JPH11250743A - シールドケーブル - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 高周波領域においても良好なノイズ抑制効果
を発揮し、信号電流の減衰又は歪みを生じることのない
シールドケーブルを得る。 【解決手段】 絶縁材２で被覆された複数の信号導線１
を束ね、これらを絶縁性シート材で空洞４を形成するよ
うに被覆し、その外周に磁性粉体を混練りしたゴム又は
樹脂からなる磁性絶縁体８を被覆し、さらにその外周に
シールド導体５を被覆したシールドケーブル。信号導線
１にノーマルモードインピーダンスが発生しないので、
信号電流の減衰や歪みへの影響がなくノイズを抑制可能
であり、コモンモードノイズはシールド導体５からリー
クされ、コモンモードチョークコイルとして作用する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、シールドケーブ
ル、特に、デジタル機器の電源ケーブルやインターフェ
ースケーブルとして使用され、ノイズ放射を抑制するよ
うにしたシールドケーブルに関する。

【０００２】

【従来の技術と課題】従来、デジタル機器の電源ケーブ
ルやインターフェースケーブルから放射するノイズを抑
制するため、束ねた絶縁被覆信号導線の外周に、金属細
線を編組みしたあるいは金属箔からなるシールド導体を
巻き付けた電磁シールドケーブルが使用されている。こ
の種のシールドケーブルは６０ＭＨｚまでの比較的低い
周波数ではノイズ抑制効果が得られる。しかし、６０Ｍ
Ｈｚ以上の周波数では、ノイズがコモンモードとなり、
シールド導体がアンテナとなって却ってノイズを強く放
射するという問題点を有していた。

【０００３】このような問題点を解決するため、シール
ド導体と機器のグランドとの接続部にフェライトビーズ
を挿入することも行われている。しかし、フェライトビ
ーズの使用は、接続に手間を要するばかりでなく、接続
が外れる可能性があり、かつ、シールド導体が感電防止
の保安接地線を兼ねている場合、感電の危険性がある。

【０００４】そこで、特開昭５８−２０４４１７号公報
に記載のシールドケーブルが提案されている。このケー
ブルは、図３に示すように、絶縁層１９を設けた導体１
８を絶縁層１２で被覆し、絶縁層１２の外周に第１のシ
ールド層１４を設け、その外周にフェライトゴムからな
る磁性絶縁層１５を設け、その外周に第２のシールド層
１６を設け、さらに、その外周を絶縁層１７で被覆した
ものである。

【０００５】このケーブルでは、内側と外側に２層のシ
ールド層１４，１６を有しているが、内側の第１シール
ド層１４には磁性絶縁層１５によるインダクタンスが発
生し、外側の第２シールド層１６にはインダクタンスが
発生しない。二つのシールド層１４，１６は互に電気的
に接続して使用されることになり、インダクタンスが発
生しない第２シールド層１６のみに電流が流れることに
なる。即ち、第１シールド層１４はノイズシールド効果
にあまり寄与せず、かえってコストアップとなってしま
う。

【０００６】さらに、高周波ノイズ対策としては、第１
シールド層１４が磁性絶縁層１５で被覆されているた
め、信号導体１８と第１シールド層１４にコモンモード
インピーダンスが発生する。つまり、信号導体１８と第
１シールド層１４とが磁気的に結合し、信号が第１シー
ルド層１４に誘導される。このように、第１シールド層
１４に誘導されたノイズが、磁気的に結合していない第
２シールド層１６に流れ、かえってノイズを発生するお
それも有する。

【０００７】一方、特開平６−１６８６３３号公報に示
されているように、束ねた信号導線の外周部にフェライ
ト粉体を均一に配分したゴムを被覆するという対策が提
案されている。しかし、この対策では、信号導線にノー
マルインピーダンスが発生するため、ノイズの抑制と共
に信号電流の減衰又は歪みを発生させるという問題点を
生じている。

【０００８】そこで、本発明の目的は、シールド層が１
層のみという簡単な構成からなり、高周波領域において
も良好なノイズ抑制効果を発揮し、フェライトビーズ等
他の部材の接続という手間を必要とせず、かつ、信号電
流の減衰又は歪みを生じることのないシールドケーブル
を提供することにある。

【０００９】

【課題を解決するための構成及び作用】以上の目的を達
成するため、本発明に係るシールドケーブルは、絶縁材
で被覆された信号導線を複数本束ね、束ねた信号導線を
絶縁性シート材で該シート材の内側が空洞となるように
又は非磁性絶縁体を介在させて被覆し、この絶縁性シー
ト材の外周に磁性体粉を混練りしたゴム又は樹脂からな
る磁性絶縁体を被覆し、さらに磁性絶縁体の外周にシー
ルド導体を被覆したことを特徴とする。

【００１０】本発明において、磁性絶縁体はゴム又は樹
脂にフェライトや金属粉末等の磁性体粉を混入したもの
で、１以上の大きな透磁率を持つ。この磁性絶縁体で信
号導線を囲むことによって信号導線にインダクタンスが
コモンモードで発生する。その結果、コモンモードノイ
ズは伝導を妨げられて外部空間に放射しようとするが、
外層のシールド導体を伝導して回路に戻り、シールドケ
ーブルの外部には放射されない。

【００１１】また、束ねた信号導線を絶縁性シート材で
被覆する際、該シート材の内側が空洞となるように又は
非磁性絶縁体を介在させて被覆することで、信号導線に
ノーマルモードインピーダンスが発生することがない。

【００１２】さらに、本発明に係るシールドケーブルに
おいては、前記シールド導体の外周に、さらに、磁性体
粉を混練りしたゴム又は樹脂からなる磁性絶縁体を被覆
してもよい。これにて、シールド導体にもインダクタン
スが発生し、グランドからのノイズの侵入を阻止でき、
不安定なグランドにシールド導体を接続してもノイズ阻
止効果を発揮することになる。加えて、シールド導体は
直接機器のグランドへの接続が可能であり、接続の不具
合による感電の危険性が排除される。

【００１３】

【発明の実施の形態】以下、本発明に係るシールドケー
ブルの実施形態につき、添付図面を参照して説明する。

【００１４】（第１実施形態、図１参照）図１に示すよ
うに、本第１実施形態であるシールドケーブルは、絶縁
材２で被覆された信号導線１を４本束ね、束ねた信号導
線１にシート材３を巻き付け、該シート材３の外周に磁
性体粉を混練りしたゴムからなる磁性絶縁体８を押出し
成形によって被覆し、該磁性絶縁体８の外周にシールド
導体５を被覆したものである。

【００１５】シート材３は、布、紙、樹脂フィルム等の
絶縁材からなる。シールド導体５は、金属細線を編組み
したもの、あるいは金属箔からなる。磁性絶縁体８は、
透磁率４５０のフェライト粉末を重量比で９０％以上混
練したゴムを押出し成形して被覆した。磁性絶縁体８自
体の透磁率は１５である。なお、これらの値は一例であ
ることは勿論である。

【００１６】このシールドケーブルは、ノイズのない安
定なグランドにシールド導体５を接続する場合に効果的
である。磁性絶縁体８が設けられていないと、信号導線
１とシールド導体５との間に磁気誘導結合が発生し、た
とえノイズのない安定なグランドにシールド導体５を接
続したとしても、シールド導体５にノイズが誘導され、
シールド導体５をアンテナとしてノイズを放射してしま
う。

【００１７】しかし、本第１実施形態においては、各信
号導線１とシールド導体５との間に磁性絶縁体８が介在
することから、信号導線１を伝導するノイズ電流で発生
する磁束は、磁性絶縁体８を流れ、シールド導体５には
殆ど影響しないばかりではなく、信号導線１にのみコモ
ンモードインピーダンスが発生し、信号導線１を伝導す
るコモンモードノイズは阻止されるか減衰される。

【００１８】一方、シールド導体５はノイズの伝導して
いない安定なグランドに接続すれば、シールド効果によ
って信号導線１を伝導するノイズが周囲の空間に放射さ
れることがなくなる。特に、絶縁性シート材３の内側を
空洞４としたり、非磁性絶縁体で充填することで、信号
導線１にノーマルモードインピーダンスが発生すること
がなく、高速信号を伝導する場合であっても、信号電流
が減衰したり歪むことはない。

【００１９】（第２実施形態、図２参照）図２に示すよ
うに、本第２実施形態であるシールドケーブルは、前記
第１実施形態として示したシールドケーブルのシールド
導体５の外周面に、さらに、磁性体粉を混練りしたゴム
からなる磁性絶縁体８’を押出し成形によって被覆した
ものである。

【００２０】このシールドケーブルにあっては、信号導
線１を伝導するコモンモードノイズ電流による磁束は、
磁性絶縁体８，８’に影響し、インダクタンスを発生さ
せる。一方、シールド導体５を流れるノイズ電流による
磁束は、磁性絶縁体８’のみの影響を受ける。この結
果、信号導線１のインダクタンスとシールド導体５のイ
ンダクタンス値が異なってくるため、ノイズの減衰量は
信号導線１とシールド導体５とで異なり、発生源で同じ
電圧であっても本シールドケーブルを伝導中に信号導線
１とシールド導体５とで電圧が異なってくる。つまり、
コモンモードノイズがノーマルモードノイズに変換され
る。しかも、信号導線１で発生するインダクタンスは、
磁性絶縁体８のみを被覆した場合よりも大きな値が得ら
れ、ノイズ減衰効果が大きくなる。

【００２１】即ち、本第２実施形態のシールドケーブル
は、不安定なグランドにシールド導体５を接続しても、
優れたノイズ阻止効果を発揮する。

【００２２】（他の実施形態）なお、本発明に係るシー
ルドケーブルは前記実施形態に限定するものではなく、
その要旨の範囲内で種々に変更することができる。特
に、磁性絶縁体８，８’としては、磁性体粉を混練りし
たゴムに代えて、磁性体粉を混練りした樹脂を使用して
もよい。

【００２３】

【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
によれば、束ねた絶縁被覆信号導線の外周に絶縁性シー
ト材を介して磁性粉体を混練りしたゴム又は樹脂からな
る磁性絶縁体で被覆し、さらにその外周にシールド導体
を重ねて被覆したため、信号導線にコモンモードインダ
クタンスが発生し、コモンモードノイズはシールド導体
からリークされ、信号導線を流れる信号電流に減衰や歪
みが発生することなく、効果的にノイズを抑制すること
が可能となる。

【００２４】また、前記シールド導体の外周をさらに磁
性絶縁体で被覆することで、シールド導体にもインダク
タンスが発生し、グランドから侵入するノイズを阻止す
ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１実施形態としてのシールドケーブ
ルを示す断面図。

【図２】本発明の第２実施形態としてのシールドケーブ
ルを示す断面図。

【図３】従来のシールドケーブルの一例を示す断面図。

【符号の説明】

１…信号導線 ２…絶縁材 ３…絶縁性シート材 ４…空洞 ５…シールド導体 ８，８’…磁性絶縁体

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 絶縁材で被覆された信号導線を複数本束
   ね、束ねた信号導線を絶縁性シート材で該シート材の内
   側が空洞となるように又は非磁性絶縁体を介在させて被
   覆し、 前記絶縁性シート材の外周に磁性体粉を混練りしたゴム
   又は樹脂からなる磁性絶縁体を被覆し、 前記磁性絶縁体の外周にシールド導体を被覆したこと、 を特徴とするシールドケーブル。
2. 【請求項２】 前記シールド導体の外周に、さらに、磁
   性体粉を混練りしたゴム又は樹脂からなる磁性絶縁体を
   被覆したことを特徴とする請求項１記載のシールドケー
   ブル。