JP5094434B2 - ガスバリア性フィルムの製造方法、それにより得られたガスバリア性フィルム並びに包装袋 - Google Patents
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ガスバリア性フィルムとしては、次の(1)から(3)の方法によるものが広く用いられている。
(1)基材フィルムに、アルミニウムなどの金属箔を貼り合せて積層したもの。
(2)基材フィルムに、金属や金属酸化物の薄膜を、真空蒸着法やスパッタリング法にて形成した蒸着膜によるもの。
(3)基材フィルムに、塩化ビニリデン系共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、又はポリビニルアルコールなどのガスバリア性を有する樹脂組成物をコーティングしたガスバリア性樹脂によるもの。
(1)の金属箔によるものは、水蒸気や酸素に対する優れたバリア性を有しているが、使用後の廃棄物を焼却すると焼却残渣が多くて環境に対して負荷が掛かるという問題がある。また、透視性がなく内容物を目視確認できないという使用上の問題がある。
一方、包装用の資材として使用されている代表的な合成樹脂である、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリエチレンテレフタレートについて、ガスバリア性を比較すると表1のようになる(非特許文献1から抜粋)。
このため、ガスバリア性を付与したガスバリア性フィルムの製造では、汎用樹脂であるポリエチレン及びポリプロピレンを基材フィルムに使用しないで、ガスバリア性に基本的に優れ、水蒸気透過率と酸素透過率が共に低いポリエチレンテレフタレート(PET)を基材フィルムとして用いて、透明な金属酸化物の蒸着膜を基材フィルムの上に形成するのが一般的である(特許文献1〜4の実施例を参照)。
また、特許文献2においては、実施例1に、ポリエステルフィルムの片面に一酸化珪素を真空蒸着し、その蒸着面にポリウレタン接着剤を介してポリプロピレンフィルムを積層した包装材を得て、ポリプロピレンフィルムを内側にしてヒートシールを行い、レトルトパウチを作製することが開示されている。
特許文献3の実施例では、高周波プラズマCVDを用いて、材料ガスをヘキサメチルジシロキサンと酸素ガス、不活性ガスを用い、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを基材として、酸化ケイ素の薄膜を形成している。
また、このガスバリア層の上に形成された保護層は、ポリプロピレン複合フィルム材料のガスバリア性をより高めるために積層するものであって、単なる保護層ではない。
しかし、この場合、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを基材フィルムに使用しているため、熱融着性に欠け、別途、熱融着性を有するポリオレフィン系樹脂層を、接着剤層を介して積層する必要があった。
また、前記樹脂組成物は、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エチレン−(メタ)アクリル共重合体樹脂、エポキシ樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂からなる樹脂群の中から選択された1種以上の樹脂からなることが好ましい。
また、本発明は、包装袋を構成する包装材料が、上記のガスバリア性フィルムを、少なくとも一部として含んでなることを特徴とする包装袋を提供する。
図1は、本発明のガスバリア性フィルムを示す模式的断面図である。図2は、本発明の実施例1に示すガスバリア性フィルムであって、プラズマCVDによる珪素酸化物薄膜に保護層を形成したフィルムの表面を観察した走査型電子顕微鏡写真である。図3は、本発明の比較例3に示す、プラズマCVDによる珪素酸化物薄膜のみであって、保護層が形成されていないフィルムの表面を観察した走査型電子顕微鏡写真である。
本発明のガスバリア性フィルム1は、熱融着性を有するポリオレフィンからなる基材2に、珪素酸化物薄膜3のガスバリア層が形成され、該珪素酸化物薄膜の上に実質的にガスバリア性を有しない樹脂組成物のコーティング層からなる保護層4が形成されている。
また、前記樹脂組成物は、非水溶性であることが好ましい。
本発明において、ポリオレフィンが熱融着性を有するかどうかは、少なくとも同一材料同士の熱融着が可能であれば、当該ポリオレフィンは熱融着性を有するものとする。また、目的に応じて使用可能な他の材料とポリオレフィンとが熱融着可能であれば、当該ポリオレフィンは当該他の材料に対する熱融着性を有するものとする。
基材2のフィルムの厚みには特に制限はないが、一般的には5μm〜200μmの厚みとするのが取扱いの上で便利であり、より好ましくは10μm〜100μm程度である。基材フィルムの厚みが5μmよりも薄いとシワに成り易く、又、200μmよりも厚いとロール体に巻き取るのが困難である。
基材フィルムは、慣用の成型方法にて作製される。樹脂フィルムの成型方法としては、例えば、インフレーション法やTダイ法などの溶融押出成型法や、溶融樹脂を表面が平滑なドラムやステンレス製の平滑ベルト上に流し込んで付着させ、これを加熱する工程に通して溶媒を蒸発させてフィルムを成型する溶液流延法などが挙げられる。ポリオレフィンの場合は、主に溶融押出成型法により基材フィルムが作製される。
大気圧グロー放電にてプラズマ反応させる、いわゆる大気圧プラズマ反応装置は、大気圧下で操作され、真空排気設備を必要としないことから取扱いが比較的に簡便となる。
このため、珪素酸化物薄膜を形成するための設備としては、大気圧グロー放電によるプラズマ反応装置が、真空グロー放電によるプラズマ反応装置に比べてより好適に用いられる。
より具体的には、珪素アルコキシドとしては、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルメトキシシラン、エチルトリメトキシシランなどが使用できる。
また、有機シロキサンとしては、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、オクタメチルテトラシロキサン、ジビニルヘキサメチルトリシロキサン、ジビニルテトラメチルジシロキサン、トリビニルペンタメチルトリシロキサンなどが使用できる。
この保護層の形成に用いる樹脂組成物(以下、保護層形成用樹脂組成物という。)は、塩化ビニリデン系共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、及びポリビニルアルコールを実質的に含まない樹脂組成物であり、ガスバリア性を増加させるために積層するものではない。すなわち、本発明においては、塩化ビニリデン系共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、及びポリビニルアルコールを実質的に含まない樹脂組成物をコーティングすることで、実質的にガスバリア性を有しないコーティング層からなる保護層を形成するのである。
珪素酸化物薄膜の上にコーティングする保護層の樹脂組成物に、水系の樹脂組成物であるポリビニルアルコールを用いて保護層を形成したものは、珪素酸化物薄膜にクラックが入ってしまい、酸素透過率を測定することができなかった。
本発明の実質的にガスバリア性を有しない樹脂組成物のコーティング層からなる保護層を形成するには、有機溶剤に溶解された樹脂溶液であって、水分が含有されない、もしくは水分の含有量が少ない樹脂溶液を用いる。
上記樹脂溶液に用いる樹脂としては、有機溶剤に対する溶解性を有する樹脂を使用することができる。このような樹脂としては、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エチレン−(メタ)アクリル共重合体樹脂、エポキシ樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂などが挙げられ、これらの樹脂を単独であるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
この中では、アクリル系樹脂が、約100℃の高いガラス転移温度を有する点から好適に用いられる。
プラズマCVDで作製した珪素酸化物薄膜を保護するため、珪素酸化物薄膜の形成後は、なるべく速やかに保護層形成用樹脂組成物をコーティングすることが好ましい。長尺の基材フィルムを用いてロールtoロールでガスバリア性フィルムを製造する場合は、基材フィルムをロールから繰り出した後、珪素酸化物薄膜の形成、保護層形成用樹脂組成物のコーティングおよび乾燥をして、保護層が完成した後で巻き取りを行なうことが望ましい。
印刷層は、包装袋などで必要とされる文字や図柄を表示するために用いるものであって、ウレタン系、アクリル系などのインキバインダー樹脂に各種顔料、乾燥剤、安定剤等の添加剤などが添加されたインキを塗布して形成される層である。
印刷層は、例えば、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの公知の印刷方法にて形成される。印刷層の厚さは、通常、0.05〜2.0μm程度で良い。
なお、実施例における各物性の測定は、以下の測定方法に基づいて行なった。
JIS K 7126に準じて、酸素透過率測定装置(Mocon社製、型式OX−TRAN 2/20)を用いて、30℃、70%RHの条件にて測定した。
(基材表面の堆積物の組成分析)
X線光電子分光測定装置(XPS)(アルバック・ファイ株式会社製、型式ESCA−5800ci)を用いて、組成分析を行なった。
(膜の表面状態の観察)
走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子株式会社製、型式JPS−6100)を用いて、ガスバリア層である珪素酸化物薄膜や、保護層である樹脂コーティング層の表面状態の観察を行なった。
有機金属珪素としてテトラメトキシシラン(TMOS)を用いて、酸素ガス、不活性ガスと共に、大気圧グロー放電によるプラズマ反応装置にて基材表面で反応させ、基材の表面及び基材表面に生成した堆積物の組成を、XPSにて分析した。
XPSの分析結果は、上記の表2に示すように、堆積物は、炭素成分を少し含んでいるがほぼ珪素酸化物の薄膜であることが判明した。なお、基材はポリオレフィンフィルム(炭素と水素のみからなる)なので、XPSでは炭素のみが検出されている。
大気圧グロー放電によるプラズマ反応装置を用いて、基材フィルムに珪素酸化物薄膜を堆積させた。テトラメトキシシラン(TMOS)に酸素ガスを添加してプラズマ反応させることにより、酸素ガスバリア性が向上するが、酸素を過剰に添加しすぎると放電が不安定になり堆積膜が不均一になる。
安定に放電できる条件としては、TMOS流量1.6mg/min、酸素ガス流量1cm3/minが最良であることを見出し、以下の実施例におけるプラズマ反応条件とした。
厚みが100μmの未延伸高密度ポリエチレン(HDPE)フィルム(タマポリ株式会社製、銘柄HD)を、下記の大気圧グロー放電によるプラズマ反応条件にて処理を行ない、厚みが400nmの炭素を含む珪素酸化物薄膜を形成させた。
電源周波数 13.56MHz
パルス変調モード ON
パルス周波数 10kHz[パルス変調モードがONの場合に適用する条件]
Duty比 20%
He流量 4000cm3/min
TMOS流量 0.7〜7.2mg/min
O2流量 1〜7cm3/min
放電時間 60min
電極間距離 2mm
放電出力 100W
堆積膜厚み 400〜500nm
実施例1において、その他の処理条件を同じとし、保護層の厚みを20μmとしたものを実施例2とした。
厚みが100μmの未延伸高密度ポリエチレン(HDPE)フィルム(株式会社タマポリ製、銘柄HD)を、熱融着性を有するポリオレフィンからなる基材とし、珪素酸化物薄膜及び保護層を設けないで基材そのままのものを比較例1とした。
比較例1の基材の上に、保護層形成用樹脂組成物として、アクリル系樹脂塗料(日本触媒製、ポリメントNK−380(Tg=100℃))を、有機溶媒(トルエン/メチルイソブチルケトン=3/1)にて10〜100%の範囲で希釈した塗布液を調製し、乾燥温度40℃にて5秒間、乾燥させて厚み20μmの保護層を形成させたものを比較例2とした。
実施例1において、基材の片面に珪素酸化物薄膜を400nmの厚みで形成し、保護層を設けないものを比較例3とした。
実施例1において、基材の片面に珪素酸化物薄膜を400nmの厚みで形成した後、水系の樹脂組成物(ポリビニルアルコール10%水溶液)を塗布して厚み1μmの水系樹脂組成物の保護層を形成し、比較例4とした。比較例4では、保護層の効果がなくて珪素酸化物薄膜にクラックが入ったために、酸素透過率の測定が不能であった。
例えば、基材フィルムのガスバリア層が形成されていない側の面に、粘着剤を介して剥離処理を施した剥離フィルムを積層してもよい。
また、本発明の珪素酸化物薄膜の上に形成した保護層の上に、文字や図柄を印刷した印刷層と表面被覆層とを積層したフィルムを貼り合せて包装袋の表示層を設けることもできる。
Claims (4)
- 熱融着性を有するポリオレフィンからなる基材の少なくとも一方の面に、不活性ガスのキャリヤーガスに添加された有機金属珪素の流量をQ[mg/min]としたときに、酸素ガスの流量が0.82×Q[mg/min]以下の割合で添加された反応ガスと、大気圧グロー放電によるプラズマ反応装置とを用いて、プラズマ反応させて生成した炭素を含む珪素酸化物薄膜のガスバリア層を形成した後、該珪素酸化物薄膜の上に、有機溶剤に溶解された樹脂溶液を用いて、ガスバリア性を有しない樹脂組成物のコーティング層からなり、前記樹脂組成物は、非水溶性であって、塩化ビニリデン系共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、及びポリビニルアルコールを含まない樹脂組成物である、厚みが5μm〜30μmの保護層を形成することを特徴とするガスバリア性フィルムの製造方法。
- 熱融着性を有するポリオレフィンからなる基材の少なくとも一方の面に、大気圧グロー放電によるプラズマ反応装置を用いて、プラズマCVDによる炭素を含む珪素酸化物薄膜のガスバリア層が形成され、該珪素酸化物薄膜の上に、有機溶剤に溶解された樹脂溶液を用いて形成され、ガスバリア性を有しない樹脂組成物のコーティング層からなる、厚みが5μm〜30μmの保護層を有し、前記樹脂組成物は、非水溶性であって、塩化ビニリデン系共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、及びポリビニルアルコールを含まない樹脂組成物であり、
前記大気圧グロー放電によるプラズマ反応装置には、不活性ガスのキャリヤーガスに添加された有機金属珪素の流量をQ[mg/min]としたときに、酸素ガスの流量が0.82×Q[mg/min]以下の割合で添加される反応ガスを用いてなることを特徴とするガスバリア性フィルム。 - 前記樹脂組成物は、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エチレン−(メタ)アクリル共重合体樹脂、エポキシ樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂からなる樹脂群の中から選択された1種以上の樹脂からなることを特徴とする請求項2に記載のガスバリア性フィルム。
- 包装袋を構成する包装材料が、請求項2または3に記載のガスバリア性フィルムを、少なくとも一部として含んでなることを特徴とする包装袋。
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