JP5093174B2 - 熱間押出用コンテナ内表面のガラス潤滑剤除去方法 - Google Patents
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Description
「面圧」:吹き付けられる高圧水が対象材に衝突する際にその表面に加える圧力をいう。
「質量%」:潤滑剤に含まれる各成分の質量百分率を表す。
(a)前述の通り、コンテナ内表面に残存したガラス潤滑剤の除去に際し、コンテナ内表面にスプレー水を吹き付け、ガラス潤滑剤とコンテナ内表面との熱膨張率の差に起因して剥離させたり、それに加えて回転ブラシ等の治具による除去手段を組み合わせるだけでは、その除去効果は不十分である。
(c)ガラス潤滑剤の剥離性には、ガラスによる金属材料表面の酸化現象が大きく影響している。例えば、鋼材を熱間押出する場合に、溶融した高温のガラスが鋼表面に接触すると、ガラス中の酸素が鋼表面を酸化して酸化鉄を生成する。酸化鉄はガラスと共晶反応を起こし、酸化鉄がガラス中に溶融する。
しかし、ケイ酸塩系ガラスにおいて、アルカリ金属の酸化物は粘度を低下させる役割を発揮するため、アルカリ金属の酸化物を添加しなければガラスの粘度が高くなり過ぎ、熱間押出用ガラス潤滑剤として機能しなくなる。
ただし、上記ガラス潤滑剤の組成においてアルカリ金属酸化物の合計量のうち1/3以上をK2Oとし、Al2O3、CaOおよびMgOの1種または2種以上の合計量のうち1/4以上をAl2O3とする
(1)優れた潤滑性能を発揮し、安定した熱間押出加工の操業を確保することができる。
(2)コンテナ内表面に残存したガラス潤滑剤の剥離性を改善し、熱間押出後のコンテナの洗浄、除去時間を大幅に短縮できる。
(2)コンテナ内表面に残存したガラス潤滑剤の剥離性を改善し、押出加工材に発生する押込み疵や焼付き等の外面欠陥を抑制する。
[高圧水の面圧条件]
1−1.試験条件
熱間押出後のコンテナ内表面に付着したガラス潤滑剤を模擬して、100mm角×15mm厚の工具鋼(JIS SKD相当)からなる板材の表面に、ガラス粉末を塗布し、それを900℃で溶融させたのち常温まで冷却し、ガラスを付着させた試験片を作製した。使用したガラス粉末は、表1に示す2種類(A、B)とした。
図2は、吹き付けられる高圧水が試験片の表面に加える「面圧」を説明する図である。射出ノズル9から射出された高圧水10は、試験片11の表面に吹き付けられる。
本発明で規定する「面圧」は、吹き付けられる高圧水が対象材に衝突する際にその表面に加える圧力と定義する。具体的には、面圧P(MPa)は、下記(1)式により算出する。
P=A×(a/b) ・・・ (1)
ここで、A:高圧水射出口の水圧(MPa)、a:高圧水射出口の面積(cm2)、
b:対象材表面の高圧水衝突面積(cm2)
図3は、高圧水吹き付け後の試験片表面における高圧水の面圧(MPa)とガラスの剥離状況との関係を示す図である。高圧水の面圧(MPa)は前記(1)式より算出した値であり、剥離状況の評価は剥離率(%)によって行った。
前述の通り、コンテナ内表面に付着したガラスは、高圧水の吹き付け等により除去されるが、高圧水を吹き付けることにより、コンテナ内表面温度は大きく変動する。コンテナ内表面に付着し、残存したガラス潤滑剤を効率的に除去するには、コンテナ内表面温度を管理する必要がある、
本発明のガラス潤滑剤除去方法では、ガラス潤滑剤として、アルカリ金属酸化物の合計量が12〜30質量%であり、Al2O3、CaOおよびMgOの1種または2種以上の合計量が20〜40質量%であるケイ酸ガラス潤滑剤を用いるのが望ましい。さらに25質量%以下のB2O3を含むケイ酸ガラス潤滑剤を用いるのが、一層望ましい。ただし、前記アルカリ金属酸化物の合計量のうち1/3以上をK2Oとし、Al2O3、CaOおよびMgOの1種または2種以上の合計量のうち1/4以上をAl2O3とする必要がある。
アルカリ金属酸化物は酸化成分であり、ガラスの粘度を低下させる作用を発揮する。アルカリ金属酸化物の合計量が30質量%を超えると、潤滑剤の粘度が低下し過ぎるとともに、Al2O3、CaOまたはMgOを含有させても酸化能が高く、潤滑剤の剥離性が十分でなくなる。一方、12質量%未満では、潤滑剤の粘度が高くなり過ぎ、押出加工温度域(1000℃〜1250℃)において100〜104ポアズの適正粘度を得られないことがある。
Al2O3、並びにアルカリ土類金属の酸化物のCaOおよびMgOは還元成分である。Al2O3、CaOおよびMgOの1種または2種以上の合計量が20質量%未満では、アルカリ金属酸化物の合計量を15〜30質量にコントロールしても、材料表面とガラスの界面での酸化が進み、潤滑剤の剥離性が十分でない。
B2O3は必須の含有成分であり、鉄酸化物をガラス中に均一に溶融させる作用を発揮する。前述の通り、ガラス中に溶融した鉄酸化物は濃度勾配を示し、材料およびガラス界面において最も濃度が高く、ガラス内部に行くにしたがって濃度が低くなる。B2O3は鉄酸化物をガラス中に均一に溶融させるので、結果的に材料とガラスの界面における鉄元素濃度を下げる効果を有する。
本発明の熱間押出用コンテナ内表面のガラス潤滑剤除去方法は、熱間押出後に、コンテナ内表面温度を管理するとともに、コンテナ内表面へ吹き付ける高圧水の面圧を制御することにより、コンテナ内表面に付着残存したガラス潤滑剤を容易に除去することができる。さらに、ガラス潤滑剤として、上記組成のケイ酸ガラス潤滑剤を用いることにより、一層、ガラス潤滑剤を容易に除去することができる。
粘度:1200℃で1000ポアズ
組成:SiO2(73質量%)、Na2O(13質量%)、Al2O3(2質量%)、
CaO(8質量%)およびMgO(4質量%)
正面潤滑剤は、上記の市販ガラスに水ガラス3号を5質量%加えてディスク状に成形して用いた。
ビレット寸法:外径174mm×内径44mm×長さ800mm、先端に20R加工
ビレット加熱温度:1250℃
押出管寸法:外径47mm×内径41mm(×肉厚3mm)×長さ40,000mm
熱間押出製管後に、上記図4、図5に示す従来方法および本発明方法により、ガラス潤滑剤の除去を行い、コンテナ内表面のガラス潤滑剤の除去状況を比較観察した。このときガラス潤滑剤の除去における、コンテナ内表面温度は300〜350℃の範囲で管理した。
(1)優れた潤滑性能を発揮し、安定した熱間押出加工の操業を確保することができる。
(2)コンテナ内表面に残存したガラス潤滑剤の剥離性を改善し、熱間押出後のコンテナの洗浄時間を大幅に短縮できる。
(3)コンテナ内表面に残存したガラス潤滑剤の剥離性を改善し、押込み疵や焼付き等の外面欠陥を抑制する。
3:マンドレル、 4:ダイホルダ、 5:ダイバッカー、
6:コンテナ、 7:ダミーブロック、 8:ビレット、
9:射出ノズル、 10:高圧水、 11:試験片、対象物、
12:エジェクタースプレー水、 13:自走式噴射装置、
Claims (2)
- アルカリ金属酸化物の合計量が12〜30質量%であり、Al 2 O 3 、CaOおよびMgOの1種または2種以上の合計量が20〜40質量%であり、さらに8〜25質量%のB 2 O 3 を含むケイ酸ガラス潤滑剤を用いた金属材料の熱間押出後に、コンテナ内表面温度を200〜500℃とし、前記ガラス潤滑剤が付着したコンテナ内表面に1.0MPa以上の面圧で高圧水を吹き付けることを特徴とする熱間押出用コンテナ内表面のガラス潤滑剤除去方法。
ただし、上記ガラス潤滑剤の組成においてアルカリ金属酸化物の合計量のうち1/3以上をK 2 Oとし、Al 2 O 3 、CaOおよびMgOの1種または2種以上の合計量のうち1/4以上をAl 2 O 3 とする - 高圧水を射出ノズルから噴射する反力で回転する機構を具備する自走式噴射装置を用い、上記高圧水をコンテナ内表面の全周に吹き付けることを特徴とする請求項1に記載の熱間押出用コンテナ内表面のガラス潤滑剤除去方法。
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