JP6881165B2 - 継目無鋼管の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、継目無鋼管の製造方法に関する。
継目無鋼管の製造方法として、マンネスマン‐マンドレルミル法がある。マンネスマン‐マンドレルミル法による継目無鋼管の製造工程においては、穿孔機による穿孔圧延の後、マンドレルミルによる延伸圧延が実施される。
マンドレルミルによる延伸圧延では、初めに、中空素管にマンドレルバーを挿入する。次に、マンドレルバーが挿入された中空素管に対して、マンドレルミルを用いて延伸圧延を実施する。延伸圧延後、中空素管からマンドレルバーを引き抜く。
延伸圧延中において、中空素管内面とマンドレルバー表面との間には相対すべりが生じ、摩擦が発生する。この界面の潤滑状態が十分でないと中空素管とマンドレルバーが焼付き、中空素管内面に疵が発生したり、中空素管の均一な変形が阻害されたりする。そのため、焼付き防止や安定した低い摩擦係数を確保するために、中空素管内面とマンドレルバー表面との界面の潤滑性(以下、単に潤滑性ともいう)を高める必要がある。潤滑性を高めるために、圧延前のマンドレルバー表面に潤滑剤を塗布したり、中空素管の内面に潤滑剤を供給したりする。
ところで、穿孔圧延後、潤滑剤を供給して延伸圧延を開始するまでの間に、中空素管の内面にはスケールが形成される。ガラスを含有する潤滑剤を使用する場合、スケールは、延伸圧延中にマンドレルバーの潤滑性を高める。
国際公開第2005/123289号(引用文献1)は、炭素鋼において、延伸圧延時に、中空素管内面に潤滑剤を供給する製管方法において、穿孔圧延から潤滑剤供給までの時間及び素管内面温度、潤滑剤供給から延伸圧延までの時間及び素管内面温度を制御することで良好な潤滑性を得る方法を提案する。引用文献1では、潤滑剤供給時には所定量のスケールを存在させておくことで、潤滑剤供給時の濡れ拡がり性を向上させ、容易に管内面に均一に分布させる。引用文献1ではさらに、潤滑剤供給から延伸圧延まで所定時間経過させることで、スケールを潤滑剤によって溶融させる。上記方法により延伸圧延時の潤滑性が高まると、引用文献1には記載されている。
国際公開第2005/123289号
しかしながら、Cr含有合金鋼を対象としたマンドレルミル圧延に際して、引用文献1の方法を用いても、潤滑剤の効果が十分に発揮されないことがある。
本発明の目的は、Cr含有合金鋼及び炭素鋼において、延伸圧延時に優れた潤滑性を示す、継目無鋼管の製造方法を提供することである。
本発明による継目無鋼管の製造方法は、Cr含有合金鋼又は炭素鋼からなる素材を穿孔圧延して中空素管を製造する穿孔圧延工程と、穿孔圧延工程後であって、延伸圧延工程前に、中空素管の内面に1価のアルカリ金属のほう酸塩を主体とするガラス潤滑剤を供給する供給工程と、ガラス潤滑剤を内面に供給された中空素管に対してマンドレルバーを挿入し、マンドレルミルを用いて延伸圧延を実施して継目無鋼管を製造する延伸圧延工程とを備える。穿孔圧延工程において、穿孔圧延終了直後の中空素管の内面温度は1100℃以上である。穿孔圧延工程での穿孔圧延終了直後から供給工程において、ガラス潤滑剤を中空素管の内面に供給するまでの時間は5〜60秒である。供給工程におけるガラス潤滑剤の供給開始時の中空素管の内面温度Tは1050℃以上である。供給工程におけるガラス潤滑剤の供給開始後、延伸圧延開始までの時間t(秒)は式(1)の条件を満たす。
t<−0.74T+1010 (1)
本発明は、Cr含有合金鋼及び炭素鋼において、延伸圧延時に優れた潤滑性を示す、継目無鋼管の製造方法を提供することができる。
図1は、ガラス潤滑剤の供給開始後、延伸圧延開始までの時間t(反応時間t)(秒)と、スケール厚(μm)との関係を示す図である。 図2は、穿孔圧延終了直後の中空素管の内面温度(供給前内面温度)(℃)と穿孔圧延終了直後からガラス潤滑剤を中空素管の内面に供給するまでの時間(供給前保持時間)(秒)との関係を示す図である。 図3は、ガラス潤滑剤の供給開始時の中空素管の内面温度T(供給時加熱温度T)(℃)と、ガラス潤滑剤が試験片面全域に濡れ拡がるのに要した時間(放置時間)(秒)との関係を示す図である。 図4は、供給時加熱温度T(℃)と、ガラス潤滑剤の供給開始後、延伸圧延開始までの時間t(反応時間t)(秒)との関係を示す図である。 図5は、模擬延伸圧延試験の模式図である。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳しく説明する。
本発明者らはまず、潤滑剤供給後、延伸圧延中のスケールの形成過程に着目し、スケール厚を低減する方法について、種々検討を行った。その結果、以下の知見を得た。
炭素鋼においては、組成物にガラスを含有するガラス潤滑剤を使用する場合、スケールはガラスに溶ける。そのため、炭素鋼においては、潤滑剤を供給した後、一定時間放置すれば、スケール厚を低減できる。
しかしながら、Cr含有合金鋼では、炭素鋼とは逆の現象が起こることを、本発明者らは新たに発見した。Cr含有合金鋼とは、Crを0.30質量%以上含有する合金である。Cr含有合金鋼とはたとえば、ステンレス鋼、2Cr鋼及び9Cr鋼である。
具体的には、Cr含有合金鋼では、そもそもスケールが形成しにくい。そのため、穿孔圧延後、ガラス潤滑剤を中空素管の内面に供給する前(以下、ガラス潤滑剤供給前ともいう)には、炭素鋼とは異なり、スケールはほとんど形成されない。ところが、ガラス潤滑剤を中空素管の内面に供給した後(以下、ガラス潤滑剤供給後ともいう)は、予想に反して、時間の経過とともにスケールが厚くなることを、本発明者らは知見した。この知見は、以下の試験により得られた。
図1は、ガラス潤滑剤の供給開始後、延伸圧延開始までの時間t(以下、反応時間tともいう)(秒)と、スケール厚(μm)との関係を示す図である。図1は以下の実験により得られた。
後述の実施例に示す、炭素鋼とCr含有合金鋼とを準備した。具体的には、炭素鋼の鋼板の化学組成は、JIS G4051(2009)に規定されたS25Cに相当した。Cr含有合金鋼の鋼板の化学組成は、JIS G4304(2012)に規定されたSUS304に相当した。各鋼から長さ250mm、幅30mm、板厚2.0mmの試験片を切り出した。各試験片を1200℃に予熱した加熱炉内に入れ、窒素雰囲気下で5分間保持した。加熱した各試験片に対して、3.5gのガラス潤滑剤(ほう砂)をのせて、大気雰囲気で、所定時間(図1の横軸に示す各時間)炉内に放置した。放置後、試験片を取り出し、銅板上で冷却した。冷却後、FE−SEM(電界放出形電子銃を用いた走査電子顕微鏡:Field Emission−Scanning Electron Microscope)を用いて各試験片の断面のミクロ観察を行い、後述の方法でスケール厚を測定した。結果を図1にプロットした。図1中、「●」は炭素鋼を示す。図1中、「◆」はCr含有合金鋼を示す。
図1を参照して、炭素鋼においては、ガラス潤滑剤供給前(反応時間0秒時点)のスケール厚はガラス潤滑剤供給後よりも大きい。ガラス潤滑剤供給後は、反応時間tの増加に伴いスケール厚が低減する。
一方、Cr含有合金鋼においては、ガラス潤滑剤供給前のスケール厚はガラス潤滑剤供給後よりも小さい。しかしながら、炭素鋼とは逆に、反応時間tの増加に伴いスケール厚が増加する。この理由は定かではないが、次のとおりと考えられる。
炭素鋼において、ガラス潤滑剤供給前に形成するスケールは、FeOを主成分とするFe系酸化物である。このFe系酸化物はガラスに溶けやすい。なお、炭素鋼では、ガラス潤滑剤供給後に形成するスケールも、ガラス潤滑剤供給前に形成するスケールと同様のスケールである。
一方、Cr含有合金鋼において、ガラス潤滑剤供給前に形成するスケールは、Crを主成分とするCr系酸化物である。Cr含有合金鋼においては、このCr系酸化物が不動態被膜として機能し、スケールの成長を抑制する。しかしながら、ガラス潤滑剤を供給した場合、この不動態被膜であるCr系酸化物がガラスに溶ける。この場合、不動態被膜がなくなった部分の母材のFeが酸化され、スケールが形成する。このスケールは、Feを主成分とし、Crを少量含有するFe−Cr系酸化物である。Fe−Cr系酸化物はガラスに溶けにくい。したがって、Fe−Cr系酸化物が溶ける速度よりも、Fe−Cr系酸化物が生成する速度のほうが速い。そのため、Cr含有合金鋼においては、ガラス潤滑剤供給後にスケール厚が厚くなる。
このように、炭素鋼とCr含有合金鋼とでは、ガラス潤滑剤を供給したあとのスケールの成長に関して、異なる現象が生じた。具体的には、炭素鋼では、ガラス潤滑剤供給後にスケール厚が減少した。一方、Cr含有合金鋼では、ガラス潤滑剤供給後にスケール厚が増えた。そのため、炭素鋼とCr含有合金鋼との双方で良好な潤滑性を示すには、製造条件を再検討する必要が生じた。
そこで、本発明者らは、Cr含有合金鋼と炭素鋼とに関わらず、延伸圧延中に優れた潤滑性を得ることができる製造条件について検討を行った。
本発明者らはまず、ガラス潤滑剤供給後、延伸圧延中のスケール厚がある程度の厚さ以下であれば、Cr含有合金鋼と炭素鋼とに関わらず、延伸圧延時の潤滑性は向上すると考えた。一方で、ガラス潤滑剤供給後、延伸圧延中のスケール厚が厚すぎれば、潤滑性が低下すると考えた。
ガラス潤滑剤供給後、延伸圧延中のスケール厚が厚くなりすぎることを抑制するために、ガラス潤滑剤供給前のスケール厚をある程度薄くしておく必要がある。
[穿孔圧延終了直後の中空素管の内面温度(供給前内面温度)、及び、穿孔圧延終了直後からガラス潤滑剤を中空素管の内面に供給するまでの時間(供給前保持時間)]
本発明者らはまず、穿孔圧延終了直後の中空素管の内面温度(以下、単に供給前内面温度ともいう)及び穿孔圧延終了直後からガラス潤滑剤を中空素管の内面に供給するまでの時間(以下、単に供給前保持時間ともいう)が延伸圧延中の潤滑性に及ぼす影響について調査した。
供給前内面温度は、操業上現実的な温度として1100℃以上である。供給前内面温度が1100℃未満であれば、その後のガラス潤滑剤の供給開始時の中空素管の内面温度Tも低下する。
Cr含有合金鋼においては、上述のとおり、ガラス潤滑剤供給前のスケールは厚くなりにくい。したがって、Cr含有合金鋼においては、操業上現実的な範囲での供給前保持時間では、ガラス潤滑剤供給前のスケール厚が厚くなりすぎることはない。つまり、Cr含有合金鋼においては、ガラス潤滑剤供給前のスケール厚を薄くするための条件は特に限定されない。
一方、炭素鋼においては、上述のとおり、ガラス潤滑剤供給前にスケールが厚くなる。そのため、ガラス潤滑剤供給前のスケール厚をある程度薄くするために、ガラス潤滑剤供給前の製造条件を規定する必要がある。そこで、供給前保持時間と潤滑性との関係に着目し、調査した。
図2は、供給前内面温度(℃)と供給前保持時間(秒)との関係を示す。図2は、後述の実施例中の炭素鋼により得られた。図2中、「○」は、潤滑性が良好であったものを示す。図2中「×」は、潤滑性が低かったものを示す。
図2を参照して、供給前保持時間が5〜60秒であれば、その他の条件を満たす場合、良好な潤滑性が得られる。したがって、穿孔圧延終了直後からガラス潤滑剤を中空素管の内面に供給するまでの時間は5〜60秒である。穿孔圧延終了直後からガラス潤滑剤を中空素管の内面に供給するまでの時間はさらに好ましくは、10〜60秒である。
なお、潤滑剤供給前には、スケール厚が1μm以上であることが好ましい。この理由は次のとおりである。
本実施形態におけるガラス潤滑剤の主成分は、1価のアルカリ金属のほう酸塩である。1価のアルカリ金属のほう酸塩は、中空素管の内面に形成するスケールとの濡れ性が高い。そのため、ガラス潤滑剤とスケールとの反応により生成する反応物も、流動性が高い。ガラス潤滑剤供給前のスケール厚が1μm以上であれば、溶融した潤滑剤が中空素管の内面に均一に分布する。これにより潤滑性が高まる。
[ガラス潤滑剤の供給開始時の中空素管の内面温度T(供給時加熱温度T)]
次に、ガラス潤滑剤の供給開始時の中空素管の内面温度T(以下、単に供給時加熱温度Tともいう)について調査した。
素管内部に供給されたガラス潤滑剤は溶融する。溶融した潤滑剤は、スケールと反応しながら、中空素管の内面に拡がる。この時、中空素管の内面の温度が低ければ、ガラス潤滑剤とスケールとの反応物の粘度が高くなる。反応物の粘度が高ければ、潤滑剤が十分に拡がらない場合がある。そこで、ガラス潤滑剤とスケールとの反応物が十分に拡がるために必要な、中空素管の内面温度を調査した。
図3は、供給時加熱温度T(℃)と、ガラス潤滑剤が試験片面全域に濡れ拡がるのに要した時間(放置時間)(秒)との関係を示す図である。図3は、以下の実験により得られた。
後述の実施例に示す、Cr含有合金鋼及び炭素鋼を準備した。各鋼から直径40mm、板厚10mmの試験片を切り出した。各試験片に対して、スケール付のための処理を実施した。スケール付のための処理条件は、窒素雰囲気下において、1200℃で10分間の加熱とした。加熱した各試験片を大気中で空冷した。空冷した各試験片を、窒素雰囲気下で、所定温度(950、1000、1050、1100、1150及び1250℃)に予熱した炉内に10分間放置し、加熱した。炉から取り出した各試験片の中央に、直径10mm、厚さ5mmに圧粉成型した1価のアルカリ金属のほう酸塩を主体とするガラス潤滑剤(ほう砂)をのせ、所定時間炉内に放置した。経過時間に伴って、ガラス潤滑剤が濡れ拡がる状況を動画撮影した。撮影した動画から、各温度においてガラス潤滑剤が試験片面全域に濡れ拡がるのに要した時間を算出した。
図3を参照して、斜線部分においては、ガラス潤滑剤供給から10秒間放置することで十分な濡れ拡がりを示す。つまり、供給時加熱温度が1050℃であるときに、変曲点が存在する。供給時加熱温度が1050℃以上であれば、ガラス潤滑剤供給から10秒間放置することで十分な濡れ拡がりを示す。この結果は炭素鋼においても同様であった。
以上より、ガラス潤滑剤の供給開始時の中空素管の内面温度Tは1050℃以上である。ガラス潤滑剤の供給開始時の中空素管の内面温度Tは、好ましくは1100℃以上である。
[ガラス潤滑剤の供給開始後、延伸圧延開始までの時間t(反応時間t)]
次に、ガラス潤滑剤の供給開始後、延伸圧延開始までの時間tについて調査した。
上述のとおり、ガラス潤滑剤供給後、延伸圧延中のスケール厚は、適度な薄さであることが好ましい。ガラス潤滑剤供給後、延伸圧延中のスケール厚が適度な薄さであれば、延伸圧延中の潤滑性が高まる。
ガラス潤滑剤供給後、延伸圧延中のスケール厚さを15μm以下とするためのガラス潤滑剤の供給開始時の中空素管の内面温度T(供給時加熱温度T)とガラス潤滑剤の供給開始後、延伸圧延開始までの時間t(以下、反応時間tともいう)とがスケール厚に及ぼす影響について調査した。
図4は、供給時加熱温度T(℃)と反応時間t(秒)との関係を示す。図4は、以下の実験により得られた。
後述の実施例に示す、Cr含有合金鋼を準備した。Cr含有合金鋼から長さ250mm、幅30mm、板厚2.0mmの試験片を切り出した。各試験片を窒素雰囲気下で所定温度(950、1050、1100、1150及び1200℃)に予熱した加熱炉内に入れ、5分間保持した。加熱した各試験片に対して、3.5gのガラス潤滑剤をのせて、所定時間(5、10、30、90、120、150、240及び300秒)炉内に放置した。所定時間が過ぎた後、試験片を取り出し、銅板上で冷却した。冷却後、FE−SEMを用いて各試験片の断面のミクロ観察を行い、スケール厚を測定した。各試験片において、スケール厚が15μmとなった実施例について、図4にプロットした。
図4中、実線はCr含有合金鋼において、スケール厚が15μmとなる線である。
上述のとおり、Cr含有合金鋼においては、ガラス潤滑剤供給後、反応時間tの増加に伴い、スケールが形成される。したがって、図4を参照して、Cr含有合金鋼において、ガラス潤滑剤供給後のスケール厚を15μm以下とするには、実線より下部の条件とする必要がある。ガラス潤滑剤の供給時の中空素管の内面温度をTとして、図4の実線は、F1=−0.74T+1010で表される。
したがって、Cr含有合金鋼において、スケール厚の増加を抑制して、スケール厚を15μm以下とするためには、反応時間tが、F1未満である。つまり、反応時間tは、式(1)を満たす。
t<−0.74T+1010 (1)
以上より、反応時間tが式(1)を満たせば、ガラス潤滑剤供給後のスケールが適度な厚さになる。その結果、Cr含有合金鋼の延伸圧延中の潤滑性が高まる。
さらに、マンドレルミル圧延を実施する対象としては、Cr含有合金鋼と炭素鋼との両方が対象となる。そこで、炭素鋼においても同様の実験を実施した。この実験により、本発明者らは、炭素鋼においても、最適なスケール厚とするための、供給時加熱温度Tと反応時間tとに相関があることを知見した。具体的には以下のとおりである。
炭素鋼においても、Cr含有合金鋼と同様の実験を行った。結果を図4にプロットした。図4の破線は、炭素鋼におけるスケール厚が15μm以下となる条件を示す。
炭素鋼においては、反応時間tの増加に伴い、スケールは溶解される。したがって、図4を参照して、スケール厚を15μm以下とするためには、破線よりも上部の条件とすればよい。ガラス潤滑剤の供給時の中空素管の内面温度をTとして、図4の破線は、F2=0.0022T−5.1T+2950で表される。
したがって、炭素鋼において、スケールを十分溶解して、スケール厚を15μm以下とするためには反応時間tは、F2を超える時間とする。つまり、反応時間tは、次式を満たす。
0.0022T−5.1T+2950<t
図4を参照して、斜線部分が式(2)を満たす部分である。
以上より、ガラス潤滑剤供給から延伸圧延開始までの時間tが式(2)を満たせば、炭素鋼とCr含有合金鋼との両方において、スケール厚を15μm以下とできる。その結果、ガラス潤滑剤供給後のスケールが適度な厚さになり、延伸圧延中の潤滑性が高まる。
0.0022T−5.1T+2950<t<−0.74T+1010 (2)
以上の知見により完成した本発明による継目無鋼管の製造方法は、Cr含有合金鋼又は炭素鋼からなる素材を穿孔圧延して中空素管を製造する穿孔圧延工程と、穿孔圧延工程後であって、延伸圧延工程前に、中空素管の内面に1価のアルカリ金属のほう酸塩を主体とするガラス潤滑剤を供給する供給工程と、ガラス潤滑剤を内面に供給された中空素管に対してマンドレルバーを挿入し、マンドレルミルを用いて延伸圧延を実施して継目無鋼管を製造する延伸圧延工程とを備える。穿孔圧延工程において、穿孔圧延終了直後の中空素管の内面温度は1100℃以上である。穿孔圧延工程での穿孔圧延終了直後から供給工程において、ガラス潤滑剤を中空素管の内面に供給するまでの時間は5〜60秒である。供給工程におけるガラス潤滑剤の供給開始時の中空素管の内面温度Tは1050℃以上である。供給工程におけるガラス潤滑剤の供給開始後、延伸圧延開始までの時間t(秒)は式(1)の条件を満たす。
t<−0.74T+1010 (1)
本実施形態の製造方法により、Cr含有合金鋼において、マンドレルミル圧延時の潤滑性を高めることができる。
好ましくは、上記のガラス潤滑剤の供給開始後、延伸圧延開始までの時間tはさらに、式(2)の条件を満たす。
0.0022T−5.1T+2950<t<−0.74T+1010 (2)
この場合、炭素鋼においても、マンドレルミル圧延時の潤滑性を高めることができる。
以下、本実施形態の継目無鋼管の製造方法について詳述する。以下の説明で、化学組成及びガラス潤滑剤成分の「%」は「質量%」を意味する。
[製造方法]
本発明による継目無鋼管の製造方法は、Cr含有合金鋼又は炭素鋼からなる素材を穿孔圧延して中空素管を製造する穿孔圧延工程と、穿孔圧延工程後であって、延伸圧延工程前に、中空素管の内面に1価のアルカリ金属のほう酸塩を主体とするガラス潤滑剤を供給する供給工程と、ガラス潤滑剤を内面に供給された中空素管に対してマンドレルバーを挿入し、マンドレルミルを用いて延伸圧延を実施して継目無鋼管を製造する延伸圧延工程とを備える。以下、各工程について詳述する。
[穿孔圧延工程]
穿孔圧延工程では、穿孔圧延機を用いて、Cr含有合金鋼又は炭素鋼からなる素材を穿孔圧延して中空素管を製造する。
[素材]
本実施形態に用いる素材は、Cr含有合金鋼又は炭素鋼である。
Cr含有合金鋼とは、Crを0.30質量%以上含有する合金である。Cr含有合金鋼とはたとえば、ステンレス鋼、2Cr鋼及び9Cr鋼である。
ステンレス鋼とは、50%以上のFeを主成分とし、10.5質量%以上のCrを含有する合金鋼である。ステンレス鋼とはたとえば、JIS G4304(2012)に規定されるSUS304である。
炭素鋼とは、鉄と炭素の合金である鋼の一種で、一般的には炭素含有量が2.14質量%以下のものをいう。炭素鋼において、Cr含有量は0.30質量%未満である。炭素鋼とはたとえば、JIS G4051(2009)に規定されるS25Cである。
[穿孔圧延工程において、穿孔圧延終了直後の中空素管の内面温度(供給前内面温度):1100℃以上]
穿孔圧延工程において、穿孔圧延終了直後の中空素管の内面温度(供給前内面温度)は1100℃以上である。
穿孔圧延終了直後の中空素管の内面温度とは、穿孔圧延機において、一対の傾斜ロールの後端の出側に配置された放射温度計で測定した温度である。一対の傾斜ロールの後端の出側とは、穿孔圧延機の最後端から約1m前後位置のことをいう。
供給前内面温度が1100℃未満であるのは、操業上現実的ではない。供給前内面温度が1100℃未満であれば、その後のガラス潤滑剤の供給開始時の中空素管の内面温度Tも低下する。したがって、供給前内面温度は1100℃以上である。
[デスケーリング工程]
穿孔圧延工程の後に、デスケーリングを実施してもよい。デスケーリング工程では、得られた中空素管に対して、デスケーリングを実施する。
デスケーリング工程を実施する場合、デスケーリングの方法は特に問わない。デスケーリングはたとえば、高圧水により実施される。より具体的には、900℃以上の高温の鋼材表面に、3MPa〜100MPaの高圧水をノズルから噴射することで、鋼材表面のスケールを剥離させて除去する。
デスケーリングを実施する場合、ガラス潤滑剤供給前のスケールが除去される。上述のとおり、ガラス潤滑剤供給前のスケール厚が1μm以上であれば、溶融した潤滑剤が中空素管の内面に均一に分布する。そのため、1μm厚のスケールを形成するために、一定時間放置する必要がある。したがって、デスケーリングを実施する場合、上記の穿孔圧延終了直後からガラス潤滑剤を中空素管の内面に供給するまでの時間に代えて、デスケーリング終了からガラス潤滑剤の供給までの時間が5〜60秒であることが好ましい。
[供給工程]
供給工程では、穿孔圧延工程後、又は、デスケーリング工程後、延伸圧延工程前に、中空素管の内面に1価のアルカリ金属のほう酸塩を主体とするガラス潤滑剤を供給する。供給方法は特に限定されない。たとえば、スプレーによりガラス潤滑剤を供給する。
[穿孔圧延終了直後からガラス潤滑剤を中空素管の内面に供給するまでの時間(供給前保持時間):5〜60秒]
穿孔圧延工程での穿孔圧延終了直後から供給工程において、ガラス潤滑剤を中空素管の内面に供給するまでの時間は5〜60秒である。この場合、ガラス潤滑剤供給前のスケール厚を適度な厚さに調整できる。
供給前内面温度が1100℃以上であっても、供給前保持時間が5秒未満であれば、Cr含有合金鋼において、ガラス潤滑剤供給前のスケール厚を1μm以上とすることができない。この場合、濡れ性が低下し、ガラス潤滑剤の分布が不均一となる。この場合、延伸圧延時の潤滑性が低下する。したがって、供給前保持時間は5秒以上である。供給前保持時間は、好ましくは、10秒以上である。Cr含有合金鋼においては、供給前保持時間が60秒を超えても、ガラス潤滑剤供給前のスケール厚が厚くなりすぎることはない。
一方、炭素鋼においては、スケールが形成しやすい。したがって、供給前内面温度は1100℃以上であり、かつ、供給前保持時間が60秒を超えれば、炭素鋼において、ガラス潤滑剤供給前のスケール厚が厚くなりすぎる。この場合、ガラス潤滑剤供給後、潤滑剤へのスケールの溶融が不十分となり延伸圧延時の潤滑性が低下する。炭素鋼において、供給前保持時間が5秒未満の場合、管内面全体でのスケール形成にムラがあるため、潤滑剤が均一に分布し難い。
以上より、供給前保持時間は5〜60秒である。
[ガラス潤滑剤の供給開始時の中空素管の内面温度T(供給時加熱温度):1050℃以上]
ガラス潤滑剤の供給開始時の中空素管の内面温度T(供給時加熱温度T)は1050℃以上である。これにより、ガラス潤滑剤が中空素管の内面に十分に濡れ拡がる。
ガラス潤滑剤の供給開始時の中空素管の内面温度Tとは、ガラス潤滑剤供給ラインにおいて、管端から約1m前後の位置に配置された放射温度計で測定した温度である。中空素管の内面温度Tはたとえば、管端から内面へ向けて放射温度計で測定できる。
供給時加熱温度Tが低すぎれば、中空素管の内面において、溶融したガラス潤滑剤の分布が不均一になる。この場合、延伸圧延時の潤滑性が低下する。
したがって、供給時加熱温度Tは1050℃以上である。供給時加熱温度Tは、好ましくは、1100℃以上である。
[ガラス潤滑剤の供給開始後、延伸圧延開始までの時間t(反応時間t)について]
本実施形態の製造方法において、ガラス潤滑剤の供給開始後、延伸圧延開始までの時間t(反応時間t)は式(1)の条件を満たす。
t<−0.74T+1010 (1)
この場合、Cr含有合金鋼において、ガラス潤滑剤供給後、延伸圧延中のスケール厚を適度な厚さとすることができる。これにより、延伸圧延時の潤滑性が高まる。反応時間tが式(1)を満たさない場合、ガラス潤滑剤供給後、延伸圧延中のスケール厚が厚くなりすぎる。この場合、延伸圧延時の潤滑性が低下する。
反応時間tが式(2)を満たせば、炭素鋼においても、ガラス潤滑剤供給後、延伸圧延中のスケール厚を適度な厚さとすることができる。
0.0022T−5.1T+2950<t<−0.74T+1010 (2)
[延伸圧延直前のスケール厚]
延伸圧延直前のスケール厚、つまりガラス潤滑剤供給後、延伸圧延直前のスケール厚はたとえば、15μm以下である。これにより、延伸圧延時の潤滑性が高まる。
延伸圧延中のスケール厚の下限は特に限定されないが、好ましくは、1μmである。この場合、通常より過酷な条件で延伸圧延を実施しても、焼付きが生じにくい。この場合、高い潤滑性を保持することができる。
[ガラス潤滑剤]
ガラスとは、溶融物を結晶化することなく冷却して得られる無機物質の固体をいう。本実施形態において、ガラス潤滑剤は、1価のアルカリ金属のほう酸塩を主成分とする。主成分とは、たとえば、1価のアルカリ金属のほう酸塩を40質量%以上含有することを意味する。
ガラス潤滑剤の形態は特に限定されない。ガラス潤滑剤は、たとえば、粉体であってもいいし、チップ状であってもいい。好ましくは、ガラス潤滑剤は粉体である。
[1価のアルカリ金属のほう酸塩]
1価のアルカリ金属のほう酸塩は、スケールを溶解し、延伸圧延時の潤滑性を高める。好ましくは、ガラス潤滑剤中の1価のアルカリ金属のほう酸塩の含有量は40〜90%である。1価のアルカリ金属のほう酸塩の含有量が40%以上であれば、ガラス潤滑剤の粘性が適度になり、潤滑性がより高まる。1価のアルカリ金属のほう酸塩の含有量が90%以内であれば、その他の成分を適度に含有することができ、潤滑性がより高まる。1価のアルカリ金属のほう酸塩の含有量の好ましい含有量は50〜80%である。
1価のアルカリ金属のほう酸塩とはたとえば、ほう酸カリウム、ほう酸ナトリウムの無水塩、ほう酸ナトリウムの5水塩、ほう酸ナトリウムの10水塩、及び、ほう酸リチウムである。
さらに好ましくは、1価のアルカリ金属のほう酸塩は、ほう酸ナトリウムの5水塩である。ほう酸ナトリウムの5水塩は適正な結晶水を含んでいることから、発泡不良や結晶水の放水による凝縮の懸念がない。ほう酸ナトリウムの5水塩はさらに、粉体時の性質(貯蔵時の固化性、搬送時の流動性等)が良好である。ほう酸ナトリウムの5水塩はさらに、ガラス潤滑剤の塗布時において、ガラス潤滑剤の拡散性が高まる。
ガラス潤滑剤は、1価のアルカリ金属のほう酸塩以外のその他の成分を含有してもよい。その他の成分とはたとえば、ほう酸、酸化ほう素、脂肪酸のNa塩、及び、脂肪酸のCa塩である。
[ほう酸及び酸化ほう素]
ほう酸及び酸化ほう素は、含有される場合、スケールを溶解し、延伸圧延時の潤滑性を高める。
[脂肪酸のNa塩及び脂肪酸のCa塩]
脂肪酸のNa塩及び脂肪酸のCa塩は、含有される場合、ガラス潤滑剤の潤滑性を高める。脂肪酸のNa塩及び脂肪酸のCa塩はたとえば、飽和脂肪酸の塩、天然の植物油脂から得られる脂肪酸の塩、及び、動物油脂から得られる脂肪酸の塩である。飽和脂肪酸とはたとえば、ステアリン酸及びパルミチン酸である。天然の植物油脂から得られる脂肪酸とはたとえば、パーム油脂肪酸及びパーム核油の脂肪酸である。動物油脂から得られる脂肪酸とはたとえば、牛脂脂肪酸である。
好ましくは、ガラス潤滑剤中の脂肪酸のNa塩及び脂肪酸のCa塩の含有量は、合計で5〜30%であり、さらに好ましくは8〜20%である。
ガラス潤滑剤は、その他の補助潤滑剤を含有してもよい。
[その他の補助潤滑剤]
その他の補助潤滑剤とはたとえば、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、けい酸ナトリウム、けい酸カリウム、二酸化けい素、りん酸ナトリウムの無水塩、りん酸ナトリウムの水和物、りん酸カリウムの無水塩、りん酸カリウムの水和物、メタりん酸ナトリウム、メタりん酸カリウム及びトリポリりん酸ナトリウムである。
上記の補助潤滑剤は、潤滑剤の粘性を適正化し、潤滑剤を加工面に均一に分布させる。これにより、中空素管の内面全面において、潤滑性を高める。
好ましくは、上記の補助潤滑剤の含有量は、合計で5〜30%である。上記の補助潤滑剤の含有量が5%以上であれば、潤滑剤の粘性を適度に保つことができる。上記の補助潤滑剤の含有量が5%以上であればさらに、加工全面に亘る均一な潤滑性を確保することができる。上記の補助潤滑剤の含有量が30%以下であれば、粘性を適度に保ち、潤滑性をさらに高めることができる。上記の補助潤滑剤のさらに好ましい含有量は、合計で10〜20%である。
マンドレルバーの表面には、潤滑組成物を塗布する。この潤滑組成物及び塗布方法は特に限定されない。潤滑組成物としてはたとえば、国際公開第2005/056740号、特開平9−78080号公報及び特開平8−165489号公報で規定されているものを使用できる。塗布方法としてはたとえば、スプレーにより潤滑組成物を塗布する。塗布後、潤滑組成物を乾燥する。乾燥後のマンドレルバーを、延伸圧延に利用する。
[延伸圧延工程]
延伸圧延工程では、穿孔圧延工程後の中空素管、又はデスケーリング工程後の中空素管の内部にマンドレルバーを挿入し、延伸圧延機で延伸圧延を実施して、継目無鋼管を製造する。
本実施形態の延伸圧延工程において、製造条件は一般的な製造条件とする。一般的な製造条件とは、下記のとおりである。延伸比は、各スタンドで1.0〜1.6である。延伸比は、全スタンド総合で、1.0〜5.5である。相対速度比は、0.4〜1.5である。相対速度比は、(圧延入り側での材料速度/マンドレルバーの速度)で表される。
[仕上げ圧延工程]
延伸圧延後の鋼管に対して、仕上げ圧延を実施してもよい。仕上げ圧延工程では、延伸圧延後の鋼管を必要に応じて再加熱炉で再加熱する。再加熱した後、ストレッチレデューサ又はサイザーで仕上げ圧延実施して、所定寸法の継目無鋼管を製造する。
以上の工程により、継目無鋼管を製造することができる。
中空素管を想定し、Cr含有合金鋼の鋼板及び炭素鋼の鋼板を準備した。Cr含有合金鋼の鋼板の化学組成は、JIS G4304(2012)に規定されたSUS304に相当した。炭素鋼の鋼板の化学組成は、JIS G4051(2009)に規定されたS25Cに相当した。各鋼板に対して、図5に示す模擬延伸圧延試験を実施した。
図5を参照して、模擬延伸圧延試験装置10は、ロール11と、板状の工具材14とを備えた。鋼板12は上記Cr含有合金鋼の鋼板又は炭素鋼の鋼板とした。工具材14の化学組成は、JIS G4404(2006)に規定されたSKD61に相当した。
工具材14の上面に、潤滑組成物13を塗布した。潤滑組成物13の組成は、主に黒鉛であった。塗布された潤滑組成物13の平均膜厚は50μmであった。
鋼板12を窒素雰囲気で、表1及び表2の「穿孔圧延終了直後の中空素管の内面温度(供給前内面温度)」に示す温度に加熱した。鋼板12の上面に、ガラス潤滑剤を供給した。ガラス潤滑剤は、1価のアルカリ金属のほう酸塩を40重量%以上含むものであった。加熱後、ガラス潤滑剤を供給するまでの時間は、表1の「穿孔圧延終了直後からガラス潤滑剤を中空素管の内面に供給するまでの時間(供給前保持時間)」に示す時間とした。ガラス潤滑剤供給時の鋼板12の温度は、表1及び表2の「ガラス潤滑剤の供給開始時の中空素管の内面温度T(供給時過熱温度T)」に示す温度であった。
Figure 0006881165
Figure 0006881165
潤滑組成物13が塗布された工具材14の上面に、鋼板12を載せた。さらに、ロール11を鋼板12に荷重P1で押し付けて、30%の圧下率で圧延を実施した。ガラス潤滑剤供給から圧延開始までの時間は、表1の「ガラス潤滑剤の供給開始後、延伸圧延開始までの時間t(反応時間t)」であった。
実際の延伸圧延時では、マンドレルミルのロール周速V1と、マンドレルバーの圧延方向への移動速度V2が異なる。周速V1と速度V2との差により中空素管とマンドレルバーとの間に摩擦が生じる。
そこで、模擬延伸圧延試験では、ロール11の周速V1を78.5mm/sとし、工具材14の圧延方向への移動速度V2を40mm/sとした。V2/V1は0.51であった。
上記条件で鋼板12を圧延し、各潤滑組成物を用いた場合の延伸圧延工程における摩擦係数μ1を次の式で求めた。
摩擦係数μ1=工具材14に掛かる摩擦力F/ロール11を鋼板12に押し付ける荷重P1
実際の延伸圧延では、潤滑組成物が一度塗布されたマンドレルバーを、複数回の延伸圧延に利用する。そこで、本試験では、潤滑組成物ごとに、潤滑組成物を塗布後の工具材14に対して、模擬延伸圧延試験を2回実施し、1回目(1パス目)及び2回目(2パス目)の摩擦係数μ1をそれぞれ求めた。
1パス目及び2パス目の平均摩擦係数μ1が0.050以下の場合、潤滑性に優れると判断した(表1中及び表2で「◎」)。平均摩擦係数μ1が0.051〜0.070の場合、潤滑性が良好と判断した(表1中及び表2で「○」)。平均摩擦係数μ1が0.071〜0.080の場合、潤滑性は可と判断した(表1中及び表2で「△」)。平均摩擦係数μ1が0.081以上の場合、潤滑性が低いと判断した(表1及び表2中で「×」)。
[試験結果]
表1及び表2に試験結果を示す。表1及び表2を参照して、試験番号1〜47の延伸圧延時の製造条件は適切であった。その結果、試験番号1〜47では、延伸圧延時における優れた潤滑性を示した。
一方、試験番号48では、穿孔圧延終了直後の中空素管の内面温度が低すぎ、ガラス潤滑剤の供給開始時の中空素管の内面温度Tも低すぎた。その結果、延伸圧延時における潤滑性が低かった。
試験番号49では、穿孔圧延終了直後からガラス潤滑剤を中空素管の内面に供給するまでの時間が短すぎた。その結果、延伸圧延時における潤滑性が低かった。
試験番号50では、穿孔圧延終了直後からガラス潤滑剤を中空素管の内面に供給するまでの時間が長すぎた。その結果、炭素鋼において、延伸圧延時における潤滑性が低かった。
試験番号51では、穿孔圧延終了直後からガラス潤滑剤を中空素管の内面に供給するまでの時間が長すぎ、ガラス潤滑剤の供給開始時の中空素管の内面温度Tも低すぎた。その結果、延伸圧延時における潤滑性が低かった。
試験番号52〜試験番号55では、ガラス潤滑剤の供給開始後、延伸圧延開始までの時間tが、式(2)の下限以下であった。その結果、炭素鋼において、延伸圧延時における潤滑性が低かった。中空素管の内面に形成したスケールを十分溶融できなかったためと考えられる。
試験番号56〜試験番号58では、ガラス潤滑剤の供給開始後、延伸圧延開始までの時間tが、式(1)の上限以上であった。その結果、Cr含有合金鋼において、延伸圧延時における潤滑性が低かった。母材中のFeの酸化が促進され、スケールが増加したためと考えられる。
以上、本発明の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。したがって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。

Claims (1)

  1. Cr含有合金鋼からなる素材を穿孔圧延して中空素管を製造する穿孔圧延工程と、
    穿孔圧延工程後であって、延伸圧延工程前に、前記中空素管の内面に1価のアルカリ金属のほう酸塩を主体とするガラス潤滑剤を供給する供給工程と、
    前記ガラス潤滑剤を内面に供給された前記中空素管に対してマンドレルバーを挿入し、マンドレルミルを用いて延伸圧延を実施して継目無鋼管を製造する延伸圧延工程とを備え、
    前記穿孔圧延工程において、穿孔圧延終了直後の中空素管の内面温度が1100℃以上であり、
    穿孔圧延工程での前記穿孔圧延終了直後から前記供給工程において、前記ガラス潤滑剤を前記中空素管の内面に供給するまでの時間が5〜60秒であり、
    前記供給工程における前記ガラス潤滑剤の供給開始時の中空素管の内面温度Tが1050℃以上であり、
    前記供給工程における前記ガラス潤滑剤の供給開始後、延伸圧延開始までの時間t(秒)が式(1)の条件を満たす、継目無鋼管の製造方法。
    t<−0.74T+1010 (1)
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