JP5059300B2 - インクジェットヘッド - Google Patents

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Description

本発明は、ノズルからインクを吐出して記録媒体に印刷を行うインクジェットヘッドに関する。
特許文献1には、複数のノズルが形成された基板に金属板(カバー部材)が接着されたインクジェット記録ヘッド(インクジェットヘッド)について記載されている。
このインクジェット記録ヘッドにおいて、金属板には各ノズルに対応した段差部(孔)が形成されている。
このように金属板に段差部が形成されていることで、基板のノズル面(インク吐出面)及びノズル近傍の撥水処理層(撥水膜)が、紙こすれ及び紙ジャムなどにより用紙と接触して損傷するのを抑制することが可能になる。
特許第3108771号公報
しかしながら、上述した特許文献1に記載のインクジェット記録ヘッドにおいては、ノズル面に付着したインクをワイパーの先端で払拭するときに、金属板の外周角部とワイパーの先端とが接触する。
ワイパーは、ノズル面と接触したときに傷などを付けないために樹脂製の弾性体などからなり、その表面が比較的柔らかい。
そのため、ワイパーが金属板などの硬い部材の外周角部と接触すると、容易に損傷する。
そこで、本発明の目的は、ワイパーがカバー部材の外周角部と接触したときに損傷するのを抑制するインクジェットヘッドを提供することである。
課題を解決するための手段及び発明の効果
本発明のインクジェットヘッドは、インクを吐出するノズルの開口が複数形成されたインク吐出面と、 インクを貯溜する共通インク室と、 前記共通インク室の出口から圧力室を経て前記ノズルの前記開口に至る個別インク流路と、前記圧力室内のインクに吐出エネルギーを付与するエネルギー付与手段と、前記インク吐出面には、複数の前記ノズルの開口の周囲を覆うように形成された撥水膜が形成され、当該インク吐出面の当該撥水膜が形成されていない領域に接着剤とが形成されており、さらに、一又は複数の孔が形成されており、前記撥水膜の全周縁部および前記接着剤を被覆するとともに、前記ノズルの前記開口とその周囲の前記撥水膜とが前記孔の底部に露出するように前記インク吐出面に設けられた前記接着剤と接着された樹脂製のカバー部材とを備えている。
これにより、カバー部材が比較的軟質なものになるので、ヘッドに付着したインクをワイパーで払拭するときに、カバー部材の外周角部とワイパーの先端とが接触してワイパーが損傷するのを抑制することができる。また、カバー部材及び撥水膜に付着したインクをワイパーで払拭したときに、カバー部材の孔内であって孔周縁近傍にインクが残留するのを抑制することができる。しかも、撥水膜はカバー部材によって取り囲まれているので、ジャムなどが生じたときに記録媒体が撥水膜と接触しにくくなる。そのため、撥水膜の損傷を抑制することができる。
また、このとき、前記カバー部材が、透明性を有していてもよい。
これにより、カバー部材の孔全周とインク吐出面とが接着しているかどうかを容易に確認することができるので、ノズルプレートとカバー部材との接合性の信頼が向上する。
しかも、ノズルプレートとカバー部材との間からのエアの吸い込みよる吸引力の低下を確実に防ぐことができる。
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の第1実施形態によるインクジェットヘッドが採用されたインクジェットプリンタの概略平面図である。インクジェットプリンタ1の内部には、図1に示すように、2本のガイド軸6,7が設けられている。これらガイド軸6,7には、キャリッジを兼用するヘッドユニット8が取り付けられている。ヘッドユニット8は、合成樹脂材料からなるヘッドホルダ9を含んでいる。ヘッドホルダ9には、印刷用紙Pへインクを吐出して印刷を行うインクジェットヘッド30が保持されている。このインクジェットヘッド30の印刷用紙Pと対向する面がインク吐出面(図3参照)25aで、インクを吐出する複数のノズルが形成されている。ヘッドホルダ9は、キャリッジモータ12により回転する無端ベルト11に取り付けられており、キャリッジモータ12の駆動により、ガイド軸6,7に沿って主走査方向に往復移動する。
インクジェットプリンタ1には、イエローインクが収容されたインクカートリッジ5aと、マゼンタインクが収容されたインクカートリッジ5bと、シアンインクが収容されたインクカートリッジ5cと、ブラックインクが収容されたインクカートリッジ5dとが備えられている。各インクカートリッジ5a〜5dは、それぞれ可撓性のチューブ14a〜14dによってチューブジョイント20と接続されている。
また、インクジェットプリンタ1には、ヘッドホルダ9が左端に移動したときに対向するインク吸収部材3が設けられている。インク吸収部材3は、フラッシングのときにノズル28(図5参照)から吐出されたインクを吸収する。また、インクジェットプリンタ1には、ヘッドホルダ9が右端に移動したときに対向するパージ装置2が設けられている。
パージ装置2は、インクジェットヘッド30の底面(カバープレート100の下面:図5参照)にキャップ2aを密着させて、キャップ2aとインクジェットヘッド30の底面とで囲まれた空間を減圧することで、インクジェットヘッド30の内部に溜まる気泡やゴミなどをインクとともに強制的にノズル28から吸引するためのものである。
パージ装置2の左方には、パージ装置2でインクを排出することで、インクジェットヘッド30の底面に付着したインクを払拭するワイパー4が設けられている。本実施形態におけるワイパー4は、例えば、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、シリコンゴムなどの弾性体からなる。ワイパー4は、ヘッドユニット8が対向する位置に配置されたときに、インクジェットヘッド30の底面と接触し、その先端が撓む。ワイパー4の先端が撓んだ状態で、キャリッジモータ12の駆動により、ヘッドユニット8が主走査方向に平行に移動することで、インクジェットヘッド30の底面に付着したインクがワイパー4によって払拭される。なお、ワイパー4は可撓性を有するので、後述するカバープレート100の長孔115〜117内にワイパー4の撓んだ先端が侵入し、長孔115〜117内に存在する撥水膜112〜114上に付着したインク(ノズル28近傍に付着したインク)を払拭する。
次に、ヘッドユニット8の主要構造について以下に説明する。図2は、図1に示すヘッドユニット8の分解斜視図であり、ヘッドホルダ9からバッファタンク48及びヒートシンク60を取り外した状態を示している。図3は、図2に示すインクジェットヘッドユニットの縦断面図である。図2中のI−I線に沿って切断したときの断面であり、ここには、図2で省略したバッファタンク48の上方の制御基板84やカバー9aが示されている。
図2及び図3に示すように、ヘッドホルダ9は、上方に向かって開口した略箱状に形成されており、その底部にはインクジェットヘッド30を構成するヘッド本体25が固定されている。また、ヘッドホルダ9において、ヘッド本体25の上方には、ヘッド本体25へ供給するインクを一時的に貯溜するバッファタンク48が設置されている。ヘッド本体25は、そのインク吐出面25aがヘッドホルダ9の下方外側に露出するように設置されている。
バッファタンク48の端部には、図2に示すように、インクをこのバッファタンク48に供給するためのチューブジョイント20が接続されている。バッファタンク48の反対側端部の下面には、4つのインク流出口(不図示)が設けられており、ヘッド本体25に設けられた4つインク供給口30a(後述する)とシール部材90を介して接続されている。バッファタンク48の上方には、図3に示すように、コンデンサ83などの電子部品及びコネクタ85が実装された制御基板84が設けられている。制御基板84の上方は、ヘッドホルダ9の上方を覆うカバー9aにより覆われている。
ヘッドホルダ9には、図3に示すように、L字形状のヒートシンク60がバッファタンク48の左側側壁48aに隣接する位置に固定されている。バッファタンク48の右方には、バッファタンク48内に蓄積された空気を外部へ排気する排気装置49が設けられている。
次に、インクジェットヘッド30の主要構成について以下に説明する。図4は、インクジェットヘッド30を示す外観斜視図である。図3及び図4に示すように、インクジェットヘッド30は、ヘッド本体25と、ヘッド本体25の上面に接合されたフレキシブルプリント回路(FPC:Flexible Printed Circuit)70とを含んでいる。ヘッド本体25は、それぞれの色ごとに複数のインク流路が形成された流路ユニット27と、流路ユニット27の上面に熱硬化性接着剤によって接着された圧電アクチュエータ(エネルギー吐出手段)21とを含んでいる。流路ユニット27及び圧電アクチュエータ21はともに、長方形平面形状を有する複数の薄板を積層して構成されている。流路ユニット27の上面には、圧電アクチュエータ21を避けて平面形状が楕円形状の4つのインク供給口30a(図5参照)が形成されている。これら4つのインク供給口30aが形成された領域には、各インク供給口30aと対向する位置に複数の微小孔が形成されたフィルタ55が配置されている。こうして、バッファタンク48のインク流出口(不図示)から流出したインクがフィルタ55で濾過され、インク供給口30aから流路ユニット27内に流入する。
FPC70は、圧電アクチュエータ21の上面から主走査方向の一方に引き出され、図3に示すように、ヘッドホルダ9の底部に形成された孔17を通されてヒートシンク60とヘッドホルダ9の側壁との間に形成された隙間を介して上方に向かう。そして、FPC70は、制御基板84とバッファタンク48との隙間を介して制御基板84上に設けられたコネクタ85と接続されている。FPC70には、ドライバIC80が実装されている。FPC70には、FPC50の延在方向に沿って延設された複数の配線(図示せず)が形成されており、ドライバIC80と圧電アクチュエータ21と、及び、ドライバIC80と制御基板84とを電気的に接続している。
また、ドライバIC80は、FPC70の配設経路の途中で弾性部材18によりヒートシンク60に接触するように押圧されている。これにより、発熱したドライバIC80の過剰な熱を放熱することが可能になる。また、FPC70の圧電アクチュエータ21と対向する領域には、図3に示すように、アルミ板81が配置されている。アルミ板81は、圧電アクチュエータ21の上面とほぼ同じサイズの長方形平面形状を有しており、各個別電極37(後述する)の駆動による発熱が個別電極37毎でばらつかないように均熱する。
図5は、ヘッド本体25及びFPC70の分解斜視図である。図6は、図4に示すVI−VI線における断面図である。図7は、流路ユニット27を下方(インク吐出面25a側)から見たときの平面図である。上述したように、ヘッド本体25は、圧電アクチュエータ21と流路ユニット27とを含んでいる。このうち、図5に示すように、流路ユニット27は、上から、キャビティプレート108、サプライプレート107、アパーチャプレート106、2枚のマニホールドプレート104,105、ダンパプレート103、スペーサ−プレート102、ノズルプレート101、カバープレート(カバー部材)100の計9枚のシート材が積層された積層構造を有している。各プレート100〜108は、副走査方向に長手方向を有する長方形平面形状となっている。本実施の形態において、流路ユニット27を構成する9枚のプレート100〜108のうち、ノズルプレート101及びカバープレート100を除く7枚のプレート102〜108がステンレス鋼からなり、ノズルプレート101及びカバープレート100がポリイミド樹脂からなる。なお、プレート102〜108は、ステンレス鋼以外の金属材料から構成されていてもよい。また、ノズルプレート101及びカバープレート100は、インクに対する耐性が優れたポリイミド樹脂で構成されているが、これ以外の合成樹脂から構成されていてもよい。
圧電アクチュエータ21は、後で詳述するように、2枚の絶縁シート33,34と2枚の圧電シート35,36とが積層され、活性部となる部分を有する1つの活性層と活性部を有しない3つの非活性層とを有している。なお、活性層を有する層数は、要求される圧電アクチュエータ21の変位量に応じて適宜決められるものであり、本実施形態のように1層に限るものではない。すなわち、より大きな変位が必要であれば、活性層を有する層を増やせばよい。
ノズルプレート101には、図5〜図7に示すように、微小径のノズル28が副走査方向に沿って千鳥配列状で5列に配列されている。これら複数のノズル28は、互いに平行なノズル列110a〜110eを構成している。5列のノズル列110a〜110eのうち、ノズル列110bとノズル列110c、及び、ノズル列110dとノズル列110eが互いに近接配置されており、ノズル列組111a,111bを構成している。ノズルプレート101のインク吐出面(下面)25aには、ノズル列110a、ノズル列組111a及びノズル列組111b毎に対応する3つの撥水膜112〜114が形成されている。
撥水膜112〜114は、ノズル列110a、ノズル列組111a及びノズル列組111bに属する複数のノズル28の周囲を覆っている。
図5に示すように、キャビティプレート108には、各ノズル28に対応する複数の圧力室10がキャビティプレート108の長手方向に沿って千鳥状配列で5列に穿設されている。各圧力室10の長手方向は、主走査方向に長く、キャビティプレート108の長手方向に対して直交している。各圧力室10の一端部は、サプライプレート107、アパーチャプレート106、2枚のマニホールドプレート104,105、ダンパプレート103及びスペーサープレート102に千鳥状配列で穿設されている微小径の貫通孔29を介して、ノズルプレート101におけるノズル28に連通している。一方、各圧力室10の他端部は、サプライプレート107の連絡孔51とアパーチャプレート106のアパーチャ52とを介してマニホールドプレート105のインク室半部105a(共通インク室99)に連通している。また、キャビティプレート108の一端部側には、インク供給口30aとなる4つの孔108aがキャビティプレート108の短手方向(主走査方向)に沿って離隔して形成されている。
図5に示すように、2枚のマニホールドプレート104,105のうち、アパーチャプレート106に近い側のマニホールドプレート105には、5つのインク室半部105aが貫通状に形成されている。これら5つのインク室半部105aは、マニホールドプレート105の長手方向に沿って延在されつつ、マニホールドプレート105の短手方向に互いに離隔している。
一方、ダンパプレート103側のマニホールドプレート104にも、5つのインク室半部105aと同様の5つのインク室半部104aが貫通して形成されている。図6に示すように、この構成で2枚のマニホールドプレート104,105、アパーチャプレート106及びダンパプレート103の計4枚を積層すると、対向する2つのインク室半部104a,105aが相互に接合される。このときに形成される上下の開口が、上からのアパーチャプレート106と下からのダンパプレート103とにより覆われる。これにより、貫通孔29の列の間及び外側に計5つの共通インク室99が形成される。なお、共通インク室99の一端部がインク供給口30aとそれぞれ対向している。
サプライプレート107に貫通して形成された複数の連絡孔51は、各圧力室10に対応してサプライプレート107の長手方向に沿って千鳥状の5列に配列されている。また、サプライプレート107は、長手方向の一端部側に、図5に示すように、4つの孔107aを有している。これら孔107aは、それぞれキャビティプレート108の4つの孔108aと対向するように形成されている。
アパーチャプレート106には、複数の貫通孔29の他に、アパーチャプレート106の短手方向に沿って延在した略長方形平面形状のアパーチャ52が、アパーチャプレート106の長手方向に沿って千鳥状の5列に配列されている。アパーチャ52は、一端部において連絡孔51と連通し、他端部において共通インク室99と連通している。アパーチャ52は、インク流動方向と直交する方向の断面積が若干小さくなっており、インク吐出時に圧力室10から共通インク室99側に逆流しようとするインクの流れを制限するものである。また、アパーチャプレート106には、4つの孔107aとそれぞれ対向する位置に孔106aが形成されている。各孔106aは、一方の開口において孔107aとそれぞれ連通し、他方の開口において対応する共通インク室99とそれぞれ連通している。
なお、4つの孔106aのうち、図5中最も奥に位置する1つの孔106aは、図5中奥の2つの共通インク室99と連通しており、他の3つの孔106aは、図5中手前の3つの共通インク室99とそれぞれ連通している。つまり、5つの共通インク室99のうち、図5中奥に位置する2つの共通インク室99には、1つのインク供給口30aからのインクがそれぞれに供給され、他の3つの共通インク室99には、対応する1つのインク供給口30aからのインクがそれぞれに供給される。本実施の形態において、図5中奥の2つの共通インク室99には、ブラックのインクが供給される。さらに、図5中手前から奥に向かって配置する3つの共通インク室99には、イエロー、マゼンタ及びシアンの順にインクが供給されている。
ダンパプレート103には、複数の貫通孔29の他に、図5及び図6に示すように5列のダンパ溝103aが凹設されている。これらダンパ溝103aは、スペーサープレート102に向けてのみ開放するように形成され、その位置及び形状は共通インク室99と同形状となっている。したがって、マニホールドプレート104,105及びダンパプレート103を接合したときは、ダンパプレート103の共通インク室99と対向する部分には、ダンパ部53が位置する。ここで、ダンパ部53は、適宜弾性変形可能に形成された凹部の底面として構成されているので、共通インク室99側及びダンパ溝103a側に自由に振動することができる。このような構成により、インク吐出時に圧力室10で発生した圧力変動が共通インク室99に伝播しても、これに対応してダンパ部53が弾性変形することによって吸収減衰させることができる。
カバープレート100は、上述したようにポリイミド樹脂からなり、且つ、ノズルプレート101の厚みより薄く形成されているため、透明性を有している。また、カバープレート100には、図5〜図7に示すように、副走査方向に沿って延在した略長方形平面形状の長孔115〜117が形成されている。いずれの長孔115〜117も、その角部が丸くなっている。図7に示すように、長孔115〜117は、カバープレート100のノズル列110a、ノズル列組111a及びノズル列組111bのそれぞれに対向する領域に形成されている。つまり、ノズルプレート101のインク吐出面25aに対してカバープレート100が接着剤100aで接着されたときに、複数のノズル28がこれら長孔115〜117の底部にて露出する。また、各長孔115〜117は、撥水膜112〜114の平面形状より一回り小さい相似形状となっており、カバープレート100の長孔115〜117を取り囲む領域が、平面視において、対応する撥水膜112〜114の全周縁部を覆っている。そして、インク吐出面25aの撥水膜112〜114が形成されていない領域とカバープレート100とが接着剤100aによって接着されている。接着剤100aは、撥水膜112〜114をそれぞれ取り囲んでいる。なお、図6に示すように、撥水膜112〜114上には接着剤100aが存在していないが、接着剤100aの硬化時における厚さ方向の収縮によってカバープレート100とノズルプレート101との距離が硬化前よりも小さくなるため、カバープレート100と撥水膜112〜114とが密着し、ほとんど隙間が生じない。つまり、撥水膜112〜114に付着したインクが撥水膜112〜114とカバープレート100との間に侵入することがほとんどない。
このような複数のプレート100〜108が互いに接着され積層された流路ユニット27の構成により、流路ユニット27の内部には、インク供給口30aから順に共通インク室99、アパーチャ52、連絡孔51、圧力室10及び貫通孔29を通ってノズル28に至る複数の個別インク流路が構成されている。バッファタンク48からインク供給口30aを介して流路ユニット27内に流入したインクは、一旦共通インク室99に貯溜される。そして、アパーチャ52を経由して、各圧力室10に供給される。各圧力室10で、圧電アクチュエータ21により圧力が付与されたインクが、各貫通孔29を経由して、対応するノズル28から吐出される。
続いて、圧電アクチュエータ21について以下に説明する。図8は、図5に示す圧電アクチュエータ21の要部分解斜視図である。図8に示すように、圧電アクチュエータ21は、2枚の絶縁シート33,34と2枚の圧電シート35,36とが積層されて構成されている。圧電シート36の上面には、複数の個別電極37が流路ユニット27における各圧力室10に対向配置するように形成されている。これら個別電極37は、圧力室10の配列に対応して、圧電シート36の長手方向に沿って千鳥状の5列に配列されている。
各個別電極37は、全体として圧電シート36の短手方向に細長く形成されている。また、各個別電極37は、いずれか一方の端部から圧電シート36の長手方向に延出された引き出し部37aを有している。なお、いずれの引き出し部37aも、各圧力室10を区画する隔壁と対向する位置まで引き出されている。
圧電シート35の上面には、複数の圧力室10に跨った共通電極38が設けられている。共通電極38には、圧電シート35の一部が露出した複数の非形成領域39が形成されており、各非形成領域39内に圧電シート35の厚み方向に貫通した孔40が形成されている。非形成領域39は、対応する個別電極37の引き出し部37aと対向する位置に形成されている。
最上層の絶縁シート33の上面(すなわち、圧電アクチュエータ21の上面)には、複数の個別電極37のそれぞれに対応する表面電極22と、共通電極38に対応する表面電極23とが設けられている。表面電極22は、圧力室10同士を区画する隔壁と対向する位置に配置されており、各個別電極37に対応して圧電アクチュエータ21の長手方向に沿って千鳥状の5列に配列されている。表面電極23は、絶縁シート33の一端部上において、圧電アクチュエータ21の短手方向に沿って延在している。
絶縁シート33,34には、表面電極22と引き出し部37aとに対向する領域であって各孔40に対向する位置に、絶縁シート33,34の厚み方向に貫通した複数の連続孔41が形成されている。この構成で、孔40と連続孔41とそれぞれ位置合わせした状態で、2枚の絶縁シート33,34と1枚の圧電シート35とを積層することで、圧電アクチュエータ21には、上方の3枚のシート33〜35を連続して貫通する複数のスルーホールが形成される。これらスルーホールには、圧電アクチュエータ21を製造するときに、表面電極22と個別電極37とを電気的に接続するために、導電性部材が充填されている。また、絶縁シート33,34には、表面電極23と共通電極38とが対向する領域に、絶縁シート33,34の厚み方向に貫通した3つの連続孔42が絶縁シート33,34の短手方向に沿って離隔して形成されている。これら連続孔42にも、圧電アクチュエータ21を製造するときに、表面電極23と共通電極38とが電気的に接続されるように、導電性部材が充填されている。
このような構成により、各個別電極37は、表面電極22及びFPC70を介してドライバIC80に接続されており、共通電極38がグランド電位に保たれる。また、任意の個別電極37に対しては、ドライバIC80からの駆動電圧(駆動信号)を選択的に印加することが可能になる。こうして、所望の個別電極37に対応する活性部に、積層方向の歪みを発生させ、対応する圧力室10内のインクに圧力を付与する。そして、当該圧力室10に対応するノズル8からインクを吐出させることで、用紙への所定の印字が行われる。
次に、上述したインクジェットヘッド30の製造方法について、以下に説明する。図9は、インクジェットヘッド30の製造工程図である。図10は、カバープレート100が固定されたノズルプレート101の製造工程図である。
インクジェットヘッド30を製造するには、流路ユニット27及び圧電アクチュエータ21などの部品を別々に作製し、それから各部品を組み付ける。まず、流路ユニット27の作製工程から説明する。ステップ1(S1)において、図10(a)に示すように、ノズルプレート101となる基板151の上面152に保護膜153を被覆する。保護膜153には、剥離可能なシート状のマスキング材(日立化成工業(株)製、ヒタレックス)を用い、貼着することで基板151の上面152を被覆している。
次に、ステップ2(S2)において、図10(b)に示すように、基板151にプライマ処理を行い、プライマ層154を表裏両面に形成する。このプライマ処理は、撥水膜112〜114の基板151に対する密着強度を上げるために行われるもので、本実施形態では、プライマ処理液に浸漬することで処理される。プライマ処理液としては、例えば、信越化学工業(株)製のシランカップリング剤KBE−903を純水で約2wt%に希釈したものが使用される。基板151上のプライマ処理液は、約100℃で乾燥される。基板151では、上面152がすでに保護膜153で被覆されているため、直接プライマ層154が形成されるのは下面(インク吐出面)25aのみであり、上面152においては、保護膜153上にプライマ層154が形成される。なお、プライマ処理に先立って、基板151の下面25aを酸素プラズマなどで表面処理し、プライマ層154の密着性を向上させていてもよい。
次に、ステップ3(S3)において、図10(c)に示すように、基板151の上面152から保護膜153を剥離する。その結果、基板151においては、プライマ層154が形成された下面25aが残り、上面152は基板151の新しい面が露出した状態となる。
次に、ステップ4(S4)において、図10(d)に示すように、基板151の下面25aに形成されたプライマ層154上に撥水膜112〜114を形成する。なお、図10においては、ノズル列110aに属する1つのノズル28に関する断面部分を描いているため、3つの撥水膜112〜114のうち、撥水膜112だけが描かれている。本実施形態においては、フッ素系の素材からなる撥水膜材料をプライマ層154に対してスプレーで塗布し、その後、所定温度(例えば、約250℃)T1で所定時間加熱することで、所望の撥水性を有する撥水膜112〜114を形成する。なお、撥水膜112〜114の形成が、浸漬法などによって行われる場合は、保護膜153の剥離を浸漬処理後に行う。また、撥水膜112〜114としては、3フッ化塩化エチレン樹脂(PCTFE樹脂)、フッ化ビニリデン樹脂、フッ化ビニル樹脂などのフッ素系の樹脂、さらには、フッ素原子を含んだ表面改質剤やコーティング剤、例えば、KP801M(商品名:信越化学工場(株)製)、サイトップ(商品名:旭硝子(株)製)、AF1600(商品名:イー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー製)、DEFENNSA77702(光ラジカル重合型樹脂:大日本インキ化学工業(株)製)、FS−116(商品名:ダイキン工業(株)製)、フロラード(商品名:住友スリーエム(株)製)等を使用することができる。
次に、ステップ5(S5)において、図10(e)に示すように、ノズル28の形成位置に対応して形成された複数の貫通孔29を有するスペーサープレート102を、基板151の上面152に接着剤155により固定する。このとき、使用する接着剤155としては、例えば、(株)スリーボンド製20X−343−12が使用され、その分解開始温度は約300℃である。
次に、ステップ6(S6)において、図10(f)に示すように、貫通孔29側から基板151の上面152にレーザ光線を照射して、撥水膜112〜114を有する基板151にノズル28を穿設する。加工に用いるレーザ光線には、エキシマレーザ光線などが使用される。なお、撥水膜112〜114は、エキシマレーザで加工すると、レーザの照射方向に向かって延在した突起状のバリ158が発生することがある。
次に、ステップ7(S7)において、図10(g)に示すように、ノズル28が形成された基板151を所定温度T2に加熱する。この加熱により、撥水膜112〜114に形成されたバリ158も溶融され、撥水膜112〜114が平坦化する。このときの所定温度T2は、約250℃である。本実施の形態では、基板151とスペーサープレート102と接着する接着剤155の分解開始温度より低くすることができるように、予め接着剤155及び撥水膜112〜114が選択されている。なお、撥水膜112〜114の所定温度T2は、先の所定温度T1と同じ場合と異なる場合とがある。
次に、ステップ8(S8)において、図10(h)に示すように、接着剤100aを撥水膜112〜114の膜厚とほぼ同じ厚みとなるように、インク吐出面25a上に形成する。その後、ノズル列110a及びノズル列組111a,111bの形成位置に対応して形成された長孔115〜117を有するカバープレート100を、接着剤100aを介して基板151のプライマ層154上に固定する。このとき、カバープレート100の長孔115〜117を取り囲む領域が撥水膜112〜114の全周縁部をそれぞれ覆うように配置する。カバープレート100と撥水膜112〜114との間には、接着剤100aが存在していないが、上述したように接着剤100aが硬化すると、撥水膜112〜114とカバープレート100とが密着し、ほとんど隙間が生じなくなる。さらに、カバープレート100は、ポリイミド樹脂からなり厚みが薄いため透明性を有している。そのため、カバープレート100の長孔115〜117を取り囲む領域がインク吐出面25aと確実に接着しているかをカバープレート100越しに目視で容易に確認することができる。したがって、ノズルプレート101とカバープレート100との接合性の信頼が向上する。また、カバープレート100とインク吐出面25aと接着領域が長孔115〜117を取り囲んでいるので、パージ装置2によりノズル28から吸引パージが行われるときに、ノズルプレート101とカバープレート100との間からエアを吸い込まない。
そのため、パージ装置2の吸引パージの効率が低下しない。こうして、カバープレート100及びスペーサープレート102が接着されたノズルプレート101が製造される。
次に、ステップ9(S9)において、予め圧力室10、貫通孔29等の複数の孔及びダンパ溝38等が形成された6枚のプレート103〜108を接着剤を介して互いに位置合わせし、6枚のプレート103〜108を加熱して互いに固定した積層体を、スペーサープレート102の上面に接着剤を介して載置する。そして、この状態で加熱してスペーサープレート102と積層体との間の接着剤を硬化させる。
このようにして、カバープレート100を有する流路ユニット27の作製が完了する。
続いて、圧電アクチュエータ21の作製工程について説明する。まず、ステップ10(S10)において、圧電セラミックスのグリーンシートを複数用意する。グリーンシートは、予め焼成による収縮量を見込んで形成される。そのうちの一つのグリーンシート上に、導電性ペーストを個別電極37のパターンにスクリーン印刷するとともに、もう一つのグリーンシート上に導電性ペーストを共通電極38のパターンにスクリーン印刷する。
そして、治具を用いてグリーンシート同士を位置合わせしつつ、個別電極37のパターンで導電性ペーストが印刷されたグリーンシート上に共通電極38のパターンで導電性ペーストが印刷されたグリーンシートを重ね合わせる。さらにその上に、導電性ペーストが印刷されていないグリーンシートを2枚重ね合わせる。
そして、ステップ11(S11)において、ステップ10で得られた積層体を公知のセラミックスと同様に脱脂し、さらに所定の温度で焼成する。これにより、4枚のグリーンシートが絶縁シート33,34及び圧電シート35,36となり、各導電性ペーストが個別電極37又は共通電極38となる。その後、最上層にある絶縁シート33上に、導電性ペーストを表面電極22,23のパターンにスクリーン印刷する。そして、この導電性ペーストを焼成して、絶縁シート33上に表面電極22,23を形成する。次に、表面電極22と個別電極37、及び、表面電極23と共通電極38とを電気的に接続するために、孔40を圧電シート35に、連続孔41,42を絶縁シート33,34に形成し内部に導電性部材を充填する。このようにして、図8に描かれたような圧電アクチュエータ21を作製することができる。
なお、ステップ1〜9の流路ユニット作製工程と、ステップ10〜11の圧電アクチュエータ作製工程は、独立に行われるため、いずれを先に行ってもよいし、並行して行ってもよい。
続いて、流路ユニット27と圧電アクチュエータ21とで構成されたヘッド本体70の作製工程について説明する。まず、ステップ12(S12)において、ステップ1〜9で得られた流路ユニット27の圧力室に相当する凹部が多数形成された面に、熱硬化性温度が80℃程度であるエポキシ系の熱硬化性接着剤を、バーコーターを用いて塗布する。熱硬化性接着剤としては、例えば二液混合タイプのものが用いられる。
次に、ステップ13(S13)において、流路ユニット27に塗布された熱硬化性接着剤層上に、圧電アクチュエータ21を載置する。このとき、圧電アクチュエータ21は、活性部と圧力室10とがそれぞれ対向するように流路ユニット27に対して位置決めされる。この位置決めは、予め作製工程(ステップ1〜11)において流路ユニット27及び圧電アクチュエータ21に形成された位置決めマーク(図示せず)に基づいて行われる。
次に、ステップ14(S14)において、このようにして得られた積層体を図示しない加熱・加圧装置で熱硬化性接着剤の硬化温度以上に加熱しながら加圧する。そして、ステップ15(S15)において、加熱・加圧装置から取り出された積層体を自然冷却する。こうして、流路ユニット27と圧電アクチュエータ21とで構成されたヘッド本体25が製造される。
しかる後、FPC70の複数の配線と表面電極22,23との接合を行う接合工程を経ることで、上述したインクジェットヘッド30が完成する。
以上のように、本実施の形態のインクジェットヘッド30によると、ノズルプレート101のインク吐出面25aには長孔115〜117を有する樹脂製のカバープレート100が接着されており、カバープレート100は比較的軟質なものであるため、インクジェットヘッドの底面(カバープレート100の下面)や撥水膜112〜114に付着したインクをワイパー4で払拭するときに、カバープレート100の外周角部とワイパー4の先端とが接触してワイパー4が損傷するのを抑制することができる。
また、撥水膜112〜114の全周とカバープレート100の長孔115〜117を取り囲む領域とが密着して重なっているので、撥水膜112〜114上に付着したインクをワイパー4で払拭したときに、長孔115〜117の内側周縁部分にインクが残留しにくくなる。また、撥水膜112〜114はカバープレート100によって取り囲まれているので、紙ジャムなどによる用紙が撥水膜112〜114と接触して損傷するのを防ぐことができる。なお、撥水膜とカバープレートとの間に、本実施形態のような重なりがない場合では、ワイパーで払拭しても、長孔内のインク吐出面が露出した部分にインクが残留することがある。特に、長孔の内側周縁部分がこの露出部分であると、長孔内からインクを掻き出せず残留することがある。しかし、インクが残留する部分とノズル28の開口との離隔距離にもよるが、残留インクがインクの吐出特性に影響しない程度にノズル開口と露出部分とが近接していなければよい。
さらに、撥水膜112〜114が、カバープレート100によって全周に亘って被覆されているので、撥水膜112〜114上に付着したインクをワイパー4で払拭したときに、撥水膜112〜114上にほとんどインクが残らない。また、長孔115〜117は、ノズル列110a及びノズル列組111a,111b毎に形成されているため、各ノズル28に対応する複数の孔(長孔に相当するもの)が形成されたカバープレートよりもカバープレート100の製造が容易になる。
続いて、本発明の第2実施形態によるインクジェットヘッド230について、以下に説明する。図11は、本発明の第2実施形態によるインクジェットヘッド230の部分分解斜視図である。図12は、図11に示すXII−XII線に沿った断面図である。図11及び図12に示すように、本実施形態におけるインクジェットヘッド230は、圧電アクチュエータ21と流路ユニット227とで構成されたヘッド本体225とFPC70とを備えている。なお、圧電アクチュエータ21とFPC70は、第1実施形態と同様なものであるため、同符号で示し説明を省略する。また、流路ユニット227において、第1実施形態と同様なものについても、同符号で示し説明を省略する。
インクジェットヘッド230は、第1実施形態におけるインクジェットヘッド30のカバープレート100がシート状接着剤の硬化した接着剤硬化プレート(カバー部材)211に変更され、その接着剤硬化プレート211の下面に樹脂フィルム212が接着されただけで、それ以外はインクジェットヘッド30と同様である。
接着剤硬化プレート211の硬化前のシート状接着剤は、例えば、主成分となるポリプロプレン樹脂又はポリエチレン樹脂中に数種類の接着成分が添加されたものである。このようなシート状接着剤は融点以上に加熱されていなければ、図11に示すようなシート状形状に維持される。接着剤硬化プレート211は、上述した長孔115〜117と同じ構成の長孔215〜217を有しており、長孔115〜117と同様に配置されている。つまり、長孔215〜217は、対応するノズル列110a及びノズル列組111a,111bと対向している。この長孔215〜217は、硬化前のシート状接着剤において予め形成された長孔とほぼ同じ形状となっている。つまり、シート状接着剤が所定温度(例えば、100℃〜120℃)まで加熱され樹脂フィルム212及びノズルプレート101と接着され硬化しても、硬化前に形成された長孔と接着剤硬化プレート211の長孔215〜217とがほぼ同じ形状となっている。
樹脂フィルム212は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene Terephthalate:PET)樹脂からなり、且つ、接着剤硬化プレート211よりも撥水性が高くなっている。ここでいう撥水性とは、樹脂フィルム212の表面及び接着剤硬化プレート211の表面の粗さによる液体保持性である。接着剤硬化プレート211は、シート状接着剤が所定温度(約100℃〜120℃)に加熱され軟化又は溶融して硬化したものであるため、その表面が粗くなりインクと接触する単位当たりの面積が大きくなってインクを保持する。一方、樹脂フィルム212は、所定温度に加熱されてもその温度が融点以下となるため、何ら形状の変化がない。そのため、樹脂フィルム212は、樹脂フィルム212が製造された時点での比較的小さい表面粗さしか有していないので、インクと接触する単位当たりの面積が接着剤硬化プレート211と比較して小さい。これにより、インクジェットヘッド230の底面にインクが付着しにくくなる。また、ワイパー4でインクを払拭したときに、樹脂フィルム212上のインクは、接着剤硬化プレート211上のインクよりもワイパー4で容易に拭き取られる。すなわち、インクの払拭性が向上する。したがって、インクジェットヘッド230の底面(表面)では、撥水処理されたノズル28の開口周囲のみならず、樹脂フィルム212の表面にもインクがほとんど残留しなくなる。
続いて、インクジェットヘッド230の製造方法について以下に説明する。本実施形態におけるインクジェットヘッド230の製造方法は、第1実施形態のインクジェットヘッド30の製造方法とほぼ同じ製造工程を有している。つまり、第1実施形態におけるステップ8だけが異なるので、本実施形態におけるステップ8について以下に説明する。
ステップ8において、予め長孔215〜217となる長孔(すなわち、ノズル列110a及びノズル列組111a,111bの形成位置に対応して形成された長孔)が形成されたシート状接着剤をインク吐出面25a上に配置する。このとき、シート状接着剤で撥水膜112〜114の全周縁部を被覆するようにシート状接着剤を配置する。なお、シート状接着剤には、通常、樹脂からなるセパレータが貼着されており、本実施形態においては、このセパレータを樹脂フィルム212として採用している。これにより、セパレータ以外の別部材を樹脂フィルム212とする必要がなくなる。
そして、樹脂フィルム212を有するシート状接着剤が配置された基板151を、シート状接着剤の融点以上の温度、例えば、100℃〜120℃に一定時間加熱保持した後、冷却する。すると、シート状接着剤だけが溶融し樹脂フィルム212と基板151とが硬化したシート状接着剤(接着剤硬化プレート211)によって接着される。このとき、接着剤硬化プレート211は、撥水膜112〜114の全周縁部を被覆しつつ硬化するので、パージ装置2によりノズル28から吸引パージが行われるときに、ノズルプレート101と接着剤硬化プレート211との間からエアを吸い込まない。そのため、パージ装置2の吸引パージの効率が低下しない。このようなステップ8が行われる前に、第1実施形態におけるステップ1〜ステップ7が行われ、このステップ8の後に、第1実施形態におけるステップ9〜ステップ15が行われることで、接着剤硬化プレート211及びスペーサープレート102が接着されたノズルプレート101を有する流路ユニット27と圧電アクチュエータ21とで構成されたヘッド本体225が製造される。
しかる後、FPC70の複数の配線と表面電極22,23との接合を行う接合工程を経ることで、上述したインクジェットヘッド230が完成する。
以上のように、本実施の形態のインクジェットヘッド230によると、接着剤硬化プレート211も比較的軟質なものであるため、第1実施形態と同様に、インクジェットヘッドの底面(樹脂フィルム212の下面)や撥水膜112〜114に付着したインクをワイパー4で払拭するときに、ワイパー4の先端が損傷するのを抑制することができる。
また、シート状接着剤を硬化させるだけで、第1実施形態のカバープレート100に該当する接着剤硬化プレート211がノズルプレート101のインク吐出面25aに形成されるので、その形成が容易なものとなる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述した各実施形態のカバープレート100及び接着剤硬化プレート211においては、孔115〜117,215〜217がノズル列110a及びノズル列組111a,111bに対応して形成されているが、これらノズル列110a及びノズル列組111a,111bのすべてを取り囲むような孔が形成されていてもよい。また、カバープレート及び接着剤硬化プレートは、複数のノズルのそれぞれに対向した位置に形成された孔を有していてもよい。また、カバープレート100が透明性を有していなくてもよい。また、第2実施形態における接着剤硬化プレート211には、樹脂フィルム212が固定されているが、樹脂フィルム212が接着剤硬化プレート211に固定されていなくてもよい。また、樹脂フィルム212は、接着剤硬化プレート211よりも撥水性が低くてもよい。また、撥水膜112〜114の全周が、カバープレート100及び接着剤硬化プレート211とまったく重なっていなくてもよいし、カバープレート100及び接着剤硬化プレート211と部分的に重なっていてもよい。
また、ブレードでインク吐出面25aを払拭するとき、ブレードはインク吐出面25aの幅方向(短手方向)に相対移動する。このとき、各長孔は長手方向に延在しているので、ブレードの可撓性の高さにもよるが、長手方向両端部では、インクの拭き残しが生じやすい。そのため、ノズル28の開口と長孔の縁部との距離は、両端部において、短手方向の距離に比べ長手方向の距離が長いことが好適である。なお、この両端部においては、撥水膜の周縁部が、カバープレート100及び接着剤硬化プレート211と重なっていてもいなくてもよい。
また、上述した各実施形態におけるインクジェットヘッド30,230は、シリアルタイプのものであるが、プリンタ本体に固定されラインタイプのものであってもよい。また、上述した各実施形態におけるインクジェットヘッド30,230は圧電方式の圧電アクチュエータによって駆動され、インクがノズルから吐出されるが、FPCから送られた駆動信号によって各圧力室内のインクを加熱し、圧力室内のインクに吐出エネルギーを付与するサーマル方式のインクジェットヘッドであってもよい。
本発明の第1実施形態によるインクジェットヘッドが採用されたインクジェットプリンタの概略平面図である。 図1に示すヘッドユニットの分解斜視図である。 図2に示すインクジェットヘッドユニットの縦断面図である。 本発明の第1実施形態によるインクジェットヘッドを示す外観斜視図である。 図4に示すヘッド本体及びFPCの分解斜視図である。 図4に示すVI−VI線における断面図である。 流路ユニットを下方から見たときの平面図である。 図5に示す圧電アクチュエータの要部分解斜視図である。 インクジェットヘッドの製造工程図である。 カバープレートが固定されたノズルプレートの製造工程図である。 本発明の第2実施形態によるインクジェットヘッドの部分分解斜視図である。 図11に示すXII−XII線に沿った断面図である。
1 インクジェットプリンタ
10 圧力室
21 圧電アクチュエータ(エネルギー付与手段)
25a インク吐出面
28 ノズル
99 共通インク室
100 カバープレート(カバー部材)
112〜114 撥水膜
115〜117 孔
211 接着剤硬化プレート(カバー部材)
212 樹脂フィルム

Claims (2)

  1. インクを吐出するノズルの開口が複数形成されたインク吐出面と、
    インクを貯溜する共通インク室と、
    前記共通インク室の出口から圧力室を経て前記ノズルの前記開口に至る個別インク流路と、
    前記圧力室内のインクに吐出エネルギーを付与するエネルギー付与手段とを備え、
    前記インク吐出面には、複数の前記ノズルの開口の周囲を覆うように形成された撥水膜が形成され、当該インク吐出面の当該撥水膜が形成されていない領域に接着剤が形成されており、
    さらに、一又は複数の孔が形成されており、前記撥水膜の全周縁部および前記接着剤を被覆するとともに、前記ノズルの前記開口とその周囲の前記撥水膜とが前記孔の底部に露出するように前記インク吐出面に設けられた前記接着剤と接着された樹脂製のカバー部材を備えた
    ことを特徴とするインクジェットヘッド。
  2. 前記カバー部材が、透明性を有していることを特徴とする請求項に記載のインクジェットヘッド。
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