JP5092656B2 - 電子回路部品、及びハードディスクドライブ用サスペンション - Google Patents
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Description
サスペンションは、高速で回転するディスク上をスキャンすることから細かな振動が加わる部材であるため、ディスクの動きに的確に追従する柔軟性のみならず、配線の密着強度、発塵、アウトガス等、厳しいスペックが求められている。
従来、この磁気ヘッドの静電破壊の課題については、特許文献1に開示されるように、HDDのヘッドサスペンションアセンブリのサスペンション上に位置した部分を除いて、配線パターン上の配線保護層上に帯電防止層を形成するなどして解決を図ってきた。しかしながら、磁気ヘッドの高性能化が進むに従い、サスペンション上に形成された配線パターン上に帯電した静電気によっても磁気ヘッドの静電破壊が発生するという問題が発生するようになってきた。
サスペンション上に発生する静電気に対しては、特許文献2において、全体を被覆するように導電性ポリマーが形成されたワイアレスサスペンションが提案されている。特許文献2に開示されている導電性ポリマーからなる帯電防止層の形成方法は、積層体を処理液中に浸漬して、サスペンションの全周を被覆するように導電性ポリマーを重合させながら析出させていく為、必要な箇所のみに直接パターン化して帯電防止層を設けることはできない。そのため特許文献2では、本来磁気ヘッドの静電破壊防止の観点からは必要のない配線層の裏面にも帯電防止層が形成されており、アウトガスの発生や発塵性が悪化する原因となる。
また、従来は特許文献1及び特許文献2に記載されているように、帯電防止層は、配線保護層上に別途設けられていた。このような場合には、帯電防止層自体の膜強度や膜の密着性が不十分になる場合があり、問題となっていた。
前記絶縁層は、耐熱性、信頼性、及び帯電防止性導体保護層の密着性の点から、前記絶縁層中にポリイミドが90重量%以上含まれることとしている。また、絶縁層、及び帯電防止性導体保護層に同一の物質を用いることで積層体全体の反りを抑制できる。
また、前記帯電防止性導体保護層が、塗布、乾燥後にフォトリソグラフィー法によってパターンを形成されていることも好ましい。ポリイミド又はポリイミド前駆体に感光性を付与するなどして、ポリイミド及び/又はポリイミド前駆体、及び導電性微粒子を含む感光性樹脂組成物を用いて直接フォトリソグラフィー法でパターン形成されても良い。或いは、非感光性のポリイミド又はポリイミド前駆体を用いる場合は、塗布膜上にレジストパターンを形成しそれをマスクとしてパターン形成しても良い。
本発明においては、導体保護層が帯電防止層を兼ねているので、別途帯電防止層を設ける必要がなく、帯電防止層の密着性及び膜強度の問題が解消される上、工程数を減らすことができ、生産性が向上する。
なお本発明において、露光するのに用いる光には、可視及び非可視領域の波長の電磁波だけでなく、電子線のような粒子線、及び、電磁波と粒子線を総称する放射線又は電離放射線が含まれる。
本発明は、電子回路部品、及びハードディスクドライブ用サスペンションに関するものである。以下、電子回路部品及びハードディスクドライブ用サスペンションについて順に説明する。
本発明の電子回路部品は、第一の導体層と、当該第一の導体層上に形成された絶縁層と、当該絶縁層上に当該絶縁層の一部が露出するように形成された第二の導体層と、少なくとも当該絶縁層及び当該第二の導体層上にそれらの一部が露出するように形成された導体保護層とを備えた積層体を含有する電子回路部品であって、当該導体保護層が、ポリイミドと導電性微粒子を含有する帯電防止性導体保護層であることを特徴とするものである。
本発明の電子回路部品100は、第一の導体層1と、当該第一の導体層1上に形成された絶縁層2と、当該絶縁層2上に当該絶縁層2一部が露出するように形成された第二の導体層3と、少なくとも当該絶縁層2及び当該第二の導体層3上にそれらの一部が露出するように形成された帯電防止性導体保護層4とを備えた積層体を含有する。本発明における帯電防止性導体保護層4は、前記第二の導体層3及び前記絶縁層2に少なくとも接触するように設けられるが、図1及び図2のように、第一の導体層1とも接触するように設けられても良い。前記第一の導体層1は、通常、配線、及び/または支持体の役割を担うものであり、前記第二の導体層3は、通常、配線層である。帯電防止性導体保護層4は、通常、第二の導体層間を絶縁しつつ第二の導体層を保護する役割を担い、図1の平面図に示されるように、絶縁層2及び当該第二の導体層3の一部が露出するように形成されている。この露出される一部は、電子回路部品の端子接続部や、屈曲部などが挙げられる。そして、帯電防止性導体保護層4は、ポリイミドと導電性微粒子を含有してなるものであって静電破壊を防止する機能をも有する。
<第一の導体層>
上記積層体を構成する第一の導体層1は、導体から構成されていれば特に限定されないが、強度、導電抵抗の点から、金属層であることが好ましく、特にステンレス、銅、銅を含む合金からなることが好ましい。上記積層体を構成する第一の導体層1は、通常、電子回路部品の配線、または支持体として用いられ、この場合、金属板が好適に用いられる。HDD用サスペンションとして用いる場合には、第一の導体層は、よりバネ性の高いステンレスからなることが特に好ましい。また、第一の導体層は、目的に応じてバネとしての機能を発現しやすい形状や、配線の形状にパターニングされていても良い。更に、第一の導体層は、密着性改善の為等の理由で表面処理が施されていても良い。
上記積層体を構成する第一の導体層1は、1μm〜500μmの厚みであることが好ましく、1μm〜200μmの厚みであることが特に好ましい。
第二の導体層3は、後述する絶縁層の一部が露出するように形成されるものであり、通常、配線層として形成される。第二の導体層としては、導体から構成されていれば材料は特に限定されないが、導電性、信頼性、及びコストの観点から、ステンレス、銅、銅を含む合金が好ましい。第二の導体層を配線として用いる場合には銅や銅合金であることが好ましく、配線の形状にパターニングされていることが好ましく、密着性改善の為等の理由で表面処理が施されていても良い。
第二の導体層は0.1μm〜50μmの厚みであることが好ましく、0.5μm〜20μmの厚みであることが特に好ましい。
絶縁層2については、絶縁材料から構成されていればよい。絶縁材料としては、例えば、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンなどのビニル重合系樹脂、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルケトン、ポリサルフォンなどの縮合重合系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。中でも、絶縁信頼性、耐熱性、絶縁層上に接触して設けられるポリイミドと導電性微粒子を含む帯電防止性導体保護層との密着性の観点から、絶縁層2がポリイミドを主成分とすることが好ましい。ここで絶縁層の主成分とするとは、絶縁信頼性及び耐熱性の効果を損なわれない限り、上記ポリイミドの他に、更に他の絶縁材料やその他の成分が添加されていても良い旨を表し、上記ポリイミドは50重量%超過で含まれる意味である。ポリイミドは、より好ましくは絶縁層の90重量%以上、より更に好ましくは絶縁層の95重量%以上で用いられることが好ましい。
なおここで、本発明における線熱膨張係数は、熱機械的分析装置(例えばThermo Plus TMA8310(リガク社製)によって、昇温速度を10℃/min、加重を5gとして得られる値である。
感光性ポリイミドを用いた場合は、プロセスを短縮でき低コストで生産できるといったメリットがあり、非感光性のポリイミド又はポリイミド前駆体を用いた場合は、ポリイミド中に含まれる添加剤がない、または添加剤の量が少ないのでアウトガスの発生が抑制されるといったメリットがある。
本発明における帯電防止性導体保護層4は、ポリイミドと導電性微粒子を含有し、少なくとも前記絶縁層2及び前記第二の導体層3上にそれらの一部が露出するように形成される。本発明における帯電防止性導体保護層4は、第二の導体層間を絶縁しつつ第二の導体層を保護する役割を担う層と電子回路部品の静電破壊を防止する層を1層で兼ね備えた層である。
本発明における帯電防止性導体保護層4は、絶縁層2及び第二の導体層3と接触するように設けられて、絶縁層や第二の導体層上に帯電した静電気によっても電子回路部品の静電破壊を防止することができる。本発明における帯電防止性導体保護層4は、前記第二の導体層3及び前記絶縁層2に少なくとも接触するように設けられるが、図1及び図2のように、第一の導体層1とも接触するように設けられることが、更に帯電防止性能を向上する点から好ましい。但し、本発明において帯電防止性導体保護層は、低発塵、低アウトガス等の特性を向上する点から、前記積層体表面の全体ではなく、静電破壊防止の点から必要な所望の箇所のみ、積層体表面の一部となるように形成される。すなわち、本発明に係る電子回路部品においては、前記帯電防止性導体保護層が、前記第一の導体層の前記絶縁層が形成されている面と反対側の面には形成されていないことが好ましい。
更に、ポリイミドのパターン形成能、耐熱性、機械強度、下地となる絶縁層との密着性と、導電性微粒子の帯電防止性能及び耐熱性が相俟って、所望の位置に、密着性、膜強度、及び耐熱性が優れた帯電防止性導体保護層を設けることが可能になる。その結果、本発明においては、低発塵、低アウトガス等の特性を満たしつつ、実装される素子の静電破壊が抑制されるという電子回路部品を得ることができる。
一般に同じ組成の帯電防止剤を用いた場合、厚みが厚いと表面抵抗が下がり、厚みが薄いと表面抵抗があがる傾向がある。その為、表面抵抗が1.0×105Ω/□未満だと第二の導体層間をショートさせてしまい、1.0×1010Ω/□超過だと帯電防止性能が不十分であることから、表面抵抗率が1.0×105Ω/□以上、1.0×1010Ω/□以下の範囲に入るように、適宜、膜厚にあわせて、導電性微粒子の配合量を設定することが必要である。
なお、表面抵抗率は、JIS−K6911に準拠して、抵抗測定装置(三菱化学製ハイレスタUP MCP−HT450型)を用いて測定することができる。
ここで、平均粒径は、動的光散乱法、静的光散乱法等を利用する粒度分布計等により計測することができる。光散乱法を利用できない場合には、透過型電子顕微鏡(TEM)等により得られる二次電子放出のイメージ写真からの目視やイメージ写真を画像処理することにより求めても良い。写真から平均粒径を求める場合には、粒子の長径から平均を求める。
分散性及びコストの観点からは、導電性微粒子の添加量は少ないほうが好ましく、帯電防止性導体保護層中のポリイミドの固形分100重量部に対して、導電性微粒子は0.1重量部以上200重量部以下となる量を添加することが好ましい。
低膨張性ポリイミドの多くは耐溶剤性が高くポリイミドの状態では溶媒に溶解しない。その為、溶媒に可溶であるポリイミド前駆体の状態で塗布、パターニングされた後、加熱等の処理によりイミド化されて、ポリイミドとされることが、コストや構造選択の自由度の関係から好ましい。
閉環したポリイミドを用いると塗布後に溶媒を除去するのみで、前駆体のようにイミド化の工程を必要としないので、熱処理条件をより温和な条件で行えると言うメリットもある。
ここで、全芳香族ポリイミド前駆体とは、芳香族酸成分と芳香族アミン成分の共重合、又は、芳香族酸/アミノ成分の重合により得られるポリイミド前駆体及びその誘導体である。また、芳香族酸成分とは、ポリイミド骨格を形成する4つの酸基が全て芳香族環上に置換している化合物であり、芳香族アミン成分とは、ポリイミド骨格を形成する2つのアミノ基が両方とも芳香族環上に置換している化合物であり、芳香族酸/アミノ成分とはポリイミド骨格を形成する酸基とアミノ基がいずれも芳香族環上に置換している化合物である。ただし、後述する原料の具体例から明らかなように、全ての酸基又はアミノ基が同じ芳香環上に存在する必要はない。
さらに、上記のジアミンにおいて、他のベンゼン環との結合に関与せず、ベンゼン環上のアミノ基が置換していない位置に置換基を有するジアミンも用いることができる。これら置換基は、1価の有機基であるがそれらは互いに結合していてもよい。
具体例としては、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル等が挙げられる。
ここで、選択されるジアミンは耐熱性の観点より芳香族ジアミンが好ましいが、目的の物性に応じてジアミンの全体の60モル%、好ましくは40モル%を超えない範囲で、脂肪族ジアミンやシロキサン系ジアミン等の芳香族以外のジアミンを用いても良い。
上記溶解速度を測定する具体的手順としては、無アルカリガラス等の基板上に形成された高分子前駆体の塗膜を、25℃に調温され、撹拌された現像液(この場合0.1重量%TMAH水溶液または、2.38重量%TMAH水溶液)に一定時間、浸漬し、蒸留水でリンス後、乾燥させた後で測定した膜厚と、初期膜厚との差を、膜減り量とし、その膜減り量を、現像液に浸漬した時間で割ったものが、25℃における単位時間当たりの溶解速度ということになる。
ここで用いている分子量とは、公知の手法により得られる分子量であり、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の値が例示される。この場合、ポリイミド前駆体そのものの分子量でも良いし、無水酢酸等で化学的イミド化処理を行った後のものでも良い。
感光性ポリイミドを用いる場合には、工程を短縮できる為、低コストで生産できるという利点がある。ポリイミドとして、感光性ポリイミド又は感光性ポリイミド前駆体を用いる場合には、導電性微粒子として金属酸化物を用いることが好ましい。炭素系微粒子を用いると、光を透過しにくい為、感度が低く生産性が悪い。一方で、金属酸化物微粒子は、光の透過性が良好なものが多く、感光性ポリイミドを用いたときに感度が良好となる。
本発明の帯電防止性導体保護層には、その他に、微粒子の分散性、及び、分散安定性を向上させるため、成膜性を向上させる為等の目的で、界面活性剤等の添加剤を含んでも良い。添加剤は導体層の腐食を抑制する為にスルホン酸等の酸成分を含まないほうが好ましく、添加剤自身のpHが6より大きいことが好ましい。
その他の添加剤としては、例えば、染料、レベリング剤、可塑剤等を用いることができる。なお、HDD用サスペンションとして用いられる場合には絶縁層、及び帯電防止性導体保護層は、シリコーン成分を含まないことが磁気ディスク表面の汚染防止の点から好ましい。
本発明に係る電子回路部品においては、前記帯電防止性導体保護層が、少なくともポリイミド及び導電性微粒子を含む樹脂組成物を塗布することにより形成されていることが、前記絶縁層及び前記第二の導体層上にそれらの一部が露出するように所望の形状にパターン化して形成しやすく、また、作業性、膜厚制御の正確性及び製造コスト抑制の観点から好ましい。
まず、第一の導体層、絶縁層、第二の導体層がこの順に、それぞれ所望の形状にパターン化されて形成されている積層体を準備する。
この積層体上の所定の位置に、イミド化後の膜厚が、10μmとなるようにポリアミック酸、導電性微粒子、添加剤等その他の成分を溶剤に溶解乃至分散させた帯電防止性導体保護層形成用樹脂組成物を、上記で得られた積層体上の所望の位置に塗布し、乾燥させる。当該塗膜上にレジストを塗布し、乾燥させる。そこへ、所望の形状のパターンが形成されたマスクを介して紫外光を露光し、アルカリ水溶液で、レジスト層、ポリアミック酸層を一括して現像を行う。その後、150℃〜230℃の温度で30秒から60分程度加熱を行った後、アルカリ溶液によってレジスト層を剥離する。
その後、窒素雰囲気下、230℃〜450℃の間の温度で加熱し、ポリアミック酸を完全にイミド化した帯電防止性導体保護層を有する積層体となる。
レジストはネガ型でも、ポジ型でも特に限定されないが、水系の溶液で剥離できることが環境の面から好ましい。
レジスト層の厚みは、特に限定されるものではないが、通常、0.5μm〜100μmとなるように形成される。
選択的に露光する方法としては、例えば、マスクを介して投影露光する方法等が挙げられる。露光工程に用いられる露光方法や露光装置は特に限定されることなく、密着露光でも間接露光でも良くステッパー、スキャナー、アライナー、密着プリンター、レーザー、電子線描画等、公知のあらゆる手段を用いることができる。
しかし、廃棄物処理の観点、及び工程短縮から、後述の剥離工程と同様に、塩基性水溶液による現像がこのましい。特に有機アルカリ水溶液による現像が好ましく、その中でも水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液が好ましい。濃度は、0.01重量%〜70重量%の間が好ましい。0.01重量%未満であるとネガ型レジストの露光部の溶解性が乏しく現像がうまくできない。70重量%を超えると未露光部が膨潤し目的のパターンを得にくくなる。
現像方法は、ディップ法でもスプレー法でも、液中スプレー法でも良く、特に限定されない。
レジスト層の剥離としては、レジストが膨潤して剥離する場合と、溶解して剥離される場合、その両方が組み合わさった場合がある。
水溶性アミンの水に対する濃度は、0.01重量%〜30重量%の間が好ましく、0.5〜20重量%の間がより好ましい。0.01重量%未満であるとレジストの露光部の溶解性が乏しくレジストパターンの剥離がうまくできない。30重量%を超えると帯電防止性導体保護層パターンが膨潤したり、溶出したりして目的の帯電防止性導体保護層パターンを得にくくなる。
これら1〜4級アミンは、置換基を有していてもよく、特に、水酸基を有する脂肪族アミンが剥離に対して有効である。具体的には、上記塩基性水溶液で述べたようなアミンなどが例示されるが特に限定されない。
通常剥離は、剥離液が液体の状態で存在できる温度で行うが、剥離に要する時間を短縮させるには、剥離液の温度をより高くすることが好ましい。アミン等の塩基性物質を含有する組成物の温度は、通常0℃以上100℃以下で、レジスト層を剥離する。剥離液が水溶液の場合は、0℃〜95℃の間が好ましく、10℃〜85℃がさらに好ましく、20℃〜70℃の間がさらに好ましい。0℃未満であると、剥離に時間を要し、95℃を超えると、剥離液が揮発しやすくなり、内容物の濃度が変化しやすい、さらには帯電防止性導体保護層パターンに対してダメージを与えやすくなる、といった問題がある。
剥離方法は、ディップ法でもスプレー法でも、液中スプレー法でも良く、特に限定されない。
このようにして、所望の位置に帯電防止性導体保護層のパターンを形成することができる。
本発明に係るハードディスクドライブ用サスペンションは、前記本発明に係る電子回路部品の構成を有するものである。本発明に係るハードディスクドライブ用サスペンションは、ハードディスクドライブの磁気ヘッドを支持している部品である。
本発明に係るハードディスクドライブ用サスペンションは、前記本発明に記載の帯電防止性導体保護層を有することにより、各種部品の実装時の静電気による静電破壊を抑制できる。
本発明のハードディスクドライブ用サスペンション101は、金属基板10と、当該金属基板10上に形成されたポリイミドパターンである絶縁層20と、当該絶縁層20上に当該絶縁層20の一部が露出するように形成された配線層30と、当該絶縁層20及び配線層30上にそれらの一部が露出するように形成された帯電防止性配線保護層40とを備えた積層体を含有する。前記金属基板10は、通常、配線、及び/または支持体であってバネの役割を担うものである。帯電防止性配線保護層40は、ポリイミドと導電性微粒子を含有しているポリイミドパターンであって、配線層間を絶縁しつつ配線層を保護する役割と、実装時の静電気による静電破壊を防止する性能を担い、図3の平面図に示されるように、絶縁層20及び配線層30の一部が露出するように形成されている。この露出される一部は、ハードディスクドライブ用サスペンションの端子接続部や、屈曲部などが挙げられる。本発明における帯電防止性配線保護層40は、前記配線層30及び前記絶縁層20に少なくとも接触するように設けられるが、図3及び図4のように、金属基板10とも接触するように設けられることが、更に帯電防止性能を向上する点から好ましい。
次に、配線の形状の開口部に銅めっきを行った後、レジストを剥離する。その後、基板の裏面をマスクし、希塩酸水溶液等を用い、銅配線及びシード層の表層をエッチングする。ここで、シード層が露出している部位を完全に除去すると、独立した銅配線層が形成された基板となる。次に当該銅配線層が形成された基板上に、所望の形状でポリイミドパターンを形成し、帯電防止性配線保護層40を形成する。
(製造例1:ポリイミド前駆体1の調製)
4,4’−ジアミノジフェニルエーテル 0.96g(4.8mmol)とパラフェニレンジアミン 0.13g(1.2mmol)を50mlの3つ口フラスコに投入し、5mlの脱水されたN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解させ窒素気流下、氷浴で冷却しながら撹拌した。そこへ、少しずつピロメリット酸二無水物 1.31g(6mmol)を添加し、添加終了後、氷浴中で5時間撹拌し、ポリイミド前駆体溶液1を得た。
トーカブラック#5500(東海カーボン製カーボンブラック、平均粒径25nm)3g、 製造例1で得られたポリイミド前駆体1 27g、 NMP 270gを粒径2mmのジルコニアビーズを用いてペイントシェーカーによって2時間処理した後、ジルコニアビーズを加圧濾過することで、帯電防止性導体保護層形成用樹脂組成物1を調製した。
ステンレス箔(新日本製鉄製SUS304 H−TA;厚さ20μm)からなる金属基板上に、低膨張性ポリイミドからなる絶縁層が設けられ、絶縁層上に更に電解銅箔(厚さ10μm)が設けられた積層材料を得た。前記低膨張性ポリイミドとしては、ポリイミド前駆体溶液1を塗布、乾燥後、350℃1時間窒素中で加熱することにより得られるポリイミドを用いた(線熱膨張係数 21ppm)。低膨張性ポリイミドの厚さは、約10μmに調整し、熱膨張率は積層体としたときに反りが発生しないように調整してある。低膨張性ポリイミドは以下に示すポリイミドエッチング液に対し、良好なエッチング特性を示しそのエッチングレートが1μm/min〜15μm/minの間に入るものを用いた。
PPY−12(丸菱油化製、ポリピロール系樹脂)9g、 FINTEX ES−2200(大日本インキ製、アニオン性水溶性ポリエステル溶液)8g、水86gを300mlの三角フラスコ中で混合し、帯電防止層形成用比較樹脂組成物1を調製した。
製造例3で作成した積層体の、絶縁層、配線層が形成されている面のみ全面に、帯電防止性配線保護層形成用樹脂組成物1を乾燥後配線上の厚みが8±2μmになるようにバーコートし、熱風循環式オーブンで80℃で、30分乾燥させた。その後、厚み38μmのアルカリ現像型ドライフィルムレジスト302J38E(ニチゴーモートン製)を真空ラミネーターで0.5Mpaに減圧し、熱板の表面の温度70℃で、ラミネートし、15分室温で放置することで、帯電防止性配線保護層形成用樹脂塗膜上にネガ型レジスト膜が形成された積層体を作成した。
そのサンプルを、60℃の9:1:90の2−アミノエタノール:サーフィノール104A(日信化学工業製):蒸留水という混合比で作製した剥離液に7分浸漬し、その後、蒸留水でリンスを行い、ネガ型レジストパターンのみ剥離した。
その後、窒素雰囲気下、350℃1時間加熱し、帯電防止性配線保護層形成用樹脂塗膜のポリイミド前駆体を完全にイミド化し、所望の形状に帯電防止性導体保護層が形成された積層体を得た。
上記の処理の後、製造例3の配線層の形成と同様にステンレス箔を所望のパターンにエッチングすることにより、ステンレス箔/ポリイミドパターンからなる絶縁層/配線層/ポリイミドパターンからなる帯電防止性配線保護層がこの順に積層されたサスペンションを作成した。
実施例1において、製造例3で作成した積層体の、絶縁層、配線層が形成されている面のみ全面に、帯電防止性配線保護層形成用樹脂組成物1を用いて帯電防止性配線保護層を形成する代わりに、製造例1で得られたポリイミド前駆体1を用いて配線保護層とした以外は、実施例1と同様にして、比較例1のステンレス箔/ポリイミドパターンからなる絶縁層/配線層/ポリイミドパターンからなる配線保護層がこの順に積層されたサスペンションを作成した。
比較例1で得られたサスペンション上に厚み38μmのアルカリ現像型ドライフィルムレジスト302J38E(ニチゴーモートン製)を真空ラミネーターで0.5MPaに減圧し、熱板の表面の温度70℃で、15分室温で放置することで、配線保護層のポリイミドの膜上にネガ型レジスト膜が形成された積層体を作製した。
次に手動露光装置(大日本スクリーン株式会社製、MA−1200)を用いて、所望のパターンが描かれたフォトマスクを介して50mJ/cm2 (i線換算)で露光し、0.8wt%の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液(液温25度)を用いてコンベア式スプレー現像装置を用い、ネガ型レジストの現像を行い、その後、蒸留水によってリンスを行い温風乾燥させ配線保護層のポリイミドパターン、銅配線層、絶縁層のポリイミドパターン、ステンレス箔が露出するような開口部を有するレジストパターンを得た。
そのパターン上から、比較製造例1で調製した帯電防止層形成用比較樹脂組成物1を、所望の形状に開口部を有するステンレス製マスクを介して、前記配線保護層の全面を覆い、配線層、絶縁層、ステンレス箔の絶縁層が積層されている側の表面に接触する箇所のみに乾燥後膜厚500nmになるように塗布し、160℃3分間の熱処理を行った。ステンレス箔の絶縁層が積層されていない側の表面には帯電防止層形成用比較樹脂組成物1は塗布していない。
そのサンプルを、60℃の9:1:90の2−アミノエタノール:サーフィノール104A(日信化学工業製):蒸留水という混合比で作製した剥離液に7分浸漬し、その後、蒸留水でリンスを行い、ネガ型レジストパターンのみ剥離し、所望の形状に帯電防止層が形成されたサスペンションを得た。
(1)帯電防止性評価
実施例1と同様の手法で、以下のような表面抵抗測定用サンプルを形成した。5cm×5cmの第一の導体層、絶縁層、第二の導体層からなる積層体から、第二の導体層を全面剥離し、露出した絶縁層上の全面に、製造例3の帯電防止性導体保護層を8±2μmの厚みで形成し、実施例1に対応する表面抵抗測定用サンプルを得た。同様にして、製造例1のポリイミド前駆体を用いて、比較例1に対応する表面抵抗測定用比較サンプルを得た。
また同様にして、比較例1に対応するサンプル上に比較製造例1で調製した帯電防止層形成用比較樹脂組成物1の層を形成した比較例2に対応するサンプルも得た。
表面抵抗率は、JIS−K6911に準拠して、抵抗測定装置(三菱化学製ハイレスタUP MCP−HT450型)を用いて測定した。
その結果、実施例1に対応したサンプルは6.9×106Ω/□であった。一方、比較例1に対応したサンプルは、1.2×1013Ω/□、比較例2に対応したサンプルは、9.6×105Ω/□であった。
実施例1、比較例1、及び比較例2で作成したサンプル1ピース(50mm×5mm)を10ピース分、窒素雰囲気下250℃1時間加熱し、発生したガスを、パージアンドトラップ法により、−40℃に冷却した吸着管で捕集した後、吸着管を255℃30秒加熱し、気化したガスをGC−MS(株式会社島津製作所製 QP−5000)を用いて分析した。
その結果、実施例1で作成したサンプル、比較例1で作成したサンプル双方とも、アウトガスが検出されなかった。一方で、比較例2で作成したサンプルからは、水溶性ポリエステル由来の分解物と推測される成分が検出された。
実施例1の導電性微粒子を含むポリイミドからなる帯電防止性配線保護層であっても、導電性微粒子を含まないポリイミドと同様の耐熱性が維持され、低アウトガスを実現することが明らかにされた。
2 絶縁層
3 第二の導体層
4 帯電防止性導体保護層
10 金属基板
20 絶縁層
30 配線層
40 帯電防止性配線保護層
100 電子回路部品
101 ハードディスクドライブ用サスペンション
Claims (12)
- 第一の導体層と、当該第一の導体層上に形成された絶縁層と、当該絶縁層上に当該絶縁層の一部が露出するように形成された第二の導体層と、少なくとも当該絶縁層及び当該第二の導体層上にそれらの一部が露出するように形成された導体保護層とを備えた積層体を含有する電子回路部品であって、当該導体保護層が、ポリイミドと導電性微粒子を含有する帯電防止性導体保護層であり、前記絶縁層中にポリイミドが90重量%以上含まれ、且つ、前記帯電防止性導体保護層におけるポリイミドと前記絶縁層におけるポリイミドが同一のポリイミドであることを特徴とする電子回路部品。
- 前記帯電防止性導電保護層の厚みが0.1μm以上50μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の電子回路部品。
- 前記帯電防止性導電保護層の表面抵抗率が1.0×105Ω/□以上、1.0×1010Ω/□以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電子回路部品。
- 前記導電性微粒子が、金属酸化物微粒子、及び/又は、炭素系微粒子であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに電子回路部品。
- 前記導電性微粒子の平均粒径が、1nm以上、1μm以下であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の電子回路部品。
- 前記帯電防止性導体保護層の線熱膨張係数が0ppm以上、40ppm以下であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の電子回路部品。
- 前記第二の導体層が、銅又は銅を含む合金によって形成されていることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれかに記載の電子回路部品。
- 前記第一の導体層がステンレスからなることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれかに記載の電子回路部品。
- 前記帯電防止性導体保護層が、ポリイミド及び/又はポリイミド前駆体、及び導電性微粒子を含む樹脂組成物を塗布して形成されていることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれかに記載の電子回路部品。
- 前記帯電防止性導体保護層が、ポリイミド及び/又はポリイミド前駆体、及び導電性微粒子を含む感光性樹脂組成物を用いて形成されていることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれかに記載の電子回路部品。
- 前記帯電防止性導体保護層が、塗布、乾燥後にフォトリソグラフィー法によってパターンを形成されていることを特徴とする、請求項9又は請求項10に記載の電子回路部品。
- 請求項1乃至11のいずれかに記載の電子回路部品の構成を有する、ハードディスクドライブ用サスペンション。
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