以下に、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
実施の形態1
図2はこの発明の実施の形態1に係る定着装置を適用した画像形成装置としてのタンデム型のフルカラープリンタを示すものである。
図2において、1はタンデム型のフルカラープリンタの本体を示すものであり、このプリンタ本体1の内部には、大別して、フルカラーの画像形成を行う画像形成ユニット2と、この画像形成ユニット2の像担持体としての4つの感光体ドラム3、4、5、6に画像露光を施す画像露光装置7と、上記画像形成ユニット2の各色の現像装置8、9、10、11に対応する色のトナーを供給する4つのトナーボックス12Y、12M、12C、12Kと、上記画像形成ユニット2に画像が定着されるシートとしての記録用紙13を供給する給紙カセット14と、上記画像形成ユニット2からトナー像が転写された記録用紙13に対して定着処理を施す定着装置15と、この定着装置15によって片面に画像が定着された記録用紙13を、表裏を反転した状態で、再度画像形成ユニット2の転写部へと搬送する両面用搬送経路16と、プリンタ本体1の外部から所望の記録用紙13を給紙する手差し給紙装置17と、プリンタの動作を制御するとともに画像信号に対して画像処理を施す制御回路18と、高圧電源回路等からなる電気回路19とが設けられている。なお、図2中、20は画像が形成された記録用紙13を排出する排出トレイを示すものであり、この排出トレイ20は、プリンタ本体1の上部に一体的に配置されている。
上記プリンタ本体1の内部に配設される種々の部材のうち、画像露光装置7は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色に対応した画像データに基づいて点灯駆動される4つの半導体レーザ20、21、22、23や、これら4つの半導体レーザ20、21、22、23から出射される4本のレーザ光LBを、偏向走査するためのf−θレンズ24やポリゴンミラー25、あるいは複数枚の反射ミラー26、27などから構成されている。
図3はこの発明の実施の形態1に係る定着装置を適用した画像形成装置としてのタンデム型フルカラープリンタの画像形成ユニットを示すものである。尚、図3中の矢印は、各回転部材の回転方向を示している。
この画像形成ユニット2は、図3に示すように、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色に対応した感光体ドラム3、4、5、6を有する画像形成部28、29、30、31と、これら感光体ドラム3、4、5、6に接触する一次帯電用の帯電ロール32、33、34、35と、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のレーザ光LB−Y〜LB−Kを照射する画像露光装置7(図2参照)と、上記感光体ドラム3、4、5、6上に形成された静電潜像を、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナーで現像する現像装置8、9、10、11と、上記4つの感光体ドラム3、4、5、6のうちの2つの感光体ドラム3、4に接触する第1の一次中間転写ドラム(中間転写体)36及び他の2つの感光体ドラム5、6に接触する第2の一次中間転写ドラム(中間転写体)37と、上記第1、第2の一次中間転写ドラム36、37に接触する二次中間転写ドラム(中間転写体)38と、この二次中間転写ドラム38に接触する最終転写ロール(転写部材)39とで、その主要部が構成されている。
上記感光体ドラム3、4、5、6は、共通の接平面Mを有するように一定の間隔をおいて互いに平行に配置されている。また、第1の一次中間転写ドラム36及び第2の一次中間転写ドラム37は、各回転軸が該感光体ドラム3、4、5、6軸に対して平行かつ所定の対称面を境界とした面対称の関係にあるように配置されている。さらに、二次中間転写ドラム38は、該感光体ドラム3、4、5、6と回転軸が平行であるように配置されている。
各色毎の画像情報に応じた信号は、制御回路18(図2参照)に配設された図示しない画像処理回路によりラスタライジングされて画像露光装置7に入力される。この画像露光装置7では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のレーザ光LB−Y〜LB−Kが変調され、対応する色の感光体ドラム3、4、5、6に照射される。
上記各感光体ドラム3、4、5、6の周囲では、周知の電子写真方式による各色毎の画像形成プロセスが行なわれる。まず、上記感光体ドラム3、4、5、6としては、例えば、直径20mmのOPC感光体を用いた感光体ドラムが用いられ、これらの感光体ドラム3、4、5、6は、例えば、95mm/secの回転速度で回転駆動される。上記感光体ドラム3、4、5、6の表面は、図3に示すように、接触型帯電装置としての帯電ロール32、33、34、35に、約−840VのDC電圧を印加することによって、例えば約−300V程度に帯電される。なお、上記接触型の帯電装置としては、ロールタイプのもの以外に、フィルムタイプのもの、ブラシタイプのもの等が挙げられるが、どのタイプのものを用いても良い。この実施の形態では、近年、電子写真装置で一般に使用されている帯電ロールを採用している。また、感光体ドラム3、4、5、6の表面を帯電させるために、この実施の形態では、DCのみ印加の帯電方式をとっているが、AC+DC印加の帯電方式を用いても良い。
その後、感光体ドラム3、4、5、6の表面には、画像露光装置7によってイエロー (Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色に対応したレーザ光LB−Y〜LB−Kが照射され、各色毎の入力画像情報に応じた静電潜像が形成される。感光体ドラム3、4、5、6は、画像露光装置7で静電潜像が書き込まれた際に、その画像露光部の表面電位は、例えば、−60V以下程度にまで除電される。
また、上記感光体ドラム3、4、5、6の表面に形成されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色に対応した静電潜像は、対応する色の現像装置8、9、10、11によって反転現像され、感光体ドラム3、4、5、6上にイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー像として可視化される。
この実施の形態では、現像装置8、9、10、11として、磁気ブラシ接触型の二成分現像方式を採用しているが、非接触型の現像方式を採用しても良いことは勿論である。
現像装置8、9、10、11には、それぞれ色の異なったイエロー(Y)、マゼンタ (M)、シアン(C)、ブラック(K)色のトナーとキャリアからなる二成分の現像剤が充填されている。これらの現像装置8、9、10、11には、図2に示すように、対応する色のトナーボックス12Y、12M、12C、12Kからトナー又はトナーとキャリアからなる現像剤が所定のタイミングで補給されると、この補給されたトナー等は、図3に示すように、2連のオーガー40で充分にキャリアと攪拌されて摩擦帯電される。現像ロール41の内部には、複数の磁極を所定の角度に配置したマグネットロール(不図示)が固定した状態で配置されている。この現像ロール41に現像剤を搬送するパドル42によって、当該現像ロール41の表面へと搬送された現像剤は、現像剤量規制部材43によって現像部に搬送される現像剤の量が規制される。この実施の形態では、上記現像剤の量は、30〜50g/m2 程度であり、また、このとき現像ロール41上に存在するトナーの帯電量は、概ね−20〜35μC/g 程度である。
上記現像ロール41上に供給された現像剤は、マグネットロールの磁力によって、キャリアとトナーで構成された磁気ブラシ状となっており、この磁気ブラシが感光体ドラム3、4、5、6と接触している。この回転駆動される現像ロール41にAC+DCの現像バイアス電圧を印加して、現像ロール41上のトナーを感光体ドラム3、4、5、6上に形成された静電潜像上に転移させて現像することにより、トナー像が形成される。この実施の形態では、例えば、現像バイアス電圧のAC成分が4kHz、1.5kVppで、DC成分が−230V程度に設定されている。
この実施の形態では、上記現像装置8、9、10、11において、トナーとして略球形状のトナーである所謂“球形トナー" であって、その平均粒径が3〜10μm程度のものが使用され、例えば、ブラック色のトナーの平均粒径は8μm程度、カラートナーの平均粒径は7μm程度に設定される。
次に、上記各感光体ドラム3、4、5、6上に形成されたイエロー(Y)、マゼンタ (M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー像は、第1の一次中間転写ドラム36及び第2の一次中間転写ドラム37上に、静電的に二次転写される。感光体ドラム3、4上に形成されたイエロー(Y)及びマゼンタ(M)色のトナー像は、第1の一次中間転写ドラム36上に、感光体ドラム5、6上に形成されたシアン(C)及びブラック(K)色のトナー像は、第2の一次中間転写ドラム37上に、それぞれ転写される。従って、第1の一次中間転写ドラム36上には、感光体ドラム3または4のどちらかから転写された単色像、又は感光体ドラム3及び4の両方から転写された2色のトナー像が重ね合わされた二重色像が形成されることになる。また、第2の一次中間転写ドラム37上にも、感光体ドラム5、6から同様な単色像又は二重色像が形成される。
上記第1及び第2の一次中間転写ドラム36、37上に感光体ドラム3、4、5、6からトナー像を静電的に転写するために必要な表面電位は、+250〜500V程度である。この表面電位は、トナーの帯電状態や雰囲気温度、湿度によって最適値に設定されることになる。この雰囲気温度や湿度は、雰囲気温度や湿度によって抵抗値が変化する特性を持った部材の抵抗値を検知することで簡易的に知ることが可能である。上述のように、トナーの帯電量が−20〜35μC/g程度の範囲内にあり、常温常湿環境下にある場合には、第1及び第2の一次中間転写ドラム36、37の表面電位は、+380V程度が望ましい。
この実施の形態で用いる第1、第2の一次中間転写ドラム36、37は、例えば、外径が42mmに形成され、抵抗値は108 Ω程度に設定される。第1、第2の一次中間転写ドラム36、37は、単層、あるいは複数層からなる表面が可撓性、もしくは弾性を有する円筒状の回転体であり、一般的にはFeやAl等からなる金属製コアとしての金属パイプの上に、導電性シリコーンゴム等で代表される低抵抗弾性ゴム層(R=102 〜103 Ω)が、厚さ0.1〜10mm程度に設けられている。更に、第1、第2の中間転写ドラム36、37の最表面は、代表的にはフッ素樹脂微粒子を分散させたフッ素ゴムを厚さ3〜100μmの高離型層(R=105 〜109 Ω)として形成し、シランカップリング剤系の接着剤(プライマ)で接着されている。ここで重要なのは、抵抗値と表面の離型性であり、高離型層の抵抗値がR=105 〜109 Ω程度であり、高離型性を有する材料であれば、特に材料は限定されない。
このように第1、第2の一次中間転写ドラム36、37上に形成された単色又は二重色のトナー像は、二次中間転写ドラム38上に静電的に三次転写される。従って、二次中間転写ドラム38上には、単色像からイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)色の四重色像までの最終的なトナー像が形成されることになる。
この二次中間転写ドラム38上へ第1及び第2の一次中間転写ドラム36、37からトナー像を静電的に転写するために必要な表面電位は、+600〜1200V程度である。この表面電位は、感光体ドラム3、4、5、6から第1の一次中間転写ドラム36及び第2の一次中間転写ドラム37へ転写するときと同様に、トナーの帯電状態や雰囲気温度、湿度によって最適値に設定されることになる。また、転写に必要なのは、第1及び第2の一次中間転写ドラム36、37と二次中間転写ドラム38との間の電位差であるので、第1及び第2の一次中間転写ドラム36、37の表面電位に応じた値に設定することが必要である。上述のように、トナーの帯電量が−20〜35μC/g程度の範囲内にあり、常温常湿環境下であって、第1及び第2の一次中間転写ドラム36、37の表面電位が+380V程度の場合には、二次中間転写ドラム38の表面電位は、+880V程度、つまり第1及び第2の一次中間転写ドラム36、37と二次中間転写ドラム38との間の電位差は、+500V程度に設定することが望ましい。
この実施の形態で用いる二次中間転写ドラム38は、例えば、外径が第1及び第2の一次中間転写ドラム36、37と同じ42mmに形成され、抵抗値は1011Ω程度に設定される。また、上記二次中間転写ドラム38も第1、第2の一次中間転写ドラム36、37と同様、単層、あるいは複数層からなる表面が可撓性、もしくは弾性を有する円筒状の回転体であり、一般的にはFeやAl等からなる金属製コアとしての金属パイプの上に、導電性シリコーンゴム等で代表される低抵抗弾性ゴム層(R=102 〜103 Ω)が、厚さ0.1〜10mm程度に設けられている。更に、二次中間転写ドラム38の最表面は、代表的にはフッ素樹脂微粒子を分散させたフッ素ゴムを厚さ3〜100μmの高離型層として形成し、シランカップリング剤系の接着剤(プライマ)で接着されている。ここで、二次中間転写ドラム38の抵抗値は、第1及び第2の一次中間転写ドラム36、37よりも高く設定する必要がある。そうしないと、二次中間転写ドラム38が第1及び第2の一次中間転写ドラム36、37を帯電してしまい、第1及び第2の一次中間転写ドラム36、37の表面電位の制御が難しくなる。このような条件を満たす材料であれば、特に材料は限定されない。
次に、上記二次中間転写ドラム38上に形成された単色像から四重色像までの最終的なトナー像は、最終転写ロール39によって、用紙搬送路を通る記録用紙13上に三次転写される。この記録用紙13は、図2に示すように、給紙カセット14から所望のサイズ及び材質のものが、略半月形状の給紙ローラ44によって給紙され、分離ローラ対45によって一枚ずつ分離された状態で、搬送ローラ46を介してレジストロール47によって、二次転写ドラム38と最終転写ロール39のニップ部に送り込まれる。この最終転写工程の後、最終的なトナー像が転写された記録用紙13は、定着装置15によって定着され、排出ロール48によってプリンタ本体1の上部に設けられた排紙トレイ20上に排出されて、一連の画像形成プロセスが完了する。なお、図3中、符号49は最終転写ロール39の表面をクリーニングするクリーニングブレード50を備えたクリーニング装置を示している。
ところで、この実施の形態に係る定着装置は、一方が無端ベルト状に形成され、且つ互いに圧接された状態で回転する加熱用の定着部材及び加圧用の定着部材と、
前記無端ベルト状に形成された一方の定着部材を、他方の定着部材に圧接させることにより、前記加熱用の定着部材と加圧用の定着部材との間に圧接領域を形成する定着寄与部と剥離寄与部とを有する押圧部材と、
前記押圧部材の定着寄与部と剥離寄与部が他方の定着部材に圧接する際の寄与率を変更する圧接寄与率変更手段とを備えるように構成されている。
また、この実施の形態に係る定着装置は、加熱手段によって加熱された状態で回転する加熱ロールと、
前記加熱ロールに圧接された状態で回転する無端ベルト状の加圧ベルトと、
前記加圧ベルトを前記加熱ロールに圧接させることにより、前記加熱ロールと加圧ベルトとの間に圧接領域を形成する定着寄与部と剥離寄与部とを有する押圧部材と、
前記押圧部材の定着寄与部と剥離寄与部が加熱ロールに圧接する際の寄与率を変更する圧接寄与率変更手段とを備えるように構成されている。
図4はこの実施の形態に係る定着装置の外観を示す斜視図、図5はこの実施の形態に係る定着装置の基本的な構成を示す断面図である。
この実施の形態に係る定着装置15は、図5に示すように、内部に加熱源51を有する加熱部材としての加熱ロール52と、無端ベルト状の定着ベルト53と、前記定着ベルト53が回転自在となるように当該定着ベルト53の両端を支持するベルトガイド部材54と、前記定着ベルト53の内部に配設され、当該定着ベルト53を加熱ロール52の表面に圧接させる剛性を有する部材と弾性部材とを有する圧接部材55と、前記定着ベルト53の内面にオイルを供給するオイル供給部材としてのフェルト部材56とを備えるように構成されている。この実施の形態では、加圧部材として、定着ベルト53及び圧接部材55等から構成されたものが用いられている。なお、図5中、57は定着装置15の出口ロールを示している。
上記加熱ロール52は、図6に示すように、鉄やステンレス等からなる薄肉円筒状の芯金52aと、当該芯金52aの表面に被覆されたシリコンゴム等からなる肉厚0.65mm程度の弾性層52bと、当該弾性層52bの表面の被覆されたPFA等からなる肉厚30μm程度の離型層52cとから構成されている。また、上記加熱ロール52の内部には、図5に示すように、例えば、加熱源として600Wのハロゲンランプ51が配設されている。
また、上記定着ベルト53は、ポリイミド等の合成樹脂によって、例えば、外径が30mm、肉厚が75μmの無端ベルト状に形成されており、必要に応じて、表面にPFA等からなる離型層が設けられる。
さらに、上記定着ベルト53の内部に配設される圧接部材55は、図7及び図8に示すように、合成樹脂製のベルトハウジング60と、当該ベルトハウジング60に嵌合状態に装着される断面略コ字形状の金属製のベルトフレーム58と、ベルトハウジング60の上端面に嵌合された状態で配設され、定着ベルト53を加熱ロール52に圧接させるための剛性を有する部材としてのニップヘッド部材61と、当該ニップヘッド部材61に装着される弾性部材としてのパッド部材62とから、主に構成されている。
上記ベルトガイド部材54は、図7及び図8に示すように、ベルトフレーム58の両端部に互いに平行に突設された嵌合部58aに嵌合された状態で、ベルトハウジング60の両端部に固定された状態で装着されるようになっている。
上記圧接部材55の剛性を有する部材としてのニップヘッド部材61は、耐熱性を有する合成樹脂で形成されている。このニップヘッド部材61は、例えば、LCP、PET、PPS、PBT、PES等の合成樹脂によって形成される。また、上記圧接部材55のニップヘッド部材61は、図9及び図10に示すように、細長い略直方体状に形成されているとともに、その上面には、パッド部材62を嵌合するための凹所63が長手方向に沿って設けられている。また、上記ニップヘッド部材61は、その幅方向の一端部に、加熱ロール52に圧接する所定幅の圧接部64が設けられており、この圧接部64は、ニップヘッド部材61の表面から所定量だけ突出するように形成されている。
また、上記ニップヘッド部材61の圧接部64は、その上面が加熱ロール52の軸方向に沿って平坦に形成されていても良いが、当該圧接部64の上端面は、加熱ロール52の軸方向に沿って中央部が高く、両端部が低くなるように、上向きに凸形状となるよう大きく湾曲した形状に形成されている。
さらに、上記パッド部材62は、図10に示すように、ニップヘッド部材61の凹所63に嵌合された状態で配設されており、当該ニップヘッド部材61は、パッド部材62の台座部を兼ねている。このパッド部材62は、図9に示すように、薄い金属板65上に接着された細長い直方体状のゴム材料66から構成されている。パッド部材62のゴム材料66は、硬度が10〜30度(アスカーC硬度)のゴム材料で形成されており、例えば、シリコンゴム等からなるものが用いられる。
また、上記パッド部材62は、加熱ロール52の表面に圧接した際の圧力分布が、加熱ロール52の軸方向に沿って均一に形成されている訳ではなく、当該パッド部材62の圧力分布は、加熱ロール52の軸方向に沿って中央部が高く、両端部が低くなるように、上向きに凸形状となるよう大きく湾曲した形状に設定されている。そのため、パッド部材62は、その中央部が厚く、両端部が薄くなるように形成しても良いが、この実施の形態では、パッド部材62の精度や製造コスト等を考慮して、当該パッド部材62が装着されるニップヘッド部材61の凹所63の底面を、加熱ロール52の軸方向に沿って、中央部が高く、両端部が低くなるように設定されている。
さらに、上記パッド部材62は、加熱ロール52の回転方向に沿った厚みが、ニップ部N(圧接領域)に要求される所定の圧力分布に従って様々に設定され、パッド部材62の加熱ロール52の回転方向に沿った厚みは、均一に設定しても良いが、この実施の形態では、図1に示すように、ニップ部Nの入口側の厚みが厚く、出口側が薄くなるように設定されている。その際、上記ニップヘッド部材61の凹所63の底面は、平坦に形成される。
また、上記パッド部材62の加熱ロール52の回転方向に沿った厚みは、均一に設定し、ニップヘッド部材61の凹所63の底面が、ニップ部Nの入口側から出口側に向けて傾斜するように構成しても良い。
さらに、上記圧接部材55には、図7及び図11に示すように、ベルトガイド部材54の凹溝54aにアーム部材67が嵌合された状態で取り付けられており、このアーム部材67は、コイルスプリング68によって圧接部材55を加熱ロール52に所定の圧力で圧接させるように構成されている。上記アーム部材67は、支点67aを中心にして傾動自在に支持されているとともに、その他端部67bに圧接するコイルスプリング68によって、圧接部材55を加熱ロール52に所定の圧力で圧接させるようになっている。その際、上記圧接部材55は、アーム部材67の中央部67cに取り付けられており、圧接部材55のニップヘッド部材61の圧接部64は、定着ベルト53を加熱ロール52に圧接させる圧接力Fが、図12に示すように、加熱ロール52の中心を向くように構成されている。
その結果、上記定着ベルト53は、図6に示すように、裏面側が圧接部材55によって押圧された状態で、加熱ロール52の表面に所定の圧接力Fで圧接されており、当該加熱ロール52表面と定着ベルト53との間に、定着用のニップ部Nが形成されている。また、上記加熱ロール52の弾性層52b及び離型層52cは、圧接部材55によって押圧された状態で定着ベルト53が圧接されることにより、後述するように変形した状態となる。
また、上記圧接部材55は、図11に示すように、ベルトガイド部材54の凹溝54aにアーム部材67が嵌合された状態で取り付けられているが、当該圧接部材55は、ベルトガイド部材54に設けられた凹溝54aを介して、アーム部材67に対しニップ部Nの記録用紙13の進行方向に沿って略平行にスライド自在に取り付けられている。
なお、図8及び図11中、69は定着ベルト53と圧接部材55との間に介在される合成樹脂製のフィルム状のシート部材を示しており、やはり、定着ベルト53と圧接部材55との間の摩擦を低減するものであるが、必ずしも設けなくとも良い。
また、上記オイル供給部材としてのフェルト部材56は、例えば、ノーメックス(商品名)からなり、当該フェルト部材56には、粘度300csのアミノSiオイル等からなるオイルが、2.0g程度含浸されている。このフェルト部材56は、図5及び図8に示すように、ベルトフレーム58の背面側に接着等の手段によって固定した状態で取り付けられている。
ところで、この実施の形態では、図1に示すように、圧接部材55のニップヘッド部材61において、当該ニップヘッド部材61の圧接部64が、ニップ部Nの記録用紙13の進行方向に沿った平面状に形成された平坦部64aと、当該平坦部64aの上方 (用紙進行方向の下流側)に連続して形成された所定の曲率半径を有する湾曲部64bとを備えるように構成されている。
そして、上記圧接部64の平坦部64aは、図6に示すように、パッド部材62とともに、定着ベルト53を加熱ロール52の表面に圧接させることにより、記録用紙13上に未定着トナー像を定着させるのに寄与する定着寄与部として、主に機能するものである。
また、上記圧接部64の湾曲部64bは、平坦部64aに連続して形成されているが、所定の曲率半径を有して加熱ロール52の表面から離間するように構成されており、図6に示すように、加熱ロール52表面の弾性層52bを、定着ベルト53側に向けて凹形状(定着ベルト53側が凹形状となり、加熱ロール52側が凸形状となる形状)に弾性変形させることにより、ニップ領域Nにおいて定着処理が施された記録用紙13を、定着ベルト53側に向けて凹形状となるように変形させ、記録用紙13自身のコシ(剛性)によって、当該記録用紙13を加熱ロール52の表面から剥離する剥離寄与部として、主に機能するものである。
さらに、上記圧接部材55の圧接部64は、通常の状態では、常温常湿環境(25℃、60%程度)下において、普通紙を良好に定着処理することができるように、平坦部64a及び湾曲部64bの圧接状態が設定されており、ニップ部Nにおける圧力分布は、例えば、図13に示すように、設定されている。このニップ部Nにおける圧力分布は、同図に示すように、ニップ部Nの入口側において、弾性体からなるパッド部材62が圧接し、圧接圧力が所定の値まで上昇するとともに、ニップ部Nの出口側が高くなるように傾斜した第1の領域81と、剛体からなるニップヘッド部材61の圧接部64のうち、平坦部64aが圧接して、圧接圧力がピーク値84まで急激に上昇する第2の領域82と、圧接部64の湾曲部64bが圧接して、圧接圧力がピーク値84から急激に下降する第3の領域84とを有するように設定されている。
さらに、この実施の形態では、図1に示すように、圧接部材55を記録用紙13の進行方向Xと同一方向又は略同一方向に移動させる移動手段71を備えており、当該移動手段71によって圧接部材55を記録用紙13の進行方向と同一方向Xに移動させることにより、ニップ部Nにおける圧接部64の平坦部64aと湾曲部64bとが、定着処理に占める寄与率を変更することが可能となるように構成されている。
上記圧接部材55は、上述した如く、図11に示すように、ベルトガイド部材54の凹溝54aにアーム部材67が嵌合された状態で取り付けられているが、当該圧接部材55は、ベルトガイド部材54に設けられた凹溝54aを介して、アーム部材67に対しニップ部Nの記録用紙13の進行方向Xに沿って略平行にスライド自在に取り付けられている。
上記移動手段71は、図1及び図7に示すように、ベルトガイド部材54の端面54bに固定した状態で取り付けられたラックギア72と、当該ラックギア72と噛み合うピニオンギア73と、当該ピニオンギア73を駆動するステッピングモータ等からなる駆動モータ74とを備えている。この駆動モータ74は、CPU100から出力される制御パルスに基づいて、ピニオンギア73の回転量を連続的に変化させることが可能であるが、所定のパルス数ずつ駆動することによって、ピニオンギア73をプラス1、プラス2といったように所定の回転角度(・・・−2θ、−θ、0、+θ、+2θ、・・・)ずつ、段階的に制御するように構成しても良い。
そして、この移動手段71は、図1に示すように、駆動モータ74によってピニオンギア73を所定量だけ回転駆動することにより、ラックギア72を介して圧接部材55を、記録用紙13の進行方向Xに沿って略平行に所定量だけスライドさせることが可能となっている。
上記移動手段71は、例えば、図14に示すように、圧接部材55を記録用紙13の進行方向に沿った上流側に移動させることによって、ニップ部Nにおける圧接部64の湾曲部64bが占める寄与率を相対的に増加させるとともに、平坦部64aが占める寄与率を相対的に低下させることが可能となっている。このように、圧接部材55を記録用紙13の進行方向に沿った上流側に移動させた場合には、図15に示すように、圧接圧力のピーク値84近傍に占める平坦部64aの寄与が小さくなり、ピーク値84の幅が狭くなり、圧接圧力が急変することにより、記録用紙13の剥離性が向上する。また、ピーク値84の上流側の圧力上昇が緩やかとなり、ニップ部Nにおけるパッド部材62の寄与も合わせて減少するため、第1の領域81の立ち上がりも若干遅くなる。
一方、上記移動手段71は、例えば、図16に示すように、圧接部材55を記録用紙13の進行方向に沿った下流側に移動させることによって、ニップ部Nにおける圧接部64の平坦部64aが占める寄与率を相対的に増加させるとともに、湾曲部64bが占める寄与率を相対的に低下させることが可能となっている。このように、圧接部材55を記録用紙13の進行方向に沿った下流側に移動させた場合には、図17に示すように、圧接圧力のピーク値84近傍に占める平坦部64aの寄与が大きくなり、ピーク値84の幅が広くなり、記録用紙13の定着性が向上する。また、ピーク値84の上流側の圧力上昇が急峻となり、ニップ部Nにおけるパッド部材62の寄与も合わせて増加するため、第1の領域81の圧力も中立位置に比較して高くなる。
図18は上記定着装置を適用した画像形成装置としてのタンデム型のフルカラープリンタの制御回路を示すものである。
図18において、100はフルカラープリンタ及び定着装置15の動作を制御する制御手段としてのCPU、101はCPU100が実行する制御プログラム等を記憶したROM、102はCPU100が実行する制御プログラムで使用するパラメータ等を記憶したRAM、103はフルカラープリンタが設置された環境の温度を検知する温度センサー、104はフルカラープリンタが設置された環境の湿度を検知する湿度センサー、105はフルカラープリンタで使用される記録用紙13の材質を判別する材質判別手段、74は駆動モータをそれぞれ示している。上記材質判別手段105としては、プリンタのドライバやユーザーインターフェースにおいてユーザーが指定する記録用紙13の種類等に基づいて、記録用紙13の材質を判別したり、給紙カセット14に設けられた記録用紙13の種類やサイズ等を設定する設定手段によって、記録用紙13の材質を判別するものが用いられる。また、プリンタドライバやユーザーインターフェースからユーザーが記録用紙13の種類を任意に指定したり、さらには、後述の設定を可変とすることもできる。
以上の構成において、この実施の形態に係る定着装置では、次のようにして、加圧部材の圧接面を予め所定の状態に設定した場合に比較して、記録シートの厚さ等の種類や環境等の変動に広く対応することができるとともに、押圧手段の押圧位置や押圧力を可変とした装置と比較して、簡単な構成で、しかも、記録シートの種類や環境等が変動した場合であっても、剥離不良や定着不良が発生するのを防止することが可能となっている。
すなわち、この実施の形態に係る定着装置15では、図5に示すように、内部に加熱源51を有する加熱ロール52と、無端ベルト状に形成された定着ベルト53と、前記定着ベルト53が回転自在となるように当該定着ベルト53の両端を支持するベルトガイド部材54と、前記定着ベルト53の内部に配設され、前記加熱ロール52の表面に定着ベルト53を圧接させる圧接部材55と、前記定着ベルト53の内面にオイルを供給するフェルト部材56とを備え、図6に示すように、前記加熱ロール52と定着ベルト53の間に形成されるニップ部Nに、未定着トナー像を担持した記録媒体13を通過させることにより定着を行なうようになっている。
ところで、上記定着装置15では、図1に示すように、圧接部材55を記録用紙13の進行方向Xと同一方向又は略同一方向に移動させる移動手段71を備えており、当該移動手段71によって圧接部材55を記録用紙13の進行方向と同一方向Xに移動させることにより、ニップ部Nにおける圧接部64の平坦部64aと湾曲部64bとが、定着処理に占める寄与率を変更することが可能となっている。
CPU100は、図18に示すように、湿度センサー04からの信号に基づいて、フルカラープリンタが設置された環境の湿度を検知するとともに、画像処理装置からの信号に基づいて、記録用紙13上に定着処理を行なうトナー像の像密度を検知する。すると、CPU100は、図19(a)に示すように、RAM102に記憶されたテーブルを参照することによって、定着装置15の圧接部材55を移動させる移動量を求めるようになっている。
そして、CPU100は、図19(a)に示すように、例えば、記録用紙13が薄紙 (坪量が70gms以下)であって、しかも、環境湿度が90%で、トナー像の像密度が200%を越えて250%以下であると検知すると、移動手段71によって圧接部材55を記録用紙13の進行方向と同一方向Xに、プラス3だけ移動させるように駆動モータを制御する。また、CPU100は、図19(a)に示すように、例えば、環境湿度が90%で、トナー像の像密度が100%を越えて150%以下であると検知すると、移動手段71によって圧接部材55を記録用紙13の進行方向と同一方向Xに、プラス2だけ移動させるように駆動モータを制御する。ここで、トナー像の像密度が200%とは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナー像の像密度の合計が200%であることを意味しており、例えば、1色のトナーの最高像密度は、100%である。
このように、環境湿度が90%と高湿環境下であって、トナー像の像密度が200%を越えて250%以下と非常に高密度である場合には、記録用紙13上のトナー量が多く、記録用紙13がトナーの接着作用によって、加熱ロール52側に捲き付き易くなる。
そのため、この実施の形態では、移動手段71によって圧接部材55を記録用紙13の進行方向と同一方向Xに、プラス3だけ大きく移動させることにより、ニップ部Nにおける圧接部64の湾曲部64bが占める寄与率を相対的に増加させるとともに、平坦部64aが占める寄与率を相対的に低下させる。そして、圧接部材55を記録用紙13の進行方向に沿った上流側に移動させた場合には、図15に示すように、圧接圧力のピーク値84近傍に占める平坦部64aの寄与が小さくなり、ピーク値84の幅が狭くなり、圧接圧力が急変することにより、記録用紙13の剥離性が向上し、記録用紙13が加熱ロール52側に巻き付いて、当該記録用紙13に大きなカールが発生するのを防止でき、記録用紙13の排紙トレイ20上への収容性も向上する。
なお、環境湿度が50%以下と低い場合には、記録用紙13のコシ(剛性)が高温高湿下よりも強く、記録用紙13のカール等が発生し難いため、移動手段71によって圧接部材55を記録用紙13の進行方向と同一方向Xに移動させる制御は不要である。
一方、上記CPU100は、図19(b)に示すように、温度センサー103からの信号に基づいて、フルカラープリンタが設置された環境の温度を検知するとともに、画像処理装置からの信号に基づいて、記録用紙13の種類(厚さを判定する坪量)を検知する。すると、CPU100は、図18に示すように、RAM102に記憶されたテーブルを参照することによって、定着装置15の圧接部材55を移動させる移動量を求めるようになっている。なお、ここで、定着装置15の定着スピードは、普通紙に対応したフルスピードに設定されており、厚紙の場合には、普通紙の1/2程度に減速される。
CPU100は、図19(b)に示すように、例えば、記録用紙13が比較的厚い紙 (坪量が100gmsを越えて110gm以下)であって、しかも、環境温度が10℃以下であると検知すると、移動手段71によって圧接部材55を記録用紙13の進行方向と同一方向Xに、マイナス3だけ移動させるように駆動モータを制御する。また、CPU100は、図19(b)に示すように、例えば、記録用紙13が比較的薄い紙(坪量が70gmsを越えて80gm以下)であって、しかも、環境温度が10℃以下であると検知すると、移動手段71によって圧接部材55を記録用紙13の進行方向と同一方向Xに、マイナス1だけ移動させるように駆動モータを制御する。
このように、記録用紙13が比較的厚い紙(坪量が100gmsを越えて110gm以下)であって、しかも、環境温度が10℃以下である場合には、低温環境であって、記録用紙13が比較的厚い紙であると、定着性が低くなり、定着不良が発生する虞れがある。
そのため、この実施の形態では、移動手段71によって圧接部材55を記録用紙13の進行方向と同一方向Xに、マイナス3だけ大きく移動させることにより、ニップ部Nにおける圧接部64の平坦部64aが占める寄与率を相対的に増加させるとともに、湾曲部64bが占める寄与率を相対的に低下させる。そして、圧接部材55を記録用紙13の進行方向に沿った下流側に移動させた場合には、図17に示すように、圧接圧力のピーク値84近傍に占める平坦部64aの寄与が大きくなり、ピーク値84の幅が広くなり、記録用紙13の定着性が向上する。
したがって、低温環境であって、記録用紙13が比較的厚い紙であり、定着性が低くなり、定着不良が発生する虞れがある場合であっても、記録用紙13の定着性を向上させることができ、定着不良が発生するのを確実に防止することができる。
さらに、上記CPU100は、図18に示すように、種類判別手段105からの信号に基づいて、記録用紙13の種類(厚さを判定する坪量)を検知する。すると、CPU100は、図19(c)に示すように、RAM102に記憶されたテーブルを参照することによって、定着装置15の圧接部材55を移動させる移動量を求めるようになっている。なお、ここで、定着装置15の定着スピードは、普通紙に対応したフルスピードに設定されており、厚紙の場合(例えば、坪量が110gmsを越える場合)には、定着スピードが普通紙の1/2程度に減速されるようになっている。
CPU100は、図19(c)に示すように、例えば、記録用紙13が厚紙(坪量が110gmsを越えて160gm以下)であると検知すると、移動手段71によって圧接部材55を記録用紙13の進行方向と同一方向Xに、プラス2だけ移動させるように駆動モータを制御する。また、CPU100は、図19(c)に示すように、例えば、記録用紙13が更に厚紙(坪量が160gmsを越えて220gm以下)であると検知すると、移動手段71によって圧接部材55を記録用紙13の進行方向と同一方向Xに、プラス3だけ移動させるように駆動モータを制御する。
このように、記録用紙13が厚紙である場合には、温度や湿度の環境によらず、又は特に高湿環境下において、記録用紙13のカールが発生し、記録用紙13の収容性が悪化する虞れがある。
そのため、この実施の形態では、移動手段71によって圧接部材55を記録用紙13の進行方向と同一方向Xに、プラス3又は2だけ大きく移動させることにより、ニップ部Nにおける圧接部64の湾曲部64bが占める寄与率を相対的に増加させるとともに、平坦部64aが占める寄与率を相対的に低下させる。そして、圧接部材55を記録用紙13の進行方向に沿った上流側に移動させた場合には、図15に示すように、圧接圧力のピーク値84近傍に占める平坦部64aの寄与が小さくなり、ピーク値84の幅が狭くなり、記録用紙13の剥離性を向上させることができ、記録用紙13が加熱ロール52側に巻き付いて、当該記録用紙13に大きなカールが発生するのを防止でき、記録用紙13の排紙トレイ20上への収容性も向上する。
また、特殊用途などに用いられる記録用紙であって予めテーブルが用意されていない場合などには、ユーザーが任意に設定を変更してもよい。例えば、病院等で用いられる不定形な薬袋などの場合は、「定着スピードは普通紙と同じ」、「上流側に+2移動」と指定する。
実施の形態2
図20はこの発明の実施の形態2を示すものであり、前記実施の形態1と同一の部分には同一の符号を付して説明すると、この実施の形態2では、前記圧接寄与率変更手段が、前記押圧部材を回動させることによって、前記定着寄与部と剥離寄与部の圧接寄与率を変更するように構成されている。
すなわち、この実施の形態2では、図20に示すように、圧接部材55を時計回り方向及び反時計回り方向に回動させる移動手段71を備えており、当該移動手段71によって圧接部材55を時計回り方向又は反時計回り方向に回動させることにより、ニップ部Nにおける圧接部64の平坦部64aと湾曲部64bとが、定着処理に占める寄与率を変更することが可能となるように構成されている。
上記圧接部材55は、図11に示すように、ベルトガイド部材54の凹溝54aにアーム部材67が嵌合された状態で取り付けられているとともに、当該圧接部材55は、ベルトガイド部材54に設けられた円形状の凹溝54aを介して、アーム部材67に対して回動自在に取り付けられている。
上記移動手段71は、図20に示すように、ベルトガイド部材54の端面54bに固定した状態で取り付けられた略半円形状のギア92と、当該ギア92と噛み合う円形状のギア93と、当該ギア93を駆動するステッピングモータ等からなる駆動モータ74とを備えている。
そして、この移動手段71は、図20に示すように、駆動モータ74によってギア93を所定量だけ回転駆動することにより、ギア92を介して圧接部材55を、時計回り方向又は反時計回り方向に沿って所定の角度ずつ回動させることが可能となっている。
上記移動手段71は、例えば、図21に示すように、圧接部材55を反時計回り方向に沿って所定の角度だけ回動させることによって、ニップ部Nにおける圧接部64の湾曲部64bが占める寄与率を相対的に増加させるとともに、平坦部64aが占める寄与率を相対的に低下させることが可能となっている。このように、圧接部材55を記録用紙13の進行方向に沿った上流側に移動させた場合には、図22に示すように、圧接圧力のピーク値84近傍に占める平坦部64aの寄与が小さくなり、ピーク値84の幅が狭くなり、記録用紙13の剥離性も向上する。また、ニップ部Nにおけるパッド部材62の寄与も合わせて減少するため、第1の領域81の立ち上がりも若干遅くなる。
一方、上記移動手段71は、例えば、図23に示すように、圧接部材55を時計回り方向に沿って所定の角度だけ回動させることによって、ニップ部Nにおける圧接部64の平坦部64aが占める寄与率を相対的に増加させるとともに、湾曲部64bが占める寄与率を相対的に低下させることが可能となっている。このように、圧接部材55を記録用紙13の進行方向に沿った下流側に移動させた場合には、図24に示すように、圧接圧力のピーク値84近傍に占める平坦部64aの寄与が大きくなり、ピーク値84の幅が広くなり、記録用紙13の定着性が向上する。また、ニップ部Nにおけるパッド部材62の寄与も合わせて増加するため、第1の領域81の圧力も中立位置に比較して高くなる。
そして、CPU100は、前記実施の形態1と同様に、環境温度や湿度、記録用紙13上の像密度、あるいは記録用紙の種類等に応じて、移動手段71によって圧接部材55を反時計回り方向又は時計回り方向に沿って所定の角度だけ回動させることによって、ニップ部Nにおける圧接部64の平坦部64a及び湾曲部64bが占める寄与率を相対的に変化させるようになっている。
その他の構成及び作用は、前記実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。