JP5056635B2 - 自動マニュアルトランスミッションの異常時自動変速制御装置 - Google Patents

自動マニュアルトランスミッションの異常時自動変速制御装置 Download PDF

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Description

本発明は、自動クラッチを介してエンジン回転を入力され、エンジン駆動されるポンプからの作動油を媒体とする自動クラッチの断接制御および伝動ギヤ列切り替え用のシフト動作により所定変速段を実現可能で、該実現された所定変速段で入力回転を変速して出力する自動マニュアルトランスミッションに関し、
特に、自動クラッチが締結状態にされたままとなる異常時の自動変速制御に関するものである。
上記のような自動マニュアルトランスミッションとして本願出願人は先に、特許文献1に記載のようなものを提案済みである。
これに代表される自動マニュアルトランスミッションは、その自動クラッチが締結状態にされたままとなる故障が発生すると、自動マニュアルトランスミッションを中立状態に戻し得ないままエンジンストール(エンスト)を生ずることがある。
この場合、次のエンジン始動時に変速段投入状態のまま当該エンジン始動が行われることとなり、以下のような問題を生ずる。
自動クラッチが締結状態にされたままとなる上記の故障が発生しなければ、エンジン始動時に変速段投入状態のまま当該エンジン始動が行われても、エンジンの始動とともにエンジン駆動ポンプから吐出される作動油を媒体として自動クラッチが解放されると共に始動時変速段投入状態を解除する方向のシフト動作が行われることから、
エンジン始動と同時に車両が、運転者の意図しない走行を開始するという事態を生ずることはない。
しかし、自動クラッチが締結状態にされたままとなる故障状態だと、エンジン駆動ポンプからの作動油を媒体とする自動クラッチの上記解放が行われ得ず、自動クラッチが締結状態のままにされる。
このため、エンジン駆動ポンプからの作動油を媒体として始動時変速段投入状態を解除する方向の上記シフト動作が行われるといっても、
このシフト動作が終了して自動マニュアルトランスミッションが中立状態になるまでの間、エンジンの始動時に、長い時間ではないにしても、一時的に車両が、運転者の意図しない動きを開始するという事態を生ずる。
ここで、運転者が意図しない車両の動きとは、運転者が走行を意図していないで、自動マニュアルトランスミッションを中立(N)レンジにしているのに、車両が走行を開始する状態や、
運転者が前進走行を意図して、自動マニュアルトランスミッションを自動変速(D)レンジにしているのに、車両が逆方向の後退走行を開始する状態や、
運転者が後退走行を意図して、自動マニュアルトランスミッションを後退(R)レンジにしているのに、車両が逆方向の前進走行を開始する状態を意味する。
このような事態を回避する技術としては従来、例えば特許文献2に記載のごときものが提案されている。
この技術は、エンジンの始動に先立って変速機を動力伝達不能な中立状態にしたり、クラッチを解放するというものであるが、
自動クラッチが締結状態にされたままとなる故障時は前者の対策、つまり、変速機を動力伝達不能な中立状態にする対策を採用することになる。
特開2007−040408号公報 特開昭62−122825号公報
しかし自動マニュアルトランスミッションは上記した通り、エンジン駆動されるポンプからの作動油を媒体とする自動クラッチの断接制御および伝動ギヤ列切り替え用のシフト動作により所定変速段を実現する構成のために、
エンジンの始動前はポンプからの作動油もなくて変速機を動力伝達不能な中立状態にすることができず、上記の対策を採用不能である。
上記の対策を採用可能にするには、エンジンの始動前に作動油の供給を可能にする電動オイルポンプが別に必要となり、コスト的にもスペース的にも実際的でない。
なお、自動クラッチの締結保持故障で変速段投入状態のままエンジン始動を行うこととなる場合に、エンジンを始動できないようにしてしまう対策によれば、エンジン始動と同時に車両が、運転者の意図しないような走行を開始するという問題は少なくとも解消可能である。
しかしこの対策では、自動クラッチの締結保持故障で変速段投入状態のままエンストを生じたとき、その後はエンジンの始動さえ行うことができず、車両を全く走行させ得なくなって利便性に欠ける。
そこで本発明は上述の実情に鑑み、自動クラッチの締結保持故障で変速段投入状態のままエンジン始動を行うことになった場合でも、エンジン始動は取りあえずこれを実行させ得るようになし、その代わりに、当該エンジン始動によっても車両が、運転者の意図しない動きを開始することのないような対策を施し、
これにより、上記利便性の欠如を回避しつつ、エンジン始動時に車両が運転者の意に反した走行を開始するという問題を解消し得るようにした、自動マニュアルトランスミッションの異常時自動変速制御装置を提案することを目的とする。
この目的のため、本発明による自動マニュアルトランスミッションの異常時自動変速制御装置は、請求項1に記載したごとくに構成する。
まず本発明の前提となる自動マニュアルトランスミッションを説明するに、これは、
自動クラッチを介してエンジン回転を入力され、エンジン駆動されるポンプからの作動油を媒体とする上記自動クラッチの断接制御および伝動ギヤ列切り替え用のシフト動作により所定変速段を実現可能で、該実現された所定変速段で入力回転を変速して出力するものである。
本発明の異常時自動変速制御装置は、かかる自動マニュアルトランスミッションに対し、以下のような始動時変速段投入状態検知手段、自動クラッチ締結保持故障検知手段、および中立レンジ時異常対策手段を設けた構成に特徴づけられる。
始動時変速段投入状態検知手段は、上記エンジンの始動時に自動マニュアルトランスミッションが変速段投入状態であるのを検知するものである。
また自動クラッチ締結保持故障検知手段は、上記自動クラッチが締結状態のままにされた故障を検知するものである。
更に中立レンジ時異常対策手段は、これら始動時変速段投入状態検知手段および自動クラッチ締結保持故障検知手段による検知結果に基づき、エンジン始動時に自動マニュアルトランスミッションが変速段投入状態であって、且つ、自動クラッチが締結状態のままにされた故障である場合、
自動マニュアルトランスミッションを、出力軸が回転を拘束されない動力伝達不能状態にするのを指令する中立レンジが選択されている間、
自動クラッチ断接制御およびシフト動作用の作動油供給を禁止して車両が動き出すことのないようにするものである。
かかる本発明による自動マニュアルトランスミッションの異常時自動変速制御装置によれば、
エンジン始動時に自動マニュアルトランスミッションが変速段投入状態であって、且つ、自動クラッチが締結状態のままにされた故障である異常時は、中立レンジが選択されていれば、自動クラッチ断接制御およびシフト動作用の作動油供給を禁止するから、
当該異常が発生している状態のもとでのエンジン始動時に、中立レンジ選択状態であるにもかかわらず車両が動き出すという、運転者の意図しない車両の動きが発生するのを回避することができる。
しかも、当該異常時もエンジン始動を禁止しないことからエンジンは通常通りに始動されることになり、エンジン駆動されるポンプからの作動油を用いて運転者の意に反しない走行はこれを可能にすることができ、全く走行不能になる利便性の悪化に関する前記の弊害を生ずることはない。
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例になる異常時自動変速制御装置を具えたツインクラッチ式自動マニュアルトランスミッションを、その変速制御システムとともに示す骨子図で、
本実施例におけるツインクラッチ式自動マニュアルトランスミッションは、変速機ケース1内に以下の変速ギヤトレーンを収納して構成する。
変速機ケース1の前端(図1の左端)内部に、エンジンEの出力軸(クランクシャフト)2から入力されたエンジン回転を奇数変速段(第1速、第3速、第5速、後退)用の第1クラッチCA、および偶数変速段(第2速、第4速、第6速)用の第2クラッチCBへ緩衝下に伝達するためのトーショナルダンパ3を収納する。
これら奇数変速段用の第1クラッチCAおよび偶数変速段用の第2クラッチCBはそれぞれ自動湿式回転クラッチで構成する。
変速機ケース1の前端内部には更に、ツインクラッチ式自動マニュアルトランスミッションの変速制御に用いる作動油を吐出するオイルポンプ4を収納し、
このオイルポンプ4も、トーショナルダンパ3を介してエンジンクランクシャフト2に結合する。
かくして、エンジンEの運転中はこれによりオイルポンプ4が常時駆動されて作動油を、後で詳述するごとく、第1クラッチCAおよび第2クラッチCBの締結・解放制御用および変速制御用に吐出するものとする。
また変速機ケース1内には、その前端から後端に亘って延在する奇数変速段(第1速、第3速、第5速、後退)用の第1入力軸5と、前端から中程に亘って延在する偶数変速段(第2速、第4速、第6速)用の第2入力軸6とを設ける。
第2入力軸6は中空として、その中空孔内に第1入力軸5を挿管し、これら第1入力軸5および第2入力軸6間にフロント側ニードルベアリング7およびリヤ側ニードルベアリング8を介在させて、第1入力軸5および第2入力軸6を同心状態で相対回転可能とする。
第1入力軸5および第2入力軸6の前端をそれぞれ、第1クラッチCAのドリブン側および第2クラッチCBのドリブン側に結合し、
第1クラッチCAのドライブ側および第2クラッチCBのドライブ側はそれぞれ、トーショナルダンパ3を介してエンジンクランクシャフト2に結合する。
これにより、第1クラッチCAはその締結時に、トーショナルダンパ3を経由したエンジン回転を第1入力軸5へ入力し、第2クラッチCBはその締結時に、トーショナルダンパ3を経由したエンジン回転を第2入力軸6へ入力することができる。
第2入力軸6は、変速機ケース1の前壁1aに対しボールベアリング9により回転自在に支持する。
第1入力軸5は、第2入力軸6の後端から突出させ、突出した第1入力軸5の後端部5aを、変速機ケース1の中間壁1bに貫通させると共に、中間壁1bに対しボールベアリング10により回転自在に支持する。
第1入力軸5の後端部5aに同軸に配して変速機出力軸11を設け、この変速機出力軸11を、テーパーローラベアリング12およびアキシャルベアリング13により変速機ケース1の後端壁1cに回転自在に支持すると共に、ニードルベアリング14を介して第1入力軸5の後端部5aに対し回転自在に支持する。
変速機出力軸11は、図示しなかったが、プロペラシャフトやディファレンシャルギヤ装置を介して左右駆動車輪に結合し、これら車輪にツインクラッチ式自動マニュアルトランスミッションからの変速回転が伝達されて車両の走行に供されるようにする。
第1入力軸5、第2入力軸6、および変速機出力軸11に対し平行に配置してカウンターシャフト15を設け、
このカウンターシャフト15は、ローラベアリング16,17,18を介し、変速機ケース1の前端壁1a、中間壁1b、および後端壁1cに回転自在に支持する。
カウンターシャフト15の後端には、カウンターギヤ19を一体に設け、変速機出力軸11には出力歯車20を設ける。
これらカウンターギヤ19と出力歯車20とを互いに噛合させて、カウンターシャフト15から変速機出力軸11へ減速下に回転が伝達されるよう、これらカウンターシャフト15および変速機出力軸11間を駆動結合する。
第1入力軸5の後端部5aとカウンターシャフト15との間には、奇数変速段グループ(第1速、第3速、後退)の歯車組、つまり、フロント側から順に、第1速歯車組G1、後退歯車組GR、および第3速歯車組G3を配置する。
第1速歯車組G1は、第1入力軸5の後端部5aに設けた第1速入力歯車21と、カウンターシャフト15上に設けた第1速出力歯車22と、を互いに噛み合わせて構成する。
後退歯車組GRは、第1入力軸5の後端部5aに設けた後退入力歯車23と、カウンターシャフト15上に設けた後退出力歯車24と、両歯車23,24に噛み合うリバースアイドラギヤ25と、により構成する。
なお、リバースアイドラギヤ25は、変速機ケース1の中間壁1bから突設したリバースアイドラシャフト25aに対し回転可能に支持して設ける。
第3速歯車組G3は、第1入力軸5の後端部5aに設けた第3速入力歯車26と、カウンターシャフト15上に設けた第3速出力歯車27と、を互いに噛み合わせて構成する。
第1速歯車組G1と後退歯車組GRとの間においてカウンターシャフト15上には、1−R同期噛合機構28を設ける。
そして、1−R同期噛合機構28のカップリングスリーブ28aを、図示の中立位置から左方向にシフト動作させ、クラッチギヤ28bに噛み合わせることで、第1速出力歯車22をカウンターシャフト15に駆動結合して、第1速を実現可能とする。
また、1−R同期噛合機構28のカップリングスリーブ28aを、図示の中立位置から右方向にシフト動作させ、クラッチギヤ28cに噛み合わせることで、後退出力歯車24をカウンターシャフト15に駆動結合して、後退速を実現可能とする。
第3速歯車組G3と出力歯車20との間において第1入力軸5の後端部5a上には、3−5同期噛合機構29を設ける。
そして、3−5同期噛合機構29のカップリングスリーブ29aを、図示の中立位置から左方向にシフト動作させ、クラッチギヤ29bに噛み合わせることで、第3速入力歯車26を第1入力軸5に駆動結合して、第3速を実現可能とする。
また、3−5同期噛合機構29のカップリングスリーブ29aを、図示の中立位置から右方向にシフト動作させ、クラッチギヤ29cに噛み合わせることで、第1入力軸5と出力歯車20とを直結して、第5速を実現可能とする。
第2入力軸6とカウンターシャフト15との間には、偶数変速段グループ(第2速、第4速、第6速)の歯車組、つまり、フロント側から順に、第6速歯車組G6、第2速歯車組G2、および第4速歯車組G4を配置する。
第6速歯車組G6は、第2入力軸6に設けた第6速入力歯車30と、カウンターシャフト15上に設けた第6速出力歯車31と、を互いに噛み合わせて構成する。
第2速歯車組G2は、第2入力軸6に設けた第2速入力歯車32と、カウンターシャフト15上に設けた第2速出力歯車33と、を互いに噛み合わせて構成する。
第4速歯車組G4は、第2入力軸6に設けた第4速入力歯車34と、カウンターシャフト15上に設けた第4速出力歯車35と、を互いに噛み合わせて構成する。
第6速歯車組G6の側部においてカウンターシャフト15上には、6−N同期噛合機構37を設ける。そして、6−N同期噛合機構37のカップリングスリーブ37aを、図示の中立位置から左方向にシフト動作させ、クラッチギヤ37bに噛み合わせることで、第6速出力歯車31をカウンターシャフト15に駆動結合して、第6速を実現可能とする。
第2速歯車組G2と第4速歯車組G4との間においてカウンターシャフト15上には、2−4同期噛合機構38を設ける。
そして、2−4同期噛合機構38のカップリングスリーブ38aを、図示の中立位置から左方向にシフト動作させ、クラッチギヤ38bに噛み合わせることで、第2速出力歯車33をカウンターシャフト15に駆動結合して、第2速を実現可能とする。
また、2−4同期噛合機構38のカップリングスリーブ38aを、図示の中立位置から右方向にシフト動作させ、クラッチギヤ38cに噛み合わせることで、第4速出力歯車35をカウンターシャフト15に駆動結合して、第4速を実現可能とする。
次に、上記したツインクラッチ式自動マニュアルトランスミッションの変速制御システム、つまりクラッチCA,CBの締結・解放制御および同期噛合機構28,29,37,38のシフト動作を司る制御システムを説明する。
同期噛合機構28,29,37,38のシフト動作を司る制御システムは、
カップリングスリーブ29aの外周条溝に係合してそのシフトを行うための3−5シフトフォーク41と、
カップリングスリーブ28aの外周条溝に係合してそのシフトを行うための1−Rシフトフォーク42と、
カップリングスリーブ37aの外周条溝に係合してそのシフトを行うための6−Nシフトフォーク43と、
カップリングスリーブ38aの外周条溝に係合してそのシフトを行うための2−4シフトフォーク44とを具え、
更に、シフトフォーク41〜44を上記のシフト動作用にストロークさせるためのアクチュエータユニット45を有する。
第1クラッチCAおよび第2クラッチCBの締結・解放制御を司る制御システムとしては、クラッチ油圧モジュール46を設け、これからのクラッチ制御圧により第1クラッチCAおよび第2クラッチCBを締結・解放制御する。
クラッチ油圧モジュール46およびアクチュエータユニット45(詳しくは後述のアクチュエータ油圧モジュール59)はそれぞれ、共通な自動MTコントローラ47により後で詳述するごとくに制御するものとする。
3−5シフトフォーク41は第1シフトロッド48に固定し、第1シフトロッド48の長手方向ストロークにより前記のシフト動作を行うものとする。
従って第1シフトロッド48は、変速機ケース1の前端壁1aと中間壁1bに対し軸方向に移動可能に支持し、この第1シフトロッド48に3−5シフトブラケット49を固定し、この3−5シフトブラケット49の端部を、3−5シフトアクチュエータ50のスプール連結軸部に遊装支持する。
つまり、3−5シフトフォーク41は、3−5シフトアクチュエータ50のスプール動作にしたがって、図示の中立位置から左方向(第3速実現時)または右方向(第5速実現時)にシフト動作される。
1−Rシフトフォーク42は、第2シフトロッド51に対し軸方向にストローク可能に設ける。
この第2シフトロッド51は、変速機ケース1の前端壁1aと中間壁1bに対し軸方向へ固定状態で設ける。
そして、1−Rシフトフォーク42のブラケット円筒部42aに一体成形されたブラケット腕部42bの端部を、1−Rシフトアクチュエータ52のスプール連結軸部に遊装支持する。
つまり、1−Rシフトフォーク42は、1−Rシフトアクチュエータ52のスプール動作にしたがって、図示の中立位置から左方向(第1速実現時)または右方向(後退速実現時)にシフト動作される。
6−Nシフトフォーク43は、変速機ケース1に対し軸方向固定の第2シフトロッド51に対し軸方向にストローク可能に設ける。
そして、6−Nシフトフォーク43のブラケット円筒部43aに一体成形されたブラケット腕部43bの端部を、6−Nシフトアクチュエータ53のスプール連結軸部に遊装支持する。
つまり、6−Nシフトフォーク43は、6−Nシフトアクチュエータ53のスプール動作にしたがって、図示の中立位置から左方向(第6速実現時)にシフト動作される。
2−4シフトフォーク44は、変速機ケース1に対し軸方向固定の第2シフトロッド51上に軸方向ストローク可能に設ける。
そして、2−4シフトフォーク44のブラケット円筒部44aに一体成形されたブラケット腕部44bの端部を、2−4シフトアクチュエータ54のスプール連結軸部に遊装支持する。
つまり、2−4シフトフォーク44は、2−4シフトアクチュエータ54のスプール動作にしたがって、図示の中立位置から左方向(第2速実現時)または右方向(第4速実現時)にシフト動作される。
アクチュエータユニット45は、変速機ケース1の下部位置や上部位置や側部位置等に固定する。
そしてこのアクチュエータユニット45は、3−5シフトアクチュエータ50と、1−Rシフトアクチュエータ52と、6−Nシフトアクチュエータ53と、2−4シフトアクチュエータ54とを一体に有し、
更に、アクチュエータ50用の3−5シフト位置センサ55と、アクチュエータ52用の1−Rシフト位置センサ56と、アクチュエータ53用の6−Nシフト位置センサ57と、アクチュエータ54用の2−4シフト位置センサ58と、以下に詳述するアクチュエータ油圧モジュール59とを一体に有したユニットとする。
アクチュエータ油圧モジュール59は、クラッチ油圧モジュール46にて調圧されたライン圧PLを元圧として、偶数変速段圧Peと奇数変速段圧Poを作り出し、
さらに、実現された変速段に応じ対応するシフトアクチュエータ50,52,53,54への変速圧油路にアクチュエータ作動圧を供給するものとする。
クラッチ油圧モジュール46は、前記したエンジン駆動されるオイルポンプ4からの吐出作動油を所定のライン圧PLに調圧すると共に、
上記したアクチュエータ油圧モジュール59からの偶数変速段圧Peに基づいて偶数変速段用の第2クラッチCBへのクラッチ制御圧を作り出し、
また奇数変速段圧Poに基づいて奇数変速段用の第1クラッチCAへのクラッチ制御圧を作り出す。
自動MTコントローラ47は、アクチュエータ油圧モジュール59の各ソレノイドに対し変速段実現の制御指令を出力すると共に、クラッチ油圧モジュール46の各ソレノイドに対しクラッチ締結制御指令(ライン圧制御指令も含む)を出力するものである。
そのため自動MTコントローラ47には、
車速を検出する車速センサからの信号と、
エンジンEのアクセルペダル踏み込み量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサからの信号と、
運転者が、希望する走行形態に応じ手動で指令する自動マニュアルトランスミッションの選択レンジ(駐車用のPレンジ、後退走行用のRレンジ、停車用のNレンジ、前進自動変速用のDレンジなど)を検出するレンジ位置センサからの信号と、
その他のセンサ・スイッチから信号とを入力する。
自動MTコントローラ47は、これらセンサからの情報をもとに所定の演算を行って、アクチュエータ油圧モジュール59のソレノイドに変速段実現制御指令を、また、クラッチ油圧モジュール46のソレノイドにクラッチ締結制御指令(ライン圧制御指令も含む)を出力する。
図2,3は、アクチュエータ油圧モジュール59およびクラッチ油圧モジュール46の詳細を示す油圧回路で、
図2は、アクチュエータ油圧モジュール59内のシーケンスソレノイド75がOff時の状態を示し、
図3は、アクチュエータ油圧モジュール59内のシーケンスソレノイド75がOn時の状態を示す。
アクチュエータ油圧モジュール59は、4個のシフトアクチュエータ50,52,53,54に対して各2系統、合計で8系統の油路61,62,63,64,65,66,67,68を有し、
これら8系統の油路61,62,63,64,65,66,67,68を、4個のアクチュエータソレノイド71,72,73,74と、1個のシーケンスソレノイド75とで開閉するアクチュエータ油圧回路である。
上記8系統の油路61,62,63,64,65,66,67,68のうち、油路61は3速圧油路、油路62は5速圧油路、油路63は1速圧油路、油路64はリバース圧油路と、油路65は2速圧油路、油路66は4速圧油路、油路67は6速圧油路、油路68はニュートラル圧油路である。
4個のアクチュエータソレノイド71〜74は、偶数変速段グループの変速段圧Peを出力するか否かを決定するOn,Off型の第1アクチュエータソレノイド71および第2アクチュエータソレノイド72と、
奇数変速段グループの変速段圧Poを出力するか否かを決定するOn,Off型の第3アクチュエータソレノイド73と、第4アクチュエータソレノイド74とにより構成する。
1個のシーケンスソレノイド75はスプール76を有し、ソレノイドオフ時のスプール位置で図2に示すように、第1速段と後退段を含む低速ギヤ段(第1速段、第2速段、第4速段、後退段)を実現可能となり、
ソレノイドオン時のスプール位置で図3に示すように、高速ギヤ段(第3速段、第5速段、第6速段)を実現可能となる。
アクチュエータ油圧モジュール59には、オイルポンプ4(図1参照)からの作動油を媒体としクラッチ油圧モジュール46で作り出されるライン圧PLを元圧とし、
第1アクチュエータソレノイド71および第2アクチュエータソレノイド72への偶数変速段圧Peを作り出す偶数変速段圧ソレノイド77と、
第3アクチュエータソレノイド73および第4アクチュエータソレノイド74への奇数変速段圧Poを作り出す奇数変速段圧ソレノイド78とを有する。
なお、これら変速段圧ソレノイド77,78はそれぞれ、対応する変速段圧Pe,Poを連続的に制御可能なVBS(バリアブル・ブリード・ソレノイド)とする。
クラッチ油圧モジュール46には、オイルポンプ4からの吐出作動油を所定のライン圧PLに調圧する図外のライン圧ソレノイドを有するほか、
アクチュエータ油圧モジュール59からの偶数変速段圧Peに基づいて第2クラッチCBへの偶数変速段クラッチ制御圧を作り出すクラッチ制御圧ソレノイド81と、
奇数変速段圧Poに基づいて第1クラッチCAへの奇数変速段クラッチ制御圧を作り出すクラッチ制御圧ソレノイド82と、
第2クラッチCBの偶数変速段クラッチ圧を検出する偶数変速段クラッチ圧センサ83、および、第1クラッチCAの奇数変速段クラッチ圧を検出する奇数変速段クラッチ圧センサ84とを有する。
これらクラッチ制御圧ソレノイド81,82はそれぞれ、対応する偶数変速段クラッチ制御圧および奇数変速段クラッチ制御圧を連続的に制御可能なVFS(バリアブル・フォース・ソレノイド)とする。
上記した本実施例の自動マニュアルトランスミッションは、図1の自動MTコントローラ47によって以下のように自動変速制御する。
[変速作用]
運転者が中立位置(Nレンジ)や駐車位置(Pレンジ)を選択している間は、クラッチCA,CBの双方をクラッチ制御圧の非発生により解放し、かつ、シフトアクチュエータ50,52,53,54を全て、アクチュエータソレノイド71,72,73,74のOffにより図1に示す中立位置にしておく。
シフトアクチュエータ50,52,53,54の中立位置で、同期噛合機構28,29,37,38のカップリングスリーブ28a,29a,37a,38aが全て図1に示す中立位置にされ、
ツインクラッチ式自動マニュアルトランスミッションが動力伝達不能な中立状態になる。
よって中立位置(Nレンジ)や駐車位置(Pレンジ)でツインクラッチ式自動マニュアルトランスミッションは、上記クラッチCA,CBの解放と相まってエンジン回転を変速機出力軸11へ伝達することがない。
なお、駐車位置(Pレンジ)ではツインクラッチ式自動マニュアルトランスミッションが、変速機出力軸11の回転をパークロック装置の作動により機械的に拘束された状態となるが、
中立位置(Nレンジ)ではツインクラッチ式自動マニュアルトランスミッションが、変速機出力軸11の回転を、走行(D,R)レンジ選択時と同様に、機械的に拘束されない状態となる。
動力伝達(走行)を希望するDレンジや、Rレンジや、マニュアルモード(=ドライバ操作による手動変速モード)の選択時には、基本的に、以下の手順にしたがって変速を行う制御が遂行される。
(第1速)
第1速の実現に際しては、シーケンスソレノイド75のOffでスプール76を図2のストローク位置となし、アクチュエータソレノイド74のOnにより奇数変速段圧Poを1−Rシフトアクチュエータ52に供給する。
これにより1−Rシフトアクチュエータ52は図1の左方向へストロークして、同期噛合機構28のカップリングスリーブ28aを図1の中立位置から左方向にシフト動作させ、歯車22をカウンターシャフト15に駆動結合させる。
その後、奇数変速段圧Poを元圧としてクラッチ制御圧ソレノイド82を介し調圧可能なクラッチ制御圧の上昇制御により第1クラッチCAを締結する。
これにより、第1クラッチCAがエンジン回転を第1入力軸5へ伝達するようになり、動力が第1入力軸5→第1速歯車組G1→カウンターシャフト15→出力歯車組19,20を経て変速機出力軸11より出力され、自動マニュアルトランスミッションを第1速に投入された状態にすることができる。
(第2速)
第1速から第2速へのアップシフトに際しては、第1速実現時の状態のままで、アクチュエータソレノイド72のOnにより偶数変速段圧Peを2−4シフトアクチュエータ54に供給する。
これにより2−4シフトアクチュエータ54は図1の左方向へストロークして、同期噛合機構38のカップリングスリーブ38aを図1の中立位置から左方向にシフト動作させ、歯車33をカウンターシャフト15に駆動結合させる。
その後、クラッチ制御圧ソレノイド82により第1クラッチCAへのクラッチ制御圧を低下させてこの第1クラッチCAを解放させると共に、偶数変速段圧Peを元圧としてクラッチ制御圧ソレノイド81を介し調圧可能なクラッチ制御圧の上昇制御により第2クラッチCBを締結させて行う、第1クラッチCAから第2クラッチCBへのクラッチの掛け替えにより第1速から第2速へのアップシフトを行う。
これにより、第2クラッチCBがエンジン回転を第2入力軸6へ伝達するようになり、動力が第2入力軸6→第2速歯車組G2→カウンターシャフト15→出力歯車組19,20を経て変速機出力軸11より出力され、自動マニュアルトランスミッションを第2速に投入された状態にすることができる。
なお当該変速後に、アクチュエータソレノイド73のOnで奇数変速段圧Poを1−Rシフトアクチュエータ52へ供給することにより、上記のごとく第1速実現位置にされていた1−Rシフトアクチュエータ52を第1速実現位置から図1の中立位置に戻すようシフト動作させ、歯車22をカウンターシャフト15から切り離しておく。
(第3速)
第2速から第3速へのアップシフトに際しては、シーケンスソレノイド75のOnでスプール76を図3のストローク位置となし、アクチュエータソレノイド74のOnにより奇数変速段圧Poを3−5シフトアクチュエータ50に供給する。
これにより3−5シフトアクチュエータ50は図1の左方向へストロークして、同期噛合機構29のカップリングスリーブ29aを図1の中立位置から左方向にシフト動作させ、歯車26を第1入力軸5に駆動結合させる。
その後、クラッチ制御圧ソレノイド81により第2クラッチCBへのクラッチ制御圧を低下させてこの第2クラッチCBを解放させると共に、クラッチ制御圧ソレノイド82を介し調圧可能なクラッチ制御圧の上昇制御により第1クラッチCAを締結させて行う、第2クラッチCBから第1クラッチCAへのクラッチの掛け替えにより第2速から第3速へのアップシフトを行う。
これにより、第1クラッチCAがエンジン回転を第1入力軸5へ伝達するようになり、動力が第1入力軸5→第3速歯車組G3→カウンターシャフト15→出力歯車組19,20を経て変速機出力軸11より出力され、自動マニュアルトランスミッションを第3速に投入された状態にすることができる。
(第4速)
第3速から第4速へのアップシフトに際しては、シーケンスソレノイド75のOffでスプール76を図2のストローク位置となし、アクチュエータソレノイド71のOnにより偶数変速段圧Peを2−4シフトアクチュエータ54へ供給する。
これにより2−4シフトアクチュエータ54は図1の右方向へストロークして、1→2変速時に2速位置にされたままの同期噛合機構38のカップリングスリーブ38aを、図1の右方向にシフト動作させ、歯車35をカウンターシャフト15に駆動結合させる。
その後、クラッチ制御圧ソレノイド82により第1クラッチCAへのクラッチ制御圧を低下させてこの第1クラッチCAを解放させると共に、クラッチ制御圧ソレノイド81により第2クラッチCBへのクラッチ制御圧を上昇させてこの第2クラッチCBを締結させて行う、第1クラッチCAから第2クラッチCBへのクラッチの掛け替えにより第3速から第4速へのアップシフトを行う。
これにより、第2クラッチCBがエンジン回転を第2入力軸6へ伝達するようになり、動力が第2入力軸6→第4速歯車組G4→カウンターシャフト15→出力歯車組19,20を経て変速機出力軸11より出力され、自動マニュアルトランスミッションを第4速に投入された状態にすることができる。
(第5速)
第4速から第5速へのアップシフトに際しては、シーケンスソレノイド75のOnでスプール76を図3のストローク位置となし、アクチュエータソレノイド73のOnにより奇数変速段圧Poを3−5シフトアクチュエータ50に供給する。
これにより3−5シフトアクチュエータ50を図1の右方向へストロークして、2→3変速時に3速位置にされたままの同期噛合機構29のカップリングスリーブ29aを、図1の右方向にシフト動作させ、第1入力軸5を変速機出力軸11に直結させる。
その後、クラッチ制御圧ソレノイド81により第2クラッチCBへのクラッチ制御圧を低下させてこの第2クラッチCBを解放させると共に、クラッチ制御圧ソレノイド82により第1クラッチCAへのクラッチ制御圧を上昇させてこの第1クラッチCAを締結させて行う、第2クラッチCBから第1クラッチCAへのクラッチの掛け替えにより第4速から第5速へのアップシフトを行う。
これにより、第1クラッチCAがエンジン回転を第1入力軸5へ伝達するようになり、動力が第1入力軸5から同期噛合機構29のカップリングスリーブ29aを経て変速機出力軸11よりそのまま出力され、自動マニュアルトランスミッションを第5速(変速比1)に投入された状態にすることができる。
(第6速)
第5速から第6速へのアップシフトに際しては、シーケンスソレノイド75のOnでスプール76を図3のストローク位置に保ったまま、アクチュエータソレノイド72のOnにより偶数変速段圧Peを6−Nシフトアクチュエータ53へ供給する。
これにより6−Nシフトアクチュエータ53は図1の中立位置から左方向へストロークして、同期噛合機構37のカップリングスリーブ37aを、図1の中立位置から左方向にシフト動作させ、歯車31をカウンターシャフト15に駆動結合させる。
その後、クラッチ制御圧ソレノイド82により第1クラッチCAへのクラッチ制御圧を低下させてこの第1クラッチCAを解放させると共に、クラッチ制御圧ソレノイド81により第2クラッチCBへのクラッチ制御圧を上昇させてこの第2クラッチCBを締結させて行う、第1クラッチCAから第2クラッチCBへのクラッチの掛け替えにより第5速から第6速へのアップシフトを行う。
これにより、第2クラッチCBがエンジン回転を第2入力軸6へ伝達するようになり、動力が第2入力軸6→第6速歯車組G6→カウンターシャフト15→出力歯車組19,20を経て変速機出力軸11より出力され、自動マニュアルトランスミッションを第6速に投入された状態にすることができる。
なお当該変速後に、アクチュエータソレノイド74のOnで奇数変速段圧Poを3−5シフトアクチュエータ50へ供給することにより、2→3変速時に第3速実現位置にされていた3−5シフトアクチュエータ50を第3速実現位置から図1の中立位置に戻すようシフト動作させ、歯車26を第1入力軸5(その後方延長部5a)から切り離しておく。
上記では第1速から順次、第2速、第3速、第4速、第5速、第6速へとアップシフトさせる場合の変速制御について説明したが、
第6速から逆方向へ第1速まで順次ダウンシフトさせる場合の変速制御も、上記したアップシフトの場合とは逆の制御により同様に行わせることができる。
(後退変速段)
後退走行を希望してRレンジが選択されている時は、シーケンスソレノイド75のOffによりスプール76を図2のストローク位置となし、アクチュエータソレノイド73のOnにより奇数変速段圧Poを1−Rシフトアクチュエータ52へ供給する。
これにより1−Rシフトアクチュエータ52は図1の右方向へストロークして、同期噛合機構28のカップリングスリーブ28aを図1の中立位置から右方向にシフト動作させ、歯車24をカウンターシャフト15に駆動結合させる。
その後、奇数変速段圧Poを元圧としてクラッチ制御圧ソレノイド82を介し調圧可能なクラッチ制御圧の上昇制御により第1クラッチCAを締結する。
これにより、第1クラッチCAがエンジン回転を第1入力軸5へ伝達するようになり、動力が第1入力軸5→後退速歯車組GR→カウンターシャフト15→出力歯車組19,20を経て変速機出力軸11より出力され、自動マニュアルトランスミッションを後退変速段に投入された状態にすることができる。
[クラッチ異常時の動作]
例えばクラッチ制御圧ソレノイド82、若しくはその制御系が故障して、第1クラッチCAがクラッチ制御圧を供給され続け、この第1クラッチCAが締結状態にされたままとなるクラッチ締結保持故障が発生した場合について説明する。
これに係わる変速段(奇数変速段)での走行中に上記のクラッチ締結保持故障が発生すると、自動マニュアルトランスミッションを中立状態に戻し得ないままエンジンストール(エンスト)を生ずることになる。
この場合、次のエンジン始動時に変速段投入状態のまま当該エンジン始動が行われることとなり、以下のような問題がある。
第1クラッチCAが締結状態にされたままとなる上記の故障がなければ、エンジン始動時に変速段投入状態のまま当該エンジン始動が行われても、エンジンの始動とともにエンジン駆動オイルポンプ4から吐出される作動油を媒体として発生した奇数変速段圧Poをクラッチ制御圧ソレノイド82がクラッチ制御圧とすることがなく、クラッチ制御圧ソレノイド82がクラッチ制御圧を0に保って第1クラッチCAを解放させ続け得る。
一方、自動MTコントローラ47はアクチュエータソレノイド73または74のOnにより奇数変速段圧Poで始動時変速段投入状態を解除する方向のシフト動作を行うが、このシフト動作が完了するまでの間においても、上記のごとく第1クラッチCAが解放されているため、駆動車輪へ動力が伝達されることがない。
従って、エンジン始動時故に運転者が中立(N)レンジを選択しているのに、エンジン始動と同時に車両が動き始めるといったような事態、つまり車両が、運転者の意図しない走行を一時的にせよ開始するという事態を生ずることはない。
しかし、第1クラッチCAが締結状態にされたままとなる上記の故障時は、エンジン始動時に駆動オイルポンプ4から作動油が吐出されると、これを媒体として発生した奇数変速段圧Poをクラッチ制御圧ソレノイド82がそのままクラッチ制御圧として第1クラッチCAに向かわせ、エンジン停止中のため解放状態であった第1クラッチCAを上記の故障に起因して締結状態にさせてしまう。
一方、自動MTコントローラ47はアクチュエータソレノイド73または74のOnにより奇数変速段圧Poで始動時変速段投入状態を解除する方向のシフト動作を行うが、このシフト動作が完了するまでの間において、上記のごとく第1クラッチCAが故障により締結状態にされてしまうため、駆動車輪へ動力が伝達されることになる。
従って、例えばエンジン始動時故に運転者が中立(N)レンジを選択しているのに、エンジン始動と同時に車両が動き始めるといったような事態、つまり車両が、運転者の意図しない走行を一時的に開始するという事態を生ずる。
[第1実施例によるクラッチ異常時対策]
このような事態を回避するため本実施例においては、図1の自動MTコントローラ47が、図4に示す異常時自動変速制御を実行して、車両が、運転者の意図しない走行をいささかも開始することのないようにする。
図4の制御プログラムは、運転者がエンジンEの始動を行うべくイグニッションスイッチをOnした時に1回だけ実行されるものとし、当該制御プログラムの終了時にエンジンEの始動をも完了させ得るものである。
イグニッションスイッチOn時(エンジンEの始動時)に先ず選択されるステップS110においては、
当該エンジン始動時に第1クラッチCAまたは第2クラッチCBが締結状態のままにされた故障(自動クラッチ締結保持故障)を生じているか否かをチェックすると共に、当該エンジン始動時におけるシフト位置センサ55〜58からの信号をもとに、エンジン始動時なのに自動マニュアルトランスミッションが変速段投入状態であるか否かをチェックする。
従ってステップS110は、本発明における自動クラッチ締結保持故障検知手段および始動時変速段投入状態検知手段に相当する。
ステップS110で自動クラッチ締結保持故障を生じていると判定し、且つ、エンジン始動時なのに自動マニュアルトランスミッションが変速段投入状態であると判定するときは、エンジン始動時に車両が、運転者の意図しない走行を開始する可能性があることから、かかる事態を回避するために制御をステップS111以降に進めて、本発明が狙いとする異常時自動変速制御を以下のごとくに行う。
ステップS111においては、エンジン始動時にNレンジ選択状態か否かをチェックする。
ちなみに正常時なら、Nレンジ選択状態で自動マニュアルトランスミッションは前記したとおり、変速機出力軸11の回転を拘束されない動力伝達不能状態にされる。
ステップS111でNレンジ選択状態であると判定する場合は、ステップS112において、奇数変速段圧ソレノイド78および偶数変速段圧ソレノイド77をともにOffし、
次のステップS113において、運転者がイグニッションスイッチをOnし、更にスタータ位置に操作したときにエンジンEの始動を行う。
エンジン始動後は運転者がイグニッションスイッチから手を放すことで、イグニッションスイッチがスタータ位置からOn位置に自己復帰し、エンジンEの運転を継続させることができる。
よって、エンジンEの始動後はエンジン駆動されるオイルポンプ4が作動油を吐出して、これを媒体とする変速制御が可能である。
ステップS112で奇数変速段圧ソレノイド78および偶数変速段圧ソレノイド77がともにOffされたことにより、ステップS113におけるエンジンEの始動でオイルポンプ4から作動油が吐出されても、奇数変速段圧Poおよび偶数変速段圧Peが発生されることはない。
従って、図1の自動MTコントローラ47がアクチュエータソレノイド71〜74のうち、始動時変速段投入状態に係わるアクチュエータソレノイドをOnすることにより、奇数変速段圧Poまたは偶数変速段圧Peを対応するシフトアクチュエータ50,52,53,54へ供給しようとしても、奇数変速段圧Poおよび偶数変速段圧Peが上記の通り存在しないため、始動時変速段投入状態を解除する方向のシフト動作も行われ得ず、自動マニュアルトランスミッションを始動時変速段投入状態から中立状態にすることができない。
一方、第1クラッチCAまたは第2クラッチCBが締結状態のままとなる故障を生じているため、故障したクラッチ制御系に係わるクラッチ制御圧ソレノイド82または81が奇数変速段圧Poまたは偶数変速段圧Peをそのままクラッチ制御圧として第1クラッチCAまたは第2クラッチCBに向かわせようとするが、奇数変速段圧Poおよび偶数変速段圧Peが上記の通り存在しないため、故障したクラッチ制御系に係わる第1クラッチCAまたは第2クラッチCBは締結状態にされることなく、正常なクラッチ制御系に係わる自動クラッチとともに、エンジン停止中におけると同じ解放状態に保たれる。
従って、始動時変速段投入状態を解除する方向のシフト動作が行われ得ず、自動マニュアルトランスミッションが始動時変速段投入状態のままであっても、ステップS113で始動されたエンジンEの動力が変速機出力軸11に伝達されることは全くなく、
停車を希望して運転者がNレンジを選択しているのに、エンジン始動と同時に車両が動き始めるといったような事態、つまり車両が、運転者の意図しない走行を一時的に開始するという事態を回避することができる。
以上のことから明らかなように、ステップS111、ステップS112およびステップS113は、変速段圧ソレノイド77,78と共に、本発明における中立レンジ時異常対策手段を構成する。
上記したステップS110〜ステップS113を含むNレンジ制御ブロックI内におけるステップS111で自動マニュアルトランスミッションがエンジン始動時にNレンジ選択状態でないと判定するときは、ステップS121〜ステップS124を含むPレンジ制御ブロックII内におけるステップS121に制御を進め、
このステップS121において自動マニュアルトランスミッションがエンジン始動時にPレンジ選択状態か否かをチェックする。
ちなみに正常時なら、Pレンジ選択状態で自動マニュアルトランスミッションは前記したとおり、変速機出力軸11をパークロック装置により回転しないよう拘束された動力伝達不能状態にされる。
ステップS121でPレンジ選択状態であると判定するときは、ステップS122において、奇数変速段圧ソレノイド78および偶数変速段圧ソレノイド77をともにOnし、
次のステップS123において、運転者がイグニッションスイッチをOn位置から更にスタータ位置へ操作したときにエンジンEの始動を行う。
ステップS122で奇数変速段圧ソレノイド78および偶数変速段圧ソレノイド77がともにOnされたことにより、ステップS123におけるエンジンEの始動でオイルポンプ4から吐出される作動油を媒体として、奇数変速段圧Poおよび偶数変速段圧Peをエンジン始動時から通常通りに発生させることができる。
一方自動MTコントローラ47はステップS124において、アクチュエータソレノイド71〜74のうち、始動時変速段投入状態に係わるアクチュエータソレノイドをOnすることにより、奇数変速段圧Poまたは偶数変速段圧Peを対応するシフトアクチュエータ50,52,53,54へ供給して、始動時変速段投入状態を解除する方向のシフト動作を行い、自動マニュアルトランスミッションを始動時変速段投入状態から中立状態にする。
ところで、第1クラッチCAまたは第2クラッチCBが締結状態のままとなる故障を生じているため、故障したクラッチ制御系に係わるクラッチ制御圧ソレノイド82または81が奇数変速段圧Poまたは偶数変速段圧Peをそのままクラッチ制御圧として第1クラッチCAまたは第2クラッチCBに向かわせ、エンジン停止中のため解放状態であった第1クラッチCAまたは第2クラッチCBを締結状態にさせてしまう。
かかる第1クラッチCAまたは第2クラッチCBの締結は、始動時変速段投入状態の上記解除が完了するまでの間において、エンジン動力を変速機出力軸11へ伝達する。
しかしPレンジにおいては、自動マニュアルトランスミッションが変速機出力軸11をパークロック装置により回転しないよう拘束されており、変速機出力軸11に伝達されたエンジン動力が駆動車輪に至ることはない。
従って、駐車を希望して運転者がPレンジを選択しているのに、エンジン始動と同時に車両が動き始めるといったような事態、つまり車両が、運転者の意図しない走行を一時的に開始するという事態を生ずることはない。
そして、このPレンジにおいて上記のごとく始動時変速段投入状態が解除され(ステップS124)、自動マニュアルトランスミッションが中立状態にされることから、後で詳述するごとく走行レンジにしたとき、自動クラッチ締結保持故障を生じていない第1クラッチCAまたは第2クラッチCBに係わる変速段グループを用いた自動変速が可能であり、走行不能になる事態を回避することができる。
以上のことから明らかなように、ステップS121およびステップS122は変速段圧ソレノイド77,78と共に、本発明における駐車レンジ時異常対策手段を構成する。
Nレンジ制御ブロックI内のステップS113でエンジン始動が行われた後は、ステップS131〜ステップS135を含むN→D,R制御ブロックIII内におけるステップS131において、当該エンジン始動後にNレンジから走行レンジ(DレンジまたはRレンジ)への切り替え(走行レンジセレクト操作)が有ったか否かをチェックする。
ステップS131で走行レンジセレクト操作が有ったと判定する場合は、ステップS132において、ステップS110でチェックした自動クラッチ締結保持故障(第1クラッチCAの締結保持故障、または第2クラッチCBの締結保持故障)と、始動時変速段投入状態(前進変速段投入状態、または後退変速段投入状態)との組み合わせによる異常時回転伝動方向が、Nレンジから切り替えた走行レンジ(前進走行Dレンジ、または後退走行Rレンジ)に対し順方向か、逆方向かをチェックする。
ここで順方向とは、始動時変速段投入状態と自動クラッチ締結保持故障との組み合わせによる異常時回転伝動方向が前進回転伝動方向であって、Nレンジから切り替えた走行レンジが前進走行(D)レンジである場合を指し、また、始動時変速段投入状態と自動クラッチ締結保持故障との組み合わせによる異常時回転伝動方向が後退回転伝動方向であって、Nレンジから切り替えた走行レンジが後退走行(R)レンジである場合を指す。
そして逆方向とは、始動時変速段投入状態と自動クラッチ締結保持故障との組み合わせによる異常時回転伝動方向が前進回転伝動方向であって、Nレンジから切り替えた走行レンジが後退走行(R)レンジである場合を指し、また、始動時変速段投入状態と自動クラッチ締結保持故障との組み合わせによる異常時回転伝動方向が後退回転伝動方向であって、Nレンジから切り替えた走行レンジが前進走行(D)レンジである場合を指す。
ステップS132で逆方向であると判定するときは、つまり、Nレンジから切り替えた走行レンジが前進走行(D)レンジであるのに、始動時変速段投入状態と自動クラッチ締結保持故障との組み合わせによる異常時回転伝動方向が後退回転伝動方向である場合や、Nレンジから切り替えた走行レンジが後退走行(R)レンジであるのに、始動時変速段投入状態と自動クラッチ締結保持故障との組み合わせによる異常時回転伝動方向が前進回転伝動方向である場合は、
制御をステップS134に進めて、奇数変速段圧ソレノイド78および偶数変速段圧ソレノイド77をともにOffする。
これら奇数変速段圧ソレノイド78および偶数変速段圧ソレノイド77のOffは、ステップS113でのエンジンEの始動によりオイルポンプ4から作動油が吐出されても、奇数変速段圧Poおよび偶数変速段圧Peを発生させないこととなる。
従って、図1の自動MTコントローラ47がNレンジの場合と同じく、アクチュエータソレノイド71〜74のうち、始動時変速段投入状態に係わるアクチュエータソレノイドをOnすることにより、奇数変速段圧Poまたは偶数変速段圧Peを対応するシフトアクチュエータ50,52,53,54へ供給しようとしても、
奇数変速段圧Poおよび偶数変速段圧Peが存在しないために、始動時変速段投入状態を解除する方向のシフト動作も行われ得ず、自動マニュアルトランスミッションを始動時変速段投入状態から中立状態にすることができない。
一方、第1クラッチCAまたは第2クラッチCBが締結状態のままとなる故障を生じているため、故障したクラッチ制御系に係わるクラッチ制御圧ソレノイド82または81が、奇数変速段圧Poまたは偶数変速段圧Peをそのままクラッチ制御圧として第1クラッチCAまたは第2クラッチCBに向かわせようとするが、奇数変速段圧Poおよび偶数変速段圧Peが存在しないために、故障したクラッチ制御系に係わる第1クラッチCAまたは第2クラッチCBは締結状態にされることなく、正常なクラッチ制御系に係わる自動クラッチとともに、エンジン停止中におけると同じ解放状態に保たれる。
従って、始動時変速段投入状態を解除する方向のシフト動作が行われ得ず、自動マニュアルトランスミッションが始動時変速段投入状態のままであっても、エンジン動力が変速機出力軸11に伝達されることは全くない。
このため、前進を希望して運転者がDレンジを選択しているのに、エンジン始動と同時に車両が後退方向へ動き始めるといったような事態や、後退を希望して運転者がRレンジを選択しているのに、エンジン始動と同時に車両が前進方向へ動き始めるといったような事態、つまり車両が、運転者の意図しない走行を一時的に開始するという事態を回避することができる。
以上のことから明らかなように、ステップS132およびステップS134は変速段圧ソレノイド77,78と共に、本発明における走行レンジセレクト時異常対策手段を構成する。
ステップS134の処理後は制御をステップS132に戻すことにより、ステップS134を継続的に実行して、エンジン始動と同時に車両が、運転者の走行レンジ切り替えによる意図と逆方向へ移動し始めるのを回避するという上記の作用効果を、次のレンジ切り替えがあるまで奏し得るようになす。
ステップS132で異常時回転伝動方向が、Nレンジから切り替えられた走行レンジに対し順方向であると判定するときは、つまり、始動時変速段投入状態と自動クラッチ締結保持故障との組み合わせによる異常時回転伝動方向が前進回転伝動方向であって、Nレンジから切り替えられた走行レンジが前進走行(D)レンジである場合や、始動時変速段投入状態と自動クラッチ締結保持故障との組み合わせによる異常時回転伝動方向が後退回転伝動方向であって、Nレンジから切り替えられた走行レンジが後退走行(R)レンジである場合は、
制御をステップS133に進めて、奇数変速段圧ソレノイド78および偶数変速段圧ソレノイド77をともにOnし、これにより奇数変速段圧Poおよび偶数変速段圧Peをエンジン始動時から通常通りに発生させる。
一方図1の自動MTコントローラ47はステップS135において、アクチュエータソレノイド71〜74のうち、始動時変速段投入状態に係わるアクチュエータソレノイドをOnすることにより、奇数変速段圧Poまたは偶数変速段圧Peを対応するシフトアクチュエータ50,52,53,54へ供給して、始動時変速段投入状態を解除する方向のシフト動作を行い、自動マニュアルトランスミッションを始動時変速段投入状態から中立状態にする。
従って、ステップS132、ステップS134およびステップS135は変速段圧ソレノイド77,78と共に、本発明における走行レンジセレクト時異常対策手段を構成する。
ところで、第1クラッチCAまたは第2クラッチCBが締結状態のままとなる故障を生じているため、故障したクラッチ制御系に係わるクラッチ制御圧ソレノイド82または81が奇数変速段圧Poまたは偶数変速段圧Peをそのままクラッチ制御圧として第1クラッチCAまたは第2クラッチCBに向かわせ、エンジン停止中のため解放状態であった第1クラッチCAまたは第2クラッチCBを締結状態にさせてしまう。
かかる第1クラッチCAまたは第2クラッチCBの締結は、始動時変速段投入状態の上記解除(ステップS135)が完了するまでの間において、エンジン動力を変速機出力軸11および駆動車輪に伝達し、車両を一時的に、始動時変速段投入状態と自動クラッチ締結保持故障との組み合わせで決まる方向へ、前進または後退させ始める。
しかし、始動時変速段投入状態と自動クラッチ締結保持故障との組み合わせによる回転伝動方向が、Nレンジから切り替えた走行レンジによる走行方向に対し順方向であるため、上記エンジン始動時における前進開始または後退開始は、運転者が走行レンジにセレクト操作した時から予期しているものであり、運転者が意図した走行開始であって何ら違和感にならない。
N→D,R制御ブロックIII内のステップS131で、エンジン始動(ステップS113)後にNレンジから走行レンジ(DレンジまたはRレンジ)への切り替え(走行レンジセレクト操作)がなかったと判定するときは、ステップS141〜ステップS143を含むN→P制御ブロックIV内におけるステップS141において、当該エンジン始動後にNレンジからPレンジへの切り替え(駐車レンジセレクト操作)が有ったか否かをチェックする。
エンジン始動後にNレンジからPレンジへの切り替え(駐車レンジセレクト操作)がない間は、エンジン始動後にNレンジが保持されていることから、制御をステップS131に戻して、Nレンジからのセレクト操作が行われるまで待機する。
ステップS141でエンジン始動後にNレンジからPレンジへの切り替え(駐車レンジセレクト操作)があったと判定するとき、
ステップS142において、奇数変速段圧ソレノイド78および偶数変速段圧ソレノイド77をともにOnさせる。
これら奇数変速段圧ソレノイド78および偶数変速段圧ソレノイド77がともにOnされたことにより、ステップS113におけるエンジンEの始動でオイルポンプ4から吐出される作動油を媒体として、奇数変速段圧Poおよび偶数変速段圧Peをエンジン始動時から通常通りに発生させることができる。
一方、図1の自動MTコントローラ47はステップS143において、アクチュエータソレノイド71〜74のうち、始動時変速段投入状態に係わるアクチュエータソレノイドをOnすることにより、奇数変速段圧Poまたは偶数変速段圧Peを対応するシフトアクチュエータ50,52,53,54へ供給して、始動時変速段投入状態を解除する方向のシフト動作を行い、自動マニュアルトランスミッションを始動時変速段投入状態から中立状態にする。
ところで、第1クラッチCAまたは第2クラッチCBが締結状態のままとなる故障を生じているため、故障したクラッチ制御系に係わるクラッチ制御圧ソレノイド82または81が奇数変速段圧Poまたは偶数変速段圧Peをそのままクラッチ制御圧として第1クラッチCAまたは第2クラッチCBに向かわせ、エンジン停止中のため解放状態であった第1クラッチCAまたは第2クラッチCBを締結状態にさせてしまう。
かかる第1クラッチCAまたは第2クラッチCBの締結は、始動時変速段投入状態の上記解除が完了するまでの間において、エンジン動力を変速機出力軸11へ伝達する。
しかしPレンジにおいては、自動マニュアルトランスミッションが変速機出力軸11をパークロック装置により回転しないよう拘束されており、変速機出力軸11に伝達されたエンジン動力が駆動車輪に至ることはない。
従って、駐車を希望して運転者がNレンジからPレンジへ切り替えたのに、エンジン始動と同時に車両が動き始めるといったような事態、つまり車両が、運転者の意図しない走行を一時的に開始するという事態を生ずることはない。
そして、このNレンジからPレンジへの駐車レンジセレクト操作時は上記のごとく始動時変速段投入状態が解除され(ステップS143)、自動マニュアルトランスミッションが中立状態にされることから、後で詳述するごとく走行レンジにしたとき、自動クラッチ締結保持故障を生じていない第1クラッチCAまたは第2クラッチCBに係わる変速段グループを用いた自動変速が可能であり、走行不能になる事態を回避することができる。
以上のことから明らかなように、ステップS141およびステップS142は変速段圧ソレノイド77,78と共に、本発明における駐車レンジセレクト時異常対策手段を構成する。
Pレンジ制御ブロックIIのステップS124、N→D,R制御ブロックIIIのステップS135、またはN→P制御ブロックIVのステップS143で、始動時変速段投入状態を解除する方向のシフト動作を行い、自動マニュアルトランスミッションを始動時変速段投入状態から中立状態にした後は、
制御を異常時変速制御ブロックVIを成すステップS161に進め、このステップS161において、運転者が走行を希望しDレンジを選択したときに、自動クラッチ締結保持故障を生じていない第1クラッチCAまたは第2クラッチCBに係わる変速段グループを用いた自動変速を行う。
これにより、自動クラッチ締結保持故障を生じていない第1クラッチCAまたは第2クラッチCBに係わる変速段グループ内の変速段を用いた走行を行わせることができ、走行不能になる事態を回避し得る。
従ってステップS161も、本発明における走行レンジ時異常対策手段の一部を構成する。
ところで本実施例においては、ステップS112、ステップS122、ステップS133、ステップS134およびステップS142におけるように、奇数変速段圧Poおよび偶数変速段圧Peを発生させるか否かの制御に際し、既存の奇数変速段圧ソレノイド78および偶数変速段圧ソレノイド77をOn,Offさせて当該制御をおこなうこととしたから、
弁の付加なしに既存ソレノイドのOn,Offで奇数変速段圧Poおよび偶数変速段圧Peを発生させるか否かを制御することができ、コスト上大いに有利である。
ステップS110で自動クラッチ締結保持故障およびエンジン始動時変速段投入状態のいずれか一方が欠けると判定する場合は、ステップS210およびステップS220において、自動クラッチ締結保持故障が発生しているのか、またはエンジン始動時変速段投入状態なのか、或いは自動クラッチ締結保持故障でもなくエンジン始動時変速段投入状態でもない(異常なし)、の何れであるのかをチェックする。
ステップS210で自動クラッチ締結保持故障が発生していると判定する場合は、ステップS211において非走行レンジ(Pレンジ、またはNレンジ)選択中であるか否かをチェックする。
非走行レンジ(Pレンジ、またはNレンジ)が選択されていなければ、制御をステップS211に戻し、非走行レンジ(Pレンジ、またはNレンジ)選択中であれば、
ステップS212において、奇数変速段圧ソレノイド78および偶数変速段圧ソレノイド77をともにOffすると共に、ステップS213においてエンジンEを始動させる。
これら奇数変速段圧ソレノイド78および偶数変速段圧ソレノイド77のOffは、ステップS213でのエンジンEの始動によりオイルポンプ4から作動油が吐出されても、奇数変速段圧Poおよび偶数変速段圧Peを発生させないこととなる。
従って、第1クラッチCAまたは第2クラッチCBが締結状態のままとなる故障を生じていても、当該故障したクラッチ制御系に係わる第1クラッチCAまたは第2クラッチCBが締結状態にされることなく、正常なクラッチ制御系に係わる自動クラッチとともに、エンジン停止中におけると同じ解放状態に保たれる。
その後は制御をステップS161に進め、運転者が走行を希望しDレンジを選択したときに、自動クラッチ締結保持故障を生じていない第1クラッチCAまたは第2クラッチCBに係わる変速段グループを用いた自動変速を行う。
これにより、自動クラッチ締結保持故障を生じていない第1クラッチCAまたは第2クラッチCBに係わる変速段グループ内の変速段を用いた走行を行わせることができ、走行不能になる事態を回避し得る。
ステップS220でエンジン始動時変速段投入状態であると判定するときは、ステップS221において非走行レンジ(Pレンジ、またはNレンジ)選択中であるか否かをチェックする。
非走行レンジ(Pレンジ、またはNレンジ)が選択されていなければ、制御をステップS221に戻し、非走行レンジ(Pレンジ、またはNレンジ)選択中であれば、
ステップS222において、奇数変速段圧ソレノイド78および偶数変速段圧ソレノイド77をともにOnすると共に、ステップS223においてエンジンEを始動させる。
ステップS222で奇数変速段圧ソレノイド78および偶数変速段圧ソレノイド77がともにOnされたことにより、ステップS223におけるエンジンEの始動でオイルポンプ4から吐出される作動油を媒体として、奇数変速段圧Poおよび偶数変速段圧Peをエンジン始動時から通常通りに発生させることができる。
一方自動MTコントローラ47はステップS224において、アクチュエータソレノイド71〜74のうち、始動時変速段投入状態に係わるアクチュエータソレノイドをOnすることにより、奇数変速段圧Poまたは偶数変速段圧Peを対応するシフトアクチュエータ50,52,53,54へ供給して、始動時変速段投入状態を解除する方向のシフト動作を行い、自動マニュアルトランスミッションを始動時変速段投入状態から中立状態にする。
かかる始動時変速段投入状態の解除(ステップS224)により、第1クラッチCAおよび第2クラッチCBが締結保持故障を生じていないこともあって、通常の自動変速を妨げる要因がなくなる。
よって、以後は制御をステップS225に進めることにより、正常時の自動変速制御をそのまま実行することとする。
ここで正常時の自動変速制御とは、車速およびアクセル開度から予定の変速マップをもとに目標変速段を求め、現在の変速段から目標変速段への変速させることとを意味する。
ステップS210およびステップS220で自動クラッチ締結保持故障もなくエンジン始動時変速段投入状態でもない、つまり異常がないとの判定がなされたときは、
ステップS231において非走行レンジ(Pレンジ、またはNレンジ)選択中であるか否かをチェックする。
非走行レンジ(Pレンジ、またはNレンジ)が選択されていなければ、制御をステップS231に戻し、非走行レンジ(Pレンジ、またはNレンジ)選択中であれば、
ステップS232において、奇数変速段圧ソレノイド78および偶数変速段圧ソレノイド77をともにOnすると共に、ステップS233においてエンジンEを始動させる。
ステップS232で奇数変速段圧ソレノイド78および偶数変速段圧ソレノイド77がともにOnされたことにより、ステップS233におけるエンジンEの始動でオイルポンプ4から吐出される作動油を媒体として、奇数変速段圧Poおよび偶数変速段圧Peをエンジン始動時から通常通りに発生させることができる。
以後は制御をステップS225へ進めることにより、正常時の自動変速制御をそのまま実行する。
[第2実施例によるクラッチ異常時対策]
前記した異常時の問題解決に当たっては、異常時に図1の自動MTコントローラ47が、図4のような制御プログラムに代え、図5に示す異常時自動変速制御を実行して、車両が、運転者の意図しない走行を開始することのないようにしてもよい。
図5の制御プログラムは、運転者がエンジンEの始動を行うべくイグニッションスイッチをOnした時に1回だけ実行するものとする。
ステップS11においては、運転者がイグニッションスイッチをOnし、更にスタータ位置に操作したときにエンジンEの始動を行う。
エンジン始動後は運転者がイグニッションスイッチから手を放すことで、イグニッションスイッチがスタータ位置からOn位置に自己復帰し、エンジンEの運転を継続させることができる。
よって、エンジンEの始動後はエンジン駆動されるオイルポンプ4が作動油を吐出して、これを媒体とする変速制御が可能である。
次のステップS12は本発明における始動時変速段投入状態検知手段に相当し、
このステップS12においては、運転者がエンジンEの始動を行うべくイグニッションスイッチをOnした時における、つまり本制御プログラムが開始された時におけるシフト位置センサ55〜58からの信号をもとに、エンジン始動時に自動マニュアルトランスミッションが変速段投入状態であったか否かをチェックする。
エンジン始動時に自動マニュアルトランスミッションが変速段投入状態でなければ、本発明が解決すべき上記の問題、つまりエンジン始動時に車両が、運転者の意図しない走行を開始するという事態を生ずることがないから、制御をステップS13に進めて前記した正常時用の通常の自動変速を実行する。
ステップS12でエンジン始動時に自動マニュアルトランスミッションが変速段投入状態であったと判定するときは、本発明における自動クラッチ締結保持故障検知手段に相当するステップS14において、第1クラッチCAまたは第2クラッチCBが締結状態のままにされた故障(自動クラッチ締結保持故障)状態か否かをチェックする。
第1クラッチCAまたは第2クラッチCBが締結状態のままにされた故障を生じていなければ、本発明が解決すべき上記の問題、つまりエンジン始動時に車両が、運転者の意図しない走行を開始するという事態を生ずることがないから、制御をステップS13に進めて前記した正常時用の通常の自動変速を実行する。
ステップS12でエンジン始動時に自動マニュアルトランスミッションが変速段投入状態であったと判定し、且つ、ステップS14で第1クラッチCAまたは第2クラッチCBが締結状態のままにされた故障を生じていると判定した場合は、エンジン始動時に車両が、運転者の意図しない走行を開始する可能性があることから、かかる事態を回避するために制御をステップS15以降に進めて、本発明が狙いとする異常時自動変速制御を以下のごとくに行う。
ステップS15においては、自動マニュアルトランスミッションがPレンジ選択状態か否かをチェックし、ステップS16においてはNレンジ選択状態か否かをチェックする。
正常時なら、Pレンジ選択状態で自動マニュアルトランスミッションは前記したとおり、変速機出力軸11をパークロック装置により回転しないよう拘束された動力伝達不能状態にされ、Nレンジ選択状態で自動マニュアルトランスミッションは前記したとおり、変速機出力軸11の回転を拘束されない動力伝達不能状態にされる。
エンジン始動時にステップS15でPレンジ選択状態と判定するときは、ステップS17において、奇数変速段圧ソレノイド78および偶数変速段圧ソレノイド77をともにOnし、これにより奇数変速段圧Poおよび偶数変速段圧Peをエンジン始動時から通常通りに発生させる。
一方自動MTコントローラ47は、アクチュエータソレノイド71〜74のうち、始動時変速段投入状態に係わるアクチュエータソレノイドをOnすることにより、奇数変速段圧Poまたは偶数変速段圧Peを対応するシフトアクチュエータ50,52,53,54へ供給して、始動時変速段投入状態を解除する方向のシフト動作を行い、自動マニュアルトランスミッションを始動時変速段投入状態から中立状態にする。
ところで、第1クラッチCAまたは第2クラッチCBが締結状態のままとなる故障を生じているため、故障したクラッチ制御系に係わるクラッチ制御圧ソレノイド82または81が奇数変速段圧Poまたは偶数変速段圧Peをそのままクラッチ制御圧として第1クラッチCAまたは第2クラッチCBに向かわせ、エンジン停止中のため解放状態であった第1クラッチCAまたは第2クラッチCBを締結状態にさせてしまう。
かかる第1クラッチCAまたは第2クラッチCBの締結は、始動時変速段投入状態の上記解除が完了するまでの間において、エンジン動力を変速機出力軸11へ伝達する。
しかしPレンジにおいては、自動マニュアルトランスミッションが変速機出力軸11をパークロック装置により回転しないよう拘束されており、変速機出力軸11に伝達されたエンジン動力が駆動車輪に至ることはない。
従って、駐車を希望して運転者がPレンジを選択しているのに、エンジン始動と同時に車両が動き始めるといったような事態、つまり車両が、運転者の意図しない走行を一時的に開始するという事態を生ずることはない。
そして、このPレンジにおいて上記のごとく始動時変速段投入状態が解除され、自動マニュアルトランスミッションが中立状態にされることから、後で詳述するごとく走行レンジにしたとき、自動クラッチ締結保持故障を生じていない第1クラッチCAまたは第2クラッチCBに係わる変速段グループを用いた自動変速が可能であり、走行不能になる事態を回避することができる。
以上のことから明らかなように、ステップS15およびステップS17は変速段圧ソレノイド77,78と共に、本発明における駐車レンジ時異常対策手段を構成する。
エンジン始動時にステップS16でNレンジと判定するときは、ステップS18において、奇数変速段圧ソレノイド78および偶数変速段圧ソレノイド77をともにOffし、これにより、エンジンEの始動によりオイルポンプ4から作動油が吐出されても、奇数変速段圧Poおよび偶数変速段圧Peを発生させないようにする。
従って、自動MTコントローラ47がPレンジの場合につき上述したと同じく、アクチュエータソレノイド71〜74のうち、始動時変速段投入状態に係わるアクチュエータソレノイドをOnすることにより、奇数変速段圧Poまたは偶数変速段圧Peを対応するシフトアクチュエータ50,52,53,54へ供給しようとしても、奇数変速段圧Poおよび偶数変速段圧Peが存在しないために、始動時変速段投入状態を解除する方向のシフト動作も行われ得ず、自動マニュアルトランスミッションを始動時変速段投入状態から中立状態にすることができない。
一方、第1クラッチCAまたは第2クラッチCBが締結状態のままとなる故障を生じているため、故障したクラッチ制御系に係わるクラッチ制御圧ソレノイド82または81が奇数変速段圧Poまたは偶数変速段圧Peをそのままクラッチ制御圧として第1クラッチCAまたは第2クラッチCBに向かわせようとする。
しかし奇数変速段圧Poおよび偶数変速段圧Peが存在しないため、故障したクラッチ制御系に係わる第1クラッチCAまたは第2クラッチCBは締結状態にされることなく、正常なクラッチ制御系に係わる自動クラッチとともに、エンジン停止中におけると同じ解放状態に保たれる。
従って、始動時変速段投入状態を解除する方向のシフト動作が行われ得ず、自動マニュアルトランスミッションが始動時変速段投入状態のままであっても、エンジン動力が変速機出力軸11に伝達されることはない。
従って、停車を希望して運転者がNレンジを選択しているのに、エンジン始動と同時に車両が動き始めるといったような事態、つまり車両が、運転者の意図しない走行を一時的に開始するという事態を回避することができる。
以上のことから明らかなように、ステップS16およびステップS18は変速段圧ソレノイド77,78と共に、本発明における中立レンジ時異常対策手段を構成する。
エンジン始動時にステップS16でNレンジでないと判定するときは、つまり、エンジン始動時にDレンジやRレンジのような走行レンジであるときは、ステップS19において、
ステップS12でチェックした始動時変速段投入状態(前進変速段投入状態、または後退変速段投入状態)と、ステップS14でチェックした自動クラッチ締結保持故障(第1クラッチCAの締結保持故障、または第2クラッチCBの締結保持故障)の組み合わせによる異常時回転伝動方向が、選択中の走行レンジ(前進走行レンジ、または後退走行レンジ)に対し前記したような順方向か、逆方向かをチェックする。
ステップS19で逆方向であると判定するときは、つまり、選択中の走行レンジが前進走行(D)レンジであるのに、始動時変速段投入状態と自動クラッチ締結保持故障との組み合わせによる異常時回転伝動方向が後退回転伝動方向である場合や、選択中の走行レンジが後退走行(R)レンジであるのに、始動時変速段投入状態と自動クラッチ締結保持故障との組み合わせによる異常時回転伝動方向が前進回転伝動方向である場合は、
制御をステップS18に進めて、奇数変速段圧ソレノイド78および偶数変速段圧ソレノイド77をともにOffし、これにより、エンジンEの始動(ステップS11)によりオイルポンプ4から作動油が吐出されても、奇数変速段圧Poおよび偶数変速段圧Peを発生させないようにする。
従って、図1の自動MTコントローラ47がP,Nレンジの場合と同じく、アクチュエータソレノイド71〜74のうち、始動時変速段投入状態に係わるアクチュエータソレノイドをOnすることにより、奇数変速段圧Poまたは偶数変速段圧Peを対応するシフトアクチュエータ50,52,53,54へ供給しようとしても、奇数変速段圧Poおよび偶数変速段圧Peが存在しないために、始動時変速段投入状態を解除する方向のシフト動作も行われ得ず、自動マニュアルトランスミッションを始動時変速段投入状態から中立状態にすることができない。
一方、第1クラッチCAまたは第2クラッチCBが締結状態のままとなる故障を生じているため、故障したクラッチ制御系に係わるクラッチ制御圧ソレノイド82または81が奇数変速段圧Poまたは偶数変速段圧Peをそのままクラッチ制御圧として第1クラッチCAまたは第2クラッチCBに向かわせようとする。
しかし、奇数変速段圧Poおよび偶数変速段圧Peが存在しないために、故障したクラッチ制御系に係わる第1クラッチCAまたは第2クラッチCBは締結状態にされることなく、正常なクラッチ制御系に係わる自動クラッチとともに、エンジン停止中におけると同じ解放状態に保たれる。
従って、始動時変速段投入状態を解除する方向のシフト動作が行われ得ず、自動マニュアルトランスミッションが始動時変速段投入状態のままであっても、エンジン動力が変速機出力軸11に伝達されることはない。
このため、前進を希望して運転者がDレンジを選択しているのに、エンジン始動と同時に車両が後退方向へ動き始めるといったような事態や、後退を希望して運転者がRレンジを選択しているのに、エンジン始動と同時に車両が前進方向へ動き始めるといったような事態、つまり車両が、運転者の意図しない走行を一時的に開始するという事態を回避することができる。
以上のことから明らかなように、ステップS19およびステップS18は変速段圧ソレノイド77,78と共に、本発明における走行レンジ時異常対策手段を構成する。
ステップS19で順方向であると判定するときは、つまり、始動時変速段投入状態と自動クラッチ締結保持故障との組み合わせによる異常時回転伝動方向が前進回転伝動方向であって、選択中の走行レンジが前進走行(D)レンジである場合や、始動時変速段投入状態と自動クラッチ締結保持故障との組み合わせによる異常時回転伝動方向が後退回転伝動方向であって、選択中の走行レンジが後退走行(R)レンジである場合は、
制御をステップS20に進めて、奇数変速段圧ソレノイド78および偶数変速段圧ソレノイド77をともにOnし、これにより奇数変速段圧Poおよび偶数変速段圧Peをエンジン始動時から通常通りに発生させる。
一方、図1の自動MTコントローラ47は、アクチュエータソレノイド71〜74のうち、始動時変速段投入状態に係わるアクチュエータソレノイドをOnすることにより、奇数変速段圧Poまたは偶数変速段圧Peを対応するシフトアクチュエータ50,52,53,54へ供給して、始動時変速段投入状態を解除する方向のシフト動作を行い、自動マニュアルトランスミッションを始動時変速段投入状態から中立状態にする。
ところで、第1クラッチCAまたは第2クラッチCBが締結状態のままとなる故障を生じているため、故障したクラッチ制御系に係わるクラッチ制御圧ソレノイド82または81が奇数変速段圧Poまたは偶数変速段圧Peをそのままクラッチ制御圧として第1クラッチCAまたは第2クラッチCBに向かわせ、エンジン停止中のため解放状態であった第1クラッチCAまたは第2クラッチCBを締結状態にさせてしまう。
かかる第1クラッチCAまたは第2クラッチCBの締結は、始動時変速段投入状態の上記解除が完了するまでの間において、エンジン動力を変速機出力軸11および駆動車輪に伝達し、車両を一時的に、始動時変速段投入状態と自動クラッチ締結保持故障との組み合わせで決まる方向へ、前進または後退させ始める。
しかし、始動時変速段投入状態と自動クラッチ締結保持故障との組み合わせによる異常時回転伝動方向が、選択中の走行レンジによる走行方向に対し順方向であるため、上記エンジン始動時における前進開始または後退開始は、運転者が走行レンジにセレクト操作した時から予期しているものであり、運転者が意図した走行開始であって何ら違和感にならない。
以上のことから明らかなように、ステップS19およびステップS20は変速段圧ソレノイド77,78と共に、本発明における走行レンジ時異常対策手段を構成する。
次のステップS21においては、上記のごとく始動時変速段投入状態が解除され、自動マニュアルトランスミッションが中立状態にされていることから、自動クラッチ締結保持故障を生じていない第1クラッチCAまたは第2クラッチCBに係わる変速段グループを用いた自動変速を行い、該変速段グループ内の変速段を用いた走行を行わせることができ、走行不能になる事態を回避し得る。
従って、ステップS21も本発明における走行レンジ時異常対策手段を構成する。
ところで本実施例においては、ステップS17、ステップS18およびステップS20におけるように、奇数変速段圧Poおよび偶数変速段圧Peを発生させるか否かの制御に際し既存の奇数変速段圧ソレノイド78および偶数変速段圧ソレノイド77をOn,Offさせて当該制御をおこなうこととしたから、弁の付加なしに既存ソレノイドのOn,Offで奇数変速段圧Poおよび偶数変速段圧Peを発生させるか否かを制御することができ、コスト上大いに有利である。
なお上記した両実施例ではともに、自動クラッチ締結保持故障時における対策を、自動マニュアルトランスミッションがツインクラッチ式自動マニュアルトランスミッションである場合について説明したが、シングルクラッチ式の自動マニュアルトランスミッションにも同様の考え方により適用し得て、同様な作用効果を達成することができる。
ただし、シングルクラッチ式の自動マニュアルトランスミッションにあっては、変速段をグループ分けせず、クラッチ制御系が1系統のみであることから、
ステップS19(ステップS132)およびステップS21(ステップS161)が不要であると共に、ステップS17、ステップS18、およびステップS20(ステップS112、ステップS122、ステップS133、ステップS134、ステップS142、ステップS212、ステップS222、ステップS232)における変速段圧ソレノイドも1個のみであることは言うまでもない。
本発明の一実施例になる異常時自動変速機制御装置を具えたツインクラッチ式自動マニュアルトランスミッションを、その変速制御システムとともに示す骨子図である。 図1に示すツインクラッチ式マニュアルトランスミッションの変速制御システムを、その内部におけるシーケンスソレノイドがOff時の状態で示す油圧回路図である。 図1に示すツインクラッチ式マニュアルトランスミッションの変速制御システムを、その内部におけるシーケンスソレノイドがOn時の状態で示す油圧回路図である。 図1に示すツインクラッチ式マニュアルトランスミッションの変速制御システム内における自動MTコントローラが、自動クラッチ締結保持故障時に実行する異常時自動変速制御プログラムのフローチャートである。 本発明の他の実施例を示す、図4と同様な異常時自動変速制御プログラムのフローチャートである。
符号の説明
CA 第1クラッチ
CB 第2クラッチ
G1 第1速歯車組
G2 第2速歯車組
G3 第3速歯車組
G4 第4速歯車組
G6 第6速歯車組
GR 後退歯車組
28 1−R同期噛合機構
29 3−5同期噛合機構
37 6−N同期噛合機構
38 2−4同期噛合機構
41 3−5シフトフォーク
42 1−Rシフトフォーク
43 6−Nシフトフォーク
44 2−4シフトフォーク
45 アクチュエータユニット
46 クラッチ油圧モジュール
48 第1シフトロッド
49 3−5シフトブラケット
50 3−5シフトアクチュエータ
51 第2シフトロッド
52 1−Rシフトアクチュエータ
53 6−Nシフトアクチュエータ
54 2−4シフトアクチュエータ
55 3−5シフト位置センサ
56 1−Rシフト位置センサ
57 6−Nシフト位置センサ
58 2−4シフト位置センサ
59 アクチュエータ油圧モジュール
61 3速圧油路
62 5速圧油路
63 1速圧油路
64 リバース圧油路
65 2速圧油路
66 4速圧油路
67 6速圧油路
68 ニュートラル圧油路
71 第1アクチュエータソレノイド
72 第2アクチュエータソレノイド
73 第3アクチュエータソレノイド
74 第4アクチュエータソレノイド
75 シーケンスソレノイド
76 スプール
77 偶数変速段圧ソレノイド
78 奇数変速段圧ソレノイド
81 第1クラッチ制御圧ソレノイド
82 第2クラッチ制御圧ソレノイド
83 第1クラッチ圧センサ
84 第2クラッチ圧センサ

Claims (7)

  1. 自動クラッチを介してエンジン回転を入力され、エンジン駆動されるポンプからの作動油を媒体とする前記自動クラッチの断接制御および伝動ギヤ列切り替え用のシフト動作により所定変速段を実現可能で、該実現された所定変速段で入力回転を変速して出力する自動マニュアルトランスミッションにおいて、
    前記エンジンの始動時に自動マニュアルトランスミッションが変速段投入状態であるのを検知する始動時変速段投入状態検知手段と、
    前記自動クラッチが締結状態のままにされた故障を検知する自動クラッチ締結保持故障検知手段と、
    これら手段の検知結果に基づき、エンジン始動時に自動マニュアルトランスミッションが変速段投入状態であって、且つ、自動クラッチが締結状態のままにされた故障である場合は、
    前記自動マニュアルトランスミッションを、出力軸が回転を拘束されない動力伝達不能状態にするのを指令する中立レンジが選択されている間、
    前記自動クラッチ断接制御およびシフト動作用の前記作動油供給を禁止して車両が動き出すことのないようにした中立レンジ時異常対策手段とを具備してなることを特徴とする、自動マニュアルトランスミッションの異常時自動変速制御装置。
  2. 請求項1に記載の自動マニュアルトランスミッションの異常時自動変速制御装置において、
    前記始動時変速段投入状態検知手段および自動クラッチ締結保持故障検知手段による検知結果に基づき、エンジン始動時に自動マニュアルトランスミッションが変速段投入状態であって、且つ、クラッチ制御圧が自動クラッチを締結状態にしたままとなす圧力値に保たれる故障である場合は、
    前記自動マニュアルトランスミッションを、出力軸が回転を拘束された動力伝達不能状態にするのを指令する駐車レンジが選択されている間、
    前記自動クラッチ断接制御およびシフト動作用の前記作動油供給を許可して前記エンジン始動時変速段投入状態を解除する駐車レンジ時異常対策手段を設けたことを特徴とする、自動マニュアルトランスミッションの異常時自動変速制御装置。
  3. 請求項1に記載の自動マニュアルトランスミッションの異常時自動変速制御装置において、
    前記中立レンジ時異常対策手段は、前記自動クラッチ断接制御およびシフト動作用の前記作動油供給を禁止して車両が動き出すことのないようにするのに加え、前記エンジンを始動させるものであり、
    該エンジン始動後に前記中立レンジから、前記自動マニュアルトランスミッションを動力伝達可能状態にするのを指令する走行レンジへの走行レンジセレクト操作が行われた時は、該走行レンジによる走行方向が、前記始動時変速段投入状態と自動クラッチ締結保持故障との組み合わせによる走行方向と同じであれば、前記自動クラッチ断接制御およびシフト動作用の前記作動油供給を許可して前記エンジン始動時変速段投入状態を解除し、逆であれば、前記自動クラッチ断接制御およびシフト動作用の前記作動油供給を禁止して車両が動き始めるのを防止するようにした走行レンジセレクト時異常対策手段を設けたことを特徴とする、自動マニュアルトランスミッションの異常時自動変速制御装置。
  4. 請求項1または2に記載の自動マニュアルトランスミッションの異常時自動変速制御装置において、
    前記中立レンジ時異常対策手段は、前記自動クラッチ断接制御およびシフト動作用の前記作動油供給を禁止して車両が動き出すことのないようにするのに加え、前記エンジンを始動させるものであり、
    該エンジン始動後に前記中立レンジから、前記自動マニュアルトランスミッションを、出力軸が回転を拘束された動力伝達不能状態にするのを指令する駐車レンジへの駐車レンジセレクト操作が行われた時は、前記自動クラッチ断接制御およびシフト動作用の前記作動油供給を許可して前記エンジン始動時変速段投入状態を解除する駐車レンジセレクト時異常対策手段を設けたことを特徴とする、自動マニュアルトランスミッションの異常時自動変速制御装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動マニュアルトランスミッションの異常時自動変速制御装置において、
    前記始動時変速段投入状態検知手段および自動クラッチ締結保持故障検知手段による検知結果に基づき、エンジン始動時に自動マニュアルトランスミッションが変速段投入状態であって、且つ、クラッチ制御圧が自動クラッチを締結状態にしたままとなす圧力値に保たれる故障である場合は、
    前記自動マニュアルトランスミッションを動力伝達可能状態にするのを指令する走行レンジが選択されている間、
    該走行レンジによる走行方向が、前記始動時変速段投入状態と自動クラッチ締結保持故障との組み合わせによる走行方向と同じであれば、前記自動クラッチ断接制御およびシフト動作用の前記作動油供給を許可して前記エンジン始動時変速段投入状態を解除し、逆であれば、前記自動クラッチ断接制御およびシフト動作用の前記作動油供給を禁止して車両が動き始めるのを防止するようにした走行レンジ時異常対策手段を設けたことを特徴とする、自動マニュアルトランスミッションの異常時自動変速制御装置。
  6. 自動マニュアルトランスミッションが、変速段を複数グループに分けられて、各変速段グループごとに前記自動クラッチを有したものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の自動マニュアルトランスミッションの異常時自動変速制御装置において、
    前記始動時変速段投入状態検知手段および自動クラッチ締結保持故障検知手段による検知結果に基づき、エンジン始動時に自動マニュアルトランスミッションが変速段投入状態であって、且つ、クラッチ制御圧が自動クラッチを締結状態にしたままとなす圧力値に保たれる故障である場合は、
    前記自動マニュアルトランスミッションを動力伝達可能状態にするのを指令する走行レンジが選択されている間、
    該走行レンジによる走行方向が、前記始動時変速段投入状態と自動クラッチ締結保持故障との組み合わせによる走行方向と同じであれば、前記自動クラッチ断接制御およびシフト動作用の前記作動油供給を許可して前記エンジン始動時変速段投入状態を解除し、逆であれば、前記自動クラッチ断接制御およびシフト動作用の前記作動油供給を禁止して車両が動き始めるのを防止するようにした走行レンジ時異常対策手段を設け、
    該走行レンジ時異常対策手段は、前記エンジン始動時変速段投入状態を解除した後、前記締結保持故障を生じていない自動クラッチに係わる変速段グループ内での変速段の切り替えにより自動マニュアルトランスミッションを自動変速させる異常対策をも行うものであることを特徴とする、自動マニュアルトランスミッションの異常時自動変速制御装置。
  7. 自動マニュアルトランスミッションが、自動クラッチを介してエンジン回転を入力され、エンジン駆動されるポンプからの作動油を媒体として変速段圧発生手段が作り出した変速段圧によるシフト動作で所定変速段を実現可能で、該実現された所定変速段で入力回転を変速して出力し、前記変速段圧をもとにクラッチ圧制御手段が作り出したクラッチ制御圧による前記自動クラッチの断接制御と、前記変速段圧によるシフト動作とで、変速段の自動切り替えを行うようにした、請求項1〜6のいずれか1項に記載の自動マニュアルトランスミッションの異常時自動変速制御装置において、
    前記中立レンジ時異常対策手段、駐車レンジ時異常対策手段、走行レンジセレクト時異常対策手段、駐車レンジセレクト時異常対策手段、および走行レンジ時異常対策手段は、前記変速段圧発生手段を変速段圧非発生状態、または変速段圧発生状態にして前記異常対策制御を遂行するものであることを特徴とする、自動マニュアルトランスミッションの異常時自動変速制御装置。
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