JP5092653B2 - ハードディスクドライブ用サスペンション - Google Patents

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Description

本発明は、ポリピロール系樹脂を含有する帯電防止剤を塗布されることにより、帯電防止性を付与された、電子回路部品、特にハードディスクドライブ用サスペンションに関する。
半導体技術の飛躍的な発展により半導体パッケージの小型化、多ピン化、ファインピッチ化、電子回路部品の極小化などが急速に進み、いわゆる高密度実装の時代に突入した。それに伴い、プリント配線基板も片側配線から両面配線へ、さらに多層化、薄型化が進められている(非特許文献1)。
パーソナルコンピューターや、携帯用音楽プレーヤー、DVDプレーヤーなどの記録装置として用いられるハードディスクドライブ(以下、HDDと略することがある。)は、それらの製品の世界的な普及と共に生産量が急激に伸びている。また、単位面積あたりの記録容量の増大に伴い、磁気情報をディスクから読み取る磁気ヘッドの高性能化が進んでいる。さらに磁気ヘッドを支持しているサスペンションといわれる部品も、ステンレスのばねに、銅配線を接続するワイヤードサスペンションから、小型化への対応のためステンレスのばねに直接銅配線が形成されているワイヤレスサスペンションといわれるものへと主製品が移り変わってきた。
このようなワイヤレスサスペンションはステンレス基材上に絶縁層としてポリイミドが施され、さらにその上部に銅配線が形成された構造となっている。また、近年、より高い信頼性が求められていることから、銅配線を覆うようにポリイミド等によって配線保護層を設ける場合も多くなっている。
サスペンションは、高速で回転するディスク上をスキャンすることから細かな振動が加わる部材であるため、ディスクの動きに的確に追従する柔軟性のみならず、配線の密着強度、発塵、アウトガス等、厳しいスペックが求められている。
磁気ヘッドの微細化、高機能化に伴い、絶縁膜の薄膜化等の影響で磁気ヘッド自体が静電的に破壊されやすくなってきており、磁気ヘッドに接続される部品や基板の帯電による製造時の歩留まり低下が問題となっている。
従来、この磁気ヘッドの静電破壊の課題については、特許文献1に開示されるように、HDDのヘッドサスペンションアセンブリのサスペンション以外の部分に形成されている配線パターン上の配線保護層上に帯電防止層を形成するなどして解決を図ってきた。しかしながら、磁気ヘッドの高性能化が進むに従い、サスペンション上に形成された配線層上に帯電した静電気によっても磁気ヘッドの静電破壊が発生するという問題が発生するようになってきた。
特開平11−250434号公報 特開2003−203436号公報 岩田,原園,「電子材料」,1996,35(10) ,p.53.
このように、磁気ヘッドの静電破壊に対する対策として、磁気ヘッドの高性能化、サスペンションの薄膜、微細化という状況の中、サスペンション自体に対する帯電防止処理が必須となってきている現状がある。
サスペンション上に発生する静電気に対しては、特許文献2において、全体を被覆するように導電性ポリマーが形成されたワイアレスサスペンションが提案されている。特許文献2に開示されている導電性ポリマーからなる帯電防止層の形成方法は、積層体を処理液中に浸漬して、サスペンションの全周を被覆するように導電性ポリマーを重合させながら析出させていく為、必要な箇所のみに直接パターン化して帯電防止層を設けることはできない。そのため特許文献2では、本来磁気ヘッドの静電破壊防止の観点からは必要のない配線層の裏面にも帯電防止層が形成されており、アウトガスの発生や発塵性が悪化する原因となる。帯電防止層は、通常、最終工程で電子回路部品の最表面に設けられるために、適切に設けないとアウトガスや発塵の発生源になりやすいものである。
本発明は、上記実情を鑑みて成し遂げられたものであり、サスペンション等の電子回路部品に本来求められている、低発塵、低アウトガス等の特性を満たしつつ、密着性及び膜強度が優れた帯電防止層を備えて静電破壊が防止された電子回路部品、特にHDD用サスペンションを提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するために、本発明は、第一の導体層と、当該第一の導体層上に形成された第一の絶縁層と、当該第一の絶縁層上に当該第一の絶縁層の一部が露出するように形成された第二の導体層と、当該第一の絶縁層及び当該第二の導体層上にそれらの一部が露出するように形成された第二の絶縁層とを備えた積層体を含有するハードディスクドライブ用サスペンションであって、当該第二の絶縁層、当該第二の導体層、及び当該第一の絶縁層に少なくとも接触し、且つ前記積層体表面の一部となるように帯電防止層が形成されており、当該帯電防止層が、ポリピロール系樹脂および架橋成分を含有していることを特徴とするハードディスクドライブ用サスペンションを提供する。
本発明によれば、上記帯電防止層が、ポリピロール系樹脂及び架橋成分を含有して、所望の位置のみに形成されていることにより、低発塵、低アウトガス等の特性を満たしつつ、密着性及び膜強度が優れた帯電防止層を備えて静電破壊が防止された帯電防止層付きHDD用サスペンションを提供することができる。
本発明に係るハードディスクドライブ用サスペンションにおいては、上記帯電防止層が、更にバインダー樹脂を含んでいることが、帯電防止層の可撓性、膜の強度を向上させる点から好ましい。その結果、電子部品としての発塵性が抑制される。
また、本発明に係るハードディスクドライブ用サスペンションにおいては、上記帯電防止層の厚みが0.01μm以上5μm以下であることが好ましく、そのときに示す表面抵抗率が1.0×10Ω/□以上、1.0×1010Ω/□以下であることが、本発明のハードディスクドライブ用サスペンションに実装される素子の静電破壊を抑制する点から好ましい。一般に同じ組成の帯電防止剤を用いた場合、厚みが厚いと表面抵抗が下がり、厚みが薄いと表面抵抗があがる傾向がある。表面抵抗率が1.0×10Ω/□未満だと配線間をショートさせてしまい、1.0×1010Ω/□超過だと帯電防止性能が不十分である恐れがある。従って、表面抵抗率が1.0×10Ω/□以上、1.0×1010Ω/□以下の範囲に入るように、適宜膜厚を設定することが好ましく、一般に0.01μm以上の厚みが必要である。また、一般にポリピロール系樹脂は、線熱膨張係数が導体層に比べて大きい事が多いことから、前記積層体が薄い場合は、帯電防止層の膜厚が厚くなると、線熱膨張係数の差により積層体が反ってしまう。その為積層体の平坦性を阻害しないように5μm以下にすることが好ましい。
本発明に係るハードディスクドライブ用サスペンションにおいては、前記帯電防止層に含まれるバインダー樹脂が、アニオン性であることが、上述のポリピロール系樹脂のドープ剤としても機能する点から好ましい。
本発明に係るハードディスクドライブ用サスペンションにおいては、前記第一の絶縁層及び/又は前記第二の絶縁層が、ポリイミドを主成分とすることが、耐熱性、信頼性の観点から好ましい。
本発明に係るハードディスクドライブ用サスペンションにおいては、前記第一の絶縁層及び/又は前記第二の絶縁層の線熱膨張係数が0ppm〜40ppmであることが、前記積層体の平坦性の点から好ましい。
本発明に係るハードディスクドライブ用サスペンションにおいては、前記第二の導体層が、銅又は銅を含む合金によって形成されていることが、導体層の抵抗値が低くなる為好ましい。
本発明に係るハードディスクドライブ用サスペンションにおいては、前記第一の導体層がステンレスからなることが、HDD用サスペンションとして用いたときに必要なバネ性を付与する点から好ましい。
本発明に係るハードディスクドライブ用サスペンションにおいては、前記帯電防止層が、少なくともポリピロール系樹脂及び架橋成分を含む樹脂組成物を塗布して、前記積層体表面の一部となるように所望の形状で形成されていることが、低発塵、低アウトガスの点から好ましい。
中でも、前記帯電防止層がスクリーン印刷や、インクジェット法など、直接パターン形成が可能な塗布法で形成されることが、製造コスト抑制の観点から好ましい。
本発明に係るハードディスクドライブ用サスペンションにおいては、前記架橋成分がメラミン系樹脂を含有することが、膜強度、前記積層体との密着性の点から好ましい。
中でも、前記架橋成分がメラミン系樹脂であり、帯電防止層が形成される表面に、プラズマ処理が行われていることが、特に、帯電防止層の密着性が向上する点から好ましい。
また、本発明に係るハードディスクドライブ用サスペンションにおいては、前記架橋成分がエポキシ系樹脂を含有することが、耐熱性、膜強度の点から好ましい。
中でも、前記架橋成分がエポキシ系樹脂であり、帯電防止層が形成される表面に、アルカリ処理が行われていることが、特に、帯電防止層の密着性が向上する点から好ましい。
本発明に係るハードディスクドライブ用サスペンションにおいては、前記帯電防止層が、前記第一の導体層の前記第一の絶縁層が形成されている面と反対側の面には形成されていないことが好ましい。帯電防止層の面積を必要最小限にすることで発塵及びアウトガスの発生量を抑制することができる。
以上に述べたように、本発明の電子回路部品は、ポリピロール系樹脂と架橋成分を含有する帯電防止層を用いることで、所望の位置に、適切な厚みで密着性及び膜強度が優れた帯電防止層を設けることが可能になり、低発塵、低アウトガス等の特性を満たしつつ、静電破壊が防止されるという効果を奏する。
以下、本発明について詳しく説明する。
なお本発明において、露光するのに用いる光には、可視及び非可視領域の波長の電磁波だけでなく、電子線のような粒子線、及び、電磁波と粒子線を総称する放射線又は電離放射線が含まれる。
本発明は、電子回路部品、及びハードディスクドライブ用サスペンションに関するものである。以下、電子回路部品及びハードディスクドライブ用サスペンションについて順に説明する。
I.電子回路部品
本発明の電子回路部品は、第一の導体層と、当該第一の導体層上に形成された第一の絶縁層と、当該第一の絶縁層上に当該第一の絶縁層の一部が露出するように形成された第二の導体層と、当該第一の絶縁層及び当該第二の導体層上にそれらの一部が露出するように形成された第二の絶縁層とを備えた積層体を含有する電子回路部品であって、当該第二の絶縁層、当該第二の導体層、及び当該第一の絶縁層に少なくとも接触し、且つ前記積層体表面の一部となるように帯電防止層が形成されており、当該帯電防止層が、ポリピロール系樹脂および架橋成分を含有していることを特徴とするものである。
本発明の電子回路部品の一態様について、図1に一部拡大模式的平面図を示し、図2に図1のA−A’断面図を示す。
本発明の電子回路部品100は、第一の導体層1と、当該第一の導体層1上に形成された第一の絶縁層2と、当該第一の絶縁層2上に当該第一の絶縁層2一部が露出するように形成された第二の導体層3と、当該第一の絶縁層2及び当該第二の導体層3上にそれらの一部が露出するように形成された第二の絶縁層4とを備えた積層体を含有する。前記第一の導体層1は、通常、配線、及び/または支持体の役割を担うものであり、前記第二の導体層3は、通常、配線層である。第二の絶縁層4は、通常、第二の導体層間を絶縁しつつ第二の導体層を保護する役割を担い、図1の平面図に示されるように、第一の絶縁層2及び当該第二の導体層3の一部が露出するように形成されている。この露出される一部は、電子回路部品の端子接続部や、屈曲部などが挙げられる。そして、ポリピロール系樹脂および架橋成分を含有している帯電防止層5が、当該第二の絶縁層4、当該第二の導体層3、及び当該第一の絶縁層2の3層に少なくとも接触し、且つ前記積層体表面の全体ではなく、前記積層体表面の一部となるように形成されている。
以下、各層について説明する。
<第一の導体層>
上記積層体を構成する第一の導体層1は、導体から構成されていれば特に限定されないが、強度、導電抵抗の点から、金属層であることが好ましく、特にステンレス、銅、銅を含む合金からなることが好ましい。上記積層体を構成する第一の導体層1は、通常、電子回路部品の配線、または支持体として用いられ、この場合、金属板が好適に用いられる。HDD用サスペンションとして用いる場合には、第一の導体層は、よりバネ性の高いステンレスからなることが特に好ましい。また、第一の導体層は、目的に応じてバネとしての機能を発現しやすい形状や、配線の形状にパターニングされていても良い。更に、第一の導体層は、密着性改善の為等の理由で表面処理が施されていても良い。
上記積層体を構成する第一の導体層1は、1μm〜500μmの厚みであることが好ましく、1μm〜200μmの厚みであることが特に好ましい。
<第二の導体層>
第二の導体層3は、後述する第一の絶縁層の一部が露出するように形成されるものであり、通常、配線層として形成される。第二の導体層としては、導体から構成されていれば材料は特に限定されないが、導電性、信頼性、及びコストの観点から、ステンレス、銅、銅を含む合金が好ましい。第二の導体層を配線として用いる場合には銅や銅合金であることが好ましく、配線の形状にパターニングされていることが好ましく、密着性改善の為等の理由で表面処理が施されていても良い。
第二の導体層は0.1μm〜50μmの厚みであることが好ましく、0.5μm〜20μmの厚みであることが特に好ましい。
<第一の絶縁層、第二の絶縁層>
第一の絶縁層2、及び第二の絶縁層4については、絶縁材料から構成されていればよい。絶縁材料としては、例えば、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンなどのビニル重合系樹脂、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルケトン、ポリサルフォンなどの縮合重合系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。中でも、絶縁信頼性、耐熱性、絶縁層上に接触して設けられるポリピロール系樹脂を含む帯電防止層との密着性の観点から、第一の絶縁層2及び/又は第二の絶縁層4がポリイミドを主成分とすることが好ましく、第一の絶縁層2及び第二の絶縁層4の両方がポリイミドを主成分とすることが特に好ましい。ここで絶縁層の主成分とするとは、絶縁信頼性及び耐熱性の効果を損なわれない限り、上記ポリイミドの他に、更に他の絶縁材料やその他の成分が添加されていても良い旨を表し、上記ポリイミドは50重量%超過で含まれる意味である。ポリイミドは、より好ましくは絶縁層の90重量%以上、より更に好ましくは絶縁層の95重量%以上で用いられることが好ましい。
また、第一の絶縁層、及び第二の絶縁層は、それぞれ同一の絶縁材料を用いても良いし、異なる絶縁材料を用いても良い。HDD用サスペンションとして用いる場合には、第一の絶縁層、及び第二の絶縁層に同一の物質を用いることで前記積層体全体の反りを抑制できる。その為、前記積層体の平坦性を確保する為には第一の絶縁層、及び第二の絶縁層に同一の絶縁材料を用いること、または、線熱膨張係数が同じ、または線熱膨張係数が近い絶縁材料を用いることが効果的である。
第一の絶縁層、及び第二の絶縁層は、目的に応じて所望の形状にパターニングされていてもよく、厚みは0.1μm〜50μmの厚みであることが好ましく、1μm〜20μmの厚みであることが特に好ましい。第一の絶縁層、及び第二の絶縁層の厚みが0.1μm未満の場合絶縁層としての機能を発現しにくくなり、50μmより大きいと積層体全体の厚みが大きくなってしまうという課題がある。
第一の絶縁層の線熱膨張係数は0ppmから40ppmの間であることが好ましく、5ppm〜30ppmの間であることが特に好ましい。この範囲からはずれるほど、第一及び第二の導体層に用いられる金属との線熱膨張係数の差が大きくなり前記積層体の平坦性が損なわれる。
第二の絶縁層は、低弾性体であること、または、線熱膨張係数が0ppmから40ppmの間であることが好ましく、5ppm〜30ppmの間であることが特に好ましい。この範囲からはずれればはずれるほど、第二の導体層に用いられる金属との線熱膨張係数の差が大きくなり前記積層体の平坦性が損なわれる。
なおここで、本発明における線熱膨張係数は、熱機械的分析装置(例えばThermo Plus TMA8310(リガク社製)によって、昇温速度を10℃/min、加重を5gとして得られる値である。
第一の絶縁層、及び/又は、第二の絶縁層にポリイミドを用いる場合、感光性ポリイミドを用いてパターン形成しても良いし、非感光性のポリイミド前駆体上にレジストを形成し、そのレジストパターンに応じてパターニングする等の手法で非感光性のポリイミド前駆体を用いてパターンを形成しても良い。更には、全面に形成された非感光性のポリイミド膜上にレジストパターンを形成し、その開口部をアルカリ‐アミン系エッチング液によってエッチングし、ポリイミドパターンを得ても良い。
感光性ポリイミドを用いた場合は、プロセスを短縮でき低コストで生産できるといったメリットがあり、非感光性のポリイミド又はポリイミド前駆体を用いた場合は、ポリイミド中に含まれる添加剤がない、または添加剤の量が少ないのでアウトガスの発生が抑制されるといったメリットがある。
本発明において、ポリイミドは、絶縁層にした場合に線熱膨張係数が0ppmから40ppmの間となるものであることが好ましいことから、一般に低膨張性ポリイミドに分類されるものを用いる。低膨張性ポリイミドの多くは耐溶剤性が高くポリイミドの状態では溶媒に溶解しない。その為、溶媒に可溶であるポリイミド前駆体の状態で塗布、パターニングされた後、加熱等の処理によりイミド化されて、ポリイミドとされる場合が多い。溶媒に可溶な低膨張性ポリイミドは、構造が特殊であることから非常に高価であるため、本発明においても、第一の絶縁層及び/又は第二の絶縁層を形成する際には、ポリイミド前駆体の状態で用いられることが、コストや構造選択の自由度の関係から好ましい。
非感光性のポリイミド前駆体の中でも、現像液として用いられる塩基性水溶液又は水溶性塩基性物質などの塩基性溶液に可溶なポリイミド前駆体が好ましく、好適に用いられる物として、ポリアミック酸が挙げられる。このような場合、ポリイミド前駆体上に形成されるレジスト層の未露光部(ネガ型レジストの場合)または露光部(ポジ型レジストの場合)の現像と同時に、溶出したレジスト層の下層のポリイミド前駆体層の部分のみを選択的に除去することが可能となる。塩基性溶液に可溶なポリアミック酸以外のポリイミド前駆体として、具体的には、ポリアミック酸のカルボキシル基にエステル結合等でフェノール残基を導入したものや、部分的にイミド化されたポリアミック酸などが挙げられる。
ポリアミック酸は、塩基性溶液に可溶なだけでなく酸二無水物とジアミンを溶液中で混合するのみで得られるので、1段階の反応で合成することができ、合成が容易で低コストで入手できるので好ましい。
また、ポリアミック酸に関して、最終的に得られるポリイミドの耐熱性及び寸法安定性の要求が厳しい用途のため、酸二無水物由来の部分が芳香族構造を有し、さらにジアミン由来の部分も芳香族構造を含む全芳香族ポリイミド前駆体であることが好ましい。それゆえジアミン成分由来の構造も芳香族ジアミンから誘導される構造であることが好ましい。
ここで、全芳香族ポリイミド前駆体とは、芳香族酸成分と芳香族アミン成分の共重合、又は、芳香族酸/アミノ成分の重合により得られるポリイミド前駆体及びその誘導体である。また、芳香族酸成分とは、ポリイミド骨格を形成する4つの酸基が全て芳香族環上に置換している化合物であり、芳香族アミン成分とは、ポリイミド骨格を形成する2つのアミノ基が両方とも芳香族環上に置換している化合物であり、芳香族酸/アミノ成分とはポリイミド骨格を形成する酸基とアミノ基がいずれも芳香族環上に置換している化合物である。ただし、後述する原料の具体例から明らかなように、全ての酸基又はアミノ基が同じ芳香環上に存在する必要はない。
本発明に好適に用いられるポリアミック酸を製造する方法としては、従来公知の手法を適用することができる。例えば、(1)酸二無水物とジアミンから前駆体であるポリアミック酸を合成する手法。(2)酸二無水物に1価のアルコールやアミノ化合物、エポキシ化合物等を反応させ合成した、エステル酸やアミド酸モノマーのカルボン酸に、ジアミノ化合物やその誘導体を反応させて得られた化合物と酸二無水物をさらに反応させて、部分的に官能基が導入されたポリアミック酸を合成する手法などが挙げられるがこれに限定されない。
本発明に好適に用いられるポリアミック酸に適用可能な酸二無水物としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、1,4−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、2,2−ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、
2,2−ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、4,4’−ビス〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、4,4’−ビス〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、2,2−ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルプロパン二無水物、2,2−ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}−1,1,1,3,3,3−プロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ぺリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらは単独あるいは2種以上混合して用いられる。そして、特に好ましく用いられるテトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物が挙げられる。
併用する酸二無水物としてフッ素が導入された酸二無水物や、脂環骨格を有する酸二無
水物を用いると、ポリイミド前駆体の透明性が向上する。また、ピロメリット酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などの剛直な酸二無水物を用いると、最終的に得られるポリイミドの線熱膨張係数が小さくなる。
一方、アミン成分も、1種類のジアミン単独で、または2種類以上のジアミンを併用して用いることができる。用いられるジアミン成分は限定されるわけではないが、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1−ジ(3−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ジ(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1−(3−アミノフェニル)−1−(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゾニトリル、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ピリジン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、
ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、6,6’−ビス(3−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ビス(4−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(4−アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、ビス(アミノメチル)エーテル、ビス(2−アミノエチル)エーテル、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、ビス(2−アミノメトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(2−アミノエトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(3−アミノプロトキシ)エチル]エーテル、
1,2−ビス(アミノメトキシ)エタン、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン、1,2−ビス[2−(アミノメトキシ)エトキシ]エタン、1,2−ビス[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]エタン、エチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,3−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,4−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロへキシル)メタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、また、上記ジアミンの芳香環上水素原子の一部若しくは全てをフルオロ基、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、又はトリフルオロメトキシ基から選ばれた置換基で置換したジアミンも使用することができる。
さらに目的に応じ、架橋点となるエチニル基、ベンゾシクロブテン−4’−イル基、ビニル基、アリル基、シアノ基、イソシアネート基、及びイソプロペニル基のいずれか1種又は2種以上を、上記ジアミンの芳香環上水素原子の一部若しくは全てに置換基として導入しても使用することができる。
ジアミンは、目的の物性によって選択することができ、p−フェニレンジアミンなどの剛直なジアミンを用いれば、最終的に得られるポリイミドは低膨張率となる。剛直なジアミンとしては、同一の芳香環に2つアミノ基が結合しているジアミンとして、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、2、6−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノアントラセンなどが挙げられる。
さらに、2つ以上の芳香族環が単結合により結合し、2つ以上のアミノ基がそれぞれ別々の芳香族環上に直接又は置換基の一部として結合しているジアミンが挙げられる。具体例としては、ベンジジン等が挙げられる。
さらに、上記のジアミンにおいて、他のベンゼン環との結合に関与せず、ベンゼン環上のアミノ基が置換していない位置に置換基を有するジアミンも用いることができる。これら置換基は、1価の有機基であるがそれらは互いに結合していてもよい。
具体例としては、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル等が挙げられる。
一方、ジアミンとして、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンなどのシロキサン骨格を有するジアミンを用いると、最終的に得られるポリイミドの弾性率が低下し、ガラス転移温度を低下させることができる。
ここで、選択されるジアミンは耐熱性の観点より芳香族ジアミンが好ましいが、目的の物性に応じてジアミンの全体の60モル%、好ましくは40モル%を超えない範囲で、脂肪族ジアミンやシロキサン系ジアミン等の芳香族以外のジアミンを用いても良い。
本発明に用いられるポリイミド前駆体は、パターン形成能の点から、塩基性溶液に対して溶解性を有することが好ましく、具体的には、基板上に形成された塗膜の25℃における0.1wt%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液に対する溶解速度が、100Å/sec以上であることが好ましい。当該溶解速度は500Å/sec以上であることがさらに好ましい。さらには、より一般的に用いられる現像液である2.38重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に対する溶解速度が、100Å/sec以上であることが好ましく、500Å/sec以上であることがさらに好ましい。上記定義による溶解速度が100Å/secより小さい場合、現像時間が遅くなり作業性、生産性が悪くなると共に、露光部、未露光部間の溶解性コントラストが得にくくなる。
上記溶解速度を測定する具体的手順としては、無アルカリガラス等の基板上に形成された高分子前駆体の塗膜を、25℃に調温され、撹拌された現像液(この場合0.1重量%TMAH水溶液または、2.38重量%TMAH水溶液)に一定時間、浸漬し、蒸留水でリンス後、乾燥させた後で測定した膜厚と、初期膜厚との差を、膜減り量とし、その膜減り量を、現像液に浸漬した時間で割ったものが、25℃における単位時間当たりの溶解速度ということになる。
ポリイミド前駆体の重量平均分子量は、3,000〜1,000,000の範囲であることが好ましく、5,000〜500,000の範囲であることがさらに好ましく、10,000〜500,000の範囲であることがさらに好ましい。重量平均分子量が3,000未満であると、塗膜又はフィルムとした場合に十分な強度が得られにくい。また、加熱処理等を施しポリイミドとした際の膜の強度も低くなる。一方、重量平均分子量が1,000,000を超えると粘度が上昇し、溶解性も落ちてくるため、表面が平滑で膜厚が均一な塗膜又はフィルムが得られにくい。
ここで用いている分子量とは、公知の手法により得られる分子量であり、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の値が例示される。この場合、ポリイミド前駆体そのものの分子量でも良いし、無水酢酸等で化学的イミド化処理を行った後のものでも良い。
以下、非感光性のポリイミドで、所望の箇所に本発明に用いられる絶縁層を形成する方法を具体的に説明するが、本発明に用いられる絶縁層の形成方法としてはこれらに限定されるものではない。
非感光性のポリイミドでポリイミドパターンを形成する方法のうち、ネガ型レジストを用いる方法としては、例えば、(A)基板上にポリイミド前駆体層を形成する工程、(B)前記ポリイミド前駆体層上にネガ型レジスト層を形成する工程、(C)前記ネガ型レジスト層を選択的に露光するパターン露光工程、(D)前記ネガ型レジスト層の現像後または現像と同時に、下層のポリイミド前駆体層を選択的に除去しパターン化する現像工程、(E)前記パターン化されたポリイミド前駆体層を少なくとも部分的にイミド化することにより塩基性水溶液又は水溶性塩基性物質に対する溶解性を低下させる工程、(F)前記パターン化されたネガ型レジスト層を塩基性水溶液又は水溶性塩基性物質を用いて剥離する剥離工程、及び、(G)前記パターン化されたポリイミド前駆体層をポリイミド化する工程を有する方法が挙げられる。
また、非感光性のポリイミドでポリイミドパターンを形成する方法のうち、ポジ型レジストを用いる方法としては、例えば、(A)基板上にポリイミド前駆体層を形成する工程、(B)前記ポリイミド前駆体層上にポジ型フォトレジスト層を形成する工程、(C)前記ポジ型フォトレジスト層を選択的に露光するパターン露光工程、(D)前記ポジ型フォトレジスト層の現像後または現像と同時に、下層のポリイミド前駆体層を選択的に除去しパターン化する現像工程、(E)前記パターン化されたポジ型フォトレジスト層の全面を露光する全面露光工程、(F)前記パターン化されたポリイミド前駆体層を少なくとも部分的にイミド化することにより塩基性水溶液又は水溶性塩基性物質に対する溶解性を低下させる工程、(G)前記パターン化されたポジ型フォトレジスト層を塩基性水溶液又は水溶性塩基性物質によって剥離する剥離工程、及び、(H)前記パターン化されたポリイミド前駆体層をポリイミド化する工程を有する方法が挙げられる。
非感光性のポリイミドをパターニングする工程において、使用されるポリイミド前駆体層中には、イミド化を促進する化合物を含有することが好ましい。イミド化を促進する化合物とは、ポリイミド前駆体のポリイミド化反応を促進する触媒作用を有する化合物をいう。当該工程における前記ポリイミド前駆体層中に、イミド化を促進する化合物を含有する場合には、パターン化されたポリイミド前駆体層の塩基性溶液に対する溶解性を低下させる工程において、イミド化を促進する化合物の作用によって、より短時間のより低温加熱等より温和な刺激によってポリイミド前駆体層をイミド化して塩基性溶液に対する溶解性を低下させることが可能になる。従ってこのような場合には、ポリイミド前駆体の上層であるレジスト層の劣化を防止でき、レジスト層の剥離工程において、濃度の薄い水溶液等の刺激の弱い薬液を用いることが可能となり、基板やポリイミド前駆体のパターンにダメージを与えることを抑制できる。
ポリイミド前駆体層中に含有させるイミド化を促進する化合物としては、塩基性物質が挙げられ、中でも、その触媒能の高さから、有機物であるアミンが好ましい。
その中でも脂肪族のアミンがその級数を問わずポリイミド前駆体のイミド化の反応に対する触媒効果が高いことから、特に好ましい。なお、脂肪族アミンとは、アンモニアの水素原子を炭化水素基で置換した化合物のうち、炭化水素基の窒素と結合を有する炭素原子から伸びている結合全てが単結合であるものをいう。また、その炭化水素基は、直鎖でも分岐でも環状でもよく、その構造内に置換基やヘテロ結合を有していてもよい。それらとしては、n−ブチルアミン、ベンジルアミン、アミルアミン、ヘキシルアミンやオクチルアミンなどの第一級アミン類、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジメチルピペリジンのような第2級アミン類、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、トリエチレンジアミン(1,4‐ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアルキレンジアミン類、ジエチレントリアミンなどのトリアミン、その他テトラミン化合物、ベンジルアミンなどのアミンが例示されるが、本発明の効果を達成することができるものであれば特に限定されない。
前記ポリイミド前駆体層において、ポリイミド前駆体100重量部に対してイミド化を促進する化合物は、0.1重量部〜40重量部、更に0.5重量部〜30重量部、含有されていることが好ましい。ポリイミド前駆体100重量部に対してイミド化を促進する化合物が0.1重量部未満である場合には、イミド化反応を促進する効果が不充分である。一方、ポリイミド前駆体100重量部に対してイミド化を促進する化合物が40重量部超過である場合には、イミド化後のポリイミド中にイミド化を促進する化合物が残存しやすく、ポリイミドの物性が低下する場合がある。
非感光ポリイミドでポリイミドパターンを形成する工程におけるポリイミド前駆体層中に含有させるイミド化を促進する化合物は、最終的に得られるポリイミドパターン中には残存しないように用いることが、信頼性の点から好ましい。従って、当該イミド化を促進する化合物は、ポリイミド化を行う工程で、分解、または揮発してしまうことが好ましい。具体的には、イミド化を促進する化合物は、加熱して初期の重量から5%重量が減少したときの温度(5%重量減少温度)が25℃〜350℃、好ましくは、25℃〜250℃であることが、加熱によりイミド化を促進する化合物を分解、または、揮発させ、イミド化後のポリイミド中に残存しないようにできる点から好ましい。
基板上にポリイミド前駆体層形成用塗工液を塗布して、乾燥して塗膜を形成してポリイミド前駆体層を形成する場合における塗工液は、上記ポリイミド前駆体を必須成分として適宜その他の成分を配合し、溶媒に溶解させて調製する。溶媒としては、上記ポリイミド前駆体を必須成分として適宜その他の成分の良溶媒であれば特に限定されず用いることができ、例えば、N−メチル−2−ピロリジノン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメチルスルホキシド等を挙げることができる。
塗布法としては、ディップコート、スピンコート、ダイコート、ロールコート、スリットコート等、適宜公知の手法を用いることができる。
また、塗工液を塗布した膜から溶媒を除去するための乾燥方法としては、加熱が挙げられ、オーブンやホットプレートなど公知の装置・手法を用いることができる。加熱温度としては、80℃〜140℃の範囲で行うのが好ましい。
得られたポリイミド前駆体のパターンは、加熱等の処理によりポリイミドとされる必要がある。加熱条件は200℃以上の450℃以下の条件で行う事が好ましく、250℃以上400℃以下で行うことが好ましい。温度が低いとイミド化が十分に進行せず、耐溶剤性や絶縁信頼性が不十分となる。温度が高すぎるとポリイミド自身が分解してしまい、膜強度が低下したり、絶縁信頼性が低下したりする。
一方、感光性ポリイミドを用いる場合には、線熱膨張係数等、上記の物性を満たしていれば、どのような種類の感光性ポリイミドも用いても差し支えないが、プロセスコストの観点からはアルカリ水溶液現像型の感光性ポリイミドであることが好ましい。
第一の絶縁層、及び第二の絶縁層には、本発明の効果を損なわない限り、加工特性や各種機能性を付与するために、その他に様々な有機又は無機の低分子又は高分子化合物を配合してもよい。例えば、難燃性付与や線熱膨張係数の調整、塗布・パターニング特性付与のなどの目的で微粒子が含有されていても良い。その他の添加剤としては、例えば、染料、界面活性剤、レベリング剤、可塑剤等を用いることができる。微粒子には、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン等の有機微粒子、コロイダルシリカ、カーボン、層状珪酸塩等の無機微粒子等が含まれ、それらは多孔質や中空構造であってもよい。また、その機能又は形態としては顔料、フィラー、繊維等がある。なお、HDD用サスペンションとして用いられる場合には第一の絶縁層、及び第二の絶縁層は、シリコーン成分を含まないことが磁気ディスク表面の汚染防止の点から好ましい。
<帯電防止層>
本発明における帯電防止層5は、ポリピロール系樹脂および架橋成分を含有し、前記第二の絶縁層4、前記第二の導体層3、及び前記第一の絶縁層2の3層に少なくとも接触し、且つ、第一の導体層、第一の絶縁層、第二の導体層、及び第二の絶縁層からなる積層体表面の全体ではなく、前記積層体表面の一部となるように形成されている。
本発明における帯電防止層5は、通常、少なくとも第二の絶縁層4の表面全体は覆うように、且つ、第二の絶縁層には被覆されずに露出されている第一の絶縁層2と第二の導体層3と接触するように設けられて、第二の絶縁層上のみならず、第一の絶縁層や第二の導体層上に帯電した静電気によっても電子回路部品の静電破壊を防止することができる。本発明における帯電防止層5は、前記第二の絶縁層4、前記第二の導体層3、及び前記第一の絶縁層2の3層に少なくとも接触するように設けられるが、第一の導体層1とも接触するように設けられることが、更に帯電防止性能を向上する点から好ましい。但し、本発明において帯電防止層は、低発塵、低アウトガス等の特性を向上する点から、前記積層体表面の全体ではなく、静電破壊防止の点から必要な所望の箇所のみ、積層体表面の一部となるように形成される。すなわち、本発明に係る電子回路部品においては、前記帯電防止層が、前記第一の導体層の前記第一の絶縁層が形成されている面と反対側の面には形成されていないことが好ましい。
本発明の帯電防止層は、ポリピロール系樹脂と架橋成分を必須の成分として含有する。ポリピロール等の導電性ポリマーのみを用いて帯電防止層を形成しようとすると、導電性ポリマーを重合させながら表面に析出させていく方法を採れば所望の位置のみにパターン化して膜を形成することができず、或いは、導電性ポリマーを塗布する方法を採れば均一に成膜できなかったり、膜の密着性や膜強度が不充分になる。それに対し、本発明においては、ポリピロール系樹脂と架橋成分を用いて帯電防止層を形成することにより、所望の位置に、適切な厚みで密着性及び膜強度が優れた帯電防止層を設けることが可能になり、低発塵、低アウトガス等の特性を満たしつつ、静電破壊が防止されるという効果を奏する。
本発明においてポリピロール系樹脂とは、ピロール及び/又はピロール誘導体が重合されて得られたものであって、導電性を有し、具体的には、下記のような構造を有する化合物が挙げられる。
Figure 0005092653
(Rは、水素原子、水酸基、又は1価の有機基である。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、メルカプト基、ニトロ基、シリル基、シラノール基、又は1価の有機基であり、それらは互いに同一であっても異なっていても良い。R及びRは、互いに結合を介して環状構造を形成していても良い。)
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。アミノ基としては、1級アミノ基(−NH)の他、2級アミノ基、3級アミノ基であっても良い。2級アミノ基は、モノ置換アミノ基であり、例えばメチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、アニリノ基、アニシジノ基、フェネチジノ基、トルイジノ基、キシリジノ基、ピリジルアミノ基、チアゾリルアミノ基、ベンジルアミノ基、ベンジリデンアミノ基などが挙げられる。また、3級アミノ基は、ジ置換アミノ基であり、環状であってもよく、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ブチルメチルアミノ基、ジアミルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェネチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジキシリルアミノ基、メチルフェニルアミノ基、ベンジルメチルアミノ基などのほか、ピロリジノ基、ピペリジノ基、ピペラジノ基、モルホリノ基、1−ピロリル基、1−ピラゾリル基、1−イミダゾリル基、1−トリアゾリル基などが挙げられる。
また、1価の有機基としては、置換又は無置換の飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基、置換又は無置換の芳香族炭化水素基等の炭化水素骨格を有する基が挙げられる。脂肪族炭化水素基は、直鎖でも分岐でも環状でも良い。1価の有機基としては、炭素数1〜20程度が好ましい。これら1価の有機基は、酸素や窒素などヘテロ原子等の、炭化水素基以外の結合や置換基を含んでよい。
炭化水素骨格を有する基に含まれるヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合としては、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、カーボネート結合など、また置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、シアノ基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、不飽和アルキルエーテル基、アリールエーテル基、不飽和アルキルチオエーテル基、アリールチオエーテル基等が挙げられるが特に限定されない。
1価の有機基の好ましいものとしては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数4〜13の環状アルキル基、炭素数4〜13の環状アルケニル基、炭素数7〜16のフェノキシアルキル基、炭素数7〜20のアリールアルキル基、炭素数2〜11のシアノアルキル基、炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数2〜11のアミド基、炭素数1〜10のアルキルチオ基、炭素数1〜10のアシル基、炭素数2〜11のオキシアシル基、炭素数6〜20のアリール基、電子供与性基および/または電子吸引性基が置換した炭素数6〜20のアリール基、電子供与性基および/または電子吸引性基が置換したベンジル基、エステル基等が挙げられる。また、上記のアルキル部分は直鎖でも分岐でも環状でも良い。特にR及びRがこれらの置換基となった場合、溶媒に対する溶解性が向上する。
炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso-プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、iso−ペンチル基、neo−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基が挙げられる。炭素数4〜13の環状アルキル基としては、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基が挙げられる。炭素数4〜13のシクロアルケニル基としては、例えば、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプチニル基、シクロオクテニル基が挙げられる。炭素数7〜16のフェノキシアルキル基としては、例えば、フェノキシメチル基、フェノキシエチル基、フェノキシ‐n‐プロピル基、フェノキシ‐iso‐プロピル基、フェノキシ‐n-ブチル基、フェノキシ‐sec‐ブチル基、フェノキシ‐tert‐ブチル基、フェノキシペンチル基、フェノキシ‐iso‐ペンチル基、フェノキシ‐neo‐ペンチル基、フェノキシヘキシル基が挙げられる。炭素数7〜20のアリールアルキル基としては、例えば、フェニルメチル基、フェニルエチル基、フェニル‐n‐プロピル基、フェニル‐iso‐プロピル基、フェニル‐n-ブチル基、フェニル‐sec‐ブチル基、フェニル‐tert‐ブチル基、フェニルペンチル基、フェニル−iso‐ペンチル基、フェニル‐neo‐ペンチル基、フェニルヘキシル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、ナフチル‐n-プロピル基、ナフチル‐iso‐プロピル基、ナフチル‐n-ブチル基、ナフチル‐sec‐ブチル基、ナフチル‐tert‐ブチル基、ナフチルペンチル基、ナフチル‐iso‐ペンチル基、ナフチル‐neo‐ペンチル基、ナフチルヘキシル基が挙げられる。炭素数2〜11のシアノアルキル基としては、例えば、シアノメチル基、シアノエチル基、シアノ‐n‐プロピル基、シアノ‐iso‐プロピル基、シアノ‐n‐ブチル基、シアノ‐sec‐ブチル基、シアノ‐tert−ブチル基、シアノペンチル基、シアノ‐iso‐ペンチル基、シアノ‐neo‐ペンチル基、シアノヘキシル基が挙げられる。炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシ‐n‐プロピル基、ヒドロキシ‐iso‐プロピル基、ヒドロキシ‐n‐ブチル基、ヒドロキシ‐sec‐ブチル基、ヒドロキシ‐tert‐ブチル基、ヒドロキシペンチル基、ヒドロキシ‐iso‐ペンチル基、ヒドロキシ‐neo‐ペンチル基、ヒドロキシヘキシル基が挙げられる。
炭素数1〜10のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n‐ブトキシ基、sec‐ブトキシ基、ペンチルオキシ基、iso‐ペンチルオキシ基、neo‐ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基等が挙げられる。炭素数2〜11のアミド基としては、アセトアミド基等が挙げられる。炭素数1〜10のアルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n‐プロピルチオ基、iso‐プロピルチオ基、n‐ブチルチオ基、sec‐ブチルチオ基、tert‐ブチルチオ基、ペンチルチオ基、iso‐ペンチルチオ基、neo‐ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基が挙げられる。炭素数1〜10のアシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、イソブチリル基、バレリル基、シクロヘキシルカルボニル基等が挙げられる。 炭素数2〜11のオキシアシル基としては、アセトキシ基等が挙げられる。炭素数6〜20のアリール基の例としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基などが挙げられる。また、アリール基に置換されていても良い電子供与性基としては、例えば、水酸基、ハロゲン原子、アルキル基、メトキシ基等が挙げられ、電子吸引性基としては、例えば、ニトロ基、カルボニル基、ニトリル基等が挙げられる。
また、式(1)において、R〜Rは、互いに同一であっても異なっていても良い。R、Rは、それらが互いに結合を介して環状構造を形成していても良い。置換基が互いに結合を介して形成する環状構造とは、シクロヘキシル基等の脂肪族性の環構造だけでなく、例えば、R、Rに芳香環が結合した構造をとるものなども含まれる。また、環構造は芳香族性の縮合環であっても、脂肪族性の環構造であっても良く、さらに環構成原子として炭素原子以外の異種原子を含んでいても良い。
また、導電特性の観点からはRが水素であることが好ましい。
これら導入される置換基の種類によって溶解性や親水性、親油性等が決まる。R 、R及びR全てが水素の場合、難溶性であるため、水分散体として用いる場合が多い。また、Rが水素、R及びRが1価の有機基である場合には、有機溶媒に対して可溶になる場合もあり、その場合、有機溶媒に溶解した溶液として取り扱うことができる。成膜性や膜強度の観点からは分散体よりは溶液のものの方が優れているが、薄膜における導電性能については分散体の方が有利である。
また、これらポリピロール系樹脂には、導電特性向上の観点から、2,3,6,7−テトラシアノ−1,4,5,8−テトラアザナフタレンなどのような、導電体中の電子数を変化させ、導電性を制御することができるドープ剤を混合しても良い。電解重合により得られたポリピロールは酸化状態である為、この状態で残っているプラスの電荷の働きよって導電性を生ずるのであるが、このプラスの電荷を電気的に中性にする物質がドープ剤である。ドープ剤としては、そのほかに、ポリアルキルカルボン酸イオン、ドデシル硫酸イオン、過塩素酸イオンなどのプロトン酸イオンや、テトラフルオロボレートイオン等のルイス酸イオンなどが例示される。また、さらにペリレン等の電子ドナーとなる化合物などが例示される。
一方、本発明において架橋成分とは、熱、または光などの外部からの刺激によって、化学結合を形成することができる置換基(以下、架橋基という場合がある。)を2つ以上有している化合物及び/又は当該化合物の反応物をいう。本発明における架橋成分は、帯電防止層中では主として上記架橋基が反応した後の反応物(架橋物)として存在し、後述する塗布法に用いられる帯電防止層形成用樹脂組成物中においては、架橋基を2つ以上有している反応前の化合物(架橋反応性成分)として存在する。熱、または光などの外部からの刺激によって、化学結合を形成することができる置換基としては、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、グリシジル基、オキセタニル基、メチロール基、カルボジイミド基、イソシアナート基等が例示される。特に、熱により架橋基を反応させたい場合には、帯電防止層の膜強度や耐熱性の観点から、メチロール基、グリシジル基、オキセタニル基、カルボジイミド基が好ましい。
本発明では、グリシジル基、及び/またはオキセタニル基を2つ以上含有する化合物をエポキシ系樹脂とし、メチロール基を2つ以上有し、メラミン骨格を含んだ化合物をメラミン系樹脂とする。
ポリピロール系樹脂は水分散体とする場合が多いことから、本発明に用いられる架橋成分は、水に安定性が高いものであることが好ましい。
本発明において架橋成分として、エポキシ系樹脂は、中でも、得られる膜の耐熱性、膜強度等が向上する点から好ましい。
エポキシ系樹脂の中で、グリシジル基を2つ以上有する化合物(低分子量成分)としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’‐エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2‐(3,4‐エポキシシクロヘキシル‐5,5‐スピロ‐3,4‐エポキシ)シクロヘキサン‐メタ‐ジオキサン、ビス(3,4‐エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4‐エポキシ‐6‐メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4‐エポキシ‐6‐メチルシクロヘキシル‐3’,4’‐エポキシ‐6’‐メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ε‐カプロラクトン変性3,4‐エポキシシクロヘキシルメチル‐3’,4’‐エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチルカプロラクトン変性3,4‐エポキシシクロヘキシルメチル‐3’,4’‐エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、β‐メチル‐δ‐バレロラクトン変性3,4‐エポキシシクロヘキシルメチル‐3’,4’‐エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4‐エポキシシクロヘキサン)、エチレングリコールのジ(3,4‐エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4‐エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシシクロへキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシシクロヘキサヒドロフタル酸ジ‐2‐エチルヘキシル、1,4‐ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6‐ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類;脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル類;フェノール、クレゾール、ブチルフェノール又はアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル類;高級脂肪酸のグリシジルエステル類;エポキシ化大豆油;エポキシステアリン酸ブチル;エポキシステアリン酸オクチル;エポキシ化アマニ油;エポキシ化ポリブタジエン等を例示することができる。
エポキシ系樹脂の中で、オキセタニル基を2つ以上含有する化合物としては、上記のグリシジル化合物のグリシジル基をオキセタニル基に置換した化合物やトリメチレンオキシド、3,3‐ジメチルオキセタン、3,3‐ジクロロメチルオキセタン、3‐エチル‐3‐フェノキシメチルオキセタン、ビス(3‐エチル‐3‐メチルオキシ)ブタン等の例示することができる。
本発明において架橋成分として、メラミン系樹脂は、中でも、密着性改善、膜強度向上の点から好ましい。メラミン系樹脂としては、メチロール基を2つ以上有し、メラミン骨格、およびグアナミン骨格を含んだ化合物であれば特に限定されないが、例えば、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン、完全アルキル型メチル化メラミン、完全アルキル型ブチル化メラミン、完全アルキル型イソブチル化メラミン、完全アルキル型混合エーテル化メラミン、メチロール基型メチル化メラミン、イミノ基型メチル化メラミン、メチロール基型混合エ−テル化メラミン、イミノ基型混合エーテル化メラミン等のメラミン樹脂;ブチル化ベンゾグアナミン、メチル/エチル混合アルキル化ベンゾグアナミン、メチル/ブチル混合アルキル化ベンゾグアナミン、ブチル化グリコールウリル等のグアナミン樹脂;及びそれらの重合体などが挙げられる。
また、カルボジイミド基を有する化合物としては、カルボジライトシリーズ(日清紡製)等のカルボジイミド基を複数有する化合物が例示される。
本発明における架橋成分の分子量は特に限定されないが、重量平均分子量1000以上の化合物の場合には、可撓性や成膜性を向上させることができる。
また、本発明の帯電防止層は、可撓性を付与したり、膜強度を向上させたり、成膜性を向上させる目的で、上記架橋成分には該当しない、バインダー樹脂を含有しても良い。本発明におけるバインダー樹脂とは重量平均分子量1000以上の化合物であれば、特に限定されないが、帯電防止層の耐熱性を向上させる為には芳香環を含んでいることが好ましい。また、用いられるポリピロール系樹脂が水分散体の場合は、バインダー樹脂は、水溶性、または水分散性のある化合物であることが好ましい。水溶性、水分散性を付与する為には、ポリエーテル構造を導入する方法、水酸基やカルボキシル基、スルホン酸基を導入する方法、カルボン酸塩、スルホン酸塩を導入する方法等があるが、配線の腐食等を防止し、長期の信頼性確保の観点から、ポリエーテル構造や水酸基を導入する手法が好ましく、また、カルボン酸塩を導入する場合には金属イオンとの塩ではなく、アンモニウム塩とするほうが好ましい。
バインダー樹脂の具体例としては、ビニル重合系樹脂、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリレート共重合体、及びそれらのアンモニウム塩、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、それらのカルボキシル基導入体、及び、それらのアンモニウム塩が挙げられる。更に、縮合重合系樹脂、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルケトン、ポリサルフォン、それらのカルボキシル基導入体、及び、それらのアンモニウム塩;エポキシ系樹脂、それらのカルボキシル基導入体、及び、それらのアンモニウム塩;等が挙げられる。
中でも、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリレート共重合体、及びそれらのアンモニウム塩、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルケトン、ポリサルフォン、それらのカルボキシル基導入体、および、それらのアンモニウム塩が、入手の容易さ、成膜性の観点から好ましい。
中でも、バインダー樹脂が、アニオン性であることが、プロトン酸イオンとして機能するため、上述のポリピロール系樹脂のドープ剤としても機能できる点から好ましい。アニオン性バインダー樹脂の態様としては、バインダー樹脂がカルボキシル基を有し、アンモニウム塩の状態で含有されている場合が好ましい。このような場合には、バインダー樹脂は、金属イオンや強酸性の成分を含有しない為、導体層を腐食しにくく、また、耐マイグレーション性が向上する。
本発明の帯電防止層には、その他に、添加剤として、例えば、染料、界面活性剤、レベリング剤、可塑剤等が含まれていても良い。
本発明の帯電防止層において、ポリピロール系樹脂は固形分中に20〜99重量%含まれることが好ましく、更に、30〜95重量%含まれることが好ましい。本発明の帯電防止層において、架橋成分は固形分中に1〜60重量%含まれることが好ましく、更に、3〜40重量%含まれることが好ましい。本発明の帯電防止層においてバインダー樹脂を用いる場合には、バインダー樹脂は固形分中に1〜79重量%含まれることが好ましく、更に、5〜67重量%含まれることが好ましい。
本発明の帯電防止層は、厚みが0.01μm以上5μm以下であることが好ましく、更に厚みが0.1μm以上3μm以下であることが好ましい。
また、本発明の帯電防止層は、表面抵抗率が1.0×10Ω/□以上、1.0×1010Ω/□以下であることが、磁気ヘッドの静電破壊を抑制する点から好ましい。表面抵抗率は、更に1.0×10Ω/□以上、1.0×10Ω/□以下であることが好ましい。
一般に同じ組成の帯電防止剤を用いた場合、厚みが厚いと表面抵抗が下がり、厚みが薄いと表面抵抗があがる傾向がある。表面抵抗率が1.0×10Ω/□未満だと配線間をショートさせてしまい、1.0×1010Ω/□超過だと帯電防止性能が不十分である恐れがある。従って、表面抵抗率が1.0×10Ω/□以上、1.0×1010Ω/□以下の範囲に入るように、適宜膜厚を設定することが好ましく、一般に0.01μm以上の厚みが必要である。また、積層体の平坦性を阻害しないように5μm以下にすることが好ましい。
なお、表面抵抗率は、JIS−K6911に準拠して、抵抗測定装置(三菱化学製ハイレスタUP MCP−HT450型)を用いて測定することができる。
(帯電防止層の形成方法)
本発明に係る電子回路部品においては、前記帯電防止層が、少なくともポリピロール系樹脂及び架橋成分を含む樹脂組成物を塗布することにより、前記積層体表面の一部となるように所望の形状で形成されていることが、発塵防止及び製造コスト抑制の観点から好ましい。本発明においては、帯電防止層を所望の形状に形成可能なので、所望の箇所のみに帯電防止層を設けることができる。
本発明における塗布法とは、液状の帯電防止層形成用樹脂組成物を、液体のまま前記積層体に接触させ、その後乾燥や硬化の工程を経て前記積層体上に帯電防止層が形成された状態とするものである。本発明に用いられる帯電防止層形成用樹脂組成物は、ポリピロール系樹脂、架橋成分、その他バインダー樹脂や添加剤を溶剤に溶解乃至分散させたものである。本発明に用いられる帯電防止層形成用樹脂組成物は、樹脂組成物中に当初からポリピロール系樹脂を含むものであり、ポリピロール系樹脂を重合するためのモノマーが含まれる重合反応溶液とは異なる。
帯電防止層形成用樹脂組成物に用いる溶媒は、ポリピロール系樹脂が分散、または溶解する溶媒であれば、特に限定されないが、入手の容易性、コスト、成膜性の観点からジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、 N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、水などが好ましい。
塗布法の中でも、前記帯電防止層がスクリーン印刷や、インクジェット法を用いると帯電防止層を形成する際に、同時に帯電防止層のパターン形成も可能である為、帯電防止層パターンを得る為の工程が短縮でき、低コストでの製造が可能となる。
以下に帯電防止層の形成について例を挙げて具体的に説明するが、この内容に限定されるものではない。
まず、第一の導体層、第一の絶縁層、第二の導体層、及び第二の絶縁層がこの順に、それぞれ所望の形状にパターン化されて形成されている積層体を準備する。
[前処理]
この積層体は、帯電防止層の密着性向上の為、予めプラズマ処理、コロナ処理、アルカリ処理といった表面処理を施しても良い。特に、プラズマ処理の効果が顕著であり、その中でも帯電防止層にメラミン系樹脂の架橋成分が含まれている場合にはより密着性が強固なものとなる。帯電防止層にエポキシ系樹脂の架橋成分が含まれている場合には、アルカリ処理を行うとより密着性が強固なものとなる。中でも絶縁層がポリイミドの場合には、プラズマ処理を行うとフェノール性水酸基が形成され、特にメラミン系樹脂と強固な密着性が実現できると推定される。また、絶縁層がポリイミドの場合には、アルカリ処理を行うとカルボキシル基が形成され、特にエポキシ系樹脂と強固な密着性が実現できると推定される。
本発明に適用されるプラズマ処理には低温プラズマが使用される。該プラズマ処理は、プラズマ系中の活性ラジカルによる化学反応、及び電界中で加速された正イオンのエネルギー及び熱を利用する処理である。本発明で使用できるプラズマ処理装置としては平行平板型RIE装置によるプラズマ処理が挙げられる。プラズマ処理装置の設定条件としては、圧力0.1〜100Pa、高周波電源として40kHz〜13.56MHz、プロセスガスとしては、ポリフルオロカーボン、無機ハロゲン、炭化水素、希ガス、O2 、H2 、N2 等のガスを単体、もしくは混合ガスを用い、処理時間としては、装置構成、処理面積、処理条件等によるが、0.01秒以上且つ30分以内程度である。
本発明に適用されるアルカリ処理とは、pHが7より大きい溶液によって前記積層体表面を処理する事であり、処理時間の短縮の観点からpHが10以上の溶液であることが好ましく、廃液処理の観点から、水溶液であることが好ましい。アルカリ成分としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物などの無機物、1級、2級、3級アミノ基含有有機化合物、水酸化4級アンモニウム塩のいずれか、またはそれら2種以上を含むことが好ましい。また、目的に応じて添加剤を含んでも良い。特に処理液が水溶液の場合は、均一に処理を行う為に界面活性剤を含有することが好ましく、その中でも、処理の均一性からノニオン系界面活性剤を含むことが特に好ましい。
[レジスト層の形成]
積層体に対して、帯電防止層を形成したい表面に接するようにレジスト層を形成する。この場合のレジスト層は、レジスト溶液を塗布・乾燥という工程で形成しても良いし、ドライフィルムレジストをラミネートする方法で形成しても良い。レジスト溶液を塗布する手法は材料コストが安価になる、薄膜の形成が可能といったメリットがあり、ドライフィルムレジストを用いる方法は、乾燥工程を必要としない、有機溶媒を使用しない、といったメリットがある。
レジストはネガ型でも、ポジ型でも特に限定されないが、水系の溶液で剥離できることが環境の面から好ましい。
レジスト層の厚みは、特に限定されるものではないが、通常、0.5μm〜100μmとなるように形成される。
[レジスト層のパターニング]
まず、前記レジスト層を選択的に露光する。これにより、レジスト層のうちネガ型の場合、露光された部分の現像液に対する溶解性が、不溶・又は難溶性に変化する。レジスト層がポジ型の場合、露光部の現像液に対する溶解性が可溶性に変化する。
選択的に露光する方法としては、例えば、マスクを介して投影露光する方法等が挙げられる。露光工程に用いられる露光方法や露光装置は特に限定されることなく、密着露光でも間接露光でも良くステッパー、スキャナー、アライナー、密着プリンター、レーザー、電子線描画等、公知のあらゆる手段を用いることができる。
次に、パターン露光されたレジスト層を現像液に浸漬させることにより、現像を行い、所望のレジストパターンを得る。
レジスト層の現像は、用いるレジストに対応した現像液を用い、その推奨条件で行うのが好ましく、特に限定されない。
しかし、廃棄物処理の観点から、後述の剥離工程と同様に、塩基性水溶液による現像がこのましい。特に有機アルカリ水溶液による現像が好ましく、その中でも水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液が好ましい。濃度は、0.01重量%〜70重量%の間が好ましい。0.01重量%未満であるとネガ型レジストの露光部の溶解性が乏しく現像がうまくできない。70重量%を超えると未露光部が膨潤し目的のパターンを得にくくなる。
現像方法は、ディップ法でもスプレー法でも、液中スプレー法でも良く、特に限定されない。
[帯電防止層の形成]
次に、所望の形状に開口部が形成されたステンレス製のマスクを、レジストパターンに密着させ、その上から、帯電防止層形成用樹脂組成物を塗布し、ステンレス製マスクを除去後、乾燥する。
塗布法としては、ディップコート、スピンコート、ダイコート、ロールコート、スリットコート等、適宜公知の手法を用いることができる。
また、樹脂組成物を塗布した膜から溶媒を除去するための乾燥方法としては、加熱が挙げられ、オーブンやホットプレートなど公知の装置・手法を用いることができる。加熱温度としては、80℃〜140℃の範囲で行うのが好ましい。
その後、帯電防止層中の架橋成分が反応できる温度以上の温度、例えば、60℃〜200℃の温度で1秒以上100分以下の加熱を行った後、レジストパターンを剥離することにより帯電防止層パターンを得ることができる。加熱温度が低ければ低いほど、レジスト剥離をより温和な条件で行うことが可能となり、剥離の際に帯電防止層の劣化を抑制できる。
本発明においては、自然環境に対する負荷を低くし、作業者の安全対策や廃液処理費用等の実用化の問題を解決するために、非水溶性の有機溶剤を用いることなく、塩基性水溶液又は水溶性塩基性物質でレジストを剥離することが好ましい。塩基性水溶液又は水溶性塩基性物質で剥離することから、現像工程で用いる設備をそのまま使用可能であるというメリットがある。さらには、剥離後の基板のリンス、洗浄工程も、水又は水溶液で行うことが可能になる。
レジスト層の剥離としては、レジストが膨潤して剥離する場合と、溶解して剥離される場合、その両方が組み合わさった場合がある。
上記塩基性溶液としては、帯電防止層に対しては溶解性が低いが、レジストパターンに対しては溶解性の高い溶液を適宜選択して用いる必要がある。このような塩基性溶液を選択する場合の目安としては、レジストパターンの溶解速度が、帯電防止層パターンの溶解速度の10倍以上、より好ましくは100倍以上の溶解速度を有するような塩基性溶液を選択することが挙げられる。
本発明に用いられる塩基性溶液のうち、塩基性水溶液としては、無機または有機アルカリ水溶液が挙げられ、特に廃液処理の観点からは有機アルカリ水溶液が好ましい。その中でも水溶性アミンの水溶液が好ましい。ここで、水溶性アミンとは蒸留水に対して0.1mol/L以上の濃度で溶解することのできる1級〜4級アミンのことをいう。剥離性の観点から、脂肪族の1級、2級、3級アミンが好ましく、水に対する溶解性の観点から分子内に1つ以上の水酸基を含有する1級、2級、3級アミンが好ましい。分子内に1つ以上の水酸基を含有する脂肪族の1級、2級、3級アミンがさらに好ましい。これら1〜4級アミンは、置換基を有していてもよく特に、水酸基を有する脂肪族アミンとしては、エタノールアミン、N,N,−ジメチルエタノールアミン、プロパノールアミン、トリエタノールアミンなどが例示されるが特に限定されない。
水溶性アミンの水に対する濃度は、0.01重量%〜30重量%の間が好ましく、0.5〜20重量%の間がより好ましい。0.01重量%未満であるとレジストの露光部の溶解性が乏しくレジストパターンの剥離がうまくできない。30重量%を超えると帯電防止層パターンが膨潤したり、溶出したりして目的の帯電防止層パターンを得にくくなる。
また、本発明に用いられる塩基性溶液のうち、水溶性塩基性物質とは、水溶性のpHが7より大きな有機化合物をいい、具体的には、1級、2級、3級アミン、或いは4級アミン(アンモニウム化合物)が挙げられる。ここで本発明の水溶性塩基性物質の水溶性とは、25℃において、1重量%以上90重量%以下の濃度で水溶液が得られるものをいい、好ましくは5重量%以上60重量%以下の濃度の水溶液が得られるものをいう。加熱等の刺激によって溶解性が非常に低下したレジスト層を剥離するには、上記水溶性塩基性物質による剥離が好ましい。具体的には、0℃〜100℃の間のいずれかの温度で液体である1級〜4級アミンが用いられ、さらに1級〜4級の脂肪族アミンである事が好ましい。脂肪族アミンであると一般に塩基性が高い為、より剥離性に優れる。
これら1〜4級アミンは、置換基を有していてもよく、特に、水酸基を有する脂肪族アミンが剥離に対して有効である。具体的には、上記塩基性水溶液で述べたようなアミンなどが例示されるが特に限定されない。
塩基性水溶液又は水溶性塩基性物質を用いて剥離する際には、アミンを含有する組成物など、塩基性物質の他に、界面活性剤、酸化防止剤、基板へのダメージを抑制する薬品等の各種添加剤を混合した組成物を、剥離液として用いてもよい。これらの各種添加剤は、無機又は、有機の塩基性物質の働きを阻害しないようにする為、無機又は、有機の塩基性物質の濃度よりも低く添加する方がよい。
通常剥離は、剥離液が液体の状態で存在できる温度で行うが、剥離に要する時間を短縮させるには、剥離液の温度をより高くすることが好ましい。アミン等の塩基性物質を含有する組成物の温度は、通常0℃以上100℃以下で、レジスト層を剥離する。剥離液が水溶液の場合は、0℃〜95℃の間が好ましく、10℃〜85℃がさらに好ましく、20℃〜70℃の間がさらに好ましい。0℃未満であると、剥離に時間を要し、95℃を超えると、剥離液が揮発しやすくなり、内容物の濃度が変化しやすい、さらには帯電防止層パターンに対してダメージを与えやすくなる、といった問題がある。
剥離方法は、ディップ法でもスプレー法でも、液中スプレー法でも良く、特に限定されない。
また、レジストを剥離後に、さらに60℃〜200℃の温度で1秒以上300分以下の加熱を行い、帯電防止層中の架橋成分を更に架橋させ、膜強度の向上を図っても良い。レジスト剥離前の加熱の際に、帯電防止層中の架橋成分が充分に架橋できる条件で熱処理を行った場合には、レジスト剥離後の加熱工程を省くことが可能となる。この場合、工程を削減できる為より低コストで生産が可能となる。
II.ハードディスクドライブ用サスペンション
本発明に係るハードディスクドライブ用サスペンションは、前記本発明に係る電子回路部品の構成を有するものである。本発明に係るハードディスクドライブ用サスペンションは、ハードディスクドライブの磁気ヘッドを支持している部品である。
本発明に係るハードディスクドライブ用サスペンションは、前記本発明に記載の帯電防止層を有することにより、各種部品の実装時の静電気による静電破壊を抑制できる。ハードディスクドライブ用サスペンションにおいては、例えば、端子接続部などに帯電防止層が形成されてはいけないが、本発明においては所望の箇所のみに帯電防止層を形成することが可能であるため、特に好適に静電破壊を防止されたハードディスクドライブ用サスペンションを得ることができる。
本発明のハードディスクドライブ用サスペンションの一態様について、図3に一部拡大模式的平面図を示し、図4に図2のB−B’断面図を示す。
本発明のハードディスクドライブ用サスペンション101は、金属基板10と、当該金属基板10上に形成されたポリイミドパターンである絶縁層20と、当該絶縁層20上に当該絶縁層20の一部が露出するように形成された配線層30と、当該絶縁層20及び配線層30上にそれらの一部が露出するように形成された配線保護層40とを備えた積層体を含有する。前記金属基板10は、通常、配線、及び/または支持体であってバネの役割を担うものである。配線保護層40は、ポリイミドパターンであって、配線層間を絶縁しつつ配線層を保護する役割を担い、図3の平面図に示されるように、絶縁層20及び配線層30の一部が露出するように形成されている。この露出される一部は、ハードディスクドライブ用サスペンションの端子接続部や、屈曲部などが挙げられる。そして、ポリピロール系樹脂および架橋成分を含有している帯電防止層5が、当該配線保護層40、当該配線層30、及び当該絶縁層20の3層に少なくとも接触し、且つ前記積層体表面の全体ではなく、前記積層体表面の一部となるように形成されている。
金属基板10としては、通常、ステンレスまたは、表面処理を施したステンレス等のバネ状弾性を有する金属箔等が用いられる。用いられる金属基板10は厚さを50μm以下、中でも20μm〜1μmとすると、磁気ディスクへの追従性が良好になり、絶縁層及び配線保護層となるポリイミドパターンと組み合わせて用いた場合に、反りをより低減することができ、平坦性を向上することができる。
本発明に係るハードディスクドライブ用サスペンションの絶縁層20及び配線保護層40に用いられるポリイミドパターンは、上記電子回路部品において説明したポリイミドパターンに求められる特性を満たせば、良好な特性を示すサスペンションを得られる。
上記サスペンションの製造の一般例としては、以下が挙げられる。まず、金属基板10としてのステンレス箔(20μm)上に、ポリイミドパターンを形成し、絶縁層20を備えた基板を得る。次に、スパッタにより、上記得られた基板全面に銅、ニッケルなどのシード層を形成する。そこへ、ネガ型レジスト溶液を塗布または、ネガ型ドライフィルムレジストをラミネートし、基板上へネガ型レジスト層を形成する。その後、露光・現像を行い、銅配線を形成したい部位のみ開口部を設ける。
次に、配線の形状の開口部に銅めっきを行った後、レジストを剥離する。その後、基板の裏面をマスクし、希塩酸水溶液等を用い、銅配線及びシード層の表層をエッチングする。ここで、シード層が露出している部位を完全に除去すると、独立した銅配線層が形成された積層体となる。次に当該銅配線層が形成された積層体上に、所望の形状でポリイミドパターンを形成し、配線保護層40を形成する。さらにその後に、帯電防止層を、上述の電子回路部品における帯電防止層の箇所で説明したように形成する。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明する。
(製造例1:ポリイミド前駆体1の調製)
4,4’−ジアミノジフェニルエーテル 0.96g(4.8mmol)とパラフェニレンジアミン 0.13g(1.2mmol)を50mlの3つ口フラスコに投入し、5mlの脱水されたN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解させ窒素気流下、氷浴で冷却しながら撹拌した。そこへ、少しずつピロメリット酸二無水物 1.31g(6mmol)を添加し、添加終了後、氷浴中で5時間撹拌し、ポリイミド前駆体溶液1を得た。
(製造例2:帯電防止層形成用樹脂組成物1の調製)
PPY−12(丸菱油化製、ポリピロール系樹脂 固形分8重量%)9g、 FINTEX ES−2200(大日本インキ製、アニオン性水溶性ポリエステル溶液 固形分25重量%)8g、 Sumitex Resin M−3(住友ファインケム製、メラミン系樹脂溶液、固形分80重量%)0.5g、 水86gを300mlの三角フラスコ中で混合し、帯電防止層形成用樹脂組成物1を調製した。
(製造例3:帯電防止層形成用樹脂組成物2の調製)
PPY−12(丸菱油化製、ポリピロール系樹脂)9g、 FINTEX ES−2200(大日本インキ製、アニオン性水溶性ポリエステル溶液 固形分25重量%)8g、 エピレッツ 5003W55(ジャパンエポキシレジン製、エポキシ樹脂溶液)0.3g、 水86gを300mlの三角フラスコ中で混合し、帯電防止層形成用樹脂組成物2を調製した。
(製造例4:HDDサスペンション用積層体の製造)
ステンレス箔(新日本製鉄製SUS304 H−TA;厚さ20μm)からなる金属基板上に、低膨張性ポリイミドからなる絶縁層が設けられ、絶縁層上に更に電解銅箔(厚さ10μm)が設けられた積層材料を得た。前記低膨張性ポリイミドとしては、ポリイミド前駆体溶液1を塗布・乾燥後、350℃1時間窒素中で加熱することにより得られるポリイミドを用いた(線熱膨張係数 21ppm)。低膨張性ポリイミドの厚さは、約10μmに調整し、熱膨張率は積層体としたときに反りが発生しないように調整してある。低膨張性ポリイミドは以下に示すポリイミドエッチング液に対し、良好なエッチング特性を示しそのエッチングレートが1μm/min〜15μm/minの間に入るものを用いた。
この3層からなる積層材料を、ステンレス箔表面をマスクして、塩化第二鉄溶液に浸積し、銅箔を配線パターンの形状にエッチングし、配線層を得た。
製造例1で得られたポリイミド前駆体1の20wt%NMP溶液をその積層体の配線層及び絶縁層上にバーコートし、乾燥後15±2μmになるように塗布し、熱風循環式オーブンで80℃で、30分乾燥させた。その後、厚み38μmのアルカリ現像型ドライフィルムレジスト302J38E(ニチゴーモートン製)を真空ラミネーターで0.5Mpaに減圧し、熱板の表面の温度70℃で、15分室温で放置し、ポリイミド前駆体の膜上にネガ型レジスト膜が形成された基板を作製した。
次に手動露光装置(大日本スクリーン株式会社製、MA−1200)を用いて、所望のパターンが描かれたフォトマスクを介して50mJ/cm (i線換算)で露光し、0.8wt%の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液(液温25度)を用いてコンベア式スプレー現像装置を用い、ネガ型レジストとポリイミド前駆体層を同時に現像を行い、その後、蒸留水によってリンスを行い温風乾燥させ、ネガ型レジストとポリイミド前駆体層が積層されたパターンを得た。
上記の手法で得られたネガ型レジスト層とポリイミド前駆体層が積層されたパターンが形成された基板を、200℃で4分、コンベア式オーブンで加熱した。
そのサンプルを、60℃の9:1:90の2−アミノエタノール:サーフィノール104A(日信化学工業製):蒸留水という混合比で作製した剥離液に7分浸漬し、その後、蒸留水でリンスを行い、ネガ型レジストパターンのみ剥離した。その後、窒素気流下350℃、60分加熱処理し、更に、配線保護層として上記絶縁層及び上記配線層の端部が露出するようにポリイミドパターンが形成されたHDDサスペンション用積層体を得た。
(比較製造例1:帯電防止層形成用比較樹脂組成物1の調製)
PPY−12(丸菱油化製、ポリピロール系樹脂)9g、FINTEX ES−2200(大日本インキ製、水溶性ポリエステル溶液)8g、水86gを300mlの三角フラスコ中で混合し、帯電防止層形成用比較樹脂組成物1を調製した。
(実施例1)
製造例4で作製した積層体に対して、圧力25〜30Pa、プロセスガスNF3 /O2 =10/90%、周波数40kHzにてプラズマ処理を行った後、厚み38μmのアルカリ現像型ドライフィルムレジスト302J38E(ニチゴーモートン製)を真空ラミネーターで0.5MPaに減圧し、熱板の表面の温度70℃で、15分室温で放置することで、配線保護層のポリイミドの膜上にネガ型レジスト膜が形成された積層体を作製した。
次に手動露光装置(大日本スクリーン株式会社製、MA−1200)を用いて、所望のパターンが描かれたフォトマスクを介して50mJ/cm (i線換算)で露光し、0.8wt%の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液(液温25度)を用いてコンベア式スプレー現像装置を用い、ネガ型レジストの現像を行い、その後、蒸留水によってリンスを行い温風乾燥させ配線保護層のポリイミドパターン、銅配線層、絶縁層のポリイミドパターン、ステンレス箔が露出するような開口部を有するレジストパターンを得た。
そのパターン上から、製造例2で調製した帯電防止層形成用樹脂組成物1を、所望の形状に開口部を有するステンレス製マスクを介して、前記配線保護層の全面を覆い、配線層、絶縁層、ステンレス箔の絶縁層が積層されている側の表面に接触する箇所のみに乾燥後膜厚500nmになるように塗布し、160℃3分間の熱処理を行った。ステンレス箔の絶縁層が積層されていない側の表面には帯電防止層形成用樹脂組成物は塗布していない。
そのサンプルを、60℃の9:1:90の2−アミノエタノール:サーフィノール104A(日信化学工業製):蒸留水という混合比で作製した剥離液に7分浸漬し、その後、蒸留水でリンスを行い、ネガ型レジストパターンのみ剥離し、所望の形状に帯電防止層が形成された積層体を得た。
上記の処理の後、製造例4の配線層の形成と同様にステンレス箔を所望のパターンにエッチングすることにより、ステンレス箔/ポリイミドパターン/配線層/ポリイミドパターン/帯電防止層がこの順に積層された帯電防止層付きサスペンションを作製した。得られたサスペンションの配線の密着強度は良好であった。
(実施例2)
製造例4で作製した積層体に対して、25:20:1:54の2−アミノエタノール:水酸化カリウム:サーフィノール104A(日信化学工業製):蒸留水という混合比で作製した60℃の処理液に30秒浸漬するアルカリ処理を行った後、1wt%乳酸水溶液で洗浄し、60℃の温水でリンス、乾燥後、厚み38μmのアルカリ現像型ドライフィルムレジスト302J38E(ニチゴーモートン製)を真空ラミネーターで0.5MPaに減圧し、熱板の表面の温度70℃で、15分室温で放置することで、配線保護層のポリイミドの膜上にネガ型レジスト膜が形成された積層体を作製した。
次に手動露光装置(大日本スクリーン株式会社製、MA−1200)を用いて、所望のパターンが描かれたフォトマスクを介して50mJ/cm(i線換算)で露光し、0.8wt%の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液(液温25度)を用いてコンベア式スプレー現像装置を用い、ネガ型レジストの現像を行い、その後、蒸留水によってリンスを行い温風乾燥させ配線保護層のポリイミドパターン、銅配線層、絶縁層のポリイミドパターン、ステンレス箔が露出するような開口部を有するレジストパターンを得た。
そのパターン上から、製造例3で調製した帯電防止層形成用樹脂組成物2を、所望の形状に開口部を有するステンレス製マスクを介して、前記配線保護層の全面を覆い、配線層、絶縁層、ステンレス箔の絶縁層が積層されている側の表面に接触する箇所のみに乾燥後膜厚500nmになるように塗布し、160℃3分間の熱処理を行った。ステンレス箔の絶縁層が積層されていない側の表面には帯電防止層形成用樹脂組成物は塗布していない。
そのサンプルを、60℃の9:1:90の2−アミノエタノール:サーフィノール104A(日信化学工業製):蒸留水という混合比で作製した剥離液に7分浸漬し、その後、蒸留水でリンスを行い、ネガ型レジストパターンのみ剥離し、所望の形状に帯電防止層が形成された積層体を得た。
上記の処理の後、製造例4の配線層の形成と同様にステンレス箔を所望のパターンにエッチングすることにより、ステンレス箔/ポリイミドパターン/配線層/ポリイミドパターン/帯電防止層がこの順に積層された帯電防止層付きサスペンションを作製した。得られたサスペンションの配線の密着強度は良好であった。
(比較例1)
比較製造例1で調製した帯電防止層形成用比較樹脂組成物1を用いた以外は、実施例2と同様にして、所望の形状に帯電防止層が形成された積層体を得た。
上記の処理の後、製造例4の配線層の形成と同様にステンレス箔を所望のパターンにエッチングすることにより、ステンレス箔/ポリイミドパターン/配線層/ポリイミドパターン/帯電防止層がこの順に積層された帯電防止層付きサスペンションを作製した。
[評価]
(1)帯電防止性評価
実施例1、実施例2、及び比較例1と同様の手法で、以下のような表面抵抗測定用サンプルを形成した。5cm×5cmの第一の導体層、第一の絶縁層、第二の導体層からなる積層体から、第二の導体層を全面剥離し、露出した第一の絶縁層上の全面に、製造例1のポリイミド前駆体を用いた配線保護層を形成し、当該配線保護層のポリイミド上に帯電防止層を500nmの厚みで形成し、表面抵抗測定用サンプルを得た。表面抵抗率は、JIS−K6911に準拠して、抵抗測定装置(三菱化学製ハイレスタUP MCP−HT450型)を用いて測定した。
その結果、実施例1は2.2×10Ω/□、実施例2は、7.9×10Ω/□であった。
また、比較例1は、9.6×105Ω/□であった。
(2)発塵量評価
実施例1、実施例2、及び比較例1で作製した帯電防止層付サスペンションについて、以下の手順で、発塵量を測定した。 比較のために、帯電防止層を形成していない製造例4の積層体も併せて測定した。
予め濾過した蒸留水(以下ブランクとする)及び十分に洗浄したビーカー、ピンセットを準備した。
実施例1、実施例2、及び比較例1の工程を用いて得られた各帯電防止層付きサスペンションから無作為に選んだサンプル(各4個分)を、ビーカーに入れ、一定量のブランクを注ぎ、超音波照射装置内に置き、超音波を1分間照射した(抽出)。超音波照射後、装置からビーカーを取出し、サンプルをピンセットで取り出した。取り出した後の抽出液30mlを、HIAC/ROYCO社製液体用自動微粒子測定装置、吸引方式セミオートサンプリング装置、レーザーダイオード光遮断方式センサを装備した測定装置にセットし、パーティクル量を測定した。サンプルを入れずに同様の測定を行った結果をブランク値とした。測定装置の洗浄は測定毎に行った。測定値からブランク値を差し引いたものをサンプル測定結果とした。測定は、一つのサンプルあたり5回行い、その平均値を最終測定結果とした。上記のようにして得られた帯電防止処理済サンプルAと未処理サンプルBの測定値を下記の表1に示す。各サンプル欄のパーティクル量はサンプル(各4個分)の平均を示す。
比較例1で得られたサンプルについては、帯電防止層の一部が蒸留水に溶出してしまった為、測定が不可能であった。
Figure 0005092653
発塵量評価の結果より、実施例1及び2においては、帯電防止層形成後も帯電防止層形成前とほぼ同等の発塵性を示すことが確認された。これは帯電防止層自身の膜強度が強いだけでなく、帯電防止層と積層体の密着性が優れている結果だと考えられる。一方で、比較例1の帯電防止層は、帯電防止層の一部が発塵量評価中蒸留水に溶出する結果となり、膜の密着性や膜強度が不十分であることを示した。
本発明に係る電子回路部品の一態様の一部を示す模式的平面図である。 本発明に係る電子回路部品の一態様の一部を示す模式的断面図である。 本発明に係るハードディスクドライブ用サスペンションの一態様の一部を示す模式的平面図である。 本発明に係るハードディスクドライブ用サスペンションの一態様の一部を示す模式的断面図である。
符号の説明
1 第一の導体層
2 第一の絶縁層
3 第二の導体層
4 第二の絶縁層
5 帯電防止層
10 金属基板
20 絶縁層
30 配線層
40 配線保護層
50 帯電防止層
100 電子回路部品
101 ハードディスクドライブ用サスペンション

Claims (17)

  1. 第一の導体層と、当該第一の導体層上に形成された第一の絶縁層と、当該第一の絶縁層上に当該第一の絶縁層の一部が露出するように形成された第二の導体層と、当該第一の絶縁層及び当該第二の導体層上にそれらの一部が露出するように形成された第二の絶縁層とを備えた積層体を含有するハードディスクドライブ用サスペンションであって、当該第二の絶縁層、当該第二の導体層、及び当該第一の絶縁層に少なくとも接触し、且つ前記積層体表面の一部となるように帯電防止層が形成されており、当該帯電防止層が、ポリピロール系樹脂および架橋成分を含有していることを特徴とするハードディスクドライブ用サスペンション
  2. 前記帯電防止層が、更にバインダー樹脂を含んでいることを特徴とする、請求項1に記載のハードディスクドライブ用サスペンション
  3. 前記帯電防止層の厚みが0.01μm以上5μm以下であり、且つ、前記帯電防止層の表面抵抗率が1.0×10 Ω/□以上、1.0×10 10 Ω/□以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のハードディスクドライブ用サスペンション
  4. 前記帯電防止層が、更にアニオン性バインダー樹脂を含んでいることを特徴とする、請求項1乃至のいずれかに記載のハードディスクドライブ用サスペンション
  5. 前記帯電防止層が、更にアニオン性バインダー樹脂を含み、当該アニオン性バインダー樹脂がアンモニウム塩であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載のハードディスクドライブ用サスペンション。
  6. 前記第一の絶縁層及び/又は前記第二の絶縁層が、ポリイミドを主成分とすることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載のハードディスクドライブ用サスペンション
  7. 前記第一の絶縁層及び/又は前記第二の絶縁層の線熱膨張係数が0ppm〜40ppmであることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれかに記載のハードディスクドライブ用サスペンション
  8. 前記第二の導体層が、銅又は銅を含む合金によって形成されていることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれかに記載のハードディスクドライブ用サスペンション
  9. 前記第一の導体層がステンレスからなることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれかに記載のハードディスクドライブ用サスペンション
  10. 前記帯電防止層が、少なくともポリピロール系樹脂及び架橋成分を含む樹脂組成物を塗布して形成されていることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれかに記載のハードディスクドライブ用サスペンション
  11. 前記帯電防止層が、前記樹脂組成物をスクリーン印刷法によって塗布して形成されていることを特徴とする、請求項10に記載のハードディスクドライブ用サスペンション
  12. 前記帯電防止層が、前記樹脂組成物をインクジェット法によって塗布して形成されていることを特徴とする、請求項10に記載のハードディスクドライブ用サスペンション
  13. 前記架橋成分がメラミン系樹脂を含有することを特徴とする、請求項1乃至12のいずれかに記載のハードディスクドライブ用サスペンション
  14. 前記架橋成分がメラミン系樹脂であり、帯電防止層が形成される表面に、プラズマ処理が行われていることを特徴とする、請求項1乃至13のいずれかに記載のハードディスクドライブ用サスペンション
  15. 前記架橋成分がエポキシ系樹脂を含有することを特徴とする、請求項1乃至14のいずれかに記載のハードディスクドライブ用サスペンション
  16. 前記架橋成分がエポキシ系樹脂であり、帯電防止層が形成される表面に、アルカリ処理が行われていることを特徴とする、請求項1乃至15のいずれかに記載のハードディスクドライブ用サスペンション
  17. 前記帯電防止層が、前記第一の導体層の前記第一の絶縁層が形成されている面と反対側の面には形成されていないことを特徴とする、請求項1乃至16のいずれかに記載のハードディスクドライブ用サスペンション
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