JP5067178B2 - グリッド偏光子 - Google Patents

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Description

本発明は、グリッド偏光子に関する。さらに詳細には、高温高湿下にさらされても保護層が剥がれ難く、搬送ロール等で表面が擦れたり、引っ掻かれたりなどしても、光学的特性にほとんど影響がでないグリッド偏光子に関する。
高い偏光分離性能を有する反射型偏光子としてグリッド偏光子が知られている。これは、多数の線状金属(ワイヤ)を一定の周期で平行に配列してなるグリッドをもつ光学部材である。このような金属グリッドの周期が入射光の波長より短い場合には、グリッドに対して平行な偏光成分は反射し、垂直な偏光成分は透過するため、単一偏光を作りだす偏光子として機能する。このグリッド偏光子は、光通信ではアイソレーターの光部品として、液晶表示装置では光の利用率を高め輝度を向上させるための部品として、利用することが提案されている。
グリッド偏光子のグリッドは非常に微細で繊細なものであるので、表面を擦ったり、引掻いたりなどしたときに、グリッドに欠陥が生じることがある。そこで、グリッド偏光子には、そのグリッドを保護するために保護層が設けられる。
特許文献1には、偏光子を有する偏光デバイスであって、前記偏光子は、光透過基板、前記基板上に配置される周囲環境に敏感なグリッドワイヤ、および前記偏光子を包囲する密封包囲部材を有し、前記包囲部材は前記偏光子を周囲環境から保護するために不活性雰囲気を有することを特徴とする偏光デバイスが開示されている。この密封包囲部材は偏光子の側部に取り付けられたスペーサーを介して、グリッドワイヤに接しないように設けられている。しかし、広い面積のグリッド偏光子になると密封包囲部材が撓むなどして、形状の安定性が保てないことがあった。
特表2005−513547号公報(米国公開公報2003−117708号公報)
特許文献2には、透明材料からなる層と、複素屈折率(N=n−iκ)の実部nと虚部κの差の絶対値が1.0以上の材料を含むグリッド層と、透明材料からなる保護層とを有し、グリッド層は、細長く線状に延び且つ離間して複数並んでおり、透明材料層と保護層とに挟まれ、そして、シランカップリング剤やチタネートカップリング剤やアルミニウムカップリング剤のごとき、無機材料に結合する反応基(加水分解によってシラノール基、チタノール基、およびアルミノール基になる基など)および有機材料に結合する反応基(アミノ基、エポキシ基、ビニル基、メタクリロイル基、アクリロイル基、チオール基など)を有する化合物を介して透明材料層および/または保護層と結合されており、且つ透明材料層とグリッド層と保護層とに囲まれた空間に空気または不活性ガスが含まれている、グリッド偏光子が開示されている。しかしながら、保護層/グリッド層間を接着している部分は金属グリッド頂部のみであるため、接着力が弱く、高湿高温下にさらされると保護層が剥がれやすい。また、接着剤が金属グリッドの間に入り込み光学特性を低下させることがあった。
特開2007−33560号公報
本発明の目的は、高温高湿下にさらされても保護層が剥がれ難く、搬送ロールなどで、表面が擦れたり、引っ掻かれたりなどしても、光学的特性にほとんど影響がでない、偏光分離特性に優れたグリッド偏光子を提供することにある。
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意検討した結果、グリッド偏光子の保護層として、イソシアネート基を有する有機化合物を含む組成物から得られる膜を用いることによって、高温高湿下にさらされても保護層が剥離せず、表面を擦ったり、引掻いたりなどしても、光学的特性にほとんど影響がでないことを見出した。本発明はこの知見に基づいてさらに検討した結果、完成したものである。
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
(1) 透明樹脂層と、グリッドと、保護層Aとがこの順で積層されてなり、
該保護層Aはイソシアネート基を有する有機化合物を含む組成物から得られる、グリッド偏光子。
(2) 前記組成物は活性水素含有基を有する有機化合物をさらに含む、(1)に記載のグリッド偏光子。
(3) 前記組成物はシリル基および/またはチタニア基を有する有機化合物をさらに含む、(1)または(2)に記載のグリッド偏光子。
(4) 前記活性水素含有基が、水酸基、アミノ基およびチオール基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基である、(1)〜(3)のいずれか1項に記載のグリッド偏光子。
(5) 保護層Aの上に保護層Bがさらに積層されている、(1)〜(4)のいずれか1項に記載のグリッド偏光子。
(6) 透明樹脂層は、グリッド側表面に略平行に並んだ直線状の畝を有し、
グリッドは、該畝の頂面にまたは該畝の頂面および畝間に形成された溝の底面に形成された吸光性膜からなる、(1)〜(5)のいずれか1項に記載のグリッド偏光子。
本発明のグリッド偏光子は、保護層として、イソシアネート基を有する有機化合物を含む組成物から得られる膜を用いる。この保護層は、グリッドとの接着力が強く、高温高湿下にさらしても、グリッドから剥がれ難い。
その結果、グリッドが保護層によって守られ、搬送ロールなどで、表面が擦られたり、引掻かれたりなどしても、グリッドに傷がつき難いので、偏光分離機能などの光学特性が低下しない。また、本発明のグリッド偏光子は摩擦、引掻きに強いので、操作性が高い。本発明のグリッド偏光子を用いることによって、偏光分離膜等を高い効率で生産することができる。
本発明のグリッド偏光子は、透明樹脂層と、グリッドと、保護層Aとがこの順に積層されてなるものである。
透明樹脂層は、透明樹脂からなるフィルム状またはシート状の層である。該透明樹脂は、加工性の観点からガラス転移温度が60〜200℃であることが好ましく、100〜180℃であることがより好ましい。なお、ガラス転移温度は示差走査熱量分析(DSC)により測定することができる。
透明樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、脂環式構造含有重合体などが挙げられる。
これらのうち、透明性、低吸湿性、寸法安定性、加工性の観点から脂環式構造含有重合体が好適である。
脂環式構造含有重合体としては、特開平05−310845号公報に記載されている環状オレフィンランダム共重合体、特開平05−97978号公報に記載されている水素添加重合体、特開平11−124429号公報や米国特許第6,511,756号公報に記載されている熱可塑性ジシクロペンタジエン系開環重合体およびその水素添加物等が挙げられる。
本発明に用いる透明樹脂は、顔料や染料のごとき着色剤、蛍光増白剤、分散剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、耐電防止剤、酸化防止剤、滑剤、溶剤などの配合剤が適宜配合されたものであってもよい。
透明樹脂層は、前記透明樹脂を公知の方法で成形することによって得られる。成形法としては、例えば、キャスト成形法、押出成形法、インフレーション成形法などが挙げられる。
透明樹脂層の平均厚さは、取り扱い性の観点から通常5μm〜1mm、好ましくは20〜200μmである。透明樹脂層は、400〜700nmの可視領域の光の透過率が80%以上であるものが好ましい。
また、透明樹脂層は、その波長550nmで測定したレターデーションReによって特に制限されない。なお、Reは、Re=d×(nx−ny)で定義される値である。nxおよびnyは透明樹脂層の面内主屈折率(nx≧ny)であり、dは透明樹脂層の平均厚さである。面内の任意2点のレターデーションReの差(レターデーションむら)は、好ましくは10nm以下であり、より好ましくは5nm以下である。レターデーションむらが大きいと、液晶表示装置に用いた場合に表示面の明るさにバラツキが生じやすくなる。
本発明においては、製造効率の観点から、透明樹脂層として長尺状のものが好ましく用いられる。長尺とは、幅に対し少なくとも5倍程度以上の長さを有するものを言い、好ましくは10倍もしくはそれ以上の長さを有するものを言い、具体的にはロール状に巻回されて保管または運搬される程度の長さを有するものを言う。透明樹脂層の幅は、好ましくは500mm以上、より好ましくは1000mm以上である。
本発明のグリッド偏光子に用いられるグリッドは、略平行に並んだ線状の吸光性層からなるものである。グリッドは、その幅が好ましくは25〜300nmであり、長さが好ましくは800nm以上である。また、グリッドのピッチは、好ましくは20〜500nm、より好ましくは30〜300nmである。
線状吸光性層は、例えば、吸光性材料を成膜することによって得られる。
吸光性材料としては、導電性のものが好ましく、具体的には、アルミニウム、インジウム、マグネシウム、ロジウム、スズ等の金属が挙げられる。成膜の方法は特に制限されず、例えば、湿式メッキ法、乾式メッキ法などが挙げられる。
略平行に並んだ線状の吸光性層からなるグリッドを形成する方法は特に限定されないが、次のような方法で形成することが好ましい。
まず、前記透明樹脂層の少なくとも一方の表面に略平行に並んだ直線状の畝を形成する。畝は、細長く直線状に伸びる突起部である。この突起部が複数あり、それらが略平行に並んでいる。隣り合う畝の間には溝が形成される。ここで略平行とは隣り合う2本の畝の伸びる方向が±5℃以内の角度になっていることをいう。
畝は、その幅が好ましくは25〜300nmであり、畝の長さが好ましくは800nm以上である。
また、畝の高さは、好ましくは5〜3000nm、より好ましくは20〜1000nm、特に好ましくは50〜300nmである。畝は非周期的に並んだものであってもよいが、偏光分離特性などの光学特性を得るために畝が周期的に並んだものが好ましい。畝の中心線間距離(ピッチ)は、好ましくは20〜500nm、より好ましくは30〜300nmである。
畝を形成する方法は、特に制限されない。例えば、(1)畝に対応する形状を有する転写ロールを用いて、長尺の樹脂原反フィルム表面に該転写ロールの畝形状を転写することによって、または(2)畝のパターンをフォトリソグラフ法によって現像することによって、得られる。
次に、前記畝の上にPVD法によって吸光性膜を積層する。
PVD法は、蒸着材料を蒸発・イオン化し、被膜を形成させる方法である。具体的には、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームデポジション法等の中から適宜選択することができる。これらのうち真空蒸着法が好適である。真空蒸着法は、真空にした容器の中で、蒸着材料を加熱し、気化もしくは昇華させて、離れた位置に置かれた基板の表面に付着させ、薄膜を形成する方法である。加熱方法は、蒸着材料や基板の種類に応じて、抵抗加熱、電子ビーム、高周波誘導、レーザーなどの方法から適宜選択される。積層される吸光性膜の平均厚さは、特に制限されないが、通常20〜500nm、好ましくは30〜300nm、より好ましくは40〜200nmである。なお吸光性膜の平均厚さは畝の頂面に積層された吸光性膜の平均厚さである。
PVD法による製膜で、畝の頂面に優先的に吸光性膜が積層される。一方、畝の側面には吸光性膜が積層され難いが、畝の中心線間距離が広い場合には畝間に形成された溝の底面にも吸光性膜が積層されることもある。溝の底面に積層された吸光性膜は、後述するように湿式エッチング工程を経ることによって取り除くことができる。
PVD法によって積層された吸光性膜は、畝の幅よりも通常広い幅になる。吸光性膜の幅は狭い方が好ましいので、PVD法によって吸光性膜を積層した後、エッチングすること、若しくは、PVD法によって積層された吸光性膜の上にPVD法によって無機化合物膜をエッチングマスクとして積層し、次いでエッチングすることが好ましい。
無機化合物は、後述の湿式エッチングに耐えるものであれば特に限定されず、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化酸化ケイ素などの化合物が挙げられる。この中では特に酸化ケイ素が好ましい。積層される無機化合物膜の平均厚さは、特に制限されないが、通常1〜100nm、好ましくは2〜50nm、より好ましくは3〜20nmである。
PVD法によって積層された吸光性膜が、畝の幅よりも通常広い幅になっており、畝間に形成された溝の入り口を狭めているので、無機化合物膜は、主に畝頂面に積層された吸光性膜の上に積層される。
畝頂面に積層された吸光性膜の幅を狭め、また溝底面に積層された吸光性膜を取り除くために湿式エッチングを行うことが好ましい。湿式エッチング法に用いられるエッチング液は、透明樹脂層を腐食または劣化させずに吸光性膜を除去できる液であれば良く、湿式エッチングマスク、吸光性膜および透明樹脂層の材質に応じて適宜選択する。湿式エッチング液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物を含有する溶液;硫酸、燐酸、硝酸、酢酸、フッ化水素、塩酸などを含有する溶液;過硫酸アンモニウム、過酸化水素、フッ化アンモニウム等やそれらの混合液からなる溶液などが挙げられる。また、湿式エッチング液には界面活性剤などの添加物を添加しても良い。
このエッチングによって、湿式エッチングマスクが積層されていない部分または湿式エッチングマスクが薄い部分の下にある吸光性膜が除去される。具体的には、畝の頂部に積層された吸光性膜の脇部分もしくは溝の底面に積層された吸光性膜が除去され、畝頂部に畝の幅と同程度の幅の吸光性膜が残る。以上のようにしてグリッドを容易に形成できる。
本発明に用いられる保護層Aは、イソシアネート基を有する有機化合物を含む組成物から得られるものである。
該組成物に含まれるイソシアネート基を有する有機化合物は、脂肪族、芳香族、芳香脂肪族または脂環族のいずれでもよい。
本発明に好適に用いられるイソシアネート基を有する有機化合物は、イソシアネート当量(イソシアネート基1モル当りの分子量)が、好ましくは80〜600g/mol、より好ましくは80〜400g/molである。イソシアネート当量は、中和滴定法を用いて測定することができる。
イソシアネート基を有する有機化合物としては、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(イソシアネート当量247g/mol)、ヘキサメチレンジイソシアネート(イソシアネート当量84g/mol)、リジンジイソシアネート(イソシアネート当量106g/mol)のような脂肪族イソシアネート化合物;p−フェニレンジイソシアネート(イソシアネート当量80g/mol)、トリレンジイソシアネート(TDI、イソシアネート当量87g/mol)、ナフチレンジイソシアネート(NDI、イソシアネート当量84g/mol)、トリジンジイソシアネート(TODI、イソシアネート当量132g/mol)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI、イソシアネート当量125g/mol)、ポリメリックMDI(イソシアネート当量130g/mol以下、岩田敬治著「プラスチック材料講座2ポリウレタン樹脂」第48〜49頁(昭和53年日刊工業新聞社発行)参照)等の芳香族イソシアネート化合物;キシリレンジイソシアネート(XDI、イソシアネート当量94g/mol)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI、イソシアネート当量122g/mol)等の芳香脂肪族イソシアネート化合物;シクロヘキシルジイソシアネート(CHPI、イソシアネート当量83g/mol)、水添キシリレンジイソシアネート(水添XDI、イソシアネート当量97g/mol)、イソプロピリデンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)(IPC、イソシアネート当量145g/mol)、イソホロンジイソシアネート(IPDI、イソシアネート当量111g/mol)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI、イソシアネート当量131g/mol)等の脂環族イソシアネート化合物を挙げることができる。
また、3以上のイソシアネート基を有する有機化合物としては、例えば、トリフェニルメタントリイソシアネート(イソシアネート当量123g/mol)、トリス(p−イソシアナトフェニル)チオホスファイト(イソシアネート当量151g/mol)、多官能芳香族イソシアネート(武田薬品製コロネートL、住友バイエルウレタン製スミジュールL、住友バイエルウレタン製デスモジュールL等、イソシアネート当量218g/mol)、多官能脂肪族イソシアネート(住友バイエルウレタン製スミジュールN、イソシアネート当量168g/mol)、SBU−イソシアネート−0840(住友バイエルウレタン株式会社製、トリレンジイソシアネート−ポリエーテルポリオールアダクト体30%、トリレンジイソシアネート−トリメチロールプロパンアダクト体70%の混合体、イソシアネート当量625g/mol(ワニス値))等を挙げることができる。
また、イソシアネート基を有する有機化合物として、ポリオール化合物に、過剰のイソシアネート基を有する化合物を反応させて得られるイソシアネート基を有するプレポリマーを使用することができる。
前記組成物は、活性水素含有基を有する有機化合物が含まれていることが、保護層の強度を向上できるという点で好ましい。
前記活性水素含有基としては、水酸基、カルボキシル基、燐酸基、亜燐酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基、チオール基、シラノール基等が挙げられ、前記官能基を有する有機化合物を用いることができる。これらの中でも、イソシアネート基との反応の容易さの観点から、水酸基、アミノ基、およびチオール基が好ましく、特に水酸基およびアミノ基が好ましい。
前記水酸基を有する化合物としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、2−フェニルプロパン−2−オール、クミノール、フェノール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン;ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール;ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリアクリル酸エステル系ポリオールなどの水酸基を有する化合物を挙げることができる。
前記アミノ基を有する化合物としては、メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、フェネチルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、エーテルアミン、アルカノールアミン、ピペリジン、ピペラジン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアミン、ビスアミノジプロピルアミン、ビスアミノジエチルアミンなどのアミノ基を有する化合物を挙げることができる。アミノ基を有する化合物としては、イソシアネート基との反応性の観点から、1級アミノ基を有する化合物が好ましい。
前記チオール基を有する化合物としては、メタンチオール、エタンチロール、t−ブタンチオール、オクタンチオール、ウンデカンチオール、ヘキサンチオール、ヒドロキシオクタンチオール、ヒドロキシヘキサンチオール、ヒドロキシウンデカンチオールなどのチオール基を有する化合物を挙げることができる。
活性水素含有基を有する有機化合物の量は、イソシアネート基と活性水素含有基とのモル比(イソシアネート基/活性水素含有基)において、1.0より大きくなる範囲が好ましく、1.0〜10.0になる範囲がより好ましい。前記範囲にすることにより、グリッド偏光子の性能を維持したまま、保護層Aを形成することが可能となる。
前記組成物は、シリル基および/またはチタニア基を有する有機化合物をさらに含んでいることが好ましい。
前記シリル基を有する有機化合物としては、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基含有アルコキシシラン;γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有アルコキシシラン;γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン等の(メタ)アクリロキシ基含有アルコキシシラン;γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトメチルトリメトキシラン、γ−メルカプトメチルトリエトキシラン、γ−メルカプトヘキサメチルジシラザン等のメルカプト基含有アルコキシシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン等のビニル基含有アルコキシシランなどを挙げることができる。
前記チタニア基を有する有機化合物としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル− アミノエチル)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート) オキシアセテートチタネートなどを挙げることができる。
シリル基および/またはチタニア基を有する有機化合物の量は、イソシアネート基を有する有機化合物100重量部に対して、好ましくは0.1〜40重量部、より好ましくは5〜20重量部である。
なお、シリル基および/またはチタニア基を有する有機化合物は、前記活性水素含有基を有していてもよい。その場合には、シリル基および/またはチタニア基を有する有機化合物は、活性水素含有基を有する化合物として扱う。
前記組成物は、生産性の観点から、イソシアネート基を有する有機化合物の反応性を向上させるような触媒をさらに含んでいてもよい。該触媒としては、3級アミン系触媒、錫系触媒、亜鉛系触媒などが挙げられる。触媒の量は、前記組成物に対して、0.01〜10重量%が好ましく、0.1〜5.0重量%が好ましい。
保護層Aは、その製造方法によって特に限定されない。例えば、前記組成物を製膜し、反応させることによって製造することができる。製膜方法は特に制限されない。生産性の観点から、組成物を溶媒に溶かし、その溶液を塗布する方法が好ましい。使用する溶媒は、イソシアネート基を有する有機化合物を溶解できるものであれば特に制限されない。また、溶液濃度は、好ましくは0.5〜40重量%、より好ましくは1〜20重量%である。
該組成物を用いた製膜をグリッド上で行うと、グリッド偏光子の性能を低下させることなく、グリッド上に保護層Aを形成させることが可能となる。
前記の組成物がイソシアネート基を有する有機化合物のみで組成されるものである場合には、イソシアネート基を有する有機化合物が大気中の水分やグリッドの上に存在する界面水と反応する。また、前記組成物がイソシアネート基を有する有機化合物と活性水素含有基を有する有機化合物を含むものである場合には、前記反応に加えて、イソシアネート基を有する有機化合物と活性水素含有基を有する有機化合物との反応が起きる。また、前記組成物がイソシアネート基を有する有機化合物と活性水素含有基を有する有機化合物とシリル基および/またはチタニア基を有する有機化合物を含むものである場合には、前記反応に加えて、イソシアネート基を有する有機化合物とシリル基および/またはチタニア基を有する有機化合物との反応が起きる。
前記の反応をさせるときの温度は、好ましくは10〜120℃、より好ましくは20〜80℃である。この温度範囲にすることによって、光学特性と強度を両立することが可能となる。
本発明においては、前記の組成物の反応生成物が3次元架橋体であることが好ましい。3次元架橋体となることによって保護層Aの強度が向上する。
前記保護層Aの平均厚さは、好ましくは0.01〜10μm、より好ましくは0.1〜5μmである。
本発明のグリッド偏光子は、保護層Aの上に保護層Bがさらに積層されていることが好ましい。
保護層Bの平均厚さは、取り扱い性の観点から通常5μm〜1mm、好ましくは20〜200μmである。保護層Bは、400〜700nmの可視領域の光の透過率が80%以上であるものが好ましい。
また、保護層Bは、その波長550nmで測定したレターデーションReによって特に制限されない。なお、Reは、d×(nx−ny)で定義される値である。nxおよびnyは保護層Bの面内主屈折率(nx≧ny)であり、dは保護層Bの平均厚さである。面内の任意2点のレターデーションReの差(レターデーションむら)は、好ましくは10nm以下であり、より好ましくは5nm以下である。レターデーションむらが大きいと、液晶表示装置に用いた場合に表示面の明るさにバラツキが生じやすくなる。
保護層Bを積層する手法は特に制限されない。例えば、保護層A上に保護層Bを形成可能な低分子化合物からなる組成物を積層し熱又はエネルギー線照射により硬化させる手法;フィルム状の保護層Bを接着剤又は粘着剤を介して保護層A上に積層する手法を挙げることができる。生産性の観点から、フィルム状の保護層Bを接着剤又は粘着剤を介して保護層A上に積層する手法が好ましい。
保護層Bを形成可能な低分子化合物からなる組成物としては、分子中に重合性不飽和結合もしくはエポキシ基を有するオリゴマーおよび/またはモノマーを含むものが挙げられる。
前記分子中に重合性不飽和結合もしくはエポキシ基を有するオリゴマーとしては、不飽和ジカルボン酸と多価アルコールとの縮合物等の不飽和ポリエステル類;ポリエステルメタクリレート、ポリエーテルメタクリレート等のメタクリレート類;ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリオールアクリレート、メラミンアクリレート等のアクリレート類;もしくはカチオン重合型エポキシ化合物等が挙げられる。
前記分子中に重合性不飽和結合もしくはエポキシ基を有するモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ラウリル等のメタクリル酸エステル類;アクリル酸−2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル、アクリル酸−2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル、アクリル酸−2−(N,N−ジベンジルアミノ)メチル等の不飽和置換の置換アミノアルコールエステル類;アクリルアミド、メタクリルアミド等の不飽和カルボン酸アミド類;エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタリレート等の多官能性アクリレート類;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類等が挙げられる。
これらオリゴマー及び/又はモノマーは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
保護層Bを形成可能な低分子化合物からなる組成物は、硬化する条件により適宜ラジカル重合開始剤等を組み合わせて用いる。
フィルム状の保護層Bは、上記透明樹脂層に用いられる樹脂材料として例示したものの中から選択される樹脂材料で構成することができる。
フィルム状の保護層Bを積層させるために用いられる接着剤又は粘着剤としては、アクリル接着剤、ウレタン接着剤、ポリエステル接着剤、ポリビニルアルコール接着剤、ポリオレフィン接着剤、変性ポリオレフィン接着剤、変性脂環式オレフィン接着剤、ポリビニルアルキルエーテル接着剤、ゴム接着剤、塩化ビニル・酢酸ビニル接着剤、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体(SBS共重合体)接着剤、その水素添加物(SEBS共重合体)接着剤、エチレン・酢酸ビニル共重合体およびエチレン−スチレン共重合体などのエチレン接着剤、および、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・メタクリル酸エチル共重合体、およびエチレン・アクリル酸エチル共重合体などのアクリル酸エステル接着剤などを挙げることができる。保護層Aと保護層Bとの間に介在する接着剤または粘着剤の層の平均厚さは、通常0.01μm〜30μm、好ましくは0.1μm〜15μmである。
本発明のグリッド偏光子は、直交する直線偏光のうちの一方を透過し、他方を反射する性質を持つ。このような直線偏光を透過光と反射光に分離する性質を利用して、液晶表示装置の輝度向上用の素子として本発明のグリッド偏光子をそのまままたは吸収型偏光子や位相差板などと組み合わせて用いることができる。
本発明を実施例によってより詳細に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されない。本発明における評価は以下の方法にしたがって行った。
(イソシアネート当量の測定法)
イソシアネート基含有化合物(固形分)0.1gを三角フラスコに入れ、約20mlのジメチルホルムアミドを加えて均一に溶解した。0.1規定のジ−n−ブチルアミンのジメチルホルムアミド溶液40mlを加え、温度60℃にて2時間放置した。
0.1規定の塩酸のメタノール溶液でブロムフェノールブルーを指示薬として用いて中和滴定を行った。中和に要した塩酸量A〔ml〕を測定し、以下の式によりイソシアネート基含有化合物のイソシアネート当量を算出した。
イソシアネート当量〔g/mol〕 = 1000/(40−A)
(耐湿熱試験)
80℃および90%RHの環境下に、グリッド偏光子を20時間放置した。
グリッド偏光子の端部を電界放出型走査電子顕微鏡S−4700(日立製作所製)で観察し、保護層とグリッドとの界面の剥離の有無を調べた。
(偏光透過率、偏光反射率)
波長450nmにおけるグリッド偏光子の偏光透過率および偏光反射率を、分光光度計V−570(日本分光製)を用いてそれぞれ測定した。
なお、偏光透過率および偏光反射率の測定には直線偏光を使用し、偏光透過率はグリッド偏光子の透過軸と入射する光の偏光方向を平行にして透過率を測定することによって、偏光反射率はグリッド偏光子の透過軸と入射する光の偏光方向を直交させ入射角5°における反射率を測定することによって、求めた。なお、偏光透過率および偏光反射率が大きいほど、偏光分離性能に優れていることを示す。
製造例1
反応容器にエクセノール720(OH末端ポリオール、数平均分子量:約700、旭硝子社製)50g、トルエン30g、およびジブチル錫ラウレート0.007gを添加し、均一に溶解させた。該溶液の温度を50℃にした。該溶液を撹拌しながら、それにヘキサメチレンジイソシアネート(イソシアネート当量=84g/mol)24gを添加して反応を開始させた。FT−IRの測定において2250cm-1のピーク(イソシアネート基のシグナル)の高さに変化が無くなるまで反応させた。
室温まで冷まして、イソシアネートプレポリマーを回収した。回収されたイソシアネートプレポリマーのイソシアネート当量は517g/molであった。
実施例1
25mm×25mm×0.5mmのガラス平板上に、電子線レジストZEP520(日本ゼオン製、ポジ型電子線レジスト)をスピンコーターにて塗布し、塗膜を得た。電子線描画装置にて、前記塗膜面中央部の12mm×12mmの領域全面に、幅150nmの直線をピッチ300nmで平行に描画した。現像液(日本ゼオン製)に約3分間接触させた。これを水で洗浄し、窒素ブロアーにて乾燥した。ガラス平板上にフォトレジストからなる格子が形成された。
格子パターン形成面にCrを電子線蒸着装置にて蒸着した。アセトンに浸して超音波を掛けて洗浄し、フォトレジストを除去した。フォトレジストの除去と同時にフォトレジスト上のCr膜が除去され、フォトレジストの無かった部分のCr膜がガラス平板上に残った。
残されたCr膜の領域をドライエッチングした。Cr膜の無かった部分のガラスが削られ、ガラス平板表面に溝が格子状に形成された。酸で洗浄してCr膜を除去し、格子パターンを有するガラス平板を得た。
該ガラス平板の格子パターンは、370nmの高さを有する断面矩形の畝が、ピッチ300nmおよび畝の間に形成される溝の開口部幅150nmで、平行に並ぶものであった。なお、格子パターンの観察は、集束イオンビーム加工観察装置FB−2100(日立製作所製)を使用して観察用試料を作製し、電界放出型走査電子顕微鏡S−4700(日立製作所製)にて行った。
該ガラス平板の格子パターン形成面に、アルミニウムを真空蒸着装置にて蒸着した。それを、硝酸5.2重量%、リン酸73.0重量%、酢酸3.4重量%、および残部が水からなる(酸成分相当濃度:81.6重量%)温度33℃のエッチング液に30秒間漬けた。純水で洗浄し、乾燥空気を吹き付けて液を除去した。ガラス平板の畝の頂部のみにアルミニウムが蒸着されていることが電界放出型走査電子顕微鏡S−4700(日立製作所製)にて観察された。なお、観察用試料は、集束イオンビーム加工観察装置FB−2100(日立製作所製)を使用して作製した。
アルミニウムが蒸着された前記ガラス平板を、乾燥空気吹きつけ直後に、イソホロンジイソシアネート(イソシアネート当量:111g/mol)5重量%および3−アミノプロピルトリエトキシシラン2重量%が含まれるメチルエチルケトン溶液に30秒間浸漬した。60℃の乾燥機で10分間乾燥して、該ガラス基板表面に保護層A1が積層されたグリッド偏光子を得た。
該保護層A1は、赤外分光分析において、3500〜3000cm-1付近と、1727cm-1付近にピークが現れるものであった。このことから、保護層A1は尿素結合を有する化合物を含んでいることが判った。なお、尿素結合はイソシアネート基とアミノ基が反応することによって形成されるものである。該グリッド偏光子の評価結果を表1に示す。
Figure 0005067178
実施例2
実施例1におけるイソホロンジイソシアネート(イソシアネート当量:111g/mol)5重量%および3−アミノプロピルトリエトキシシラン2重量%が含まれるメチルエチルケトン溶液を、p−フェニレンジイソシアネート(イソシアネート当量:80g/mol)6重量%および3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン2重量%が含まれるメチルエチルケトン溶液に代えた以外は、実施例1と同じ方法にて、保護層A2が積層されたグリッド偏光子を得た。
保護層A2は、赤外分光分析において、3500〜3000cm-1付近と、1658cm-1付近にピークが現れるものであった。このことから、保護層A2はチオウレタン結合を有する化合物を含んでいることがわかった。なお、チオウレタン結合はイソシアネート基とチオール基が反応することによって形成されるものである。該グリッド偏光子の評価結果を表1に示す。
実施例3
8mm×8mm×60mmのSUS製シャンクにろう付けされた寸法0.2mm×1mm×1mmの直方体単結晶ダイヤモンドの0.2mm×1mmの面に、集束イオンビーム加工装置SMI3050(セイコーインスツルメンツ製)を用いてアルゴンによる集束イオンビーム加工を行い、長さ1mmの辺に平行な幅100nmおよび深さ80nmの直線状の溝をピッチ200nmで平行に彫り込み、切削工具を作製した。
50mm×50mm×10mmのステンレス鋼SUS430の平板表面に、平均厚さ100μmのニッケル−リン無電解メッキを施した。上記切削工具をセットした精密微細加工機(ナガセインテグレックス製、超精密微細加工機NIC200)による切削加工を行って、ニッケル−リン無電解メッキ面の全面に、幅100nmおよび高さ80nmの直線状の畝をピッチ200nmで平行に形成させ、転写金型を得た。
なお、切削工具および転写金型の作製は、温度が20.0±0.2℃に、振動制御システム(昭和サイエンス製)により0.5Hz以上の振動の変位が10μm以下に管理された恒温低振動室内で行った。
イソボルニルアクリレート86.6重量部、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート9.6重量部、および光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、イルガキュアー184)3.8重量部からなる塗布液を作製した。次いで、高周波発振機(コロナジェネレータHV05−2、Tamtec社製)を用いて、出力電圧100%、出力250Wで、直径1.2mmのワイヤー電極で、電極長240mm、ワーク電極間1.5mmの条件で3秒間コロナ放電処理を実施した平均厚さ100μmの基材フィルム(脂環式構造含有重合体フィルム ZF−14、日本ゼオン社製)表面に5μmの平均厚さで該塗布液を塗布し、前記転写金型に前記塗布膜を接触させて金型表面の形状を塗布膜に写し、基材フィルム側から紫外線を照射して、塗布膜を硬化させた。
硬化膜面には、深さ80nmおよび開口部幅100nmの断面矩形の溝がピッチ200nmで形成されていることが透過電子顕微鏡H−7500(日立製作所製)にて観察された。なお、観察用試料は、集束イオンビーム加工観察装置FB−2100(日立製作所製)を使用して作製した。
硬化膜面に、アルゴンガス存在下にて出力400Wの条件で二酸化珪素をフィルム法線方向に対して70度傾いた方向からスパッタリングし、同条件で二酸化珪素をフィルム法線方向に対して逆側に70度傾いた方向からスパッタリングし、次いでアルミニウムをフィルム法線方向から真空蒸着した。
硝酸5.2重量%、リン酸73.0重量%、酢酸3.4重量%、および残部が水からなる(酸成分相当濃度:81.6重量%)温度33℃のエッチング液に、アルミニウムを蒸着させた前記フィルムを30秒間浸漬した。純水で洗浄し、乾燥空気を吹き付けて液を除去した。
アルミニウムが、硬化膜の溝の底面および溝の間に形成された畝の頂面に積層されていることが透過電子顕微鏡H−7500(日立製作所製)にて観察された。観察用試料は、集束イオンビーム加工観察装置FB−2100(日立製作所製)を使用して作製した。
アルミニウムが蒸着された前記フィルムを、乾燥空気吹きつけ直後に、製造例1で得られたイソシアネートプレポリマー(イソシアネート当量:517g/mol)2重量%、ジエチレングリコール1重量%、および3−アミノプロピルトリエトキシシラン1重量%が含まれるメチルエチルケトン溶液に、30秒間浸漬した。60℃の乾燥機で30分間乾燥して、該フィルム表面に保護層A3が積層されたグリッド偏光子を得た。
保護層A3は、赤外分光分析において、3500〜3000cm-1付近と、1735cm-1付近と、1727cm-1付近にピークが現れるものであった。このことから、保護層A3は尿素結合およびウレタン結合を有する化合物を含んでいることが判った。なお、尿素結合はイソシアネート基とアミノ基が反応することによって、ウレタン結合はイソシアネート基と水酸基が反応することによって、それぞれ形成されるものである。該グリッド偏光子の評価結果を表1に示す。
実施例4
実施例3において用いられた、製造例1で製造したイソシアネートプレポリマー(イソシアネート当量:517g/mol)2重量%、ジエチレングリコール1重量%、および3−アミノプロピルトリエトキシシラン1重量%が含まれるメチルエチルケトン溶液を、製造例1で製造したイソシアネートプレポリマー(イソシアネート当量:517g/mol)4重量%、およびアミノ基含有チタネート化合物(KR44、味の素ファインテクノ社製)1重量%が含まれるメチルエチルケトン溶液に代え、該溶液に浸漬した後の乾燥時間を10分間に変更した以外は実施例3と同じ方法で保護層A4が積層されたグリッド偏光子を得た。
保護層A4は、赤外分光分析において、3500〜3000cm-1付近と、1727cm-1付近にピークが現れるものであった。このことから、保護層A4は尿素結合を有する化合物を含んでいることが判った。なお、尿素結合はイソシアネート基とアミノ基が反応することによって形成されるものである。該グリッド偏光子の評価結果を表1に示す。
実施例5
実施例4において用いられた、製造例1で製造したイソシアネートプレポリマー(イソシアネート当量:517g/mol)4重量%、およびアミノ基含有チタネート化合物(KR44、味の素ファインテクノ社製)1重量%が含まれるメチルエチルケトン溶液を、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(イソシアネート当量:247g/mol)5重量%が含まれるメチルエチルケトン溶液に代えた以外は、実施例4と同じ方法で保護層A5が積層されたグリッド偏光子を得た。
保護層A5は、赤外分光分析において、3500〜3000cm-1付近と、1727cm-1付近にピークが現れるものであった。このことから、保護層A5は尿素結合を有する化合物を含んでいることが判った。なお、この尿素結合はグリッド構造表面上に残存した水とイソシアネート基が反応して生成したアミノ基と、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン由来のイソシアネート基が反応することによって形成されたものである。
イソボルニルアクリレート86.6重量部、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート9.6重量部、および光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、イルガキュアー184)3.8重量部からなる塗布液を作製し、高周波発振機(コロナジェネレータHV05−2、Tamtec社製)を用いて、出力電圧100%、出力250Wで、直径1.2mmのワイヤー電極で、電極長240mm、ワーク電極間1.5mmの条件で3秒間コロナ放電処理を実施した平均厚さ100μmの保護フィルム(脂環式構造含有重合体フィルム ZF−14、日本ゼオン社製)に5μmの平均厚さで該塗布液を塗布し、塗膜を形成させた。該フィルムを前記で得られたグリッド偏光子の保護層A5側に塗膜を向けて密着させた。紫外線を照射して塗膜を硬化させ、グリッド偏光子と保護フィルムとを接着した。
保護フィルムと基材フィルムとに挟まれた線状のアルミニウム蒸着膜間に、保護層A5中のイソシアネート基と水との反応により発生した二酸化炭素によって形成されたと思われる空間が存在していることが、透過型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製、H−7500)によって観察された。なお、観察用超薄切片は、LEICAウルトラミクロトーム(日立ハイテクノロジーズ社製、ULTRACUT−UCT)を用いて作成した。得られたグリッド偏光子の評価結果を表1に示す。
比較例1
イソホロンジイソシアネート(イソシアネート当量:111g/mol)5重量%および3−アミノプロピルトリエトキシシラン2重量%が含まれるメチルエチルケトン溶液に浸漬して保護層を形成する代わりに、イソボルニルアクリレート86.6重量部、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート9.6重量部、および光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、イルガキュアー184)3.8重量部からなる塗布液をアルミニウム蒸着面に塗布し、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)板を塗布面に密着させ、ガラス平板側から紫外線を照射して塗膜を硬化させた以外は、実施例1と同じ方法でグリッド偏光子を得た。該グリッド偏光子の評価結果を表1に示す。

Claims (5)

  1. 透明樹脂層と、グリッドと、保護層Aとがこの順で積層されてなり、
    該保護層Aはイソシアネート基を有する有機化合物、並びにシリル基および/またはチタニア基を有する有機化合物を含む組成物から得られる、グリッド偏光子。
  2. 前記組成物は活性水素含有基を有する有機化合物をさらに含む、請求項1に記載のグリッド偏光子。
  3. 前記活性水素含有基が、水酸基、アミノ基およびチオール基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基である、請求項に記載のグリッド偏光子。
  4. 保護層Aの上に保護層Bがさらに積層されている、請求項1〜のいずれか1項に記載のグリッド偏光子。
  5. 透明樹脂層は、グリッド側表面に略平行に並んだ直線状の畝を有し、
    グリッドは、該畝の頂面にまたは該畝の頂面および畝間に形成された溝の底面に形成された吸光性膜からなる、請求項1〜のいずれ1項に記載のグリッド偏光子。
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