JP5075336B2 - 酢酸の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、アルコール(メタノールなど)と一酸化炭素とからカルボン酸(酢酸など)を製造する方法に関する。特に、本発明は、低濃度(例えば、10重量%以下、特に5重量%以下)の水の存在下でも、副生成物の生成を抑制できるとともに、反応速度が改善された工業的に有用なカルボン酸の製造方法、及びカルボン酸の生成速度を向上させる方法に関する。
酢酸は基礎化学品の一つであり、石油化学工業、高分子化学工業、有機化学工業、医薬農薬製造工業において重要な化学品である。酢酸は、種々の方法により製造されているが、その中でも、メタノールと一酸化炭素とから酢酸を製造する方法が工業的に優れている。
近年、メタノール及び一酸化炭素からの酢酸製造方法の改良法として、反応液中の水の濃度を低減することにより、酢酸の生産性を向上させ、副生成物の生成を低減する方が提案されている。しかし、反応液中の水濃度を低減するとロジウム触媒が析出し易く、触媒活性又は触媒安定性の点で不利であるとともに、反応速度が低下し易い。そこで、反応系にヨウ化リチウムなどのヨウ化物塩を添加したり、特定の触媒系を用いることにより、反応液中の水濃度低下に伴う弊害を防止する方法も検討されている。例えば、特開昭60−54334号公報(特許文献1)には、ロジウム成分及びハロゲン化アルキル成分を含有する触媒系と、水の存在下、アルコール又はその誘導体を一酸化炭素と反応させてカルボン酸を製造する液相カルボニル化反応において、前記触媒系にヨウ化物を添加し、カルボニル化反応液中のヨウ素イオン濃度を0.3モル/l以上に保つことを特徴とするカルボン酸の製造方法が開示されている。特開昭60−239434号公報(特許文献2)には、ロジウム触媒を含む反応媒質中で、低級アルコールを一酸化炭素と反応させて上記アルコールより炭素原子が1個多い低級カルボン酸を製造する方法において、上記反応媒質中に少なくとも限定量の水と共に、(a)触媒安定剤(リチウムアイオダイドなどのアイオダイド)、(b)低級炭化水素のアイオダイド誘導体及び(c)上記アルコールとカルボン酸とのエステルの各有効量を維持する低級カルボン酸の製造法が開示されている。特開昭60−155147号公報(特許文献3)には、アルコールと一酸化炭素とを、(a)有機エステル及び(b)ロジウム金属原子及びヨウ化リチウムとヨウ化メチルとの混合物からなる均質触媒系の接触下で、接触反応させる有機カルボン酸の製造方法が開示されている。
また、特公平8−5839号公報(特許文献4)には、ロジウム触媒を含有する液体反応媒質を保持するカルボニル化反応器中、本質的に低級カルボン酸より1つ少ない炭素原子を有するアルコールよりなる供給物を一酸化炭素と反応させる前記カルボン酸の製造方法において、反応の間、反応媒質中、有効量の(a)触媒安定化剤(ヨウ化物塩)、(b)アルコールに対応する低級炭化水素のヨウ化物誘導体、(c)カルボン酸とアルコールとのエステル、並びに(d)反応条件において少なくとも4psiの水素分圧と共に、少なくとも有限量の水を維持する低級カルボン酸の製造方法が開示されている。特許文献4には、カルボニル化反応器中、水素分圧を増大させると、水ガスシフト反応により、Rh(I)/Rh(III)の比が増大し、その結果、酢酸の生成速度が増大することが記載されている。さらに、特許文献4では、反応液中の水の濃度が10重量%以下では反応速度が有意に低下するため、5〜30重量%のヨウ化リチウムを添加し、反応速度を増大させている。しかし、このような方法では、反応系における水素分圧をある一定の圧力以上に保つことにより、Rh(III)に対するRh(I)の割合を増大させるため、触媒活性をある程度維持できるものの、反応器に水素を仕込み、水素分圧を高めるので、反応液中の水濃度を低減しても副生成物(プロピオン酸、ギ酸、炭化水素類など)の生成が増大する。また、空時収量を向上させるには、反応器の反応圧を高めたり、缶出液に一酸化炭素を補給する必要がある。
特開昭60−54334号公報(請求項1) 特開昭60−239434号公報(請求項1) 特開昭60−155147号公報(請求項1) 特公平8−5839号公報(請求項1、第3図及び第4図)
従って、本発明の目的は、反応系の水濃度が低くても、反応速度を低下させることなく、副生成物の生成を低減できるカルボン酸の製造方法、及びカルボン酸の生成速度を向上させる方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、反応器内の水素分圧を必要以上に高めなくとも、金属触媒の失活を抑制でき、反応速度の低下を防止できるカルボン酸の製造方法、及びカルボン酸の生成速度を向上させる方法を提供することにある。
本発明者がアルコール又は誘導体と一酸化炭素とからのカルボン酸の製造に関して、種々検討した結果、カルボン酸の製造方法において反応系の水濃度が低いと、(1)一酸化炭素と水とのシフト反応が減少して、水素の発生量が著しく低下するため、低活性なRh(III)触媒から活性なRh(I)触媒への変換が円滑に行われず、触媒活性が低下するとともに、触媒成分が沈降し易く、反応速度が徐々に低下すること、(2) このような触媒活性及び反応速度の低下、並びに触媒の沈降は、特に連続反応において顕著であり、上記のような方法を工業的に利用するのは困難であることが明らかとなった。そこで、本発明者は、このような問題点(及び前記課題)を達成するため鋭意検討した結果、水含量が低い条件下(例えば、10重量%以下、特に5重量%以下)で、アルコールと一酸化炭素とを連続反応させてカルボン酸を製造する方法において、反応系の液相中に含まれる一酸化炭素の割合(一酸化炭素の分圧1MPa及び液相の重量1kg当たりの量)及び/又は水素の割合(水素の分圧1MPa及び液相の重量1kg当たりの量)を、特定の範囲に保持すると、反応器内の水素分圧を必要以上に高めなくとも、触媒の失活を抑制して、反応速度を維持でき、副生成物の生成も抑制できることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明のカルボン酸の製造方法では、金属触媒成分と、アルキルハライド及び/又はハロゲン化水素とで構成された触媒系、並びに有限量の水の存在下、炭素数nのアルコール又はその誘導体と一酸化炭素とを連続的に反応させ、反応混合物を反応系から連続的に抜き出して、蒸留工程に導入し、少なくとも前記金属触媒成分を含む高沸点成分と、炭素数n+1のカルボン酸を含む低沸点成分とを分離する炭素数n+1のカルボン酸(酢酸など)の製造方法であって、前記反応系の液相中に含まれる一酸化炭素及び/又は水素の量が、下記の(i)及び(ii)の少なくともいずれかを充足する。
(i)一酸化炭素の量が、反応系の一酸化炭素の分圧1MPa及び液相の重量1kg当たり、少なくとも2mmolである
(ii)水素の量が、反応系の水素の分圧1MPa及び液相の重量1kg当たり、少なくとも50mmolである
前記製造方法では、反応系の液相全体に対して、0.1〜10重量%の割合の水の存在下、アルコール又はその誘導体と一酸化炭素とを反応させてもよい。前記反応系において、一酸化炭素の分圧は0.9〜3MPa(例えば、0.9〜2MPa)であってもよく、水素の分圧は0.01〜0.1MPaであってもよい。前記製造方法では、周期表第8族金属触媒、アルカリ金属ヨウ化物、及びヨウ化アルキルで構成された触媒系の存在下で反応を行い、酢酸を少なくとも空時収量10mol/L/h(mol/(L・h))の生成速度で生成させ、反応液を連続的に抜き出して反応系の圧力よりも低い圧力の蒸留工程に導入してもよい。炭素数n+1のカルボン酸が酢酸である場合、副生するアセトアルデヒドの生成速度は、酢酸の生成速度の1/1500(例えば、1/2100)以下であってもよい。
前記製造方法では、反応系において、周期表第8族金属触媒、ヨウ化リチウム及びヨウ化メチルで構成された触媒系、並びに液相全体に対して0.1〜5重量%の水の存在下、メタノールと一酸化炭素とを連続的に反応させ、酢酸を製造してもよく、前記反応系の液相中に含まれる一酸化炭素の量は、反応系の一酸化炭素の分圧1MPa及び液相の重量1kg当たり2〜50mmolであり、前記反応系の液相中に含まれる水素の量は、反応系の水素の分圧1MPa及び液相の重量1kg当たり50〜400mmolであり、酢酸の生成速度は少なくとも空時収量18mol/L/h(mol/(L・h))であり、副生するアセトアルデヒドの生成速度は前記酢酸の生成速度の1/2300以下であってもよい。
前記製造方法では、蒸留工程が、触媒分離工程と、カルボン酸精製工程とで構成されていてもよく、前記反応系から抜き出した反応混合物を、前記触媒分離工程に導入して、金属触媒成分を含む高沸点成分と、炭素数n+1のカルボン酸を含む低沸点成分とに分離し、この低沸点成分を前記カルボン酸精製工程に導入して、高沸点不純物と、炭素数n+1のカルボン酸を含む低沸点成分と、少なくとも一酸化炭素及び水素を含む排ガス成分とに分離してもよい。
本発明には、前記カルボン酸の製造方法において、前記反応系の液相中に含まれる一酸化炭素及び/又は水素の量を、上記(i)及び(ii)の少なくともいずれかに調整することにより、前記金属触媒の沈降及び副生成物の生成を抑制し、カルボン酸の生成速度を向上させる方法も含まれる。
本発明では、反応系の液相中に含まれる一酸化炭素の割合(一酸化炭素の分圧1MPa及び液相の重量1kg当たりの量)及び/又は水素の割合(水素の分圧1MPa及び液相の重量1kg当たりの量)を、特定の範囲に保持するので、反応系の水濃度が低くても、反応速度の低下を抑制できるとともに、水濃度が低いため、副生成物の生成を有効に低減できる。また、反応系の水素分圧を必要以上に高めなくても、触媒活性の低下を防止できるため、反応速度の低下を抑制できる。さらに、反応系の水素分圧を必要以上に高める必要がないため、水素分圧の上昇に伴う副生成物の生成も抑制できる。
以下、必要により添付図面を参照しつつ、本発明をより詳細に説明する。図1は本発明のカルボン酸の製造方法を説明するためのフロー図である。
この例では、ロジウム触媒及び助触媒(ヨウ化リチウム及びヨウ化メチル)で構成されたカルボニル化触媒系、並びに有限量の水の存在下、メタノールと一酸化炭素との連続的カルボニル化反応により生成した反応混合物から酢酸を製造するプロセスが示されている。
前記プロセスは、前記メタノールのカルボニル化反応を行うための反応系(反応器)1と、この反応系1から連続的に抜き出され、かつ供給ライン2を経て供給又は導入される反応混合物(反応液)から、主にロジウム触媒及びヨウ化リチウムなどの高沸点成分と酢酸などの低沸点成分とを分離するためのフラッシュ蒸留塔(触媒分離塔)3と、前記反応系1の液相(反応液)中の一酸化炭素濃度及び水素濃度のデータを算出し、算出値に基づいて、間接的に前記一酸化炭素濃度及び水素濃度を制御するための制御ユニット(制御装置)4と、この制御ユニット4からの信号に基づいて一酸化炭素を流量制御しつつ前記供給ライン2に供給するためのバルブ(電磁バルブ)5a及び水素を流量制御しつつ前記供給ライン2に供給するためのバルブ(電磁バルブ)5bとを備えている。前記制御ユニット4では、反応系1から排出される一酸化炭素及び水素の濃度データ(CrV(CO),CrV(H))、蒸留塔3から排出される一酸化炭素及び水素を含むガスの流量データ(F)並びに各気体の濃度データ(Cd(CO),Cd(H))、反応系1から蒸留塔3への反応液の供給量データ(缶出量,W1)に基づいて、流体中に含まれる一酸化炭素及び水素のそれぞれの量、すなわち、反応系1の液相中に溶解した一酸化炭素濃度データ(CrL(CO))及び水素濃度データ(CrL(H))をそれぞれ算出する。そして、制御ユニット4は、算出した前記濃度データと、予め設定した基準値との大小に関するデータに基づいて、バルブ(電磁弁)5a,5bを駆動又は制御することにより、反応系の液相中に溶解した一酸化炭素及び水素の濃度をそれぞれ間接的に制御している。
より詳細には、反応器1には、液体成分としてのメタノールが、供給ライン6を経て所定速度で連続的に供給されるとともに、気体反応成分としての一酸化炭素が、供給ライン7を経て連続的に供給される。また、前記反応器1には、カルボニル化触媒系(ロジウム触媒などの主たる触媒成分と、ヨウ化リチウム及びヨウ化メチルなどの助触媒とで構成された触媒系)を含む触媒混合物(触媒液)及び水を、供給ライン8を通じて供給してもよい。また、後続の工程(酢酸を精製する蒸留塔など)からの低沸点成分及び/又は高沸点成分を含む留分(例えば、液状の形態で)を、供給ライン8を通じて反応器1に供給してもよい。そして、反応器1内では、反応成分と金属触媒成分(ロジウム触媒及びヨウ化リチウム)などの高沸点成分とを含む液相反応系と、一酸化炭素及び反応により生成した水素、並びに気化した低沸点成分(ヨウ化メチル、生成した酢酸、酢酸メチルなど)で構成された気相系とが平衡状態を形成している。なお、前記反応器1には、触媒活性を高めるため、必要により水素を供給してもよい。水素は、一酸化炭素とともに前記供給ライン7を経て供給してもよく、別途、別の供給ライン(図示せず)を通じて供給してもよい。なお、前記反応系は、発熱を伴う発熱反応系であるため、前記反応器1は、反応温度を制御するための除熱ユニット又は冷却ユニット(ジャケットなど)などを備えていてもよい。
また、前記反応器1の塔頂部からは、低沸点成分、すなわち、一酸化炭素及び水素などを含む排ガス成分(排ガス流)を、排出ライン9aを通じて排出させ、熱交換器Eに導入し、冷却して、液体成分(酢酸メチル、ヨウ化メチル、水及び酢酸などを含む)と、気体成分(一酸化炭素及び水素を含む)とに分離し、この気体成分を、排出ライン10を通じて排出するとともに、前記液体成分を、リサイクルライン9bを通じて反応器1にリサイクルしている。前記気体成分の流路、すなわち、前記排出ライン10には、反応器内の気相に含まれる一酸化炭素及び水素を含むガス成分の総流量データFを検出するための検出器(流量計)Df1と、反応器1内の気相に含まれる一酸化炭素の濃度データ(CrV(CO))及び水素の濃度データ(CrV(H))を測定するための検出器(分析計)Dc1とが配設されており、前記分析計Dc1からの検出データは、それぞれ連続的に制御ユニット4に送られる。なお、前記反応器1は、反応器内の圧力(全圧)データPを測定するための圧力計P1を備えており、この圧力計からの反応器内の全圧データPも連続的に前記制御ユニット4に送られる。また、必要により、流量計Df1からの総流量データFを制御ユニット4に与えてもよい。
なお、反応器1で生成した反応混合物(反応粗液)中には、金属触媒成分(ロジウム触媒、及び助触媒としてのヨウ化リチウム)、酢酸、助触媒としてのヨウ化メチル、酢酸とメタノールとの反応生成物である酢酸メチル、水などの他、不純物として、酢酸よりも沸点の低い低沸不純物(酢酸の前駆体であるアセトアルデヒドなど)及び酢酸よりも沸点の高い高沸不純物(プロピオン酸など)などが含まれる。
上記反応混合物から酢酸を分離するため、前記反応器1から反応混合物の一部を連続的に抜き取りつつ、バルブ(図示せず)を備えた供給ライン2を通じて反応混合物を蒸留塔3に導入又は供給する。前記供給ライン2は、反応器1から供給される反応混合物の流量データW1を測定するための検出器(流量計)Df3を備えており、この流量計Df3からの検出データは、連続的に前記制御ユニット4に送られる。
そして、前記蒸留塔3では、反応混合物から、高沸点成分(主に、ロジウム触媒及びヨウ化リチウムなどの金属触媒成分など)と、低沸点成分(主に、生成物であり反応溶媒としても機能する酢酸、酢酸メチル、ヨウ化メチル、水など)とを分離し、前記高沸点成分を塔底から缶出するとともに前記低沸点成分を蒸留塔の上段部から留出ライン14を通じて留出させる。また、前記蒸留塔3の塔頂部からは、排出ライン13を通じて、主に一酸化炭素及び水素を含む気体成分(オフガス)を排出する。なお、前記高沸点成分には、前記金属触媒成分の他、蒸発せずに残存したヨウ化メチル、酢酸メチル、水及び酢酸なども含まれる。なお、前記蒸留塔3内の温度及び/又は圧力は、反応器1内の温度及び圧力より低くすることにより、副生成物がさらに生成するのを抑制したり、触媒活性が低下するのを抑制してもよい。
前記蒸留塔3の塔頂部から排出された気体成分は、熱交換器Eに導入され、冷却されて、液体成分と気体成分とに分離され、液体成分(酢酸メチル、ヨウ化メチル、酢酸、水などを含む)は、リサイクルライン15a(及びリサイクルライン11)及び/又は15bを通じて、反応器1及び/又は蒸留塔3にリサイクルされ、気体成分(一酸化炭素及び水素などを含む)は、排出ライン16を通じて排出される。なお、分離された液体成分は、必要により、アルデヒド分離塔などによりアルデヒドを除去し、有用成分(ヨウ化メチル、酢酸メチルなど)を反応器や蒸留塔にリサイクルしてもよい。
そして、前記気体成分を排出する排出ライン16は、気体成分の流量データFを測定するための検出器(流量計)Df2と、排出ガス中に含まれる一酸化炭素濃度データCd(CO)及び水素濃度データCd(H)を測定するための検出器(分析計)Dc2とを備えており、前記流量計Df2からの流量データF、並びに分析計Dc2からの濃度データCd(CO)及びCd(H)は、それぞれ連続的に前記制御ユニット4に送られる。
なお、前記各検出器や圧力計からのデータは、必ずしも連続的に制御ユニット4に与える必要はなく、周期的(例えば、短周期で周期的)又は間欠的に制御ユニットに与えてもよい。
また、排出ライン10及び/又は16を通じて排出される気体成分は、一酸化炭素及び水素を多く含んでおり、必要により、例えば、供給ライン7を通じて、反応器1にリサイクルしてもよく(図示せず)、供給ライン5を通じて供給ライン2に導入される一酸化炭素及び水素の供給源として利用してもよい(図示せず)。なお、気体成分(一酸化炭素及び/又は水素など)の回収には、慣用の回収装置、例えば、吸着装置(PSAなど)を用いてもよい。
一方、留出ライン14を通じて蒸留塔3から分離された低沸点成分は、生成物である酢酸を多く含み、そのまま製品として回収できる。また、前記低沸点成分は、必要により、慣用の分離又は精製工程(蒸留工程など)に供し、他の成分(アセトアルデヒド、プロピオン酸などの副生成物、水、酢酸メチル、ヨウ化メチルなど)から分離することにより高純度の酢酸を回収してもよい。
前記高沸点触媒成分(循環触媒液)は蒸留塔3で分離した後、リサイクルライン11を通じて、反応系(反応器1)にリサイクル(循環)される。リサイクルライン11では、蒸留塔3からの缶出液は、必要により加圧ポンプ12により加圧して反応器1にリサイクルしてもよい。蒸留塔3からの缶出液は、図1に示すように、リサイクルライン11、及び触媒の供給ライン8を経て、反応器1にリサイクルしてもよく、供給ライン8を経ることなく、反応器1に直接通じるリサイクルライン(図示せず)により直接反応器に供給することもできる。
図2は、図1の制御ユニット4を説明するためのブロック図である。前述のように、制御ユニット4には、排出ライン10に備えられた分析計Dc1からの濃度データ(CrV(CO)、CrV(H))、排出ライン16に備えられた流量計Df2及び分析計Dc2からの流量データ(F)並びに濃度データ(Cd(CO)、Cd(H))、反応器1から蒸留塔3へ通じる供給ライン2に備えられた流量計Df3からの流量データ(W1)とともに、圧力計P1からの全圧データPが与えられる。以下に、バルブ5a,5bを駆動するまでの各データの流れを説明する。
図2の例では、制御ユニット4は、主に上記各データに基づいて、反応器1の液相中に含まれる一酸化炭素及び水素の各濃度データを算出するための演算系21と、この演算系21で算出された濃度データと比較するための基準値を設定するための設定ユニット23,24と、前記演算系21からの濃度データと、前記設定ユニット23,24からの基準値とを比較するための比較ユニット25,26と、この比較ユニットでの比較の結果(すなわち、濃度データと基準値との大小)に関連して電磁バルブ5a,5bを駆動するための駆動ユニット27,28とを備えている。そして、前記駆動ユニット27,28からの信号に基づいて、電磁バルブ5a及び/又は5bを開閉することにより、供給ライン2への一酸化炭素及び/又は水素の供給が制御されている。
より詳細には、前記演算系21は、主に一酸化炭素に関連するデータ(流量データ、濃度データ)を受取り、反応器1の液相中に含まれる一酸化炭素濃度のデータを算出するための第1の演算ユニット21aと、主に水素に関連するデータ(流量データ、濃度データ)を受取り、反応器1の液相中に含まれる水素濃度のデータを算出するための第2の演算ユニット21bとで構成されている。そして、前記第1及び第2の演算ユニットの双方には、一酸化炭素又は水素に関連するデータ以外に、蒸留塔3における気体成分の流量データF、反応器1の全圧データP、及び供給ライン2における反応液の供給量データW1が与えられるとともに、予め、反応器1中の低沸点成分である有機成分の蒸気圧の計算値(P)が設定されている。なお、蒸気圧データPの算出には、反応系の全圧データ、温度データ及び反応液組成データ(自動分析計の出力値)に基づいて、蒸気圧データPを算出する演算系(図示せず)を用いてもよい。なお、前記反応液組成データは、通常、自動分析計(慣用の分析計、例えば、ガスクロマトグラフィー、赤外吸収水分計、FT−IRなど)により、通常、一定周期で又は連続的に反応液をサンプリングして、自動的に分析されたヨウ化メチル、酢酸メチル、水、酢酸などの濃度を電気信号等に変換したものである場合が多い。
前記第1の演算ユニット21aでは、前記有機成分の蒸気圧の計算データPと、反応器1の全圧データPと、前記検出器Dc1からの濃度データCrV(CO)とから、下記式(1)に基づいて、反応器1の気相系における一酸化炭素分圧データ(PCO)を算出する。
CO =(P−P)×CrV(CO) (1)
(式中、P、P、及びCrV(CO)は前記に同じ)
さらに、前記第1の演算ユニット21aでは、前記流量計Df2から与えられた蒸留塔3における気体成分の流量データF、蒸留塔3における気体成分中の一酸化炭素濃度データCd(CO)、反応系1の気相における一酸化炭素分圧データPCO、反応液の供給量データW1から、下記式(2)に基づいて、反応器1中の液相(反応液)中における一酸化炭素濃度データCrL(CO)を算出する。前記第1の演算ユニットは、算出した液相中の一酸化炭素の濃度データCrL(CO)を前記比較ユニット25に与える。
rL(CO)=(F×Cd(CO))/PCO/W1 (2)
(式中、F、Cd(CO)、PCO、及びW1は前記に同じ)
前記比較ユニット25では、第1の演算ユニット21aから与えられた一酸化炭素の濃度データCrL(CO)と、予め設定ユニット23に設定された基準値(例えば、「反応系の一酸化炭素分圧1MPa及び液相の重量1kg当たり2mmol」に相当するデータ)とを比較し、濃度データと基準値との大小に関係するデータを駆動ユニット27に与える。そして、駆動ユニット27は、前記比較ユニット25から与えられたデータに基づいて、電磁バルブ5aの開閉を制御し、供給ライン2を流れる反応液中の一酸化炭素の濃度、ひいては、反応器1中の一酸化炭素濃度を調整している。すなわち、駆動ユニット27は、比較ユニット25において濃度データCrL(CO)が基準値以上の場合には、電磁バルブ5aを閉塞させて供給ライン2への一酸化炭素の供給を停止し、前記濃度データが基準値より小さい場合には、電磁バルブ5aを開放させて一酸化炭素を供給ライン2に供給している。
上記第1の演算ユニット21aから、比較ユニット25及び駆動ユニット27を経て、電磁弁5aに至るデータの流れは、水素に関連するデータを処理する第2の演算ユニット21b、比較ユニット26及び駆動ユニット28を経て、電磁弁5bに至る系においても同様である。すなわち、前記第2の演算ユニット21bでは、前記第1の演算ユニット21aと同様に、水素に関連するデータに基づいて、反応器1中の液相中における水素濃度データCrL(H)を算出する。すなわち、第2の演算ユニット21bでは、蒸気圧データP、全圧データP、及び反応器1の気相中の水素濃度データCrV(H)から、下記式(3)に基づいて、水素分圧データ(P)を算出する。
=(P−P)×CrV(H) (3)
(式中、P、P、及びCrV(H)は前記に同じ)
そして、第2の演算ユニット21bでは、前記一酸化炭素濃度CrL(CO)と同様に、下記式(4)に基づいて、反応器1中の液相(反応液)中の水素濃度CrL(H)を算出し、この算出データCrL(H)を比較ユニット26に与える。
rL(H) =(F×Cd(H))/P/W1 (4)
(式中、F、Cd(H)、P、及びW1は前記に同じ)
比較ユニット26では、第2の演算ユニット21bからの前記算出データCrL(H)と、設定ユニット24から与えられた基準値(例えば、反応系の水素分圧1MPa及び液相の重量1kg当たり50mmolに該当するデータ)とを比較し、両者の大小に関するデータを駆動ユニット28に与える。そして、駆動ユニット28は、比較ユニット24からの前記大小に関するデータに基づいて、電磁弁5bの開閉を制御することにより、供給ライン2を流れる反応液中の水素濃度、ひいては反応器1中の反応液中の水素濃度を調整している。
なお、一酸化炭素の供給を制御する一連のユニット群(第1の演算ユニット21a、設定ユニット23、比較ユニット25、駆動ユニット27及び電磁弁5a)、及び水素の供給を制御する一連のユニット群(第2の演算ユニット21b、設定ユニット24、比較ユニット26、駆動ユニット28、及び電磁弁5b)は、必ずしも双方備えている必要はなく、いずれか一方のユニット群を備えていればよい。また、電磁弁5a及び5bからの気体の供給は、必ずしも同じ供給ライン5を通じて行う必要はなく、一酸化炭素と水素とを別々の供給ラインを通じて供給ライン2に供給してもよい。また、一酸化炭素及び水素は、それぞれ純粋なガスとして供給ライン2に供給してもよく、不活性ガス(窒素、ヘリウム、二酸化炭素など)で、稀釈して使用してもよい。また、反応器(すなわち、排出ライン10)や後続する工程(例えば、蒸留塔3(すなわち、排出ライン16))からの排出ガスをリサイクルしてもよい。
図3は、本発明のカルボン酸の製造方法の他の例を説明するためのフロー図である。図3の例では、図1の例において、反応器1からの反応混合物を2つの蒸留塔3a(触媒分離塔)及び3b(カルボン酸精製塔)により精製するとともに、反応器1(すなわち、排出ライン10)からの排ガス流を前記蒸留塔3bからの排ガス流と合流させ、蒸留塔からの排ガス流量データ(F)及び各気体の濃度データ(Cd(CO)、Cd(H))を検出することなく、合流した排ガス流の流路に設けた流量計Df4及び分析計Dc4により、反応器1及び蒸留塔(3a,3b)からの排ガスについて、流量データ(F)及び各気体の濃度データ(Ct(CO)、Ct(H))をそれぞれ検出し、制御ユニット34に与えている。
すなわち、図3のプロセスでは、カルボニル化反応を行うための反応器1と、この反応器1からの反応混合物から、触媒成分などの高沸点成分を分離するためのフラッシュ蒸留塔(触媒分離塔)3aと、この蒸留塔3aから導入された低沸点成分から、さらに高沸不純物(プロピオン酸、水など)と、精製酢酸を含む低沸点成分とに分離するための蒸留塔(カルボン酸精製塔又は高沸成分回収塔)3bと、前記反応器1の液相中の一酸化炭素濃度及び水素濃度のデータを算出し、算出値に基づいて、間接的に前記液相中の一酸化炭素濃度及び水素濃度を制御するための制御ユニット34と、この制御ユニット34からの信号に基づいて一酸化炭素及び水素をそれぞれ流量制御しつつ供給ライン2に供給するための電磁バルブ5a,5bとを備えている。
図3の例では、反応器1からの反応混合物は、まず、触媒分離塔3aに導入され、この触媒分離塔3aでは、主にロジウム触媒及びヨウ化リチウムなどの金属触媒成分を高沸点成分として塔底から分離し、缶出ライン11aを通じて缶出するとともに、塔頂から低沸点成分を留出させる。蒸留塔3aからの高沸点成分は、リサイクルライン11及び供給ライン8を通じて反応器1にリサイクルしてもよい。蒸留塔3aからの低沸点成分は、供給ライン13aを通じて、カルボン酸精製塔(高沸成分回収塔)3bに導入され、このカルボン酸精製塔3bにおいて、主にプロピオン酸を含む高沸点成分を塔底から分離し、酢酸を含む低沸点成分をサイドカットして留出ライン14bを通じて留出させ、一酸化炭素及び水素の他、酢酸メチル、ヨウ化メチルなどを含む気体成分(排ガス成分)を塔頂から分離する。蒸留塔3bからの高沸点成分は、リサイクルライン11及び供給ライン8を通じて、反応器1にリサイクルしてもよい。また、蒸留塔3bからの排ガス成分は、熱交換器Eに導入されて、冷却され、液体成分と気体成分とに分離される。分離された液体成分は、ヨウ化メチル、酢酸メチル、アセトアルデヒド、水などを含んでおり、リサイクルライン15a及び/又は15bを通じて、反応器1及び/又は蒸留塔3bにリサイクルされ、気体成分は、排出ライン16を通じて排出される。なお、分離された液体成分は、必要により、アルデヒド分離塔などによりアルデヒドを除去し、有用成分(ヨウ化メチル、酢酸メチルなど)を反応器及び/又は蒸留塔にリサイクルしてもよい。
一方、図1の例と同様に、反応器1の塔頂部から排出され、熱交換器Eにより分離された気体成分は、排出ライン(供給ライン)10を通じて、蒸留塔3bからの排ガス流中の気体成分、すなわち、熱交換器Eからの気体成分と合流させ、前記排出ライン16を通じて、排出される。図3の例では、反応器1からの前記気体成分の流路(排出ライン10)には、流量計Df1及び分析計Dc1が設置されており、それぞれ反応器1中の気相に含まれる一酸化炭素及び水素などの総流量データF、並びに反応器1中の気相に含まれる一酸化炭素濃度データCrV(CO)及び水素濃度データCrV(H)を検出するとともに、これらのデータを制御ユニット34に与えている。また、前記排出ライン16は、反応器1からの気体成分と蒸留塔3bからの気体成分との合流ポイントより下流(すなわち、合流排ガス流の流路)に流量計Df4及び分析計Dc4を備えており、流量計Df4により、反応器1における一酸化炭素及び水素の全量を流量データFとして検出するとともに、分析計Dc4により反応器1における一酸化炭素及び水素の全濃度データ(Ct(CO)、Ct(H))を検出する。そして、これらのデータは、制御ユニット34に与えられる。
なお、排出ライン16を通じて排出される気体成分は、一酸化炭素及び水素を多く含んでおり、必要により、例えば、供給ライン7を通じて、反応器1にリサイクルしてもよく(図示せず)、供給ライン5を通じて供給ライン2に導入される一酸化炭素及び水素の供給源として利用してもよい(図示せず)。なお、気体成分(一酸化炭素及び/又は水素など)の回収には、慣用の回収装置、例えば、吸着装置(PSAなど)を用いてもよい。
図4は、図3の制御ユニット34を説明するためのブロック図である前記のように、制御ユニット34には、反応系1からの排ガス成分(すなわち気相中の一酸化炭素及び水素)に関する流量計Df1及び分析計Dc1からの流量データ(F)並びに濃度データ(CrV(CO)、CrV(H))、反応系1からの排ガス成分及び蒸留塔3bからの排ガス成分(すなわち反応系の液相中の一酸化炭素及び水素)に関する流量計Df4及び分析計Dc4からの流量データ(全オフガス量データF)並びに濃度データ(Ct(CO)、Ct(H))、反応系1から蒸留塔3aへ通じる供給ライン2に備えられた流量計Df3からの流量データ(W1)とともに、圧力計P1からの全圧データPが与えられる。
図4の例では、反応器1の液相中に含まれる一酸化炭素及び水素の各濃度データを算出するための演算系21は、主に一酸化炭素に関連するデータ(流量データ、濃度データ)を受取り、反応器1の液相中に含まれる一酸化炭素濃度のデータを算出するための第1の演算ユニット21aと、主に水素に関連するデータ(流量データ、濃度データ)を受信し、反応器1の液相中に含まれる水素濃度のデータを算出するための第2の演算ユニット21bとで構成されている。そして、前記第1及び第2の演算ユニットの双方には、一酸化炭素又は水素に関連するデータ以外に、流量計Df4からの総流量データF、流量計Df1からの反応器1の気相に関する流量データF、反応器1の全圧データP、及び供給ライン2における反応液の供給量データW1が与えられるとともに、予め、反応器1中の低沸点成分である有機成分の蒸気圧の計算値(P)が設定されている。なお、蒸気圧データPは、図1と同様の手段などにより算出できる。
図4の例では、流量計Df1から反応系1の気相における流量データF、流量計Df4から総流量データFがそれぞれ与えられ、第1及び第2の演算ユニット21a,21bに、蒸留塔における濃度データCd(CO),Cd(H)ではなく、反応器及び蒸留塔からの総濃度データCt(CO),Ct(H)が分析計Dc2から直接与えられる以外は、図2の例と同様に、反応器1内の気相系における一酸化炭素分圧データPCO及び水素分圧データPを算出する。そして、反応器1の液相中の一酸化炭素濃度データCrL(CO)及び水素濃度データCrL(H)は、前記総流量データF、一酸化炭素及び水素の総濃度データCt(CO),Ct(H)、反応系からの流量データF、反応系からの一酸化炭素及び水素の濃度データCrV(CO),CrV(H)、一酸化炭素及び水素の各分圧データPCO,P、並びに反応液の供給量データW1から、下記式(5)及び(6)に基づいてそれぞれ算出する。そして、前記第1及び第2の演算ユニットは、算出した液相中の一酸化炭素の濃度データCrL(CO)及び水素の濃度データCrL(H)を、それぞれ前記比較ユニット25及び26に与える。
rL(CO)=[F×Ct(CO)−F×CrV(CO)]/PCO/W1 (5)
rL(H) =[F×Ct(H)−F×CrV(H)]/P/W1 (6)
(式中、F、Ct(CO)、F、CrV(CO)、PCO、Ct(H)、CrV(H)、P、及びW1は前記に同じ)
そして、これらの濃度データに基づいて、図2の例と同様の流れで、電磁バルブ5a及び/又は5bの開閉を制御し、供給ライン2を流れる反応液中の一酸化炭素濃度及び/又は水素濃度、ひいては反応器1中の一酸化炭素濃度及び/又は水素濃度を調整している。
なお、前記図1の例において、図3の例と同様に、排出ライン10と排出ライン16とを合流させて、オフガス成分の総流量データF、各気体の総濃度データCt(CO),Ct(H)を検出し、図4のブロック図に従って、液相中の一酸化炭素及び/又は水素濃度を調整してもよい。また、図1の例において、反応器からのオフガス成分の総流量データFと、蒸留塔からのオフガス成分の流量データFとを制御ユニット4に与え、別途演算ユニットで前記流量データに基づいてFを算出し、式(5)及び(6)に基づいて、反応系の液相中の各気体濃度を算出、図4のブロック図に従って、液相中の各気体濃度を調整してもよい。さらに、前記図3の例において、図1の例と同様に、排出ライン10と排出ライン16とを合流させることなく、蒸留塔からの流量データF及び各気体の濃度データと、反応系からの各気体の濃度データとを別途測定し、図2のブロック図に従って、反応系の液相中の各気体濃度を調整してもよい。
本発明では、このように、反応系(液相中)の一酸化炭素濃度及び/又は水素濃度を所定の値に維持することにより、反応系の水濃度が低くても、触媒の失活や沈降を抑制できるため、反応速度の低下を抑制することもできる。また、反応速度の低下を抑制しつつ、反応系の水濃度を低減できるため、副生成物の発生量を低減できる。さらに、反応系反応器内の水素分圧を必要以上に高めなくても、反応速度が低下しないため、水素分圧の上昇に伴う副反応を防止でき、副生成物の生成を抑制できる。
本発明の製造方法は、上記メタノールのカルボニル化に限らず、種々のアルコール又はその誘導体のカルボニル化反応に適用できる。
(カルボニル化反応系)
反応系では、アルコール又はその誘導体(エステル、エーテル、ハロゲン化物などの反応性誘導体)を一酸化炭素でカルボニル化する。カルボニル化反応に用いるアルコールとしては、炭素数nのアルコール、例えば、脂肪族アルコール[メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノールなどのアルカノール(C1−10アルカノールなど)など]、脂環族アルコール[シクロヘキサノール、シクロオクタノールなどのシクロアルカノール(C3−10シクロアルカノールなど)など]、芳香族アルコール[フェノールなどのアリールアルコール(C6−10アリールアルコール(フェノール類など)など);ベンジルアルコール、フェネチルアルコールなどのアラルキルアルコール(C6−10アリール−C1−4アルカノールなど)など]などが例示できる。炭素数nは、1〜14、好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜6程度である。前記アルコールのうち、脂肪族アルコールが好ましい。脂肪族アルコールの炭素数nは、例えば、1〜6、好ましくは1〜4、特に1〜3程度である。
アルコール誘導体のうち、エステルとしては、生成するカルボン酸と原料アルコールとのエステル、例えば、酢酸メチル、プロピオン酸エチルなどのC2−6カルボン酸−C1−6アルキルエステルなどが例示できる。エーテル類としては、原料アルコールに対応するエーテル、例えば、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテルなどのジC1−6アルキルエーテルなどが例示できる。また、ハロゲン化物としては、ヨウ化メチルなどのアルコールに対応するハライド(ヨウ化アルキルなどのアルキルハライドなど)などが使用できる。さらに、必要であれば、アルコールとして多価アルコール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールなどのアルキレングリコール又はそれらの誘導体(例えば、エステル、ハロゲン化物、エーテルなど)を用いてもよい。
前記アルコール又はその誘導体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
好ましい液相反応系では、液体反応成分として炭素数nのアルコール、好ましくはC1−4アルコール又はその誘導体(例えば、メタノール、酢酸メチル、ヨウ化メチル、ジメチルエーテルなど)を用いて、炭素数n+1のカルボン酸又はその誘導体(カルボン酸無水物など)を得てもよい。特に、カルボニル化触媒系の存在下、メタノール、酢酸メチル、及びジメチルエーテルから選択された少なくとも一種(特に、少なくともメタノール)と一酸化炭素とを液相反応系で反応させ、酢酸又はその誘導体を生成させる反応系などが好ましい。
なお、アルコール又はその誘導体は、フレッシュな原料を直接又は間接的に反応系へ供給してもよく、また、蒸留工程から留出するアルコール又はその誘導体を、リサイクルすることにより、反応系に供給してもよい。
反応系における触媒系は、カルボニル化触媒と、助触媒又は促進剤とで構成できる。前記カルボニル化触媒としては、通常、高沸点の触媒、例えば、金属触媒が使用される。金属触媒としては、遷移金属触媒、特に、周期表第8族金属を含む金属触媒、例えば、コバルト触媒、ロジウム触媒、イリジウム触媒などが例示できる。触媒は、金属単体であってもよく、また、金属酸化物(複合酸化物を含む)、水酸化物、ハロゲン化物(塩化物、臭化物、ヨウ化物など)、カルボン酸塩(酢酸塩など)、無機酸塩(硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩など)、錯体などの形態でも使用できる。このような金属触媒は、一種で又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、前記錯体を形成する配位子としては、OH(ヒドロキシ)、メトキシ、エトキシ基などのアルコキシ基、アセチル基などのアシル基、メトキシカルボニル(アセタト)、エトキシカルボニルなどのアルコキシカルボニル基、アセチルアセトナト、シクロペンタジエニル基、塩素、臭素、ヨウ素などハロゲン原子、CO、CN、酸素原子、HO(アコ)、ホスフィンなどのリン化合物、NH、NO、エチレンジアミンなどの窒素含有化合物などが挙げられる。錯体において、一種の配位子が金属に配位していてもよく、同種又は異種の配位子が複数配位していてもよい。
好ましい金属触媒は、ロジウム触媒及びイリジウム触媒(特に、ロジウム触媒)である。また、金属触媒は反応液中で可溶な形態で使用するのが好ましい。なお、ロジウムは、通常、反応液中で錯体として存在しているため、ロジウム触媒を用いる場合には、触媒は、反応液中で錯体に変化可能である限り、特に制限されず、種々の形態で使用できる。このようなロジウム触媒としては、特に、ロジウムのハロゲン化物(臭化物、ヨウ化物など)が好ましい。また、触媒は、ハロゲン化物塩(ヨウ化物塩など)及び/又は水を添加することにより反応液中で安定化させることができる。
触媒の濃度は、例えば、液相系全体に対して重量基準で10〜5,000ppm、好ましくは100〜4,000ppm、さらに好ましくは300〜3,000ppm、特に500〜2,000ppm程度である。触媒濃度が高すぎると、触媒(ロジウム触媒など)が不溶性の成分(ヨウ化ロジウムなどのロジウムハライドなど)に変化して、沈降し、反応効率及び生産性が低下する虞がある。
前記触媒系を構成する助触媒又は促進剤としては、種々のハロゲン化物、例えば、アルカリ金属ハライド(例えば、ヨウ化リチウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウムなどのヨウ化物;臭化リチウム、臭化カリウム、臭化ナトリウムなどの臭化物など)、ハロゲン化水素(ヨウ化水素、臭化水素など)、アルキルハライド[原料アルコールに対応するアルキルハライド(C1−10アルキルハライド、好ましくはC1−4アルキルハライド)、例えば、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピルなどのヨウ化C1−10アルキル(ヨウ化C1−4アルキルなど)、これらのヨウ化アルキルに対応する臭化物(臭化メチル、臭化プロピルなど)や塩化物(塩化メチルなど)など]などが使用できる。なお、アルカリ金属ハライド(特にヨウ化物)は、カルボニル化触媒(例えば、ロジウム触媒など)の安定剤としても機能する。これらの助触媒又は促進剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、アルカリ金属ハライド、アルキルハライド、及び/又はハロゲン化水素などが好ましい。好ましい触媒系は、金属触媒成分と、アルキルハライド及び/又はハロゲン化水素とで構成できる。前記カルボニル化触媒(前記金属触媒)及びアルカリ金属ハライド(特にアルカリ金属ヨウ化物)で構成される金属触媒成分と、アルキルハライド(特にヨウ化アルキル)及び/又はハロゲン化水素とを組み合わせて用いるのが好ましい。また、このような触媒系に、必要により、他の助触媒又は促進剤(前記例示の助触媒)を併用してもよい。
助触媒又は促進剤の含有量は、液相系全体に対して、例えば、0.1〜40重量%、好ましくは0.5〜30重量%、さらに好ましくは1〜25重量%程度であってもよい。より具体的には、前記アルコールのカルボニル化反応によるカルボン酸の製造では、ヨウ化メチルなどのアルキルハライドの含有量は、液相系全体に対して、例えば、1〜25重量%、好ましくは5〜20重量%、さらに好ましくは5〜15重量%程度であってもよい。なお、アルキルハライドの濃度が高いほど、反応は促進される。アルキルハライドの回収、回収したアルキルハライドを反応器へ循環する工程の設備規模、回収や循環に必要なエネルギー量などを考慮し、経済的に有利な濃度を適宜選択できる。また、ヨウ化リチウムなどのアルカリ金属ハライドの含有量は、液相系全体に対して、例えば、0.1〜40重量%、好ましくは0.5〜35重量%、さらに好ましくは1〜30重量%程度であってもよい。
なお、反応系には、カルボン酸エステル(特に、酢酸メチルなどのカルボン酸とアルコールとのエステル)を液相系全体に対して、0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜15重量%程度の割合で含有させてもよい。なお、反応液中には原料のアルコールと生成物のカルボン酸との平衡により、通常0.5〜10重量%程度のカルボン酸エステルが存在している。
反応系に供給する一酸化炭素は、純粋なガスとして使用してもよく、不活性ガス(例えば、窒素、ヘリウム、二酸化炭素など)で稀釈して使用してもよい。また、後続の工程(蒸留工程(蒸留塔)など)から得られる一酸化炭素を含む排ガス成分を反応系にリサイクルしてもよい。反応系の一酸化炭素分圧は、絶対圧力で、例えば、0.9〜3MPa(例えば、0.9〜2MPa)、好ましくは1.15〜2.5MPa、さらに好ましくは1.15〜2MPa(例えば、1.18〜2MPa)程度であってもよい。なお、一酸化炭素は反応器の下部からスパージングにより供給してもよい。
前記カルボニル化反応では、一酸化炭素と水との反応によりシフト反応が起こり、水素が発生するが、反応系に水素を供給してもよい。反応系に供給する水素は、原料となる一酸化炭素と共に混合ガスとして反応系に供給することもできる。また、後続の蒸留工程(蒸留塔)で排出された気体成分(水素、一酸化炭素などを含む)を、必要により適宜精製して反応系にリサイクルすることにより、水素を供給してもよい。反応系の水素分圧は、絶対圧力で、例えば、0.01〜0.1MPa、好ましくは0.014〜0.07MPa、さらに好ましくは0.02〜0.04MPa(例えば、0.025〜0.034MPa)程度であってもよい。
反応系の一酸化炭素分圧や水素分圧は、例えば、反応系への一酸化炭素及び水素の供給量又はこれらの成分の反応系へのリサイクル量、反応系への原料基質(メタノールなど)の供給量、反応温度や反応圧力などを適宜調整することにより調整することができる。
なお、反応系への一酸化炭素及び/又は水素の供給量を調整することにより、反応系の一酸化炭素分圧及び/又は水素分圧を任意に調節することができるが、未反応の一酸化炭素がオフガス中に多く含まれ、排出量も増加する。また、水素分圧が上昇すると、アセトアルデヒドやメタンなどの副生成物が増加する。一方、基質(メタノールなど)の供給量が減少すると酢酸などの目的カルボン酸の生成量も減少し、一酸化炭素が反応系に過剰に残存して、一酸化炭素分圧が増加する。反応温度が上昇すると、有機成分の蒸気圧が上昇し、一酸化炭素分圧及び水素分圧が低下する。また、反応温度が上昇すると、目的カルボン酸の生成量は増加するものの、アセトアルデヒドなどの副生成物の生成量も増加し、さらにロジウム触媒の安定性が低下する。また、反応圧力が上昇すると、一酸化炭素分圧及び水素分圧も上昇する。すなわち、反応器内の圧力が高くなるため、高圧に耐える肉厚の反応器を設計する必要があり、設備費が上昇する。また、上記のように、水素分圧の上昇により、アセトアルデヒドなどの副生成物が増加する。
カルボニル化反応において、反応温度は、例えば、100〜250℃、好ましくは150〜220℃、さらに好ましくは170〜210℃程度であってもよい。また、反応圧力は、ゲージ圧で、1〜5MPa、好ましくは1.5〜4MPa、さらに好ましくは2〜3.5MPa程度であってもよい。
反応は溶媒の存在下又は非存在下で行ってもよい。反応溶媒としては、反応性や、分離又は精製効率を低下させない限り特に制限されず、種々の溶媒を使用できるが、通常、生成物であるカルボン酸(酢酸など)を用いる場合が多い。
なお、十分な濃度の水が存在する従来のカルボニル化反応では、一酸化炭素と水とのシフト反応により水素が十分に発生し、反応に進行に伴って生じる低活性なRh(III)触媒を活性種(Rh(I)触媒)に速やかに変換して、触媒活性の低下が防止されているとともに、Rh(III)触媒から不溶性成分(ヨウ化ロジウムなど)への変換を防止して、不溶性成分の沈降が抑制されている。それに対し、本発明では、アルコールのカルボニル化反応を有限量の水の存在下で行うが、このような有限量の水の存在下でも、触媒活性の低下や不溶性成分の沈降を抑制できる。
反応系に含まれる水濃度は、例えば、0.1〜10重量%、好ましくは0.1〜7重量%、さらに好ましくは0.1〜5重量%程度である。なお、水濃度が低いほど、一酸化炭素と水とのシフト反応による水素の生成が減少して、副生成物(アセトアルデヒド、ギ酸、プロピオン酸、炭化水素類など)の生成を抑制できるものの、反応速度が低下したり、金属触媒が不安定化する傾向にある。このような不具合を改善するため、必要により、アルカリ金属ハライド(前記例示のアルカリ金属ハライド)、アルカリ金属の第4級アンモニウム塩又は第4級ホスホニウム塩など、反応系において、ヨウ化物塩を形成可能な化合物を反応系に添加してもよい。これらの成分のうち、溶解性の点から、アルカリ金属ヨウ化物、特にヨウ化リチウムを用いるのが好ましい。
前記カルボニル化反応では、炭素数nのアルコール(メタノールなど)に対応する炭素数n+1のカルボン酸(酢酸など)が生成するとともに、生成したカルボン酸とアルコールとのエステル(酢酸メチルなど)、エステル化反応に伴って水、さらには前記アルコールに対応する炭素数n+1のアルデヒド(アセトアルデヒドなど)及び炭素数n+2のカルボン酸(プロピオン酸など)などが生成する。
(カルボン酸の分離精製工程)
反応系で生成した反応混合物(反応液)は、反応系から連続的に抜き出され(缶出され)、バルブを備えた供給ラインを通じて、蒸留工程[カルボン酸の分離(及び/又は精製)工程(蒸留塔)]へ導入される。蒸留工程は、単一の蒸留塔(例えば、触媒分離塔のみ)で構成してもよく、複数の蒸留塔(例えば、触媒分離塔とカルボン酸精製塔との組合せなど)で構成してもよい。そして、触媒分離塔では、少なくとも高沸点触媒成分[金属含有触媒成分(金属触媒成分)、例えば、ロジウム触媒などのカルボニル化触媒(金属触媒)及びアルカリ金属ハライド)を分離するとともに、カルボン酸を含む低沸点成分を蒸気として分離する。
金属触媒成分の分離は、慣用の分離方法又は分離装置により行うことができるが、通常、蒸留塔(棚段塔、充填塔、フラッシュ蒸留塔など)、蒸発槽などを利用して行うことができる。また、蒸留と、工業的に汎用されるミストや固体の捕集方法とを併用して、金属触媒成分を分離してもよい。
前記反応混合物は、蒸留により、反応生成物を含む低沸点成分としての蒸気成分と、高沸点成分としての液体成分とに分離される。
なお、前記触媒分離塔では、金属触媒成分とともに、炭素数n+2のカルボン酸を含む高沸点成分を反応混合物から分離してもよい。分離した前記高沸点成分は、さらに金属触媒成分と炭素数n+2のカルボン酸とに分離し、分離した金属触媒成分を反応系にリサイクルしてもよい。
また、蒸留工程は、前記図3の例のように、金属触媒成分を分離する触媒分離工程(触媒分離塔)と、炭素数n+2のカルボン酸などの高沸不純物を分離するカルボン酸精製工程又は高沸成分回収工程(カルボン酸精製塔)とで構成してもよい。
触媒分離塔又はカルボン酸精製塔で分離された低沸点成分は、そのまま製品カルボン酸として使用してもよいが、生成物であるカルボン酸(酢酸など)の他に、ヨウ化メチルなどの助触媒、原料アルコールと生成物カルボン酸とのエステル(酢酸メチルなど)、水、微量の副生成物(アセトアルデヒドなどのアルデヒドやプロピオン酸などの炭素数n+2のカルボン酸、ギ酸、クロトンアルデヒドなどの過マンガン酸カリウム試験の成績を悪化させる物質(酢酸の製品規格で不合格の原因となる物質)、ヨウ素イオン、ヨウ化ヘキシルなどのヨウ化アルキル類など)を含むため、さらに分離又は精製工程に供して、精製されたカルボン酸を得てもよい。
より詳細には、触媒分離塔又はカルボン酸精製塔(高沸成分回収塔)で分離された低沸点成分をさらに低沸成分回収工程(低沸成分回収塔)に供し、カルボン酸(酢酸など)よりも低沸点の成分(水、酢酸メチルなどのエステル、ヨウ化メチルなどの助触媒、アセトアルデヒドなどの炭素数n+1のアルデヒドなど。以下、単に、低沸不純物と称する場合がある)を回収するとともに、高沸点成分として酢酸などのカルボン酸を回収してもよい。回収した前記低沸不純物を含む留分は、反応系にリサイクルしてもよい。また、低沸不純物を含む前記留分をさらにアルデヒド回収工程(蒸留塔など)に供し、アルデヒドを除去した後、残りの成分を反応系にリサイクルしてもよい。
前記低沸成分回収塔で分離したカルボン酸を含む高沸点成分は、製品カルボン酸として回収できる。また、触媒分離塔からのカルボン酸を含む低沸点成分を低沸成分回収塔に供給し、低沸不純物を分離することにより得られたカルボン酸を含む高沸点成分は、さらに、カルボン酸精製工程又は高沸成分回収工程(カルボン酸精製塔)に供し、炭素数n+2以上のカルボン酸(プロピオン酸など)などの生成物であるカルボン酸より高沸点の成分(高沸不純物)を除去し、さらに純度の高い炭素数n+1のカルボン酸を得てもよい。
また、前記低沸成分回収工程では、必要により、カルボン酸エステル(酢酸メチルなど)、ヨウ化アルキル(ヨウ化メチルなど)など、水と共沸可能な成分を添加することにより、酢酸などのカルボン酸と水との分離性を高めてもよい。
なお、前記カルボン酸精製工程及び低沸成分回収工程は、いずれか一方を行ってもよく、双方の工程を行ってもよい。カルボン酸精製工程及び低沸成分回収工程の順序も特に制限されず、いずれを先に行ってもよい。これらの工程は、通常、触媒分離工程の後に行われる。
カルボン酸精製工程及び低沸成分回収工程は、慣用の分離方法又は分離装置、例えば、蒸留塔(棚段塔、充填塔、フラッシュ蒸留塔など)などを利用して行うことができる。また、カルボン酸の分離工程(触媒分離工程、カルボン酸精製工程などを含む蒸留工程)及び低沸成分回収工程などでは、反応混合物を加熱してもよく、加熱することなく蒸気成分と液体成分とを分離してもよい。例えば、フラッシュ蒸留を利用する場合、断熱フラッシュにおいては、加熱することなく減圧することにより反応混合物から蒸気成分と液体成分とに分離でき、恒温フラッシュでは、反応混合物を加熱し減圧することにより反応混合物から蒸気成分と液体成分とに分離でき、これらのフラッシュ条件を組み合わせて、反応混合物を分離してもよい。これらのフラッシュ蒸留は、例えば、反応混合物を80〜200℃程度の温度で圧力(絶対圧力)50〜1,000kPa(例えば、100〜1,000kPa)、好ましくは100〜500kPa、さらに好ましくは100〜300kPa程度で行うことができる。
(一酸化炭素及び/又は水素濃度の制御工程)
本発明では、反応系の液相(反応液)中に含まれる一酸化炭素及び/又は水素の濃度(割合)を特定の範囲に維持することにより、反応に活性な1価のロジウム錯体の割合を高めることができ、反応器の水素分圧を必要以上に高めることなくロジウムの沈降を抑制し、反応器でのカルボン酸(酢酸など)の生産性を高め、かつ副生成物の生成を減少させることができる。前記反応液中の一酸化炭素及び水素の濃度は、反応器から蒸留塔(蒸発槽)に送られる途中の反応液に一酸化炭素及び/又は水素を含むガスを供給する方法に限らず、反応器中の一酸化炭素及び/又は水素の分圧、反応圧力、反応温度、原料の供給量、リサイクル量などをコントロール(例えば、前述の範囲でコントロール)することにより、一定のレベルに保ってもよい。
反応系の液相中に含まれる一酸化炭素の量(割合)は、反応系の一酸化炭素の分圧1MPa及び液相の重量1kg当たり、少なくとも2mmol(例えば、2〜60mmol)、好ましくは3〜50mmol、さらに好ましくは3〜40mmol程度である。また、反応系の液相中に含まれる水素の量(割合)は、反応系の水素の分圧1MPa及び液相の重量1kg当たり、少なくとも50mmol(例えば、50〜300mmol)、好ましくは50〜200mmol、さらに好ましくは70〜200mmol程度である。なお、反応系中の液相中に含まれる一酸化炭素及び水素の濃度(割合)は、少なくとも一方が上記範囲を充足すればよく、双方が上記範囲を充足してもよい。
本発明では、反応系の水濃度が低いにも拘わらず、高い生成速度(例えば、空時収量10mol/L/h(mol/(L・h))以上の生成速度)で酢酸などの目的とするカルボン酸を製造できる。また、本発明では、副生成物の生成を大幅に抑制することもできる。例えば、アセトアルデヒドなどのアルデヒド類の生成速度を、目的とするカルボン酸(酢酸など)の生成速度の1/1500以下(例えば、0〜1/1500)、好ましくは1/2100以下(例えば、0〜1/2100)、さらに好ましくは1/2300以下(例えば、0〜1/2300)にまで低減することができる。
本発明は、酢酸などのカルボン酸の工業的な製造方法、特に連続法によるカルボン酸の製造方法に有用である。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
比較例1
反応器に、反応原料(メタノール及び一酸化炭素)、触媒液、及び低沸成分(ヨウ化メチル、酢酸メチル、及び水)を、連続的に供給し、反応圧力3.0MPaG(ゲージ圧)、一酸化炭素分圧1.1MPaA(絶対圧)、水素分圧0.025MPaA(絶対圧)、反応温度194℃の条件下で反応を行った。反応液を2.00kg/hの供給量で、蒸発槽に導いて、生成した酢酸及び他の低沸成分を蒸発させ、触媒成分を含む高沸点成分をポンプで昇圧して反応器に循環させた。
酢酸の生成速度は22.5mol/L/h(mol/(L・h))であった。また、蒸発槽から排出された一酸化炭素及び水素は、各々3.4mmol/h及び2.0mmol/hであり、単位分圧、反応液の単位重量(kg)あたりの反応液中の一酸化炭素及び水素は、各々1.5mmol/kg/MPa(mmol/(kg・MPa))及び40mmol/kg/MPa(mmol/(kg・MPa))であった。アセトアルデヒドの生成速度は11mmol/L/h(mmol/(L・h)であり、酢酸の生成速度の2100分の1であった。
反応器出口において、反応液の赤外スペクトルを測定し、反応液中の1価のロジウム錯体の割合を算出したところ、8モル%であった。すなわち、ロジウム触媒の濃度低下速度は1.61モル%/hで反応が継続できないほど大きな値であった。
実施例1
反応器に、反応原料(メタノール及び一酸化炭素)、触媒液、及び低沸成分(ヨウ化メチル、酢酸メチル、及び水)を、連続的に供給し、反応圧力3.5MPaG、一酸化炭素分圧1.7MPaA、水素分圧0.028MPaA、反応温度189℃の条件下で反応を行った。反応液を1.97kg/hの供給量で、蒸発槽に導いて、生成した酢酸及び他の低沸成分を蒸発させ、触媒成分を含む高沸成分をポンプで昇圧して反応器に循環させた。
酢酸の生成速度は23.1mol/L/h(mol/(L・h))であった。また、蒸発槽から排出された一酸化炭素及び水素は、各々11.4mmol/h及び6.1mmol/hであり、単位分圧、反応液の単位重量(kg)あたりの反応液中の一酸化炭素及び水素は、各々3.5mmol/kg/MPa(mmol/(kg・MPa))、111mmol/kg/MPa(mmol/(kg・MPa))であった。アセトアルデヒドの生成速度は9.3mmol/L/h(mmol/(L・h))であり、酢酸の生成速度の2500分の1であった。ロジウム触媒の濃度低下速度は0.47モル%/hに減少した。
反応器出口において、反応液の赤外スペクトルを測定し、反応液中の1価のロジウム錯体の割合を算出したところ、40モル%であった。
実施例2
反応器に、反応原料(メタノール及び一酸化炭素)、触媒液、及び低沸成分(ヨウ化メチル、酢酸メチル、及び水)を、連続的に供給し、反応圧力3.5MPaG、一酸化炭素分圧1.9MPaA、水素分圧0.031MPaA、反応温度186℃の条件下で反応を行った。反応液を2.00kg/hの供給量で、蒸発槽に導いて、生成した酢酸及び他の低沸成分を蒸発させ、触媒成分を含む高沸成分をポンプで昇圧して反応器に循環させた。
酢酸の生成速度は23.6mol/L/h(mol/(L・h))であった。また、蒸発槽から排出された一酸化炭素及び水素は、各々28.8mmol/h及び8.4mmol/hであり、単位分圧、反応液の単位重量(kg)あたりの反応液中の一酸化炭素及び水素は、各々7.7mmol/kg/MPa(mmol/(kg・MPa))及び135mmol/kg/MPa(mmol/(kg・MPa))であった。アセトアルデヒドの生成速度は5.4mmol/L/h(mmol/(L・h))であり、酢酸の生成速度の4400分の1であった。
比較例1と同様に、反応器出口における1価ロジウム錯体の割合を算出したところ43モル%であり、1価ロジウム触媒の濃度低下速度は0.12モル%/hまで減少した。
実施例3
反応器に、反応原料(メタノール及び一酸化炭素)、触媒液、及び低沸成分(ヨウ化メチル、酢酸メチル、及び水)を、連続的に供給し、反応圧力3.0MPaG(ゲージ圧)、一酸化炭素分圧1.3MPa(絶対圧)、水素分圧0.029MPa(絶対圧)、反応温度187℃の条件下で反応を行った。反応液を2.00kg/hの供給量で、蒸発槽に導いて、生成した酢酸及び他の低沸成分を蒸発させ、触媒成分を含む高沸成分をポンプで昇圧して反応器に循環させた。
酢酸の生成速度は19.7mol/L/h(mol/(L・h))であった。また、蒸発槽から排出された一酸化炭素及び水素は、各々31.7mmol/h及び7.4mmol/hであり、単位分圧、反応液の単位重量(kg)あたりの反応液中の一酸化炭素及び水素は各々12mmol/kg/MPa(mmol/(kg・MPa))及び128mmol/kg/MPa(mmol/(kg・MPa))であった。アセトアルデヒドの生成速度は5.5mmol/L/h(mmol/(L・h))であり、酢酸の生成速度の3600分の1であった。
比較例1と同様に、反応器出口における1価ロジウム錯体の割合を算出したところ48モル%であり、1価ロジウム触媒の濃度低下速度は0.08モル%/hであった。
実施例4
反応器に、反応原料(メタノール及び一酸化炭素)、触媒液、及び低沸成分(ヨウ化メチル、酢酸メチル、及び水)を、連続的に供給し、反応圧力3.0MPaG、一酸化炭素分圧1.3MPaA、水素分圧0.030MPaA、反応温度189℃の条件下で反応を行った。反応液を2.06kg/hの供給量で、蒸発槽に導いて、生成した酢酸及び他の低沸成分を蒸発させ、触媒成分を含む高沸成分をポンプで昇圧して反応器に循環させた。
酢酸の生成速度は20.0mol/L/h(mol/(L・h))であった。また、蒸発槽から排出された一酸化炭素及び水素は、各々33.9mmol/h及び6.5mmol/hであり、単位分圧、反応液の単位重量(kg)あたりの反応液中の一酸化炭素と水素は各々13mmol/kg/MPa(mmol/(kg・MPa))、及び105mmol/kg/MPa(mmol/(kg・MPa))であった。アセトアルデヒドの生成速度は5.1mmol/L/h(mmol/(L・h))で酢酸の生成速度の3900分の1であった。
比較例1と同様に、反応器出口における1価ロジウム錯体の割合を算出したところ52モル%であり、1価ロジウム触媒の濃度低下速度は0.07モル%/hであった。
実施例5
反応器に、反応原料(メタノール及び一酸化炭素)、触媒液、及び低沸成分(ヨウ化メチル、酢酸メチル、及び水)を、連続的に供給し、反応圧力2.7MPaG、一酸化炭素分圧1.2MPaA、水素分圧0.030MPaA、反応温度187℃の条件下で反応を行った。反応液を2.00kg/hの供給量で、蒸発槽に導いて、生成した酢酸及び他の低沸成分を蒸発させ、触媒成分を含む高沸成分をポンプで昇圧して反応器に循環させた。
酢酸の生成速度は12.0mol/L/h(mol/(L・h))であった。また、蒸発槽から排出された一酸化炭素及び水素は、各々57.9mmol/h及び4.7mmol/hであり、単位分圧、反応液の単位重量(kg)あたりの反応液中の一酸化炭素及び水素は各々24mmol/kg/MPa(mmol/(kg・MPa))及び81mmol/kg/MPa(mmol/(kg・MPa))であった。アセトアルデヒドの生成速度は3.2mmol/L/h(mmol/(L・h))であり、酢酸の生成速度の3700分の1であった。
比較例1と同様に、反応器出口における1価のロジウム錯体の割合を算出したところ、45モル%であり、1価ロジウム触媒の濃度低下速度は0.11モル%/hであった。
実施例6
反応器に、反応原料(メタノール及び一酸化炭素)、触媒液、及び低沸成分(ヨウ化メチル、酢酸メチル、及び水)を、連続的に供給し、反応圧力3.0MPaG、一酸化炭素分圧1.5MPaA、水素分圧0.034MPaA、反応温度195℃の条件下で反応を行った。反応液を2.01kg/hの供給量で、蒸発槽に導いて、生成した酢酸及び他の低沸成分を蒸発させ、触媒成分を含む高沸成分をポンプで昇圧して反応器に循環させた。
酢酸の生成速度は22.7mol/L/h(mol/(L・h))であった。また、蒸発槽から排出された一酸化炭素及び水素は、各々8.7mmol/h及び5.8mmol/hであり、単位分圧、反応液の単位重量(kg)あたりの反応液中の一酸化炭素及び水素は各々2.9mmol/kg/MPa(mmol/(kg・MPa))及び85mmol/kg/MPa(mmol/(kg・MPa))であった。アセトアルデヒドの生成速度は10.1mmol/L/h(mmol/(L・h))であり、酢酸の生成速度の2200分の1であった。
比較例1と同様に、反応器出口における1価のロジウム錯体の割合を算出したところ、62モル%であり、1価ロジウム触媒の濃度低下速度は0.04モル%/hであった。
実施例7
反応器に、反応原料(メタノール及び一酸化炭素)、触媒液、及び低沸成分(ヨウ化メチル、酢酸メチル、及び水)を、連続的に供給し、反応圧力3.0MPaG、一酸化炭素分圧1.4MPaA、水素分圧0.020MPaA、反応温度195℃の条件下で反応を行った。反応液を2.02kg/hの供給量で、蒸発槽に導いて、生成した酢酸及び他の低沸成分を蒸発させ、触媒成分を含む高沸成分をポンプで昇圧して反応器に循環させた。
酢酸の生成速度は19.2mol/L/h(mol/(L・h))であった。また、蒸発槽から排出された一酸化炭素及び水素は、各々8.5mmol/h及び4.3mmol/hであり、単位分圧、反応液の単位重量(kg)あたりの反応液中の一酸化炭素及び水素は各々3.0mmol/kg/MPa(mmol/(kg・MPa))及び74mmol/kg/MPa(mmol/(kg・MPa))であった。アセトアルデヒドの生成速度は6.7mmol/L/h(mmol/(L・h))であり、酢酸の生成速度の2900分の1であった。
比較例1と同様に、反応器出口における1価のロジウム錯体の割合を算出したところ、60モル%であり、1価ロジウム触媒の濃度低下速度は0.10モル%/hであった。
比較例及び実施例で用いた触媒液の組成を表1に示す。なお、ロジウム触媒として、Rh・I・カルボニル錯体を用いた。また、実施例及び比較例で得られた結果を表2に示す。
Figure 0005075336
(表1中、MeIはヨウ化メチルを示し、MAは酢酸メチルを示し、ACは酢酸を示す)
Figure 0005075336
(表2中、ACは酢酸を示し、ADはアセトアルデヒドを示す)
図1は本発明のカルボン酸の製造方法を説明するためのフロー図である。 図2は、図1における制御ユニットを説明するためのブロック図である。 図3は本発明のカルボン酸の製造方法の他の例を説明するためのフロー図である。 図4は、図3における制御ユニットを説明するためのブロック図である。
符号の説明
1…反応系(反応器)
2,6,7,8…供給ライン
3…蒸留塔
4…制御装置(制御ユニット)
5a,5b…バルブ
f1,Df2,Df3,Df4…流量計
c1,Dc2,Dc4…分析計
P1…圧力計
21a,21b…演算ユニット
23,24…設定ユニット
25,26…比較ユニット
27,28…駆動ユニット

Claims (6)

  1. ロジウム触媒と、アルキルハライド及び/又はハロゲン化水素とで構成された触媒系、並びに反応系の液相全体に対して、0.1〜10重量%の割合の水の存在下、炭素数nのアルコール又はその誘導体と一酸化炭素とを連続的に反応させ、反応混合物を反応系から連続的に抜き出して、蒸留工程に導入し、少なくとも前記ロジウム触媒を含む高沸点成分と、炭素数n+1のカルボン酸を含む低沸点成分とを分離する炭素数n+1のカルボン酸の製造方法であって、前記反応系の液相中に含まれる一酸化炭素及び/又は水素の量が、下記の(i)及び(ii)の少なくともいずれかを充足するとともに、反応系において、一酸化炭素の分圧が0.9〜3MPaであり、かつ水素の分圧が0.01〜0.1MPaであるカルボン酸の製造方法。
    (i)一酸化炭素の量が、反応系の一酸化炭素の分圧1MPa及び液相の重量1kg当たり、少なくとも2mmolである
    (ii)水素の量が、反応系の水素の分圧1MPa及び液相の重量1kg当たり、少なくとも50mmolである
  2. ロジウム触媒、アルカリ金属ヨウ化物、及びヨウ化アルキルで構成された触媒系の存在下で反応を行い、酢酸を少なくとも10mol/L/hの生成速度で生成させ、反応液を連続的に抜き出して反応系の圧力よりも低い圧力の蒸留工程に導入する請求項1記載の製造方法。
  3. 炭素数n+1のカルボン酸が酢酸であり、副生するアセトアルデヒドの生成速度が酢酸の生成速度の1/2100以下である請求項1記載の製造方法。
  4. 反応系において、ロジウム触媒、ヨウ化リチウム及びヨウ化メチルで構成された触媒系、並びに液相全体に対して0.1〜5重量%の水の存在下、メタノールと一酸化炭素とを連続的に反応させ、酢酸を製造する方法であって、前記反応系の液相中に含まれる一酸化炭素の量が、反応系の一酸化炭素の分圧1MPa及び液相の重量1kg当たり2〜50mmolであり、前記反応系の液相中に含まれる水素の量が、反応系の水素の分圧1MPa及び液相の重量1kg当たり50〜400mmolであり、酢酸の生成速度が少なくとも18mol/L/hであり、副生するアセトアルデヒドの生成速度が酢酸の生成速度の1/2300以下である請求項1記載の製造方法。
  5. 蒸留工程が、触媒分離工程と、カルボン酸精製工程とで構成されており、反応系から抜き出した反応混合物を、前記触媒分離工程に導入して、ロジウム触媒を含む高沸点成分と、炭素数n+1のカルボン酸を含む低沸点成分とに分離し、この低沸点成分を前記カルボン酸精製工程に導入して、高沸点不純物と、炭素数n+1のカルボン酸を含む低沸点成分と、少なくとも一酸化炭素及び水素を含む排ガス成分とに分離する請求項1記載の製造方法。
  6. ロジウム触媒と、アルキルハライド及び/又はハロゲン化水素とで構成された触媒系、並びに反応系の液相全体に対して、0.1〜10重量%の割合の水の存在下、炭素数nのアルコール又はその誘導体と一酸化炭素とを連続的に反応させ、反応混合物を反応系から連続的に抜き出して、蒸留工程に導入し、前記ロジウム触媒及びハロゲン化物塩を含む高沸点成分と、炭素数n+1のカルボン酸を含む低沸点成分とに分離する炭素数n+1のカルボン酸の製造方法において、前記反応系の液相中に含まれる一酸化炭素及び/又は水素の量を、下記の(i)及び(ii)の少なくともいずれかに調整するとともに、反応系において、一酸化炭素の分圧を0.9〜3MPaに調整し、かつ水素の分圧を0.01〜0.1MPaに調整することにより、前記ロジウム触媒の沈降及び副生成物の生成を抑制し、カルボン酸の生成速度を向上させる方法。
    (i)一酸化炭素の量が、反応系の一酸化炭素の分圧1MPa及び液相の重量1kg当たり、少なくとも2mmolである
    (ii)水素の量が、反応系の水素の分圧1MPa及び液相の重量1kg当たり、少なくとも50mmolである
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