JP5065700B2 - 切断性に優れる鋼板 - Google Patents

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Description

本発明は、レーザー切断性に優れた鋼板に関するものである。
鋼にCrやNiを含有させることで耐食性を向上させた鋼は、古くから知られており、各種ステンレス鋼として実用化されている。ステンレス鋼においては、高価な元素であるCrが通常13質量%以上含まれ、材料コストが非常に高価であるため、土木構造物やタンク等の構造部材等に用いられることは稀にしかない。
ここで、耐食性鋼には、ステンレス鋼の他に、保護性さびにより防食を行う低合金鋼も知られている。低合金鋼には、Cr、Cu、P等を含有した耐候性鋼およびCr、Cu、Mo等を含有した耐海水鋼、その他の低合金鋼に大別される。耐候性鋼は大気環境下で、また、耐海水鋼は海水中で優れた防食効果を発揮する。
これらの低合金鋼は、ステンレス鋼に比べて安価であり、普通鋼に比べて耐食性に優れるため、海洋構造物、土木、建築、橋梁、建設機械、鋼管、タンク等の鋼構造部材としてもよく使用されている。
前記のような低合金鋼からなる鋼板が使用される分野においては、高能率の施工性が要求されており、ガス切断やプラズマ切断に比べて切断面の形状や自動化への対応という点から、レーザー装置出力の増大に伴ってレーザー切断の適用が盛んに進められている。しかしながら、鋼板のレーザー切断性においては、切断時の安定性や厚肉材への適用限界等により、十分であるとは言えないのが現状である。そこで、ハード面ではレーザー切断機の高出力化が進められており、また、材料面からは、鋼板表面の高機能化によって切断性を向上させる試みがなされてきた。
例えば、特許文献1には、鋼板表層のスケールが、スケール厚み10μm以下でFeの組成比が70%以上となるように、冷却時間と総圧延時間の比率を制御する方法が開示されている。この方法では、強固な薄スケールによってスケールの密着性を向上させると、塗装むらの防止や加工時の剥離等が防げるために効果的である。
特許文献2には、Si、Mn、Cu、Crを適量添加することによって酸化発熱反応の制御と溶鋼の粘性制御を行い、さらには圧延および冷却条件にて表面の光沢を抑えることでレーザー切断性を良好にする方法が開示されている。
特許文献3には、地鉄とスケール界面層において合金富化層の厚みを1μm以上とし、界面の粗さの制御によって耐剥離性に優れたスケール層の形成を行う厚鋼板が開示されている。
特許文献4には、スケール層厚さ、スケール層と地鉄界面の剥離率、およびスケール層内の空孔面積を規定した厚鋼板について開示されている。
特開平5−195055号公報 特開平9−20962号公報 特開平11−343541号公報 特開2002−332540号公報
しかし、特許文献1の技術では、レーザー切断性において、レーザーの先行部で熱応力における部分的なスケールの割れや剥離が起きるため、切断安定性が十分でないという問題があった。特に、厚肉材ではその傾向が顕著になる。また、耐食性を必ずしも満足しないという問題もあった。
また、特許文献2の技術では、高価な合金成分の添加が必要であり、圧延条件の制約からも経済性が悪いという問題があり、また耐食性を必ずしも満足しないという問題もあった。そして、特許文献3の技術では、特許文献2と同様に、経済性に劣るという問題や耐食性を必ずしも満足しないという問題があった。
さらに、特許文献4の技術では、レーザー切断時の熱応力によるスケールの剥離性が不十分であり、安定したレーザー切断性が得られないという問題があった。また耐食性を必ずしも満足しないという問題もあった。
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、耐食性に優れると共に、優れたレーザー切断性を有する鋼板を提供することにある。
請求項1に係る切断性に優れる鋼板は、C:0.20質量%以下、Si:0.1〜1.0質量%、Mn:2.5質量%以下、Ni:0.05〜6.0質量%、Ti:0.03〜1.0質量%、S:0.02質量%以下、P:0.2質量%以下、Al:0.5質量%以下、Zn:0.01〜3.0質量%、Ca:0.0001〜0.01質量%未満を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、母材と、その表面にスケール層を有する鋼板であって、前記母材と前記スケール層との界面に存在するNi、Ti、Znの1種または2種以上が濃化した濃化層を有し、前記濃化層におけるNi、Ti、Znの合計量(質量%)が、前記母材におけるNi、Ti、Znの合計量(質量%)の1.5倍以上であり、かつ、前記濃化層の厚さが1.0μm以上であることを特徴とする。
このように構成すれば、C、Si、Mn、Ni、Ti、S、P、Al、Zn、Caを所定量含有することにより、生成スケールが緻密化、微細化して切断性が向上すると共に、保護性さび生成が促進され耐食性も向上し、また、強度や溶接性等も向上する。さらに、Tiを所定量含有することで、非保護性さびの生成が抑制され、Znを所定量含有することで、少量の合金元素でもその作用が発揮されるようになり、Caを所定量含有することで、腐食先端部でのpH低下が緩衝される。そして、濃化層における所定元素の合計量と、鋼板の母材における前記所定元素の合計量との関係を所定に規定することで、濃化層内に形成される酸化物が緻密となる。また、濃化層の厚さを所定以上とすることで、濃化層の分布が均一となる。
請求項に係る切断性に優れる鋼板は、C:0.20質量%以下、Si:0.1〜1.0質量%、Mn:2.5質量%以下、Ni:0.05〜6.0質量%、Ti:0.03〜1.0質量%、S:0.02質量%以下、P:0.2質量%以下、Al:0.5質量%以下、Zn:0.01〜3.0質量%、Ca:0.0001〜0.01質量%未満を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、母材と、その表面にスケール層を有する鋼板であって、前記組成からなるスラブを900〜1000℃に加熱した後、熱間圧延を施しながら、700℃以下まで冷却し、180秒以内に圧延板の表面を、前記冷却した温度から30℃以上加熱して10秒以上保持し、その後、さらに圧延を行うことにより製造されたことを特徴とする。
このように構成すれば、スラブや圧延板に所定条件の熱処理を施すことで、γ粒が微細化されて、スケールが微細化し、生成したスケール中にNi、Ti、Znが濃化する。
請求項に係る切断性に優れる鋼板は、前記鋼板は、さらに、Cr:0.2〜3.0質量%、Nb:0.005〜0.10質量%、V:0.01〜0.20質量%、Zr:0.005〜0.10質量%、Mo:0.1〜1.0質量%、B:0.0003〜0.0030質量%、Mg:0.0005〜0.01質量%、REM:0.0005〜0.01質量%のいずれか1種または2種以上を含有することを特徴とする。
このように構成すれば、鋼板が、さらに、所定の元素を所定量含有することで、耐食性がさらに向上する。また、Crを所定量含有することで、空隙の少ないきわめて安定した緻密なスケールが形成され、切断性がさらに向上し、Nb、V、Bを所定量含有することで、焼入れ性が上昇し、強度が向上する。
請求項に係る切断性に優れる鋼板は、前記鋼板の板厚方向のそれぞれの表面から、板厚方向における板厚の10%〜30%の領域での平均フェライト粒径が5μm以下であることを特徴とする。
このように構成すれば、鋼板の所定領域での平均フェライト粒径を所定以下にすることにより、生成スケールが緻密化、微細化して切断性が向上すると共に、保護性さびも微細化、均一化されて耐食性も向上する。
本発明に係る切断性に優れる鋼板によれば、高い耐食性を有し、かつ、レーザー切断性を向上させることができる。そのため、レーザー切断加工の品質、精度が向上し、安定したレーザー切断が可能となり、鋼構造物の品質向上、生産性の向上を図ることができる。
以下、本発明に係る切断性に優れる鋼板(以下、鋼板という)について、詳細に説明する。
鋼板は、母材と、その表面にスケール層を有するものである。そして、鋼板は、母材とスケール層との界面に存在する濃化層を有し、濃化層における所定元素の合計量と、母材における前記所定元素の合計量との関係を所定に規定し、かつ濃化層の厚さを所定に規定したものである。なお、本鋼板は、表面にスケール層を有する鋼板であって、スケール層と地鉄(母材)との界面の地鉄側にCu、Ni、Ti、Zn等が濃化した濃化層を有する鋼板である。また、スケール層、濃化層は、母材の両面に形成されるものである。
ここで、本発明でいう、スケール層とは、鉄酸化物を主とする鉄酸化物層をいい、濃化層とは、Ni、Ti、Zn(Cuを含有する場合は、Cu、Ni、Ti、Zn)の1種または2種以上が濃化した酸化物層をいう。
鋼板の成分組成は、C、Si、Mn、Ni、Ti、S、P、Al、Zn、Ca、必要に応じてCuを所定量含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるものである。以下、各成分組成の数値範囲の限定理由について説明する。
<C:0.20質量%以下>
Cは鋼の強度に効く元素であり、390〜630N/mm級乃至、それ以上の強度の確保に際して有効な元素である。しかし、0.20質量%を超えると、鋼の溶接性や裸耐候性を低下させる。従って、Cの含有量は、0.20質量%以下とする。なお、0.02質量%未満では強度確保が難しくなるため、0.02質量%以上とすることが望ましい。
<Si:0.1〜1.0質量%>
Siは溶鋼の脱酸や固溶強化のための元素であり、また、緻密な保護性さび層の形成を促進し、裸耐候性等の耐食性を向上させる効果も有する。しかし、0.1質量%未満では、これらの効果が不十分である。一方、1.0質量%を超えると、溶接性が低下する。従って、Siの含有量は、:0.1〜1.0質量%とする。さらに、耐食性向上の観点から、下限値は0.15質量%とすることが望ましい。
<Mn:2.5質量%以下>
Mnは鋼の強度に効く元素であり、390〜630N/mm級乃至、それ以上の強度の確保に有効な元素である。しかし、2.5質量%を超えると、MnSが鋼中に多量に生成して、裸耐候性等の耐食性を低下させる。従って、Mnの含有量は、2.5質量%以下とする。なお、0.1質量%未満では、前記強度確保が難しくなるため、0.1質量%以上とすることが望ましい。
<Ni:0.05〜6.0質量%>
Niは切断性、耐食性、溶接性等の向上効果を有する元素である。またNiは、表面層において、一部酸化物になるが、多くは固溶状態で濃化し、表面スケールを緻密化し、密着性向上を高めることによりレーザー切断性を向上させる。
また、Niは鋼表面に生成するさび層を緻密化して、保護性さび層の形成を促進し、耐候性等の耐食性を向上させる効果を有する。また、溶接性の向上にも寄与する。さらに、Niは、鋼板製造のための熱間圧延等の加工の際における素材の脆化(以下、熱間加工脆性ともいう)を抑制する効果もある。
Niの含有量が0.05質量%未満では、耐食性の向上が不十分となり、一方、6.0質量%を超えると、完全オーステナイト組織における固液凝固温度範囲を広げて、低融点不純物元素のデンドライト粒界への偏析を助長すると共に、Sと反応して溶接金属の粒界に、低融点のNiS化合物を析出させる。そのため、凝固金属の粒界の延性を劣化させ、ひいては、耐溶接高温割れ性に悪影響を与える。従って、Niの含有量は、0.05〜6.0質量%とする。
また、鋼板は、前記Niと共に、Cuを含有してもよく、Cuを含有する場合は、(Cu+Ni)の含有量を0.05〜9.0質量%とする。
<(Cu+Ni):0.05〜9.0質量%>
Cuは切断性、耐食性、溶接性等の向上効果を有する元素である。またCuは、表面層において、一部酸化物になるが、多くは固溶状態で濃化し、表面スケールを緻密化し、密着性向上を高めることによりレーザー切断性を向上させる。
また、Cuは電気化学的に鉄より貴な元素であり、Niの場合と同様に、鋼表面に生成するさび層を緻密化して、保護性さび層の形成を促進し、耐候性等の耐食性を向上させる効果を有する。また、溶接性の向上にも寄与する。
ここで、Cuの含有量は、0.05〜3.0質量%が望ましい。Cuの含有量が0.05質量%未満では、耐食性の向上効果が小さい。一方、3.0質量%を超えると、耐食性向上効果が飽和し、また、前記熱間加工脆性を引き起こす可能性がある。さらに、熱間加工脆性の発生をより確実に抑制するためには、Cu含有量を0.10〜1.5質量%とすることが望ましい。
以上により、NiをCuと併せて含有させることにより、切断性、耐食性、溶接性等の向上効果、熱間加工脆性の抑制効果等の相乗効果が期待できる。
そして、NiをCuと併せて含有させる場合、(Cu+Ni)の含有量を0.05〜9.0質量%とする。
(Cu+Ni)の含有量が0.05質量%未満では、耐食性の向上効果が小さく、一方、9.0質量%を超えると、耐食性向上効果の飽和、熱間加工脆性の発生、耐溶接高温割れ性の悪影響等の不具合が生じる。
<Ti:0.03〜1.0質量%>
Tiは本発明で非常に重要な必須添加元素であり、Cu、Niと同様、鋼表面に生成するさび層を緻密化して、保護性さび層の形成を促進し、耐候性等の耐食性を向上させる効果を有していると共に、非常に優れた耐食性も有している。特に、海浜・海洋環境で特徴的に生成し、耐食性を悪化させるβ―FeOOHの生成を抑制する元素として、CuやNiと複合添加すると優れた効果を発揮する。また、鋼の清浄化という利点も併せ持っている。このような効果は、0.03質量%を超えて添加すると、著しく上昇する。従って、Tiの含有量は、0.03質量%以上とする。しかし、過剰な添加を行っても、その効果は飽和傾向を示し、経済的にも好ましくないので、1.0質量%を上限とする。また、前記効果は、いわゆる鋼材(鋼板)の腐食生成物の場合であるが、亜鉛の腐食生成物においても、Tiを含有することにより緻密性が増す効果がある。したがって、鋼自体および、鉄と亜鉛の腐食生成物にも作用して耐食性を向上させる効果があるので、非常に重要な元素である。
<S:0.02質量%以下>
Sは0.02質量%を超えて含有量されると、腐食の起点となるFeS、MnSが鋼中に多量に生成して、前記安定さび層の形成を阻害して、耐食性劣化を招く可能性がある。また、Ni等を過剰に含有した場合に、Sとの反応により、溶接金属の粒界に低融点のNiS化合物を析出させ、凝固金属の粒界の延性を劣化させやすくなる。この点、S含有量を0.02質量%以下とすれば、前記低融点のNiS化合物を析出させずに、Niをより多量に含有することが可能になるという利点もある。例えば、Sが0.02質量%を超えた場合には、Niの上限値は3.0質量%とすべきであるが、S含有量を0.02質量%以下とすることにより、前記した通り、Niを6.0質量%まで含有することが可能となる。したがって、S含有量は0.02質量%以下、好ましくは0.01質量%以下、さらに好ましくは0.005質量%以下の範囲とする。
<P:0.2質量%以下>
Pは、耐候性鋼にとって、鋼表面に生成するさびへの塩化物イオンの進入を阻止し、緻密な安定さび層を形成して、耐食性を向上させる効果を有する。そして、従来の耐候性鋼では、この効果を発揮させるために、0.05質量%程度以上、0.15質量%以下程度の含有を必須としている。しかし、本発明においては、Pの0.2質量%を超えての過度の含有は、溶接性を著しく阻害し、例えば少数主桁橋等の施工上重要な、予熱なし(予熱フリー)で、高効率の大入熱溶接ができる溶接性の要求特性を満たすことができない。また、本発明では、Ti等の含有により、緻密な安定さび層の形成が達成できるゆえ、Pの過度の含有は必要ない。このP量の低減は、溶接性の向上にも寄与する。
<Al:0.5質量%以下>
Alは表層で酸化物を形成するが、Alの酸化物粒子は小さく、空隙の少ないきわめて安定した緻密なスケールを形成し、レーザー切断性に寄与する。また、AlはTiと複合添加することにより保護性さび層の形成を一層促進し、ひいては耐食性をさらに向上させる効果を有する。また、Alは溶接性の向上効果も有する。さらに、Alは、溶鋼の脱酸元素として、固溶酸素を捕捉すると共に、ブローホールの発生を防止し、また、鋼(鋼板)の靱性の向上のためにも有効な元素である。そしてAlの含有量が0.5質量%を超えると、前記の緻密なスケール層や保護性さび層形成の促進によるレーザー切断性や耐食性向上の効果は飽和し、逆に、溶接性を劣化させ、また、アルミナ系介在物の増加により鋼の靱性を劣化させる。なお、ある程度添加する方が、その効果を期待できるため、Alの含有量は0.03質量%以上が望ましく、さらに、0.1質量%以上が望ましい。
<Zn:0.01〜3.0質量%>
Znは本発明において非常に重要な必須添加元素である。Znは電気化学的に卑で鉄に広い組成範囲で固溶するので、腐食環境中へのFeの溶解を促進させる作用がある。これは一時的には鋼材の耐食性が低下することを意味するが、腐食初期にZnとFeが優先溶解することにより、結果的に鋼中のCu、Ni等が取り残される形で表面に濃化することになり、地鉄側に有効な作用を持つ合金元素が濃縮することになり、性能を向上させる働きがある。また腐食生成物も鉄さびにZnさびが混じることにより環境遮断効果が向上することにより耐食性も結果的に向上する。
高耐食性鋼板においては、Zn添加によりFeが溶解しやすくなり、鋼板(鋼材)の表層部にCu、Niが濃化することにより、少ないCu、Ni添加量であっても多いものに相当する耐食性が得られる。即ち、耐食性向上の効果があるCu、Niを鋼材全体としては機械的特性や溶接性の低下をきたさないような少量の濃度に抑え、耐食性に寄与する表面にCu、Niを濃化させて高濃度とすることにより、耐食性を向上させる。このとき、Zn量については、前記耐食性の点から0.01〜3.0質量%を添加することが必要である。
さらにZnは、生成スケールを緻密化、微細化させ、保護性さび層の形成に非常に優位に働く機能を有する。さらに、亜鉛の腐食生成物が鋼材表面を覆い、環境遮断膜の役割を果たすという効果がある。Znの含有量が0.01質量%未満では、耐食性向上元素(Cu、Ni)の濃化が不十分となり、ひいては耐食性向上が不十分となる。一方、3.0質量%を超えると、鋼材溶解が進み耐食性が劣化する。
<Ca:0.0001〜0.01質量%未満>
Caは、耐食性をより向上させる元素であり、また溶接性の向上効果も有する。Caの耐食性向上の作用の1つは、耐食性に有害なSを固定して、鋼マトリックスを清浄化することである。また、さらに他の作用として、鋼中に微量固溶したCaが鋼表面やミクロ的な欠陥部での腐食進行過程において、鉄の腐食反応に伴い微量溶解してアルカリ性を呈する。したがって、腐食(アノード)先端部の溶液pH緩衝効果を有し、腐食先端部での腐食を抑制する効果を有する元素である。
つまり、腐食先端部や鋼板に塗装を行った場合の塗膜欠陥部の腐食において重要な役割を果たす。腐食先端部でのpH低下を緩衝する作用を有する添加元素で、塗膜下腐食進行過程において、鉄の腐食反応に伴う微量溶解でアルカリ性を呈する(アノード溶解先端部の溶液pH緩衝効果)元素であり、腐食先端部での隙間腐食を抑制する作用を有する。すなわち、この元素は溶解時にpHを上げて腐食を抑制する働きを持つ。腐食の先端部分で、鉄の溶解時にpHを上げる元素が存在すれば、腐食の進行を抑制することができる。この効果は0.0001〜0.01質量%未満で発揮される。
また、CaをTiと併用すると、本発明のCrの低減効果やTi等の安定さび層の形成促進効果と合わせ、裸耐候性等の耐食性向上の相乗効果が生じる。
<残部がFeおよび不可避的不純物>
鋼板の成分は前記の他、残部がFeおよび不可避的不純物からなるものである。なお、不可避的不純物としては、例えば、N等を0.01質量%以下含有することが考えられるが、本発明の効果を妨げない範囲においてこれらを含有することは許容される。
また、鋼板は、前記成分の他、耐食性向上等の観点から、さらに、Cr、Nb、V、Zr、Mo、B、Mg、REM(希土類金属元素)のいずれか1種または2種以上を含有することが望ましい。
<Cr:0.2〜3.0質量%、Nb:0.005〜0.10質量%、V:0.01〜0.20質量%、Zr:0.005〜0.10質量%、Mo:0.1〜1.0質量%、B:0.0003〜0.0030質量%、Mg:0.0005〜0.01質量%、REM:0.0005〜0.01質量%のいずれか1種または2種以上>
Crは表層で酸化物を形成するが、Crの酸化物粒子は小さく、空隙の少ないきわめて安定した緻密なスケールを形成し、レーザー切断性に寄与する。
また、Crは不働態被膜を形成させる作用が強い元素で、0.2〜3.0質量%含有させることにより、強力に腐食を防止することができる。つまり、Crは鋼表面に生成する腐食生成物被膜を熱力学的に安定な保護性さび層を生成しやすくし、腐食起点、欠陥部の腐食を防止する働きを持つ。また、さび層の保護性を向上させる効果を持つ。しかし、その含有率が0.2質量%未満では、その効果が中途半端になり、かえって耐食性の悪化、例えば、孔食を招く場合がある。一方、3.0質量%を超えると、これら鋼材の溶接の施工性を著しく劣化させる。また、安価な鋼材を提供するという本発明の目的にも沿わない。一方で、特に塩化物環境においてはCr添加量が少ないと、孔食状の腐食を誘発する恐れがあるため、0.5質量%以上添加するのが望ましい。
また、Crはステンレス鋼に添加されているように、一般には耐食性向上元素であるが、添加成分量と大気環境(塩化物環境や海浜環境)によっては、却って悪影響を及ぼす場合もある。このような環境ではCr量を無添加にするか、0.2質量%以上添加することが望ましい。これにより、特に、耐孔食あき性が向上する。
なお、切断性と耐食性を考慮する場合、Crは使用環境を想定して、無添加(マイルド環境)、あるいは0.2〜3.0質量%添加(塩化物環境)とすることが望ましい。
また、耐食性の観点から、Nb:0.005〜0.10質量%、V:0.01〜0.20質量%、Zr:0.005〜0.10質量%、Mo:0.1〜1.0質量%、B:0.0003〜0.0030質量%のいずれか1種または2種以上を含有するとさらによい。
Nb、V、Zr、Mo、Bは保護性さび層の生成を促進させる効果を有する。その他、Nb、V、Bは焼き入性を上昇させ、強度を増加させる効果を有する。
さらに、Mg、REMの1種以上の添加により、腐食先端部のpH低下を抑制する作用や孔食の起点となり耐候性を低下させるMnSの生成を抑制する作用を有する。さらに、腐食初期にZnとFeを安定的に腐食させる効果がある。このときのMgの含有量は、0.0005〜0.01質量%、REMの含有量は、0.0005〜0.01質量%が望ましい。
なお、耐局部腐食性、耐穴あき性の改善、塩分環境下における耐食性向上には特に、Nb、Mo、Mgの添加が有効である。
また、鋼板の濃化層における所定元素の合計量(質量%)が、鋼板の母材における前記所定元素の合計量(質量%)の1.5倍以上とする。
<濃化層での所定元素の合計量が母材での前記所定元素の合計量の1.5倍以上>
本発明では、表層のスケール層と母材の界面にNi、Ti、Zn(Cuを含有する場合は、Cu、Ni、Ti、Zn)の1種または2種以上が濃化した濃化層を有することを特徴としている。濃化層内では、Al、Crの微細な酸化物やCu、Niが存在し、濃化層が多孔化して母材(地鉄)との密着性が劣化するのを防止する作用を有している。レーザー光照射による熱衝撃により、スケール層は通常は簡単に剥離するが、地鉄との密着性の優れた濃化層は剥離することなく残存する。残存した濃化層はレーザー光のエネルギーを効率的に地鉄に吸収させる。このような濃化層の存在により、安定したレーザー切断性が得られると考えられる。
そして、濃化層におけるNi、Ti、Zn(およびCu)の1種または2種以上の濃化量は、これらの合計量(Ni+Ti+Zn(+Cu))(質量%)が母材におけるNi、Ti、Zn(Cuを含有する場合は、Cu、Ni、Ti、Zn)の合計量(質量%)の1.5倍以上とする。なお、望ましくは、2倍である。合計量が1.5倍未満では、濃化層内に形成される酸化物が緻密とはならず、レーザー切断性に劣る。なお、濃化層内の元素濃度はEPMA等を用いて点分析もしくは線分析を行えばよい。また、耐食性等の鋼板としての特性の観点から、また、10倍を超えるほどの濃化量は不要であり、製造上も困難であること等から、10倍以下であることが望ましい。
さらに、レーザー切断性向上に寄与する濃化層の厚さとして、1.0μm以上とする。
<濃化層の厚さ:1.0μm以上>
濃化層の厚さが1.0μm未満では、濃化層の分布が場所により不均一となり、レーザー切断性向上効果が認められない。なお、耐食性等の鋼板としての特性の観点から、また、100μmを超えるほどの厚さは不要であり、製造上も困難であること等から、100μm以下であることが望ましい。
また、鋼板の板厚方向のそれぞれの表面から、板厚方向における板厚の10%〜30%の領域での平均フェライト粒径が5μm以下であることが望ましい。
<平均フェライト粒径:5μm以下>
レーザー切断性、耐局部腐食性、耐穴あき性の改善、塩分環境下における耐食性向上には、前記領域での平均フェライト粒径が5μm以下であることが有効である。
ここで、鋼板の板厚方向のそれぞれの表面から、板厚方向おける板厚の10%〜30%の領域とは、鋼板の表側最表面から板厚方向に板厚の10%入った位置から30%入った位置までの領域(板厚の10%位置と30%位置との間の領域)、および、鋼板の裏側最表面から板厚方向に板厚の10%入った位置から30%入った位置までの領域(板厚の10%位置と30%位置との間の領域)のことである。
耐食性に対しては通常範囲の10μm程度の平均フェライト粒子の細粒化ではほとんど効果がないが、平均粒径が5μm以下の超細粒組織とすることにより、生成スケールが緻密化、微細化して切断性が向上すると共に、保護性さびも微細化されて耐食性が向上する。特に、亜鉛による溶解作用が効力を発揮するだけでなく、耐食性向上に寄与する保護性さび層の形成も均一化されて、耐食性が飛躍的に向上する。望ましくは、3μm以下であり、サブμm以下であればさらに良い。
本発明の成分・組織から形成される保護性さび層は、塩化物環境下で特に性能を発揮し、塩化物環境下で生成し、耐食性を劣化させるβ−FeOOHの生成を抑制する機能があるので、優れた耐食性を発揮する。
また、耐食性向上には粒径だけでなく、組織も影響する。望ましくは、フェライトが50%以上を占め、フェライト以外の第二相で耐食性に悪影響を及ぼすパーライト、ベイナイト、マルテンサイト相は面積率で25%以下にするのが望ましい。
鋼板において、このような平均フェライト粒径が5μm以下であって、組織に占めるフェライトの面積率が50%以上、フェライト以外の第二相の面積率が25%以下の微細組織を有すべき領域は、鋼板の表裏のそれぞれの表面から、板厚方向における板厚の10%〜30%の領域である。耐食性の観点からは板厚中心部まで細粒化してもかまわないが、少なくとも表層部の細粒化が必要である。このような鋼板の製造手段については、特には限定されず、種々の手段を用いることができるが、好ましい手段として、フェライトに加工歪を導入し、フェライトの再結晶を利用する方法が挙げられる。
以上に述べた濃化層を有し、耐食性と切断性に優れる鋼板を製造する方法については、前記説明した成分組成からなるスラブを、フェライト単相域〜フェライト/オーステナイト二相域で加熱し(低温加熱工程)、このスラブに熱間圧延を行って表面に強圧下を加えながら冷却した後(粗圧延工程)、複熱処理を行い(複熱工程)、その後、圧延(仕上げ圧延)を行い(仕上圧延工程)、冷却する方法が挙げられる。本方法を用いれば、フェライトに加工歪を導入し、フェライトの再結晶を利用することにもなるので、結晶粒の微細化にも寄与するし、濃化層の生成にも役立つ。
また、安定したレーザー切断性および耐食性を発揮する鋼板を得るには、熱処理条件を所定に規定する必要がある。
<熱処理条件>
鋼板に切断性の良いスケールを形成させるためには、熱処理条件として、前記各工程を経ることが必要である。低温加熱工程は、前記組成からなるスラブを900〜1000℃に低温加熱する工程、粗圧延工程は、熱間圧延(粗圧延)を施しながら、700℃以下まで冷却する工程、複熱工程は、180秒以内に前記熱間圧延を施しながら、冷却した圧延板(鋼板)の表面を、前記冷却した温度から30℃以上加熱して10秒以上保持する工程、仕上圧延工程は、その後に仕上げ圧延を行う工程である。
900〜1000℃に加熱するのは低温加熱することにより、γ粒を微細化するためである。その後、熱間圧延を施しながら、圧延板全体を700℃以下まで冷却するのは、再結晶によるγ微細化と歪を導入することによって、核生成サイト増加によるスケールの微細化効果を狙うためである。本過程で、スケール微細化が促される。その後、冷却を続けずに複熱処理を行う。ここでの複熱処理とは、具体的には、700℃以下まで冷却した後、180秒以内に、この冷却した圧延板の表面を、前記冷却した温度から30℃以上加熱し、当該加熱した温度で10秒以上(60秒以上が望ましい)保持することである。本過程で、スケールが微細化し、生成したスケール中に切断性向上に寄与する、Cu、Ni、Ti、Zn等がZn添加効果のために濃化する。そして、γ粒径が微細化することでより均一に鋼材が溶解し、地鉄側に均一な濃化層が形成される。
なお、昇温までの時間は早い方が良い。180秒を超えると、スケールが微細化せず、かえって粗大化する。また、圧延板の表面は、冷却した温度から30℃以上上昇させないと、元素の濃化効果が発揮されず、所定のスケールが生成されない。昇温速度は特に規定しないが、実質3〜30℃/secくらいでよい。そして、その後、さらに仕上げ圧延を行う工程を経ることで、鋼材およびスケールにおける粒成長が抑制される。
<その他>
鋼板に塗装を行う場合、各種用途に応じてリン酸塩処理等の化成処理や、電着塗装を施しても良い。塗料は公知の樹脂が使用可能であり、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコンアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂等を公知の硬化剤と共に使用可能である。特に耐食性の観点からすればエポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコンアクリル樹脂の使用が推奨される。その他、塗料に添加される公知の添加剤、たとえば着色用顔料、カップリング剤、レベリング剤、増感剤、酸化防止剤、紫外線安定剤、難燃剤等を添加しても良い。
また、塗料形態も特に限定されず、溶剤系塗料、粉体塗料、水系塗料、水分散型塗料、電着塗料等、用途に応じて適宜選択することができる。上記塗料を用い、所望の被服層を鋼材に形成させるには、ディッピング法、ロールコーター法、スプレー法、カーテンフローコーター法等の公知の方法を用いればよい。被服層の厚みは用途に応じて公知の適切な値を用いればよい。厚みは要求性能によって異なるが簡単な塗装の場合は10−20ミクロン、重防食塗装等は200−300ミクロン程度である。
以上説明したように、本発明は高い耐食性を有し、かつ、合金の過剰な添加による機械的特性・溶接性等の低下をきたさない鋼板を得ながら、その鋼板のレーザー切断性を向上させるものである。そして、切断性を向上させる緻密なスケールを生成させるために、複熱処理による粒子の微細化により、スケールを微細緻密化させるものである。そして、この緻密微細化された緻密スケールを生成するために、Cu、Ni、(Cr)等を添加したうえで、これらの元素が少量でも効果を発揮するように、融点の低いZnを添加することが特徴である。さらに、耐食性向上効果があるCu、Niを鋼材全体としては少量濃度に抑え、効果的に緻密で保護性の高いさび層を生成させ、また、腐食進行を抑制するために、Cu、Ni、Al、Ti、Ca、(Cr)とZnの複合添加したものである。
また、本発明は、鋼板表面のレーザー切断性を良好にするために、成分組成、濃化層の厚み、および地鉄(母材)−スケール界面を最適化したものである。さらに、腐食起点として作用する合金添加元素非濃化部を抑制し、効果的に腐食を防止し、スケールにも耐食性を付与したものである。そして、切断性と耐食性を両立するために、Cu、Ni、Ti、Zn、Caや、Mg、REM等の一種を添加したものである。
以下、本発明に係る鋼板の実施例について、その比較例と比較して具体的に説明する。
表1に示す成分組成の鋼(鋼種A〜R)を真空溶製し、板厚140mmのスラブとした。次に、このスラブを所定温度で加熱した後、所定温度で熱間圧延を開始し、熱間圧延を施しながら所定温度まで冷却して、板厚60〜90mmの熱間圧延板を得た。次に、所定温度で所定時間複熱処理を行い、その後の冷却過程で仕上げ圧延を行うことで、板厚20〜30mmの各種の鋼板(実験No.1〜25)を作製した。
なお、前記のスラブの加熱温度、熱間圧延(粗圧延)の開始温度、熱間圧延後の冷却温度、複熱処理条件等の熱処理条件は、表2に示す。また、表1において、成分を含有していないものは、「−」で示す。
これらの鋼板について、断面観察をSEM、EPMAにより行い濃化層の厚さや元素濃度の測定をすると共に、結晶サイズが微細になっていることを確認するため、XRDによりスケールの結晶サイズを測定した。また、組織観察により、鋼板の板厚方向のそれぞれの表面から板厚方向における板厚の10%〜30%の領域での平均フェライト粒径を測定した。ここで、平均フェライト粒径は、通常のSEM(操作型電子顕微鏡)を用いて測定した。また、結晶サイズの算出方法は、X線回折装置を用いてScherrer法(積分幅法)により、算出した。今回用いた装置は下記の通りである。
測定装置:理学電気株式会社製 X線回折装置 RINT−1500
ターゲット:Cu
単色化:モノクロメータを使用
ターゲット出力:40kV−200mA
モノクロメータ受光スリット:0.6mm
測定範囲:5〜80°
得られたデータから今回はFe(104)の値を用いた。
次に、これらの鋼板について、切断性および耐食性の評価を行った。
<切断性評価>
切断性の評価は、5.5kW出力の炭酸ガスレーザーを用いてレーザー切断する切断試験によりを行った。
この切断試験結果については、断面の形状およびドロス付着の有無によって切断性を評価した。切断面良好、ドロスの付着無しのものを切断性が優良(◎)、切断面良好、ドロスの付着が少し発生したものを切断性が良好(○)、切断が途中で停止、ドロス付着量大のものを切断性が不良(×)とし、優良(◎)または良好(○)のものを切断性が優れると評価した。
評価結果を表2に示す。
<耐食性評価>
こられの鋼板から、150mm長さ×70mm幅×6mm厚さの供試材を作製し、下記耐食性評価試験により耐食性を評価した。
耐食性評価試験は複合サイクルタイプの促進ラボ試験を7日間行った。前記複合サイクル試験は、1サイクルを、5%塩水噴霧8時間、35℃湿度60%(RH)の恒温恒湿試験16時間とし、7サイクル行った。試験後に、液体ホーニングにより除錆後、レーザー顕微鏡で最深の腐食部の深さを測定した。評価面を等間隔に16区画に分割して、各区画ごとに最大孔あき深さを測定し、その平均値を算出して、耐孔あき性を評価した。また、測定値は、試験前のサンプルについて同様の方法で処理した後のブランク値を引いて求めた。
耐食性評価試験結果については、実験No.24の試験片の孔あき深さを100(基準)として以下のようにランク分けを行い、耐食性を評価した。
孔あき深さが、80%以上の場合は、耐食性が低下(×)、孔あき深さが、80%未満の場合は、耐食性が優れる(△〜◎◎)と評価した。
そして、表2では、孔あき深さが60%未満を耐食性が(◎◎)、孔あき深さが60%以上70%未満を耐食性が(◎)、孔あき深さが70%以上75%未満を耐食性が(○)、孔あき深さが75%以上80%未満を耐食性が(△)、孔あき深さが80%以上を耐食性が(×)と記載した。
評価結果を表2に示す。
なお、表1、2において、本発明の構成を満たさないもの等については、数値に下線を引いて示す。
Figure 0005065700
Figure 0005065700
表2に示すように、本実施例あるいは参考例である実験No.1〜15は、成分組成、濃化層と母材との所定元素(Cu、Ni、Ti、Zn)の合計量の関係、濃化層の厚さ、熱処理条件が本発明の範囲を満たすため、あるいは参考例のため、切断性に優れると共に、耐食性にも優れていた。
一方、比較例である実験No.16〜25は、本発明の構成を満たさないため、以下の不具合を有していた。
実験No.16は、Tiの含有量が下限値未満であり、Ni、Zn、Caを含有していないため、切断性、耐食性に劣った。また、濃化層の所定元素の合計量が母材の所定元素の合計量の1.5倍未満であるため、切断性に劣った。
実験No.17は、Ni、Ti、Zn、Caを含有していないため、切断性、耐食性に劣った。また、熱処理条件での冷却温度が700℃を超え、また、複熱処理での加熱温度と冷却温度の差が30℃未満であるため、スケールが微細化せず、濃化層での所定元素の濃化が不十分であった。そのため、濃化層の所定元素の合計量が母材の所定元素の合計量の1.5倍未満となり、切断性に劣った。
実験No.18は、Ni、Tiの含有量が下限値未満であり、Zn、Caを含有していないため、切断性、耐食性に劣った。また、複熱処理での加熱温度と冷却温度の差が30℃未満であるため、スケールが微細化せず、濃化層での所定元素の濃化が不十分であった。そのため、濃化層の所定元素の合計量が母材の所定元素の合計量の1.5倍未満となり、切断性に劣った。
実験No.19は、熱処理条件での冷却温度が700℃を超え、また、複熱処理での加熱温度と冷却温度の差が30℃未満であるため、スケールが微細化せず、濃化層での所定元素の濃化が不十分であった。そのため、濃化層の所定元素の合計量が母材の所定元素の合計量の1.5倍未満となり、切断性に劣った。
実験No.20は、複熱処理での加熱温度と冷却温度の差が30℃未満であるため、スケールが微細化せず、濃化層での所定元素の濃化が不十分であった。そのため、濃化層の所定元素の合計量が母材の所定元素の合計量の1.5倍未満となり、切断性に劣った。
実験No.21は、熱処理条件での冷却温度が700℃を超え、また、複熱処理での加熱温度と冷却温度の差が30℃未満であるため、スケールが微細化せず、濃化層での所定元素の濃化が不十分であった。そのため、濃化層の所定元素の合計量が母材の所定元素の合計量の1.5倍未満となり、切断性に劣った。
実験No.22は、濃化層の厚さが1.0μm未満であるため、切断性に劣った。また、熱処理条件での複熱処理への移行温時間が180秒を超えるため、スケールが微細化せず、濃化層での所定元素の濃化が不十分であった。そのため、濃化層の所定元素の合計量が母材の所定元素の合計量の1.5倍未満となり、切断性に劣った。
実験No.23は、熱処理条件での複熱処理への移行温時間が180秒を超えるため、スケールが微細化せず、濃化層での所定元素の濃化が不十分であった。そのため、濃化層の所定元素の合計量が母材の所定元素の合計量の1.5倍未満となり、切断性に劣った。
実験No.24は、Ni、Ti、Zn、Caを含有していないため、切断性、耐食性に劣った。また、濃化層の厚さが1.0μm未満であり、濃化層の所定元素の合計量が母材の所定元素の合計量の1.5倍未満であるため、切断性に劣った。
実験No.25は、Ni、Tiの含有量が下限値未満であり、Zn、Caを含有していないため、切断性、耐食性に劣った。また、濃化層の所定元素の合計量が母材の所定元素の合計量の1.5倍未満であるため、切断性に劣った。
なお、本実施例は代表的なものであって、本発明の有効性は前記試験環境に限定されるものではない。
以上、本発明に係る切断性に優れる鋼板について最良の実施の形態および実施例を示して詳細に説明したが、本発明の趣旨は前記した内容に限定されるものではない。なお、本発明の内容は、前記した記載に基づいて広く改変・変更等することができることはいうまでもない。

Claims (4)

  1. C:0.20質量%以下、Si:0.1〜1.0質量%、Mn:2.5質量%以下、Ni:0.05〜6.0質量%、Ti:0.03〜1.0質量%、S:0.02質量%以下、P:0.2質量%以下、Al:0.5質量%以下、Zn:0.01〜3.0質量%、Ca:0.0001〜0.01質量%未満を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、母材と、その表面にスケール層を有する鋼板であって、
    前記母材と前記スケール層との界面に存在するNi、Ti、Znの1種または2種以上が濃化した濃化層を有し、
    前記濃化層におけるNi、Ti、Znの合計量(質量%)が、前記母材におけるNi、Ti、Znの合計量(質量%)の1.5倍以上であり、かつ、
    前記濃化層の厚さが1.0μm以上であることを特徴とする切断性に優れる鋼板。
  2. C:0.20質量%以下、Si:0.1〜1.0質量%、Mn:2.5質量%以下、Ni:0.05〜6.0質量%、Ti:0.03〜1.0質量%、S:0.02質量%以下、P:0.2質量%以下、Al:0.5質量%以下、Zn:0.01〜3.0質量%、Ca:0.0001〜0.01質量%未満を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、母材と、その表面にスケール層を有する鋼板であって、
    前記組成からなるスラブを900〜1000℃に加熱した後、熱間圧延を施しながら、700℃以下まで冷却し、180秒以内に圧延板の表面を、前記冷却した温度から30℃以上加熱して10秒以上保持し、その後、さらに圧延を行うことにより製造されたことを特徴とする切断性に優れる鋼板。
  3. 前記鋼板は、さらに、Cr:0.2〜3.0質量%、Nb:0.005〜0.10質量%、V:0.01〜0.20質量%、Zr:0.005〜0.10質量%、Mo:0.1〜1.0質量%、B:0.0003〜0.0030質量%、Mg:0.0005〜0.01質量%、REM:0.0005〜0.01質量%のいずれか1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の切断性に優れる鋼板。
  4. 前記鋼板の板厚方向のそれぞれの表面から、板厚方向における板厚の10%〜30%の領域での平均フェライト粒径が5μm以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載の切断性に優れる鋼板。
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