図1(a)は、本発明の電磁波遮蔽部材の一例を概略的に示す部分切欠き平面図であり、図1(b)は、図1(a)に示したI−I線断面の概略図である。これらの図に示した電磁波遮蔽部材20は、透明基材1と、接合剤5により透明基材1上に接合されたメッシュ状金属層10と、透明樹脂により形成された硬化塗膜15とを有している。以下、これらの部材毎に詳述し、その後、電磁波遮蔽部材の変形例について説明する。
(1)透明基材;
透明基材1は、メッシュ状金属層10を支持するためのものである。この透明基材1としては、ガラス基板や透明樹脂基板のように可撓性に乏しい透明なリジッド材を用いることも可能であるが、電磁波遮蔽部材20の設置場所の選択の自由度を高めるという観点から、あるいは、電磁波遮蔽部材20の生産性を高めるという観点からは、ガラスシート、透明樹脂シート、又は透明樹脂フィルムのように可撓性に富んだものを用いることが好ましい。
透明基材1の材質は、電磁波遮蔽部材20の用途や許容される生産コスト等に応じて適宜選択可能である。また、透明基材1の光透過率についても、電磁波遮蔽部材20の用途に応じて適宜選択可能である。例えば、電磁波遮蔽部材20が表示装置の表示面上に配置されるものである場合には、透明基材1として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、アクリル樹脂、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルケトン等により形成された膜厚12〜300μm程度、可視光透過率(全光線透過率)80%程度以上のフィルムないしシートを用いることが好ましい。
(2)接合剤;
接合剤5は、メッシュ状金属層10を金属箔のパターニングによって形成する際に、前記の金属箔をドライラミネーション法やウェットラミネーション法等によって透明基材1上に接合させるためのもの、あるいは、所望の金属箔をメッシュ状にパターニングした後にドライラミネーション法やウェットラミネーション法等によって透明基材1上に接合させるためのものである。この接合剤5は、図示のように、透明基材1上に層を形成しているので、以下、「接合剤層5」という。接合剤層5は、実用上充分な接合強度、耐エッチング特性、及び耐光性を有していることが好ましい。
この接合剤層5の具体例としては、アクリル系、エステル系、ウレタン系、フッ素系、ポリイミド系、エポキシ系、又はポリウレタンエステル系等の熱硬化型もしくは光硬化型の接着剤、あるいは、主成分としてメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、又は2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等を含有したアクリル系粘着剤によって形成された層が挙げられる。なお、本明細書でいう「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタアクリレートの双方を意味する。
接合剤層5の膜厚は、使用する接合剤の種類に応じて、0.5〜50μm程度の範囲内で適宜選定可能である。接合剤層5により透明基材1上に接合された金属箔をウェットエッチングによってパターニングしてメッシュ状金属層10とする場合には、接合剤層5がエッチングストッパとしても機能するように、その種類及び膜厚を選定することが好ましい。光透過性及び像鮮明度がそれぞれ高い電磁波遮蔽部材20を得るうえからは、接合剤層5と透明基材1との屈折率差を小さくすることが好ましく、波長587.6nmの光を測定光としたときの屈折率差で0.2程度以下、更には0.1以下とすることが好ましい。
なお、メッシュ状金属層10は、その母材となる金属層を例えば蒸着法により透明基材1上に形成し、この金属層をパターニングすることによっても、あるいは、所定形状のマスクを介して所望の金属を透明基材1上に蒸着させることによっても、形成可能である。これらの場合には接合剤層5を省略することも可能である。
(3)メッシュ状金属層;
メッシュ状金属層10は、電磁波遮蔽部材20の光透過性を高く保ちつつ電磁波を遮蔽するための部材であり、平面視上、透明基材1に多数の光透過部12を画定している。個々の光透過部12の平面形状は、例えば三角形、四角形、六角形等、適宜選定可能である。本形態の電磁波遮蔽部材20での各光透過部12の平面形状は、四角形である。メッシュ状金属層10のうち、光透過部12の辺を平面視上画定する領域それぞれが細線部10aである。以下、4つの細線部10aそれぞれの基点となっている領域を「交差部10b」という。
このメッシュ状金属層10は、例えば銅、鉄、ニッケル、クロム、アルミニウム、金、銀、ステンレス、タングステン、クロム、チタン等の金属により形成することができる。光透過性及び電磁波遮蔽性能が共に高い電磁波遮蔽部材20を低コストの下に得るという観点からは、銅のように安価で、表面反射率が低く、かつ導電性の高い金属によってメッシュ状金属層10を形成することが好ましい。電磁波遮蔽性能が高い電磁波遮蔽部材20を低コストの下に製造するうえからは、所望の金属箔を上述した接合剤層5により透明基材1上に接合し、この金属箔をウェットエッチングによって所望形状にパターニングしてメッシュ状金属層10とするか、所望の金属箔をメッシュ状にパターニングした後に接合剤層5により透明基材1上に接合してメッシュ状金属層10とすることが好ましい。金属箔としては圧延箔や電解箔を用いることができるが、低コストであるという観点からは圧延箔が好ましい。
メッシュ状金属層10の開口率(メッシュ状金属層10の平面視上の面積と光透過部12の平面視上の総面積との和に占める光透過部12の平面視上の総面積の百分率を意味する。)を70%程度以上にすることにより、光透過性の高い電磁波遮蔽部材20を得易くなる。このとき、細線部10aの平面視上の平均線幅は20μm程度以下、特に15μm以下とすることが好ましい。
一方、電磁波遮蔽部材20の電磁波遮蔽性能を高めるという観点からは、メッシュ状金属層10の導電性を高めることが好ましいので、当該メッシュ状金属層10の材質にもよるが、その平均膜厚を5〜30μm程度、好ましくは5〜15μm程度とし、かつ、細線部10aでの平面視上の平均線幅を5μm以上とすることが望ましい。
電磁波遮蔽部材20が表示装置の表示面上に配置されるものである場合には、電磁波遮蔽部材20の光透過性を高めることの他に、電磁波遮蔽部材20の像鮮明度を高めることが望まれる。電磁波遮蔽部材20の像鮮明度を高めるという観点からは、メッシュ状金属層10の表面の十点平均粗さ(Rz)を0.1μm程度以上、特に0.5μm程度以上とすることが好ましい。メッシュ状金属層10の表面が鏡面であると、メッシュ状金属層10の表面で反射した外光が視認され易くなる結果として、電磁波遮蔽部材20の像鮮明度が低下する。十点平均粗さ(Rz)の値が3μmを超えると、メッシュ状金属層10を透明基材1上に接合させる際に両者の界面に気泡が残り易くなり、適切な接合が困難になる。
また、メッシュ状金属層10の上下面のうちで、又はメッシュ状金属層10の母材の上下面のうちで、少なくとも電磁波遮蔽部材20を表示面上に配置したときに外側にくる面に、クロメート処理等の方法により黒化処理を施しておくことによっても、電磁波遮蔽部材20の像鮮明度を高めることができる。
例えば、十点平均粗さ(Rz)が0.1〜3μm程度の銅箔をメッシュ状金属層10の母材として用い、かつ、各光透過部12の平面形状を四角形とする場合には、メッシュ状金属層10の平均膜厚を5〜15μm程度、細線部10aでの平面視上の平均線幅を5〜15μm程度とし、さらに、各光透過部12の平面視上の大きさを150〜400μm□程度とすることにより、電磁波遮蔽性能、光透過性、及び像鮮明度がそれぞれ高い電磁波遮蔽部材20を得ることが容易になる。
(4)硬化塗膜;
硬化塗膜15は、本発明において最も特徴的な構成要素であり、透明樹脂により形成されてメッシュ状金属層10及び各光透過部12を被覆している。この硬化塗膜15のうちでメッシュ状金属層10上に位置する領域は、図1(a)及び図1(b)に示すように、光透過部12の平面視上の中央部に位置する領域よりも盛り上がって隆起部15aを形成している。
隆起部15aは、メッシュ状金属層10が比較的厚膜であることから、硬化塗膜15の膜厚をできるだけ薄くしてメッシュ状金属層10及び各光透過部12を被覆しようとしたときに不可避的に生じる。硬化塗膜15の膜厚を厚くすれば隆起部15aの形成を抑制することが可能であるが、硬化塗膜15の膜厚を厚くすればする程、当該硬化塗膜15での吸収光量が増大し、電磁波遮蔽部材20の光透過性や像鮮明度が低下する。また、1回の塗工で硬化塗膜15を形成することが困難になる。
硬化塗膜15に隆起部15aが形成されている場合、メッシュ状金属層10の交差部10b上での隆起部15aの最大膜厚は、通常、メッシュ状金属層10の細線部10a上での隆起部15aの最大膜厚よりも厚くなる。隆起部15aは、各交差部10b上においては微小な凸レンズとして機能する。このため、電磁波遮蔽部材20を透過した光の発散、収束の度合いは、メッシュ状金属層10の細線部10aの近傍、メッシュ状金属層10の交差部10bの近傍、及び光透過部12の平面視上の中央部とで互いに相違する。この相違が大きいと、電磁波遮蔽部材20にいわゆる虹ムラ等が生じて像鮮明度が低下する。
しかしながら、電磁波遮蔽部材20では、細線部10a上での隆起部15aの平均傾斜角度が10°以下に抑えられているので、上記の相違が小さい。そのため、電磁波遮蔽部材20では高い像鮮明度が得られる。ここで、本発明でいう「細線部上での硬化塗膜の平均傾斜角度」とは、次のようにして求めた平均傾斜角度を意味する。
まず、図2に示すように、電磁波遮蔽部材20について、細線部10aの長手方向と直交する方向の断面をとり、光透過部12の平面視上の中央部での硬化塗膜15の上面を基準にして、細線部10a上での硬化塗膜15(隆起部15a)の頂部Pの高さL1を測定する。また、頂部Pを通る垂線VL(ただし、透明基材1の表面に対する垂線を意味する。)を仮想的に引いて、この垂線VL上において頂部Pからの距離がL1の90%に相当する点Bを求める。図2においては、頂部Pと点Bとの距離をL2で表している。次いで、透明基材1の表面に水平で点Bを通る水平線HLを仮想的に引き、この水平線HLと硬化塗膜15(隆起部15a)の斜面との交点C1、C2を求めて、点Bと点C1との距離L3、及び点Bと点C2との距離L4を測定する。この後、tanθ1=L2/L3とし、tanθ2=L2/L4として求めたθ1とθ2との平均値Avを求める。同様にして、任意に抽出した複数の細線部10a上での硬化塗膜15(隆起部15a)について平均値Avを求める。これらの平均値Avの算術平均が、本発明でいう「細線部上での硬化塗膜の平均傾斜角度」である。なお、図2においては、便宜上、ハッチングを省略している。
このような硬化塗膜15は、鎖状構造を有する透明樹脂によって形成することもできるし、架橋構造を有する透明樹脂によって形成することもできる。具体的には、(i)溶剤を揮散させるだけで固化する溶剤希釈型透明樹脂組成物、(ii)加熱することによって重合反応ないし架橋反応が進行して硬化する熱硬化型透明樹脂組成物、又は、(iii)電磁波の照射によって重合反応ないし架橋反応が進行して硬化する透明樹脂組成物(以下、本明細書においてはこの透明樹脂組成物を「光硬化型透明樹脂組成物」という。)を用いて形成することができる。本明細書においては、溶剤希釈型透明樹脂組成物の溶剤を揮散させることでこの溶剤希釈型透明樹脂組成物を固化させて得た塗膜も「硬化塗膜」に含まれるものとする。
上記の溶剤希釈型透明樹脂組成物の具体例としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド系樹脂等を溶剤で希釈したものが挙げられる。
また、上記の熱硬化型透明樹脂組成物の具体例としては、重合又は架橋によりアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド系樹脂になるもの等が挙げられる。
そして、上記の光硬化型透明樹脂組成物としては、モノマー成分とオリゴマー成分とを少なくとも含有しているものが好ましい。モノマー成分の具体例としては、(A)酢酸ビニル、スチレン、N−ビニルピロリドン等のビニルモノマー、(B)ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、n−デシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンテニロキシエチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート等の単官能アクリレート系モノマー、(C)1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール400ジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAジエトキシジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ヒドロキシビバリ酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の多官能アクリレート系モノマー、などが挙げられる。また、オリゴマー成分の具体例としては、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、シリコンアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、不飽和ポリエステル、ポリエン/チオール、ポリスチリルメタクリレート等が挙げられる。
なお、溶剤希釈型透明樹脂組成物及び熱硬化型樹脂組成物それぞれの具体例についての説明の中で挙げたフッ素系樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとヘキサフルオロプロピレンとの三元共重合体、テトラフルオロエチレンとエチレンもしくはプロピレンとの共重合体、エチレンとクロロトリフルオロエチレンとの共重合体、ペルフルオロアルコキシ樹脂、フッ化ビニリデン系樹脂、フッ化ビニル系樹脂等を例示することができる。同様に、上記のポリイミド系樹脂としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等を例示することができる。
また、熱硬化型透明樹脂組成物及び光硬化型透明樹脂組成物には、それぞれ、重合開始剤及び増感剤の少なくとも一方を必要に応じて含有させることができる。例えば、光硬化型透明樹脂組成物に含有させる重合開始剤(光重合開始剤)の具体例としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、4,4−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−ジメトキシ−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、アゾビスイソブチルニトリル、2−クロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン、3,3−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、2,4−ジメチルチオキサンソン、メチルベンゾイルフォーメート、3,3,4,4−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等が挙げられ、増感剤の具体例としては、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリエチル−n−ブチルホスフィン、ジエチルアミノエチルメタクリレート、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソブチル、2−ジメチルアミノエチルベンゾエート等が挙げられる。
硬化塗膜15の材料として溶剤希釈型透明樹脂組成物、熱硬化型透明樹脂組成物、及び光硬化型透明樹脂組成物のいずれを用いる場合でも、光透過性及び像鮮明度が高い電磁波遮蔽部材20を得るという観点からは、硬化塗膜15と接合剤層5との界面での反射を抑えるために、波長587.6nmの光を測定光としたときの屈折率差が0.2程度以下、更には0.1以下となるよう、その材料を選定することが好ましい。硬化塗膜15と接合剤層5との屈折率差が上記の値程度以下であれば、メッシュ状金属層10の材料として用いた金属箔の表面の凹凸が光透過部12内の接合剤層5の表面に転写されていたとしても、この表面と硬化塗膜15との界面での光の反射が抑制されるので、光透過性及び像鮮明度の高い電磁波遮蔽部材20を得易くなる。同様の理由から、電磁波遮蔽部材20が接合剤層5を有していない場合には、硬化塗膜15と透明基材1との屈折率差を上記の値程度以下とすることが好ましい。
硬化塗膜15による光の吸収を抑えつつ、硬化塗膜15の表面での光の乱反射、及び電磁波遮蔽部材20でのいわゆる虹ムラの発生を抑えるうえからは、メッシュ状金属層10の細線部10a上での硬化塗膜15の最大膜厚の平均値(以下、この平均値を「平均値I」と略記する。)を1〜20μm程度の範囲内にしつつ、前述した平均傾斜角度(以下、この平均傾斜角度「平均傾斜角度I」と略記する。)を10°以下にすることが好ましい。
上記の平均値Iが20μm程度より大きくなると、硬化塗膜15による吸収光量が多くなって、電磁波遮蔽部材20の光透過性が低下することがある。また、硬化塗膜15の材料として溶剤を含有した透明樹脂組成物を用いたときには、硬化塗膜15中の残留溶剤量が多くなって当該硬化塗膜15に浮きやクラックが発生し易くなり、結果として、電磁波遮蔽部材20の光透過性や像鮮明度が低下し易くなる。硬化塗膜15の材料として溶剤希釈型透明樹脂組成物、熱硬化型透明樹脂組成物、及び光硬化型透明樹脂組成物のいずれを用いる場合でも、上記の平均値Iは、1〜15μm程度の範囲内とすることが更に好ましい。
溶剤希釈型透明樹脂組成物を用いて平均値I及び平均傾斜角度Iがそれぞれ上記の範囲にある硬化塗膜15を1回の塗工で効率よく形成しようとする場合には、その23℃での粘度を0.01〜10Pa・s程度の範囲内とし、その塗工量(ただし、硬化(固化)後の塗工量を意味する。)を10〜35g/m2程度の範囲内で適宜選定することが好ましい。上記の粘度は0.03〜1Pa・s程度の範囲内とすることが更に好ましく、上記の塗工量は15〜25g/m2程度の範囲内で適宜選定することが更に好ましい。
上記の粘度条件を満たす溶剤希釈型透明樹脂組成物は、例えば、数平均分子量が1千〜30万程度の透明樹脂を固形分量が15〜35wt%程度の範囲内となるように溶剤で希釈することによって、得ることができる。このとき、透明樹脂の数平均分子量は5千〜15万程度の範囲内であることが好ましく、固形分量は15〜30wt%程度の範囲内とすることが好ましい。
また、熱硬化型透明樹脂組成物を用いて平均値I及び平均傾斜角度Iがそれぞれ上記の範囲にある硬化塗膜15を1回の塗工で効率よく形成しようとする場合には、その23℃での粘度を0.01〜2Pa・s程度の範囲内とすることが好ましく、その塗工量(ただし、硬化後の塗工量を意味する。)を10〜50g/m2程度の範囲内で適宜選定することが好ましい。上記の粘度は0.05〜0.2Pa・s程度の範囲内とすることが更に好ましく、上記の塗工量は10〜25g/m2程度の範囲内で適宜選定することが更に好ましい。
そして、光硬化型透明樹脂組成物を用いて平均値I及び平均傾斜角度Iがそれぞれ上記の範囲にある硬化塗膜15を1回の塗工で効率よく形成しようとする場合には、その23℃での粘度を0.03〜5Pa・s程度の範囲内とすることが好ましく、その塗工量(ただし、硬化後の塗工量を意味する。)を10〜35g/m2程度の範囲内で適宜選定することが好ましい。上記の粘度は0.05〜1Pa・s程度の範囲内とすることが更に好ましく、上記の塗工量は15〜25g/m2程度の範囲内で適宜選定することが更に好ましい。
上記の粘度条件を満たす熱硬化型透明樹脂組成物及び光硬化型透明樹脂組成物は、それぞれ、例えばモノマー含量又は溶剤含量を適宜調整することによって得ることができる。
硬化塗膜15の材料として溶剤希釈型透明樹脂組成物、熱硬化型透明樹脂組成物、及び光硬化型透明樹脂組成物のいずれを用いる場合でも、当該透明樹脂組成物の粘度を上述の範囲内とすることにより、硬化塗膜15の形成時に、メッシュ状金属層10における透明基材1側の基部と接合剤層5(接合剤層5が省略されている場合には透明基材1)とが形成する角部に気泡が残ることも容易に抑制することができる。
光透過性及び像鮮明度が高い電磁波遮蔽部材20を得るという観点からは、硬化塗膜15の表面の十点平均粗さ(Rz)を0.05〜7μm程度とすることも好ましい。この十点平均粗さ(Rz)が上記の範囲から外れると硬化塗膜15の表面での反射光量が増大して、あるいは、硬化塗膜15の表面での乱反射が大きくなって、電磁波遮蔽部材20の像鮮明度が低くなることがある。硬化塗膜15の表面の十点平均粗さ(Rz)は、0.1〜5μm程度の範囲内とすることが更に好ましい。この十点平均粗さ(Rz)が上述の範囲内であれば、硬化塗膜15上に他の部材を貼付する場合でも、両者の界面に気泡が残りにくくなる。
硬化塗膜15の材料として溶剤希釈型透明樹脂組成物を用いる場合、十点平均粗さ(Rz)が上述の範囲内にある硬化塗膜15は、例えば、塗膜を温度50〜130℃、風速2〜20m/秒の熱風により1〜3分かけて乾燥することにより得ることができる。このとき、残留溶剤量をできるだけ少なくすることにより、良好な硬化塗膜15を得易くなる。硬化塗膜15での残留溶剤量を少なくするためには、熱風の温度及び風速を段階的に上げて、塗膜表面があまりにも早期に乾燥してしまうのを防止することが好ましい。例えば、初期には温度50〜70℃、風速2〜5m/秒の熱風により乾燥し、塗膜表面が乾燥した段階で温度100〜130℃、風速10〜20m/秒の熱風により更に乾燥すると、残留溶剤が無いか、又は少ない良好な硬化塗膜15を得ることができる。
また、硬化塗膜15の材料として熱硬化型透明樹脂組成物又は光硬化型透明樹脂組成物を用いる場合でも、これらの透明樹脂組成物に溶剤が含有されている場合には、上記の乾燥条件と同様の条件の下に溶剤を揮散させてから、加熱により、又は電磁波の照射により重合反応もしくは架橋反応を進行させることが好ましい。熱硬化型透明樹脂組成物を硬化させるにあたっては、温度40℃〜60℃の環境下で1〜7日間養生することが好ましい。また、光硬化型透明樹脂組成物を硬化させるにあたっては、当該光硬化型透明樹脂組成物を硬化させることができる電磁波の照射強度を50〜1000mJ/cm2程度の範囲内とすることが好ましい。なお、光硬化型透明樹脂組成物が紫外線硬化型透明樹脂組成物である場合には、紫外線の光源として、例えば高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、パルスキセノンランプ等を用いることができる。
硬化塗膜15の形状保持能を実用上充分なものとするためには、そのガラス転移点を30℃以上とし、数平均分子量を数千以上とすることが好ましい。硬化塗膜15の材料として溶剤希釈型透明樹脂組成物を用いた場合には、この透明樹脂組成物に含有されている透明樹脂のガラス転移点及び数平均分子量が、略そのまま、硬化塗膜15のガラス転移点及び数平均分子量となる。一方、硬化塗膜15の材料として熱硬化型透明樹脂組成物又は光硬化型透明樹脂組成物を用いた場合には、この透明樹脂組成物の硬化条件を適宜選定することにより、硬化塗膜15のガラス転移点及び数平均分子量を制御することができる。硬化塗膜15の数平均分子量の上限値は特に限定されないが、材料として溶剤希釈型透明樹脂組成物を用いる場合には30万程度以下、特に15万程度以下となるように当該透明樹脂組成物を選定することが好ましい。また、材料として熱硬化型透明樹脂組成物又は光硬化型透明樹脂組成物を用いる場合には、500万程度以下、特に300万程度以下とすることが好ましい。硬化塗膜15のガラス転移点が上記の範囲内であれば、例えばロール・ツゥ・ロールで電磁波遮蔽部材20を生産するにあたって巻き取り時にブロッキングが発生するのを抑制することも容易になる。
以上説明した構造を有する電磁波遮蔽部材20では、上述した硬化塗膜15が形成されていることから、透明基材1を基準としたときのメッシュ状金属層10の上面及び側面での光の乱反射、硬化塗膜15の表面での光の乱反射、及び、当該電磁波遮蔽部材20でのいわゆる虹ムラの発生が抑えられ、結果として、高い光透過性及び高い像鮮明度を得ることが容易になる。また、硬化塗膜15は、その材料を1回コーティングして塗膜を形成し、この塗膜を硬化させることによって形成することが可能であるので、製造コストを抑え易い。したがって、本発明の電磁波遮蔽部材20では、光透過性及び像鮮明度がそれぞれ高いものを製造コストを抑えつつ得ることが容易である。さらに、硬化塗膜15の表面が比較的平坦であることから、この硬化塗膜15上に他の部材を貼付する場合でも、硬化塗膜15と他の部材との間に気泡が残ることが抑制され、その結果として、脱泡処理等の工程を省略することも可能になる。
電磁波遮蔽部材20は、プラズマディスプレイパネルのような表示装置の表示面から放射される電磁波を、視認される映像の画質の低下を抑制しつつ遮蔽するうえで好適である。
(5)変形例;
本発明の電磁波遮蔽部材は上述した形態のものに限定されるものではなく、種々の変形、改良、組み合わせ等が可能である。以下、幾つかの変形例について、図1(a)又は図1(b)で用いた参照符号を適宜引用しつつ、説明する。
例えばプラズマディスプレイパネルの表示面からは赤外線も放射され、この赤外線は、リモートコントローラ等の周辺機器を誤作動させる原因となることがある。したがって、本発明の電磁波遮蔽部材には、必要に応じて800〜1200nmの波長域の近赤外線を吸収する赤外線吸収能を付与することが好ましい。この赤外線吸収能は、例えば、接合剤層5及び硬化塗膜15の少なくとも一方に赤外線吸収剤を含有させることにより、あるいは、透明基材1の外表面上、又は硬化塗膜15の外表面上に赤外線吸収層を形成することにより、付与することができる。透明基材1の外表面上、又は硬化塗膜15の外表面上に赤外線吸収フィルムを貼付することによっても、付与することができる。
接合剤層5又は硬化塗膜15に赤外線吸収剤を含有させる場合、この赤外線吸収剤としては、酸化スズ、酸化インジウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アンチモン、酸化鉛、酸化ビスマス等の無機赤外線吸収剤や、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、アルミニウム系化合物、ピリリウム系化合物、セリリウム系化合物、スクワリリウム系化合物、ジイモニウム類、銅錯体類、ニッケル錯体類、ジチオール系錯体類等の有機赤外線吸収剤を用いることができる。赤外線吸収剤は、1種のみを含有させてもよいし、2種以上を含有させてもよい。
接合剤層5又は硬化塗膜15での赤外線吸収剤の含有量は、800〜1200nmの波長域の近赤外線の透過率(ただし、電磁波遮蔽部材全体としての透過率を意味する。)が20%程度以下、特に10%程度以下となるように、使用する赤外線吸収剤の種類に応じて適宜選定することが好ましい。なお、ここでいう「近赤外線の透過率」とは、(株)島津製作所製のUV−310OPC(商品名)を用いて測定した近赤外線の透過率を意味する。
接合剤層5又は硬化塗膜15に赤外線吸収剤を含有させた場合には、透明基材1の外表面上、又は硬化塗膜15の外表面上に赤外線吸収フィルムもしくは赤外線吸収層を設けた場合に比べて光学的な界面の数の増加がないので、赤外線吸収能を付与したことに伴う電磁波遮蔽部材の光透過性及び像鮮明度それぞれの低下が抑制される。
なお、接合剤層5又は硬化塗膜15に赤外線吸収剤を含有させる場合には、赤外線吸収剤の劣化や分解等を抑制するという観点から、接合剤層5及び硬化塗膜15のうちで赤外線吸収剤を含有させようとする層又は膜での水酸基価を10以下、更には5以下、特に0とすることが好ましい。同様の観点から、接合剤層5及び硬化塗膜15のうちで赤外線吸収剤を含有させようとする層又は膜での酸価を10以下、更には5以下、特に0とすることが好ましい。ここで、本明細書でいう「水酸基価」とは、試料1mgから得られるアセチル化物に結合している酢酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数を意味する。また、本明細書でいう「酸価」とは、試料1g中の遊離脂肪酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数を意味する。接合剤層5及び硬化塗膜15それぞれでの水酸基価や酸価は、これらの層又は膜の材料を適宜選定することにより、制御することができる。
また、プラズマディスプレイパネルからは、放電ガスとして用いられる希ガスから発光が起こる。例えば、希ガスとしてネオン(Ne)ガスを用いた場合には、オレンジ色の発光が生じる。このような希ガスからの発光は、表示映像の画質を低下させる要因となる。したがって、本発明の電磁波遮蔽部材には、必要に応じて、放電ガスとして用いられる希ガスからの発光を吸収する光吸収能を付与することが好ましい。この光吸収能は、例えば、接合剤層5及び硬化塗膜15の少なくとも一方に適当な光吸収色素を含有させることにより、あるいは透明基材1の外表面上、又は硬化塗膜15の外表面上に適当な光吸収層を形成することにより、付与することができる。
例えば、ネオンガスからの発光を吸収するための光吸収色素としては、シアニン系色素、ポリメチン系色素、サブフタロシアンニン系色素、ポリフィリン系色素等を用いることができる。光吸収色素は、前述した赤外線吸収剤と混在させることも可能であるし、光吸収色素を含有させる層又は膜と、赤外線吸収剤を含有させる層又は膜とを互いに別個のものとすることも可能である。
上記の光吸収層は、例えば、上述した光吸収色素と、アクリレート系粘着剤、例えば2−エチルヘキシルアクリレートを主成分とするものやブチルアクリレートを主成分とする粘着剤とを、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン、イソプロピルアルコール等の溶媒に溶解させてコーティング溶液を調製し、このコーティング溶液を透明基材1の外表面上、又は硬化塗膜15の外表面上に塗工して塗膜を形成した後に、この塗膜を乾燥させることによって形成することができる。
その他、本発明の電磁波遮蔽部材では、透明基材1上又は硬化塗膜15上に反射防止膜や衝撃吸収層等を積層することもできる。
<実施例1>
まず、透明基材として厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績社製のA4300(商品名))を用意し、このフィルムの片面にウレタン系接着剤を用いて厚さ9μmの銅箔(古川サーキットフォイール社製のEXP−WS(商品名))をドライラミネーションした。上記の銅箔は、片面がクロメート処理により黒化されたものであり、ドライラミネーションにあたっては黒化処理面(クロメート処理面)が外表面となるように配置した。
上記のポリエチレンテレフタレートフィルムでの波長587.6nmの光の屈折率は1.57である。また、ドライラミネーションに用いたウレタン系接着剤は、ガラス転移点が20℃、数平均分子量が3万、酸価が1、水酸基価が9、波長587.6nmの光の屈折率が1.49のものであり、その膜厚は10μmである。
次に、銅箔上に所定形状のレジストパターンを形成し、このレジストパターンをエッチングマスクとして用いて銅箔をウェットエッチングした。このとき、エッチャントとしては塩化第二鉄溶液を用い、液温は50℃とした。ウェットエッチング後にレジストパターンを剥離し、純水でリンスした。これにより、個々の目の平面視上の大きさ及び形状が300μm□である格子状を呈し、細線部の平面視上の線幅が10μmであるメッシュ状金属層が得られた。このメッシュ状金属層は、前述したポリエチレンテレフタレートフィルムに、平面視上の大きさ及び形状が300μm□の光透過部を多数画定している。
これとは別に、市販の溶剤希釈型透明樹脂組成物(三菱レイヨン社製のBR−98(商品名))を用意した。この溶剤希釈型透明樹脂組成物は、ガラス転移点が65℃、数平均分子量が6万、酸価が1、水酸基価が0であるメチルメタクリレート系透明樹脂をトルエンとメチルエチルケトンとの1:1(重量比)混合液で希釈したものであり、メチルメタクリレート系透明樹脂は鎖状構造を有している。
次に、上記の溶剤希釈型透明樹脂組成物をベース組成物として用い、このベース組成物をトルエンとメチルエチルケトンとの1:1(重量比)混合液で5倍(重量比)に希釈して塗工液を調製し、この塗工液を前述したメッシュ状金属層上、及び多数の光透過部それぞれの上にアプリケーター用いて塗工した。塗工量は、硬化後の塗工量(乾燥重量)が20g/m2になる量とした。
この後、得られた塗膜を風速5m/秒、温度60℃の熱風で30秒間乾燥し、引き続き、風速20m/秒、温度100℃の熱風で60秒間を乾燥した。これにより、メッシュ状金属層及び多数の光透過部をそれぞれ被覆する硬化塗膜が透明樹脂により形成され、電磁波遮蔽部材が得られた。以下、同じ条件の下に複数の電磁波遮蔽部材を作製した。
本実施例1並びに後述する実施例2〜12及び比較例1〜4で電磁波遮蔽部材の作製に使用した塗工液(透明樹脂組成物)について、ベース組成物の商品名、種類、希釈倍率、重合開始剤の含有の有無、及び赤外線吸収剤(IR吸収剤)の含有の有無、並びに塗工液の塗工条件を一覧にして、後掲の表1に示す。
また、形成された硬化塗膜でのガラス転移点、数平均分子量、酸価、及び水酸基価、並びに複数の電磁波遮蔽部材の中から無作為に抽出した電磁波遮蔽部材における硬化塗膜の表面の十点平均粗さ(Rz)、光透過部での平均膜厚(光透過部の平面視上の中央部での膜厚の平均値)、隆起部での距離L2(図2参照)の平均値、図2に示した距離L3と距離L4との平均値、及びメッシュ状金属層の細線部上での硬化塗膜の平均傾斜角度を一覧にして、後掲の表2に示す。
なお、硬化塗膜の表面粗さ(十点平均粗さ(Rz))は、いずれの実施例及び比較例においても、東京精密社製の表面粗さ計(HANDYSURF E−35A(商品名))を用いてJIS B0601−2001に従って測定した。
<実施例2〜6>
塗工液として実施例毎に後掲の表1に示す溶剤希釈型透明樹脂組成物を用い、かつ、この塗工液の塗工量(ただし、硬化後の重量を意味する。)を表1に示す量とし、他は実施例1と同様の条件の下に複数の電磁波遮蔽部材を実施例毎に作製した。なお、各溶剤希釈型透明樹脂組成物における透明樹脂は、いずれも、鎖状構造を有している。
<実施例7>
塗工液として後掲の表1に示す熱硬化型透明樹脂組成物を用い、かつ、塗膜の乾燥後にこの塗膜を60℃で4日間加熱した以外は実施例1と同様の条件の下に、複数の電磁波遮蔽部材を作製した。乾燥後の塗膜を更に加熱したことにより、各電磁波遮蔽部材には、架橋した透明樹脂からなる硬化塗膜が形成された。なお、塗膜の乾燥は、実施例1での塗膜の乾燥と同じ条件の下に行った。
<実施例8〜9>
塗工液として後掲の表1に示す光硬化型(紫外線硬化型)透明樹脂組成物を用い、その塗工量(ただし、硬化後の重量を意味する。)を17g/m2又は20g/m2にして塗膜を形成すると共に、塗膜の乾燥後に紫外線ランプを用いて照射強度400mJ/cm2の条件の下に紫外線を照射した以外は実施例1と同様の条件の下に、複数の電磁波遮蔽部材を実施例毎に作製した。塗膜に紫外線を照射したことにより、各電磁波遮蔽部材には、架橋した透明樹脂からなる硬化塗膜が形成された。なお、塗膜の乾燥は、実施例1での塗膜の乾燥と同じ条件の下に行った。
<実施例10〜12>
後掲の表1に示すように、塗工液(透明樹脂組成物)に赤外線吸収剤を含有させ、かつ、この塗工液の塗工量(ただし、硬化後の重量を意味する。)を表1に示す量とし、他は実施例2、実施例3、又は実施例7と同様の条件の下に複数の電磁波遮蔽部材を実施例毎に作製した。
<比較例1>
硬化塗膜を形成しなかった以外は実施例1と同じ条件の下に、複数の電磁波遮蔽部材を作製した。
<比較例2〜3>
表1又は表2に示すように、塗工液(溶剤希釈型透明樹脂組成物)を調製する際の希釈倍率又は塗工液の塗工量を変更した以外は実施例4と同じ条件の下に、複数の電磁波遮蔽部材を比較例毎に作製した。
<比較例4>
表1又は表2に示すように、塗工液(光硬化型透明樹脂組成物)を調製する際の希釈倍率又は塗工液の塗工量を変更した以外は実施例8と同じ条件の下に、複数の電磁波遮蔽部材を作製した。
[評価]
実施例1〜12及び比較例1〜4でそれぞれ作製した電磁波遮蔽部材について、ヘイズ、視感透過率、及び像鮮明度を下記の方法で測定した。また、硬化塗膜に赤外線吸収剤を含有させた実施例10〜12の各電磁波遮蔽部材について、赤外線透過率を下記の方法で測定した。これらの結果を表3に示す。
(A)ヘイズ;
スガ試験機社製のカラーコンピューター SM−C(商品名)を用い、JIS K 7105(1981)「プラスチックの光学的特性試験方法」に従って、作製直後(初期)の値と、気温60℃、湿度95%の空気雰囲気中に1000時間放置して耐久性試験を行った後(試験後)での値とを測定した。
(B)視感透過率;
スガ試験機社製の写像性測定器 ICM−1(商品面)を用い、JIS K7105(1981)「プラスチックの光学的特性試験方法」に従って、作製直後(初期)の値と、気温60℃、湿度90%の空気雰囲気中に1000時間放置して耐久性試験を行った後(試験後)での値とを透過法により測定した。
(C)像鮮明度;
上記の写像性測定器を用い、JIS K 7105(1981)「プラスチックの光学的特性試験方法」に従って、作製直後(初期)の透過鮮明度と、気温60℃、湿度95%の空気雰囲気中に1000時間放置して耐久性試験を行った後(試験後)での透過鮮明度とを測定した。なお、光学くしとしては、暗部及び明部それぞれの幅が共に0.125mm、0.25mm、0.5mm、1mm、又は2mmである計5種類を使用した。
(D)赤外線透過率;
800〜1200nmの波長域の近赤外線の最大透過率について、作製直後(初期)の値と、気温60℃、湿度90%の空気雰囲気中に1000時間放置して耐久性試験を行った後(試験後)での値とを、(株)島津製作所製の分光光度計(UV−3100PC(品番))を用いて測定した。
実施例1〜12で作製した各電磁波遮蔽部材でのヘイズ、視感透過率及び像鮮明度と、比較例1で作製した電磁波遮蔽部材でのヘイズ、視感透過率及び像鮮明度との対比から明らかなように、メッシュ状金属層及び多数の光透過部をそれぞれ被覆する硬化塗膜を透明樹脂によって形成することにより、ヘイズが小さく、視感透過率及び像鮮明度がそれぞれ高い電磁波遮蔽部材を得ることができる。
また、実施例1〜6及び実施例10〜12で作製した電磁波遮蔽部材でのヘイズ、視感透過率、及び像鮮明度それぞれの初期の値と試験後の値との対比から明らかなように、溶剤希釈型透明樹脂組成物を単に固化させることによって硬化塗膜を形成した場合でも、熱硬化型透明樹脂組成物又は光硬化型(紫外線硬化型)透明樹脂組成物により硬化塗膜が形成された実施例8、実施例9の電磁波遮蔽部材と同様に、光透過性及び像鮮明度それぞれの耐久性が高い電磁波遮蔽部材を得ることが可能である。
実施例2、実施例4、又は実施例7で作製した電磁波遮蔽部材と実施例10〜12で作製した電磁波遮蔽部材との対比から明らかなように、赤外線吸収剤を硬化塗膜に含有させた場合でも、ヘイズ、視感透過率、及び像鮮明度それぞれの値が赤外線吸収剤を含有させない場合と同程度の電磁波遮蔽部材を容易に得ることができる。
そして、実施例4で作製した電磁波遮蔽部材と比較例2〜3で作製した電磁波遮蔽部材との対比や、実施例8で作製した電磁波遮蔽部材と比較例4で作製した電磁波遮蔽部材との対比から明らかなように、電磁波遮蔽部材の視感透過率及び像鮮明度は、メッシュ状金属層の細線部上での硬化塗膜(隆起部)の平均傾斜角度の影響を比較的強く受け、この平均傾斜角度を小さくすることによって、視感透過率及び像鮮明度を向上させることができる。換言すれば、上記の平均傾斜角度を制御することによって、光透過性及び像鮮明度が高い電磁波遮蔽部材を得ることができる。
なお、実施例1〜12で作製したいずれの電磁波遮蔽部材内にも、気泡は認められなかった。