JP5063855B2 - 異方性希土類−鉄系磁石膜の製造方法および超小型モータ - Google Patents

異方性希土類−鉄系磁石膜の製造方法および超小型モータ Download PDF

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Description

本発明は、パルスレーザディポジッション(PLD)で成膜した希土類−鉄系磁石膜の製造方法、並びに当該希土類磁石膜を適用したミリサイズメートル以下の超小型モータ、アクチュエータ等に関する。更に詳しくは、希土類磁石膜と回転軸とで構成した可動子と固定子との空隙に強力な静磁界を発生し得る異方性希土類−鉄系磁石膜、並びに当該モータ、アクチュエータ等に関するものである。
電気電子機器のモバイル・ウエアラブル化などの小型・軽量化に対応して、ミリサイズメートル以下の高出力超小型モータ、アクチュエータ等が求められている。これらの要求に応えるには、先ず工業的に利用可能な膜厚50〜300μmの希土類磁石膜の高性能化が求められる。
希土類磁石の物理的な堆積による成膜方法はスパッタリングが一般的である。前記、スパッタリングによるR2Fe14B(RはNdまたは/およびPr)を主相とする希土類磁石膜の最適成膜条件に関しては、例えば、特開平08−83713号公報に基板温度530〜570℃、成膜速度0.1〜4 μm/hr、ガス圧力0.05〜4 Paであることが開示されている。しかし、前記最適条件下で希土類磁石膜を製造しても、本発明が対象とする工業的に利用可能な膜厚50〜300μmの希土類磁石膜の高性能化は困難である。その理由は、本発明が対象とするミリサイズメ−トル以下の超小型モ−タ、アクチュエ−タ等に適用可能な希土類磁石の膜厚が50〜300μmであるため、基板温度530〜570℃、成膜速度が0.1〜4μm/hrでは最大エネルギ−積(BH)maxに代表される磁気特性を確保しながら所望の膜厚を得ることが困難で、仮に所望の膜厚を得たとしても、少なくとも12.5 hrs以上の成膜時間を要するから経済性との整合性から工業的利用は困難である。
上記、希土類磁石膜の高速成膜技術としてJ.Topferらは異方性2−17SmCo磁石粉末などを有機結合剤などと共にスラリー状ペーストとして基材に塗布し、得られたグリーンシートを焼付けて、膜厚100〜800μmの希土類磁石膜が得られると報告している[J.Topfer, B. Pawlowski, “Thermal stability of rare−earth magnet thick films”, ICM 2003−Rome, Italy, (2003) 5P−pm−06]。この方法による希土類磁石膜はドクタ−ブレ−ドによって任意の膜厚が一挙に作製できる利点がある。しかし、製法上、多量の結合剤が不可欠で磁石粉末を85〜90 wt.%と減量せざるを得ない。その結果、固有保磁力HCJは0.3〜1.3 MA/mであるにも拘らず、低い密度の希土類磁石膜となるために残留磁化Jr=300〜430 mTである。したがって、本発明が目的とする希土類磁石膜と回転軸とで構成した可動子と固定子との空隙に強力な静磁界は得られない。
S.Sugimotoらは成膜時間短縮と磁石粉末の結合剤を不要とするAD(Aerosol Deposition)法によるSm2Fe173磁石膜を報告している。(S.Sugimoto,T.Maeda,R.Kobayashi,J.Akedo,M.Lebedev,K.Inomata,“Magnetic properties of Sm−Fe−N thick film magnets prepared by
aerosol deposition method”,IEEE.Trans.Magn.,Vol.39,pp.2986−2988(2003))AD法は物理的な堆積による成膜法の一種で、成膜速度が2〜10μm/minと極めて速く、厚さ50μm
以上の希土類磁石膜が僅か5 min程度の成膜時間で結合剤を使用せずに得られる。しかしながら、この方法により、SiO2基板上に成膜した3〜45 μmのSm2Fe173磁石膜は磁気的に等方性であるために固有保磁力HCJ =1.8 MA/m、残留磁化Jr= 400 mTとしている。したがって、固有保磁力HCJに問題はないが、残留磁化JrはJ.Topferらの結合剤を用いた希土類磁石膜と同水準である。したがって、この方法においても、希土類磁石膜と回転軸とで構成した可動子と固定子との空隙に強力な静磁界は得られない。
一方、パルスレーザディポジッション(PLD)法は真空チャンバー中に、目的とする希土類磁石膜の組成から成るターゲットを基板と対向するように配置し、真空チャンバーの外部からKrFやNd−YAGなどのレーザをパルス的にターゲットに照射する方法である。この成膜法はスパッタリングに比較しターゲットと膜との組成ずれが少ないと言われている。そこで、本発明者らは特開2002−270418において、パルスレーザディポジッション(PLD)で4f希土類−鉄系合金膜(例えばR2TM1410X、ここでRは10〜20 at. %で、Yを含む希土類元素のうち少なくとも1種,Bは5〜20 at. %,TMは遷移金属元素でFeまたはFeの一部をCoで置換したもの,Mは0〜2 at.%でNb、Mo、V、Ti、Al、Ga、Cuなどの群から選ばれる1種または2種以上の添加元素、及び不可避的な不純物を含む)を基板に成膜し、該膜を熱処理し、R2TM14B結晶を析出させた厚さ30〜100μmの希土類磁石膜とする製造方法、並びに当該希土類磁石膜を適用した小型モータを開示している。更に、この方法はスパッタリングに比べて希土類磁石膜の成膜時間を1/10以下とすることが可能で工業的利用価値があることも開示している。しかしながら、前記希土類磁石膜はX線回折の解析からR2TM14B相と共にα−Fe相の混在が示されている。そこで、特開2003−303708では、R2TM14B相と共に混在しているα−Fe相が希土類磁石膜の磁気特性を劣化させるとして、膜の磁気特性を改善する手段として基板面から膜厚方向にRの原子組成比R/Feを0.3〜0.4とするパルスレーザディポジッション(PLD)成膜条件を開示している。
特開2002−270418号公報 特開2003−303708号公報
しかしながら、特開2002−270418、特開2003−303708とを比較するとパルスレーザディポジッション(PLD)で成膜したのち、熱処理によってR2TM14Bを結晶化する希土類磁石膜の製造工程は同一である。従って、両者共にR2TM14Bの磁化容易軸(c軸)がランダムな方向に分布した磁気的に等方性の希土類磁石膜である。特開2003−303708によれば、最適化した成膜条件で製造した希土類磁石膜の固有保磁力HCJは1〜0.8 MA/m、飽和磁化Isは約1.4 Tであるとしている。残留磁化Jrの開示はないが、等方性であるから残留磁化Jrを飽和磁化Isの1/2と見積もると、700 mTと推定される。
一方、K. Ohmoriらは低粘度な不飽和ポリエステル樹脂を結合剤として用いた磁界中射出成形により、膜厚方向に異方性を付与した厚さ300 μm程度のSm2Fe173磁石膜を作製し、その膜の固有保磁力HCJ =0.84 MA/m、残留磁化Jr=
700 mT、最大エネルギー積(BH)max = 90 kJ/m3と報告している[S. Hayashi, S. Yoshizawa, K. Ohmori, “Bonded SmFeN anisotropic magnets made using a
radical polymer”, 27th annual conference
on magne
tics, (2003) 18pF−6]。
したがって、最適化した条件のパルスレーザディポジッション(PLD)で成膜した磁気的に等方性の希土類磁石膜の残留磁化Jrは磁界中射出成形Sm2Fe173磁石膜の残留磁化Jr=700 mTと同程度ということになる。すなわち、パルスレーザディポジッション(PLD)で成膜した希土類磁石膜は、当該成膜条件を最適化しても磁気的に等方性であるため、結合剤を多量に使用した磁界中射出成形ボンド磁石と同程度の残留磁化Jr=700 mTしか得られていない。しかしながら、パルスレーザディポジッション(PLD)で成膜した希土類磁石膜の膜厚方向に磁気異方性を付与することができれば、前述した磁界中射出成形Sm2Fe173磁石膜の残留磁化Jrを上回る高(BH)maxの希土類磁石膜が得られることが期待される。
本発明はターゲットと基板との空間に熱源を配置し、基板を成膜側から間接加熱、当該基板にパルスレーザディポジッション(PLD)で、Nd 2.0 Fe 14 B、Nd 2.2 Fe 14 B、Nd 2.4 Fe 14 B、Nd 2.6 Fe 14 B、Nd 2.8 Fe 14 B、およびNd 15 Fe 78.4 6.1 Ga 0.5 から選ばれる一つのターゲットにより4f希土類−鉄系合金を成膜し、当該膜の面内方向最大磁化をMmax//、垂直方向の最大磁化をMmax⊥としたとき、Mmax⊥/Mmax// >0.90であり、且つ前記基板の間接加熱の温度を600〜650℃とする異方性希土類−鉄系磁石膜の製造方法を開示するものである。また、パルスレーザディポジッション(PLD)で成膜した膜の面内方向固有保磁力をHCJ//、垂直方向の固有保磁力をHCJ⊥としたとき、HCJ//≦ HCJ⊥とし、該膜の垂直方向の固有保磁力HCJ⊥≧493 kA/m、好ましくは、該膜の垂直方向の固有保磁力HCJ⊥≧723 kA/m、垂直方向の残留磁化Jr≧1150 mT、最大エネルギー積(BH)maxを≧230 kJ/m3とする異方性希土類−鉄系磁石膜の製造方法である。
上記のような異方性希土類−鉄系磁石膜の製造方法の最適化の手段としては、PLDターゲットの合金組成がRxTM14B(X≧2、R=Nd、TM=Fe)、PLD基板がTa,Nb,Moなどの群から選ばれた1種または2種以上であり、間接加熱された当該基板温度を550〜650℃とする。更にまた、PLD法の成膜速度を≧50μm/hr、成膜時の雰囲気が≦10-6Torrとするものである。
なお、本発明はPLD法で成膜したM (Mは0〜2 at.%でNb、Mo、V、Ti、Al、Ga、Cuなどの群から選ばれる1種または2種以上の添加元素)を含む4f希土類−鉄系合金膜においては、R2TM141の結晶化温度以上で再加熱し、磁気特性を最適化しても差支えない。
ところで、希土類−鉄系磁石膜と回転軸とで構成した可動子は固定子との空隙磁束密度は概ね(BH)maxの比の平方根に比例することから、例えば該膜の垂直方向の固有保磁力HCJ⊥≧723 kA/m、垂直方向の残留磁化Jr≧1150 mT、最大エネルギ−積(BH)max≧230 kJ/m3の異方性希土類−鉄系磁石膜と回転軸とで構成した可動子は、(BH)max 90 kJ/m3の磁界中射出成形Sm2Fe173磁石膜可動子と比べ、固定子との空隙に略1.59倍もの強力な静磁界を発生させることが可能となる。したがって、超小型モータの高出力化に有効であることが了解される。
図1 はR2Fe14B(R=Ndまたは/およびPr)の結晶構造を示す。図のようにR2Fe14Bは c軸方向に一軸磁気異方性(磁化容易軸)を有しており、軸方向空隙型
超小型モータでは希土類磁石膜の面内垂直方向に発生する静磁界が重要である。このことからc軸方向を膜に垂直な方向に揃える必要がある。本発明はパルスレーザディポジッション(PLD)の基板を加熱し、4f希土類−鉄系合金(例えばR2TM1410X、ここでRは10〜20 at. %で、Yを含む希土類元素のうち少なくとも1種,Bは5〜20 at. %,TMは遷移金属元素でFeまたはFeの一部をCoで置換したもの,Mは0〜2 at.%でNb、Mo、V、Ti、Al、Ga、Cuなどの群から選ばれる1種または2種以上の添加元素、及び不可避的な不純物を含む)を成膜する際に、図のR2Fe14B(R=Ndまたは/およびPr)の結晶成長方向を制御することにより、磁石膜の面内垂直方向にc軸方向を揃えることで異方性を付与するものである。
本発明にかかるパルスレーザディポジッション(PLD)での成膜は図2のようにターゲット1と基板3との空間に熱源4を配置し、基板3を間接加熱することにある。すなわち、熱源4はパルス的にレーザをターゲット1に照射した際に発生するプリューム2を取り囲むように配置されている。つまり、本発明では成膜側から基板を加熱することを意味している。このため、スパッタリングなどで行なわれる基板3を直接加熱する方式、すなわち基板側から加熱する方式に比べ、数10 μmの膜厚領域まで膜に異方性を付与することができる。更に、ターゲット1と基板3との空間に熱源4を配置し、基板3を間接加熱すると成膜表面の平滑化、やNd量の欠損によるαFeの生成を抑制し、磁気特性の劣化が低減できるなどの効果がある。
本発明にかかる異方性付与のメカニズムの詳細は現段階では明らかとなっていないものの、スパッタリング法においては加熱した種々の基板においてエピタキシャル成長を利用する方法が知られている。また「多面体結晶を作る結晶面は、原子密度の最高な面である」というBravaisの経験則に従うとすれば、膜が成長するとき、原子密度が最大である安定な結晶面が基板に平行な方位配列をもちやすいと考えられ、R2Fe14B結晶においてはc面が原子密度最大の面であるため、c面が基板に平行となり、パルスレーザディポジッション(PLD)で基板に成膜した場合でも、当該膜に垂直な方向にc軸が揃うことで異方性が付与される。
なお、基板としてはTa, Nb, Moなどの群から選ばれた1種または2種以上が好適である。Ta, Nb,Moが基板材質として好ましい理由は、何れも高融点で熱膨張係数は小さく、結晶構造も体心立方格子という共通点がある。例えば、最密六方格子のTiの配向面は(102)であり、R2Fe14Bとの格子整合性がない。この場合は膜の面内垂直方向にR2Fe14B 結晶のc軸方向を揃えることが困難となる。更には磁石膜との熱膨張差に起因する熱応力が磁石膜と基板との密着性を低下させる原因となる。
以下、本発明を実施例により、更に詳しく説明する。ただし、本発明は実施例で限定されるものではない。
(実施の形態1:最適基板温度)
パルスレーザディポジッション(PLD)での成膜は図2で示した構成、すなわち、熱源4はパルス的にレーザをターゲット1に照射した際に発生するプリューム2を取り囲むように配置されている。ターゲットにNd2.4Fe14B、基板にTa、ターゲットと基板の距離を10 mmとし、熱源4は通電によるジュール熱を利用している。熱源4に通電する電流値を5 〜35 A (電流密度35〜75 MA/m2)とし、電流値を変化させたときの膜のM−Hループを図3(a) 〜(g)に示す。また、図3(h)は、基板を非加熱とする以外、ターゲットおよび成膜条件を同一とした非晶質状態の膜を、更に赤外線加熱炉を用い熱処理温度650 ℃、保持時間0 min、昇温速度400 ℃/minの熱処理を施し、結晶化させた磁気的に等方性の希土類磁石膜のM−Hループを示
す。なお、図3(a)〜(h)において、熱源4への通電電流値と間接加熱された基板温度、図の点線は面内方向のM−Hループ、実線は垂直方向のM−Hループを示している。
図4は電流値に対する垂直方向の固有保磁力HCJ、および間接加熱された基板温度の関係を示す特性図である。なお、基板温度は真空排気後、基板中心を熱電対を用いて測定した。さらに、図3(a)〜(h)に対応するX線回折図を図5に示す。比較例として示す図3(a),(b)から明らかなように、電流値5 Aおよび15 Aの場合は固有保磁力HCJが非常に小さい。また、図5のX線回折図からも電流値5 Aおよび15 Aで成膜した場合には回折ピークが観測されない。したがって、ほぼ非晶質の膜であることから図4の間接加熱された基板温度400 ℃以下の条件では結晶化しないと言える。一方、本発明にかかる図3(c)〜(g)から明らかなように、電流値18 Aから35 Aで成膜した場合には、当該M−Hループに膨らみが見られ、図4から明らかなように、間接加熱された基板温度550〜650℃での成膜で高い固有保磁力HCJが発現する。このことから、パルスレーザディポジッション(PLD)で成膜する場合、電流値18 Aから35 A、間接加熱された基板温度550〜650℃など特定条件とすると、成膜段階でR2Fe14B結晶が生成する。さらに、従来例として示す図3(h)のように基板を非加熱とし、得られた非晶質膜を熱処理して結晶化した磁石膜では膜の垂直方向のM−Hループは反磁界の影響が大きく面内方向のM−Hループに比べて最大磁化が小さくなっている。しかしながら、本発明にかかる図3 (c)から図3(g)のように、成膜段階で結晶化した磁石膜は膜の垂直方向の磁化が面内方向の磁化が大きい。さらに、図5からもc面のピークである(004) (006) (008)および(105)面などの回折ピークが、従来例である基板を非加熱とし、得られた非晶質膜を熱処理して結晶化した磁石膜に比べて大きい。これらのことから成膜段階で結晶化する本発明にかかる磁石膜は膜の垂直方向に磁気異方性が付与される。換言すれば、パルスレーザディポジッション(PLD)で成膜する場合、本発明にかかる成膜段階でR2Fe14B結晶が生成する条件下であれば、磁石膜の面内垂直方向にc軸方向を揃えて異方性を付与できる。
(実施の形態2:成膜時間の依存性)
図6は、本発明にかかる基板への直接通電における最適電流値20 Aとし、ターゲットにNd2.4Fe14B、成膜時間を5 〜120 minと変化させたとき、垂直方向の固有保磁力HCJの変化を示す。さらに、垂直方向への異方化の進み具合を示すために面内方向の最大磁化Mmax//、垂直方向の最大磁化Mmax⊥によりMmax⊥ / Mmax//を評価した。磁気的に等方性の磁石膜では膜の垂直方向は反磁界の影響が強い。このため、反磁界補正をしない状態ではMmax⊥ / Mmax// = 0.9であった。このことより、Mmax⊥ / Mmax// が0.9以上であれば膜の垂直方向へ異方化していることになり、本発明ではMmax⊥ / Mmax// > 0.9であることが必須要件となる。なお、該Mmax⊥ / Mmax// 値が大きくなる程、垂直方向へ異方化が大きいことを意味する。図から明らかなように、固有保磁力HCJは全体的に成膜時間に比例して低下する傾向がある。しかしながら、Mmax⊥ / Mmax//による垂直方向の異方化度合いという面でみると成膜時間での顕著な変化は見られない。また、本実施例では固有保磁力HCJが最も大きい値が得られた成膜時間は5 minの時であり、垂直方向の固有保磁力HCJは792 kA/mであった。また、Mmax⊥ / Mmax// の最大値は成膜時間10 minで1.33であり、その固有保磁力HCJは垂直方向で493 kA/m、面内方向で340 kA/mであった。すなわち、本発明にかかる面内方向の固有保磁力をHCJ//、垂直方向の固有保磁力をHCJ⊥としたとき、HCJ//≦ HCJ⊥である要件を満たしている。
(実施の形態3:Nd量の依存性)
本発明にかかる基板に直接通電する電流値を20 A、成膜時間を60 minとしてNd量を変化させたNd2.0Fe14B、Nd2.2Fe14B、Nd2.4Fe14B、Nd2.6Fe14B、Nd2.8Fe14Bターゲットとした膜を検討した。
図7はNd量に対する固有保磁力HCJおよびMmax⊥ / Mmax//を示す特性図である。本実施例では図から明らかなように、固有保磁力HCJの値に対するNd量の依存性は少ない。また、固有保磁力HCJの最大値はNd2.4Fe14Bターゲットであった。また、Mmax⊥ / Mmax//は、ほぼ一定であることから、固有保磁力HCJ並びに垂直方向への異方化性付与の両者から、Nd量は大きく影響しない。したがって、RxTM14BにおいてX≧2(R=Ndまたは/およびPr、TM=Feまたは/およびCo)であればパルスレーザディポジッション(PLD)で成膜する際、本発明にかかる成膜段階でR2Fe14B結晶が生成する条件下であれば、磁石膜の面内垂直方向にc軸方向を揃えて異方性を付与できる。
(実施の形態4:レーザ連続遮断による成膜)
図8は成膜間隔の変化に対する固有保磁力HCJおよびMmax⊥ / Mmax//を示す特性図である。ただし、本発明にかかる基板に直接通電する電流値を20 A、ターゲットはNd2.4Fe14B、成膜時間は30 min、レーザ遮断間隔は10 sec に固定し、レーザを照射する成膜間隔を5 〜50 secと変化させた。なお、レーザを遮断する方法はアクリル板を用い、遮断時間も基板加熱は行った。図から明らかなように、レーザの遮断を行わず30 minの成膜によって得られた膜の固有保磁力HCJは397 kA/mであり、Mmax⊥ / Mmax//は1.21であった。成膜間隔が30 〜50 secの膜では固有保磁力HCJならびにMmax⊥ / Mmax//の上昇は見られない。しかしながら、20 secから成膜間隔を短くした膜においては固有保磁力HCJの増加が見られ、本実施例で最も大きな固有保磁力HCJが得られた膜は成膜間隔10 secのものであり、該膜の固有保磁力HCJ は653 kA/m、Mmax⊥ / Mmax//は1.33であった。
図9は図8に対応する膜のX線回折パターンを示す特性図である。図から明らかなように、固有保磁力HCJやMmax⊥ / Mmax//の増加が見られる20 secから成膜間隔を短くした膜においてはc軸(006)の回折強度が強く観測され、膜の垂直方向へのより強い異方性化が確認できる。
以上のように、図6で示した成膜時間に依存して固有保磁力HCJが低下する傾向は、レーザの遮断を断続的に行う(換言すれば膜の断続的結晶化を行う)ことで抑制できる。すなわち、R2Fe14B結晶粒の成長を抑制できることを意味する。
図10はMmax⊥ / Mmax// =1.68なる垂直方向へ異方性を付与した本発明にかかる希土類磁石膜の代表的M−Hループ、図11は、前記垂直方向のM−Hループを反磁界係数N=0.9で反磁界補正を行ったM−Hループを示す特性図である。図11のように、本発明にかかる希土類磁石膜の垂直方向の代表的な磁気特性は固有保磁力HCJ 723 kA/m、残留磁化Jr 1150 mT 、(BH)max 230 kJ/m3であった。
横軸:外部磁界、縦軸:磁化、実線:垂直方向M−Hループ、点線:面内方向M−Hループ
(実施の形態5:添加元素M)
例えばR2TM1410X、Mは0〜2 at.%でNb、Mo、V、Ti、Al、Ga、Cuなどの群から選ばれる1種または2種以上の添加元素の効果をGaの場合で説明する。
本発明にかかる間接加熱した基板の温度を550〜650℃、成膜時間を60 minとしたとき、ターゲットNd2.4Fe14Bにおける固有保磁力HCJの最大値は484 k
A/mであった。添加元素M = GaとしたターゲットNd15Fe78.46.1Ga0.5 (at%)において成膜を行うと同一条件で固有保磁力HCJは1054 kA/mとなり、本発明にかかる異方性希土類磁石膜において、Gaは保磁力増加に有効な添加元素である。
なお、本発明にかかる異方性希土類磁石膜を可動子としてモータに実装する場合には、本実施例で述べたような固定子との空隙に強い静磁界を発生するための磁気特性以外に、磁気安定性や耐環境性も必要になる。添加元素Mはそれら諸特性の整合性を高めるため、必要に応じて適宜使用することができる。
図12は本発明にかかる異方性希土類磁石膜を適用した軸方向空隙型超小型モータの構造図である。ただし、図中1は図11に示したような膜に垂直方向に異方性を付与した希土類磁石膜、2はバックヨーク、3は固定子巻線、4は固定子巻線基盤、5は軸受である。また、図中の数値は各部の寸法をミリメートル単位で示している。固定子巻線3はCu線(φ30μm)を11 (turn/coil)を3層構造とし、1相あたり 6Ω,
66 (turn/coil)の構成とし、当該固定子巻線と対向する本発明にかかる異方性希土類磁石膜1は軸方向に4極着磁した状態でバックヨーク2と回転軸に固定している。このモータを3相全波駆動(短形波120°通電)したとき、起動トルク2.01μNm、トルク定数0.023 mNm/A、回転数15160 r/min-1なる特性が得られた。なお、残留磁化Jr= 700 mT、最大エネルギー積(BH)max 90 kJ/m3程の磁石膜では自起動せず、前記モータ特性は不明である。
電気電子機器のモバイル・ウエアラブル化などの小型・軽量化に対応して、ミリサイズメートル以下の高出力超小型モータ、アクチュエータ等が求められている。このような背景において、それらの要求に応えるには、先ず工業的に利用可能な膜厚50〜300μmの希土類磁石膜の残留磁気Jrを更に高めることにより、希土類磁石膜と回転軸とで構成した可動子と固定子との空隙に強力な静磁界を発生し得る異方性希土類−鉄系磁石膜が必要である。ところで、可動子磁石膜と固定子との空隙磁束密度は概ね(BH)maxの比の平方根に比例することから、本発明の実施例で示した当該膜の垂直方向の固有保磁力HCJ⊥≧723 kA/m、垂直方向の残留磁化Jr≧1150 mT、最大エネルギ−積(BH)max≧230 kJ/m3の異方性希土類−鉄系磁石膜で構成した可動子は、(BH)max 90 kJ/m3の磁界中射出成形Sm2Fe173磁石膜可動子と比べ、固定子との空隙に略1.59倍もの強力な静磁界を発生させることが可能である。したがって、超小型モータの高出力化に有効であることが了解される。
2Fe14Bの結晶構造を示す図 成膜の基本構成を示す図 電流値に対するM−Hループを示す図 各電流値に対する垂直方向の保磁力および基板温度を示す図 各電流値に対するX線回折図 成膜時間とHCJ、Mmax⊥ / Mmax//の関係を示す特性図 Nd量とHCJ、Mmax⊥ / Mmax//の関係を示す特性図 レーザ連続遮断成膜条件とHCJ、Mmax⊥ / Mmax//の関係を示す特性図 レーザ連続遮断成膜におけるX線回折パターンの関係を示す特性図 代表的磁石膜のM−Hループを示す図 代表的磁石膜のM−Hループ(反磁界補正後)を示す図 超小型モータの構造図
符号の説明
1 希土類磁石膜
2 バックヨーク
3 定子巻線
4 固定子巻線基盤
5 軸受

Claims (9)

  1. ターゲットと基板との空間に熱源を配置し、基板を成膜側から間接加熱、当該基板にパルスレーザディポジッション(PLD)で、Nd 2.0 Fe 14 B、Nd 2.2 Fe 14 B、Nd 2.4 Fe 14 B、Nd 2.6 Fe 14 B、Nd 2.8 Fe 14 B、およびNd 15 Fe 78.4 6.1 Ga 0.5 から選ばれる一つのターゲットにより4f希土類−鉄系合金を成膜し、当該膜の面内方向最大磁化をMmax//、垂直方向の最大磁化をMmax⊥としたとき、Mmax⊥/Mmax// >0.90であり、且つ前記基板の間接加熱の温度を600〜650℃とする異方性希土類−鉄系磁石膜の製造方法。
  2. 成膜した4f希土類−鉄系合金膜の面内方向の固有保磁力をHCJ//、垂直方向の固有保磁力をHCJ⊥としたとき、HCJ//≦ HCJ⊥とした請求項1記載の異方性希土類−鉄系磁石膜の製造方法。
  3. 成膜した4f希土類−鉄系合金膜の垂直方向の固有保磁力HCJ⊥≧493 kA/mである請求項1記載の異方性希土類−鉄系磁石膜の製造方法。
  4. 4f希土類−鉄系合金膜を成膜するターゲットの合金組成がRxTM14B(X≧2、R=Nd、TM=Fe)である請求項1記載の異方性希土類−鉄系磁石膜の製造方法。
  5. 基板がTa,Nb,Moなどの群から選ばれた1種または2種以上である請求項1記載の異方性希土類−鉄系磁石膜の製造方法。
  6. 成膜した4f希土類−鉄系合金膜をR2TM141 (R=Nd、TM=Fe)の結晶化温度以上で再加熱する請求項1記載の異方性希土類−鉄系磁石膜の製造方法。
  7. 成膜速度が40〜80 μm/hrである請求項1記載の異方性希土類−鉄系磁石膜の製造方法。
  8. 成膜時の雰囲気が10-6〜10-8 Torrである請求項1記載の異方性希土類−鉄系磁石膜の製造方法。
  9. 請求項1に掛かる異方性希土類−鉄系磁石膜と回転軸とで構成した可動子、および前記可動子と空隙を介して対向する固定子とを備えた超小型磁石モータ。
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