JP5067424B2 - 電力変換装置 - Google Patents

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    • B60L2200/26Rail vehicles

Description

この発明は、コンバータと、その出力直流電力を可変周波数可変電圧の交流電力に変換するインバータを有する電力変換装置に関するものである。特に、出力側に電動機を接続し、コンバータで発生する整流リップルにより電動機のトルクが変動することを防止することを可能とする電力変換装置に関するものである。
コンバータの直流側に接続されたコンデンサの電圧(コンデンサ電圧と呼ぶ)には脈動分(整流リップル)が存在する。脈動分の周波数は、電源の周波数をf0とすると、電源が単相交流の場合は2×f0であり、電源が三相交流の場合は6×f0である。
コンデンサ電圧がインバータの入力になるので、インバータが出力する交流電圧にも脈動が存在することになる。インバータの出力周波数がコンデンサ電圧の脈動の周波数に近くなると、その差分の周波数でインバータの出力である交流電力およびインバータが駆動する電動機のトルクが変動するビート現象が発生する。ビート現象が発生する原因は、インバータの出力電圧の振幅が1周期内の正側と負側でアンバランスになるためである。
ビート現象を抑制するために、インバータの入力電圧に脈動が存在する場合には、インバータの動作周波数を変化させて、正側の半サイクルでの電圧の時間積分値と、負側の半サイクルでの電圧の時間積分値とが等しくなるようにする方法がある。この方法で、インバータの動作周波数を変化させる理由は、ビート現象が発生する周波数が電圧を制御できない定電圧可変周波数領域にあるためである。(例えば、特許文献1を参照)
ベクトル制御を行なう場合に、ビートを解消または抑制するために、電圧ベクトルの位相を制御する方法もある。(例えば、特許文献2を参照)
また、コンデンサ電圧の脈動を検出して、検出した脈動の位相を進めて、コンデンサ電圧の直流分と足し合わせた電圧を求め、この電圧を用いて変調率を制御する方法もある。(例えば、特許文献3を参照)
特公平7−46918号公報 登録3310193号公報 登録3540665号公報
従来のビート現象を解消または抑制する手法では、インバータの出力電圧の周波数が変動するので、速度制御において指令値からの速度変動が大きくなるという問題があった。
この発明に係る電力変換装置は、ビート現象を解消または抑制しつつ正確に速度制御を行なうことができる電力変換装置を得ることを目的とする。
この発明に係る電力変換装置は、交流電力を整流するコンバータと、該コンバータの直流側に接続されたコンデンサと、該コンデンサに保存された直流電力を交流電力に変換するインバータと、該インバータを制御するインバータ制御部と、前記コンデンサの電圧であるコンデンサ電圧を計測する電圧計測器とを備えた電力変換装置において、前記インバータ制御部が、変調率を前記コンデンサ電圧に応じて補正した補正後変調率を演算するビートレス制御部と、前記インバータが出力する交流電圧の1周期内で前記変調率と前記補正後変調率とを切替えて出力し、前記インバータが出力する交流電圧の周波数および位相を指令値に固定する周波数固定部を有することを特徴とするものである。
この発明に係る電力変換装置は、交流電力を整流するコンバータと、該コンバータの直流側に接続されたコンデンサと、該コンデンサに保存された直流電力を交流電力に変換するインバータと、該インバータを制御するインバータ制御部と、前記コンデンサの電圧であるコンデンサ電圧を計測する電圧計測器とを備えた電力変換装置において、前記インバータ制御部が、変調率を前記コンデンサ電圧に応じて補正した補正後変調率を演算するビートレス制御部と、前記インバータが出力する交流電圧の1周期内で前記変調率と前記補正後変調率とを切替えて出力し、前記インバータが出力する交流電圧の周波数および位相を指令値に固定する周波数固定部を有することを特徴とするものなので、ビート現象を解消または抑制しつつ正確に速度制御を行なうことができるという効果が有る。

この発明の実施の形態1での電力変換装置の構成を説明する図である。 この発明の実施の形態1での電力変換装置におけるインバータ制御部の内部構成を説明する図である。 この発明の実施の形態1での電力変換装置におけるゲートパルス生成部の内部構成を説明する図である。 この発明の実施の形態1での電力変換装置において、ビートレス制御部を動作させない場合での信号波、搬送波およびインバータのU相とV相の出力電圧の関係を説明する図である。図4Aが、信号波と搬送波の関係を説明する図である。図4Bから図4Dまでが、インバータ3の出力電圧を説明する図であり、図4BがU相電圧、図4CがV相電圧、図4DがUV線間電圧をそれぞれ示す。 この発明の実施の形態1に係る電力変換装置がビート現象を解消または抑制しかつ交流電圧の周波数を変動させないようにする動作を説明する図である。図5Aが、想定するコンデンサ電圧Vdcの変動を示す図である。図5Bが、変調率γと補正後変調率γ1の時間変化を示す図である。図5Cが、信号波と搬送波の関係を説明する図である。図5Dから図5Fまでが、インバータ3の出力電圧を説明する図であり、図5DがU相電圧、図5EがV相電圧、図5FがUV線間電圧をそれぞれ示す。 この発明の実施の形態1での電力変換装置において、ビート現象を解消または抑制するために変調率制御を行なう場合と行なわない場合での、UV線間電圧、VW線間電圧、WV線間電圧の違いを説明する図である。図6Aが想定するコンデンサ電圧Vdcの変動を説明する図である。図6Bから図6Dが、UV線間電圧、VW線間電圧、WV線間電圧を、上に変調率制御を行なわない場合を下に行なう場合を配置して示す図である。 この発明の実施の形態2での電力変換装置の構成を説明する図である。 この発明の実施の形態2での電力変換装置におけるインバータ制御部の内部構成を説明する図である。 この発明の実施の形態2での電力変換装置におけるゲートパルス生成部の内部構成を説明する図である。 この発明の実施の形態2に係る電力変換装置がビート現象を解消または抑制しかつ交流電圧の周波数を変動させないようにする動作を説明する図である。図10Aが、想定するコンデンサ電圧Vdcの変動を示す図である。図10Bが、変調率γと補正後変調率γ1の時間変化を示す図である。図10Cが、信号波と搬送波の関係を説明する図である。図10Dから図10Fまでが、インバータ3の出力電圧を説明する図であり、図10DがU相電圧、図10EがV相電圧、図10FがUV線間電圧をそれぞれ示す。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1での電力変換装置の構成を説明する図である。
図1に示すように、電力変換装置は、単相交流を直流に変換するコンバータ1と、コンバータ1で整流された直流電力を保存する直列に接続されたコンデンサ2A、2Bと、コンデンサ2A、2Bに並列に接続された直流を任意の周波数の三相交流に変換するインバータ3と、インバータ3を制御するインバータ制御部4とを有する。インバータ3が出力する交流電力は、誘導電動機であるモータ5に供給される。
モータ5の回転周波数fmは、速度検出器6により計測される。また、インバータ4が出力する三相の交流電流の中で、U相とV相の電流Iu、Ivを、電流計測器7U、7Vによりそれぞれ計測する。U相、V相、W相の電流の和がゼロになるという関係式からW相の電流を計算で求めることにしているので、W相の電流は計測していない。W相も含めて三相の電流を計測してもよいし、U相とW相またはV相とW相というようにニ相の電流を計測するなどしてもよい。三相の中の少なくともニ相の電流を計測すればよい。
インバータ3は高電位、低電位、中間電位の3レベルを出力する3レベルインバータである。コンデンサ2A、2Bの片端が高電位、もう片端が低電位、直列接続点が中間電位になる。コンデンサ2A、2Bは、実際にはコンデンサの直列接続体が3組に分けられて、インバータ3の各相のスイッチングアームの近くに分散配置している。3個のコンデンサの直列接続点は等電位になるように接続されている。繁雑さを避けるために、図では1組のコンデンサ2A、2Bだけを書いている。実際に1組であってもよいし、3組以外の複数であってもよい。複数の場合は、すべてのコンデンサの直列接続点が等電位になるように接続する。コンデンサ2A、2Bの両端間の電圧であるコンデンサ電圧Vdcを計測する電圧計測器8がある。
インバータ制御部4はベクトル制御によりインバータ3を制御するものであり、さらにビート現象の解消または抑制を出力周波数の変動を伴うことなしに行なうものである。インバータ制御部4には、図1示すように少なくともコンデンサ電圧Vdc、U相およびV相の出力電流Iu、Iv、モータの回転周波数fmを入力する。これ以外の計測値を入力してもよいし、モータの回転周波数fmを入力しないで、Iu、Ivなどから推定計算を行なうようにしてもよい。
インバータ制御部4の内部構成を説明する図を図2に示す。インバータ制御部4の構成要素を、以下で説明する。三相−dq軸座標系変換部11は、三相の電流であるIu、Ivをdq軸座標系でのId、Iqに変換して出力する。なお、d軸とは電動機の回転磁束とともに回転する軸であり、q軸はd軸と直交する軸である。電圧指令演算部12は、別途計算される励磁電流指令値Idおよびトルク電流指令値Iqと、IdおよびIqからdq軸上での電圧ベクトル指令値であるVd、Vqを計算する。dq軸座標系上での電圧指令値ベクトルVd、Vqは、極座標変換部13により振幅|V|と位相角θvとに変換される。
すべり周波数演算部14は、IdおよびIqが入力されて、すべり周波数fsを出力する。fsは加算器15によりモータ5の回転周波数fmと加算されて、インバータ3の出力周波数finvが計算される。finvが積分器16により積分されて位相角θ0が計算される。加算器17により、位相角θ0と電圧ベクトルの位相角θvとが加算されて、位相角θが計算される。位相角θはdq軸座標系と三相座標系との間の位相角である。三相−dq軸座標系変換部11には位相角θが入力されて、位相角θを用いて座標変換を行なう。
変調率演算部18には、コンデンサ電圧Vdcと電圧指令値ベクトルの振幅|V|とが入力されて、変調率γ0を出力する。変調率演算部18の内部では、コンデンサ電圧Vdcからf0程度以上の周波数の変動成分を除去した直流分Vavを求め、|V|をVavで割ることにより、変調率γ0を求める。変調率γ0はリミッタ19に入力されて、リミッタ19は上限を所定値以下に制限した変調率γを出力する。変調率γの最大値は1とする。ビートレス制御を行なう周波数範囲では、変調率を増減できるように、変調率の最大値は例えば0.95などのように1よりも小さい所定の大きさになるように、リミッタ19を調整しておく。周波数により、リミッタ19が制限する上限値を変化させてもよい。
ゲートパルス生成部20は、位相角θ、変調率γおよびコンデンサ電圧Vdcが入力されてインバータ3のスイッチング素子の入切を制御するゲートパルスを出力する。ゲートパルス生成部20は、ビート現象を解消または抑制するためのビートレス制御部21と、ビートレス制御部21が動作する場合でもインバータの出力電圧の周波数が変動しないように制御する周波数固定部22を有する。
実施の形態1に係る電力変換装置が従来のものと異なる点は、ゲートパルス生成部20にコンデンサ電圧Vdcが入力されている点と、ゲートパルス生成部20がビートレス制御部21と周波数固定部22を有する点である。これら以外の点に関しては図1および図2に示す構成とは異なる構成であってもよい。
ゲートパルス生成部20の内部構成を説明する図を、図3に示す。図3は、信号波と搬送波の大小を比較することによりゲートパルスの開始および終了のタイミングを制御する方式による場合のものである。図3では、ビート現象が発生する周波数付近でインバータ3が3パルスモードで動作させる場合の構成について図示している。図示および説明は省略するが、ビート現象が発生する周波数付近以外で従来と同様に動作させるための構成も持つ。
ゲートパルス生成部20は、ビートレス制御部21と周波数固定部22の他に、信号波を生成する信号波発生部23、搬送波を発生する搬送波発生部24、ゲートパルスを生成する信号生成部25を有する。
ビートレス制御部21には、コンデンサ電圧Vdcと変調率γが入力され、割算器26によりVdc基準をVdcで割った値を、乗算器27により変調率γに掛けた値である補正後変調率γ1を出力する。補正後変調率γ1は、コンデンサ電圧Vdcに反比例することになる。
周波数固定部22は、変調率γと補正後変調率γ1とが入力されて、U相、V相、W相ごとに適切なタイミングでγまたはγ1を切替えて出力する。周波数固定部22は、U相、V相、W相ごとにγまたはγ1を切替えて出力する切替えスイッチ28U、28V、28Wが有る。切替えスイッチ28U、28V、28Wの出力をそれぞれ、γU、γV、γWとする。切替えスイッチ28UはU相補正要否判断部29Uの出力により切替えが制御され、切替えスイッチ28VはV相補正要否判断部29Vの出力により切替えが制御され、切替えスイッチ28WはW相補正要否判断部29Wの出力により切替えが制御される。U相補正要否判断部29U、V相補正要否判断部29V、W相補正要否判断部29Wには、位相角θが入力されて、以下のように切替えスイッチ28U、28V、28Wを制御する。なお、ここでは位相角を度で表現する。なお、180度=πラジアンである。
U相補正要否判断部29Uは、以下のように切替えスイッチ28Uを制御する。なお、γ1を出力する期間を補正期間と呼び、γを出力する期間を補正停止期間と呼ぶ。
−30<θ<30または150<θ<210で、 γU=γ
それ以外で、 γU=γ1
V相補正要否判断部29Vは、以下のように切替えスイッチ28Vを制御する。
90<θ<150または270<θ<330で、 γV=γ
それ以外で、 γV=γ1
W相補正要否判断部29Wは、以下のように切替えスイッチ28Wを制御する。
30<θ<90または210<θ<270で、 γW=γ
それ以外で、 γW=γ1
ビート現象が発生する周波数を含む所定の周波数範囲では、周波数固定部22は上記のように変調率を切替えて、1周期内の一部ではビートレス制御部21で得られる補正後変調率γ1を出力する。ビート現象が発生しない周波数範囲では、ビートレス制御部21を動作させないか、周波数固定部22が常に変調率γを出力するようにする。これは、ビート現象が発生する周波数よりも高い周波数では、変調率を最大値の1で動作させることが、電力変換装置の変換効率上で有利だからである。なお、常にビートレス制御部21と周波数固定部22を動作させるようにしてもよい。
信号波発生部23は、位相角θが入力されて、U相、V相、およびW相用のそれぞれ、2π/3ラジアンだけ位相が異なる正弦波を出力する正弦波発生器30U、30V、30Wと、正弦波に変調率γU、γV、γWの何れかを掛ける乗算器31U、31V、31Wとを有する。乗算器31U、31V、31Wの出力が、それぞれU相信号波SU、V相信号波SV、W相信号波SWである。ビートレス制御部を動作させない場合での、信号波、搬送波およびインバータ3のU相とV相の出力電圧の関係を説明する図を、図4に示す。図4Aが、信号波と搬送波の関係を説明する図である。図4Aでは、繁雑さを避けるために、W相信号波SWは省略している。図4Bから図4Dまでが、インバータ3の出力電圧を説明する図であり、図4BがU相電圧、図4CがV相電圧、図4DがUV線間電圧をそれぞれ示す。図4Aから図4Dでは、信号波と搬送波の交点がU相電圧、V相電圧およびUV線間電圧の値が変化する箇所と対応する。図4Dに示すUV線間電圧などの線間電圧では、電圧ゼロの上下に有る斜線を施した部分を1段目のパルスと呼び、1段目のパルスの上または下にある斜線を施していない部分を2段目のパルスと呼ぶ。
搬送波発生部24は、ビート現象が発生する周波数を含む所定の周波数範囲では、信号波の2倍の周波数の三角波である高レベル搬送波H1および低レベル搬送波H2を出力する。高レベル搬送波H1と低レベル搬送波H2は最大と最小になるタイミングは一致しており、常にその差が一定になる。
信号生成部25は、U相、V相、W相の信号波SU、SV、SWと高レベル搬送波H1および低レベル搬送波H2を比較して、U相、V相、W相についてゲートパルス1、2を出力する。信号波が高レベル搬送波H1よりも大きい場合に、ゲートパルス1は1になり、それ以外で0になる。信号波が低レベル搬送波H2よりも大きい場合に、ゲートパルス2は1になり、それ以外で0になる。ゲートパルス1、2の状態に応じて、インバータ3の各相のスイッチングアームでは、以下のような電位を出力する。なお、常に高レベル搬送波H1>低レベル搬送波H2なので、ゲートパルス1が1で、ゲートパルス2が0になることは無い。
(A)ゲートパルス1、2がともに1で、高電位を出力。
(B)ゲートパルス1が0、ゲートパルス2が1で、中間電位を出力。
(C)ゲートパルス1、2がともに0で、低電位を出力。
図4Bから図4Dは、上記の関係が成立することを示している。なお、図4Bと図4Cにおいて、U相およびV相の電圧が変化する箇所の中で菱形をつけた箇所は、ビートレス制御によりその箇所のタイミングが変化することを意味する。菱形をつけていない箇所すなわち高電位と低電位が中間電位を挟んで隣接する箇所で、高電位または低電位と中間電位の間で変化する箇所のタイミングは変化させない。これは、高電位と低電位が中間電位を挟んで隣接する箇所は1周期内で2箇所だけであり、この2箇所のタイミングを搬送波または信号波の位相に対して所定値に固定することにより、インバータ3が出力する交流電圧の基本波の周波数を固定できるからである。
図5に、この発明の実施の形態1に係る電力変換装置がビート現象を解消または抑制しかつ交流電圧の周波数を変動させないようにする動作を説明する図を示す。図5Aに想定するコンデンサ電圧Vdcの変動を示し、図5Bに変調率γと補正後変調率γ1を示す。図5Cに、信号波と搬送波の関係を説明する図を示す。図5Cでは、繁雑さを避けるために、W相信号波SWは省略している。図5Dから図5Fまでが、インバータ3の出力電圧を説明する図であり、図5DがU相電圧、図5EがV相電圧、図5FがUV線間電圧をそれぞれ示す。
図5に示す場合は、コンデンサ電圧Vdcの脈動の周波数とインバータ3が出力する交流電流の周波数が一致している場合である。図5では、コンデンサ電圧Vdcの脈動の1周期分を示す。図5Aから分かるように、期間の前半でVdcが上昇して基準値に戻り、後半で減少して基準値に戻る。図5Bに示すように、変調率γは図示する期間内では一定である。補正後変調率γ1はコンデンサ電圧Vdcに反比例するので、期間の前半でγ1が減少して基準値に戻り、後半で上昇して基準値に戻る。
図5Cでは、U相信号波SUとV相信号波SVは、補正期間と補正停止期間の境界で不連続に変化する。その理由は、そのタイミングで変調率γと補正後変調率γ1を切替えるためである。補正期間におけるU相信号波SUとV相信号波SVは、補正後変調率γ1が掛けられているので、その大きさは期間の前半では図4の場合よりも小さく、期間の後半では図4の場合よりも大きい。補正停止期間では、U相信号波SUとV相信号波SVの大きさは、図4の場合と同じである。補正期間では、U相信号波SUとV相信号波SVの大きさが図4とは異なるので、図5Dと図5EとでU相またはV相の相電圧が変化する個所の中で、矢印をつけた箇所は矢印の方向にタイミングが移動することになる。その結果、図5Fに示すUV線間電圧では、期間の前半では2段目のパルスの幅が狭くなり、期間の後半では2段目のパルスの幅が広くなる。補正停止期間で信号波と高レベル搬送波または低レベル搬送波が交差する箇所のタイミングから決まる相電圧の変化タイミングはコンデンサ電圧Vdcが変動しても変化しないので、線間電圧における1段目のパルスの開始と終了のタイミングも変化しない。
なお、補正停止期間での信号波と高レベル搬送波または低レベル搬送波が交差する箇所のタイミングから、各相の出力電圧のパルスが中間電位を挟んで高電位と低電位が隣接する箇所における高電位と中間電位の間で変化するタイミングと、低電位と中間電位の間で変化するタイミングが決まる。そのため、中間電位を挟んで高電位と低電位が隣接する箇所における高電位と中間電位の間で変化するタイミングと低電位と中間電位の間で変化するタイミングが搬送波または信号波の位相に対して固定され、高電位と中間電位の間で変化するタイミングと低電位と中間電位の間で変化するタイミングとの間の間隔も固定される。
図6に、ビート現象を解消または抑制するために変調率制御を行なう場合と行なわない場合での、UV線間電圧、VW線間電圧、WV線間電圧の違いを説明する図を示す。図6Aが想定するコンデンサ電圧Vdcの変動を説明する図であり、図5Aと同じである。図6Bから図6Dに、UV線間電圧、VW線間電圧、WV線間電圧を、上に変調率制御を行なわない場合を下に行なう場合を配置して示す。
図6を見ると、コンデンサ電圧Vdcの変動が線間電圧に反映していることが分かる。このため、変調率制御を行なわない場合は、どの線間電圧でも1周期内でのゼロ以上である部分の面積とゼロ以下である部分の面積が異なり、ビート現象が発生することが分かる。変調率制御を行なう場合には、線間電圧が大きくなる箇所では2段目パルスの幅が短くなり、小さくなる箇所では2段目パルスの幅が長くなっている。これにより、どの線間電圧でも1周期内でのゼロ以上である部分の面積とゼロ以下である部分の面積の差が変調率制御を行なわない場合よりも小さくなり、ビート現象が抑制できることが分かる。さらに、各線間電圧での1周期内でのゼロ以上(またはゼロ以下)である部分の面積の差も小さくなっていることが分かる。
また、変調率制御を行なう場合と行なわない場合とで、1段目のパルスの開始と終了のタイミングは変化しておらず、変調率制御を行なう場合でもインバータの出力電圧の位相および周波数が変化しないことが分かる。インバータの出力電圧の周波数および位相が変化しないことにより、ベクトル制御をより正確または安定に実施できることになる。このことは、電気鉄道車両などに適用した場合には、速度制御時の指令値からの速度変動を抑制でき、より正確または安定に制御できることになる。
モータとしては誘導電動機だけでなく、同期電動機にも適用できる。同期電動機ではトルクが端子電圧と内部起電力の位相差により決まるので、位相を変化させないことはトルク制御を正確かつ安定に行なうことにもつながる。
コンデンサ電圧で割ることにより変調率を補正しているので、コンデンサ電圧の脈動分を抽出するための装置や、脈動検出の遅れを補正するための装置なども不要であり、部品点数を少なくできるという効果もある。脈動を検出して、直流分と脈動分から変調率を補正するために使用するコンデンサ電圧に相当する電圧を生成するようにしてもよい。
信号波と搬送波の大小を比較してゲートパルスの発生タイミングを制御する方法を説明したが、コンデンサ電圧が変動してもビート現象を発生させないか発生するとしても抑制できるものであり、かつ出力電圧の基本波成分の周波数および位相が指令値との差が許容できる範囲内になるようなゲートパルスの発生タイミングを求める方法であれば、どのような方法でもよい。例えば、直前の所定期間でのコンデンサ電圧を保存しておき、保存した期間でのコンデンサ電圧の変化と同様な変化が発生するものとして、ゲートパルスの発生タイミングを求めてもよい。また、各相の相電圧の1周期内において正または負の電圧値と時間積分の目標値を決めておき、1周期内での積分値が目標値と差が有る場合に、差がゼロに近くなるようにゲートパルスの発生タイミングを決めてもよい。
実施の形態2.
図7は、この発明の実施の形態2での電力変換装置の構成を説明する図である。図7は、2レベルインバータを使用する場合である。3レベルインバータを使用した実施の形態1の場合と異なる点だけを説明する。
コンバータ1で整流された直流電力を保存するコンデンサ2は、1個または並列に接続された複数個のコンデンサである。コンデンサ2の片端が高電位、もう片端が低電位になり、コンデンサ2には中間電位点が無い。インバータ3Aは高電位、低電位の2レベルを出力する2レベルインバータである。
インバータ制御部4Aは、2レベルのインバータ3Aを制御するものである。入力は、実施の形態1の場合と同じである。
インバータ制御部4Aの内部構成を説明する図を図8に示す。2レベルのインバータ3Aに対応するようなゲートパルス生成部20Aがある。
ゲートパルス生成部20Aの内部構成を説明する図を、図9に示す。搬送波発生部24Aが1個の搬送波を出力する。信号生成部25Aが、1個の搬送波とU相、V相、W相の信号波とを比較して、U相、V相、W相のゲートパルスを発生させる。
搬送波発生部24Aは、ビート現象が発生する周波数を含む所定の周波数範囲では、信号波の3倍の周波数を持つ三角波である搬送波Hを出力する。
信号生成部25Aは、U相、V相、W相の信号波SU、SV、SWと搬送波Hを比較して、U相、V相、W相についてゲートパルスを出力する。信号波が搬送波よりも大きい場合に、ゲートパルスは1になり、それ以外で0になる。
図10に、この発明の実施の形態2に係る電力変換装置がビート現象を解消または抑制しかつ交流電圧の周波数を変動させないようにする動作を説明する図を示す。図10Aが、想定するコンデンサ電圧Vdcの変動を示す図である。図10Bが、変調率γと補正後変調率γ1の時間変化を示す図である。なお、図10Aは図5Aと同じで、図10Bは図5Bと同じである。図10Cが、信号波と搬送波の関係を説明する図である。図10Dから図10Fまでが、インバータ3の出力電圧を説明する図であり、図10DがU相電圧、図10EがV相電圧、図10FがUV線間電圧をそれぞれ示す。
各相のパルスは、それぞれの相の信号波が搬送波よりも大きくなる期間は”1”であり、そうでない期間は”0”になる。信号波と搬送波がともに”0”になるタイミングは、U相では丸をV相では三角を付けているが、コンデンサ電圧Vdcが変動しても変化しない。信号波と搬送波の振幅が最大値に近い位置で交差するタイミングは、コンデンサ電圧Vdcが変動することにより変動する。なお、”1”というのは、コンデンサ電圧Vdcがそのまま交流電圧として出力されるという意味である。”0”は、ゼロ電圧を出力されることを意味する。
U相とV相のパルスの形状は、半周期ごとに”0”と”1”の値をとる。”0”の期間の中央付近でコンデンサ電圧Vdcの変動により期間の長さが変動する”1”の期間がある。”1”の期間の中央付近にも、コンデンサ電圧の変動により期間の長さが変動する”0”の期間がある。この長さが変動する期間は、コンデンサ電圧Vdcが高い場合に長くなり、低い場合に短くなる。
UV相間の電圧は、概略、半周期ごとに電気角で60度の”0”の電圧の期間があり、この”0”の電圧の期間を挟んで”1”の電圧の期間と”−1”の電圧の期間がある。各相の電気角で60度の”0”の電圧である期間の開始のタイミングは、互いに120度の間隔で一定である。このため、UV相間電圧の周波数は、固定される。”1”または”−1”の期間中に2個の電圧が”0”である期間がある。この期間の長さは、コンデンサ電圧の変動により変化する。そのため、”1”の電圧の期間における電圧の時間積分値と、”−1”の電圧の期間における電圧の時間積分値とはほぼ等しくなる。これにより、ビート現象が抑制できる。
このように、2レベルインバータにおいても、ビート現象を抑制するために変調率を制御する場合でも、インバータの出力電圧の位相および周波数が変化しないことが分かる。インバータの出力電圧の周波数および位相が変化しないことにより、ベクトル制御をより正確または安定に実施できることになる。このことは、電気鉄道車両などに適用した場合には、速度制御時の指令値からの速度変動を抑制でき、より正確または安定に制御できることになる。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例であり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、一部を省略する等、変更して構成することも可能である。
1 :コンバータ、 2 :コンデンサ
2A:コンデンサ、 2B:コンデンサ
3 :インバータ、 3A:インバータ
4 :インバータ制御部、 4A:インバータ制御部
5 :電動機
6 :速度検出器、 7U:電流計測器
7V:電流計測器、 8 :電圧計測器
11 :三相−dq軸座標系変換部、 12 :電圧指令演算部
13 :極座標変換部、 14 :すべり周波数演算部
15 :加算器、 16 :積分器
17 :加算器、 18 :変調率演算部
19 :リミッタ、 20 :ゲートパルス生成部
20A:ゲートパルス生成部、 21 :ビートレス制御部
22 :周波数固定部、 23 :信号波発生部
24 :搬送波発生部、 24A:搬送波発生部
25 :信号生成部、 25A:信号生成部
26 :割算器
27 :乗算器、 28U:切替えスイッチ
28V:切替えスイッチ、 28W:切替えスイッチ
29U:U相補正要否判断部、 29V:V相補正要否判断部
29W:W相補正要否判断部、 30U:正弦波発生器
30V:正弦波発生器、 30W:正弦波発生器
31U:乗算器、 31V:乗算器
31W:乗算器、 H :搬送波
H1 :高レベル搬送波、 H2 :低レベル搬送波
SU :U相信号波、 SV :V相信号波
SW :W相信号波、 Vdc:コンデンサ電圧
γ :変調率、 γ1 :補正後変調率

Claims (8)

  1. 交流電力を整流するコンバータと、
    該コンバータの直流側に接続されたコンデンサと
    該コンデンサに保存された直流電力を交流電力に変換するインバータと、
    該インバータを制御するインバータ制御部と、
    前記コンデンサの電圧であるコンデンサ電圧を計測する電圧計測器とを備えた電力変換装置において、
    前記インバータ制御部が、変調率を前記コンデンサ電圧に応じて補正した補正後変調率を演算するビートレス制御部と、前記インバータが出力する交流電圧の1周期内で前記変調率と前記補正後変調率とを切替えて出力し、前記インバータが出力する交流電圧の周波数および位相を指令値に固定する周波数固定部を有することを特徴とする電力変換装置。
  2. 前記ビートレス制御部が、前記コンデンサ電圧に反比例させて前記補正後変調率を補正するものであることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
  3. ビート現象が発生する所定の周波数範囲で、前記インバータが出力する交流電圧の1周期内の一部で前記周波数固定部は前記補正後変調率を出力し、前記ビート現象が発生しない所定の周波数範囲で、前記周波数固定部は前記変調率を出力することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電力変換装置。
  4. 前記周波数固定部が、各相で、前記インバータが出力する交流電圧の周波数の各周期の中の複数の所定の期間に前記変調率を出力し、
    前記所定の期間のそれぞれは、その相の電圧が変化するタイミングであって、その相と他の相との間の線間電圧の異なる極性の非零値が零値を挟んで隣接する領域で、前記線間電圧が前記零値へ変化するタイミング、または、前記線間電圧が前記零値から変化するタイミングを含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電力変換装置。
  5. 前記コンデンサが複数のコンデンサが直列に接続されたコンデンサの直列接続体であることを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れかに記載の電力変換装置。
  6. 前記インバータが、前記コンデンサの直列接続体の片端を高電位、他の片端を低電位、コンデンサ間の接続点を中間電位として、前記高電位、前記中間電位および前記低電位の何れかを選択して三相交流を出力するものであることを特徴とする請求項5に記載の電力変換装置。
  7. 前記周波数固定部が、各相で、前記相電圧の前記高電位と前記低電位が前記中間電位を挟んで隣接する領域で、前記相電圧が前記高電位と前記中間電位の間で変化するタイミングおよび、前記相電圧が前記低電位と前記中間電位との間で変化するタイミングを、搬送波または信号波の位相に対して所定値に固定するものであることを特徴とする請求項6に記載の電力変換装置。
  8. 前記コンバータでの整流により発生する前記コンデンサ電圧の変動の周波数を含む所定の周波数範囲で、前記ビートレス制御部と前記周波数固定部を動作させることを特徴とする請求項1ないし請求項7の何れかに記載の電力変換装置。
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