JP5052736B2 - タンパク質製剤 - Google Patents
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Description
技術分野
本発明は、安定性が向上したタンパク質製剤に関する。さらに詳しくは、本発明は、酢酸緩衝液、イミダゾール緩衝液、2−モルホリノエタンスルホン酸緩衝液及び3−モルホリノプロパンスルホン酸緩衝液などの緩衝液を用いることによって、抗体などの生理活性タンパク質の高濃度溶液状態における安定性を向上させることに関する。
背景技術
遺伝子組換え技術の発達によって、抗体、酵素、ホルモン、サイトカイン等の生理活性を有するタンパク質についても医薬品として利用することが可能となってきた。これらを安定した供給量でかつ高品質に提供するためには、構造及び活性を保持しうる製造条件及び保存条件を確立することが必要とされている。
【0002】
一般に、タンパク質を高濃度溶液にて保存する場合、不溶性凝集体の生成を始めとする劣化現象が問題となり、それを防止する必要がある。
例えば、免疫グロブリン、モノクローナル抗体、ヒト型化抗体等の抗体は不安定なタンパク質であり、精製工程において実施するウイルス除去のための濾過ストレス、濃縮ストレス、熱ストレスなどによって会合、凝集などの物理的、化学的変化を生じやすい。
【0003】
これまでに、タンパク質の劣化を抑制し安定に保存する方法として、凍結乾燥による安定化が広く用いられている。しかし、凍結時及び凍結乾燥時のメカニカルストレスにより変性或いは化学変化が起きる可能性があり、それを回避するために何らかの凍結保護剤を添加する必要があった。
【0004】
また、化学的、物理的変化を抑制するための安定化剤としてヒト血清アルブミンあるいは精製ゼラチンなどのタンパク質といった高分子類或いはポリオール類、アミノ酸及び界面活性剤等といった低分子類を添加することによる安定化効果が見出されている。しかしながら、タンパク質のような生体由来の高分子を安定化剤として添加することは、その安定化剤に由来するウイルス等のコンタミを除去するために非常に煩雑な工程を必要とするなどの問題があった。また、ウイルスの不活性化を目的として加熱処理を行うときに、熱ストレスにより会合、凝集などの問題を生じることがあった。
【0005】
さらに、タンパク質溶液における不溶性凝集体の生成については、変性したタンパク質即ち変性中間体の生成がその原因になっており、不溶性凝集体の生成を抑制する方法の開発が望まれていた。
【0006】
本発明の目的は、抗体、酵素、ホルモン、サイトカイン等の生理活性を有するタンパク質の高濃度溶液状態における安定性を向上させ、変性中間体や不溶性凝集物の生成を抑制して、安定な生理活性タンパク質含有製剤を提供することである。
発明の開示
上記目的を達成するために鋭意研究した結果、本発明者らは、酢酸緩衝液、イミダゾール緩衝液、アミノエタンスルホン酸もしくはその誘導体の緩衝液及びアミノプロパンスルホン酸もしくはその誘導体の緩衝液からなる群から選択される1種以上の緩衝液、特にpH値が約5〜7の前記緩衝液中においてタンパク質の安定性が向上し、変性中間体の生成を抑制し、さらに不溶性凝集体の生成を抑制できることを発見して本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は以下のものを提供する:
(1)酢酸緩衝液、イミダゾール緩衝液、アミノエタンスルホン酸もしくはその誘導体の緩衝液及びアミノプロパンスルホン酸もしくはその誘導体の緩衝液からなる群から選択される1種以上の緩衝液中に生理活性タンパク質を含む、安定性が向上したタンパク質製剤;
(2)緩衝液のpH値が5〜7の範囲である前記(1)記載のタンパク質製剤;
(3)アミノエタンスルホン酸もしくはその誘導体が2−モルホリノエタンスルホン酸(MES)、N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(BES)、2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸(HEPES)、ピペラジン−1,4−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)及びN−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸(TES)からなる群から選択される前記(1)又は(2)記載のタンパク質製剤;
(4)アミノプロパンスルホン酸もしくはその誘導体が3−モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)、2−ヒドロキシ−3−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]プロパンスルホン酸(HEPPSO)、2−ヒドロキシ−3−モルホリノプロパンスルホン酸(MOPSO)及びピペラジン−1,4−ビス(2−ヒドロキシ−3−プロパンスルホン酸)(POPSO)からなる群から選択される前記(1)又は(2)記載のタンパク質製剤;
(5)タンパク質が、抗体、酵素、サイトカイン、ホルモンから選択される前記(1)又は(2)記載のタンパク質製剤;
(6)タンパク質が抗体である前記(5)記載のタンパク質製剤;
(7)抗体がモノクローナル抗体である前記(6)記載のタンパク質製剤;
(8)モノクローナル抗体がヒト型化抗体である前記(7)記載のタンパク質製剤;
(9)酢酸緩衝液、イミダゾール緩衝液、アミノエタンスルホン酸もしくはその誘導体の緩衝液及びアミノプロパンスルホン酸もしくはその誘導体の緩衝液からなる群から選択される1種以上の緩衝液中に生理活性タンパク質を溶解することを含む、タンパク質製剤の安定性を向上させる方法;及び
(10)酢酸緩衝液、イミダゾール緩衝液、アミノエタンスルホン酸もしくはその誘導体の緩衝液及びアミノプロパンスルホン酸もしくはその誘導体の緩衝液からなる群から選択される1種以上の緩衝液中に生理活性タンパク質を含む状態でタンパク質含有試料の加熱処理を行うことを特徴とする、タンパク質含有試料を加熱処理するときの安定化方法。
(11)酢酸緩衝液、イミダゾール緩衝液、アミノエタンスルホン酸もしくはその誘導体の緩衝液及びアミノプロパンスルホン酸もしくはその誘導体の緩衝液からなる群から選択される1種以上の緩衝液中に抗体を溶解することを含む、前記抗体のFc部分の安定性方法。
発明を実施するための最良の形態
本発明における生理活性タンパク質は、抗体、酵素、サイトカイン、ホルモンを含むがこれに限定されない。具体的には、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、エリスロポエチン(EPO)、トロンボポエチン等の造血因子、インターフェロン、IL-1やIL-6等のサイトカイン、免疫グロブリン、モノクローナル抗体、ヒト型化抗体、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼ、血清アルブミン、血液凝固第VIII因子、レプチン、インシュリン、幹細胞成長因子(SCF)などを含むが、これらに限定されない。タンパク質の中でも、免疫グロブリンが好ましく、さらに好ましくはモノクローナル抗体、ヒト型化抗体である。
【0008】
生理活性タンパク質とは、哺乳動物、特にヒトの生理活性タンパク質と実質的に同じ生物学的活性を有するものであり、天然由来のもの、および遺伝子組換え法により得られたものを含むが、好ましいのは遺伝子組換え法により得られたものである。遺伝子組換え法によって得られるタンパク質には天然タンパク質とアミノ酸配列が同じであるもの、あるいは該アミノ酸配列の1又は複数を欠失、置換、付加したもので前記生物学的活性を有するものを含む。さらには、生理活性タンパク質はPEG等により化学修飾されたものも含む。
【0009】
生理活性タンパク質がモノクローナル抗体である場合には、モノクローナル抗体はいかなる方法で製造されたものでもよい。モノクローナル抗体は、基本的には公知技術を使用し、感作抗原を通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな抗体産生細胞をスクリーニングすることによって作成できる。さらに、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体に限られるものではなく、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変されたキメラ抗体を含む。あるいは再構成(reshaped)したヒト型化抗体を本発明に用いることもできる。これはヒト以外の哺乳動物、たとえばマウス抗体の相補性決定領域によりヒト抗体の相補性決定領域を置換したものであり、その一般的な遺伝子組換手法も知られている。その既知方法を用いて、再構成ヒト型化抗体を得ることができる。
【0010】
なお、必要に応じ、再構成ヒト型化抗体の相補性決定領域が適切な抗原結合部位を形成するように抗体の可変領域のフレームワーク(FR)領域のアミノ酸を置換してもよい(Satoら、Cancer Res.53:1−6,1993)。このような再構成ヒト型化抗体としてヒト型化抗IL−6レセプター抗体(hPM−1)が好ましく例示される(国際特許出願公開番号WO92−19759を参照)。また、ヒト型化抗HM1.24抗原モノクローナル抗体(国際特許出願公開番号WO98−14580を参照)、ヒト型化抗副甲状腺ホルモン関連ペプチド抗体(抗PTHrP抗体)(国際特許出願公開番号WO98−13388を参照)、ヒト型化抗組織因子抗体(国際特許出願公開番号WO99−51743を参照)なども本発明で使用する好ましい抗体である。
【0011】
さらに、トランスジェニック動物等によって作製されたヒト抗体も好ましい。
さらに、抗体にはFab, (Fab')2, Fc, Fc', Fdなどの抗体断片や、1価又は2価以上の一本鎖抗体(scFV)などの再構成したものも含む。
【0012】
本発明では、生理活性タンパク質含有試料もしくは抗体含有試料とは、生体由来タンパク質もしくは抗体であるか、あるいは組換えタンパク質もしくは抗体であるかを問わず、いかなるタンパク質もしくは抗体を含む試料であってもよく、好ましくは、培養により得られた生理活性タンパク質もしくは抗体を含むCHO細胞などの哺乳動物細胞の培養培地、あるいはこれに部分的精製などの一定の処理を施したものをいう。
【0013】
本発明者らは、抗体含有試料の熱処理による変性に寄与するさまざまな因子を検討した。その結果、酢酸緩衝液、イミダゾール緩衝液、アミノエタンスルホン酸もしくはその誘導体の緩衝液又はアミノプロパンスルホン酸もしくはその誘導体の緩衝液中に抗体を溶解して、80℃−2時間又は60℃−2週間又は4週間の熱処理を施したとき、リン酸緩衝液又はクエン酸緩衝液に比べて、可溶性会合体である変性中間体の生成が少なく、変性現象が抑制され、さらに不溶性凝集体の生成が見られないことから、安定化効果が大きいことを発見した。特に、これらの緩衝液を使用すると、変性中間体から不溶性凝集体へのさらなる凝集化が抑制されることが観察された。
【0014】
本発明のタンパク質製剤では酢酸緩衝液、イミダゾール緩衝液、アミノエタンスルホン酸もしくはその誘導体の緩衝液及びアミノプロパンスルホン酸もしくはその誘導体の緩衝液からなる群から選択される1種以上の緩衝液中に生理活性タンパク質及び以下に記載する各種成分を溶解することによって調製する。これらの緩衝液は単独で用いても、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
アミノエタンスルホン酸もしくはその誘導体として好ましいものは、2−モルホリノエタンスルホン酸(MES)、N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(BES)、2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸(HEPES)、ピペラジン−1,4−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)及びN−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸(TES)を挙げることができるが、これに限定されず、pKaが約5〜8のものであれば使用できる。最も好ましいのは2−モルホリノエタンスルホン酸(MES)である。
【0016】
アミノプロパンスルホン酸もしくはその誘導体として好ましいものは、3−モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)、2−ヒドロキシ−3−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]プロパンスルホン酸(HEPPSO)、2−ヒドロキシ−3−モルホリノプロパンスルホン酸(MOPSO)及びピペラジン−1,4−ビス(2−ヒドロキシ−3−プロパンスルホン酸)(POPSO)を挙げることができるが、これに限定されず、pKaが約5〜8のものであれば使用できる。最も好ましいのは3−モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)である。
【0017】
緩衝液のpHは5.0〜8.0であることが好ましく、5.0〜7.0であることがより好ましく、5.5〜6.5がさらに好ましい。緩衝液の濃度は一般に1〜500mM、好ましくは5〜100mM、さらに好ましくは5〜30mM、最も好ましくは10〜20mMである。
【0018】
本発明で用いる緩衝液はどのような方法で調製してもよい。一般には所定量の試薬(好ましくは特級試薬)を精製水に溶解した後、塩酸、水酸化ナトリウムなどを用いてpHを調整する。以下に各緩衝液の調製法の一例を示すが、本発明はこれに限定されない。
酢酸緩衝液:
0.90gの酢酸を約900mLの精製水に溶かし、1M水酸化ナトリウム溶液でpHを調節し、全量を1Lとする。
イミダゾール緩衝液:
1.02gのイミダゾールを約900mLの精製水に溶かし、1M塩酸溶液でpHを調節し、全量を1Lとする。
2−モルホリノエタンスルホン酸(MES)緩衝液:
3.20gの2−モルホリノエタンスルホン酸1水和物を約900mLの精製水に溶かし、1M水酸化ナトリウム溶液でpHを調節し、全量を1Lとする。
3−モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)緩衝液:
3.14gの3−モルホリノプロパンスルホン酸を約900mLの精製水に溶かし、1M水酸化ナトリウム溶液でpHを調節し、全量を1Lとする。
【0019】
本発明の製剤には界面活性剤をさらに含むことができる。界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、例えばソルビタンモノカプリレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート等のソルビタン脂肪酸エステル;グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノミリステート、グリセリンモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル;デカグリセリルモノステアレート、デカグリセリルジステアレート、デカグリセリルモノリノレート等のポリグリセリン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビットテトラステアレート、ポリオキシエチレンソルビットテトラオレエート等のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル;ポリオキシエチレングリセリルモノステアレート等のポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールジステアレート等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンプロピルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル等のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル;ポリオキシエチエレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン水素ヒマシ油)等のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;ポリオキシエチレンソルビットミツロウ等のポリオキシエチレンミツロウ誘導体;ポリオキシエチレンラノリン等のポリオキシエチレンラノリン誘導体;ポリオキシエチレンステアリン酸アミド等のポリオキシエチレン脂肪酸アミド等のHLB6〜18を有するもの;陰イオン界面活性剤、例えばセチル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム等の炭素原子数10〜18のアルキル基を有するアルキル硫酸塩;ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム等の、エチレンオキシドの平均付加モル数が2〜4でアルキル基の炭素原子数が10〜18であるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩;ラウリルスルホコハク酸エステルナトリウム等の、アルキル基の炭素原子数が8〜18のアルキルスルホコハク酸エステル塩;天然系の界面活性剤、例えばレシチン、グリセロリン脂質;スフィンゴミエリン等のフィンゴリン脂質;炭素原子数12〜18の脂肪酸のショ糖脂肪酸エステル等を典型的例として挙げることができる。本発明の製剤には、これらの界面活性剤の1種または2種以上を組み合わせて添加することができる。
【0020】
好ましい界面活性剤はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルであり、特に好ましいのはポリソルベート20、21、40、60、65、80、81、85であり、最も好ましいのはポリソルベート20及び80である。
【0021】
本発明の製剤には、安定化剤として種々のアミノ酸を添加することもできる。また、等張化剤としてさらに、ポリエチレングリコール;デキストラン、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、グルコース、フラクトース、ラクトース、キシロース、マンノース、マルトース、ラフィノースなどの糖類を用いることができる。
【0022】
本発明のタンパク質製剤には、所望によりさらに希釈剤、溶解補助剤、賦形剤、pH調整剤、無痛化剤、緩衝剤、含硫還元剤、酸化防止剤等を含有してもよい。例えば、含硫還元剤としては、N−アセチルシステイン、N−アセチルホモシステイン、チオクト酸、チオジグリコール、チオエタノールアミン、チオグリセロール、チオソルビトール、チオグリコール酸及びその塩、チオ硫酸ナトリウム、グルタチオン、並びに炭素原子数1〜7のチオアルカン酸等のスルフヒドリル基を有するもの等が挙げられる。また、酸化防止剤としては、エリソルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、α−トコフェロール、酢酸トコフェロール、L−アスコルビン酸及びその塩、L−アスコルビン酸パルミテート、L−アスコルビン酸ステアレート、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、没食子酸トリアミル、没食子酸プロピルあるいはエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム等のキレート剤が挙げられる。さらには、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、炭酸水素ナトリウムなどの無機塩;クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、酢酸ナトリウムなどの有機塩などの通常添加される成分を含んでいてよい。
【0023】
本発明のタンパク質製剤は通常非経口投与経路で、例えば注射剤(皮下注、静注、筋注、腹腔内注など)、経皮、経粘膜、経鼻、経肺などで投与されるが、経口投与も可能である。
【0024】
本発明のタンパク質製剤は、溶液製剤であっても、使用前に溶解再構成するために凍結乾燥したものであってもよい。凍結乾燥のための賦形剤としては例えばマンニトール、ブドウ糖などの糖アルコールや糖類を使用することが出来る。溶液製剤である場合には、本発明のタンパク質製剤は、通常密封、滅菌されたプラスチック又はガラス製のバイアル、アンプル、注射器のような規定容量の形状の容器、ならびに瓶のような大容量の形状の容器で供給することができる。
【0025】
本発明の製剤中に含まれる生理活性タンパク質の量は、使用する生理活性タンパク質の種類、治療すべき疾患の種類、疾患の重症度、患者の年齢などに応じて決定できる。
【0026】
一般的には、本願製剤、または糖類を添加した後の注射用組成物の全体量に対して、0.01μg〜200mg/ml、好ましくは0.5μg〜100mg/mlの生理活性タンパク質を含む。例えば免疫グロブリン、モノクローナル抗体、ヒト型化抗体などの抗体である場合には、一般には最終投与濃度で0.1〜200mg/ml、好ましくは1〜200mg/ml、さらに好ましくは10〜200mg/ml、最も好ましくは10〜150mg/mlである。本発明のタンパク質製剤は、特に生理活性タンパク質を10mg/ml以上含む高濃度タンパク質溶液であるときに顕著に安定化効果を示す。
【0027】
本発明のタンパク質含有試料中に含まれる生理活性タンパク質の量は、試料の全体量に対して、0.01μg〜200mg/ml、好ましくは0.5μg〜100mg/mlの生理活性タンパク質を含む。例えば免疫グロブリン、モノクローナル抗体、ヒト型化抗体などの抗体である場合には、一般には最終投与濃度で0.1〜200mg/ml、好ましくは1〜200mg/ml、さらに好ましくは10〜200mg/ml、最も好ましくは10〜150mg/mlである。
【0028】
本発明の生理活性タンパク質製剤の安定性を、抗体試料を用いて蛍光スペクトル(Trp残基、ANS結合性)、陽イオン交換HPLC、ゲル濾過HPLC及びSDS−PAGEにより試験した。
【0029】
その結果、イミダゾール緩衝液、酢酸緩衝液、2−モルホリノエタンスルホン酸緩衝液(MES)及び3−モルホリノプロパンスルホン酸緩衝液(MOPS)について80℃−2時間処理後における可溶性凝集体である変性中間体の生成は少なく、変性現象の抑制効果が認められた。一方、60℃−4週間処理後におけるイミダゾール、MES及びMOPS緩衝液の熱変性中間体の生成量はリン酸と比べて多かったが、不溶性凝集体の生成は見られなかった。従って、これらの緩衝液については変性中間体から不溶性凝集体へのさらなる凝集化が抑制されているものと考えられた。
【0030】
また、SDS−PAGEにおいて、凝集化したサンプルを2−メルカプトエタノールで還元した系で測定することにより(還元系SDS−PAGE)、単量体と同様の泳動パターンを示すことから、凝集体中における共有結合は大部分がジスルフィド結合であることが判明した。しかし、60℃処理後においては還元系においても高分子量側にバンドの生成が認められることから、一部はジスルフィド結合以外の共有結合の形成が示唆された。
【0031】
一方、リン酸緩衝液及びMES緩衝液について、pHが生理活性蛋白質の安定性に及ぼす影響を評価するために抗体試料を用いて60℃処理後に見られる熱変性現象及び化学変化を評価した。
【0032】
熱変性現象については、陽イオン交換HPLC、ゲルろ過HPLC及びANS結合性蛍光スペクトルを指標としたが、60℃−4週間処理後における熱変性はpH6付近において最も抑制されていた。このことは、示差走査熱量分析の結果から説明することができた。即ち、酸性条件下では3段階からなる各変性中点温度が低いことが、塩基性条件下では変性後における中間体の高い凝集化傾向が熱安定性の低下要因となっているものと考えられた。
【0033】
化学変化については、SDS-PAGE、アンモニア生成量及びアスパラギン酸(アスパラギンを含む)の異性化を指標として評価した結果、酸性条件下ではH鎖上における272番目のアスパラギン酸残基と273番目のプロリン残基(Asp-Pro)間の加水分解が極めて起こりやすく、アスパラギン酸残基の異性化反応も起こりやすいことが示された。また、塩基性条件下では、アスパラギン及びグルタミン残基の脱アミド化のみならず、アスパラギン酸残基の異性化も起こりやすいことがわかった。これらの結果から、化学変化を最も抑制できる条件は中性付近であることが確認できた。なお、Asp-Pro配列の加水分解速度が対応するペプチドの約1/10であったことから、蛋白質の高次構造を保持することは化学変化の抑制に対して重要であることが示唆された。
【0034】
さらに、抗体断片(Fab及びFc断片)を用いて、60℃処理後におけるゲル濾過HPLC及びANS結合性蛍光スペクトル測定を行った結果から、Fab断片では、緩衝液の種類にかかわらず、熱処理後においてほとんど変性していなかったが、Fc断片では、抗体全体の場合と同様に熱変性現象に対する緩衝液種類の影響が見られ、酢酸及びMES緩衝液はリン酸及びクエン酸緩衝液と比較して熱変性が抑制されていることがわかった。また、示差走査熱量分析計により熱変性温度の評価及び熱変性現象の可逆性評価を行った結果から、Fabドメインだけでは何れの緩衝液を用いても変性後の凝集化は見られなかったことから、抗体全体の凝集化に対して大きく影響を及ぼしている部分はFcドメインであること、及び抗体全体の変性現象はFab及びFcドメインの単なる和とはならず、両ドメイン間の相互作用による影響を受けていることが示唆された。
【0035】
これらの結果から、本発明の生理活性タンパク質製剤が極めて優れた安定性効果をもつものであることが判明した。
従って、本発明は酢酸緩衝液、イミダゾール緩衝液、アミノエタンスルホン酸もしくはその誘導体の緩衝液及びアミノプロパンスルホン酸もしくはその誘導体の緩衝液からなる群から選択される1種以上の緩衝液中に生理活性タンパク質を溶解することを含む、タンパク質製剤の安定性を向上させる方法を提供する。
【0036】
本発明はさらに、酢酸緩衝液、イミダゾール緩衝液、アミノエタンスルホン酸もしくはその誘導体の緩衝液及びアミノプロパンスルホン酸もしくはその誘導体の緩衝液からなる群から選択される1種以上の緩衝液中に生理活性タンパク質を含む状態でタンパク質含有試料の加熱処理を行うことを特徴とする、タンパク質含有試料を加熱処理するときの安定化方法を提供する。本発明の安定化方法は、タンパク質製剤の精製工程において実施するウイルス除去のための加熱処理などにおいて特に有用である。
【0037】
本発明を以下の実施例によってさらに詳しく説明するが、本発明の範囲はこれに限定されない。本発明の記載に基づき種々の変更、修飾が当業者には可能であり、これらの変更、修飾も本発明に含まれる。
【0038】
【実施例】
実施例1:緩衝液の種類、pHの熱安定性に及ぼす効果
1−1.試料溶液の調製
測定にはヒト型化抗IL−6受容体抗体を使用した。ヒト型化抗IL−6受容体抗体の作製方法はWO92/19759に記載されており、本発明ではWO92/19759記載のL鎖バージョン「a」とH鎖バージョン「f」から成るものを使用した。この抗体はCHO細胞を用いて遺伝子組換え法で生産したものである。
【0039】
ヒト型化抗IL−6受容体抗体原液(約40mg/mL、pH6.5)を15mMリン酸緩衝液(pH6.5)により希釈し、抗体濃度10mg/mLの試料溶液を調製し、2mLずつガラスアンプルに充填し、熔閉密封した(試料1:リン酸緩衝液、pH6.5)。なお、ここでいうpHは試料調製後の試料pHである。
【0040】
抗体濃度10mg/mLの溶液を、以下に示した緩衝液を外液とした透析を行うことにより緩衝剤種類の異なる試料溶液を調整し、2mLずつガラスアンプルに充填し、熔閉密封した。なお、緩衝剤濃度は何れも15mMとした。
【0041】
・試料2:リン酸緩衝液、pH5.5
・試料3:クエン酸緩衝液、pH6.5
・試料4:クエン酸緩衝液、pH5.5
・試料5:イミダゾール緩衝液、pH6.5
・試料6:酢酸緩衝液、pH5.5
・試料7:2−モルホリノエタンスルホン酸(MES)、pH6.5
・試料8:2−モルホリノエタンスルホン酸(MES)、pH5.5
・試料9:3−モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)、pH6.5
これらの試料溶液を80℃−2時間及び60℃−2,4週間の条件にて熱処理し、安定性の評価に供した。
1−2.評価方法
以下の方法で熱処理した試料について物性評価を行い、安定性を比較した。
1−2−1.タンパク質自身の蛍光スペクトル測定(トリプトファン残基)
15mMリン酸緩衝液(pH6.5)により抗体濃度が133μg/mL(0.89μM)となるように希釈し、測定試料とした。測定試料約1.5mLを蛍光セルに加え、波長280nmの励起光で280〜400nmの蛍光スペクトルを測定した。この測定はトリプトファン残基の存在状態を測定するものである。タンパク質が変性すると、疎水性残基であるトリプトファン残基の存在状態が変化することにより、蛍光強度が増大し、かつ最大蛍光波長が高波長側にシフトする。
【0042】
使用機器:分光蛍光光度計F−2000(日立製作所)
1−2−2.ANS結合性蛍光スペクトル測定
15mMリン酸緩衝液(pH6.5)により抗体濃度が667μg/mL(0.89μM)となるように希釈し、本希釈溶液900μLに0.4M 1−アニリノ−8−ナフタレンスルフォネート(ANS)溶液300μLを加え、測定試料とした。全量を蛍光セルにとり、波長365nmの励起光で450〜550nmの蛍光スペクトル及び蛍光強度を測定した。ANSはタンパク質表面の疎水性を示す部分に結合する特性を有しており、結合時に蛍光を発する。従って、本測定では、蛍光強度を指標として、タンパク質表面の疎水性を測定するものである。
【0043】
使用機器:分光蛍光光度計F−2000(日立製作所)
1−2−3.陽イオン交換HPLC
以下の分析条件で各試料を測定した。
【0044】
使用カラム :Resourse S 1mL(Pharmacia)
移動相 :以下の2種類の緩衝液を用いた直線グラジエント
A液:20mM MES(pH6.0)
B液:20mM MES(pH6.0)−0.5M塩化ナトリウム
time(min) A(%) B(%)
0 100 0
60 0 100
65 0 100
66 100 0
流速 :1mL/min
測定波長 :280nm
試料注入量 :抗体にして10〜30μg
HPLC装置:Module−I(Waters)
1−2−4.ゲル濾過HPLC
以下の分析条件で各試料を測定した。
【0045】
ガードカラム:TSK−guardcolumn SWXL(東ソー)
分離カラム :TSK−gel G4000SWXL(東ソー)
移動相 :50mMリン酸緩衝液(pH7.0)−0.3M塩化ナトリウム
流速 :1mL/min
測定波長 :280nm
試料注入量 :抗体にして10〜30μg
HPLC装置:Module−I(Waters)
1−2−5.SDS−PAGE
10%SDSを含む試料希釈緩衝液中の抗体1μg相当をポリアクリルアミドゲル(還元系12%、非還元系8%)にアプライし、最大電圧200V、最大電流200mAにて約40分間泳動させた。
【0046】
バンドの染色はクマジブリリアントブルーにより行った。
2.結果
2−1.蛍光スペクトル(Trp残基)、蛍光スペクトル(ANS結合性)
以下の表1に80℃−2時間熱処理後におけるそれぞれの測定結果を示した。
【0047】
【表1】
【0048】
熱処理を施したサンプルは熱変性現象により何れの蛍光スペクトルについても蛍光強度が増大した。なお、熱処理をしなかったコントロールの蛍光スペクトル(Trp残基)は約4500、蛍光スペクトル(ANS結合性)は約250であった。
【0049】
リン酸及びクエン酸緩衝液と比較して、イミダゾール、酢酸、MES及びMOPS緩衝液について、何れの蛍光スペクトルについても80℃−2時間後の蛍光強度は低い値となり、変性が抑制されていることが示された。
【0050】
また、同一緩衝液についてpH6.5と5.5の間を比較すると、pH5.5の方が変性を抑制できていた。
図1に60℃−2、4週間熱処理後におけるANS結合性の測定結果を示す。
【0051】
リン酸及びクエン酸緩衝液と比較してイミダゾール、酢酸、MES及びMOPS緩衝液は変性が抑制できていることが示された。また、イミダゾール、酢酸、MES及びMOPS緩衝液を使用した試料では不溶性凝集物が観察されなかった。
【0052】
同一緩衝液についてpH6.5と5.5の間を比較すると、80℃の場合と異なり、pH5.5の方が高いANS結合性を示した。
2−2.陽イオン交換HPLC
以下の表2に80℃−2時間熱処理後における測定結果を示した。
【0053】
【表2】
【0054】
80℃−2時間の熱処理により、未変性体のピーク面積は減少し、その代わりに変性中間体のピークが生成した。
リン酸及びクエン酸緩衝液と比較して、イミダゾール、酢酸、MES及びMOPS緩衝液について、80℃−2時間後における未変性体残存量は高く、変性中間体の生成は抑制されていた。
【0055】
また、同一緩衝液についてpH6.5と5.5の間を比較すると、pH5.5の方が未変性体残存量は高く、変性中間体の生成は抑えられていた。
図2、図3に60℃−2、4週間処理後における測定結果を示す。
【0056】
リン酸及びクエン酸緩衝液と比較してイミダゾール、酢酸、MES及びMOPS緩衝液は未変性体の残存量が高く、変性中間体の生成が抑制されていた。なお、イミダゾール、酢酸、MES及びMOPS緩衝液を用いた試料では、不溶性凝集物が観察されなかった。
【0057】
一方、同一緩衝液についてpH6.5と5.5の間を比較すると、80℃の場合と異なり、低pHである5.5の方が未変性体の残存が少なく、変性中間体の生成量が高い結果となった。
2−3.ゲル濾過HPLC
以下の表3に80℃−2時間熱処理後における測定結果を示した。
【0058】
【表3】
【0059】
80℃−2時間の熱処理により、未変性体に対応する単量体のピーク面積は減少し、その代わりに高分子量側に変性中間体に相当する可溶性凝集体のピークが生成した。
【0060】
リン酸及びクエン酸緩衝液と比較して、イミダゾール、酢酸、MES及びMOPS緩衝液について、80℃−2時間後における単量体残存量は高く、可溶性凝集体の生成は抑制されていた。
【0061】
また、同一緩衝液についてpH6.5と5.5の間を比較すると、pH5.5の方が可溶性凝集体の生成は抑えられていた。
図4、図5に60℃−2、4週間処理後における測定結果を示す。
【0062】
リン酸及びクエン酸緩衝液と比較してイミダゾール、酢酸、MES及びMOPS緩衝液は単量体の残存量が高く、可溶性凝集体の生成は抑制されていた。なお、イミダゾール、酢酸、MES及びMOPS緩衝液を用いた試料では、不溶性凝集物が観察されなかった。
【0063】
一方、同一緩衝液についてpH6.5と5.5の間を比較すると、80℃の場合と異なり、低pHである5.5の方が単量体の残存が少なく、可溶性凝集体生成量が多い結果となった。
2−4.SDS−PAGE
80℃−2時間の熱処理後におけるSDS−PAGEの結果から、非還元系において、高分子量側にバンドの生成が見られ、共有結合性会合体の生成が示唆された。しかし、還元系では未処理品と差は見られないことからジスルフィド結合による共有結合であるものと考えられた。
【0064】
リン酸及びクエン酸緩衝液と比較して、イミダゾール、酢酸、MES及びMOPS緩衝液について、80℃−2時間後における高分子量側のバンドは薄く、共有結合性会合体の生成は抑制されていた。
【0065】
また、同一緩衝液についてpH6.5と5.5の間を比較すると、pH5.5の方が共有結合性会合体の生成は抑えられていた。
60℃−4週間熱処理後におけるSDS−PAGEの結果から、リン酸及びクエン酸緩衝液と比較してイミダゾール、酢酸、MES及びMOPS緩衝液の高分子量側バンドは薄く、共有結合性会合体の生成は抑制されていた。また、2−メルカプトエタノールにより測定試料を還元した測定結果(還元系SDS−PAGE)においても未処理品と比較して高分子量側に僅かながらバンドを認めたことから、大部分の共有結合はジスルフィド結合であるが、それ以外の化学変化が生じているものと考えられた。
【0066】
同一緩衝液についてpH6.5と5.5の間を比較すると、80℃の場合と異なり、低pHである5.5の方が非還元系において高分子量側のバンドが濃く、共有結合性会合体生成量が多い結果となった。
実施例2:pHの熱安定性に及ぼす影響
1−1.試料溶液の調製
測定には実施例1に記載のヒト型化抗IL-6受容体抗体を使用した。ヒト型化抗IL-6受容体抗体原液(約40mg/mL、pH6.5)を精製水に対して透析を行った後、緩衝剤成分を加え、精製水にて希釈することにより、以下に示した抗体濃度10mg/mLの試料溶液を調製した。各試料は2mLずつガラスアンプルに充填し、熔閉密封した。
【0067】
・試料1:15mM リン酸緩衝液、pH4
・試料2:15mM リン酸緩衝液、pH5
・試料3:15mM リン酸緩衝液、pH6
・試料4:15mM リン酸緩衝液、pH6.5
・試料5:15mM リン酸緩衝液、pH7
・試料6:15mM リン酸緩衝液、pH8
・試料7:15mM リン酸緩衝液、pH9
・試料8:15mM モルホリノエタンスルホン酸(MES)緩衝液、pH4
・試料9:15mM MES緩衝液、pH5
・試料10:15mM MES緩衝液、pH6
・試料11:15mM MES緩衝液、pH6.5
・試料12:15mM MES緩衝液、pH7
・試料13:15mM MES緩衝液、pH8
・試料14:15mM MES緩衝液、pH9
これらの試料溶液を60℃-4週間の条件にて熱処理し、安定性の評価に供した。
1−2.評価方法
以下の方法で熱処理した試料について物性評価を行い、安定性を比較した。
1−2−1.ANS結合性蛍光スペクトル測定
15mMリン酸緩衝液(pH6.5)により抗体濃度が667μg/mL(0.89μM)となるように希釈し、本希釈溶液900μLに0.4M 1-アニリノ-8-ナフタレンスルフォネート(ANS)溶液300μLを加え、測定試料とした。全量を蛍光セルにとり、波長365nmの励起光で450〜550nmの蛍光スペクトル及び蛍光強度を測定した。
【0068】
使用機器:分光蛍光光度計F-2000(日立製作所)
1−2−2.陽イオン交換HPLC
以下の分析条件で各試料を測定した。
【0069】
使用カラム :Resourse S 1mL(Pharmacia)
移動相 :以下の2種類の緩衝液を用いた直線グラジエント
A液:20mM モルホリノエタンスルホン酸(pH6.0)
B液:20mM モルホリノエタンスルホン酸(pH6.0)-0.5M塩化ナトリウム
Time(min) A(%) B(%)
0 100 0
60 0 100
65 0 100
66 100 0
流速 :1mL/min
測定波長 :280nm
試料注入量 :抗体にして10〜30μg
HPLC装置 :Module-I(Waters)
1−2−3.ゲル濾過HPLC
以下の分析条件で各試料を測定した。
【0070】
ガードカラム:TSK-guardcolumn SWXL(東ソー)
分離カラム :TSK-gel G4000SWXL(東ソー)
移動相 :50mMリン酸緩衝液(pH7.0)-0.3M塩化ナトリウム
流速 :1mL/min
測定波長 :280nm
試料注入量 :抗体にして10〜30μg
HPLC装置:Module-I(Waters)
1−2−4.SDS−PAGE
予め2-メルカプトエタノールにより還元した10% SDSを含む試料希釈緩衝液中の抗体1μg相当をポリアクリルアミドゲル(12%)にアプライし、最大電圧200V、最大電流200mAにて約40分間泳動させた。バンドの染色はクマジブリリアントブルーにより行った。
【0071】
また、染色後のゲルをフォトスキャナーにより画像ファイルとして取り込み、コンピューター上においてH鎖に対応するバンドの濃さ(濁度)を画像解析ソフトScion-Imageにて算出することにより、H鎖の対Initial残存率を算出した。
【0072】
フォトスキャナー:GT-7000U(セイコーエプソン)
1−2−5.アンモニア濃度
アンモニア濃度はグルタミン酸脱水素酵素による酵素法に基づいた測定キット(Fキット アンモニア、ロシュ・ダイアグノスティックス社)を用いて測定した。測定は本製品の添付文書に記載されている方法に従った。
1−2−6.アスパラギン及びアスパラギン酸残基の異性化度測定
抗体約1mgを6M塩酸に溶かし、減圧下において110℃-4時間熱処理することにより加水分解させた。このとき、アスパラギン及びアスパラギン酸残基がアスパラギン酸として切り出される。加水分解サンプルは凍結乾燥後、500μLの精製水を加えて溶かした。このアスパラギン酸溶液20μLとO-フタルアルデヒド(OPA)-N-アセチル-L-システイン溶液(NAC) 10μLを混合し、3分後0.05M酢酸緩衝液(pH5.2)を470μL加えたものを測定試料とした。
【0073】
なお、OPA - NAC溶液は、OPA 4mgにメタノール300μL、0.4M ホウ酸緩衝液(pH9.4) 250μL及び蒸留水390μLを加え、さらに1M NAC溶液(pH5.5)を60μL加えることにより調製した。
・逆相HPLC条件
カラム :Vydac C18 218TP54(4.6×250mm、Vydac)
移動相 :4%アセトニトリル-0.05M酢酸緩衝液(pH5.8)
流速 :0.4mL/min
検出波長 :350nm
試料注入量 :20〜500μL
HPLC装置:ポンプL-7110(日立製作所)、紫外吸収検出器L-7400(日立製作所)
1−3.示差走査熱量分析計による熱変性温度測定
示差走査熱量分析(DSC)により、各pHにおける抗体の熱変性現象を評価した。測定条件は以下の通りである。
【0074】
試料中タンパク質濃度:800μg/mL
測定温度:40〜100℃
昇温速度:0.5℃/min
測定に用いた試料については、1-1.に記載した試料1〜14を同一条件の緩衝液にて濃度が800μg/mLとなるように希釈することにより調製した。
【0075】
使用機器:示差走査熱量分析計VP-DSC(MicroCal)
1−4.H鎖分解産物のアミノ酸配列分析
SDS-PAGE上において見られたH鎖の断片化現象について、切断部位を同定するために各断片についてN末端側のアミノ酸配列分析を行った。
【0076】
SDS-PAGEにより得られた泳動ゲルをPVDF膜に電気的に転写し、クマジブリリアントブルーにて染色した後、H鎖の分解物に相当するバンドを切り出した。目的バンドを含むPVDF膜は脱塩した後、乾燥し、配列分析に供した。
【0077】
N末側のアミノ酸配列分析は、エドマン分解法に基づいた以下の機器を用い、本機器による標準的な分析条件に従い測定した。
使用機器 :アミノ酸シークエンサー473A(Applied Biosystems)
1−5.H鎖分解速度の測定
一次配列上において隣り合うアスパラギン酸残基とプロリン残基の間(Asp-Pro配列)が加水分解されることにより生じるH鎖の断片化現象について、酸性条件下における切断速度を測定した。また、本抗体が持つAsp-Pro配列とその周辺の配列を含む15残基からなるペプチドを定法に従って合成し、同様に加水分解速度を測定した。
【0078】
抗体及びペプチドの切断条件は以下の通りとした。
使用サンプル :ヒト型化抗体或いはAsp-Pro配列を含むペプチド
ペプチド配列 :VDVSHEDPEVKFNWY
緩衝液 :15mM酢酸緩衝液(pH4)
抗体/ペプチド濃度 :66.7μM(抗体にして10mg/mL)
熱処理温度及び時間 :60℃-1,2,4週間(抗体)、60℃-6,12,24,36時間(ペプチド)
抗体のH鎖切断速度は、1-2-4.に記載された方法によりH鎖の対Initial残存率を求め、対時間でプロットしたときの負の傾きから算出した。
【0079】
また、ペプチドの切断速度は、逆相HPLCにより得られる切断されていないペプチドのピーク面積から対Initial残存率を求め、対時間でプロットしたときの負の傾きから算出した。
・逆相HPLC条件
カラム :TSK-gel ODS-120T(4.6×250mm、東ソー)
移動相 :以下の2種類の緩衝液を用いた直線グラジエント
A液:1%アセトニトリル-0.05%塩酸
B液:60%アセトニトリル-0.05%塩酸
Time(min) A(%) B(%)
0 100 0
100 0 100
流速 :0.6mL/min
検出波長 :350nm
試料注入量 :切断前ペプチドにして3.3nmol相当(50μL)
HPLC装置:ポンプL-7110(日立製作所)、紫外吸収検出器L-7400(日立製作所)
2.結果
2−1.60℃-4週間熱処理後の安定性評価
2−1−1.ANS結合性蛍光スペクトル測定
60℃-4週間処理後におけるサンプルのANS結合による470nmにおける蛍光強度を図6に示す。何れの緩衝液についてもpH6において最小となり、中性付近で熱変性現象が抑制されていることが示された。また、酸性条件下において、ANSの蛍光強度は高い結果となった。しかし、塩基性において変性中間体は凝集・沈殿したため、ANS結合性による変性度の評価はできなかった。
2−1−2.陽イオン交換HPLC測定
60℃-4週間処理後におけるサンプルの陽イオン交換HPLC分析結果として、未変性体残存率及び変性中間体生成率を図7に示す。何れの緩衝液においても、変性中間体の生成は中性付近にて最も抑制されていた。また、酸性条件下では変性中間体に相当するピーク面積が大きくなったが、塩基性条件下では変性中間体のピーク面積は低下した。塩基性条件下ではサンプル中に大量の沈殿が見られたことから、変性中間体は不安定であり、更なる凝集化により不溶化したために、見かけ上ピーク面積が小さくなっているものと考えられた。
【0080】
また、未変性体よりも早く溶出する未知ピークの生成は、中性付近において最大となった。但し、塩基性条件下では沈殿生成の影響を受けている。
2−1−3.ゲル濾過HPLC測定
60℃-4週間処理後におけるサンプルのゲル濾過HPLC分析結果として、単量体残存率及び凝集体生成率を図8に示す。陽イオン交換HPLCから得られる結果と同様に単量体の残存率は中性付近において最も高く、熱変性現象は抑制されていた。一方、弱酸性条件下において凝集体の生成は見られず、低分子量側にピークが認められた。従って、陽イオン交換HPLC上において未変性体より遅く溶出するピークは可溶性凝集体である変性中間体の生成によるものでなく、むしろ低分子量分解物が生成していることが分かった。
2−1−4.SDS−PAGE
60℃-4週間処理後におけるサンプルの還元系SDS-PAGE分析結果では、酸性条件下においてH鎖に対応するバンドの濃さが低下していた。それに対して、L鎖の前後における新たなバンドの生成が認められた。従って、酸性条件下においてH鎖の分解が起こっている可能性が示された。また、H鎖バンドの濃さを定量することにより、熱処理前に対するH鎖の残存率を評価した結果を図9に示したが、pHが低いほど、またリン酸緩衝液の方が残存率は低く、H鎖の分解が促進されていた。
2−1−5.アンモニア濃度測定
60℃-4週間処理後におけるサンプルのアンモニア濃度測定結果を図10に示したが、何れの緩衝液についてもpHとアンモニア生成量の間に正の相関が見られ、pHが高いほどアンモニア生成量は多かった。アンモニア生成の多くはアスパラギン或いはグルタミン残基の脱アミド化に起因する。従って、脱アミド化反応は高いpHにおいて促進されていることが確認できた。また、pHを問わずアンモニア生成量はリン酸緩衝液の方が高く、脱アミド化反応の起こりやすさが緩衝液間で異なることが示唆された。
【0081】
なお、脱アミド化することにより電荷が−に傾くことから、先述の陽イオン交換HPLC上の未変性体より先に溶出する未知ピークには脱アミド化抗体が含まれているものと考えられる。
2−1−6.アスパラギン及びアスパラギン酸残基の異性化度測定
60℃-4週間処理後におけるサンプルのアスパラギン及びアスパラギン酸残基の異性化度(全体に占めるD体の比率)を測定した結果を図11に示したが、緩衝液を問わず異性化現象は中性条件下で最も抑制されていた。一方、塩基性条件下では異性化が起こりやすく、リン酸緩衝液の方が異性化率は高い結果となった。なお、図11中でAsxはアスパラギン残基とアスパラギン酸残基の合計を示す。
2−2.示差走査熱量分析計による熱変性温度測定
以下の表4に示差走査熱量分析計による変性中点温度の測定結果を示したが、何れの緩衝液についても酸性側における各変性中点温度は低かった。一方、塩基性側では3段階目の変性において凝集化が見られたため、正確な変性中点温度を算出することができなかった。これらの結果から、酸性側では変性温度の低下により、塩基性側では変性体の凝集化傾向の高さにより不安定化していることが分かり、pH6付近における安定性が高い原因となっているものと考えられた。
【0082】
【表4】
【0083】
2−3.H鎖分解産物のアミノ酸配列分析
60℃-4週間処理後において還元系SDS-PAGE上で新たに出現した2本のピーク(Unknown 1,2)について、N末端側のアミノ酸配列分析を行った。なお、Unknown1がL鎖より高分子側に、Unknown2がL鎖より低分子側に位置するバンドである。その結果、Unknown 1については配列を読むことができなかったが、Unknown 2についてはN末端からPro-Glu-Val-Lys-Pheという配列が読み出された。この結果を本抗体の一次配列に当てはめてみたところ、H鎖上の- P273-E274-V275-K276-F277-に該当した。一般的に酸性下においてアスパラギン酸−プロリン配列は加水分解により切断されやすいことが知られており、本抗体の全配列を通してAsp-Pro配列はD272-P273の1ヶ所のみである。従って、酸性条件下におけるH鎖の断片化は、-E271-D272/P273-E274-V275-K276-F277-おける/の部分における切断に起因するものと考えられた。なお、Unknown1バンドでアミノ酸配列が読めなかった原因として、H鎖のN末端に位置するグルタミン残基がピログルタミル化しており切り出すことができなかったことが考えられた。
2−4.H鎖分解速度の測定
抗体及びペプチドを60℃にて処理したときにおける未切断体残存率の経時変化を図12に示した。このように、抗体H鎖では1週間後に、ペプチドでは36時間後において切断速度の低下が見られた。そこで、抗体及びペプチドの切断現象について初速度を比較したところ、抗体は対応するペプチドの約1/10に相当していた。抗体の切断速度が低い原因として、抗体が有している高次構造の喪失によるAsp-Pro配列が抗体表面への露出が切断の律速段階となっていることが考えられた。従って、抗体のネイティブな構造が保持されることは、Asp-Pro配列切断の抑制に寄与していることが示唆された。
【0084】
熱変性現象を指標とした場合、60℃-4週間の熱処理ではpH6付近が最も安定であった。このことは、示差走査熱量分析の結果から説明することができる。即ち、酸性条件側では3段階からなる各変性中点温度が低いことが、塩基性条件側では変性後における中間体の高い凝集化傾向が不安定化の要因となっているものと考えられた。
【0085】
化学変化については、酸性条件下ではH鎖上における272番目のアスパラギン酸残基と273番目のプロリン残基間の加水分解が極めて起こりやすく、アスパラギン酸残基の異性化反応も起こりやすいことが示された。また、塩基性条件下においてもアスパラギン及びグルタミン残基の脱アミド化のみならず、アスパラギン酸残基の異性化も起こりやすいことが分かった。よって、化学変化を指標とした場合にも中性付近が最適であることが示された。なお、Asp-Pro配列の加水分解現象については、切断速度が対応するペプチドの1/10程度であったことから、ネイティブ状態としての高次構造保持が化学変化の抑制においても重要であることが示唆された。
実施例3:緩衝液の種類が抗体フラグメント溶液の安定性に及ぼす影響
1−1.試料溶液の調製
1−1−1.パパイン消化による抗体の断片化
実施例1と同じヒト型化抗IL−6受容体抗体原液(抗体濃度約40mg/mL)を凍結乾燥し、0.15M塩化ナトリウムを含む50mMリン酸緩衝液(pH7.5、PBS)に濃度が5mg/mLとなるように溶解させた。本抗体溶液1mLに、予め500μg/mLとなるよう2mM EDTA及び2mMシステインを含むPBSに溶かしたパパイン溶液を1mL加え、37℃-2時間反応させた。
1−1−2.パパイン消化産物からの抗体フラグメント精製
パパイン消化産物からFab及びFc断片を以下の方法により分取・精製した。
【0086】
パパイン消化後の抗体断片溶液をプロテインAカラム(HiTrap rProtein A FF 1mL, Amersham Pharmacia Biotech)に通し、素通り部分をFab断片粗精製画分として採取した。0.15M塩化ナトリウムを含む0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)によりカラムを洗浄した後、0.1Mグリシン緩衝液(pH3.0)をカラムに通すことによりFc断片を溶出させた。Fc断片粗精製画分は等量の0.2Mトリス-塩酸緩衝液(pH8.0)と混合することにより中和した後、0.15M塩化ナトリウムを含む0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)にて透析した。
【0087】
Fab断片粗精製画分は以下の条件の陽イオン交換HPLCにより精製した。
分離カラム :TSK-gel SP-5PW(東ソー)
移動相 :以下の2種類の緩衝液を用いたグラジエント
A液 :50mM酢酸緩衝液(pH4.0)
B液 :50mM酢酸緩衝液(pH4.0)-0.5M塩化ナトリウム
Time(min) A(%) B(%)
0 100 0
60 0 100
流速 :1mL/min
測定波長 :280nm
HPLC装置:ポンプ;L-7110(日立製作所)
紫外分光検出器;L-7420(日立製作所)
Fc断片粗精製画分はプロテインAカラムに再度通すことにより精製した。得られた各断片の純度をSDS-PAGE(ゲル濃度:12%)により確認した。
1−1−3.抗体フラグメント溶液の調製
1-1-1.にて断片化し、1-1-2.にて精製したヒト型化抗体のFab及びFc断片について、濃度を1mg/mLに合わせた後、以下に示した各緩衝液を外液として用いた透析により緩衝剤種類の異なる試料溶液を調整した。熱処理に供する各試料溶液は1mLずつガラスアンプルに充填し、熔閉密封した。
【0088】
試料1 :15mMリン酸緩衝液、pH6.5
試料2 :15mMクエン酸緩衝液、pH5.5
試料3 :15mM酢酸緩衝液、pH5.5
試料4 :15mMモルホリノエタンスルホン酸(MES)、pH5.5
試料5 :15mMモルホリノエタンスルホン酸(MES)、pH6.5
熱処理条件については、Fab断片溶液は60℃-1,2,4週間、Fc断片溶液は60℃-2,4,7日とした。熱処理後以下の方法により安定性を評価した。
1−2.熱安定性の評価方法
抗体フラグメント溶液の熱安定性を、ゲル濾過HPLCによる単量体のピーク面積及び1-アニリノ-8-ナフタレンスルフォネート(ANS)の疎水性表面への結合による蛍光スペクトルの変化を指標として測定した。
1−2−1.ゲル濾過HPLC
以下の分析条件で各試料を測定した。
【0089】
ガードカラム:TSK-guardcolumn SWXL(東ソー)
分離カラム :TSK-gel G3000SWXL(東ソー)
移動相 :50mMリン酸緩衝液(pH7.0)-0.3M塩化ナトリウム
流速 :1mL/min
測定波長 :280nm
試料注入量 :各抗体断片にして10〜30μg
HPLC装置:ポンプ;waters600
紫外分光検出器;SPD-6A(島津製作所)
1−2−2.ANS結合性蛍光スペクトル測定
抗体フラグメント溶液の熱安定性を、1-アニリノ-8-ナフタレンスルフォネート(ANS)の疎水性表面への結合による蛍光スペクトルの変化を指標として測定した。
【0090】
熱処理前後の各抗体フラグメント溶液900μL(約10nmol)に0.4M ANS溶液300μLを加え、測定試料とした。全量を蛍光セルにとり、波長365nmの励起光で450〜550nmの蛍光スペクトルを測定した。
【0091】
使用機器:分光蛍光光度計F-2000(日立製作所)
1−3.示差走査熱量分析計による熱変性温度の評価
示差走査熱量分析(DSC)により、各緩衝液におけるFab断片、Fc断片及び抗体全体の熱変性現象を評価した。測定条件は以下の通りである。
【0092】
試料中タンパク質濃度:1mg/mL
測定温度:40〜100℃、昇温速度:0.5℃/min
なお、測定試料のうちFab及びFc断片については、1−1.に記載の方法に従って調製した。また、抗体(全体)の試料については、抗体原液を各緩衝液に対して透析した後、濃度が1 mg/mLとなるように希釈することにより調製した。
【0093】
使用機器:示差走査熱量分析計VP-DSC(MicroCal)
1−4.示差走査熱量分析計による熱変性現象の可逆性評価
示差走査熱量分析(DSC)により、MES緩衝液(15mM、pH5.5)におけるFab断片、Fc断片及び抗体全体の熱変性現象について、各変性段階における可逆性を評価した。即ち、Fab断片、Fc断片及び抗体全体について、可逆性を評価する変性段階の変性中点温度まで昇温を行った後(1回目の温度スキャン)、一旦昇温開始温度まで温度を下げ、再度昇温を行った(2回目の温度スキャン)ときの各変性段階における吸熱ピークの高さを比較した。測定条件は以下の通りである。
【0094】
試料中タンパク質濃度:0.25mg/mL
1回目の温度スキャン:40℃から各変性中点温度まで、昇温速度0.5℃/minにて測定した。
【0095】
2回目の温度スキャン:40℃から100℃まで、昇温速度0.5℃/minにて測定した。
使用機器:示差走査熱量分析計VP-DSC(MicroCal)
また、MES緩衝液(15mM、pH5.5)におけるFab断片及び抗体全体について、DSC測定時の昇温速度が各変性段階の変性中点温度に及ぼす影響を評価した。測定条件は以下の通りである。
【0096】
試料中タンパク質濃度:1mg/mL
測定温度:40〜100℃
昇温速度:0.25, 0.5, 1.0, 1.5℃/min
使用機器:示差走査熱量分析計VP-DSC(MicroCal)
2.結果
2−1.パパイン消化による抗体フラグメントの調製
SDS-PAGEの結果から、Fab及びFcの各断片は高純度に精製されていることが確認できたので、透析により各緩衝液に置換した後、熱安定性の評価に供した。
2−2.熱処理後における安定性評価
2−2−1.ゲル濾過HPLCによる評価結果
Fab及びFc断片の熱処理後試料について、単量体残存量の指標となるゲルろ過HPLCの測定結果を図13(Fab断片)及び図14(Fc断片)に示した。
【0097】
Fab断片についてはクエン酸緩衝液を除き極めて安定性が高く、60℃-4週間の熱処理後においても90%以上の単量体残存率を示したが、クエン酸緩衝液では約70%となっていた。
【0098】
一方、Fc断片については60℃-1週間の熱処理により単量体残存量が50〜70%と低下したが、緩衝液間での安定性の差について明確な傾向は認められなかった。
2−2−2.ANS結合性蛍光スペクトル測定による評価結果
Fab及びFc断片の熱処理後試料について、疎水性残基の表面露出の指標となるANSの蛍光スペクトルの測定結果を図15(Fab断片)及び図16(Fc断片)に示した。
【0099】
Fab断片については、何れの緩衝液についても60℃-4週間の熱処理後における蛍光強度に変化はなく、疎水性表面へのANSの結合は見られなかった。
一方、Fc断片は60℃-1週間(7日間)の熱処理により、ANSの結合による蛍光強度の増大が見られた。また、同一pH間で比較すると抗体全体に対する熱安定性の低い緩衝液であるリン酸及びクエン酸緩衝液の方が、熱処理後の蛍光強度は高かった。
【0100】
従って、緩衝液の何れを問わずFab断片は熱処理後においてほとんど変性していなかったが、Fc断片は抗体全体の場合と同様に熱変性現象に対する緩衝液種類の影響が見られ、酢酸及びMES緩衝液はリン酸及びクエン酸緩衝液と比較して熱変性が抑制されていた。
2−3.示差走査熱量分析計による熱変性現象の評価
図17に示したように、抗体全体においては吸熱ピークが3本出現し、そのうち前半の2本はFcドメインに、最後のピークはFabドメインの変性に帰属することができた。
【0101】
MES緩衝液(pH5.5)を除き、抗体(全体)では3段階目の変性後において凝集化による発熱ピークが見られたが、Fab断片では対応する変性後にそのような現象は見られなかった。また、これらの緩衝液では、Fc断片の2段階目の変性後に発熱ピークが見られた。なお、クエン酸緩衝液(pH5.5)及びリン酸緩衝液(pH6.5)においては、Fc断片だけではなくFab断片においても凝集化傾向が見られた。一方、MES緩衝液(pH5.5)では、抗体全体及びFc断片の何れにおいても発熱ピークは見られず、変性体の凝集化が抑制されている結果となった。しかし、各緩衝液における変性温度(Tm)については、表5に示したように大きな差は見られなかった。
【0102】
【表5】
【0103】
2−4.示差走査熱量分析計による熱変性現象の可逆性評価
Fab断片、Fc断片及び抗体全体の何れにおいても、15mM MES緩衝液(pH5.5)については熱変性後における凝集化現象が見られなかった。そこで、MES緩衝液における熱変性現象について、各変性段階における変性の可逆性を評価した。
【0104】
抗体全体における変性はFcドメインに由来する最初の2段階とFabドメインに由来する最後の1段階の計3段階にて構成されるが、可逆性が確認できたのは1段階目及び2段階目の変性であり、最後の3段階の変性における可逆性は低かった(図18)。
【0105】
Fab断片の変性については、抗体全体におけるFabドメインの変性である3段階目と同様に低い可逆性しか有さなかったが、2回目の温度スキャン時の吸熱ピーク高さは抗体全体の場合よりも高かった(図19)。従って、抗体全体の場合よりもFab断片単独の方が変性の可逆性は高いことになり、抗体全体における3段階目の変性の可逆性に対するFcドメイン存在の影響が示唆された。
【0106】
一方、Fc断片の変性においては、最初の1段階目の変性のみが完全に可逆的であり、2段階目の変性の可逆性は低かった(図20)。従って、対応する抗体全体におけるFcドメインの結果と異なっており、抗体全体における2段階目の変性の可逆性に対するFabドメイン存在の影響が示唆された。
【0107】
従って、MES緩衝液における抗体の各ドメインにおける変性は、抗体全体の1,2段階目及びFcドメインの1段階目を除き不可逆であることが示された。
抗体全体及びFab断片について、MES緩衝液中における変性中点温度に対してDSC測定時の昇温速度が及ぼす影響を評価した。抗体全体においては2及び3段階目の変性については昇温速度が高くなるほど変性中点温度は高くなったが、1段階目の変性温度については昇温速度に依存せず同一の値を示した(図21)。また、Fab断片における変性についても昇温速度が高くなるほど変性中点温度は高くなった(図22)。これらの結果からも、抗体全体の1段階目の変性については可逆性を有することが確認できた。なお、各変性中点温度について昇温速度に対してプロットすることにより、昇温速度を0℃/minに外挿したときの変性中点温度を求めたところ、抗体全体についてはそれぞれ69.02,79.83,90.96℃となり、Fab断片については91.01℃となった。
【0108】
これらの結果から、pH5.5のMES緩衝液における熱安定化効果は、熱変性温度の上昇によるものではなく、変性体の凝集化を抑制することに起因することが分かった。即ち、緩衝液間の安定性の差については、変性温度の差ではなく、変性後の凝集特性の差に起因することが示唆された。
【0109】
Fabドメインだけでは何れの緩衝液を用いても変性後の凝集化は見られなかったことから、抗体全体の凝集化に対して大きく影響を及ぼしている部分はFcドメインであることが示された。また、抗体全体の変性現象はFab及びFcドメインの単なる和とはならず、両ドメイン間の相互作用による影響を受けているものと考えられた。
【0110】
変性の可逆性を評価したところ、可逆性を確認できたのは抗体全体の1,2段階目及びFcドメインの1段階目の変性のみであったことから、抗体溶液の安定性に対する変性現象の可逆性の寄与は少ないものと考えられた。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、60℃熱処理後における蛍光スペクトル(ANS結合性)の経時変化を示す。
【図2】図2は、60℃熱処理後における陽イオン交換HPLCで分離したときの未変性体ピーク面積の経時変化を示す。
【図3】図3は、60℃熱処理後における陽イオン交換HPLCで分離したときの変性中間体ピーク面積の経時変化を示す。
【図4】図4は、60℃熱処理後におけるゲル濾過HPLCで分離したときの単量体(未変性体)ピーク面積の経時変化を示す。
【図5】図5は、60℃熱処理後におけるゲル濾過HPLCで分離したときの可溶性凝集体(変性中間体)ピーク面積の経時変化を示す。
【図6】図6は、60℃−4週間熱処理後における各サンプルのANS結合による蛍光強度を示す。
【図7】図7は、60℃−4週間熱処理後における各サンプルの陽イオン交換HPLC分析結果であり、(A)未変性体ピークの割合、(B)変性中間体ピークの割合、(C)未知ピークの割合を示す。
【図8】図8は、60℃−4週間熱処理後における各サンプルのゲル濾過HPLC分析結果であり、(A)単量体ピークの割合、(B)可溶性凝集体ピークの割合を示す。
【図9】図9は、60℃−4週間熱処理後における各サンプルのH鎖残存率算出結果を示す。
【図10】図10は、60℃−4週間熱処理後における各サンプルのアンモニア濃度測定結果を示す。
【図11】図11は、60℃−4週間熱処理後における各サンプルのアスパラギン及びアスパラギン酸残基の異性化度測定結果を示す。なお、図中のAsxはアスパラギン残基とアスパラギン酸残基の合計を表す。
【図12】図12は、60℃にて熱処理したときの抗体H鎖及びペプチドにおける未切断体残存率の経時変化を示す。
【図13】図13は、Fab断片の熱処理後試料をゲルろ過HPLCにより測定し、単量体ピークの残存率推移を示した結果である。
【図14】図14は、Fc断片の熱処理後試料をゲルろ過HPLCにより測定し、単量体ピークの残存率推移を示した結果である。
【図15】図15は、Fab断片の熱処理後試料をANS結合による蛍光スペクトルにより測定し、470nmにおける蛍光強度の推移を示した結果である。
【図16】図16は、Fc断片の熱処理後試料をANS結合による蛍光スペクトルにより測定し、470nmにおける蛍光強度の推移を示した結果である。
【図17】図17は、Fab断片、Fc断片及び抗体全体の各試料について、熱変性挙動を示差走査熱量分析計(DSC)により測定した結果を示す。
【図18】図18は、抗体全体の各変性段階について可逆性を評価した結果を示す。
【図19】図19は、Fab断片の変性について可逆性を評価した結果を示す。
【図20】図20は、Fc断片の各変性段階について可逆性を評価した結果を示す。
【図21】図21は、抗体全体の各変性段階について、変性中点温度に対するDSC測定時の昇温速度が及ぼす影響を評価した結果を示す。
【図22】図22は、Fab断片の変性について、変性中点温度に対するDSC測定時の昇温速度が及ぼす影響を評価した結果を示す
Claims (7)
- 濃度が5〜100mMであり、pH値が5.5〜6.5の範囲である2−モルホリノエタンスルホン酸の緩衝液中に抗体を含む、安定性が向上した、非経口投与用抗体製剤。
- 緩衝液の濃度が5〜30mMである、請求項1に記載の非経口投与用抗体製剤。
- 抗体がモノクローナル抗体である、請求項1又は2に記載の非経口投与用抗体製剤。
- モノクローナル抗体がヒト型化抗体である請求項3記載の非経口投与用抗体製剤。
- 濃度が5〜100mMであり、pH値が5.5〜6.5の範囲である2−モルホリノエタンスルホン酸の緩衝液中に抗体を溶解することを含む、非経口投与用抗体製剤の安定性を向上させる方法。
- 濃度が5〜100mMであり、pH値が5.5〜6.5の範囲である2−モルホリノエタンスルホン酸の緩衝液中に抗体を含む状態で抗体含有試料の加熱処理を行うことを特徴とする、抗体含有試料を加熱処理するときの安定化方法。
- 濃度が5〜100mMであり、pH値が5.5〜6.5の範囲である2−モルホリノエタンスルホン酸の緩衝液中に抗体を溶解することを含む、非経口投与用抗体製剤において前記抗体のFc部分の安定化方法。
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