JP5048993B2 - 正極合材用硫化物系固体電解質及びその製造方法 - Google Patents

正極合材用硫化物系固体電解質及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、正極合材用硫化物系固体電解質に関する。さらに詳しくは、リチウムイオン二次電池に使用する正極を形成する正極合材用として好適な正極合材用硫化物系固体電解質に関する。
近年、携帯情報端末、携帯電子機器、家庭用小型電力貯蔵装置、モーターを動力源とする自動二輪車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等に用いられる高性能リチウム電池等二次電池の需要が増加している。
使用される用途が広がるのに伴い、二次電池の更なる安全性の向上及び高性能化が要求されている。
リチウム電池の安全性を確保する方法としては、有機溶媒電解質に代えて無機固体電解質を用いることが有効である。
無機固体電解質としては、リチウム元素、リン元素及びイオウ元素を主成分とする硫化物系ガラスを熱処理したものが高いイオン伝導性を有することが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
ところで、硫化物系固体電解質は空気中の水分により急速に劣化し、イオン伝導性が低下することが知られている。具体的に、硫化物系固体電解質を貯蔵又はハンドリングする際、ドライルームでの保存やトルエン等を用いるスラリー化操作等において、イオン伝導度が低下するという問題があった。そのため、固体電解質の製造や保管は、グローブボックス等を使用し、水分を完全に遮断して行っていた。
特開2002−109955号公報
本発明らは、硫化物系固体電解質の水分による劣化について、鋭意研究した。その結果、固体電解質中に含まれるチオリン酸結合が、水分によりリン酸結合(PO4−x:xは1〜4の整数)に変化することがわかった。
また、リン酸結合を所定量含有させた硫化物系固体電解質が正極合材として使用される固体電解質として優れた性能を有することを見出した。
本発明は、上記の知見に基づいて、リン酸結合(PO4−x:xは1〜4の整数)を所定量含有する硫化物系固体電解質であって、正極合材として使用できる硫化物系固体電解質を提供することを目的とする。
本発明によれば、以下の正極合材等が提供できる。
1.硫化物系固体電解質中に存在する、31PNMRスペクトルの70〜−20ppmの領域に観測されるリン酸結合(PO4−x:xは1〜4の整数)のピーク面積が、前記スペクトルの170〜−20ppmの領域に観測される全リン元素のピーク面積の1〜50%である硫化物系固体電解質を含む正極合材
2.硫化物系固体電解質中に存在する、 31 PNMRスペクトルの70〜−20ppmの領域に観測されるリン酸結合(PO 4−x :xは1〜4の整数)のピーク面積が、前記スペクトルの170〜−20ppmの領域に観測される全リン元素のピーク面積の1〜50%である硫化物系固体電解質を含む正極。
3.1に記載の正極合材を用いて製造された正極
4.2又は3に記載の正極を備える全固体二次電池。
5.硫化物系固体電解質中に存在する、 31 PNMRスペクトルの70〜−20ppmの領域に観測されるリン酸結合(PO 4−x :xは1〜4の整数)のピーク面積が、前記スペクトルの170〜−20ppmの領域に観測される全リン元素のピーク面積の1〜50%である正極合材用硫化物系固体電解質の製造方法であって、
水分を含む有機溶媒で硫化物系固体電解質を処理する正極合材用硫化物系固体電解質の製造方法。
本発明によれば、リン酸結合(PO4−x:xは1〜4の整数)を所定量含有する、正極合材用硫化物系固体電解質が提供できる。
本発明の正極合材用硫化物系固体電解質は、固体電解質中に存在するリン酸結合(PO4−x:xは1〜4の整数)の量が、31PNMR測定より求められるスペクトルの全ピーク面積に対して1〜50%であることを特徴とする。
本発明において、リン酸結合(PO4−x)の量は固体電解質の固体31P−NMRスペクトルの積分値から算出する。具体的には、リン酸結合(PO4−x)に起因するピークは、70〜−20ppmに観測されるので、このピークの積分値と、スペクトル全体(ピークは、170〜−20ppm)の積分値、即ち、固体電解質中に存在するリン元素全体の値からリン酸結合の含有量(%:積分比)を算出する。詳細については、実施例にて説明する。
尚、リン酸結合(PO4−x)は、具体的には、POS、PO、POS、POである。
本発明の正極合材用硫化物系固体電解質は、固体電解質中に存在するリン酸結合(PO4−x)の量が積分値で1〜50%であり、好ましくは、2〜40%である。この範囲であれば、正極合材用固体電解質として優れた性能を示す。これは、固体電解質の表層にリン酸リチウムが形成されるためと推定している。即ち、リチウム酸コバルト等を正極合材として使用する場合、酸化アルミニウム等の酸化物で被覆することで、電池のレート特性や充放電サイクル特性を向上できることが知られているが、本発明はこれと類似の効果を生じるものと考えられる。
尚、リン酸結合(PO4−x)の量が積分値で50%より多くなると、イオン伝導性が大きく低下し、電池性能低下につながるおそれがあり好ましくない。一方、1%より少ないと、電池としての高レート条件下での充放電が難しくなり好ましくない。
本発明の正極合材用硫化物系固体電解質は、リチウムイオン伝導性が高いことから、硫化リチウムと五硫化二燐(P)、又は硫化リチウムと単体燐及び単体硫黄、さらには硫化リチウム、五硫化二燐、単体燐及び/又は単体硫黄から生成するものを使用することが好ましい。
硫化リチウムと、五硫化二燐及び/又は単体燐及び単体硫黄から製造するこ場合、具体的には、これらの原料を溶融反応させた後、急冷することにより製造できる。また、これらの原料をメカニカルミリング法(MM法)により処理して得ることができる。このようにして得られた硫化物ガラスを加熱処理してもよい。
本発明において固体電解質としては、ガラス状固体電解質(硫化物ガラス)及び硫化物ガラスを熱処理して得られる固体電解質(ガラスセラミック)の両方が使用できる。必要とする特性に合わせて種類を選定すればよい。また、両方を使用してもよい。
硫化物系固体電解質を製造するための硫化リチウムは、特に制限なく工業的に入手可能なものが使用できるが、高純度のものが好ましい。
硫化リチウムは、少なくとも硫黄酸化物のリチウム塩の総含有量が、好ましくは0.15質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下であり、かつN−メチルアミノ酪酸リチウムの含有量が好ましくは0.15質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下である。硫黄酸化物のリチウム塩の総含有量が0.15質量%以下であると、高イオン伝導度の固体電解質を得ることができない場合がある。
また、N−メチルアミノ酪酸リチウムの含有量が0.15質量%以下であると、N−メチルアミノ酪酸リチウムの劣化物がリチウム電池のサイクル性能を低下させることがない。
このように不純物が低減された硫化リチウムを用いると、高イオン伝導性電解質が得られる。
高イオン伝導性電解質の製造に用いられる硫化リチウムの製造法としては、少なくとも上記不純物を低減できる方法であれば特に制限はない。
例えば、以下の方法で製造された硫化リチウムを精製することにより得ることができる。
以下の製造法の中では、特にa又はbの方法が好ましい。
a.非プロトン性有機溶媒中で水酸化リチウムと硫化水素とを0〜150℃で反応させて水硫化リチウムを生成し、次いでこの反応液を150〜200℃で脱硫化水素化する方法(特開平7−330312号公報)。
b.非プロトン性有機溶媒中で水酸化リチウムと硫化水素とを150〜200℃で反応させ、直接硫化リチウムを生成する方法(特開平7−330312号公報)。
c.水酸化リチウムとガス状硫黄源を130〜445℃の温度で反応させる方法(特開平9−283156号公報)。
硫化リチウムの精製方法としては、特に制限はない。好ましい精製法としては、例えば、国際公開WO2005/40039号等に記載の方法が挙げられる。
具体的には、硫化リチウムを、有機溶媒を用い、100℃以上の温度で洗浄する。洗浄に用いる有機溶媒は、非プロトン性極性溶媒であることが好ましく、さらに、硫化リチウムの製造に使用する非プロトン性有機溶媒と洗浄に用いる非プロトン性極性有機溶媒とが同一であることがより好ましい。
洗浄に好ましく用いられる非プロトン性極性有機溶媒としては、例えば、アミド化合物、ラクタム化合物、尿素化合物、有機硫黄化合物、環式有機リン化合物等の非プロトン性の極性有機化合物が挙げられ、単独溶媒、又は混合溶媒として好適に使用することができる。特に、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)は、良好な溶媒として選択される。
洗浄に使用する有機溶媒の量は特に限定されず、また、洗浄の回数も特に限定されないが、2回以上であることが好ましい。洗浄は、窒素、アルゴン等の不活性ガス下で行うことが好ましい。
洗浄された硫化リチウムを、洗浄に使用した有機溶媒の沸点以上の温度で、窒素等の不活性ガス気流下、常圧又は減圧下で、5分以上、好ましくは約2〜3時間以上乾燥することにより、好適に用いられる硫化リチウムを得ることができる。
は、工業的に製造され、販売されているものであれば、特に限定なく使用することができる。尚、Pに代えて、相当するモル比の単体リン(P)及び単体硫黄(S)を用いることもできる。単体リン(P)及び単体硫黄(S)は、工業的に生産され、販売されているものであれば、特に限定なく使用することができる。
硫化リチウムと、五硫化二燐及び/又は単体燐及び単体硫黄の混合モル比は、通常50:50〜80:20、好ましくは60:40〜75:25である。
特に好ましくは、LiS:P=68:32〜74:26(モル比)程度である。
ガラス状電解質である硫化物ガラスの製造方法としては、例えば、溶融急冷法やメカニカルミリング法(MM法)が挙げられる。
溶融急冷法による場合、PとLiSを所定量乳鉢にて混合し、ペレット状にしたものをカーボンコートした石英管中に入れ真空封入する。一定の反応温度で反応させた後、氷中に投入し急冷することにより、硫化物ガラスが得られる。
この際の反応温度は、好ましくは400℃〜1000℃、より好ましくは800℃〜900℃である。また、反応時間は、好ましくは0.1時間〜12時間、より好ましくは1〜12時間である。上記反応物の急冷温度は、通常10℃以下、好ましくは0℃以下であり、その冷却速度は通常1〜10000K/sec程度、好ましくは1〜1000K/secである。
MM法による場合、PとLiSを所定量乳鉢にて混合し、メカニカルミリング法にて一定時間反応させることにより、硫化物ガラスが得られる。
上記原料を用いたメカニカルミリング法は、室温で反応を行うことができる。MM法によれば、室温でガラス状電解質を製造できるため、原料の熱分解が起らず、仕込み組成のガラス状電解質を得ることができるという利点がある。また、MM法では、ガラス状電解質の製造と同時に、ガラス状電解質を微粉末化できるという利点もある。
MM法は種々の形式の粉砕法を用いることができるが、遊星型ボールミルを使用するのが特に好ましい。遊星型ボールミルは、ポットが自転回転しながら、台盤が公転回転し、非常に高い衝撃エネルギーを効率良く発生させることができる。
MM法の回転速度及び回転時間は特に限定されないが、回転速度が速いほど、ガラス状電解質の生成速度は速くなり、回転時間が長いほどガラス質状電解質ヘの原料の転化率は高くなる。
例えば、遊星型ボールミル機を使用した場合、回転速度を数十〜数百回転/分とし、0.5時間〜100時間処理すればよい。
以上、溶融急冷法及びMM法による硫化物ガラスの具体例を説明したが、温度条件や処理時間等の製造条件は、使用設備等に合わせて適宜調整することができる。
その後、得られた硫化物ガラスを熱処理することにより、結晶成分を含有する固体電解質(ガラスセラミック)が生成する。
このような固体電解質を生成させる熱処理温度は、好ましくは190℃〜340℃、より好ましくは195℃〜335℃、特に好ましくは200℃〜330℃である。190℃より低いと高イオン伝導性の結晶が得られにくい場合があり、340℃より高いとイオン伝導性の低い結晶が生じる恐れがある。
熱処理時間は、190℃以上220℃以下の温度の場合は、3〜240時間が好ましく、特に4〜230時間が好ましい。また、220℃より高く340℃以下の温度の場合は、0.1〜240時間が好ましく、特に0.2〜235時間が好ましく、さらに0.3〜230時間が好ましい。熱処理時間が0.1時間より短いと、高イオン伝導性の結晶が得られにくい場合があり、240時間より長いと、イオン伝導性の低い結晶が生じる恐れがある。
固体電解質中に所定量のリン酸結合(PO4−x)を生成するため、MM法や溶融急冷法時や、熱処理中の空気中の水分量を調整(製造時の環境の露点を−30〜−70℃)することが好ましい。
また、グローブボックス等を利用し、水分の存在しない環境下にて固体電解質を製造し、これを、水分を少量含む有機溶媒で処理することで、リン酸結合を生成させてもよい。有機溶媒としては、硫化物系固体電解質と反応しないもの、例えば、トルエンが使用できる。溶媒に占める水分量は、0.1質量%〜3質量%程度とすればよい。
このようにして製造した合材用固定電解質は、保存環境に存在する水分により不要なリン酸結合ができないように、グローブボックス等、水分のない環境で保存したり、製造後、すぐに使用するか、シール等をして水分を遮断しておく必要がある。
この固定電解質用合材は、X線回折(CuKα:λ=1.5418Å)において、2θ=17.8±0.3deg,18.2±0.3deg,19.8±0.3deg,21.8±0.3deg,23.8±0.3deg,25.9±0.3deg,29.5±0.3deg,30.0±0.3degに回折ピークを有することが好ましい。このような結晶構造を有する固体電解質が、極めて高いリチウムイオン伝導性を有する。
本発明の正極合材用固定電解質は、全固体二次電池の正極に混合する正極合材(イオン伝導活物質)として好適に使用できる。
全固体電池の部材である固体状の電極材料(極材)においては、電子伝導性に加えてイオン伝導度を向上させるため、極材の粒子同士が密着し、粒子間の接合点や面を多く存在させ、イオン伝導パスをより多く確保することが重要である。そのため、電解質等のイオン伝導活物質を混合し、極材とする方法が用いられる。尚、極材粒子間の隙間に生じる空間(単位体積における空間体積と極材粒子の体積の割合:空隙率)が少ない程、極材層が密に詰まっており、イオン伝導度は高くなる。
本発明の正極合材用硫化物系固体電解質は、正極合材と負極と、これらの間に固体電解質層を有する全固体二次電池の正極合材に使用できる。
本発明の固体電解質と混合する正極材としては、電池分野において正極活物質として使用されているものが使用できる。例えば、硫化物系では、硫化チタン(TiS)、硫化モリブデン(MoS)、硫化鉄(FeS、FeS)、硫化銅(CuS)及び硫化ニッケル(Ni)等が使用できる。好ましくは、TiSが使用できる。
また、酸化物系では、酸化ビスマス(Bi)、鉛酸ビスマス(BiPb)、酸化銅(CuO)、酸化バナジウム(V13)、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、マンガン酸リチウム(LiMnO)等が使用できる。尚、これらを混合して用いることも可能である。好ましくは、コバルト酸リチウムが使用できる。
尚、上記の他にはセレン化ニオブ(NbSe)が使用できる。
正極活物質と、本発明の固体電解質との混合比(重量比)は、好ましくは10〜90:90〜10である。特に好ましくは、30〜70:70〜30である。
負極材としては、電池分野において負極活物質として使用されているものが使用できる。例えば、炭素材料、具体的には、人造黒鉛、黒鉛炭素繊維、樹脂焼成炭素、熱分解気相成長炭素、コークス、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、フルフリルアルコール樹脂焼成炭素、ポリアセン、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、天然黒鉛及び難黒鉛化性炭素等が挙げられる。又はその混合物でもよい。好ましくは、人造黒鉛である。
また、金属リチウム、金属インジウム、金属アルミ、金属ケイ素等の金属自体や他の元素、化合物と組合わせた合金を、負極材として用いることができる。
実施例1
(1)正極合材用硫化物系固体電解質の製造
グローブボックス内で、高純度硫化リチウム(出光興産社製、純度:99.9%)を0.6508g(0.01417mol)と五硫化二燐(アルドリッチ社製)を1.3492g(0.00607mol)をよく混合し、これらの粉末をアルミナ製ポットに投入し完全密閉した。
このポットを遊星型ボールミル機に取り付け、メカニカルミリングを行なった。この際、はじめの数分間は出発原料を十分に混合する目的で、低速回転(85rpm)でミリングを行った。その後、徐々に回転数を上げ370rpmで20時間メカニカルミリングを行った。
得られた粉末をX線測定により評価した結果、ガラス化(硫化物ガラス)していることが確認できた。
この硫化物ガラス25gと、1質量%の水を含むトルエン75gを、遊星ボールミルを使用して1時間混合した。その後、混合物スラリーを200℃で真空乾燥してトルエンを除去し、正極合材用硫化物系固体電解質の粉末を得た。
31P−NMR分析の結果、この粉末中にはPO4−x構造が31P−NMRの積分値で5%含まれていることが判った。
図1は、実施例1で製造した正極合材用硫化物系固体電解質の31P−NMRスペクトルである。
このスペクトルにおいて、70〜−20ppmのピークは、PO4−x構造に起因する。また、170〜−20ppmに全てのリン元素のピークが出現している。
70〜−20ppmにあるピーク面積(積分値:図1においてAで示す。)を、170〜−20ppmにあるピーク面積(積分値:図1においてBで示す。)で除することでPO4−x構造を定量している。
尚、70〜−20ppmの範囲には、主に固体電解質中のチオリン酸結合に起因する120〜70ppmのピークの低磁場側のスピニングサイドバンドのピークも含まれている(図中、矢印で示す。)。そのため、このピークの高磁場側に現れるサイドバンドのピーク(170〜150ppm、図中、矢印で示す。)と、低磁場側のサイドバンドのピーク面積は等しいとして、70〜−20ppmにあるピーク面積から高磁場側のサイドバンドのピーク面積(積分値:図1においてCで示す。)を差し引く補正をしている。
また、固体31P−NMRスペクトルの測定条件は下記のとおりとした。
装置 :日本電子株式会社製 JNM−CMXP302NMR装置
観測核 :31
観測周波数:121.339MHz
測定温度 :室温
測定法 :MAS法
パルス系列:シングルパルス
90°パルス幅:4μs
マジック角回転の回転数:8600Hz
FID測定後、次のパルス印加までの待ち時間:100〜2000s
(最大のスピン−格子緩和時間の5倍以上になるよう設定)
積算回数 :64回
化学シフトは、外部基準として(NHHPO(化学シフト1.33ppm)を用い決定した。
試料充填時の空気中の水分による変質を防ぐため、乾燥窒素を連続的に流しているドライボックス中で密閉性の試料管に試料を充填した。
(2)正極合材の製造
コバルト酸リチウムと上記で得た電解質粉末を60:40(重量比)で混合した。この混合物を合材として正極に用いて、テスト用電池(陰極はグラファイト、固体電解質層に用いる固体電解質は、ボールミル処理前の硫化物ガラス)を製造し、レート特性を評価した。その結果、5mA/cmでの充放電が可能であった。
実施例2
実施例1の(1)で製造した硫化物ガラスを粉末状態で、300℃で2時間熱処理し、ガラスセラミック化した。
この固体電解質のイオン伝導度を交流インピーダンス法(測定周波数100Hz〜15MHz)により測定したところ、室温で2.0×10−3S/cmを示した。
この固体電解質について、実施例1と同様に水含有トルエンにて処理し、正極合材用硫化物系固体電解質を製造し評価した。
その結果、トルエン処理した粉末中にはPO4−x構造が5%含まれていた。また、レート特性の評価の結果、7mA/cmでの充放電が可能であった。
実施例3
水含有トルエン中の水分を3質量%にした以外は、実施例2と同様に水含有トルエンにて処理し、正極合材用硫化物系固体電解質を製造し評価した。
その結果、トルエン処理した粉末中にはPO4−x構造が40%含まれていた。また、レート特性の評価の結果、7mA/cmでの充放電が可能であった。
比較例1
実施例1(1)で製造した硫化物ガラスであって、水含有トルエンによる処理をしないものを合材用固定電解質として使用した。その他は、実施例1と同様にしてテスト用電池を製造し、レート特性を評価した。その結果、5mA/cmでの充電はできず、レート特性に劣るものであった。
尚、硫化物ガラスにはPO4−x構造は検出されなかった。
比較例2
水含有トルエン中の水分量を30質量%にした以外は、実施例2と同様に水含有トルエンにて処理し、正極合材用硫化物系固体電解質を製造し評価した。
その結果、トルエン処理した粉末中にはPO4−x構造が80%含まれていた。また、レート特性の評価の結果、5mA/cmでの充放電できなかった。
本発明の正極合材用硫化物系固体電解質は、リチウム二次電池用固体電解質の正極合材に適している。
また、本発明の固体電解質を使用した全固体リチウム電池は、レート特性及びサイクル特性に優れ、携帯情報末端、携帯電子機器、家庭用小型電力貯蔵装置、モーターを動力源とする自動二輪車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等で使用するリチウム二次電池として使用できる。
実施例1で製造した正極合材用硫化物系固体電解質の31P−NMRスペクトルである。

Claims (5)

  1. 硫化物系固体電解質中に存在する、31PNMRスペクトルの70〜−20ppmの領域に観測されるリン酸結合(PO4−x:xは1〜4の整数)のピーク面積が、前記スペクトルの170〜−20ppmの領域に観測される全リン元素のピーク面積の1〜50%である硫化物系固体電解質を含む正極合材
  2. 硫化物系固体電解質中に存在する、 31 PNMRスペクトルの70〜−20ppmの領域に観測されるリン酸結合(PO 4−x :xは1〜4の整数)のピーク面積が、前記スペクトルの170〜−20ppmの領域に観測される全リン元素のピーク面積の1〜50%である硫化物系固体電解質を含む正極。
  3. 請求項1に記載の正極合材を用いて製造された正極。
  4. 請求項2又は3に記載の正極を備える全固体二次電池。
  5. 硫化物系固体電解質中に存在する、 31 PNMRスペクトルの70〜−20ppmの領域に観測されるリン酸結合(PO 4−x :xは1〜4の整数)のピーク面積が、前記スペクトルの170〜−20ppmの領域に観測される全リン元素のピーク面積の1〜50%である正極合材用硫化物系固体電解質の製造方法であって、
    水分を含む有機溶媒で硫化物系固体電解質を処理する正極合材用硫化物系固体電解質の製造方法。
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