JP5069037B2 - 積層ワイヤグリッド偏光板 - Google Patents
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Description
本発明の偏光板は、前記ワイヤグリッド偏光素子の金属ワイヤの周期が、240nm以下であることが好ましい。
本発明の偏光板は、前記金属ワイヤが、一対の基材に対してそれぞれ誘電体層を介して設けられていることが好ましい。
本発明の偏光板は、前記格子状凸部を有する基材の、凸部の高さの2分の1の高さにおける凸部の幅が、金属ワイヤの周期の0.15倍〜0.25倍であることが好ましい。
本発明の偏光板は、前記ワイヤグリッド偏光素子が、基材の格子状凸部の頂部より上方の誘電体層を含む領域の屈折率が、樹脂基材の屈折率よりも高いことが好ましい。
本発明の偏光板は、前記ワイヤグリッド偏光素子の金属ワイヤは、アルミニウム又はその合金で構成されていることが好ましい。
本発明の偏光板は、前記ワイヤグリッド偏光素子の金属ワイヤが誘電体で被覆された格子状凸部の一方の側面に偏って設けられ、且つ一対のワイヤグリッド偏光素子内では金属ワイヤが前記凸部の同じ片側側面になるように2次元的に接がれた形となっており、更に凹凸部がほぼ平行に向き合って且つ金属ワイヤが前記凸部の反対の側面に偏って設けられた形になるように積層されたことが好ましい。
本発明の液晶表示装置は、前記液晶パネルが透過型液晶パネルであることが好ましい。
本発明の液晶表示装置は、光源と、前記光源からの光を偏光分離する上記積層ワイヤグリッド偏光板と、偏光板により偏光された光を透過又は反射する液晶表示素子と、前記液晶表示素子を透過又は反射した光をスクリーンに投射する投射光学系と、を具備することを特徴とする投射型液晶表示装置であることが好ましい。
なお、本発明では本発明のワイヤグリッド偏光素子は、ワイヤグリッド回折素子、接合ワイヤグリッド偏光素子、接合ワイヤグリッド回折素子を含むものである。また積層ワイヤグリッド偏光板は、積層ワイヤグリッド偏光素子や積層ワイヤグリッド回折素子を含むものである。
図1は、本発明の実施の形態に係る積層ワイヤグリッド偏光板の一部を示す概略断面図である。本発明の偏光板は、基材と金属ワイヤとの間に誘電体層を有し、多数の周期的な直線状凹凸部を有するワイヤグリッド偏光素子の単位要素において、又は前記ワイヤグリッド偏光素子の各単位要素の端部が同一面上でほとんど重なることがなく、且つ直線状凹凸部が互いに平行で同じ面になるように2次元的に接がれた接合ワイヤグリッド偏光素子において、2枚のワイヤグリッド偏光素子の単位要素又は接合ワイヤグリッド偏光素子が、その直線状凹凸部がほぼ平行で、且つその直線状凹凸部が互いに向き合って積層された構造となっている。
図1(1b)は、本発明の積層ワイヤグリッド偏光板を構成するワイヤグリッド偏光素子が、基材1と、互いに平行で等間隔に形成された直線状の金属ワイヤ3との間に、前記基材の誘電体層2とから主に構成されている構造となっている例である。
なお、図面では、見やすくするために、上面と下面のワイヤグリッド偏光素子に隙間を設けているが、実際の本発明の積層ワイヤグリッド偏光板では隙間はない方が好ましい。
本発明のワイヤグリッド偏光素子を構成する各要素と構造について説明する。
本発明で用いるワイヤグリッド偏光素子の基材1は、可視光領域で実質的に透明な基材であれば良い。好ましくは、フレキシブル性を有することから可視光領域で実質的に透明な樹脂である。可視光領域で実質的に透明な樹脂としては、例えばポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)樹脂、架橋ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアリレート樹脂ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂等の非晶性熱可塑性樹脂やポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂等の結晶性熱可塑性樹脂や、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系などの紫外線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂が挙げられる。また、基材として樹脂基材1である紫外線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂と、ガラス等の無機基板、上記熱可塑性樹脂、トリアセテート(TAC)樹脂とを組み合せた構成とすることも出来る。積層することを考慮すると本発明で用いる基材は、複屈折性が低いことが好ましい。具体的には、COP樹脂、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、TAC樹脂等の低結晶性樹脂/非晶性樹脂や光学ガラス等である。
本発明で用いる金属ワイヤ3を構成する金属は、可視光領域で光の反射率の高く、かつ誘電体層2を構成する材料との間の密着性が高い素材を挙げることが出来る。好ましくは、複素屈折率の観点からアルミニウム、銀又はそれらの合金であり、更に好ましくは価格の安いアルミニウム又はその合金である。
金属ワイヤ3を誘電体層2に積層する方法としては、誘電体層2を構成する材料及び/又は金属ワイヤ3を構成する金属との間の十分な密着強度が得られ、上記した金属ワイヤ3の断面の大きさ、金属バルクの複素屈折率に近い値が得られるように適宜選択する。具体的には、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理的蒸着法を挙げることが出来る。具体的には、図1(1b)、図4に示すように平坦な基材を用いる場合は、密着強度、生産性の観点からスパッタリング法が良く。図1(1a)、(1c)、図3に示すように格子状凸部を有する基材を用いる場合は、金属を誘電体層2の凸部に選択的に、又は誘電体層2の凸部の一方の側面に偏って選択的に積層出来るような方法、例えば、真空蒸着法が良い。積層にあたり、金属ワイヤ層3を基材の凸1に選択積層することを考慮して蒸着源の種類/純度、蒸着速度、蒸着基板温度、積層時に発生する光学的な欠陥量を減らすような、蒸着源と基材との配置等の積層条件を調整することは誘電体の被覆の場合と同ように重要である。即ち、積層する金属ワイヤの純度を高めるため、用いる蒸着減の純度は高く、蒸着速度は速く、蒸着系の真空度は高くする。また、蒸着基板温度は、バルクの複素屈折率に近くなるような適当な温度で積層する。
・本発明で用いる型の作製方法
本発明の積層ワイヤグリッド偏光板は、単位寸法が100cm2以上であることが好ましい。その周期pが120nm以下であるにもかかわらず、単位寸法が100cm2以上という大きなワイヤグリッド偏光板を得ることが出来るのは、以下に示す一連の特徴を有する製造方法を用いて作製した型を用いたことと、その型を用いて作製した240nm以下の、比較的大きな周期p0を有する2枚のワイヤグリッド偏光素子の単位要素又は接合ワイヤグリッド偏光素子をその直線状凹凸部がほぼ平行で、且つその直線状凹凸部が互いに向き合って積層したことによる。本発明で用いる型を得る方法は、その周期の値を除けば、本出願人の特開2006−224659号公報、特願2006−2728015号、特願2006−272800号、特願2006−274175号に記載の方法を用いれば良い。
続いて、この金型Aの表面に酸化皮膜処理を行った後、再度にメッキ処理を施し、金型Aの微細凹凸格子を反転した形状で、且つ表面に周期が240nm以下の微細凹凸格子を有する金型Bを作製する。更に、紫外線に対してほぼ透明とみなせる紫外線透明基材で構成された板状体、フィルム状体、シート状体などに、この金型Bの形状を熱プレスなどで転写することで型Cを作製する。図2では金型A及び型Cを(2e)の5として示した。本発明で用いる型は、金型A又は型Cであり、前者は、後述する製造方法Iの図3(3a)の5、(3b)の5及びマスク用樹脂として熱硬化性樹脂を用いた製造方法IIの図4(4e)の5、(4f)の5に使用し、一方後者は後述するマスク用樹脂として紫外線硬化性樹脂を用いた製造方法IIの図4(4e)の5、(4f)の5に使用する。
また、干渉露光法とは、特定の波長のレーザ光を角度θ’の2つの方向から照射して形成される干渉縞を利用した露光法であり、角度θ’を変化させることで使用するレーザの波長で制限される範囲内で色々な周期を有する凹凸格子の構造を得ることが出来る。干渉露光に使用出来るレーザとしては、TEM00モードのレーザに限定され、TEM00モードのレーザ発振出来る紫外光レーザとしては、アルゴンレーザ(波長364nm、351nm、333nm)や、YAGレーザの4倍波(波長266nm)などが挙げられる。
[本発明のワイヤグリッド偏光素子の製造方法I]
本発明で用いるワイヤグリッド偏光素子を製造方法の例の1つとして、基材として格子状凸部を有する前記樹脂基材を用いた、ワイヤグリッド偏光素子の製造方法Iについて説明する。図3(3a)〜(3f1)は本発明の実施の形態に係るワイヤグリッド偏光素子の製造方法Iを説明するための断面図である。
先ず、図3(3a)に示すように、樹脂基材1と表面に周期240nm以下の凹凸格子を有する金型5(前記の金型A)とを準備する。次いで、(3b)、(3c)に示すように、樹脂基材1に金型5の凹凸格子を熱プレスなどの処理により押圧して、凹凸格子のパターンを転写することで、本発明で用いる、240nmレベル又はそれ以下の周期の格子状凸部を有する樹脂基材を得ることが出来る(この方法を方法IIと呼ぶ)。樹脂基材の表面への格子状凸部を有する構造の形成しやすさを考慮すると、紫外線硬化性樹脂を塗布した透明樹脂基材に金型5を押圧した後、紫外線を照射して硬化させて離型することにより、格子状凸部を転写することが好ましい。
次いで、図3(d)に示すように、誘電体で樹脂基材1の格子状凸部及びその側面の少なくとも一部を被覆し、誘電体層2を形成する。このとき、誘電体層は、格子状凸部の側面や格子状凸部間の凹部に比べ、格子状凸部の凸部の上に厚く形成される傾向がある。誘電体層の形成においては、格子状凸部の上部の幅が下部よりも広いアンダーカット形状に補正されることが好ましい。これにより、金属ワイヤを効率良く、格子状凸部の凸部の上に誘電体層2を形成することが出来る。このような格子状凸部の形状補正の方法としては、逆スパッタリング法等を用いることが出来る。
次いで、図3(e1)に示すように、格子状凸部を有する樹脂基材1上に被覆した誘電体層2上に金属3を積層する。このとき、金属3は、誘電体で被覆された格子状凸部の側面や格子状凸部間の凹部に比べ、主に格子状凸部の上に選択積層される。また、(e2)に示すように、斜め積層法を用いて、誘電体で被覆された格子状凸部間の凹部や凸部の片側側面の領域に金属を堆積させないようにすることが好ましい。
次いで、必要に応じて、例えば酸又はアルカリ等の用いた金属のエッチャント処理液を用いて湿式エッチングを行う。前記格子状凸部間の凹部領域の金属の付着物を除去したり、金属ワイヤの凸部同士の接触を解消したり、金属ワイヤの断面形状を前記適正範囲に修正することが出来る。
図3(f1)に示すように、格子状凸部を有する基材を用いた場合の金属ワイヤ上に設ける誘電体4は、前記したようにワイヤグリッド偏光素子又は接合ワイヤグリッド偏光素子を積層した場合に、ワイヤグリッド偏光板の厚み方向の金属ワイヤの位置の非対称性による光学特性の低下及び積層時の金属ワイヤの破損を防ぐための保護層としての役割を有するもので、必要に応じて行う。積層方法は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理的蒸着法を用いれば良い。
本発明で用いるワイヤグリッド偏光素子を製造方法の別例として、平坦な基材を用いた、ワイヤグリッド偏光素子の製造方法IIについて説明する。図4(4a)〜(4h)は本発明の実施の形態に係るワイヤグリッド偏光素子の製造方法IIを説明するための断面図である。
図4(4a)、(4b)に示すように、本発明で用いる基材1表面に前記誘電体2を被覆し、誘電体層を形成する。例えば、酸化アルミニウム、窒化珪素などの誘電体をスパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティングなどの物理的な蒸着法により基材を被覆すれば良い。
図4(4c)に示すように、誘電体層上に本発明で用いる金属層3を形成する。例えば、アルミニウムをスパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティングなどの物理的な蒸着法により誘電体層上に積層すれば良い。
図4(4d)に示すように、先ず、前記金属層上に熱硬化性樹脂又は紫外線硬化性樹脂のマスク用樹脂の塗膜4を形成する。例えば、バーコーター法、スプレー法やスピンコート法で均一に塗工すれば良い。次いで、(4e)に示すように、マスク用樹脂として熱硬化性樹脂を用いた場合は金型Aを、マスク用樹脂として紫外線硬化性樹脂を用いた場合は型Cを金型5として用いて、それぞれのマスク用樹脂表面と型5との間に隙間が生じないように密着させて押し付けながら、(4f)に示すように型を通して熱をかける又は紫外線を照射してマスク用樹脂を硬化させた後、型を剥離し、金属層上に240nm以下の格子状凸部を有する樹脂マスクを形成する。
図4(4g)に示すように、前述した金属層上に240nm以下の格子状凸部を有する樹脂マスクをエッチングマスクとして用い、金属層の下地が現れ、金属層上に樹脂マスクの格子パターンが生じるまでエッチング処理Aを行う。マスク用樹脂のエッチング処理Aには、例えば酸素フラズマエッチングなどのRIEエッチングやエキシマレーザーを用いたエッチング処理などを行えば良い。これらのドライエッチングによれば、樹脂マスクの厚みの違いなどによる樹脂の分解/灰化の違いを利用することで、樹脂マスクの格子パターンを得ることが出来る。
本発明のワイヤグリッド偏光素子の接合方法の例は、図3(3f2)、図8(8a)に示すように前記ワイヤグリッド偏光素子の各単位要素の端部が重なることなく、且つ直線状凹凸部が互いに平行で同じ面になるように、更に接合ワイヤグリッド偏光素子を積層した場合に欠陥が生じないように接合部の隙間を調整して、可視領域において光学的に透明である紫外線硬化性樹脂等の光学的接合剤を用いて、ワイヤグリッド偏光素子の金属ワイヤの高さが出来るだけ揃うように、2次元的に接ぎ合わせれば良い。このとき、光学的接合剤の屈折率は、基材または誘電体との屈折率との差がないことが好ましい。より好ましくは基材との屈折率との差がないことである。具体的な接合方法は、2枚のワイヤグリッド偏光素子の単位要素を、両単位要素の端部の位置が上下で重ならないように対面積層させた後、各ワイヤグリッド偏光素子の面を広げていく形(壁にタイルを順に貼って行くような形)で端部を2次元的に接ぎ合わせれば良い。接合ワイヤグリッド偏光素子では、2次元的に広がった各ワイヤグリッド偏光素子の単位要素の直線状凹凸部同士の平行性が特に重要であり、その直線方向に伸びるグリッド格子の方向のズレ角度の大きさは1度未満、好ましく0.5度、更に好ましく0.4度以下にする。
図3(3g)、(3h1)、(3h2)、図8(8b)に示すように2枚のワイヤグリッド偏光素子の単位要素又は接合ワイヤグリッド偏光素子を、その直線状凹凸部がほぼ平行で、且つその直線状凹凸部が互いに向き合う形で、可視領域において光学的に透明である紫外線硬化性樹脂等の光学的接合剤を用いて積層する。このとき、光学的接合剤の屈折率は、基材または誘電体との屈折率との差がないことが好ましい。より好ましくは基材との屈折率との差がないことである。
なお、図5の特許文献1〜特許文献6に示された積層する方法では、積層される金属ワイヤの厚み方向の位置に重なりがないため、積層による消光比の改善の効果はあるが、ワイヤグリッドの周期を狭めるという効果は小さいものとなっている。比較的大きな周期を有するワイヤグリッド偏光素子を用いて、周期を狭める効果を発現するには、図1に示した本発明の積層ワイヤグリッド偏光板のように、積層される金属ワイヤの厚み方向の位置に重なりが生じるようにすることが欠かせないのである。この時、積層される金属ワイヤの厚み方向の位置のズレは、±100nm、好ましく50nm、より好ましくは30nm、最も好ましくないことである。
このような工程により、今まで実現出来なかった120nmレベル又はそれ以下の周期の微細凹凸格子を有する積層ワイヤグリッド偏光板を比較的大きな周期を有するワイヤグリッド偏光素子を用いて得ることが出来る。この積層ワイヤグリッド偏光板は、基材と金属ワイヤとの間に、これらと密着性の高い誘電体層を設けることで基材と金属ワイヤを強固に結合出来るため、金属ワイヤの高さを比較的高くすることが出来る。この結果、樹脂基材上に形成された非常に微細な周期を持つ金属ワイヤグリッドにより、被偏光光の領域である可視光領域のほぼ全領域にわたって99.9%以上の偏光度を発揮することが出来る。
図7に示す液晶表示装置は、光を発光するバックライトのような照明装置11と、この照明装置11上に配置された積層ワイヤグリッド偏光板12と、積層ワイヤグリッド偏光板12上に配置された液晶パネル132および偏光板133とから主に構成される。すなわち、本発明に係る積層ワイヤグリッド偏光板12は、液晶パネル132と照明装置11との間に配置される。
液晶パネル132は、透過型液晶パネルであり、ガラスや透明樹脂基板間に液晶材料などを挟持して構成されている。なお、図7の液晶表示装置中において、通常使用されている偏光板保護フィルム、位相差フィルム、拡散板、配向膜、透明電極、カラーフィルタなどの各種光学素子については説明を省略する。
次に、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。
(格子状凸部を有する樹脂基材の作製)
・凹凸格子形状が転写されたCOP板の作製
基材樹脂へ転写したとき、周期p0が240nmで、格子状凸部の高さH1が120nm、格子状凸部の幅w1が48nmとなる、凹凸格子を表面に有するニッケルスタンパ、及び、p0、H1、w1が異なるニッケルスタンパ数種類を準備した。その平面寸法は厚さ0.3mm、格子の長手方向(以下、縦という)300mm、格子の長手方向と垂直な方向(以下、横という)180mmであった。この凹凸格子は、レーザ干渉露光法を用いたパターニングと前記の金型の作製方法により作製されたものであり、その断面形状は正弦波状で、上面からの形状は縞状格子形状であった。
厚み0.188mmのCOP樹脂フィルム(JSR株式会社製、アートンフィルム、屈折率1.51)に紫外線硬化性樹脂(スリーボンド社製TB3078D、屈折率1.41)を約0.03mm塗布し、塗布面を下にして上記の微細凹凸格子を有するニッケルスタンパ上に、それぞれ端部からニッケルスタンパとフィルム間に空気が入らないように載せ、COP樹脂フィルム側から中心波長365nmの紫外線ランプを用いて紫外線を1000mJ/cm2照射し、ニッケルスタンパの微細凹凸格子を転写した。続いて、ニッケルスタンパからCOP樹脂フィルムを剥離した後、窒素雰囲気下でCOP樹脂フィルムに紫外線を500mJ/cm2照射し、COP樹脂フィルム上の紫外線硬化性樹脂を硬化させて、縦300mm、横180mmの微細格子が転写されたフィルム(以下、格子状凸部転写フィルムという)を作製した。格子状凸部転写フィルムの断面をFE−SEMで観察し、格子状凸部転写フィルムの凸部の高さH1を求めた。このようにして得られた格子状凸部転写フィルムを、格子状凸部を有する樹脂基材として用いる。
・スパッタリング法を用いた誘電体層の形成
上記の方法で作製した色々なp0、H1、w1を持つ格子状凸部転写フィルムに、スパッタリング法を用い誘電体層を形成した。本実施例では、誘電体として窒化珪素(Si3N4と呼ぶ。添字は必ずしも組成を意味しない。)又は酸化珪素(SiO2と呼ぶ)を用いた場合について説明する。Arガス圧力0.67Pa、スパッタリングパワー4W/cm2、被覆速度0.22nm/sにて誘電体の被覆を行った。層厚み比較用サンプルとして表面が平滑なガラス基板を格子状凸部転写フィルムと同時に装置に挿入し、平滑ガラス基板への誘電体積層厚みが所定の厚みとなるように成膜を行った。誘電体を被覆した格子状凸部転写フィルムの断面を、FE−SEMで観察し、高低差H2 *を求めた。また、分光エリプソメータ、反射率測定装置等の分光学機器を用いて、誘電体及びB領域の屈折率を求めた。
格子状凸部転写フィルムに誘電体層を形成した後、電子ビーム真空蒸着法(EB蒸着法)を用いて金属ワイヤを形成した。本実施例では、金属としてアルミニウム(Al)を用いた場合について説明する。真空度2.5×10-3Pa、蒸着速度4nm/s、常温下においてAlの蒸着を行った。層厚み比較用サンプルとして表面が平滑なガラス基板を誘電体積層格子状凸部転写フィルムと同時に装置に挿入し、平滑基板へのAl蒸着厚みが所定の厚みとなるように蒸着を行った。実施例1〜実施例5では、格子の長手方向と垂直に交わる平面内において基材面の法線と蒸着源とのなす角度θを1°〜10°とし、実施例6〜実施例9ではθを15°〜30°とした。
格子状凸部転写フィルムに誘電体及びAlを積層した後、フィルムを室温下の0.1重量%水酸化ナトリウム水溶液中で、処理時間を30〜120秒の間で10秒間隔で変えながら洗浄(エッチング)し、すぐに水洗してエッチングを停止し、その後フィルムを乾燥させ、ワイヤグリッド偏光素子を作製した。続いて、後述するようにこれらを積層し、積層ワイヤグリッド偏光板としたとき、所定の光学特性、例えば、波長550nmの光に対する偏光度と光線透過率を測定し、偏光度がほぼ99.9%以上で、最大の透過率を示したものを本発明のワイヤグリッド偏光素子とした。得られたワイヤグリッド偏光素子の大きさは、縦300mm、横180mmであった。
比較例4として、格子状凸部転写フィルム上に、誘電体の積層を行わないこと以外は上記の実施例1と同様にしてアルミニウムの蒸着を行い、0.1重量%水酸化ナトリウム水溶液中で60秒洗浄した。この場合、偏光性能を発揮するのに必要なAlのワイヤが存在するものの、Alのワイヤが基材の格子状凸部から部分的に剥離し、評価出来る積層ワイヤグリッド偏光板を作製することは出来なかった。
今回の実施例では、エッチングによる不要金属の除去した後、積層時の金属ワイヤの破損を防ぐための保護層として、金属ワイヤ上に設ける誘電体4として、誘電体層2と同種のものを誘電体層2と同様にして、1nm〜5nm程度積層した。
積層は、ワイヤグリッド偏光素子の溝の一部に前記紫外線硬化性樹脂を塗布し、積層時の光線透過率が最大になるように2枚のワイヤグリッド偏光素子の単位要素の位置を決めた後、その直線状凹凸部がほぼ平行で、且つその直線状凹凸部が互いに向き合う形で紫外線を照射し、硬化した。なお、接合ワイヤグリッド偏光素子を積層する場合は、2枚のワイヤグリッド偏光素子の単位要素の端部の位置が上下で重ならないように対面積層させた後、各ワイヤグリッド偏光素子の面を広げていく形で端部を紫外線硬化性樹脂を用いて2次元的に接ぎ合わせた。
これらの結果から、積層することで飛躍的に光学特性が良くなること、更に積層ワイヤグリッド偏光板を構成するワイヤグリッド偏光素子の構造(周期p0、Duty比、H2 *、H3、w3、格子状凸部側面への金属の積層の有無等)の影響がわかる。
(実施例10〜11の積層ワイヤグリッド偏光板の作製)
・スパッタリング法を用いた誘電体層の形成
縦300mm、横180mmで、厚み0.188mmのCOP樹脂フィルム(JSR株式会社製、アートンフィルム)上に、スパッタリング法を用い誘電体を積層した。本実施例では、誘電体として窒化珪素、酸化アルミニウム、OH−5(キャノンオプトロン株式会社製)を用いた。層厚み比較用サンプルとして表面が平滑なシリコンウエハー基板を格子状凸部転写フィルムと同時に装置に挿入し、シリコンウエハー基板への各誘電体積層の厚みが所定の厚みとなるように成膜を行った。窒化珪素の場合は、Arガス圧力0.67Pa、DCマグネトロンのスパッタリングパワー4W/cm2、積層速度0.22nm/sにて誘電体の積層を行った。
続いて、誘電体を積層したCOPフィルムの誘電体層上にスパッタリング法を用い金属を積層した。本実施例では、金属としてアルミニウムを用いた場合について説明する。Arガス圧力0.67Pa、DCマグネトロンのスパッタリングパワー4W/cm2、積層速度3.3nm/sにてアルミニウムの積層を行った。層厚み比較用サンプルとして表面が平滑なシリコンウエハー基板を格子状凸部転写フィルムと同時に装置に挿入し、シリコンウエハー基板へのアルミニウム層の厚みが所定の厚みとなるように成膜を行った。
前記金属層上にスピンコーターを用いて、紫外線硬化性樹脂(スリーボンド社製、TB3078D、屈折率1.41)を約0.03mmの厚みで塗布した。続いて、塗布面上に上記、紫外線硬化性樹脂へ転写したとき、周期p0が240nmで、格子状凸部の高さH1が120nm、格子状凸部の幅w1が48nmとなる、凹凸格子を表面に有するCOP樹脂製の型Cを、型Cと紫外線硬化性樹脂との間に空気が入らないようにそれぞれ端部から載せ、型C側から中心波長365nmの紫外線ランプを用いて紫外線を1000mJ/cm2で照射し、型Cの微細凹凸格子を紫外線硬化性樹脂の表面に転写した。続いて、紫外線硬化性樹脂の表面から型Cを剥離した後、更に紫外線硬化性樹脂の表面に紫外線を500mJ/cm2で照射し、紫外線硬化性樹脂の未硬化成分を硬化させて、金属層上に紫外線硬化性樹脂で出来た周期p0が240nmで、格子状凸部の高さH1が120nm、格子状凸部の幅w1が48nmとなる格子状凸部を有する樹脂マスクを作製した。
金属層上の紫外線硬化性樹脂で出来た周期120nmの格子状凸部をエッチングマスクとして用い、金属層の下地が現れ、金属層上に樹脂の格子パターンが生じるまで、エッチング処理Aとして酸素を50cc/分流し、出力100Wでリアクティブイオンエッチング(RIEエッチング)処理を行った。続いて、誘電体層の下地が現れ、誘電体層上に金属ワイヤの格子パターンが生じるまで、エッチング処理Bとしてアルミニウムの金属層を、四塩化炭素ガスを用いて、ガス流量100cc/分、高周波電力密度0.2W/cm2、全圧5PaでRIEエッチング処理を行った。このとき、アルミニウムワイヤ上部に樹脂が残ったため、再び、金属層上に樹脂が除去されるまで、再度、酸素を50cc/分流し、出力100WでRIEエッチング処理を行ない、本発明のワイヤグリッド偏光素子を得た。これを前記の方法にて積層して積層ワイヤグリッド偏光板、実施例10〜実施例11を得た。
これらの結果から、積層することで飛躍的に光学特性が良くなること、更に積層ワイヤグリッド偏光板を構成するワイヤグリッド偏光素子の構造(周期p0、Duty比、H2、H3、w3等)の影響がわかる。
上記のようにして作製して得られた実施例1〜実施例11の積層ワイヤグリッド偏光板及び比較例1〜比較例3のワイヤグリッド偏光素子について、分光光度計を用いて低波長域(400nm)、中波長域(550nm)、高波長域(700nm)における偏光度、光線透過率を偏光度及び光線透過率を測定した。ここでは、直線偏光に対する平行ニコル、直交ニコル状態での光線透過率を測定し、偏光度は下記式より算出し、積層ワイヤグリッド偏光板及びワイヤグリッド偏光素子の構造と合わせて表1に示す。
偏光度=(Imax−Imin)/(Imax+Imin)×100 %
光線透過率=(Imax+Imin)/2 × 100 %
ここで、Imaxは平行ニコル時の透過光強度であり、Iminは直交ニコル時の透過光強度である。
以上、実施例と比較例との比較から、基材として特に樹脂を用いた場合、無機誘電体の有無が金属ワイヤとの密着強度の向上に大きな役割を有することが分かる。また、表1から分かるように、本発明に係る積層ワイヤグリッド偏光板は、比較例に比べ、可視光領域のほぼ全領域にわたって優れた偏光度と光線透過率を示した。このように、本発明に係る積層ワイヤグリッド偏光板は、樹脂基材と誘電体層と金属ワイヤとの間で十分な密着力があり、且つ構成上の金属種の制約がなく、しかも比較的大きな周期を有するワイヤグリッド偏光素子を用いて、可視光領域の広帯域にわたって優れた光学特性(偏光度と光線透過率)を持ち、更に寸法が大きく、厚みが薄く、重量が軽いワイヤグリッド偏光板を得ることが出来ることが分かった。
2、4 誘電体
3 金属層又は金属ワイヤ
5 熱硬化性樹脂又は紫外線硬化性樹脂
6 熱可塑性樹脂
7 樹脂基材(延伸済み)
8 金属スタンパ
11 バックライト
12 ワイヤグリッド偏光板
13 液晶表示パネル
131、133 偏光板
132 液晶パネル
Claims (13)
- 基材と金属ワイヤとの間に誘電体層を有し、多数の周期的な直線状凹凸部を有するワイヤグリッド偏光素子の単位要素において、
前記ワイヤグリッド偏光素子の基材が樹脂基材であって、2枚のワイヤグリッド偏光素子の単位要素が、その直線状凹凸部がほぼ平行で、且つその直線状凹凸部が互いに向き合って積層され、前記誘電体層の屈折率が、前記基材の屈折率よりも高いことを特徴とする積層ワイヤグリッド偏光板。 - 前記直線状凹凸部が互いに向き合って積層されたワイヤグリッド偏光素子を構成する単位要素の端部が、上下において重ならないことを特徴とする請求項1記載の積層ワイヤグリッド偏光板。
- 前記金属ワイヤは、一対の基材に対してそれぞれ誘電体層を介して設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の積層ワイヤグリッド偏光板。
- 前記ワイヤグリッド偏光素子の金属ワイヤの周期が、240nm以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の積層ワイヤグリッド偏光板。
- 前記ワイヤグリッド偏光素子が、格子状凸部を有する基材と、その基材の格子状凸部及びその側面の少なくとも一部を覆うように設けられた誘電体層と、その誘電体層上に設けられた金属ワイヤと、を具備することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の積層ワイヤグリッド偏光板。
- 前記格子状凸部を有する基材の、凸部の高さの2分の1の高さにおける凸部の幅が、金属ワイヤの周期の0.15倍〜0.25倍であることを特徴とする請求項5記載の積層ワイヤグリッド偏光板。
- 前記ワイヤグリッド偏光素子が、基材の格子状凸部の頂部より上方の誘電体層を含む領域の屈折率が、樹脂基材の屈折率よりも高いことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の積層ワイヤグリッド偏光板。
- 前記ワイヤグリッド偏光素子の誘電体層が、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、酸化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム又はそれらの複合物で構成されていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の積層ワイヤグリッド偏光板。
- 前記ワイヤグリッド偏光素子の金属ワイヤは、アルミニウム又はその合金で構成されていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の積層ワイヤグリッド偏光板。
- 前記ワイヤグリッド偏光素子の金属ワイヤが誘電体で被覆された格子状凸部の一方の側面に偏って設けられ、且つ一対のワイヤグリッド偏光素子内では金属ワイヤが前記凸部の同じ片側側面になるように2次元的に接がれた形となっており、更に凹凸部がほぼ平行に向き合って且つ金属ワイヤが前記凸部の反対の側面に偏って設けられた形になるように積層されたことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかに記載の積層ワイヤグリッド偏光板。
- 液晶パネルと、前記液晶パネルに光を照射する照明手段と、前記液晶パネルと前記照明手段との間に配置された請求項1の積層ワイヤグリッド偏光板と、を具備することを特徴とする液晶表示装置。
- 前記液晶パネルが透過型液晶パネルであることを特徴とする請求項11記載の液晶表示装置。
- 光源と、前記光源からの光を偏光分離する請求項1記載の積層ワイヤグリッド偏光板と、前記偏光板により偏光された光を透過又は反射する液晶表示素子と、前記液晶表示素子を透過又は反射した光をスクリーンに投射する投射光学系と、を具備することを特徴とする投射型液晶表示装置。
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