JP5091230B2 - 位相差フィルム及び位相差フィルム積層体並びにこれらの製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
本発明は、高い透明性を有して、加熱後であっても位相差の変化量の少ない優れた位相差フィルム及び位相差フィルム積層体並びにこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ブラウン管方式のCRTに替わり、液晶表示装置が広く用いられている。これら液晶表示装置には画像着色を解消するため、あるいは視野角を拡大するために、位相差フィルムが用いられている。また、投射型プロジェクタやレーザー光線のビームスプリッターにおいては直線偏光と円偏光の相互変換素子として位相差フィルムが用いられている。更には、タッチパネル用途において、外光反射を低減し視認性を向上させるために位相差フィルムの導入が求められている。
【0003】
これら、位相差フィルムは偏光された光の成分の相対位相を変えるのに用いられる複屈折性の材料で作られたフィルムであり、合成樹脂製の配向フィルムが複屈折性層として用いられている。位相差フィルムの構造としては、1つの複屈折性層からなる単層構造、複屈折性が同一または異なる2層以上の複屈折層を積層した多層構造、保護層を有するものなどがある(例えば特許文献1参照)。
【0004】
例えば、液晶ディスプレイ用位相差フィルムは、鮮明な色彩と精細な画像を得るために、複屈折性層の全面が光学的に均一であると共に、温度や湿度の変化によっても光学的特性が変化しないことが必要である。特に、自動車搭載用の液晶ディスプレイ・パネルに用いる場合には、過酷な条件での使用が予測されるため、少なくとも60℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上の耐熱温度が要求される。しかしながら、これまでに、位相差フィルムとしては、主に熱可塑性樹脂であるポリカーボネート樹脂(例えば特許文献2参照)やノルボルネン系樹脂(例えば特許文献3参照)が利用されており、十分な耐熱性および耐候性が得られていない。
【0005】
また、高いTg(ガラス転移温度)を有する熱可塑性樹脂の場合には、一般に、溶液流延法によってシートを製造しているが、延伸配向したフィルムは表面の平滑性に優れるものの生産性が悪く、また、溶媒が残留するため使用環境によっては用いることができないといった問題がある。
特許文献1:特開平5−2108号公報
特許文献2:特開2006−143831号公報
特許文献3:特開2006−301522号公報
発明の開示
発明が解決しようとする課題
[0006]
そこで本発明は、高い透明性を有し、かつ、加熱後であっても位相差の変化量の少ない優れた位相差フィルム及び位相差フィルム積層体並びにこれらの製造方法を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0007]
本発明者等は、上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、(1)(メタ)アクリロイル基を少なくとも2個有する多官能モノマーの少なくとも1種、(2)この多官能モノマーと反応可能な少なくとも1種の官能基を末端に有して数平均分子量1000〜10000の範囲にある直鎖状ポリマー、及びラジカル重合開始剤として(3)光重合開始剤又は(4)熱重合開始剤のいずれかあるいはその両方を含有する樹脂組成物を得て、これを成形することにより、高い透明性を有し、かつ、加熱後であっても位相差の変化量の少ない優れた位相差フィルムが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
[0008]
すなわち、本発明は、(I)(メタ)アクリロイル基を少なくとも2個有する多官能モノマーと、(II)前記多官能モノマーと反応可能な少なくとも1種の官能基を末端に有して、数平均分子量が1000〜10000の範囲である直鎖状ポリマーと、(III)光重合開始剤及び/又は(IV)熱重合開始剤とを含む樹脂組成物を硬化させてなる位相差フィルムであって、(I)成分の多官能モノマーが篭型シルセスキオキサン、脂環式モノマー又は脂肪族モノマーのいずれか1種又は2種以上からなり、(II)直鎖状ポリマーが、下記一般式(1)で表される繰り返し単位の末端にアクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基及びビニル基からなる群から選ばれた少なくとも1種の不飽和基を有するポリウレタンであり、(I)成分と(II)成分の重量比(I):(II)が5〜90:10〜95であり、かつ、100℃で10時間の加熱処理を行う耐熱試験後の位相差フィルムの位相差値変化量が0〜20nmの範囲であることを特徴とする位相差フィルムである。
(式中、R1は炭素数5〜10の置換若しくは無置換の環式芳香族若しくは環式脂肪族、又は炭素数5〜10の置換若しくは無置換のアルキリデン基を有する数平均分子量20〜2000のポリオールであり、R2は炭素数5〜10の置換若しくは無置換の環式芳香族若しくは環式脂肪族、又は炭素数5〜10の置換若しくは無置換のアルキデン基を表し、nは6〜70である。)
【0009】
また、本発明は、(I)(メタ)アクリロイル基を少なくとも2個有する多官能モノマーと、(II)前記多官能モノマーと反応可能な少なくとも1種の官能基を末端に有して、数平均分子量が1000〜10000の範囲である直鎖状ポリマーと、(III)光重合開始剤及び/又は(IV)熱重合開始剤とを含む樹脂組成物を用いて位相差フィルムを製造する方法であって、樹脂組成物を少なくとも1枚の支持体で支持し、支持体側若しくは支持体の反対側又はその両方の側から400〜6000mjのエネルギー線を照射する一次硬化により、上記(I)成分の(メタ)アクリロイル基及び上記(II)成分の(メタ)アクリロイル基が合計で30%〜80%減少した樹脂成形体を得た後、この樹脂成形体を所定の形状に切り出して延伸治具に固定し、延伸する温度まで加熱して任意方向に延伸倍率5〜60%の範囲で延伸させて延伸樹脂成形体を得た後、この延伸樹脂成形体を延伸治具に固定した状態で更に加熱及び/又はエネルギー線を照射して二次硬化させ、その後、室温まで冷却することを特徴とする位相差フィルムの製造方法である。
【0010】
本発明において、位相差フィルムを構成する樹脂組成物は、(I)成分として、(メタ)アクリロイル基を少なくとも2個有する反応性の多官能モノマーを含む。この(I)成分は、篭型シルセスキオキサン、脂環式モノマー又は脂肪族モノマーのいずれか1種又は2種以上からなり、その例として、篭型シルセスキオキサン、ジシクロペンタニルジアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等を挙げることができる。
【0011】
また、本発明における樹脂組成物は、(II)成分として、前記(I)成分と反応可能な少なくとも1種の官能基を末端に有して、数平均分子量が1000〜10000の範囲である直鎖状ポリマーを含む。この(II)成分の具体例としては末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリウレタンが挙げられる。このようなポリウレタンとしては下記一般式(1)で表される繰り返し単位の末端にアクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基及びビニル基からなる群から選ばれた少なくとも1種の不飽和基を有するポリウレタンであるのがよく、好ましくは(メタ)アクリロイル基を有したものであるのがよい。
(式中、R1は炭素数5〜10の置換若しくは無置換の環式芳香族若しくは環式脂肪族、又は炭素数5〜10の置換若しくは無置換のアルキリデン基を有する数平均分子量20〜2000のポリオールであり、R2は炭素数5〜10の置換若しくは無置換の環式芳香族若しくは環式脂肪族、又は炭素数5〜10の置換若しくは無置換のアルキデン基を表し、nは6〜70である。)
【0012】
(II)成分がポリウレタンの場合は、上記(I)成分の多官能モノマーとラジカル共重合が可能な不飽和基を前記一般式(1)で表されるポリウレタンの末端に少なくとも1個有している。
【0013】
また、(II)成分の数平均分子量は1000〜10000の範囲である。数平均分子量が1000に満たない場合には、十分な延伸倍率を得ることが難しく、反対に10000を超える場合には高粘度であり成形が困難になる。
【0014】
(II)成分として用いられるポリウレタンは、従来から一般的に用いられる方法により製造することができる。すなわち、ポリオールと有機イソシアネートと末端に重合性不飽和基及び水酸基を有する化合物とから合成する方法等である。その際に、原料物質の分子量、あるいは反応時のモル比を適宜調節することにより本発明の樹脂組成物に用いられるウレタンアクリレートを得ることができる。
【0015】
上記のポリオールとしては、1分子中に水酸基を2個以上有するものであるのがよく、例えばポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリカーボネートポリオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。より詳しくは、ポリエステルポリオールとしてフタル酸とエチレングリコールの重縮合化合物等を例示することができ、ポリエーテルポリオールとしてε−カプロラクトンとプロピレングリコールの重縮合化合物や、ビスフェノールAとプロピレンオキサイドの重縮合化合物等を例示することができ、ポリカーボネートポリオールとしてジエチルカーボネートとブタンジオールの重縮合化合物等を例示することができる。
【0016】
また、有機イソシアネート化合物としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、水添4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロペンタジエンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等が挙げられる。
【0017】
末端に重合性不飽和基及び水酸基を有する化合物としては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、3−アクリロイルオキシグリセリンモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1−(メタ)アクリロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロパン、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリε−カプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、各種エポキシアクリレート等が挙げられる。
【0018】
なお、(II)成分として使用可能なポリウレタンは、市販されているものであってもさしつかえない。例えば、日本化薬(株)製ウレタンオリゴマーカヤラッドUX-2301(重量平均分子量:7000)、日本合成化学(株)製ウレタンオリゴマー紫光UV6100B(重量平均分子量:6400)、共栄社化学(株)製のウレタンアクリレートオリゴマーUF-8001(数平均分子量:2600)やUF-503(数平均分子量:3800)が好ましく使用できる。
【0019】
また、樹脂組成物における(I)成分と(II)成分の重量比(I):(II)については5〜90:10〜95、好ましくは30〜80:20〜70である。重量比(I):(II)が上記範囲を外れると所望の延伸倍率がえられないかまたは延伸配向の固定が困難である。
【0020】
また、本発明における樹脂組成物には、ラジカル重合開始剤として(III)光重合開始剤及び/又は(IV)熱重合開始剤を配合する。(III)光重合開始剤のみを配合する場合には、その添加量は樹脂組成物の合計100重量部に対して(III)光重合開始剤は0.1〜3重量部の範囲であるのが好ましい。(IV)熱重合開始剤のみを配合する場合は、樹脂組成物合計100重量部に対し、その添加量は0.1〜10重量部の範囲であるのが好ましい。(III)光重合開始剤および(IV)熱重合開始剤を配合する場合には、樹脂組成物合計100重量部に対し、(III)光重合開始剤が0.01〜1重量部であり、(IV)熱重合開始剤は0.05〜10重量部の範囲であるのが好ましい。各配合において、上記範囲未満では架橋が不十分であるため延伸配向の固定が困難であり、範囲を超えて含有しても反応率の向上は望めない。
【0021】
上記(III)光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ベンゾイル系、ベンゾフェノン系、チオキサンソン系、アシルホスフィンオキサイド系等の化合物を好適に使用することができる。具体的には、トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン、ベンゾインメチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、チオキサンソン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、カンファーキノン、ベンジル、アンスラキノン、ミヒラーケトン等を例示することができる。また、光重合開始剤と組み合わせて効果を発揮する光開始助剤や鋭感剤を併用することもできる。
【0022】
上記(IV)熱重合開始剤としては、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアリルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネートに分類される公知の有機過酸化物や、アゾ化合物等を挙げることができる。具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、3−イソプロピルヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジクミルヒドロパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、イソブチルパーオキサイド、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスカルボンアミド等が挙げられる。
【0023】
本発明における樹脂組成物には、上記の(I)〜(IV)成分以外に、位相差フィルムとしての機能を低下させない範囲で、各種添加剤を添加することができる。各種添加剤として、有機/無機フィラー、可塑剤、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、離型剤、発泡剤、核剤、着色剤、架橋剤、分散助剤、樹脂成分等を例示することができる。
【0024】
本発明において、位相差フィルムの製造過程は以下のとおりである。すなわち、樹脂組成物を一次硬化させて樹脂成形体を得て、この樹脂成形体を延伸により配向させる。そして、得られた延伸フィルムを二次硬化及び/又は硬化性樹脂を積層することで延伸配向を固定し位相差フィルムを得るようにする。このうち、樹脂組成物を一次硬化させて一部ラジカル重合した樹脂成形体を得る際には、その方法として、加熱または400〜6000mjの電子線、紫外線、可視光等のエネルギー線照射が適当である。
【0025】
紫外線や可視光等のエネルギー線を照射して一次硬化させる際には、例えば複数の支持体からなる金型であって、少なくとも1枚の支持体を石英ガラスなど紫外線を透過させることができる透明素材で形成した金型内に樹脂組成物を注入し、紫外線ランプで紫外線を照射して少なくとも透明素材を通過した紫外線により収容された樹脂組成物の重合硬化を行い、金型から脱型させることで所望の形状の成形体を製造する方法を用いることができる。また、金型を用いない場合には、例えばスチールベルトを支持体として用いて、移動するスチールベルト上にドクターブレードやロール状のコーターで樹脂組成物を塗布し、上記の紫外線ランプで重合硬化させることで、シート状の成形体を製造する方法等を例示することができる。
【0026】
光照射によって樹脂組成物の一次硬化を行う場合、好ましくは波長10〜400nmの紫外線や波長400〜700nmの可視光線を照射することで、成形体を得ることができる。用いる光の波長は特に制限されるものではないが、特に波長200〜400nmの近紫外線が好適に用いられる。紫外線発生源として用いられるランプとしては、低圧水銀ランプ(出力:0.4〜4W/cm)、高圧水銀ランプ(40〜160W/cm)、超高圧水銀ランプ(173〜435W/cm)、メタルハライドランプ(80〜160W/cm)、パルスキセノンランプ(80〜120W/cm)、無電極放電ランプ(80〜120W/cm)等を例示することができる。
【0027】
一部ラジカル重合した樹脂成形体の反応率を制御するため、ランプの照射量を調整することが好ましく、使用するランプの種類および樹脂組成物により照射量範囲を決定することができる。また、照射時間が短すぎると反応率の再現性が得られず、照射時間が長いと生産性が悪くなるため、適宜調整することが好ましい。
【0028】
また、一次硬化により成形体を得る際には、上記(I)成分及び(II)成分の(メタ)アクリロイル基が合計で30%〜80%減少するまで一次硬化させるようにする。(メタ)アクリロイル基の減少率(以下、「反応率」という)を制御するためには、ランプの照射量を調整することが好ましく、使用するランプの種類および樹脂組成物により照射量範囲を決定することができる。例えば、超高圧水銀ランプ(333W/cm)の場合は400〜6000mjの範囲で任意に照射量を調節することにより所望の反応率とすることができる。また、照射量の調節は照射時間により調整できるが、照射時間が短すぎると反応率の再現性が得られず、照射時間が長いと生産性が悪くなるため、使用するランプあるいは装置によって適宜調整することが好ましい。
【0029】
一次硬化させた樹脂成形体の反応率は、低すぎるとシート形状を保持することが困難であり容易に切断するおそれがあり、反対に高すぎると延伸倍率が低く、所望の高い位相差値が得られない。したがって、反応率は30%〜80%、より好ましくは40%〜70%の範囲が好ましい。
【0030】
このようにして得られた樹脂成形体の厚みは、特に限定されるものではなく、得られる延伸フィルム(位相差フィルム)の使用目的などに応じて適宜に決定することができる。一般には、安定した延伸処理による均質な延伸フィルムを得る点などにより5〜500μmの厚さのフィルムが好ましい。
【0031】
本発明では、上記の方法で得られた樹脂成形体を延伸により配向させることにより、複屈折性を発現させる位相差フィルムを得ることができる。すなわち、上記で得られた樹脂成形体を所定の形状に切り出し、延伸治具に固定して、延伸する温度まで加熱することで延伸樹脂成形体を得るようにする。上記で得られた樹脂成形体を延伸することにより、樹脂成形体を延伸配向させて複屈折性を発現させる。延伸配向させる手段としては、例えば自由幅一軸延伸、定幅一軸延伸等の一軸延伸、遂次二軸延伸、同時二軸延伸等の二軸延伸等を用いることが可能である。また、所定の形状に切り出された樹脂成形体を固定する延伸治具については特に制限はなく、例えば鉄、アルミ、銅、真鍮等の金属や耐熱性を有するプラスチックを加工して使用することができる。これらは延伸により生じる樹脂成形体の応力に対して充分な剛性を有していることは言うまでもない。
【0032】
延伸配向させる方法については、具体的には、樹脂成形体を加熱軟化させる予熱工程と、この予熱されたフィルムを延伸適温に加熱して幅方向に一軸延伸を行う延伸工程からなるのが好ましい。
【0033】
予熱工程においては、樹脂成形体を延伸可能な温度付近まで加熱し、所定時間保持させ加熱軟化させる。延伸工程における樹脂成形体の延伸温度は、低すぎると拡幅延伸時にフィルムが切断することがあり、逆に高すぎても拡幅延伸時にフィルムが切断することがあるため、所望の高い位相差値が得られない。したがって、延伸温度は、樹脂成形体を動的熱機械分析装置で測定し貯蓄弾性率が40%〜60%減少し始める温度を求め、該温度あるいは該温度から−20℃〜+30℃の範囲とするのが好ましい。
【0034】
延伸工程における延伸速度は、小さくなると熱緩和により位相差値が低下したり、後の二次硬化工程で破断しやすくなる。したがって、延伸速度は1mm/分以上が好ましい。但し、あまり速くするとフィルムが切断したり、延伸装置内の治具から外れたりするので、より好ましくは1mm/分〜10mm/分の範囲内である。
【0035】
また、樹脂成形体を延伸させる際には延伸倍率を調整することで所望の位相差値が得られる。延伸工程における延伸倍率は、5〜50%の範囲が好ましい。低い場合には位相差の発現が困難であり、高い場合にはフィルムが切断する。
【0036】
こうして一軸延伸されたフィルムは、延伸装置内の治具に固定した状態で室温まで冷却される。一軸延伸されたフィルムは、フィルムの配向を固定する目的で下記のいずれかの方法で二次硬化させる。すなわち、この延伸樹脂成形体を延伸治具に固定した状態で更に加熱及び/又はエネルギー線を照射して二次硬化させ、反応率をほぼ100%とし硬化反応を終結させるようにする。
【0037】
第一の方法としては、延伸後の延伸幅を保持した状態になるように延伸樹脂成形体を延伸治具に固定したまま、所定時間、所定温度に保持するようにする。この際の温度は、延伸温度以上でありかつ熱重合開始剤の選択により室温から200℃前後までの広い範囲から選択することができる。このとき、延伸樹脂成形体を固定する延伸治具は、延伸幅を保つために固定する治具の張力を調整する機構を持つことが好ましい。張力が低すぎると熱による配向緩和からの延伸方向への収縮が大きく延伸後の配向が十分に保持されない。逆に高すぎると硬化収縮による切断が生じフィルムの作製が困難である。このように熱処理したフィルムは、延伸幅を保持した状態で室温まで冷却させる。
【0038】
第二の方法としては、延伸後の延伸幅を保持した状態になるように延伸樹脂成形体を延伸治具に固定したまま、3000mj〜20000mjの範囲でエネルギー線を照射した後、所定時間、所定温度に保持するようにする。この際の温度は、第一の場合と同様である。エネルギー線を照射することで破断強度を増加させ、二次硬化での破断を抑制することが可能となる。このように熱処理したフィルムは、延伸幅を保持した状態で室温まで冷却させる。
【0039】
第三の方法として、必要に応じて、二次硬化前の延伸樹脂成形体、又は二次硬化後の延伸樹脂成形体の少なくとも一方の面に光硬化性樹脂を塗工し、3000〜20000mjのエネルギー線を照射して光硬化性樹脂層を形成するようにしてもよい。すなわち、延伸樹脂成形体を延伸治具から取外すか又は延伸治具に固定した状態で、光硬化性樹脂を少なくとも一方の面に塗工し、上記エネルギー線を照射して少なくとももう1層の光硬化性樹脂層を形成することにより延伸樹脂成形体を固定することが可能となる。この方法は延伸冶具を用いる方法の補助的手段として用いてもよい。
【0040】
第四の方法として、必要に応じて、二次硬化前の延伸樹脂成形体、又は二次硬化後の延伸樹脂成形体の少なくとも一方の面に熱硬化性樹脂を塗工し、25〜200℃の温度範囲、及び20分〜4時間の範囲で熱硬化性樹脂層を形成するようにしてもよい。すなわち、延伸樹脂成形体を延伸治具から取外すか又は延伸治具に固定した状態で、熱硬化性樹脂を少なくとも一方の面に塗工し、上記温度及び時間で熱硬化性樹脂層を形成することにより延伸樹脂成形体を固定することが可能となる。更に、第三の方法として明示した手段と併用してもよい。この方法は延伸冶具を用いる方法の補助的手段として用いてもよい。
【0041】
その他方法として、必要に応じて、二次硬化前の延伸樹脂成形体、又は二次硬化後の延伸樹脂成形体の少なくとも一方の面に硬化性樹脂を塗工し、400〜10000mjのエネルギー線を照射して硬化性樹脂層を形成し、かつ、25〜200℃の温度範囲、及び20分〜4時間の範囲でアクリロイル基の減少率をほぼ100%にするようにしてもよい。すなわち、延伸樹脂成形体を延伸治具から取外すか又は延伸治具に固定した状態で、硬化性樹脂を少なくとも一方の面に塗工し、上記エネルギー線を照射して少なくとももう1層の硬化性樹脂層を形成し、かつ加熱することにより延伸樹脂成形体を固定することが可能となる。この方法は延伸冶具を用いる方法の補助的手段として用いてもよい。
【0042】
光若しくは熱硬化性樹脂については、成形体時において透明性および耐候性、さらにTgが200℃以上を有する樹脂成形体であれば特に限定されるものではないが、好ましくは特開2006-89685号公報に記載されるように構造単位中に篭型構造を有するポリオルガノシルセスキオキサンを主たる成分とするシリコーン樹脂と、分子中に−R3−CR4=CH2又は−CR4=CH2(但し、R3はアルキレン基、アルキリデン基又は−OCO−基を示し、R4は水素又はアルキル基を示す)で表される不飽和基を少なくとも1個含み、かつ、前記シリコーン樹脂とラジカル共重合が可能な数平均分子量が2500以上のウレタン結合を有するオリゴマーと、それ以外の前記シリコーン樹脂とラジカル共重合が可能な不飽和化合物が5〜40:50〜90:0〜30の重合割合で配合したシリコーン樹脂組成物であるのがよい。
【0043】
そして、本発明により得られた位相差フィルムは、100℃で10時間の加熱処理による耐熱試験後の位相差フィルムの位相差値変化量が0〜20nmの範囲である。ここで、耐熱試験をした後の位相差フィルムの位相差値変化量とは、二次硬化もしくは、光又は熱硬化性樹脂による延伸フィルムへの積層工程を経て製造した直後に測定した位相差値と100℃で10時間保持した後の位相差値との変化量をいう。また、本発明の位相差フィルムは、好ましくは、d=250μmでの波長550nmにおける面内位相差値Reが5〜150nmを有する。尚、位相差値Reは下記式から求められる。また、ここでいう好ましい位相差値Reとは耐熱試験後の時点で測定して得られる値である。
Re=(nx−ny)d
〔nx:x軸方向の屈折率、ny:y軸方向の屈折率、d:フィルム厚み〕
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、高い透明性を有し、加熱後であっても位相差の変化量の少ない優れた位相差フィルムを得ることができ、たとえば、高温環境下で使用する車載用タッチパネル用途、液晶表示装置用途などに好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下に実施例等を述べるが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記の実施例に使用した篭型シリコーン樹脂およびポリウレタンは、次の合成例に示した方法で得たものである。
【0046】
[合成例1](篭型シリコーン樹脂の調製)
メタクリロイル基を全てのケイ素原子上に有した篭型シリコーン樹脂を得る方法は、公知である合成方法(特開2006−089685号公報)を参考にして、以下のように行った。
【0047】
撹拌機、滴下ロート、及び温度計を備えた反応容器に、溶媒として2−プロパノール(IPA)40mlと塩基性触媒として5%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(TMAH水溶液)とを装入した。滴下ロートにIPA15mlと3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(MTMS:東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製SZ6300)12.69gを入れ、反応容器を撹拌しながら、室温でMTMSのIPA溶液を30分かけて滴下した。MTMS滴下終了後、加熱することなく2時間撹拌した。2時間撹拌後溶媒を減圧下で溶媒を除去し、トルエン50mlで溶解した。反応溶液を飽和食塩水で中性になるまで水洗した後、無水硫酸マグネシウムで脱水した。無水硫酸マグネシウムをろ別し、濃縮することで加水分解生成物(シルセスキオキサン)を8.6g得た。このシルセスキオキサンは種々の有機溶剤に可溶な無色の粘性液体であった。
【0048】
次に、撹拌機、ディンスターク、及び冷却管を備えた反応容器に上記で得られたシルセスキオキサン20.65gとトルエン82mlと10%TMAH水溶液3.0gとを入れ、徐々に加熱し水を留去した。更に130℃まで加熱しトルエンを還流温度で再縮合反応を行った。このときの反応溶液の温度は108℃であった。トルエン還流後2時間撹拌した後、反応を終了とした。反応溶液を飽和食塩水で中性になるまで水洗した後、無水硫酸マグネシウムで脱水した。無水硫酸マグネシウムをろ別し、濃縮することで目的物である篭型シリコーン樹脂(混合物)を18.77g得た。得られた篭型シリコーン樹脂は種々の有機溶剤に可溶な無色の粘性液体であった。
【0049】
前記再縮合反応により得られた篭型シリコーン樹脂の液体クロマトグラフィー分離後の質量分析を行ったところアンモニウムイオンが付いた分子イオンが確認され、構成比率はT8:T10:T12及びその他が約2:4:1:3であり、篭型構造を主たる成分とするシリコーン樹脂であることが確認できた。
【0050】
[合成例2](ウレタンオリゴマー1の調製)
有機イソシアネートとポリオールを反応しポリウレタンを得る方法は公知である合成方法(特開平6−166737号公報)を参考にして、以下のように行った。有機イソシアネートとしてイソホロンジイソシアネートと、2,2−ジメチル1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、及びεーカプロラクトンのモル比が1:1:1から成るポリオールとを組成比4:3の割合で反応させ、2−ヒドロキシエチルアクリレートを反応させることにより目的物である両末端にアクリル基を有するウレタンアクリレートオリゴマー1(数平均分子量3800)を得た。
【0051】
[合成例3](ウレタンオリゴマー2の調製)
合成例2と同様の手順で有機イソシアネートとしてイソホロンジイソシアネートと、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオールのモル比が1:1から成るポリオールとを4:3の割合で反応させ、2−ヒドロキシエチルアクリレートを反応させることにより目的物であるウレタンアクリレートオリゴマー2(数平均分子量2600)を得た。
【実施例1】
【0052】
上記合成例1で得た篭型シリコーン樹脂(10重量部)と、ジシクロペンタニルジアクリレート(65重量部)と、上記合成例2で得たウレタンアクリレートオリゴマー1(25重量部)と、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(0.078重量部)と、ジクミルパーオキサイド(1重量部)とを混合し、シリコーン樹脂組成物を得た。
【0053】
次に、上記で得たシリコーン樹脂組成物を厚さ1mmの石英ガラス上にバーコーターを用いて厚さ0.2mmになるようにキャスト(流延)し、333W/cmの超高圧水銀ランプを用い、1600mJ/cm2の積算露光量(365nm換算)で硬化させ、所定の厚みとしたシート状の樹脂成形体を得た。このときの反応率は45%であった。表1に、この実施例1に係る樹脂組成物の組成と共に、照射量及び反応率を示す。なお、反応率とは、後述するようにして求めたアクリロイル基の減少率のことである。
【0054】
上記で得たシート状の樹脂成形体から25mm×70mmの小片を切り出し、二軸延伸装置(井元製作所製)を用いて、温度60℃、延伸速度5mm/min.の条件にて長手方向に一軸延伸を実施し、+10%延伸フィルム(延伸樹脂成形体)を得た。次いで、固定した治具ごと熱風循環オーブン(富山産業製)を用いて180℃、30分間処理を行い、+2.5%延伸フィルム(位相差フィルム)を得た。延伸フィルムの厚さは240μmであり、フィルム面内の位相差値Re=(nx−ny)dは+19nmであった。なお、nx:x軸方向の屈折率、ny:y軸方向の屈折率、d:フィルム厚みである。また、得られた位相差フィルムを100℃で10時間加熱する耐熱試験(加熱処理)後のRe値(位相差値)及び透過率を測定した。結果を表2に示す。
【実施例2】
【0055】
表1に示す配合組成の重量部及び積算露光量(照射量)とした以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。
【0056】
上記で得たシート状の樹脂成形体から25mm×70mmの小片を切り出し、二軸延伸装置(井元製作所製)を用いて、温度80℃、延伸速度5mm/min.の条件にて長手方向に一軸延伸を実施し+30%延伸フィルム(延伸樹脂成形体)を得た。次いで、固定した治具ごと熱風循環オーブン(富山産業製)を用いて180℃、30分間処理を行い、+18%延伸フィルム(位相差フィルム)を得た。延伸フィルムの厚さは224μmであり、フィルム面内の位相差値Re=(nx−ny)dは+83nmであった。また、得られた位相差フィルムを100℃で10時間加熱する耐熱試験(加熱処理)後のRe値(位相差値)及び透過率を測定した。結果を表2に示す。
【実施例3】
【0057】
樹脂組成物を表1に示す配合組成の重量部及び積算露光量とした以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。
【0058】
上記で得たシート状の樹脂成形体から25mm×70mmの小片を切り出し、二軸延伸装置(井元製作所製)を用いて、温度60℃、延伸速度5mm/min.の条件にて長手方向に一軸延伸を実施し+10%延伸フィルム(延伸樹脂成形体)を得た。得られたフィルムを固定用治具にて固定し、二軸延伸装置より取り出した後、333W/cmの超高圧水銀ランプを用い、19200mJ/cm2の積算露光量(365nm換算)で硬化させた。次いで、熱風循環オーブン(富山産業製)を用いて180℃、30分間処理を行い、+4%延伸フィルム(位相差フィルム)を得た。延伸フィルムの厚さは205μmであり、フィルム面内の位相差値Re=(nx−ny)dは+7nmであった。また、得られた位相差フィルムを100℃で10時間加熱する耐熱試験(加熱処理)後のRe値(位相差値)及び透過率を測定した。結果を表2に示す。
【実施例4】
【0059】
表1に示す配合組成の重量部及び積算露光量とした以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。
【0060】
上記で得たシート状の樹脂成形体から25mm×70mmの小片を切り出し、二軸延伸装置(井元製作所製)を用いて、温度60℃、延伸速度5mm/min.の条件にて長手方向に一軸延伸を実施し+15%延伸フィルム(延伸樹脂成形体)を得た。得られたフィルムを固定した治具ごと333W/cmの超高圧水銀ランプを用い、19200mJ/cm2の積算露光量(365nm換算)で硬化させた。次いで、熱風循環オーブン(富山産業製)を用いて180℃、30分間処理を行い、+11%延伸フィルム(位相差フィルム)を得た。延伸フィルムの厚さは239μmであり、フィルム面内の位相差値Re=(nx−ny)dは+51nmであった。また、得られた位相差フィルムを100℃で10時間加熱する耐熱試験(加熱処理)後のRe値(位相差値)及び透過率を測定した。結果を表2に示す。
【実施例5】
【0061】
表1に示す配合組成の重量部及び積算露光量とした以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。
【0062】
上記で得たシート状の樹脂成形体から50mm×70mmの小片を切り出し、二軸延伸装置(井元製作所製)を用いて、温度60℃、延伸速度5mm/min.の条件にて長手方向に一軸延伸を実施し+15%延伸フィルム(延伸樹脂成形体)を得た。次いで、延伸装置内の治具に固定した状態で180℃、30分間処理を行い、+11%延伸フィルムを得た。延伸フィルムの厚さは240μmであり、フィルム面内の位相差量Re=(nx−ny)dは+51nmであった。
【0063】
更に、上記合成例1で得た篭型シリコーン樹脂(30重量部)、ジシクロペンタニルジアクリレート(65重量部)、上記合成例3で得たウレタンアクリレートオリゴマー2(5重量部)、及び光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(2.5重量部)を混合して樹脂組成物を得た後、石英ガラス上に上記で得られた+11%延伸フィルムをおき、一方の面にバーコーターを用いてこの樹脂組成物を厚さ0.35mmになるようにキャスト(流延)し、333W/cmの超高圧水銀ランプを用いて、1600mJ/cm2の積算露光量(365nm換算)で硬化させた。さらに残りの面にも、厚さ0.45mmになるようにこの樹脂組成物をキャスト(流延)し、333W/cmの超高圧水銀ランプを用い、12800mJ/cm2の積算露光量(365nm換算)で硬化させ、実施例5に係る位相差フィルムを得た。この位相差フィルムの厚さは450μmであり、フィルム面内の位相差値Re=(nx−ny)dは+19nmであった。また、得られた位相差フィルムを100℃で10時間加熱する耐熱試験(加熱処理)後のRe値(位相差値)及び透過率を測定した。結果を表2に示す。
【実施例6】
【0064】
表1に示す配合組成の重量部及び積算露光量とした以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。
【0065】
上記で得たシート状の樹脂成形体から50mm×70mmの小片を切り出し、二軸延伸装置(井元製作所製)を用いて、温度60℃、延伸速度5mm/min.の条件にて長手方向に一軸延伸を実施し+40%延伸フィルム(延伸樹脂成形体)を得た。次いで、延伸装置内の治具に固定した状態で180℃、10分間処理を行い、+25%延伸フィルムを得た。延伸フィルムの厚さは201μmであり、フィルム面内の位相差値Re=(nx−ny)dは+263nmであった。
【0066】
更に、上記合成例1で得た篭型シリコーン樹脂(30重量部)、ジシクロペンタニルジアクリレート(65重量部)、上記合成例3で得たウレタンアクリレートオリゴマー2(5重量部)、及び光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(2.5重量部)を混合して樹脂組成物を得た後、バーコーターを用いて、石英ガラス上に上記で得られた+25%延伸フィルムをおき、一方の面に厚さ0.3mmになるようにこの樹脂組成物をキャスト(流延)し、333W/cmの超高圧水銀ランプを用い、1600mJ/cm2の積算露光量(365nm換算)で硬化させた。さらに残りの面にも、厚さ0.4mmになるようにこの樹脂組成物をキャスト(流延)し、333W/cmの超高圧水銀ランプを用い、12800mJ/cm2の積算露光量(365nm換算)で硬化させ、実施例6に係る位相差フィルムを得た。この位相差フィルムの厚さは400μmであり、フィルム面内の位相差値Re=(nx−ny)dは+121nmであった。また、得られた位相差フィルムを100℃で10時間加熱する耐熱試験(加熱処理)後のRe値(位相差値)及び透過率を測定した。結果を表2に示す。
【実施例7】
【0067】
表1に示す配合組成の重量部及び積算露光量とした以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。
【0068】
上記で得たシート状の樹脂成形体から50mm×70mmの小片を切り出し、二軸延伸装置(井元製作所製)を用いて、温度60℃、延伸速度5mm/min.の条件にて長手方向に一軸延伸を実施し+30%延伸フィルム(延伸樹脂成形体)を得た。次いで、延伸装置内の治具に固定した状態で180℃、10分間処理を行い、+18%延伸フィルムを得た。延伸フィルムの厚さは198μmであり、フィルム面内の位相差値Re=(nx−ny)dは+186nmであった。
【0069】
更に、上記合成例1で得た篭型シリコーン樹脂(20重量部)、ジシクロペンタニルジアクリレート(65重量部)、上記合成例3で得たウレタンアクリレートオリゴマー2(15重量部)、及び熱重合開始剤としてジクミルパーオキサイド(5重量部)を混合して樹脂組成物を得た後、バーコーターを用いて、石英ガラス上に上記で得られた+15%延伸フィルムをおき、一方の面に厚さ0.3mmになるようにこの樹脂組成物をキャスト(流延)し、25〜180℃、30分間の処理を行い、さらに残りの面にも、厚さ0.4mmになるようにこの樹脂組成物をキャスト(流延)し、25〜180℃2時間で硬化させ、実施例7に係る位相差フィルムを得た。この位相差フィルムの厚さは400μmであり、フィルム面内の位相差値Re=(nx−ny)dは+95nmであった。また、得られた位相差フィルムを100℃で10時間加熱する耐熱試験(加熱処理)後のRe値(位相差値)及び透過率を測定した。結果を表2に示す。
【実施例8】
【0070】
表1に示す配合組成の重量部及び積算露光量とした以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。
【0071】
上記で得たシート状の樹脂成形体から50mm×70mmの小片を切り出し、二軸延伸装置(井元製作所製)を用いて、温度60℃、延伸速度5mm/min.の条件にて長手方向に一軸延伸を実施し+40%延伸フィルム(延伸樹脂成形体)を得た。次いで、延伸装置内の治具に固定した状態で180℃、10分間処理を行い、+25%延伸フィルムを得た。延伸フィルムの厚さは198μmであり、フィルム面内の位相差値Re=(nx−ny)dは+263nmであった。
【0072】
更に、上記合成例1で得た篭型シリコーン樹脂(20重量部)、ジシクロペンタニルジアクリレート(65重量部)、上記合成例3で得たウレタンアクリレートオリゴマー2(15重量部)、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(0.5重量部)、及び熱重合開始剤としてジクミルパーオキサイド(5重量部)を混合して樹脂組成物を得た後、バーコーターを用いて、石英ガラス上に上記で得られた+20%延伸フィルムをおき、一方の面に厚さ0.3mmになるようにこの樹脂組成物をキャスト(流延)し、333W/cmの超高圧水銀ランプを用い、800mJ/cm2の積算露光量(365nm換算)で硬化させた。さらに残りの面にも、厚さ0.4mmになるようにこの樹脂組成物をキャスト(流延)し、333W/cmの超高圧水銀ランプを用い、1600mJ/cm2の積算露光量(365nm換算)で硬化させた。さらに、180℃、30分間の処理を行い、実施例8に係る位相差フィルムを得た。この位相差フィルムの厚さは400μmであり、フィルム面内の位相差値Re=(nx−ny)dは+110nmであった。
【0073】
[比較例1]
表1に示す配合組成の重量部及び積算露光量とした以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。
【0074】
上記で得たシート状の樹脂成形体から25mm×70mmの小片を切り出し、二軸延伸装置(井元製作所製)を用いて、温度60℃、延伸速度5mm/min.の条件にて一軸延伸を実施したが、延伸フィルムは得られず、位相差フィルムを得ることはできなかった。
【0075】
[比較例2]
表1に示す配合組成の重量部及び積算露光量とした以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。
【0076】
上記で得たシート状の樹脂成形体から25mm×70mmの小片を切り出し、二軸延伸装置(井元製作所製)を用いて、温度60℃、延伸速度5mm/min.の条件にて一軸延伸を実施し+10%延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムは放置後、経時収縮し保持延伸倍率0%、フィルム面内の位相差値Re=(nx−ny)dは0nmであり、位相差フィルムを得ることはできなかった。
【0077】
[比較例3]
表1に示す配合組成の重量部及び積算露光量とした以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。
【0078】
上記で得たシート状の樹脂成形体から25mm×70mmの小片を切り出し、二軸延伸装置(井元製作所製)を用いて、温度60℃、延伸速度5mm/min.の条件にて一軸延伸を実施し+15%延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムは放置後、経時収縮し保持延伸倍率0%、フィルム面内の位相差量Re=(nx−ny)dは0nmであり、位相差フィルムを得ることはできなかった。
【0079】
[比較例4]
樹脂組成物を表1に示す配合組成の重量部及び積算露光量とした以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。
【0080】
得られた樹脂成形体から25mm×70mmの小片を切り出し、二軸延伸装置(井元製作所製)を用いて、温度60℃、延伸速度5mm/min.の条件にて長手方向に一軸延伸を実施し+10%延伸フィルムを得た。固定した治具ごと熱風循環オーブン(富山産業製)を用いて180℃、30分間処理を行い、+5%延伸フィルムを得た。延伸フィルムの厚さは224μmあり、フィルム面内の位相差値Re=(nx−ny)dは+13nmであった。しかし、耐熱試験を行ったところRe値(位相差値)が0nmとなり位相差フィルムの性能が消失していた。
【0081】
上記実施例及び比較例における各種試験や測定には以下のようにして行った。
【0082】
(耐熱試験)
TMA測定装置EXSTAR6000(SII製)を用いて100℃で10時間保持した。
【0083】
(位相差フィルムのレタデーション値Reの測定)
位相差測定装置NPDM−1000(ニコン製)を用いて測定した。λ550nmの位相差値を表2に示す。
【0084】
(レタデーション値Re変化量の測定)
耐熱試験前のRe値から前記耐熱試験を行った後のRe値の差を算出した。
【0085】
(反応率の測定)
IR測定装置によりシリコーン樹脂組成物のアクリロイル基のピークである6164cm−1の強度を1として、硬化後の樹脂成形体のピーク強度からアクリロイル基の減少率を算出した値を反応率とした。
【0086】
また、下記表1中の略号は次のとおりである。
A:篭型シリコーン樹脂
B:ジシクロペンタニルジアクリレート(共栄社化学(株)製ライトアクリレートDCP−A)
C:トリメチロールプロパントリメタクリレート(共栄社化学(株)製ライトエステルTMP)
D:ウレタンアクリレートオリゴマー1
E:ウレタンアクリレートオリゴマー2
F:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
G:ジクミルパーオキサイド(日本油脂(株)製パークミルD)
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
Claims (13)
- (I)(メタ)アクリロイル基を少なくとも2個有する多官能モノマーと、(II)前記多官能モノマーと反応可能な少なくとも1種の官能基を末端に有して、数平均分子量が1000〜10000の範囲である直鎖状ポリマーと、(III)光重合開始剤及び/又は(IV)熱重合開始剤とを含む樹脂組成物を硬化させてなる位相差フィルムであって、(I)成分の多官能モノマーが篭型シルセスキオキサン、脂環式モノマー又は脂肪族モノマーのいずれか1種又は2種以上からなり、(II)直鎖状ポリマーが、下記一般式(1)で表される繰り返し単位の末端にアクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基及びビニル基からなる群から選ばれた少なくとも1種の不飽和基を有するポリウレタンであり、(I)成分と(II)成分の重量比(I):(II)が5〜90:10〜95であり、かつ、100℃で10時間の加熱処理を行う耐熱試験後の位相差フィルムの位相差値変化量が0〜20nmの範囲であることを特徴とする位相差フィルム。
(式中、R1は炭素数5〜10の置換若しくは無置換の環式芳香族若しくは環式脂肪族、又は炭素数5〜10の置換若しくは無置換のアルキリデン基を有する数平均分子量20〜2000のポリオールであり、R2は炭素数5〜10の置換若しくは無置換の環式芳香族若しくは環式脂肪族、又は炭素数5〜10の置換若しくは無置換のアルキデン基を表し、nは6〜70である。) - 脂環式モノマーがジシクロペンタニルジアクリレートであり、脂肪族モノマーがトリメチロールプロパントリメタクリレートである請求項1に記載の位相差フィルム。
- 樹脂組成物の合計100重量部に対し、(III)光重合開始剤を0.1〜3重量部の範囲で含有する請求項1に記載の位相差フィルム。
- 樹脂組成物の合計100重量部に対し、(IV)熱重合開始剤を0.1〜10重量部の範囲で含有する請求項1に記載の位相差フィルム。
- 樹脂組成物の合計100重量部に対し、(III)光重合開始剤を0.01〜1重量部の範囲で含有すると共に、(IV)熱重合開始剤を0.05〜10重量部の範囲で含有する請求項1に記載の位相差フィルム。
- 耐熱試験後の厚みd=250μmでの波長550nmにおける面内位相差値が5〜150nmである請求項1に記載の位相差フィルム。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の位相差フィルムの少なくとも片面に、ガラス転移温度Tgが200℃以上の光硬化性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂を積層させた位相差フィルム積層体。
- (I)(メタ)アクリロイル基を少なくとも2個有する多官能モノマーと、(II)前記多官能モノマーと反応可能な少なくとも1種の官能基を末端に有して、数平均分子量が1000〜10000の範囲である直鎖状ポリマーと、(III)光重合開始剤及び/又は(IV)熱重合開始剤とを含む樹脂組成物を用いて位相差フィルムを製造する方法であって、樹脂組成物を少なくとも1枚の支持体で支持し、支持体側若しくは支持体の反対側又はその両方の側から400〜6000mjのエネルギー線を照射する一次硬化により、上記(I)成分の(メタ)アクリロイル基及び上記(II)成分の(メタ)アクリロイル基が合計で30%〜80%減少した樹脂成形体を得た後、この樹脂成形体を所定の形状に切り出して延伸治具に固定し、延伸する温度まで加熱して任意方向に延伸倍率5〜60%の範囲で延伸させて延伸樹脂成形体を得た後、この延伸樹脂成形体を延伸治具に固定した状態で更に加熱及び/又はエネルギー線を照射して二次硬化させ、その後、室温まで冷却することを特徴とする位相差フィルムの製造方法。
- 成形体の貯蔵弾性率が減少し始める温度あるいは成形体の貯蔵弾性率が減少し始める温度から−20℃〜+30℃の範囲で延伸させる請求項8又は9のいずれかに記載の位相差フィルムの製造方法。
- 延伸させる手段が、一軸延伸配向である請求項8〜10のいずれかに記載の位相差フィルムの製造方法。
- 二次硬化前の延伸樹脂成形体、又は二次硬化後の延伸樹脂成形体の少なくとも一方の面に光硬化性樹脂を塗工し、3000〜20000mjのエネルギー線を照射して光硬化性樹脂層を形成する請求項8に記載の位相差フィルム積層体の製造方法。
- 二次硬化前の延伸樹脂成形体、又は二次硬化後の延伸樹脂成形体の少なくとも一方の面に熱硬化性樹脂を塗工し、25〜200℃の温度範囲、及び20分〜4時間の範囲で熱硬化性樹脂層を形成する請求項8に記載の位相差フィルム積層体の製造方法。
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