤)
・パーヘキシルD:日本油脂社製
実施例1〜11、比較例1〜6の絶縁電線について、柔軟性を評価した。また、あわせて耐摩耗性を評価した。その結果を表1〜2に合わせて示す。尚、試験方法及び評価は、下記の通りである。
〔柔軟性試験方法〕
実施例、比較例の絶縁電線を500mmの長さに切り出して試験片とし、曲げ半径100mmに固定した。次いで、ロードセルで応力を印加し、曲げ半径が50mmになるまで押さえたときの最大荷重を測定した。
〔耐摩耗性試験方法〕
社団法人自動車技術規格「JASO D618」に準拠して、ブレード往復法により試験を行った。すなわち、実施例、比較例の絶縁電線を750mmの長さに切り出して試験片とした。そして、23±5℃の室温下で試験片の被覆材(絶縁層)に対し軸方向に10mm以上の長さでブレードを毎分50回の速さで往復させ、導体に接するまでの往復回数を測定した。この際、ブレードにかかる荷重は、7Nとした。回数については1500回以上のものを合格「○」とし、1500回未満のものを不合格「×」とした。また、回数が2000回以上のものは特に優れる「◎」とした。
Figure 2016219111
Figure 2016219111
比較例1〜6では、絶縁層の材料に融点250℃以下のフッ素樹脂を用いているが、柔軟性に劣っている。これに対し、実施例1〜11では、絶縁層の材料に融点250℃以下のフッ素樹脂と架橋シリコーンゴムを用いているため、耐熱性の低下を抑えつつ、柔軟性に優れるものとなっている。また、優れた耐摩耗性も確保されている。また、実施例1〜11では、フッ素樹脂とシリコーンゴムの混合時にシリコーンゴムの架橋を行っており、生産性にも優れる。そして、フッ素樹脂の融点が250℃以下であり、フッ素樹脂とシリコーンゴムの混合温度が低く抑えられているため、混合時にフッ素樹脂の架橋が抑えられ、柔軟性も確保されている。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。

Claims (3)

  1. 融点250℃以下のフッ素樹脂および架橋シリコーンゴムを含む絶縁層で導体の周囲が被覆されてなることを特徴とする絶縁電線。
  2. 前記フッ素樹脂が、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニリデン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン重合体、変性パーフルオロアルコキシ樹脂の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の絶縁電線。
  3. 前記シリコーンゴムの含有量が、前記フッ素樹脂100質量部に対し10〜900質量部の範囲内であることを特徴とする請求項1または2に記載の絶縁電線。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2024024632A1 (ja) * 2022-07-25 2024-02-01 Agc株式会社 樹脂組成物及びその成形体

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