以下、本発明の一実施の形態による誤差拡散処理方法について、図を用いて説明するが、本発明の実施の態様はこれに限定されるものではない。
まず、プラズマディスプレイ装置におけるパネルの構造について図1を用いて説明する。図1に示すように、パネルは、ガラス製の前面基板1と背面基板2とを、その間に放電空間を形成するように対向配置することにより構成されている。前面基板1上には表示電極を構成する走査電極3と維持電極4とが互いに平行に対をなして複数形成されている。そして、走査電極3および維持電極4を覆うように誘電体層5が形成され、誘電体層5上には保護層6が形成されている。
また、背面基板2上には絶縁体層7で覆われた複数のデータ電極8が設けられ、その絶縁体層7上には井桁状の隔壁9が設けられている。また、絶縁体層7の表面および隔壁9の側面に蛍光体層10が設けられている。そして、走査電極3および維持電極4とデータ電極8とが交差するように前面基板1と背面基板2とが対向配置されており、その間に形成される放電空間には、放電ガスとして、例えばネオンとキセノンの混合ガスが封入されている。なお、パネルの構造は上述したものに限られるわけではなく、例えばストライプ状の隔壁を備えたものであってもよい。
図2はこのパネルの電極配列図である。行方向にn本の走査電極SC1〜SCn(図1の走査電極3)およびn本の維持電極SU1〜SUn(図1の維持電極4)が配列され、列方向にm本のデータ電極D1〜Dm(図1のデータ電極8)が配列されている。そして、1対の走査電極SCiおよび維持電極SUi(i=1〜n)と1つのデータ電極Dj(j=1〜m)とが交差した部分に放電セルが形成され、放電セルは放電空間内にm×n個形成されている。
図3はこのパネルを用いたプラズマディスプレイ装置の回路ブロック図である。このプラズマディスプレイ装置は、パネル11、画像信号処理回路12、データ電極駆動回路13、走査電極駆動回路14、維持電極駆動回路15、タイミング発生回路16および電源回路(図示せず)を備えている。
画像信号処理回路12は、画像信号sigをサブフィールド毎の画像データに変換する。データ電極駆動回路13はサブフィールド毎の画像データを各データ電極D1〜Dmに対応する信号に変換し、各データ電極D1〜Dmを駆動する。タイミング発生回路16は水平同期信号Hおよび垂直同期信号Vをもとにして各種のタイミング信号を発生し、各駆動回路ブロックに供給している。走査電極駆動回路14はタイミング信号にもとづいて走査電極SC1〜SCnに駆動電圧波形を供給し、維持電極駆動回路15はタイミング信号にもとづいて維持電極SU1〜SUnに駆動電圧波形を供給する。ここで、前記走査電極駆動回路14および維持電極駆動回路15は、維持パルス発生部17を備えている。
次に、パネルを駆動するための駆動電圧波形とその動作について図4を用いて説明する。図4はパネルの各電極に印加する駆動電圧波形を示す図である。
本実施の形態によるプラズマディスプレイ装置においては、1フィールドを複数のサブフィールドに分割し、それぞれのサブフィールドは初期化期間、書込み期間、維持期間を有している。
第1サブフィールドの初期化期間では、データ電極D1〜Dmおよび維持電極SU1〜SUnを0(V)に保持し、走査電極SC1〜SCnに対して放電開始電圧以下となる電圧Vi1(V)から放電開始電圧を超える電圧Vi2(V)に向かって緩やかに上昇するランプ電圧を印加する。すると、すべての放電セルにおいて1回目の微弱な初期化放電を起こし、走査電極SC1〜SCn上に負の壁電圧が蓄えられるとともに維持電極SU1〜SUn上およびデータ電極D1〜Dm上に正の壁電圧が蓄えられる。ここで、電極上の壁電圧とは電極を覆う誘電体層や蛍光体層上等に蓄積した壁電荷により生じる電圧を指す。
その後、維持電極SU1〜SUnを正の電圧Vh(V)に保ち、走査電極SC1〜SCnに電圧Vi3(V)から電圧Vi4(V)に向かって緩やかに下降するランプ電圧を印加する。すると、すべての放電セルにおいて2回目の微弱な初期化放電を起こし、走査電極SC1〜SCn上と維持電極SU1〜SUn上との間の壁電圧が弱められ、データ電極D1〜Dm上の壁電圧も書込み動作に適した値に調整される。
続く書込み期間では、走査電極SC1〜SCnを一旦Vr(V)に保持する。次に、1行目の走査電極SC1に負の走査パルス電圧Va(V)を印加するとともに、データ電極D1〜Dmのうち1行目に表示すべき放電セルのデータ電極Dk(k=1〜m)に正の書込みパルス電圧Vd(V)を印加する。このときデータ電極Dkと走査電極SC1との交差部の電圧は、外部印加電圧(Vd−Va)(V)にデータ電極Dk上の壁電圧と走査電極SC1上の壁電圧とが加算されたものとなり、放電開始電圧を超える。そして、データ電極Dkと走査電極SC1との間および維持電極SU1と走査電極SC1との間に書込み放電が起こり、この放電セルの走査電極SC1上に正の壁電圧が蓄積され、維持電極SU1上に負の壁電圧が蓄積され、データ電極Dk上にも負の壁電圧が蓄積される。
このようにして、1行目に表示すべき放電セルで書込み放電を起こして各電極上に壁電圧を蓄積する書込み動作が行われる。一方、書込みパルス電圧Vd(V)を印加しなかったデータ電極D1〜Dmと走査電極SC1との交差部の電圧は放電開始電圧を超えないので、書込み放電は発生しない。以上の書込み動作をn行目の放電セルに至るまで順次行い、書込み期間が終了する。
続く維持期間では、走査電極SC1〜SCnには第1の電圧として正の維持パルス電圧Vs(V)を、維持電極SU1〜SUnには第2の電圧として接地電位、すなわち0(V)をそれぞれ印加する。このとき書込み放電を起こした放電セルにおいては、走査電極SCi上と維持電極SUi上との間の電圧は維持パルス電圧Vs(V)に走査電極SCi上の壁電圧と維持電極SUi上の壁電圧とが加算されたものとなり、放電開始電圧を超える。そして、走査電極SCiと維持電極SUiとの間に維持放電が起こり、このとき発生した紫外線により蛍光体層が発光する。そして走査電極SCi上に負の壁電圧が蓄積され、維持電極SUi上に正の壁電圧が蓄積される。このときデータ電極Dk上にも正の壁電圧が蓄積される。
書込み期間において書込み放電が起きなかった放電セルでは、維持放電は発生せず、初期化期間の終了時における壁電圧が保持される。続いて、走査電極SC1〜SCnには第2の電圧である0(V)を、維持電極SU1〜SUnには第1の電圧である維持パルス電圧Vs(V)をそれぞれ印加する。すると、維持放電を起こした放電セルでは、維持電極SUi上と走査電極SCi上との間の電圧が放電開始電圧を超えるので、再び維持電極SUiと走査電極SCiとの間に維持放電が起こり、維持電極SUi上に負の壁電圧が蓄積され走査電極SCi上に正の壁電圧が蓄積される。
以降同様に、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとに交互に輝度重みに応じた数の維持パルスを印加することにより、書込み期間において書込み放電を起こした放電セルで維持放電が継続して行われる。こうして維持期間における維持動作が終了する。
続くサブフィールドにおける初期化期間、書込み期間、維持期間の動作も第1サブフィールドにおける動作とほぼ同様のため、説明を省略する。
図5に上記で説明した構造のパネルを組み込んだプラズマディスプレイ装置の全体構成の一例を示し、図6に背面側から見た駆動回路ブロックの配置の一例を示している。
アルミニウムなどの金属製の放熱板を兼ねた保持板としてのシャーシ部材21の前面側には、パネル11がシャーシ部材21との間に放熱シート(図5には図示せず)を介在させて接着材などにより接着することにより、保持されている。また、シャーシ部材21の背面側には、図6に示すように、パネル11を表示駆動させるための複数の駆動回路ブロックが配置され、これによりモジュールが構成されている。
ここで、前記放熱シートは、パネル11をシャーシ部材21の前面側に接着して保持し、パネル11で発生した熱をシャーシ部材21に効率よく伝え、放熱を行うためのものであり、厚さは1mm〜2mm程度である。この放熱シートとしては、アクリルやウレタン、シリコン樹脂やゴムなどの合成樹脂材料に熱伝導性を高めるフィラーを含有させた絶縁性の放熱シートや、グラファイトシート、金属シートなどを用いることができる。また、放熱シート自体に接着力を持たせ、パネル11をシャーシ部材21に放熱シートのみで接着して保持する構成や、放熱シートには接着力がなく、別途、両面接着テープを用いてパネル11をシャーシ部材21に接着する構成などを用いることができる。
また、パネル11の両側縁部には、走査電極3および維持電極4の電極引出部に接続された表示電極用配線部材としてのフレキシブル配線板22が設けられ、シャーシ部材21の外周部を通して背面側に引き回され、走査電極駆動回路14の駆動回路ブロック23および維持電極駆動回路15の駆動回路ブロック24にコネクタを介して接続されている。
一方、パネル11の下部および上部縁部には、データ電極8の電極引出部に接続されたデータ電極用配線部材としての複数のフレキシブル配線板25が設けられ、そしてそのフレキシブル配線板25は、データ電極駆動回路13の複数のデータドライバ26それぞれに電気的に接続されるとともに、シャーシ部材21の外周部を通して背面側に引き回され、前記シャーシ部材21の背面側の下部および上部位置に配置されたデータ電極駆動回路13の駆動回路ブロック27に電気的に接続されている。
制御回路ブロック28は、テレビジョンチューナ等の外部機器に接続するための接続ケーブルが着脱可能に接続される入力端子部を備えた入力信号回路ブロック29から送られる映像信号に基づき、画像データをパネル11の画素数に応じた画像データ信号に変換してデータ電極駆動回路の駆動回路ブロック27に供給すると共に、放電制御タイミング信号を発生し、各々走査電極駆動回路14の駆動回路ブロック23および維持電極駆動回路15の駆動回路ブロック24に供給し、階調制御等の表示駆動制御を行うもので、シャーシ部材21のほぼ中央部に配置されている。
電源ブロック30は、前記各回路ブロックに電圧を供給するもので、前記制御回路ブロック28と同様、シャーシ部材21のほぼ中央部に配置され、電源ケーブル(図示せず)が装着されるコネクタを通して商用電源電圧が供給される。これらの駆動回路ブロック23、24、27や制御回路ブロック28や入力信号回路ブロック29や電源ブロック30は、前記シャーシ部材21の背面側に設けられたボス部にビスなどにより固定されている。
また、前記駆動回路ブロック23、24の近傍には、冷却ファン31がアングル32に保持されて配置されており、この冷却ファン31から送られる風により駆動回路ブロック23、24が冷却されるように構成されている。さらに、シャーシ部材21の上部位置には、上部位置に配置したデータ電極駆動回路13の駆動回路ブロック27を冷却するとともに、シャーシ部材21の背面側において、装置全体の内部に下部から上部に向かって空気流を起こすことにより、装置内部を冷却する3個の冷却ファン33が配置されている。
さらに、前記シャーシ部材21には、補強用のアングル34、35が水平方向および垂直方向に配置して固定され、水平方向に配置したアングル34には、装置を立てた状態で保持するためのスタンドポール36がビスなどにより固定されている。
以上のような構造のモジュールは、前記パネル11の前面側に配置される前面保護カバー37と、前記シャーシ部材21の背面側に配置される金属製のバックカバー38とを有する筐体内に収容され、これによりプラズマディスプレイ装置が完成する。ここで、前記前面保護カバー37は、パネル11の前面側の画像表示領域が表出する開口部39aを有する樹脂や金属からなる前面枠39と、この前面枠39の開口部39aに取付けられかつ光学フィルターや電磁波の不要輻射を抑制するための不要輻射抑制膜が設けられたガラスなどからなる保護板40とを備えた構成であり、前記保護板40は、保護板40の周辺部を前面枠39の開口部39aの周縁部と保護板押え金具(図示せず)とで挟むことにより、前面枠39に取り付けられている。さらに、前記バックカバー38には、モジュールで発生した熱を外部に放出するための複数の通気孔(図示せず)が設けられている。
なお、図5において、41はバックカバー38をシャーシ部材21に取付けるためのビス、42はバックカバー38にビスなどで取付けた把持部である。
ここで、前述したように、プラズマディスプレイ装置をはじめとするディジタル方式の表示装置では、表示デバイスによっては実際に表示しうる階調数(ビット数)に制約が発生する場合がある。例えば表示デバイスで処理可能な画像信号のビット数よりも大きいビット数の画像信号が入力された場合、単に下位(LSB側の)ビットを削除するだけでは、量子化ノイズが発生してしまう。そこで、誤差拡散処理などの擬似階調処理方式により入力画像データのビット数より少ないビット数で入力画像データのビット精度に近い階調を擬似的に表現し、画像表示を行っている。
ここで、擬似階調表示方式の一つである誤差拡散処理で、誤差成分をフレーム内の画素に拡散するフレーム内誤差拡散処理の代表的な処理方法として、R.W.Floyd,L.Steinbergによる誤差拡散処理方法が提案されている(R.W.Floyd, L.Steinberg, “Adaptive algorithm for spatial grey scale”, SID Int. Sym. Dig. Tech. Papers, 1975)。図7はこの方式の誤差の拡散処理の様子を示すもので、R.W.Floyd,L.Steinbergによる誤差拡散処理とは、以下に述べるようなフレーム内擬似階調処理である。すなわち、Pビットの原画像データからL(P>L)ビットの画像データを生成する場合に、ある画素に対応する画像データの下位(P−L)ビットを誤差データとし、図7に示すように、着目画素における誤差データE(m、n)にそれぞれ係数を乗じて、隣接する4つの周辺画素に対応する画像データに加算する。この処理を画像中全画素に対して行い、最終的にはPビットの入力映像信号に対し誤差を加算したPビット映像信号の上位Lビットを出力とするというものである。
また、時間方向に相関性を持たせることで、連続する複数フレームを用いて擬似的に階調表示を行う方法として、誤差データをフレーム内だけでなくフレーム間に拡散する誤差拡散処理方法が提案されている。たとえば、特許第2804686号公報に示されているような、Pビットの原画像データからL(P>L)ビットの画像表示データを生成する場合に、ある画素に対応する画像データの下位(P−L)ビットを誤差データとして、その一部を同一フレーム内の周辺画素に対応する画像データに加算することによりフレーム内擬似階調処理を行うとともに、誤差データの他の一部を同一画素に対応する他のフレームの画像データに加算することによりフレーム間擬似階調処理を行うという画像情報処理方法である。
また、上述した画像情報処理方法では、着目画素における誤差データの内、フレーム内誤差データが零で誤差データすべてを他のフレームに拡散する場合が存在し、フレーム単位でフリッカが発生する場合があり、このような課題に対するものとして、たとえば特開2005−106888号公報に示されるように、画素単位で誤差データをフレーム内拡散誤差データとフレーム間拡散誤差データとに分割した複数の分割パターンを用意し、画素単位でランダムに選択する手段を設け、ランダムに複数の分割パターンから選択し、拡散誤差成分を決定することで、フレーム単位でのフリッカを抑制するという誤差拡散処理方法がある。
しかしながら以上説明した誤差拡散処理方法には、それぞれ、欠点を有する。
例えば、R.W.Floyd,L.Steinbergによる誤差拡散処理方法によるフレーム内誤差拡散処理では、誤差拡散処理特有の模様(誤差拡散パターン)が発生する。以降、誤差拡散パターンと称す。この誤差拡散パターンは、特にノイズの無いディジタル映像信号に対する処理結果にて顕著に目立ち、また、特に表示デバイスで表現できる最下位ビットのみで擬似的に階調表示を行う暗部において、フレーム内誤差拡散処理特有の誤差拡散パターンは顕著に目立ち、暗部におけるS/N比に課題があった。
また、特許第2804686号公報において示されるような、Pビットの原画像データからL(P>L)ビットの画像表示データを生成する場合に、ある画素に対応する画像データの下位(P−L)ビットを誤差データとして、その一部を同一フレーム内の周辺画素に対応する画像データに加算することによりフレーム内擬似階調処理を行うとともに、誤差データの他の一部を同一画素に対応する他のフレームの画像データに加算することによりフレーム間擬似階調処理を行う、という画像情報処理方法では、フレーム単位で、フレーム内処理で拡散される誤差がなくかつフレーム間処理で拡散される誤差はある条件が存在し、この場合フレームごとに映像の輝度が周期的に変化することとなる。その結果、表示される映像にフリッカが発生してしまう。
また、特開2005−106888号公報に示されるような、画素単位で誤差データをフレーム内拡散誤差データとフレーム間拡散誤差データとに分割した複数の分割パターンを用意し、画素単位でランダムに選択する手段を設けることで、フレーム単位でのフリッカを抑制する、という方法では、画素単位でランダムにフレーム内拡散誤差データとフレーム間拡散誤差データを決定してはいるものの、例えば、着目画素の誤差データの内、誤差データの割り振りがフレーム内拡散誤差データが零で、誤差データすべてがフレーム間拡散誤差データとなるような場合に、フレーム内において部分的にフリッカが発生してしまう。そして、この部分的なフリッカにより、画像のS/N比が悪化してしまうという課題があった。
そこで本発明は、Pビットの原画像データの着目画素におけるQビットの誤差データの一部を同一フレーム内の周辺画素に拡散し、さらに前記誤差データの他の一部を、他のフレームの画素に拡散することによりLビット(P>L)で表される階調数以上の階調を擬似階調表示することのできる画像表示データを生成し画像表示する際に、Pビットの原画像データに周辺画素からの拡散誤差と他のフレームからの拡散誤差を加算したPビットの誤差付加データの下位Qビットを誤差データとし、Pビットの原画像データの下位Mビットで表現できる全値に対応した零以外の複数個の判定閾値を設け、着目画素毎にPビットの原画像データの下位Mビットの値に応じて決定する判定閾値とQビットの誤差データとを比較し、フレーム内拡散誤差データの値をAとし、フレーム間拡散誤差データの値をBとした場合、A≧Bの関係を満たすように、同一フレーム内の周辺画素に拡散するフレーム内拡散誤差データと他のフレームの画像データに拡散するフレーム間拡散誤差データの拡散誤差決定を行うことにより、フレーム単位およびフレーム内において部分的に発生するフリッカを抑制しつつS/N比の良いLビットの映像出力が可能な誤差拡散処理方法を実現するものである。
以下、本実施の形態による誤差拡散処理方法および誤差拡散処理装置の特徴部分について、詳細に説明する。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図8は本発明の一実施の形態による誤差拡散処理方法を説明するための回路ブロック図である。図に示すように、本発明の一実施の形態による誤差拡散処理方法を実現するための回路構成としては、例えば、誤差加算器110、閾値選択器120、誤差算出器130、フレーム内遅延器140、フレーム間遅延器150から構成されている。
フレーム内遅延器140は、誤差拡散処理で用いるフレーム内拡散誤差データE2を蓄積する遅延器で、蓄積したフレーム内拡散誤差データE2は、誤差加算器110に出力される。また、フレーム間遅延器150は、誤差拡散処理で用いるフレーム間拡散誤差データE1を蓄積する遅延器で、蓄積した誤差データは、誤差加算器110に出力される。ここで、フレーム間拡散誤差データE1とは、現フレームより後のフレームに時間的に拡散される誤差データであり、フレーム内誤差データE2とは、現フレーム内で空間的に拡散される誤差データを示す。
誤差加算器110は、Pビットの原画像データと、フレーム内遅延器140の出力であるフレーム内拡散誤差データE2とフレーム間遅延器150の出力であるフレーム間拡散誤差データE1とを加算し、Pビットの誤差付加データVD1を出力する。Pビットの誤差付加データVD1の下位(LSB側)Qビットを着目画素における誤差データEとして、誤差算出器130に出力する。また、Pビットの誤差付加データVD1の上位(MSB側)Lビットを本発明の実施の形態1における誤差拡散処理装置のLビット出力画像データVVとする。またこのとき入力である原画像のビット数P、誤差データのビット数Qと出力画像のビット数Lの関係はQ=P−Lとなっている。
閾値選択器120は、Pビットの原画像データの下位(LSB側)Mビットのデータである閾値選択信号Sが入力され、あらかじめ設定しておいたPビットの原画像データの下位(LSB側)Mビットで表現できる全値それぞれに対応する閾値から、着目画素におけるMビットの閾値選択信号Sの値の大きさに応じて閾値が選択され、拡散誤差算出に用いる閾値信号THとして誤差算出器130に出力する。誤差算出器130は、誤差加算器110からの出力である着目画素におけるQビットの誤差データEと閾値選択器120からの出力である閾値信号THとから、閾値信号THを基準にフレーム内の周辺画素に拡散するフレーム内拡散誤差データE2と他のフレームに拡散するフレーム間拡散誤差データE1を算出し、それぞれフレーム内拡散誤差データE2はフレーム内遅延器140にて蓄積され、他の画素に拡散される。また、フレーム間拡散誤差データE1はフレーム間遅延器150にて蓄積され、他のフレームの画素に拡散される。
図9を用いて本発明の実施の形態1における誤差拡散処理装置の誤差加算器110、フレーム内遅延器140、フレーム間遅延器150の構成および動作について説明する。ここでは、フレーム間拡散誤差データE1およびフレーム内拡散誤差データE2の算出処理については、それぞれフレーム間遅延器150とフレーム内遅延器140に蓄積されていることを前提に説明する。具体的な算出方法については後述する。図9は図8の誤差加算器110、フレーム内遅延器140およびフレーム間遅延器150それぞれの構成を示している。図9に示すように、誤差加算器110は、加算器111、加算器112および乗算器113〜116を含んでいる。また、フレーム内遅延器140は、遅延器141〜144を含んでいる。
フレーム間遅延器150に入力されたフレーム間誤差データE1は、フレーム間遅延器150にて、フレーム間誤差データE1を1フレームの期間(1V)遅延させて加算器112へ出力する。
また、フレーム内誤差データE2は、フレーム内遅延器140内の遅延器141〜144にそれぞれ入力される。遅延器141は、フレーム内誤差データE2を1画素の期間(1T)だけ遅延させて乗算器113へ出力する。遅延器142は、フレーム内誤差データE2を1ラインよりも1画素長い期間(1H+1T)だけ遅延させて乗算器114へ出力する。また、遅延器143は、フレーム内誤差データE2を1ラインの期間(1H)だけ遅延させて乗算器115へ出力する。遅延器144は、フレーム内誤差データE2を1ラインよりも1画素短い期間(1H−1T)だけ遅延させて乗算器116へ出力する。
乗算器113は、遅延器141から出力されたフレーム内誤差データE2に所定の係数K1を乗算して加算器112へ出力する。乗算器114は、遅延器142から出力されたフレーム内誤差データE2に所定の係数K2を乗算して加算器112へ出力する。乗算器115は、遅延器153から出力されたフレーム内誤差データE2に所定の係数K3を乗算して加算器112へ出力する。乗算器116は、遅延器144から出力されたフレーム内誤差データE2に所定の係数K4を乗算して加算器112へ出力する。
ここで、各係数K1,K2,K3,K4はK1+K2+K3+K4=1の関係を満たす適当な値に設定される。例えば、係数K1〜K4としては、それぞれ7/16、1/16、5/16および3/16が用いられる。
加算器112はフレーム間遅延器150の出力および乗算器113〜116の出力を加算し、その加算結果を最終誤差成分として加算器111へ出力する。
加算器111は、入力であるPビットの原画像データと加算器112から出力される最終誤差成分とを加算し、その加算結果をPビットの誤差付加データVD1として出力する。また、図9に示すように、誤差加算器110の出力であるPビットの誤差付加データVD1の下位Qビットを誤差データEとする。
なお、本発明の実施の形態1においては、誤差加算器110における係数K1、K2、K3、K4は、それぞれ7/16、1/16、5/16および3/16とすることを前提に説明を行うが、これに限定するものではなく、K1+K2+K3+K4=1の関係を満たす値で、本発明の効果を維持できるものであれば、いかなる組み合わせでも良い。
また、係数K1、K2、K3、K4は、画素単位またはフレーム単位で、それぞれ設定する値を切り替えて誤差拡散処理を行っても良い。
また、図10(a)は図9の誤差加算器110およびフレーム内遅延器140によるフレーム内誤差データE2の空間的な拡散を示しており、図10(b)は誤差加算器110およびフレーム間遅延器150によるフレーム間誤差データE1の時間的な拡散を示している。
本発明の実施の形態1における着目画素のフレーム内拡散誤差データE2は、着目画素に隣接する4つの画素に係数を乗じて拡散する。また、現フレームをNフレームとし、次フレームをN+1フレーム(Nは自然数)とすることを前提に説明する。具体的には図10(a)に示すように、同一フレーム内の注目画素Px0の同ラインの右側に隣接する画素Px1、下のラインにおいて右斜め下方の画素Px2、注目画素Px0の下方に隣接する画素Px3および左斜め下方の画素Px4の4画素に空間的に拡散される。また、画素Px1へは、フレーム内誤差データE2に係数K1を乗算した値が拡散され、画素Px2へは、フレーム内誤差データE2に係数K2を乗算した値が拡散され、画素Px3へは、フィールド内誤差データE2に係数K3を乗算した値が拡散され、画素Px4へは、フレーム内誤差E2に係数K4を乗算した値が拡散される。
また、本発明の実施の形態1においては、現フレームにて着目画素における誤差付加データEから算出されたフレーム間拡散誤差データE1は、次フレームの同じ画素位置に拡散する。図10(b)は現フレームの着目画素Px0に対して、次フレームの画素Px0にフレーム間誤差データE2が拡散される様子を示している。
図10(b)に示すように、注目画素Px0のフレーム間誤差データE1が次フレームにおいて、注目画素Px0と同一座標の画素Px6に時間的に拡散される。
なお、図10(a)に示すように、本発明の実施の形態1におけるフレーム内拡散誤差データE2に係数を乗じて加算する画素を、着目画素に隣接する4つの画素とした構成を例に説明したがこれに限定するものではなく、本発明の効果を十分維持できる構成であれば、上記の例である着目画素の周囲4つの場合を除く、その他複数の画素にフレーム内拡散誤差データを拡散する構成としても良い。
図11を用いて図8に示す閾値選択器120、誤差算出器130の構成およびそれぞれの動作説明と、フレーム間拡散誤差データE1とフレーム内拡散誤差データE2の拡散誤差量決定方法について説明する。図11は、図8の閾値選択器120、誤差算出器130の構成を示している。また、本発明の実施の形態1においては、閾値の設定は個々にIICなどの制御により任意の値を設定できる構造であることを前提とし、また着目画素Pビットの下位MビットをM=3ビット、Qビットの誤差データEのビット数をQ=3ビットとし、M=Q=3ビットの関係を前提に説明する。
まず、閾値選択器120の動作について説明する。図11に示すように閾値選択器120はセレクタ121で構成されており、閾値選択器120では、Pビット原画像データの下位M(=3)ビットで表現できる全値それぞれに対応する閾値をあらかじめ設定し、着目画素におけるPビットの下位M(=3)ビットの閾値選択信号Sの値に対応する閾値が選択され閾値信号THとして出力する。M=3ビットの場合、M=3ビットは0〜7の値を表現しうるため、th0〜th7の全8パターンの3ビットの閾値をあらかじめ設定することになる。このとき本発明においては、th0〜th7に設定する値は零以外の値とし、誤差データQが取りうる値で零を除く値を設定する。また、th0〜th7に設定する値は、例えばth0=th1となる関係、すなわち同じ値を設定してもよい。図12はM=3ビットにおける閾値選択信号Sに対する設定閾値の一例を示している。図12に示すように例えば着目画素におけるM(=3)ビットで表現できる閾値選択信号Sの値が2であった場合、セレクタ21により閾値th2が選択され閾値信号TH(3ビット)=5が出力される。値が決定した閾値信号TH(3ビット)は、誤差算出器130に入力される。このように、Pビットの原画像データの着目画素における下位M(=3)ビットの値に応じてフレーム間拡散誤差データE1とフレーム内拡散誤差データE2を算出するための閾値信号TH(3ビット)が決定される。
なお、本発明の実施の形態1においては、M=Q=3ビットとしたがこれに限定するものではなく、Mに関してはM≦Qの関係を満たすようにMの値を決定し、Mで表現しうる値のそれぞれに対応した、誤差データQビットで表現しうる範囲内で、零を除く任意の値を設定しても良い。また、Qに関しては出力画像のビット幅Lに応じた、零を省く任意の値を設定しても良い。
また、判定閾値は、図12に示すようにM=3ビットとした場合の例を基に、動作説明を行ったがこれに限定するものではなく、本発明の効果を維持できる範囲であれば、任意のMビットで表現しうる全値に対し、誤差データQビットで表現しうる範囲内で、零を除く値を設定しても良い。
次に誤差算出器130について説明する。図11に示すように、誤差算出器130は、比較器131、減算器132、セレクタ133、セレクタ134から構成される。誤差算出器130には、閾値選択器120からの閾値信号THとPビットの誤差付加データの下位Qビットの誤差データEが入力される。入力された誤差データEと閾値信号THは比較器131にて比較され閾値信号THよりも誤差データEが大きい場合、比較器131は値「1」を出力し、誤差データEは閾値信号TH以下の場合、比較器131は値「0」を出力する。減算器132は、誤差データEから閾値信号THを減ずる減算処理を行っており、セレクタ133は、誤差データEから閾値信号THを減じた演算結果と値「0」が入力され、比較器131の出力に従いフレーム間拡散誤差データE1を決定する。セレクタ134は、誤差データEと閾値信号THが入力され、比較器131の出力に従いフレーム内拡散誤差データE2を決定している。
例えば、比較器131の出力が「1」の場合、すなわち誤差データEが閾値信号THを超える場合は、セレクタ133は減算器132からの出力を選択し、フレーム間拡散誤差E1として出力し、セレクタ134は閾値信号THを選択し、フレーム内拡散誤差E2として出力する。また、比較器131の出力が「0」の場合、すなわち誤差データEが閾値信号TH以下の場合、セレクタ133は値「0」を選択し、フレーム間拡散誤差E1として出力し、セレクタ134は、誤差データEを選択し、フレーム内拡散誤差E2として出力する。
図13は、TH=4である場合における誤差データEとTHを比較し、フレーム内拡散誤差データE2とフレーム間拡散誤差データE1とを算出した結果の一例を示している。着目画素において誤差データEが、図13に示すように、0〜7の値を持って誤差算出器130に入力された場合、閾値選択器120からの閾値信号THが「4」だったとすると、誤差データEが「5」以上の場合、誤差データEから閾値信号THを減じた結果をフレーム間拡散データE1として出力し、閾値信号THの値をフレーム内拡散誤差データE2として、この場合4を出力する。誤差データEが「4」未満であった場合は、「0」をフレーム間拡散誤差データE1として出力し、誤差データEをフレーム内拡散誤差E2として出力する。
以上のように、本発明における実施の形態1においては、Qビットの誤差データEに対して設定する判定閾値に零以外の値を設定することにより、フレーム間拡散誤差データE1とフレーム内拡散誤差データE2との取りうる値において、E1≠0かつE2=0の組み合わせをなくすことができ、フレーム単位でのフリッカおよびフレーム内の部分的なフリッカの発生を抑制することができる。
また、本発明における実施の形態1においては、あらかじめ設定する判定閾値の値を決定するにあたり、フレーム間拡散誤差データE1とフレーム内拡散誤差データE2との関係を、常にE2≧E1となるように決定することで、誤差データをフレーム内だけでなくフレーム間に拡散する誤差拡散処理後の出力画像上において、さらにフリッカの発生を抑制し、誤差拡散特有の模様の視認性を抑制しS/N比を改善することができる。
なお、本発明における実施の形態1は、誤差データをフレーム内だけでなくフレーム間に拡散する誤差拡散処理方法に関するものであり、判定閾値をQビット誤差データEの取りうる最大値に設定した場合、フレーム間拡散誤差データE1は、常に零で誤差データEのすべてはフレーム内拡散誤差データE2となり、単なるフレーム内に誤差拡散する誤差拡散処理となってしまうため、判定閾値の値をQビット誤差データEのとりうる最大値に設定はしない。
なお、本発明の実施の形態1においては、図13に示すように閾値選択信号Sのビット幅M=3、誤差データEのビット幅Q=3、判定閾値TH=4の条件を例に、判定閾値を基に誤差データEからフレーム間拡散誤差データE1とフレーム内拡散誤差データE2の算出した結果を例に拡散誤差量決定方法について説明したが、本発明はこれに限定するものではなく、Qは表示デバイスの表示能力に応じて決定され、Mは誤差データQビットのデータに対して設定する閾値数に依存し、M≦Qの関係を満たす範囲で設定し、また、Mビットで表現できる値ごとに設定する閾値は、Qビットの誤差データがとりうる範囲内で、本発明の目的であるフリッカ低減効果が最大となる範囲内であればいかなる値を設定しても良い。
また、本発明の実施の形態1の閾値選択器120は、IICなど外部制御にて閾値の値を設定することを前提に説明したが、これに限定するものではなく、例えば、閾値選択器120をメモリに置き換え、Mビットで表現できる各値に対応した閾値を選択出力できるようなテーブルを作成し、閾値選択信号Sに応じて閾値信号THを出力する構成でも本発明による効果を十分に得ることができる。
以上のように、本実施の形態における誤差拡散処理装置は、いかなる入力画像においても、表示される映像において誤差拡散処理によるフレーム単位での周期的なフリッカおよびフレーム内で部分的なフリッカの発生と誤差拡散特有の模様の視認性を抑制することができる。