JP5076161B2 - 分離型磁気シールド装置 - Google Patents

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Description

本発明は、分離型磁気シールド装置に関するものであり、例えば、電子ビーム露光装置、電子顕微鏡の環境磁界対策、また、計測分野では人の脳磁界、心臓磁界計測、更には、動物生体磁気計測、更には、磁気ビーズを標識として用いるナノバイオ領域での計測などに利用することができる。
例えば、脳や心臓からの人の身体から発せられる磁界は、重要なリアルタイム生体情報で、しかも多くの情報を含んでいる。例えば心臓磁界を心磁計、例えばSQUID磁束計64チャンネルで検出すれば、心臓の電気生理学的機能を2次元マップすることが可能である。また、その刺激伝導系を伝って流れる電流ベクトルの時間的空間的情報など、心電図の波形分析による方法に比べ圧倒的に的確で多様な診断情報の獲得が可能である。
虚血性心疾患の典型である急性心筋梗塞は、日本人の3大死亡原因とされている。そして、その治療には高額なハイテクの医療技術が用いられているが、的確な診断が早期に可能であれば医療費の大幅な軽減は元より救命に大きな効果があるものと思われる。
心磁計の開発はまだ日も浅いこともあり、上記のような多くの可能性を秘めながら普及はあまり進んでいない。
この原因の1つは高価で不便なパーマロイでできた部屋型の磁気シールドルームにある。磁気遮蔽性能は脳磁界計測に要求されるほど高い必要はなく、ベッドごと患者を運び込んで計測できるような融通のきく磁気シールド装置が強く望まれている。
つまり、健常者はもちろん、寝たきりの患者からも、その身体から発せられる、例えば、心臓磁界のような生体磁気の計測に無理なく使用できる、部屋形ではない、分離可動式の高性能な磁気シールド装置の開発が希求されている。
そこで、本発明者は、円筒型で軽量高性能な磁気シールド装置の開発のために多くの要素技術を開発してきた。磁気シェイキング技術(非特許文献1)、シェイキング磁界の漏洩抑制(非特許文献2)、開口端から侵入する外部起因の磁気雑音の抑制(非特許文献3、4)、さらには炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を用いた積層構造による磁気シールドの一体成形(特許文献1)などである。
一般には、室内に部屋型シールド装置を後から設置すると床面の高さが異なり、ベッドごと被検者を装置内に運び込むことは容易ではない。
そこで、特許文献2に記載するように、円筒シールドを単純に2分割して可動式にすることが提案されている。図12に、左右に分割体を配置し、上下位置にて接合する構造とされる分割型シールド装置100の一例を示す。
本例によると、分割型シールド装置100は、左右対称に形成された2つの磁気シールド分割体101(101A、101B)の少なくとも一方を可動式とし、内部空間にベッドごと被検者を運び込むことが可能な構造とされる。
しかしながら、この構成だけでは磁気シールドの機能を維持できない。なぜならば、分割型シールド装置100では、SQUID磁束計200を設置することが必要であり、2つの分割体101A、101Bの間の接合部には空間が形成される。従って、この空間部を渡る磁束(即ち、接合部に直交する磁束)を連続的に通すことができず、そのために、磁気シールド効果が破綻するからである。
特願2005−80775号 特開2004−179550号公報 笹田一郎、微弱磁界計測用磁気シェイキング方式磁気シールドの研究、日本応用磁気学会誌、27、855−861(2003) Nakashima Y, Kimura T, Sasada I, Magnetic field leakage from a 45° angle magnetic shell and a reduction method for a high-performance magnetic shield, IEEE Trans. on Magn. 42(10)3545-3547(2006) 斎藤拓司、田代晋久、笹田一郎、パッシブシェル付マルチシェルシールドにおける能動補償効果、日本応用磁気学会誌、29、567−570(2005) 梅田祐介、田代晋久、笹田一郎、円筒形磁気シールドへのアクティブ・キャンセルの適用、電気学会A、123、(8)、790−796(2003)
本発明は、図12に示すような構成の分割型シールド装置が有する上記問題を解決せんとするものである。同時にまた、能動的に発生させた磁束によって外乱磁界がシールドするべき空間に入らないように偏向させ、一方、この能動的に発生させた磁界がシールドすべき空間に侵入するのを抑止するために磁性体を部分的に配置して構成される簡便且つ高性能な磁気シールドを提供せんとするものである。
一般に、磁束が一様に存在する場で磁束密度の低い空間を作り出す時に良く用いられる方法は、空間に導体を配置して磁束を追い出す向きに電流を流すことである。この方法で最適化した一例を図11(a)に示す。
本例では、4本の導体10(10a、10b、10c、10d)が所定の間隔にて、上下、左右対称位置に配置され、導体10a、10cは図面上、手前側から奥側へと、導体10b、10dは図面上、奥側から手前側へと、電流が流される。図11(a)にて、左側より右側へと通る水平磁束Hは、4本の導体10(10a、10b、10c、10d)で囲包された空間の中心部Sでは、磁束線の密度が薄くなっており、磁気シールドがなされていることが分かる。
一方、図11(b)には、4枚の磁性体板A、B、C、Dを、互いに隣接する位置では隙間Gを設けて矩形状に配置した構成を示す。この構成では、ほとんどの磁束が中心部を通過し、シールド効果が得られない。
しかし、図11(c)は、図11(a)の構成と図11(b)の構成を組み合わせた構成とされる。図11(c)に示すように、この構成では、4枚の磁性体板A、B、C、Dで囲包された空間の中心部Sに磁束線の密度の薄い場所が形成され、全く予想さえしない高いシールド比が得られていることが分かる。
これは、導体10a、10b、10c、10dを流れる電流で磁束を追い出すと共に、シールドしたい空間(中心部S)側には磁性体A、B、C、Dによって不要な磁束がはみ出さないように抑制したからである。
このように、電流と磁性体の関係を上手く設計することによって、電流が磁束を排除する効果を特定の方向に局在化できることが分かった。
つまり、図11(c)に示す構成では、上部に設けられた二つの導体10a、10cと磁性体板A、Cとの組合せ構造が磁束線Hを上方へ、また、下部に設けられた二つの導体10b、10dと磁性体板B、Dとの組合せ構造が磁束線Hを下方へと排除した結果、中央に広い磁気シールド空間Sが生み出されたのである。
本発明は、このような、電流の作用と磁性体の作用を上手く組み合わせることによって磁気シールドが極めて有効に達成されるといった本発明者の新規な知見に基づくものである。
本発明の目的は、磁気シールド空間への高いアクセス性を有し、磁気シールドが極めて有効に達成される分離型磁気シールド装置を提供することである。
上記目的は本発明に係る分離型磁気シールド装置にて達成される。要約すれば、本発明によれば、長手方向に延在する磁気シールド側壁本体を複数有し、前記複数の磁気シールド側壁本体は、互いに組み合わされて内部に水平方向に延びる長手軸線の回りに略円筒状の空間を形成し、少なくともいずれか一つの前記磁気シールド側壁本体は、残りの前記磁気シールド側壁本体に対して移動して離間可能とされる分離型磁気シールド装置において、
前記複数の磁気シールド側壁本体は、それぞれ、互いに組み合わされて内部に前記円筒状空間を形成する磁性体を備えた磁気シールド外側壁と、前記磁気シールド外側壁の長手方向両端縁部から前記円筒状空間に対して半径方向外方へと突出した磁性体を備えた接合部磁気シールド側壁と、を備え、
前記磁気シールド側壁本体の前記磁気シールド外側壁には、前記円筒状空間の前記長手軸線方向に沿って延在する導体を設け、電流を流し、
一側の前記磁気シールド側壁本体から他側の前記磁気シールド側壁本体へと水平方向に到来する外乱磁束を、前記導体の回りに発生する磁界により、上方向又は下方向へと偏向し、前記円筒状空間への磁束の流れ込みを阻止することを特徴とする分離型磁気シールド装置が提供される。
本発明の一実施態様によれば、隣り合った前記磁気シールド側壁本体の対向した両前記接合部磁気シールド側壁の間に複数の、磁性体を備えた仕切磁気シールド部材を配置する。
本発明の他の実施態様によれば、前記磁気シールド外側壁及び前記接合部磁気シールド側壁は、支持体に磁性体を設けることにより形成される。
本発明の他の実施態様によれば、前記仕切磁気シールド部材は、支持体に磁性体を設けることにより形成される。
本発明の他の実施態様によれば、各前記磁気シールド側壁本体に対して、前記長手方向にトロイダル状にコイルを巻回し、磁気シェイキング電流を流す。
本発明の他の実施態様によれば、各前記磁気シールド側壁本体の長手方向両端開口部に、磁気シールドフランジ部材を設け、前記磁気シールド側壁本体の長手方向両端開口部から前記円筒状空間への磁束の流れ込みを阻止する。
本発明の他の実施態様によれば、前記磁気シールドフランジ部材は、支持体に磁性体を設けることにより形成される。
本発明の他の実施態様によれば、前記磁気シールドフランジ部材にコイルを設置して電流を流し、前記磁気シールド側壁本体の長手方向両端開口部から前記円筒状空間への磁束の流れ込みを阻止する。
本発明の他の実施態様によれば、隣り合った前記磁気シールド側壁本体の対向配置された前記接合部磁気シールド側壁を囲包して、軸線方向に沿ってコイルを巻回して電流を流し、隣り合った前記磁気シールド側壁本体の対向配置された前記接合部磁気シールド側壁間に形成された空隙部から前記円筒状空間への磁束の流れ込みを阻止する。
本発明の他の実施態様によれば、前記円筒状空間は、2個、4個、6個、又は、8個の前記磁気シールド側壁本体にて囲包されることによって形成される。
本発明の他の実施態様によれば、前記円筒状空間を囲包する各前記磁気シールド側壁本体は、同じ寸法、形状とされる。
好ましい本発明の一態様によれば、第1磁気シールド側壁本体と第2磁気シールド側壁本体を有し、前記第1磁気シールド側壁本体と第2磁気シールド側壁本体は、対向配置された状態にて内部に水平方向に延びる長手軸線の回りに略円筒状の空間を形成し、少なくともいずれかの前記磁気シールド側壁本体は、他方の磁気シールド側壁本体に対して移動して離間可能とされる分離型磁気シールド装置において、
前記第1及び第2磁気シールド側壁本体は、それぞれ、対向配置された状態にて内部に前記円筒状空間を形成する磁性体を備えた湾曲磁気シールド外側壁と、前記湾曲磁気シールド外側壁の上下端縁部から垂直方向に突出し、対向配置された状態にて互いに離間して対面する磁性体を備えた接合部磁気シールド側壁と、を備え、
前記第1磁気シールド側壁本体の前記湾曲磁気シールド外側壁には、前記長手軸線方向に沿って延在する第1及び第2導体を設け、電流を流し、
前記第2磁気シールド側壁本体の前記湾曲磁気シールド外側壁には、前記長手軸線方向に沿って延在する第1及び第2導体を設け、電流を流し、
前記第1磁気シールド側壁本体から前記第2磁気シールド側壁本体へと水平方向に到来する外乱磁束を、前記第1及び第2導体の回りに発生する磁界により、上下方向へと偏向し、前記円筒状空間への磁束の流れ込みを阻止することを特徴とする分離型磁気シールド装置が提供される。
好ましくは、一実施態様によれば、前記第1磁気シールド側壁本体と第2磁気シールド側壁本体は、前記円筒状空間の前記長手軸線を通る垂直平面に対して左右対称形状とされる。
他の実施態様によれば、前記第1及び第2磁気シールド側壁本体の対向した両前記接合部磁気シールド側壁の間に複数の、磁性体を備えた仕切磁気シールド部材を配置する。
他の実施態様によれば、前記湾曲磁気シールド外側壁及び前記接合部磁気シールド側壁は、支持体に磁性体を設けることにより形成される。
他の実施態様によれば、前記仕切磁気シールド部材は、支持体に磁性体を設けることにより形成される。
他の実施態様によれば、前記第1及び第2磁気シールド側壁本体に対して、前記軸線方向にトロイダル状にコイルを巻回し、磁気シェイキング電流を流す。
他の実施態様によれば、前記第1及び第2磁気シールド側壁本体の軸線方向両端開口部に、磁気シールドフランジ部材を設け、前記第1及び第2磁気シールド側壁本体の軸線方向両端開口部から前記円筒状空間への磁束の流れ込みを阻止する。
他の実施態様によれば、前記磁気シールドフランジ部材は、支持体に磁性体を設けることにより形成される。
他の実施態様によれば、前記磁気シールドフランジ部材にコイルを設置して電流を流し、前記第1及び第2磁気シールド側壁本体の軸線方向両端開口部から前記円筒状空間への磁束の流れ込みを阻止する。
他の実施態様によれば、前記第1及び第2磁気シールド側壁本体の対向配置された前記接合部磁気シールド側壁を囲包して、軸線方向に沿ってコイルを巻回して電流を流し、前記第1及び第2磁気シールド側壁本体の対向配置された前記接合部磁気シールド側壁間に形成された空隙部から前記円筒状空間への磁束の流れ込みを阻止する。
本発明の分離型磁気シールド装置は、磁気シールド空間への高いアクセス性を有し、磁気シールドが極めて有効に達成される。
以下、本発明に係る分離型磁気シールド装置を図面に則して更に詳しく説明する。
実施例1
(分離型磁気シールド装置の全体構成)
図1(a)は、本発明に係る分離型磁気シールド装置1の一実施例を示す全体構成図である。図1(b)は、図1(a)に示す分離型磁気シールド装置1の全体構成を説明するための主要部のみを示す概略構成図である。
本発明の分離型磁気シールド装置1は、その全体構造の長手方向が水平となるように配置されており、長手方向に延在する磁気シールド側壁本体2を複数有する。図1(a)、(b)に示す本実施例によると、磁気シールド側壁本体2は、長手方向に延在した第1磁気シールド側壁本体2Aと第2磁気シールド側壁本体2Bを有する。
本実施例によると、第1磁気シールド側壁本体2Aと第2磁気シールド側壁本体2Bは、図示するように、対向配置された状態にて、内部に水平方向に延びる長手軸線Y−Yの回りに略円筒状の空間Sを形成する。
第1磁気シールド側壁本体2Aと第2磁気シールド側壁本体2Bは、これに限定されるものではないが、好ましくは、円筒状空間Sの長手軸線Y−Yを通る垂直平面Vpに対して左右対称形状とされる。又、好ましくは、第1磁気シールド側壁本体2Aと第2磁気シールド側壁本体2Bは、円筒状空間Sの長手軸線Y−Yを通る水平面Hpに対しても上下対称形状とされる。
本実施例のように、第1磁気シールド側壁本体2Aと第2磁気シールド側壁本体2Bを、左右及び上下対称形状とした場合には、詳しくは、後述するように、分離型磁気シールド装置1の円筒形状をした空間部Sの略中央部に磁束線の密度の最も薄い場所が形成される。また、この場合には、磁気勾配が実質的にゼロとなる空間を提供することができる。
本実施例にて、分離型磁気シールド装置1は、図12を参照して説明した分離型磁気シールド装置100と同様に、第1磁気シールド側壁本体2Aと第2磁気シールド側壁本体2Bのいずれか、或いは、両磁気シールド側壁本体2A、2Bとも可動とすることができる。本実施例では、第1磁気シールド側壁本体2Aが可動とされ、第2磁気シールド側壁本体2Bが固定とされる。ただ、これに限定されるものではなく、その逆の構成としても良い。
また、離間態様としては、例えば、可動の磁気シールド側壁本体2Aは、図1(a)に一点鎖線にて示すように、長手方向一端を中心として揺動しても良く、或いは、図1(b)に一点鎖線にて図示するように、他方の磁気シールド側壁本体2Bに対して水平方向に平行に移動する構成とすることもできる。
図2には、分離型磁気シールド装置1の内部を示すために、第1磁気シールド側壁本体2Aを除去した状態を示す。
図1及び図2に示すように、本実施例では、分離型磁気シールド装置1の長手方向略中央部に位置して、装置上方から略円筒形状をした心磁計200、例えばSQUID磁束計が分離型磁気シールド装置1の内部空間Sへと挿入して取り付けられる。また、心磁計200の下方端から所定の距離離間して、被検者を載置するためのベッド201が設けられる。ベッド201は、固定の第2磁気シールド側壁本体2Bに固定しても良い。場合によっては、分離型磁気シールド装置1自体には固定のベッドを設けずに、被検者を載せたベッドを分離型磁気シールド装置1内へと運び込む構成とすることもできる。本実施例の分離型磁気シールド装置1によれば、被検者、或いは、被検者とベッドは、第1磁気シールド側壁本体2Aと第2磁気シールド側壁本体2Bとを離間した状態にて分離型磁気シールド装置1の内へと運び込むことができ、極めて好便である。
(磁気シールド側壁本体)
次に、磁気シールド側壁本体2(2A、2B)について説明する。
上述のように、第1磁気シールド側壁本体2Aと第2磁気シールド側壁本体2Bは、本実施例では、好ましくは、左右及び上下対称形状とされるので、以下の説明では、第1及び第2磁気シールド側壁本体2A、2Bを、特に、区別することを必要としない場合には、磁気シールド側壁本体2と総称して説明する。
図1及び図2を参照すると、磁気シールド側壁本体2は、分離型磁気シールド装置1の円筒状空間Sを形成するための、本実施例では湾曲状とされる磁気シールド外側壁3と、この湾曲磁気シールド外側壁3の上下端縁部より上方及び下方へと垂直方向に突出した平板状の接合部磁気シールド側壁4(4a、4b)とを有する。上述したように、第1及び第2磁気シールド側壁本体2A、2Bは、左右及び上下対称形状とされるので、接合部磁気シールド側壁4a、4bも又、同じ寸法形状とされる。
なお、本明細書にて便宜上、湾曲磁気シールド外側壁3にて、凹面とされる内周面側を内側と呼び、凸面とされる外周面側を外側と呼ぶ。
上記構成の第1磁気シールド側壁本体2A及び第2磁気シールド側壁本体2Bを互いに対向させて配置した場合、両湾曲磁気シールド外側壁3、3が対向配置されて、内部に、水平方向に延在する長手軸線Y−Yの回りに略円筒状の空間部Sを形成する。また、このとき、湾曲磁気シールド外側壁3の上方位置に設けられた両接合磁気シールド側壁4(4a、4a)は、所定の距離(w)(図4参照)だけ離間して配置される。
従って、心磁計200は、分離型磁気シールド装置1の長手方向略中央部に形成される両接合部磁気シールド側壁4a、4aの空隙部から分離型磁気シールド装置1の内部へと挿入して取り付けられる。
なお、上方に位置した両接合部磁気シールド側壁4a、4aの空隙部は、詳しくは後述するように狭い方が良く、そのために、図1及び図4を参照すると理解されるように、両接合部磁気シールド側壁4a、4aの空隙部には分離型磁気シールド装置1の長手方向に延在して、接合部磁気シールド側壁4a、4aと略同じ高さ位置に仕切磁気シールド部材5が複数枚、本実施例では、2枚が等間隔(w1)にて配置される。この仕切磁気シールド部材を設けることにより、Y−Y軸(図1(b)参照)方向から来る外乱磁界が、円筒状空間へと流れ込むのを阻止する働きがある。
ただ、心磁計200を分離型磁気シールド装置1に取り付けるために、図1、図4をも参照するとより良く理解されるように、心磁計設置位置においては、仕切磁気シールド部材5は、コ字状に接合部磁気シールド側壁4a側へと湾曲して作製され、心磁計200のための装着開口8を形成する。
又、本実施例では、上述したように、分離型磁気シールド装置1の円筒形状をした空間部Sの略中央部に磁束線の密度の最も薄い場所が形成されるように、又、磁気勾配が実質的にゼロとなるように、左右方向及び上下方向において対称形状とされる。
従って、本実施例では、図1及び図2に示すように、心磁計200を設置することのない、下方に配置された両接合部磁気シールド側壁4b、4bの空隙部にも、分離型磁気シールド装置1の長手方向に延在して、接合部磁気シールド側壁4b、4bと略同じ高さ位置に仕切磁気シールド部材5が複数枚、本実施例では、2枚が等間隔(w1)にて配置される。また、上方の両接合部磁気シールド側壁4a、4aの空隙部の構造と同様に、心磁計設置位置に対応して、仕切磁気シールド部材5は、コ字状に湾曲して開口部8aが作製される。
変更実施例
本実施例の変更実施例として、図3に示すように、第1及び第2磁気シールド側壁本体2の軸線方向両端開口部に、磁気シールドフランジ部材6を設けることができる。つまり、湾曲磁気シールド外側壁3の長手方向両端に所定幅のフランジ部材6が円筒状空間部Sへと半径方向へと突出して設けられる。
このフランジ部材6は、磁気シールド側壁本体2を補強する機能をも有しているが、特に、フランジ部材6を設けることにより、Y−Y軸(図1(b)参照)方向から来る外乱磁界が、円筒状空間Sへと流れ込むのを阻止する機能を有している。また、後述するように、このフランジ部材6にコイル41を巻回して電流を流すことが可能となり、更に、Y−Y軸方向から来る外乱磁界を抑制することができる。
(磁気シールド側壁本体の具体的構造)
次に、磁気シールド側壁本体2の具体的構造について説明する。
図5(a)に示すように、湾曲磁気シールド外側壁3及び上、下接合部磁気シールド側壁4a、4bにて構成される磁気シールド側壁本体2(2A、2B)は、湾曲磁気シールド外側壁3及び上、下接合部磁気シールド側壁4(4a、4b)と同形状をした支持体21と、この支持体21の表面(外面及び/又は内面)に配置された磁性体22にて構成することができる。図5(a)には、外面にのみ層状に磁性体22が配置され、磁性体層を形成している。即ち、支持体21は、湾曲した湾曲部材21aと、湾曲部材21aより上下に垂直方向に突出した接合部材21bとを備えており、湾曲部材21aの外周面及び接合部材21bの外面に、磁性体層22が配置される。
仕切磁気シールド部材5もまた、図5(b)に示すように、部材5と同形状をした支持体24の表面(内面及び/又は外面)に磁性体22を配置することにより形成される。本実施例では、磁性体層22が両面に設けられる。
磁気シールドフランジ部材6もまた、図5(c)に示すように、部材6と同形状をした支持体21cと、この支持体21cの表面(外面及び/又は内面)に配置された磁性体22にて構成することができる。図5(c)には、外面にのみ層状に磁性体22が配置され、磁性体層を形成している。また、支持体21cは、上記湾曲磁気シールド外側壁3の湾曲部材支持体21aと一体とされる。
支持体21、24としては、好ましくは、紙、樹脂、FRP、非磁性金属、その他の種々の材料が使用可能である。本実施例では、炭素繊維強化樹脂複合材(CFRP)にて作製した。
また、磁性体22としては、パーマロイのような磁性材料を使用することが可能であるが、軽量化のために、磁性体22としては、Co系アモルファス磁性薄帯、例えば、メットグラス2705Mが好適に使用される。
磁性体22を構成する磁性体層は、上述のような磁性薄帯を層状に積層して構成するのが好ましい。磁性体層22としては、詳しくは後述するが、後述の構成と同様に、好ましくは、20μm以上、500μm以下とされる磁性体層を、複数層積層した積層構造とされる。
変更実施例
また、図6(a)に示すような積層構造とすることにより、上方から来る外乱磁界が、両接合部磁気シールド側壁4a、4aの空隙部を通り円筒状空間Sへと流れ込むのを効率よく阻止することができる。
なお、図6(a)には、第1及び第2磁気シールド側壁本体2A、2Bの上方部のみが示されており、下方部は省略されている。しかし、下方部においても同様の構造とすることができ、この場合には、下方から来る外乱磁界が、両接合部磁気シールド側壁4b、4bの空隙部を通り円筒状空間Sへと流れ込むのを効率よく阻止することができる。
図6(a)を参照して、第1及び第2磁気シールド側壁本体2A、2Bの上方部の積層構造についてのみ説明する。本実施例によれば、湾曲磁気シールド外側壁3及び上、下接合部磁気シールド側壁4(4a、4a)と同形状をした支持体21の表面、本実施例では外面に層状に磁性体22が配置され、磁性体層を形成している。
本実施例によると、磁性体22は、支持体21に近接して配置された内側磁性体層22Aと、この内側磁性体層22Aの外側に、例えば、エポキシ樹脂接着剤25などにて接着された外側磁性体層22Bとにて構成される。内側磁性体層22A及び外側磁性体層22B自体も、例えば20μm厚の磁性薄帯を10層〜30層、或いは、作製される側壁本体のサイズによっては、更にそれ以上の層数を積層し、更にまた、これら積層体を二重、三重に重ね合わせて構成することができる。
更に説明すると、本実施例では、内側磁性体層22Aは、支持体21の湾曲部材21aに固定配置された磁性体層22Aaと、磁性体層Aaから、支持体の接合部材21bに対して上方途中まで延在して固定配置された磁性体層22Abとにて形成される。
一方、外側磁性体層22Bは、内側磁性体層22Aの磁性体層22Aaに接着剤25にて固定配置された磁性体層22Baと、磁性体層22Baから上方へと延在し、内側磁性体層22Aの磁性体層22Abに接着剤25にて固定配置された磁性体層22Bbと、内側磁性体層22Aの磁性体層22Abが固定配置されていない更に上方の接合部材21b部分に固定配置された磁性体層22Bcとにて形成される。
従って、上方から両接合部磁気シールド側壁4a、4aの空隙部を通り円筒状空間Sへと流れ込む外乱磁界は、先ず、接合磁気シールド側壁4aに形成された外側磁性体層22Bの磁性体層22Bcにて引き付けられ、磁性体層22Bbを介して磁性体層Baへと、つまり、外側磁性体層22Bを流れ、円筒状空間Sへの流れ込みが阻止される。更に、円筒状空間Sへと流れ込む外乱磁界は、接合磁気シールド側壁4aに形成された内側磁性体層22Aの磁性体層22Abにて引き付けられ、磁性体層22Aaへと、つまり、内側磁性体層22Aへと流れ、円筒状空間Sへの流れ込みが阻止される。
上述のように、第1及び第2磁気シールド側壁本体2A、2Bの下方部においても同様の構造とすることができ、この場合には、下方から来る外乱磁界が、両接合部磁気シールド側壁4b、4bの空隙部を通り円筒状空間Sへと流れ込むのを効率よく阻止することができる。
変更実施例
また、他の変更実施例によると、更に好ましくは、従来技術にて記載した、特許文献1に記載するように、磁気シールド側壁本体2の少なくとも湾曲磁気シールド外側壁3に磁気シェイキング電流を流すことができる。
この場合には、磁性体22としては、特に、角形磁化特性を有する磁性材料が使用可能である。また、このような磁性体としては、上述のCo系アモルファス磁性薄帯、例えば、メットグラス2705Mが好適に使用される。
この実施態様では、特に、図6(b)に示すように、磁性薄帯、即ち、例えば幅50.8mm、厚み0.02mmのメットグラス2705Mを、支持体21における湾曲部材21aの内周面及び外周面、更には、接合部材21bの内面及び外面に全表面を覆うようにして連続的に巻き付けて配設する。これにより、支持体21の回りを囲包して、層状の磁性体22、即ち、磁性体層22a、22bが形成される。磁性体層22の厚さとしては、1μm以上とされる。ただ、通常は、重量及びコストの観点から2mm以下とされる。また、磁性体層22としては、好ましくは、20μm以上、500μm以下とされる磁性体層を、複数層積層した積層構造とされる。
更に、図6(b)に示すように、磁気シェイキングのためのコイル30が巻回される。コイル30は、磁性体層22の少なくとも一部を巻回するようにしてトロイダル状に巻回される。
つまり、コイル線材が、外側の磁性体層を巻回するようにし、即ち、磁性体層22の外層22aと支持体21を軸線方向に取り巻くようにして巻回すればよい。コイルの巻回方法は、これに限定されるものではなく、例えば、コイル線材が、内側の磁性体層22bを巻回するようにして、即ち、磁性体層22の内層22bと支持体21とを軸線方向に取り巻くようにして巻回することもできる。
各磁気シールド側壁本体2のシェイキング磁界発生用コイル30には、磁性体層22に、例えば商用周波数の50Hz以上、10KHz以下のシェイキング時間を与えるように、シェイキング電流が供給される。
(分離型磁気シールド装置の具体的寸法)
次に、本実施例にて作製した分離型磁気シールド装置1の具体的寸法は、次の通りであった。
磁気シールド側壁本体2は、支持体21として厚さ5mmの炭素繊維強化樹脂複合材(CFRP)を使用し、幅50.8mm、厚み0.02mmのメットグラス2705Mを、支持体21における湾曲部材21aの内周面及び外周面、更には、接合部材21bの内面及び外面に、支持体21の全表面を覆うようにして連続的に巻き付けた。
具体例
作製した磁気シールド側壁本体2の具体的寸法は、次の通りであった。図4を参照して、
湾曲磁気シールド外側壁3の内径(D) 60cm
湾曲磁気シールド外側壁3の軸線方向長さ(L) 180cm
接合磁気シールド側壁4の幅(H1) 20cm
接合磁気シールド側壁4、4の離間間隔(W) 30cm
仕切磁気シールド部材5の幅(H2) 20cm
仕切磁気シールド部材5の設置間隔(w1) 10cm
仕切磁気シールド部材5の開口8の幅(w2) 28cm
仕切磁気シールド部材5の開口8の幅(w3) 28cm
(磁気シールド)
次に、本発明の特徴をなす分離型磁気シールド装置1における磁気シールドについて説明する。本発明は、先に図11(c)を参照して説明したシールド作用の原理を利用するものである。
本発明によると、図7(a)に示すように、上記構成の分離型磁気シールド装置1において、第1及び第2磁気シールド側壁本体2A、2Bの湾曲磁気シールド外側壁3、3の外周面(必要に応じて内周面)に導体10(10a、10b、10c、10d)が配置される。また、本実施例によると、導体10a、10b及び導体10c、10dは、接続されてコイル状とされ、電源50(50A、50B)により所定の電流iが供給される。
本実施例では、導体10a、10b及び導体10c、10dは、電源50(50A、50B)より同じ大きさの電流iが流されるが、必要に応じて変えることも可能である。つまり、導体10a、10b、10c、10dをそれぞれ異なる電源に接続し、通電電流を最適値に調整することができる。
なお、本実施例では、4本の導体10a、10b、10c、10dが所定の間隔にて、上下、左右対称位置に配置され、導体10a、10cは図面上、手前側から奥側へと、導体10b、10dは図面上、奥側から手前側へと、電流が流される。
また、本実施例では、導体a、b、及び、導体c、dは、それぞれ、20turnのコイルにて構成され、各コイルには、全体で10〜20Aの電流を流し、良好な結果を得ることができた。
つまり、本実施例によると、図8をも参照すると、第1磁気シールド側壁本体2Aの湾曲磁気シールド外側壁3には、円筒状空間Sの長手軸線Y−Yを通る水平面Hpに対して上下対称位置に、長手軸線方向に沿って延在する第1及び第2導体10a、10bを設ける。同様に、第2磁気シールド側壁本体2Bの湾曲磁気シールド外側壁3にも、円筒状空間Sの長手軸線Y−Yを通る水平面Hpに対して上下対称位置に、長手軸線方向に沿って延在する第1及び第2導体10c、10dを設ける。
そして、導体10a、10cに同じ方向に電流を流し、導体10b、10dに同じ方向に電流を流す。このとき、導体10a、10cに流れる電流と、導体10b、10dに流れる電流は方向が異なる。
これによって、第1磁気シールド側壁本体2Aから第2磁気シールド側壁本体2Bへと水平方向に形成される磁束(H)を、第1及び第2導体10a、10b、及び、導体10c、10dの回りに発生する磁界により、上下方向へと偏向し、円筒状空間Sへの磁束の流れ込みを阻止する。
(電流の決定方法)
ここで、図7(b)を参照して、電流の決定方法の一例を説明する。
本実施例にて、X軸は、水平方向に延在するシールド側壁に垂直方向であり、Y軸は、円筒軸方向(即ち、図1(b)における円筒状空間Sの長手軸線Y−Y方向)であり、Z軸は、鉛直方向であるとする。
磁界センサ300としては、フラックスゲート直交磁界センサなどとすることができ、本実施例では、X、Y、Z軸の直交3軸に組合わさった磁界センサ、即ち、3軸磁界センサを用いた。
また、本実施例では、4個の磁界センサ300(300A、300B、300C、300D)を、分離型磁気シールド装置1の接合部磁気シールド側壁4a、4aにて形成される上方空隙部に、本実施例では、長手方向両端部近傍に、2箇所、そして、接合部磁気シールド側壁4b、4bにて形成される下方空隙部にも同様に2箇所に設置する。磁界センサ300は、場合によっては、上方及び下方の適当な2箇所とすることも可能である。
各磁界センサ300にて測定された各成分の和を取って平均する。例えば、各磁界センサ300のX軸方向の値、x1、x2、x3、x4の平均値から側面導体(コイル)10a、10b、10c、10dの電流を決定することができる。各磁界センサ300の測定値に基づき、例えばPID制御系などを用いて各導体の電流を制御する技術は、当業者には周知であるので、これ以上の説明は省略する。
(磁気シールド効果)
図8は、導体10a、10b、10c、10dに通電した場合の、本発明による磁気シールド効果を示す磁束線図である。
導体10a、10b、10c、10dの位置は、適宜、それぞれ分離型磁気シールド装置1の構成により、最適の位置が実験等により決定される。通常、図8に示すように、分離型磁気シールド装置1の長手方向軸線中心Otを中心として、水平面Hpに対して30°〜60°、通常45°の位置が好ましい。ただ、これに限定されるものではない。
上記構成とすることにより、図8にて理解されるように、図8にて左から右へやってくる磁束(H)は、導体10a、10b、及び、導体10c、10dにより発生する磁界により上下方向へと偏向され、湾曲磁気シールド外側壁3を通り抜けることはない。本発明の構成によって、シールド効果が達成されている。
一方、先に説明したように、導体10a、10b、10c、10dを設置しない構成では、図9に示すように、磁束Hは、左から右へ通過し、シールド効果が得られない。
本実施例に従った構成の分離型磁気シールド装置1によれば、比透磁率10000(図9の構成においても同じ)、磁性体22の厚さ2mm、中心部の直径(D)60cm、上下の接合部磁気シールド側壁4(4a、4b)の幅(H1)20cm(この実施例では、仕切磁気シールド部材5は設けていない)、接合部磁気シールド側壁4(4a、4b)の離隔距離30cmでシールド比1000以上が達成できた。
更に、磁気シェイキングを行う構成によれば比透磁率は500,000に達するので、これらの数値は極めて現実的である。
図8に示す本実施例にて、外部遠方磁場(H)は1Gで、接合部磁気シールド側壁4(4a、4b)の空隙部Gは0.1G、円筒状空間Sにおいては、1mG以下であった。
また、図8にて、円筒状空間Sの軸線方向(即ち、円筒軸方向(紙面垂直))の磁束、及び、上下方向からの磁束、に対しては、上記非特許文献2に記載する技術を応用することにより、つまり、図3に示すように、フランジ部材6にコイル41を設置し、また、接合部磁気シールド側壁4、4を取り巻いてコイル42を設置して、逆位相磁界により容易に能動補償できる。なお、第1及び第2磁気シールド側壁本体2A、2Bを分離可能とするために、各コイル41、42は、分離自在に接続される。
本発明は、強磁性体の磁束を引き込む作用と、電流の磁束を反発する作用とを効果的に組み合わせて、磁性体が連続していなくとも不連続点で磁束を強制的に迂回させ、高い磁気シールド性能を実現することができる。
従って、本発明の高性能な分離型磁気シールド装置は、シールド空間への高いアクセス性を提供し、広い分野で応用が見込める。
つまり、上述したように、例えば、産業界では電子ビーム露光装置、大型では電子顕微鏡の環境磁界対策、計測分野では人の脳磁界、心臓磁界計測、更には、動物生体磁気計測、更には、磁気ビーズを標識として用いるナノバイオ領域での計測などに利用することができる。
その他の実施例
上記実施例1では、分離型磁気シールド装置1は、その全体構造の長手方向が水平となるように配置されており、磁気シールド側壁本体2は、長手方向に延在した第1磁気シールド側壁本体2Aと第2磁気シールド側壁本体2Bを有する2分割体にて構成されるものとして説明した。
しかしながら、本発明の分離型磁気シールド装置1は、例えば、装置が大型化した場合、或いは、側部に開口部が形成されることが望まれる場合などには、例えば、図10(a)、(b)、(c)に示すように、4個、6個又は8個、更には、それ以上の個数の磁気シールド側壁本体2にて構成することも可能である。
つまり、本発明の分離型磁気シールド装置1は、長手方向に延在する磁気シールド側壁本体を複数有し、複数の磁気シールド側壁本体は、互いに組み合わされて内部に水平方向に延びる長手軸線の回りに略円筒状の空間を形成し、少なくともいずれか一つのの磁気シールド側壁本体は、残りの磁気シールド側壁本体に対して移動して離間可能に構成することができる。
図10(a)に示す分離型磁気シールド装置1においては、4個の磁気シールド側壁本体2(2A、2B、2C、2D)を有し、4個の磁気シールド側壁本体2は、互いに組み合わされて内部に水平方向に延びる長手軸線の回りに略円筒状の空間Sを形成している。
また、図10(b)に示す分離型磁気シールド装置1においては、6個の磁気シールド側壁本体2(2A、2B、2C、2D、2E、2F)を有し、6個の磁気シールド側壁本体2は、互いに組み合わされて内部に水平方向に延びる長手軸線の回りに略円筒状の空間Sを形成している。
更に、図10(c)に示す分離型磁気シールド装置1においては、8個の磁気シールド側壁本体2(2A、2B、2C、2D、2E、2F、2G、2H)を有し、8個の磁気シールド側壁本体2は、互いに組み合わされて内部に水平方向に延びる長手軸線の回りに略円筒状の空間Sを形成している。
これらの実施例においても、各磁気シールド側壁本体2は、実施例1で説明した磁気シールド側壁本体2と同様の構成とされ、それぞれ、互いに組み合わされて内部に円筒状空間Sを形成する磁性体を備えた磁気シールド外側壁3と、磁気シールド外側壁3の長手方向両端縁部から円筒状空間Sに対して半径方向外方へと突出した磁性体を備えた接合部磁気シールド側壁4(4a、4b)と、を備えている。
更に、本実施例においても、実施例1と同様に、磁気シールド側壁本体2の磁気シールド外側壁3には、図10(a)の実施例では、円筒状空間Sの長手軸線方向に沿って延在する導体10(10a〜10d)を設け、図10(b)の実施例では、円筒状空間Sの長手軸線方向に沿って延在する導体10(10a〜10f)を設け、図10(c)の実施例では、円筒状空間Sの長手軸線方向に沿って延在する導体10(10a〜10h)を設け、これらの導体には所定の方向に電流を流し、一側の磁気シールド側壁本体から他側の磁気シールド側壁本体へと水平方向に到来する外乱磁束を、導体の回りに発生する磁界により、上方向又は下方向へと偏向し、円筒状空間Sへの磁束の流れ込みを阻止する。
一例を挙げれば、図10(a)の実施例では、導体10a、10cには、図面上手前側から奥側へと、また、導体10b、10dには、奥側から手前側へと電流を流す。図10(b)の実施例では、導体10a、10dには、図面上手前側から奥側へと、また、導体10c、10fには、奥側から手前側へと電流を流す。また、導体10b、10eには、外乱磁界の方向により、適宜決定することができる。外乱磁界が完全に水平である場合には、電流の流れを停止することも可能である。
図10(c)の実施例では、導体10a、10b、10e、10fには、図面上手前側から奥側へと、また、導体10c、10d、10g、10hには、奥側から手前側へと電流を流す。
上記電流の方向は、一例であり、装置の設置環境により適宜変更することができる。
また、上記各実施例にて、隣り合った磁気シールド側壁本体2の対向した両接合部磁気シールド側壁4(4a、4a;4b、4b)の間には、実施例1の場合と同様に、複数の、磁性体を備えた仕切磁気シールド部材5を配置する。
磁気シールド外側壁3、接合部磁気シールド側壁4、及び、仕切磁気シールド部材5は、実施例1の場合と同様に、支持体に磁性体を設けることにより形成される。
又、本実施例においても、実施例1と同様に、各磁気シールド側壁本体2の構造を図6(a)に示す構造とすることもでき、又、各磁気シールド側壁本体2に対しては、図6(b)に示すように、長手方向にトロイダル状にコイルを巻回し、磁気シェイキング電流を流すことも可能である。
図示してはいないが、本実施例においても、実施例1と同様に、磁気シールド側壁本体2の長手方向両端開口部に、図5に示す磁気シールドフランジ部材6を設け、更に、このフランジ部材にコイルを設置して電流を流し、磁気シールド側壁本体の長手方向両端開口部から円筒状空間への磁束の流れ込みを阻止することができる。
更には、実施例1の場合と同様に、図3に示すように、隣り合った磁気シールド側壁本体2の対向配置された接合部磁気シールド側壁4を囲包して、軸線方向に沿ってコイルを巻回して電流を流し、隣り合った磁気シールド側壁本体2の対向配置された接合部磁気シールド側壁4(4a、4a;4b、4b)間に形成された空隙部から円筒状空間Sへの磁束の流れ込みを阻止することができる。
円筒状空間Sを囲包する各磁気シールド側壁本体2は、同じ寸法、形状とし、実施例1にて説明したように、分離型磁気シールド装置1の円筒形状をした空間部Sの略中央部に磁束線の密度の最も薄く、かつ、磁気勾配が実質的にゼロとなる空間を提供することができる。
上記実施例1及びその他の実施例では、磁気シールド側壁本体2、即ち、磁気シールド外側壁3は、湾曲した形状として説明したが、場合によっては、直線状(即ち、平板状)とすることもできる。
図1(a)は、本発明に係る分離型磁気シールド装置の一実施例の全体構成図であり、図1(b)は、分離型磁気シールド装置の概略構成図である。 図1の分離型磁気シールド装置にて一方の磁気シールド側壁本体を除去した状態を示す図である。 本発明に係る分離型磁気シールド装置の他の実施例の全体構成図である。 本発明に係る分離型磁気シールド装置の具体的構成を説明するための概略構成図である。 図5(a)は、磁気シールド側壁本体の構成を説明するための図であり、図5(b)は、仕切磁気シールド部材の構成を説明するための図であり、図5(c)は、磁気シールドフランジ部材の構成を説明するための図である。 図6(a)、(b)は、磁気シールド側壁本体の他の実施例の構成を説明するための図である。 図7(a)は、本発明に係る分離型磁気シールド装置の特徴部の構成を説明するための一実施例の全体構成図であり、図7(b)は、導体に流す電流の決定方法を説明するための図である。 本発明の構成に従った場合の磁束線図である。 本発明の構成を採用しない場合の磁束線図である。 図10(a)、(b)、(c)は、本発明に係る分離型磁気シールド装置の他の実施例を説明する全体構成図である。 図11(a)〜(c)は、本発明の原理を説明するための磁束線図である。 従来の分離型磁気シールド装置の一例を示す全体構成図である。
符号の説明
1 分離型磁気シールド装置
2(2A〜2H) 磁気シールド側壁本体
3 磁気シールド外側壁
4(4a、4b) 接合部磁気シールド側壁
5 仕切磁気シールド部材
6 フランジ部材
8、8a 装着開口
10(10a〜10h) 導体
21 支持体
21a 湾曲部材
21b 接合部材
22 磁性体(磁性体層)
200 心磁計
201 ベッド
300 磁界センサ

Claims (21)

  1. 長手方向に延在する磁気シールド側壁本体を複数有し、前記複数の磁気シールド側壁本体は、互いに組み合わされて内部に水平方向に延びる長手軸線の回りに略円筒状の空間を形成し、少なくともいずれか一つの前記磁気シールド側壁本体は、残りの前記磁気シールド側壁本体に対して移動して離間可能とされる分離型磁気シールド装置において、
    前記複数の磁気シールド側壁本体は、それぞれ、互いに組み合わされて内部に前記円筒状空間を形成する磁性体を備えた磁気シールド外側壁と、前記磁気シールド外側壁の長手方向両端縁部から前記円筒状空間に対して半径方向外方へと突出した磁性体を備えた接合部磁気シールド側壁と、を備え、
    前記磁気シールド側壁本体の前記磁気シールド外側壁には、前記円筒状空間の前記長手軸線方向に沿って延在する導体を設け、電流を流し、
    一側の前記磁気シールド側壁本体から他側の前記磁気シールド側壁本体へと水平方向に到来する外乱磁束を、前記導体の回りに発生する磁界により、上方向又は下方向へと偏向し、前記円筒状空間への磁束の流れ込みを阻止することを特徴とする分離型磁気シールド装置。
  2. 隣り合った前記磁気シールド側壁本体の対向した両前記接合部磁気シールド側壁の間に複数の、磁性体を備えた仕切磁気シールド部材を配置することを特徴とする請求項1の分離型磁気シールド装置。
  3. 前記磁気シールド外側壁及び前記接合部磁気シールド側壁は、支持体に磁性体を設けることにより形成されることを特徴とする請求項1の分離型磁気シールド装置。
  4. 前記仕切磁気シールド部材は、支持体に磁性体を設けることにより形成されることを特徴とする請求項2の分離型磁気シールド装置。
  5. 各前記磁気シールド側壁本体に対して、前記長手方向にトロイダル状にコイルを巻回し、磁気シェイキング電流を流すことを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の分離型磁気シールド装置。
  6. 各前記磁気シールド側壁本体の長手方向両端開口部に、磁気シールドフランジ部材を設け、前記磁気シールド側壁本体の長手方向両端開口部から前記円筒状空間への磁束の流れ込みを阻止することを特徴とする請求項1〜5のいずれかの項に記載の分離型磁気シールド装置。
  7. 前記磁気シールドフランジ部材は、支持体に磁性体を設けることにより形成されることを特徴とする請求項6の分離型磁気シールド装置。
  8. 前記磁気シールドフランジ部材にコイルを設置して電流を流し、前記磁気シールド側壁本体の長手方向両端開口部から前記円筒状空間への磁束の流れ込みを阻止することを特徴とする請求項6又は7の分離型磁気シールド装置。
  9. 隣り合った前記磁気シールド側壁本体の対向配置された前記接合部磁気シールド側壁を囲包して、軸線方向に沿ってコイルを巻回して電流を流し、隣り合った前記磁気シールド側壁本体の対向配置された前記接合部磁気シールド側壁間に形成された空隙部から前記円筒状空間への磁束の流れ込みを阻止することを特徴とする請求項1〜8のいずれかの項に記載の分離型磁気シールド装置。
  10. 前記円筒状空間は、2個、4個、6個、又は、8個の前記磁気シールド側壁本体にて囲包されることによって形成されることを特徴とする請求項1〜9のいずれかの項に記載の分離型磁気シールド装置。
  11. 前記円筒状空間を囲包する各前記磁気シールド側壁本体は、同じ寸法、形状とされることを特徴とする請求項1〜10のいずれかの項に記載の分離型磁気シールド装置。
  12. 第1磁気シールド側壁本体と第2磁気シールド側壁本体を有し、前記第1磁気シールド側壁本体と第2磁気シールド側壁本体は、対向配置された状態にて内部に水平方向に延びる長手軸線の回りに略円筒状の空間を形成し、少なくともいずれかの前記磁気シールド側壁本体は、他方の磁気シールド側壁本体に対して移動して離間可能とされる分離型磁気シールド装置において、
    前記第1及び第2磁気シールド側壁本体は、それぞれ、対向配置された状態にて内部に前記円筒状空間を形成する磁性体を備えた湾曲磁気シールド外側壁と、前記湾曲磁気シールド外側壁の上下端縁部から垂直方向に突出し、対向配置された状態にて互いに離間して対面する磁性体を備えた接合部磁気シールド側壁と、を備え、
    前記第1磁気シールド側壁本体の前記湾曲磁気シールド外側壁には、前記長手軸線方向に沿って延在する第1及び第2導体を設け、電流を流し、
    前記第2磁気シールド側壁本体の前記湾曲磁気シールド外側壁には、前記長手軸線方向に沿って延在する第1及び第2導体を設け、電流を流し、
    前記第1磁気シールド側壁本体から前記第2磁気シールド側壁本体へと水平方向に到来する外乱磁束を、前記第1及び第2導体の回りに発生する磁界により、上下方向へと偏向し、前記円筒状空間への磁束の流れ込みを阻止することを特徴とする分離型磁気シールド装置。
  13. 前記第1磁気シールド側壁本体と第2磁気シールド側壁本体は、前記円筒状空間の前記長手軸線を通る垂直平面に対して左右対称形状とされることを特徴とする請求項12の分離型磁気シールド装置。
  14. 前記第1及び第2磁気シールド側壁本体の対向した両前記接合部磁気シールド側壁の間に複数の、磁性体を備えた仕切磁気シールド部材を配置することを特徴とする請求項12又は13の分離型磁気シールド装置。
  15. 前記湾曲磁気シールド外側壁及び前記接合部磁気シールド側壁は、支持体に磁性体を設けることにより形成されることを特徴とする請求項12〜14のいずれかの項に記載の分離型磁気シールド装置。
  16. 前記仕切磁気シールド部材は、支持体に磁性体を設けることにより形成されることを特徴とする請求項14の分離型磁気シールド装置。
  17. 前記第1及び第2磁気シールド側壁本体に対して、前記軸線方向にトロイダル状にコイルを巻回し、磁気シェイキング電流を流すことを特徴とする請求項12〜16のいずれかの項に記載の分離型磁気シールド装置。
  18. 前記第1及び第2磁気シールド側壁本体の軸線方向両端開口部に、磁気シールドフランジ部材を設け、前記第1及び第2磁気シールド側壁本体の軸線方向両端開口部から前記円筒状空間への磁束の流れ込みを阻止することを特徴とする請求項12〜17のいずれかの項に記載の分離型磁気シールド装置。
  19. 前記磁気シールドフランジ部材は、支持体に磁性体を設けることにより形成されることを特徴とする請求項18の分離型磁気シールド装置。
  20. 前記磁気シールドフランジ部材にコイルを設置して電流を流し、前記第1及び第2磁気シールド側壁本体の軸線方向両端開口部から前記円筒状空間への磁束の流れ込みを阻止することを特徴とする請求項18又は19の分離型磁気シールド装置。
  21. 前記第1及び第2磁気シールド側壁本体の対向配置された前記接合部磁気シールド側壁を囲包して、軸線方向に沿ってコイルを巻回して電流を流し、前記第1及び第2磁気シールド側壁本体の対向配置された前記接合部磁気シールド側壁間に形成された空隙部から前記円筒状空間への磁束の流れ込みを阻止することを特徴とする請求項12〜20のいずれかの項に記載の分離型磁気シールド装置。
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