グレッツェルらが提唱した新しいタイプの色素増感太陽電池は、従来の色素増感太陽電池に比べて、飛躍的に高い変換効率(7%台)を示し注目を浴びてきた。色素増感太陽電池は、光を捕集した色素が生成する励起電子を半導体内に注入することによって光電変換を実現している。したがって、光捕集力を高めるために増感色素を半導体に多量に担持させること、さらに増感色素からできるだけ早く半導体へ電子を注入させることが重要である。グレッツェル・セルとも言われるこの新しい色素増感太陽電池は、超微粒子の酸化チタンからなる多孔質膜に増感色素であるルテニウム錯体を担持させることで、この課題を解決している(例えば、非特許文献1参照。)。
このグレッツェル・セルは、酸化チタンの超微粒子を分散したペーストを透明電極に塗布し、増感色素を担持させ、対電極との間に電解質を充填するだけで組み立てることができる。したがって、高価なシリコンウエハーを原料とする、又は大掛かりな設備を必要とする真空プロセスによって生産される既存のシリコン系などの太陽電池と比べて、簡便な装置で製造が可能であることから、低コストで生産することが可能な次世代太陽電池の一つとして注目されている。そして、ロール・トゥー・ロール連続生産方式による大量生産が可能になれば、さらなる低コストが期待できることから、フレキシブルなグレッツェル・セルの開発は特に注目されている。
しかし通常、このグレッツェル・セルの光電変換部である多孔質酸化チタン膜は、酸化チタンペーストを基板上に塗布した後、400〜500℃という高温で加熱焼成することで作製する。この酸化チタンの加熱焼成は、酸化チタンペースト中の有機成分を加熱分解して多孔質化するとともに、酸化チタンの超微粒子同士の結合を促進するために行う。これにより、多量の増感色素が担持できるとともに、酸化チタン超微粒子間において、光励起した電子の伝達経路(導電パス)を確保することができる。従って、この加熱焼成温度より高い軟化温度(融点)を有するガラスなどの材料がセルの基板材料として用いられている。そのためガラス基板を用いて得られた光電変換素子モジュールは硬質なものとなり、可撓性を得ることは困難である。
最近になって、高温での焼成工程を用いずに低温で酸化チタン膜を作製する技術が開発された(特許文献1、非特許文献2〜3参照。)。これらの技術により樹脂フィルムを使用し、可撓性を有する多孔質酸化チタン膜の作製が可能となり、可撓性を有する光電変換素子の作製が可能となった。しかし、これらの製法を用いて作製された光電変換素子の光電変換特性は、酸化チタン粒子間の焼結の促進が不充分であるため、電子の導電パスを確保することが困難であることから導電性が低く、通常の加熱焼成工程を経て得られる導電性の高いガラス基板を用いた光電変換素子には及ばないのが現況である。
さらに、非特許文献2と非特許文献3にあっては、低温で酸化チタン膜を作製することが可能であるが、泳動電着やマイクロ波照射は、バッチでの工程となるため、ロール・トゥー・ロール連続生産方式は困難である。
ところで、現状のグレッツェル・セルは、単体で1V以下の開放端電圧であり、実用的な電気機器をグレッツェル・セルで駆動させるには、複数のセルを直列接続して出力電圧を大きくすることが必須であり、既にグレッツェル・セルを直列接続したモジュール構造がいくつか提案されている(特許文献2〜7参照。)。
すなわち、特許文献2には、1枚の基板上に直列接続したモジュールを構成する構造並びにその製造方法が提案されている。通常のグレッツェル・セルは光電極と対電極との間に電解質を挟んだサンドイッチ構造であり、2枚の基板を必要とするが、この特許文献2に記載の構造であれば、基板を1枚にすることができ、軽量化や低コスト化などの利点がある。
しかし、特許文献2のように基板を1枚にする構造は、ドライプロセスで作製するシリコン系太陽電池には適したモジュール構造であるが、ウェットプロセスでグレッツェル・セルを作製する場合、隣接する素子を接続するための電極を塗布するのが非常に難しいという問題がある。また、これに用いられる酸化チタン膜は加熱焼成したガラス基板電極もしくは低温作製したフィルム基板電極を用いることとなり、光電変換効率(出力)と可撓性とを両立した光電変換素子モジュールとすることは困難である。
特許文献3には、サンドイッチ構造のセルで、隣接する2つの素子の光電極と対電極とを反転させながら直列接続する方法が提案されている。
この特許文献3に記載の方法では、容易に直列接続できる利点を有するものの、光電極を受光面にした素子と対電極を受光面にした素子とを直列接続するため、モジュール全体の出力特性が光電変換効率の悪い対電極を受光面にした素子に制限されてしまうという問題がある。また、これに用いられる酸化チタン膜は加熱焼成したガラス基板電極もしくは低温作製したフィルム基板電極を用いることとなり、光電変換効率(出力)と可撓性とを両立した光電変換素子モジュールとすることは、特許文献2と同様に困難である。
特許文献4には、サンドイッチ構造のセルで、隣接する2つの光電極と対電極とをセル外部で3次元に直列接続する方法が提案されている。
この特許文献4に記載のものは、特許文献2や特許文献3に記載のものに比べて複雑な工程を必要とせず、容易に直列接続できる利点を有するものの、セル外部に直列接続部分を形成するため、シート抵抗の比較的大きな透明導電膜層を伝達する電子の距離が長くなる。一般に透明導電膜層は、金属の数100倍の比抵抗を有するインジウム−錫複合酸化物(ITO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、酸化アンチモンドープ酸化錫(ATO)などの抵抗値が10-4〜10-3Ω・cm程度の酸化物から成るため、この特許文献6に記載の方法では、抵抗損失が大きくなり電力を抵抗損失ロスしてしまうという問題がある。また、これに用いられる酸化チタン膜は加熱焼成したガラス基板電極もしくは低温作製したフィルム基板電極を用いることとなり、光電変換効率(出力)と可撓性とを両立した光電変換素子モジュールとすることは、特許文献2と同様に困難である。
特許文献5〜7には、サンドイッチ構造のセルにおいて、隣接する2つの光電極と対電極とを電気的通電材料によって、電解質の保持と電気的接続とを両立させ、3次元的に直列接続する方法が提案されている。
これらに記載の方法は、電解質の保持と電気的接続とを同時に行うことが可能であって、モジュール全体に占める電極面積を大きくでき、かつ電子の透明導電膜層の移動距離を短くして抵抗損失ロスを最小限にすることが可能であることから、高出力化できる利点を有するが、これらに用いられる酸化チタン膜は加熱焼成したガラス基板電極もしくは低温作製したフィルム基板電極を用いることとなり、光電変換効率(出力)と可撓性とを両立した光電変換素子モジュールとすることは、特許文献2と同様に困難である。
以上のように、特許文献2〜7のいずれに記載のモジュール構造も光電変換効率(出力)と可撓性とを両立した光電変換素子モジュールを製造することは困難である。また、両電極を形成するための高度な基板のパターニング技術や張り合わせ精度が必要であり、ロール・トゥー・ロール連続生産は困難である。
一方、現在フレキシブルな光電変換素子(太陽電池)モジュールとして、可撓性を有するフィルム材料や金属材料を基板に用いたアモルファスシリコン太陽電池が生産されているが、これは真空プロセスにより生産されたものであるため低コスト化に限界がある(特許文献8参照。)。
特表2003−500857号公報
特表平11−514787号公報
国際公開第96/29716号パンフレット
EP0855726号明細書
特表2002−540559号公報
特表2002−535808号公報
特開2001−357897号公報
特開昭59−34668号公報
グレッツェル(Gratzel)、外1名、「ネイチャー(Nature)」、(英国)、1991年10月24日、第353巻、p.737−740
雉鳥二治郎、外1名、「機能材料」、2003年6月号、p.19−25
冨羽美帆、外2名、「機能材料」、2003年6月号、p.58−63
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の光電変換素子モジュールの一例は、色素を担持した半導体層を有する第1の電極を備えた第1の基板と、上記第1の電極の半導体層と対峙する第2の電極を備えた第2の基板と、上記第1の電極の半導体層と上記第2の電極との間に配置された電解質とを備えた光電変換素子を複数含む光電変換素子モジュールである。また、上記第1の基板及び上記第2の基板から選ばれるいずれか一方の基板は、単一の基板から形成され、他の一方の基板は、複数の基板から形成されている。
これにより、以下の利点が得られる。第一に、大面積の単一の基板上にパターン形成を行うには高度な精度が必要であるが、一方の基板を小面積の複数の基板とすることで、基板のパターニングを減らすことができ、電極作製を容易かつ簡単にすることができる。第二に、複数の基板からなる電極は、単一の基板に比べて小さなサイズとなるので取り扱いが容易である。特に、上記第1の電極と上記第2の電極との貼り合わせ工程を容易にすることができる。第三に、湾曲した光電変換素子モジュールを作製したい場合、湾曲した単一の基板上に形成された電極に、もう一方の複数の基板上に形成された電極を貼りあわせることで、容易に作製することが可能である。なお、複数の基板上に形成する電極は、それぞれ必要に応じて任意の個数とすることができる。
上記単一の基板は、可撓性を有することが好ましく、具体的には可撓性を有する材料で形成されていることが好ましい。これにより、ロール状に巻き上げられた長尺の可撓性を有する電極基板を連続的に供給し、もう一方の複数の電極基板を逐次貼り合わせることによって、光電変換素子モジュールを連続生産することができ、生産コストの低減を図ることができる。また、得られた光電変換素子モジュールは、複数の基板からなる電極の隙間部分に可撓性を有していることから、隙間部分の可撓部分で曲げることができ、光電変換素子モジュールを湾曲させることが可能になる。これにより湾曲した部分への設置が可能となり、光電変換素子モジュールの使用範囲を広げることができる。また、上記可撓性を有する材料としては、基板の強度が必要な場合には金属材料を使用することが好ましく、透光性を持たせたい場合には高分子材料を使用することが好ましい。
上記複数の基板は、融点が400℃以上の上記第1の基板からなることが好ましい。これにより、通常の加熱焼成工程によって酸化チタン膜を作製できることになり、導電性の高い高性能な光電変換部とすることができる。この融点が400℃以上である基板の材質としては、ガラスなどの透明材料が好ましい。また、上記第1の基板の加熱焼成を行う装置は、光電変換素子モジュールと同等の大きな装置を用いる必要は無く、より小さな焼成炉を用いることが可能であり、設備投資金額をより小さくすることができる。
また、隣接する上記光電変換素子は、導電性材料によりそれぞれ電気的に直列に接続されていることが好ましい。これにより、光電変換素子モジュールを高電圧化することができるので、透明導電膜層の抵抗損失ロスを低減することができ、高出力化することができる。
上記導電性材料は、隣接する光電変換素子のそれぞれの電解質の間に配置されていることが好ましい。これにより、電解質の保持と電気的接続とを同時に行うことが可能になり、モジュール全体で電極が占める面積(有効面積)を大きくでき、それによって、高出力化ができるようになる。
より具体的には、上記導電性材料は絶縁性材料の中に導電剤を含んでいることが好ましく、これにより導電性材料は、電解質中のヨウ素や電解質溶媒と触れることが無くなるので、導電剤の変性を抑制することができ、長期信頼性を高めることができる。
また、上記光電変換素子モジュールは、ロール状に巻き上げられた上記単一の基板を連続的に供給するとともに、上記単一の基板に上記複数の基板を逐次貼り合わせて形成されていることが好ましい。これにより、光電変換素子モジュールを容易に低コストで量産することができる。
次に、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明の光電変換素子モジュールの一例を示す断面図である。図1に示す光電変換素子モジュールは、光電変換素子を2個直列に接続したものである。図1において、光電変換素子モジュール1を構成する各光電変換素子2.1、2.2は、それぞれ独立した複数の第1の基板3.1、3.2の一方の表面に形成された第1の電極(透明電極)5.1、5.2を備えている。そして、この第1の電極5.1、5.2の一方の面には、それぞれ増感色素が担持された半導体層7.1、7.2が被着されている。さらに、この増感色素が担持された半導体層7.1、7.2に対峙して第2の電極(対電極)11.1、11.2が配置されている。そして、この第2の電極11.1、11.2は、単一の第2の基板21の一方の面に形成されている。半導体層7.1、7.2と第2の電極11.1、11.2との間には、それぞれ電解質9.1、9.2が配置されている。また、第1の電極5.2の外側の先端部には電気的接続部5.2aが形成されており、第2の電極11.1の外側の先端部には電気的接続部11.1aが形成されている。なお、複数設けられている部材に関する符号は、その複数設けられている部材を総称的に示す場合は、単に整数位の数字だけで示し、それらの部材を個別に示す必要があるときは、その整数位の数字の後にその部材間における識別のための数字をピリオドを介して付記した態様で示す。例えば、第1の電極を総称的に示す場合は「5」のみで示し、それらの第1の電極について個別に示す必要があるときは、「5.1」、「5.2」のように示す。そして、これは他の複数設けられている部材に関しても同様である。
一方の光電変換素子2.1の第1の電極5.1と、他方の光電変換素子2.2の第1の電極5.2との間は、第1の基板3.2上のギャップ15で分離され、同様に、一方の光電変換素子2.1の第2の電極11.1と、他方の光電変換素子2.2の第2の電極11.2との間は、第2の基板21上のギャップ17で分離されている。一方の光電変換素子2.1の電解質9.1と、他方の光電変換素子2.2の電解質9.2との間は、導電性材料13によって分離されている。隣り合う第1の基板3.1と第1の基板3.2とは任意の間隔とすることが可能である。そして、第1の電極5.1、5.2を備えた第1の基板3.1、3.2と、第2の電極11.1、11.2を備えた第2の基板21との間の両端部は封止材19によって封止されている。また、第1の基板3.1、3.2は透明基板であって、光電変換素子モジュール1は、この透明な第1の基板3から入射光27を受ける。なお、ギャップ15に関しても、ギャップ17に関しても、それぞれ第1の基板3上、第2の基板21上のように表現しているが、これは、光電変換素子モジュール1の内面側を「上」と表現したことに基づいている。
本実施形態の光電変換素子モジュール1の構造は、隣接する光電変換素子2.1と2.2との分離と、一方の光電変換素子2.1の第1の電極5.1と他方の光電変換素子2.2の第2の電極11.2との電気的接続とを同時に行うことによって光電変換素子モジュール内に占める導電性材料13の面積割合を低減し、光電変換素子2の有効面積の割合を高くすることができ、光電変換素子モジュールの面積あたりの出力を高くすることができる構造である。また、第1の基板3.1と第1の基板3.2とが分離されているため、第1の基板3と第2の基板21との張り合わせ工程を容易にすることが可能である。
本実施形態の光電変換素子1において、複数の第1の基板3.1、3.2は透明材料、すなわち、透光性を有する材料から形成されているが、この第1の基板3の材料としては、通常、ガラスが使用される。第1の基板3の光透過率は高いほどよく、好ましい光透過率は50%以上であり、より好ましくは80%以上である。また、融点が400℃以上であればガラス以外の透明材料の使用も可能である。
図2は、本発明の光電変換素子モジュールの他の一例を示す断面図である。本実施形態において隣り合う第1の基板3.1、3.2の端部の角度を、90°以上の任意の角度22.1、22.2とすることにより、第1の基板3を内側にして光電変換素子モジュール1を湾曲させる場合に、任意の湾曲とすることできる。これ以外は、図2の光電変換素子モジュール1は、図1の光電変換素子モジュール1と同じ構成である。
第1の基板3.1、3.2の一方の面に形成される第1の電極5.1、5.2は、それぞれの光電変換素子2.1、2.2の負極として機能し、第1の基板3.1、3.2上に導電材層を積層することによって形成される。好ましい導電材としては、透明導電性の金属酸化物、例えば、ITO、FTO、ATOなどが挙げられる。第1の電極5.1、5.2は第1の基板3.1、3.2の一方の面に透明導電膜として形成されており、パターニングされたギャップ15によって仕切られている。このギャップ15の形成は、パターンに沿って、表面掘削、レーザスクライビング、エッチングなどにより、上記透明導電膜を取り除くことによって行うことができるが、特にエッチングを採用することが好ましい。このエッチングとしては、例えば、ウェットエッチング、ドライエッチング、電解エッチング、レーザーエッチング、フォトエッチングなどが挙げられるが、特にレーザーエッチングが好ましい。このレーザーエッチングは、ドライでエッチングすることが可能で、ウエットエッチングの場合に必要な、パターンのマスク形成、薬液処理、洗浄、乾燥などの工程を簡素化することができる。さらに、レーザーエッチングは前述の半導体層7.1、7.2の形成前でも、形成後でも行うことができ、任意のタイミングでエッチングすることが可能である。
第1の電極5.1、5.2は、表面抵抗が低いほど好ましい。好ましい表面抵抗値としては、50Ω/スクエア以下であり、より好ましくは30Ω/スクエア以下である。下限値に特に制限はないが、通常、0.1Ω/スクエア以上である。
第1の電極5.1、5.2は、光透過率が高いほど好ましい。好ましい光透過率としては、50%以上であり、より好ましくは80%以上である。第1の電極5.1、5.2の厚みは、0.1〜10μmの範囲内にあることが好ましい。この範囲内であれば、均一な厚みの電極を形成することが容易となり、また、光透過性が低下せず、充分な光を半導体層7.1、7.2に入射させることができるからである。この第1の電極5.1、5.2が透明な場合は、第1の基板3側から光を入射させることが好ましい。
上記第1の電極5.1、5.2の対電極となる第2の電極11.1、11.2は、それぞれの光電変換素子2.1、2.2の正極として機能し、上記増感色素が担持された半導体層7.1、7.2が被着される側の第1の電極5.1、5.2と同様に形成できる。第2の電極11.1、11.2を光電変換素子モジュール1の正極として効率よく作用させるためには、電解質の還元体に電子を与える触媒作用を有する素材を使用することが好ましい。このような素材としては、例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウムなどの金属、又はグラファイト、白金を担持したカーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーンなどのカーボン材料、又はポリチオフェン誘導体(PEDOT)、N,N−ジ(ナフタレン−1−ニル)−N,N−ジフェニル−ベンジデン誘導体(NPB)、ポリ[2−メトキシ−5−(2’−エチルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン](MEH−PPV)などの導電性高分子材料、又はITO、FTO、ATOなどの導電性の金属酸化物などが挙げられる。これらの中でも、白金、カーボン材料、ポリチオフェン誘導体などが特に好ましい。この第2の電極11.1、11.2が形成される第2の基板21は、第2の電極11.1、11.2の形成面側に透明導電膜(図示せず。)を有することもできる。この透明導電膜は、例えば、第1の電極5.1、5.2の場合と同じ材料から形成することができる。このとき、第2の電極11.1、11.2は、光電変換素子モジュール1の透光性を失わないように、できるかぎり薄層化し、透明にすることが好ましい。
第2の電極11.1、11.2のギャップ17は、パターンに沿って、表面掘削、レーザスクライビング、エッチングなどにより、上記透明導電膜を取り除くことによって形成することができるが、特にエッチングを採用することが好ましい。エッチングとしては、例えば、ウェットエッチング、ドライエッチング、電解エッチング、レーザーエッチング、フォトエッチングなどが挙げられるが、レーザーエッチングがより好ましい。レーザーエッチングは、ドライでエッチングすることが可能で、ウェットエッチングの場合に必要な、パターンのマスク形成、薬液処理、洗浄、乾燥などの工程を簡素化することが可能である。また、レーザーエッチングは、パターン化されていない第2の電極11と上記透明導電膜とを同時にエッチングすることが可能であって、さらなる工程の簡素化が可能である。例えば、ウェットエッチングを用いる場合、パターニングされた上記透明導電膜上に、第2の電極11.1、11.2として白金を被着するには、上記透明導電膜と同一のパターンのマスクを用いて真空成膜により白金を堆積させたり、塩化白金酸の熱処理で白金粒子を被着したり、めっきする方法などを採用することになるが、レーザーエッチングは、上記透明導電膜の片面に白金を被着した後、これを同時にエッチングしてパターンを形成し、第2の電極11.1、11.2とすることが可能である。
単一の第2の基板21の材質としては、第1の基板3と同じくガラスを使用することができるが、可撓性を有するフィルムを使用することが好ましい。これにより、ロール・トゥー・ロール連続生産が可能となり、製造コストの低減を図ることができるからである。可撓性を有するフィルムとしては、例えば、再生セルロースフィルム、ジアセテートセルロースフィルム、トリアセテートセルロースフィルム、テトラアセチルセルロースフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルフォンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアリレートフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ノルボルネン樹脂フィルム、ポリスチレンフィルム、塩酸ゴムフィルム、ナイロンフィルム、ポリアクリレートフィルム、ポリフッ化ビニルフィルム、ポリ四フッ化エチレンフィルムなどがある。この中で、特にポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルフォンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアリレートフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ノルボルネン樹脂フィルムは、強靭性でかつ耐熱性に優れていて好ましい。
また、第2の基板21の材質として、不透明な金属材料なども用いることができるが、透明フィルムや透明ガラスを用いることが好ましい。
半導体層7.1、7.2は、半導体粒子の分散塗料を、例えば、ドクターブレードやバーコータなどを使う塗布方法、スプレー法、ディップコーティング法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、スピンコート法、電着法などにより、第1の電極5.1、5.2の表面に成膜し、その後、必要に応じて半導体層7.1、7.2の固定化処理を行うことが好ましい。固定化処理の方法としては、加熱処理や加圧処理などが挙げられる。加熱処理としては、電気炉やホットプレート、マイクロ波などによる加熱方式が好ましく、ガラス基板の場合400〜600℃程度、フィルム基板の場合80〜250℃程度の加熱が好ましい。また、加圧処理としては、プレス機やカレンダなどによる加圧が挙げられ、圧力としては1〜200MPa程度が好ましい。また、半導体層7.1、7.2のパターンは、半導体層7.1、7.2を第1の電極5.1、5.2の表面に形成できるパターンであればよい。
半導体層7.1、7.2の厚みは、0.1〜100μmの範囲内であることが好ましい。この範囲内の厚みであれば、充分な光電変換効果が得られ、また、可視光及び近赤外光に対する透過性が悪化することもないからである。半導体層7.1、7.2の厚みの一層好ましい範囲は1〜50μmであり、特に好ましい範囲は5〜30μmであり、最も好ましい範囲は10〜20μmである。
半導体層7を形成するための半導体材料としては、例えば、Cd、Zn、In、Pb、Mo、W、Sb、Bi、Cu、Hg、Ti、Ag、Mn、Fe、V、Sn、Zr、Sr、Ga、Si、Crなどの金属元素の酸化物、SrTiO3、CaTiO3などのペロブスカイト、又はCdS、ZnS、In2S3、PbS、Mo2S、WS2、Sb2S3、Bi2S3、ZnCdS2、Cu2Sなどの硫化物、CdSe、In2Se3、WSe2、HgS、PbSe、CdTeなどの金属カルコゲナイド、その他GaAs、Si、Se、Cd2P3、Zn2P3、InP、AgBr、PbI2、HgI2、BiI3など、又は上記半導体材料から選ばれる少なくとも1種類を含む複合体、例えば、CdS/TiO2、CdS/AgI、Ag2S/AgI、CdS/ZnO、CdS/HgS、CdS/PbS、ZnO/ZnS、ZnO/ZnSe、CdS/HgS、CdSx/CdSe1-x、CdSx/Te1-x、CdSex/Te1-x、ZnS/CdSe、ZnSe/CdSe、CdS/ZnS、TiO2/Cd3P2、CdS/CdSeCdyZn1-yS、CdS/HgS/CdSなどが挙げられる。これらの中でも、TiO2が、グレッツェル・セルにおいて、電解液中への光溶解の回避と高い光電変換特性を実現できる点で好ましい。
上記半導体材料は、微粒子状で用いることが好ましく、その半導体粒子の粒径は、一般的に5〜1000nmの範囲内であることが好ましい。この範囲内の粒径であれば、半導体層7.1、7.2の細孔径が適切な孔径になり、電解質が半導体層7.1、7.2の中に充分に浸透して、優れた光電変換特性を得ることができるからである。特に好ましい半導体粒子の粒径は、10〜100nmの範囲である。
半導体層7の厚み又は半導体粒子の粒径を制御することにより、半導体層7のラフネスファクター(基板面積に対する半導体層内部の実面積の割合)を決定することができる。ラフネスファクターは20以上であることが好ましく、150以上であることがより好ましい。この範囲内のラフネスファクターであれば、増感色素の担持量が充分となり、光電変換特性を向上できる。ラフネスファクターの上限値は一般的に5000程度である。ラフネスファクターは半導体層7の厚みを厚くすると大きくなって、半導体層7の表面積が広がり、増感色素の担持量の増加が期待できる。しかし、半導体層7の厚みが厚くなりすぎると、半導体層7の光透過率及び抵抗損失への影響が現れはじめる。
また、半導体層7に界面活性剤、ポリエチレングリコール、セルロース系材料などを添加し、半導体層7の加熱処理時にそれらを燃焼することによって半導体層7を多孔質にしたり、半導体粒子の粒径を変更したりすることで半導体層7のポロシティーを高くすれば、半導体層7の厚みを厚くしなくてもラフネスファクターを大きくすることが可能である。しかし、ポロシティーが高すぎると、半導体粒子間の接触面積が減少して抵抗損失の影響を考慮しなくてはならなくなる。このようなことから、半導体層7のポロシティーは50%以上が好ましく、その上限値は一般的に約80%程度である。半導体層7のポロシティーは液体窒素温度下で窒素ガス又はクリプトンガスの吸着−脱離等温曲線の測定結果から算出することができる。
増感色素としては、従来の色素増感性光電変換素子で常用されている色素であればすべて使用できる。このような色素としては、Lを4,4’−ジカルボキシル−2,2’−ビピリジンとすると、例えば、RuL2(H2O)2タイプのルテニウム−シス−ジアクア−ビピリジル錯体又はルテニウム−トリス(RuL3)、ルテニウム−ビス(RuL2)、オスニウム−トリス(OsL3)、オスニウム−ビス(OsL2)タイプの遷移金属錯体、又は亜鉛−テトラ(4−カルボキシフェニル)ポルフィリン、鉄−ヘキサシアニド錯体、フタロシアニンなどが挙げられる。有機色素としては、9−フェニルキサンテン系色素、クマリン系色素、アクリジン系色素、トリフェニルメタン系色素、テトラフェニルメタン系色素、キノン系色素、アゾ系色素、インジゴ系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、キサンテン系色素などが挙げられる。これらの中でも、ルテニウム−ビス(RuL2)誘導体は、可視光域で広い吸収スペクトルを有することから、特に好ましい。
半導体層7.1、7.2へ増感色素を担持させる方法は、例えば、増感色素を溶解させた溶液に、半導体層7.1、7.2を被着させた第1の電極5.1、5.2を備えた第1の基板3を浸漬させる方法が挙げられる。この溶液の溶媒としては、例えば、水、アルコール、トルエン、ジメチルホルムアミドなどの増感色素を溶解可能なものであればすべて使用できる。また、浸漬方法として、増感色素溶液に半導体層7.1、7.2を被着させた第1の電極5.1、5.2を備えた第1の基板3を一定時間浸漬させている時に、加熱還流や超音波を印加する方法を採用することもできる。半導体層7.1、7.2への色素担持後、担持せずに半導体層7.1、7.2に残ってしまった増感色素を取り除くために、アルコールで洗浄又は加熱還流することが好ましい。さらに、増感色素が担持されてない半導体粒子の表面を被覆するために、アルコール中にt−ブチルピリジンを溶かしておいてもよい。アルコール中にt−ブチルピリジンが存在すると、半導体粒子と電解質との界面では、増感色素及びt−ブチルピリジンによって半導体粒子の表面と電解質とを分離することができ、漏れ電流を抑制することが可能なため、光電変換素子の特性を著しく向上させることができる。
半導体層7への増感色素の担持量としては、1×10-8〜1×10-6mol/cm2の範囲が好ましく、特に0.1×10-7〜9.0×10-7mol/cm2の範囲が好ましい。増感色素の担持量がこの範囲内であれば、経済的かつ充分に光電変換効率の向上効果を得ることができる。
本実施形態の光電変換素子モジュール1における電解質9.1、9.2を構成するために使用される電解物質としては、酸化体と還元体とからなる一対の酸化還元系構成物質が含まれていれば、特にその種類は限定されないが、酸化体と還元体とが同一電荷を持つ酸化還元系構成物質が好ましい。この明細書における酸化還元系構成物質とは、酸化還元反応において可逆的に酸化体及び還元体の形で存在する一対の物質を意味する。本実施形態で使用できる酸化還元系構成物質としては、例えば、塩素化合物−塩素、ヨウ素化合物−ヨウ素、臭素化合物−臭素、タリウムイオン(III)−タリウムイオン(I)、水銀イオン(II)−水銀イオン(I)、ルテニウムイオン(III)−ルテニウムイオン(II)、銅イオン(II)−銅イオン(I)、鉄イオン(III)−鉄イオン(II)、バナジウムイオン(III)−バナジウムイオン(II)、マンガン酸イオン−過マンガン酸イオン、フェリシアン化物−フェロシアン化物、キノン−ヒドロキノン、フマル酸−コハク酸などが挙げられる。これらの中でも、ヨウ素化合物−ヨウ素が好ましく、ヨウ素化合物としては、ヨウ化リチウム、ヨウ化カリウムなどの金属ヨウ化物、テトラアルキルアンモニウムヨージド、ピリジニウムヨージドなどのヨウ化4級アンモニウム塩化合物、ヨウ化ジメチルプロピルイミダゾリウムなどのヨウ化イミダゾリウム化合物が特に好ましい。
電解質9は、通常、電解物質を溶媒中に溶解させることによって調製される。その電解物質を溶解するための溶媒としては、水性溶媒、有機溶媒のいずれも使用できるが、酸化還元系構成物質などの電解物質をより安定化させるため、有機溶媒が好ましい。この有機溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート化合物、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、γ−ブチロラクトンなどのエステル化合物、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジオキソシラン、テトラヒドロフラン、2−メチル−テトラヒドラフランなどのエーテル化合物、3−メチル−2−オキサゾジリノン、2−メチルピロリドンなどの複素環化合物、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル化合物、スルフォラン、ジジメチルスルフォキシド、ジメチルフォルムアミドなどの非プロトン性極性化合物などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いることもできるし、また、2種類以上を併用することもできる。これらの中でも、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネ−ト化合物、3−メチル−2−オキサゾジリノン、2−メチルピロリドンなどの複素環化合物、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル化合物が特に好ましい。電解質は、液状のものに限られることなく、他の形態のものも用いることができるが、例えば、液状の電解質を高分子マトリックスに保持させてゲル状にした状態で用いてもよい。そのような高分子マトリックスとしては、フッ化ビニリデン、ヘキサフロロプロピレン、テトラフロロエチレン、トリフロロエチレン、エチレン、プロピレン、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、スチレンなどの重合性モノマーを単独で重合させた単独重合体又はそれらのモノマーを2種以上共重合させた共重合体などを用いることができる。
封止材19を構成する基材物質としては、例えば、シリコーン樹脂、ポリオレフィン、ブチルゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタアクリル酸共重合体、低密度ポリエチレン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン系樹脂、アイオノマー樹脂、フッ素を含む樹脂のほか、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリジエン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、フッ素樹脂系、ポリアミド系のエラストマーなどから選ばれる少なくとも1種を使用することができる。これらの中でも、シリコーン樹脂、アイオノマー樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン、熱硬化オレフィン樹脂、ブチルゴム、フッ素を含む樹脂が好ましい。また、電解質溶媒としてニトリル系溶媒、カーボネート系溶媒を使用する場合には、それらの溶媒と相溶性の低い、シリコーン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリオレフィン、熱硬化オレフィン樹脂などが好ましい。
また、封止材19には、それらの耐候性を向上させるために、架橋剤、紫外線吸収剤などを適宜混合することができる。
また、封止材19には、第1の基板3、第2の基板21、第1の電極(透明電極)5.1、5.2及び第2の電極(対電極)11.1、11.2との接着力を高めるるためにシランカップリング剤やチタネートカップリング剤などを添加してもよい。また、あらかじめ第1の基板3、第2の基板21、第1の電極(透明電極)5.1、5.2及び第2の電極(対電極)11.1、11.2に、ウエット洗浄、ケミカル洗浄、プラズマ処理、オゾン処理、紫外線照射処理、超音波処理、表面研磨処理などを行って、それら表面の洗浄や活性化を行ってもよい。
また、封止材19中には、第1の電極(透明電極)5.1、5.2と第2の電極(対電極)11.1、11.2との電極間距離を規制するためのスペーサーを存在させることが好ましい。そのような目的で用いられるスペーサーは、一般にスペーサーとして用いられる絶縁性樹脂ボール、ガラスビーズ、ガラスファイバーなどから適宜選択することができる。また、その粒径は、0.1〜300μmであることが好ましく、1〜100μmであることがより好ましい。
封止材19のパターンは、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂を使用する場合、ディスペンサーやスクリーン印刷などの手法によって形成することができる。また、ホットメルト樹脂を使用する場合は、シート状のホットメルト樹脂にパターニングした孔を穿けて、環状などの所望の封止パターンにすることができる。
さらに、封止材19の周囲を、樹脂、金属、ガラスなどで補強することによって、二重封止とすることで、光電変換素子モジュール1の強度と長期信頼性とを向上させることが可能である。そのような樹脂としては、アクリレートスチレンアクリロニトリル共重合体(AAS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、塩素化ポリエチレンアクリロニトリルスチレン共重合体(ACS)、アクリル酸エステル共重合体、オレフィンビニルアルコール共重合体、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT)、セルロース、塩素化ポリエーテル、クマロン樹脂、塩素化ポリエチレン、アリル樹脂、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エポキシ樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタアクリル酸共重合体、線状低密度ポリエチレン、ケトン樹脂、メタクリル酸ブタジエンスチレン共重合体(MBS)、メタクリル−スチレン共重合体(MS)、ニトリル樹脂、オキシベンゾイルポリエステル、脂肪族炭化水素樹脂、芳香族炭化水素樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂(PF)、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(ナイロン)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアリレート(PAR)、ポリアリルスルホン(PASF)、ポリブタジエン、ポリブチレン、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン(PESF)、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、アイオノマー樹脂、ポリイミド(PI)、ポリアミノビスマレイミド(PABM)、メタクリル樹脂(PMMA)、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンスルホン、ポリスルホン(PSF)、ポリスチレン(PS)、スチレンアクリロニトリル樹脂(SAN)、スチレン共重合体、ブタジエン−スチレン樹脂、ポリウレタン(PUR)、ビニルアセテート系樹脂、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、シリコーン樹脂(SI)、熱硬化オレフィン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、キシレン樹脂、シンジオタクチックポリスチレン、アラミドアラミド系強化繊維、ポリアミノアミド系樹脂、フッ素を含む樹脂、又はこれらの変成物やガラス強化物など、この他にポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリジエン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、フッ素樹脂系、ポリアミド系のエラストマーなどを使用することができ、これらの中から被着面の材質に応じて適宜選択して使用することができる。特に、経済性、強度、耐衝撃性、被着面との接着力、取り扱いの容易さから、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アイオノマー樹脂、熱硬化オレフィン樹脂、フッ素を含む樹脂を用いることが好ましい。
電解質注入孔(図示せず。)は、光電変換素子2の所定の部分に穿孔するなどによって、それぞれ設けられる。この電解質注入孔は、電解質を半導体層7.1、7.2と第2の電極11.1、11.2との間に注入するために設けられる。電解質注入孔は、光電変換素子2に少なくとも1つ形成されていればよいが、注入量が多い場合などは、適宜その数を増やしてもよい。電解質注入孔は、第2の基板21などの水平面上に設けてあっても、封止材19などの垂直面上に設けてあってもよい。
上記電解質注入孔は封止材によって封止される。そのような封止材としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ホットメルト樹脂、ガラスなどを用いることが好ましいが、電解質注入孔は電解質の注入後すぐに封止しなければならないので、短時間で封止できるようなシリコーン粘着テープやアイオノマー樹脂の熱融着による封止が好ましい。さらに、電解質注入孔の封止強度を高めるために、シリコーン粘着テープや熱融着されたアイオノマー樹脂を覆うように、エポキシ樹脂や紫外線硬化樹脂、ガラスを配置することがより好ましい。
導電性材料13は、絶縁性材料の中に導電剤を含有させて形成されている。絶縁性材料中に含有させる導電剤としては、粒子状のものが好ましく、そのような導電剤粒子としては、少なくとも金属導体を含む微粒子であることが好ましい。これは金属粒子又は金属メッキした樹脂粒子などの体積抵抗率の低い粒子によって確実な電気接続を行うことができるからである。
また、上記導電性粒子としては、少なくともAu、Pt、Ag、Cu、Al、Ni、Zn、Ti、W、Cr、Moのいずれかを含む微粒子であることがより好ましく、これらの金属微粒子はそれぞれ単独で用いてもよいし、また、任意の種類、任意の粒径の導電性粒子と混合して用いてもよい。より好ましくは、少なくともPt、Ni、Ti、Wのいずれかを含む微粒子である。これはそれらの金属が電解質中に多用されているヨウ素と反応しにくく、電気的接続の信頼性を向上させることができるからである。
上記絶縁性材料としては、封止材19と同じ材料を使用できるが、特にシリコーン樹脂、アクリル樹脂、アイオノマー樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン、ブチルゴム、熱硬化性オレフィン樹脂、フッ素を含む樹脂などからなることが好ましい。これはそれらの樹脂が透明性と被着体との良好な接着力を有していて、確実に電気的接続を行うことができるからである。
また、導電性材料13が光電変換素子2.1、2.2の間の分離と電極間の電気的接続とを同時に行う場合、上記透明絶縁性材料としては、特にシリコーン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリオレフィン、熱硬化性オレフィン樹脂などからなることが好ましい。これはそれらの樹脂が電解質溶媒として多用されていれるニトリル系溶媒やカーボネート系溶媒などの極性の高い溶媒と相溶性が低い、すなわち、電解質に溶けにくく長期間に亘り構造の保持が可能であって、光電変換素子モジュール1の長期信頼性を向上させることができるからである。
また、絶縁性材料には、被着面との接着力を高めるるために、シランカップリング剤やチタネートカップリング剤などを添加しても良い。また、あらかじめ被着面にウエット洗浄、ケミカル洗浄、プラズマ処理、オゾン処理、紫外線照射処理、超音波処理、表面研磨処理などを行い被着面の洗浄や活性化を行ってもよい。
また、絶縁性材料は、それらの耐候性を向上させるために、架橋剤、紫外線吸収剤などを適宜混合して使用することができる。
上記導電性粒子としては、前述のように、金属粒子、金属メッキ処理した樹脂粒子、ガラスビーズ、ガラスファイバー、ゴム粒子などを用いることができるが、別種類の金属が多重メッキされていてもよい。
上記導電性粒子は、ウエット洗浄、ケミカル洗浄、CVD処理、プラズマ処理、オゾン処理、紫外線照射処理、超音波処理、表面研磨処理などを行い粒子表面の洗浄や酸化膜の除去を行うことによって導電性を向上させることができる。また、導電性粒子と第1の電極(透明電極)5と第2の電極(対電極)11との密着性を高めるために粒子表面をシランカップリング剤やチタネートカップリング剤の表面処理剤で処理してもよい。
上記導電性粒子としては、粒径が平均粒径で0.1〜300μmであることが好ましく、1〜100μmであることがより好ましい。この導電性粒子としては、粒度分布が狭く粒径が均一に揃ったものが好ましいが、それらは非常に高価であるため、粒度分布が広く粒径が均一でないものを用いてもよい。
導電性材料13に透光性を持たせたい場合、透明導電性材料中における導電性粒子の含有量を1〜15体積%とするが、これは導電性粒子の含有量が1体積%より少ない場合は透光性は良くなるものの導電性が悪くなり、導電性粒子の含有量が15体積%より多い場合は導電性は良くなるものの透光性が悪くなるからである。そして、透明導電性材料中における導電性粒子の含有量としては、1〜10体積%が好ましく、3〜10体積%がより好ましく、3〜8体積%がさらに好ましい。
絶縁性材料中への導電性粒子の混合方法としては、絶縁性材料が熱硬化性の場合は、硬化する前であれば任意のタイミングで混入することが可能であるが、あらかじめ絶縁性材料に導電性粒子を混入し、混錬、真空脱泡を所定回数繰り返し分散、脱泡して導電性材料を調製しておくことが好ましく、そのようにして調製した導電性材料はディスペンサーやスクリーン印刷などの手法によって用いることができる。また、絶縁性材料が熱可塑性の場合は、任意のタイミングで混入することが可能であるが、あらかじめ絶縁性材料に導電性粒子を混入し、混錬、真空脱泡を所定回数繰り返し分散、脱泡して導電性材料を調製しておくことが好ましく、そのようにして調製した導電性材料はシート状に成形し、パターニングして環状など所望の形状にして用いることができる。
導電性材料13は、任意の色調に調整しても良い。このような色調の調整は顔料や染料などの色素や、色素によって着色された微粒子などを混入したり、有色フィルムなどを張り合わせることによって実現することができる。また、顔料や着色微粒子などを用いる場合、その粒径は、導電性粒子とほぼ同サイズあるか、導電性粒子よりも小さいことが好ましい。
光電変換素子モジュール1から電力を取り出すためには外部端子が設けられる。この外部端子は任意に接続可能であり、光電変換素子や光電変換素子モジュール同士の直列又は並列接続や外部回路と接続することができる。この外部端子は、導電箔、導線、導電テープ、導電メッシュ及び導電塗料から選択された少なくとも1種で形成されていることが好ましく、この外部端子と第1の電極5.1、5.2や第2の電極11.1、11.2との接続は、金属導体とそれらをカバーする異方導電材料、導電塗料、真空成膜による導電膜形成、はんだ付けなどによって行われる。
本実施形態における光電変換素子モジュール1は、フッ素を含む樹脂で覆うことができる(図示せず。)。これにより、光電変換素子モジュール1の強度や耐衝撃性を向上させることができる。このフッ素を含む樹脂は、光電変換素子モジュール1の最外層に使用することから、水蒸気などのガスバリヤー性、透明性、強度、耐候性に優れていることが好ましい。
上記フッ素を含む樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、四フッ化エチレン−エチレン共重合体(ETFE)、三フッ化塩化エチレン(PCTFE)、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、フッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、フッ化ビニル樹脂(PVF)などが挙げられる。これらは通常フィルムにして使用される。その際、いずれかの樹脂からなる単独フィルムとして用いてもよく、また、2種以上を積層した積層フィルムとして用いてもよい。また、2種以上を積層した積層フィルムは、耐候性透明フィルムにフッ素樹脂塗料を塗布することによって積層されたフィルムであってもよい。また、これらの耐候性を向上させるために、架橋剤、紫外線吸収剤、カップリング剤などを上記樹脂に適宜混合して使用することができる。
上記2種以上を積層した積層フィルムに用いられる耐候性透明フィルムとしては、例えば、ポリカーボネートフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリサルホンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、セルロースアセテートフィルム、アクリル樹脂フィルム、耐候性ポリエチレンテレフタレートフィルム、耐候性ポリプロピレンフィルム、ガラス繊維強化ポリエステルフィルム、ガラス繊維強化アクリル樹脂フィルム、ガラス繊維強化ポリカーボネートフィルムなどを使用することができる。
上記2種以上を積層した積層フィルムに用いられる耐候性透明フィルムとしては、接着性、透明性、耐候性などのほか、充填材としての機能も備えたアクリル系接着剤、エポキシ樹脂、ホットメルト樹脂などの接着剤をフィルム状にして用いることも可能である。それらの中でも、熱流動性に優れたホットメルト樹脂を必要な厚さで用いることが、性能、生産性、経済性などの点で好ましい。
このようなホットメルト樹脂としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタアクリル酸共重合体、線状低密度ポリエチレン、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、アイオノマー樹脂のほか、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリジエン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、フッ素樹脂系、ポリアミド系のエラストマーなどを使用することができ、それらの中から、被着面の材質に応じて適宜選択して使用すればよい。
また、上記フッ素を含む樹脂の耐候性をさらに向上させるために、光酸化安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤を添加することができる。例えば、紫外線吸収剤としては無機微粒子が好適であり、例えば、TiO2などの微粒子を用いることができる。さらに、水蒸気その他のガスバリヤー性を向上させたい場合は、それらの樹脂からなるフィルムに酸化珪素、酸化アルミニウムなどの無機酸化物の蒸着層を設けることもできる。
光電変換素子モジュール1をフッ素を含む樹脂で覆う方法としては、性能、生産性、経済性などの点で真空ラミネート法が好ましい。真空ラミネート法の使用によって光電変換素子モジュール1内に空気を含ませることなく樹脂で覆うことができる。
光電変換素子モジュール1をフッ素を含む樹脂で覆う方法としては、ロール状に巻き上げられた長尺のフッ素を含む樹脂を、連続的に供給して巻き取るロール・トゥ・ロール法で連続生産することが好ましい。連続生産することで生産性、経済性を向上させることができる。
上記フッ素を含む樹脂フィルムは、その表面又はその内面側に、光反射防止のための微細な凹凸加工、あるいは、金属化合物又は金属の薄膜形成加工をすることができる。これにより、フィルムで反射される光を少なくすることができるので、外部から入射する光を有効に利用することができ、太陽電池モジュールの発電効率のアップに寄与できる。上記微細な凹凸加工は、エンボス加工や紫外線硬化性樹脂によるコーティングなどによって行う。また、金属化合物の薄膜形成加工は、MgF2、ZnS、SnO2、Cr2O3などの微粒子を用いた薄膜コートによって行うことができる。さらに、金属を用いる場合は、Alなど透明性を損なわない程度に薄く蒸着することによって加工できる。
(実施例)
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。