JP5044890B2 - 非水電解液二次電池用負極板の製造方法、非水電解液二次電池用負極板及び非水電解液二次電池 - Google Patents

非水電解液二次電池用負極板の製造方法、非水電解液二次電池用負極板及び非水電解液二次電池 Download PDF

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本発明は、リチウムイオン二次電池に代表される非水電解液二次電池の負極活物質層を形成する負極活物質層用塗工組成物、該塗工組成物を用いて作製した負極板、当該負極板の製造方法、及び、当該負極板を組み込んだ非水電解液二次電池に関する。

近年、電子機器や通信機器の小型化および軽量化が急速に進んでおり、これらの駆動用電源として用いられる二次電池に対しても小型化および軽量化が要求されている。このため、従来のアルカリ蓄電池に代わり、高エネルギー密度で高電圧を有する非水電解液二次電池、代表的にはリチウムイオン二次電池が提案されている。
非水電解液二次電池の正極用電極板(正極板)は、マンガン酸リチウムやコバルト酸リチウム等の複合酸化物を正極活物質として用い、そのような正極活物質と結着材(バインダー)とを適当な湿潤剤(溶剤)に分散または溶解させてスラリー状の塗工組成物を調製し、当該塗工組成物を金属箔からなる集電体上に塗工して正極活物質層を形成することにより作製される。
一方、非水電解液二次電池の負極用電極板(負極板)は、充電時に正極活物質層から放出されるリチウムイオン等の陽イオンを吸蔵できるカーボン等の炭素質材料を負極活物質として用い、そのような負極活物質と結着材(バインダー)とを適当な湿潤剤(溶剤)に分散または溶解させてスラリー状の塗工組成物を調製し、当該塗工組成物を金属箔からなる集電体上に塗工して負極活物質層を形成することにより作製される。
そして、正極電極板と負極電極板それぞれに電流を取り出すための端子を取り付け、両電極板の間に短絡を防止するためのセパレータを挟んで巻き取り、非水電解質溶液を満たした容器に密封することにより二次電池が組み立てられる。
本発明は、上記二次電池の電極を形成するための塗工組成物に関するものである。例えば、非水電解液二次電池の電極を形成するための塗工組成物は種々知られており(例えば特許文献1)、塗布型電極板を作製する際には、集電体に対する活物質層の密着性、密度、均質性などを向上させるために、通常、活物質塗工液を電極板(集電体)上に塗付して塗工膜を形成後、プレス処理を行う。
そのようにして形成される活物質層は、圧延等の加工性や加工精度、また二次電池容量や安全性の観点から、厚さ、組成、表面平滑性において均一、均質性が厳格に要求されるが、塗工液と集電体表面との表面張力の差による塗工液のハジキまたは塗工液の分散不良等に起因すると考えられるクレータが活物質層に形成される問題がある。ここにいうクレータとは、活物質層中に形成される円形状のくぼみである。このようなクレータの発生は、水性エマルジョン塗工液を使用した場合により生じやすい傾向にある。クレータが形成されると、その箇所は、活物質層の厚さ、組成、表面平滑性が均質でなく、それらが複合的に悪影響し、最終的に得られる二次電池にリチウムデンドライト等が発生するおそれがあり、二次電池の安全性に問題が生じる。そのためそのようなクレータの発生のない塗工組成物が求められている。
特開2003−151555号公報
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、活物質層にクレータが生じず、厚さ、組成、表面平滑性において均一、均質性に優れた非水電解液二次電池用負極板を安定して製造しうる負極活物質層用塗工組成物を提供することを目的とする。

すなわち、本発明は、少なくとも、炭素質材料からなる負極活物質を固形分基準で90〜98.5重量%、少なくともジエン系ゴムを含む結着材を固形分基準で0.5〜10重量%、イソプロピルアルコールを組成物全量の0.8〜1.5重量%、および溶剤として水を組成物全量の30〜80重量%含む負極活物質層用塗工組成物を、集電体の一面または両面に塗布して負極活物質層を形成し、該負極活物質層をプレス加工して該負極活物質層の密度を1.5g/cc以上にする、非水電解液二次電池用負極板の製造方法に関する。


正極活物質としては、例えば、従来から非水電解液二次電池の正極活物質として用いられている材料を用いることができ、例えば、LiMn(マンガン酸リチウム)、LiCoO(コバルト酸リチウム)若しくはLiNiO(ニッケル酸リチウム)等のリチウム酸化物、またはTiS、MnO、MoOもしくはV等のカルコゲン化合物を例示することができる。特に、LiCoOを正極活物質として用い、炭素質材料を負極活物質として用いることにより、4ボルト程度の高い放電電圧を有するリチウム系二次電池が得られる。
正極活物質は、塗工層中に均一分散させるために、1〜100μmの範囲の粒径を有し、且つ平均粒径が3〜30μmの粉体であることが好ましい。これらの正極活物質は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
負極活物質としては、例えば、従来から非水電解液二次電池の負極活物質として用いられている材料を用いることができ、例えば、天然グラファイト、人造グラファイト、アモルファス炭素、カーボンブラック、または、これらの成分に異種元素を添加したもののような炭素質材料が好んで用いられる。溶媒が有機系の場合には金属リチウムまたはリチウム合金のようなリチウム含有金属が好適に用いられる。
負極活物質の粒子形状は特に限定されないが、例えば鱗片状、塊状、繊維状、球状のものが使用可能である。負極活物質は、塗工層中に均一に分散させるために、1〜100μmの範囲の粒径を有し、且つ平均粒径が3〜30μmの粉体であることが好ましい。これらの負極活物質単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
塗工組成物中の正極又は負極活物質の配合割合は、溶剤を除く配合成分を基準(固形分基準)としたときに、高い電池容量の実現とサイクル特性とのバランスとの点から90〜98.5重量%、好ましくは96〜98.5重量%とする。
結着材として従来から用いられているもの、例えば、非水電解液二次電池用電極板であれば、熱可塑性樹脂、より具体的にはポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリビニル樹脂、フッ素系樹脂又はポリイミド樹脂等を使用することができる。この際、反応性官能基を導入したアクリレートモノマー又はオリゴマーを結着材中に混入させることも可能である。そのほかにも、ゴム系の樹脂や、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂、アクリレートモノマー、アクリレートオリゴマー或いはそれらの混合物からなる電離放射線硬化性樹脂、上記各種の混合物を使用することもできる。
活物質層塗工組成物の結着材の配合割合は、例えば、通常の非水電解液二次電池用電極板であれば、固形分基準で0.5〜10重量%程度である。
活物質層用塗工組成物は、少なくとも上記正又は負極活物質、結着材以外に、通常は導電剤含有する。その他にも剥離強度を上げるための添加剤や固形分比率を上げる添加剤等を含有していてもよい。
そのような導電材としては、例えば、非水電解液二次電池用電極板であれば、グラファイト、カーボンブラック又はアセチレンブラック等の炭素質材料が必要に応じて用いられる。塗工組成物中の導電材の配合割合は、例えば、非水電解液二次電池用電極板であれば、通常、固形分基準で、1.5〜2.5重量%とする。
活物質塗工組成物を調製する溶剤としては、トルエン、メチルエチルケトン、N−メチル−2−ピロリドン或いはこれらの混合物等の有機溶剤、あるいは水を用いることができる。通常は固形分が組成物全体に対して30〜80重量%、好ましくは30〜60、より好ましくは35〜55重量%となるように配合し、塗工液をスラリー状に調製する。
負極用塗工組成物を調整する場合は、特に、溶剤として水を用いると共に、水中でコロイド状分散可能なゴム系結着材を選択することにより、水性エマルジョン塗工液を調製することもできる。水を用いる場合には、不純物の影響を防ぐために通常はイオン交換水を用いる。本発明は、このような水性エマルジョン塗工液に特に有用である。
本発明においては、活物質層用塗工組成物には、炭素数1〜5のアルキルアルコール、好ましくは炭層数3の分岐または直鎖のアルキルアリール、特にイソプロピルアルコール(IPA)が、組成物全量の0.6〜1.5重量%、好ましくは0.8〜1.5重量%含有される。このようなアルコールを添加することにより、電極箔に塗布した際にハジキを押さえ、また組成物の分散不良を抑制することができる。その添加量が少なすぎると、左記効果を得ることができない。またその添加量が多すぎると、電極乾燥後に、アルコールが活物質層中に残留し、電池性能が低下する問題がある。
活物質塗工組成物は、少なくとも適宜選択した活物質及び結着材、さらに通常は適宜選択した導電材、及び他の配合成分を適切な溶剤および本発明によりアルコールを混合し、ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル、ロールミルまたはプラネタリミキサー等の分散機により混合分散して、スラリー状に調製すればよい。
<電極板>
上記したような方法により調製された正極又は負極活物質層用塗工組成物を、基体である集電休の一面又両面に塗布、乾燥して正極又は負極活物質層を形成する。正極板の集電体としては、例えば、非水電解液二次電池用電極板であれば、通常、アルミニウム箔が好ましく用いられる。一方、負極板の集電休としては、例えば、非水電解液二次電池用の電極板であれば、電解銅箔や圧延銅箔等の銅箔が好ましく用いられる。集電体の厚さは、例えば、非水電解液二次電池用電極板であれば、通常5〜50μm程度とする。
活物質層用塗工組成物の塗布方法は、特に限定されないが、例えばスライドダイコート、コンマダイレクトコート、コンマリバースコート等のように、厚い塗工層を形成できる方法が適している。ただし、活物質層に求められる厚さが比較的薄い場合には、グラビアコートやグラビアリバースコート等により塗布してもよい。活物質層は、複数回塗布、乾燥を繰り返すことにより形成してもよい。
乾燥工程における熱源としては、熱風、赤外線、遠赤外線、マイクロ波、高周波、或いはそれらを組み合わせて利用できる。乾燥工程において集電体をサポートする金属ローラーや金属シートを加熱して放出させた熱によって乾燥してもよい。また、乾燥後、電子線または放射線を照射することにより結着材を架橋反応させて活物質層を得ることもできる塗布と乾燥は、複数回繰り返してもよい。
更に、得られた活物質層をプレス加工することにより、活物質層の密度、集電体に対する密着性、均質性を向上させることができる。
プレス加工は、例えば、金属ロール、弾性ロール、加熱ロールまたはシートプレス機等を用いて行う。プレス温度は、活物質層の塗工膜を乾燥させる温度よりも低い温度とする限り、室温で行っても良いし又は加湿して行っても良いが、通常は室温(室温の目安としては15〜35℃である)で行う。
ロールプレスは、ロングシート状の電極板を連続的にプレス加工できるので好ましい。ロールプレスを行う場合には定位プレス、定圧プレスいずれを行っても良い。プレスのライン速度は通常、5〜50m/min.とする。ロールプレスの圧力を線圧で管理する場合加圧ロールの直径に応じて調節するが、通常は線圧を0.5kgf/cm〜1tf/cmとする。
また、シートプレスを行う場合には通常、4903〜73550N/cm(500〜7500kgf/cm)、好ましくは29420〜49033N/cm(3000〜5000kgf/cm)の範囲に圧力を調節する。プレス圧力が小さすぎると活物質層の均質性が得られにくく、プレス圧力が大きすぎると集電体を含めて電極板自体が破損してしまう場合がある。活物質層は、一回のプレスで所定の厚さにしてもよく、均質性を向上させる目的で数回に分けてプレスしてもよい。
活物質層の塗工量は通常、20〜350g/mとし、その厚さは、乾燥、プレス後に通常10〜200μm、好ましくは50〜190μmの範囲にする。活物質層の密度は、塗工後は1.0g/cc程度であるが、プレス後は1.5g/cc以上(通常は1.5〜1.75g/cc程度)まで増大する。従って、プレス加工を支障なく行って体積エネルギー密度を向上させることにより、電池の高容量化を図ることができる。
<非水電解液二次電池>
以上のようにして電極板が得られ、この電極板を用いて非水電解液二次電池を作製することができる。
本発明に係る電極板を用いて非水電解液二次電池を作製する際には、電池の組立工程に移る前に活物質層中の水分及び/又は溶剤を除去するために、真空オープン等で加熱処理や減圧処理等のエージングをあらかじめ行うことが好ましい。
上記したような方法により作製された電極板(正極板、負極板)を、ポリエチレン製多孔質フィルムのようなセパレータを介して渦巻状に巻き回し、外装容器に挿入する。挿入後、正極板の端子接続部(集電休の露出面)と外装容器の上面に設けた正極端子をリードで接続し、一方、負極板の端子接続部(集電休の露出面)と外装容器の底面に設けた負極端子をリードで接続し、外装容器に非水電解液を充填し、密封することによって、本発明に係る電極板を備えた非水電解液二次電池が完成する。
リチウム系二次電池を作製する場合には、溶質であるリチウム塩を有機溶媒に溶かした非水電解液が用いられる。リチウム塩としては、例えば、LiClO、LiBF、LiPF、LiAsF、LiCl、LiBr等の無機リチウム塩、または、LiB(C、LiN(SOCF、LiC(SOCF、LiOSOCF、LiOSO、LiOSO、LiOSO、LiOSO11、LiOSO13、LiOSO15等の有機リチウム塩等が用いられる。
リチウム塩を溶解するための有機溶媒としては、環状エステル類、鎖状エステル類、環状エーテル類、鎖状エーテル類等を例示できる。より具体的には、環状エステル類としては、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、ビニレンカーボネート、2−メチル−γ−ブチロラクトン、アセチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等を例示できる。
鎖状エステル類としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルブチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルブチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ブチルプロピルカーボネート、プロピオン酸アルキルエステル、マロン酸ジアルキルエステル、酢酸アルキルエステル等を例示できる。
環状エーテル類としでは、テトラヒドロフラン、アルキルテトラヒドロフラン、ジアルキルテトラヒドロフラン、アルコキシテトラヒドロフラン、ジアルコキシテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、アルキル−1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキソラン等を例示できる。
鎖状エーテル類としては、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジエチルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル等を例示することができる。
活物質層用塗工組成物に、炭層数1〜5のアルキルアルコールを、組成物全量の0.6〜1.5重量%含有させることにより、活物質層形成に際して、クレータが生じない電極用塗工組成物、特に負極用塗工組成物を得ることが出来る。
活物質である炭素質材料として(鱗片状黒鉛(商品名MAGD:日立化成工業(株)社製))100重量部、結着材としてCMC(カルボキシメチルセルロース)(商品名セロゲン4H)(第一工業製薬(株)製)1.0重量部及び商品名YMZ−4(結着剤(ジエン系ゴム))(日本ゼオン(株)社製)1.8重量部を固形分49重量%になるように水およびイソプロピルアルコールとともに混合し、該混合物に対してイソプロピルアルコール(IPA)を、1.0重量%、0.8重量%、0.4重量%、0.1重量%、0重量%添加し、混練してスラリー状の負極用塗工組成物を得た。このとき、該組成物中イソプロピルアルコール(IPA)を、1.0重量%、0.8重量%、0.4重量%、0.1重量%、0重量%含むように添加した。
この負極用塗工組成物を集電体である銅箔(商品名YB−10:日本電解(株)製)上にダイコート法にて塗工量約103.0g/mとなるように、塗工長×塗工幅が125mm×260mmを1パターンとして80パターンの塗工を行い、乾燥した後、ロールプレス機により線圧0.1〜0.3tf/cmでプレスし、密度(1.20〜1.84g/cc)の負極活物質層を形成した。
得られた負極活物質層表面を目視観察し、活物質層中に形成されたクレータの発生数およびクレータの大きさを求めた。クレータ発生数は、目視にてカウントし、パターン当の最小クレータ発生数および最大クレータ発生数を求めた。大きさについては、金尺にて測定し、クレータの大きさの最大値と最小値とを記載した。結果を表1にまとめた。
Figure 0005044890


Claims (3)

  1. 少なくとも、炭素質材料からなる負極活物質を固形分基準で90〜98.5重量%、少なくともジエン系ゴムを含む結着材を固形分基準で0.5〜10重量%、イソプロピルアルコールを組成物全量の0.8〜1.5重量%、および溶剤として水を組成物全量の30〜80重量%含む負極活物質層用塗工組成物を、集電体の一面または両面に塗布して負極活物質層を形成し、該負極活物質層をプレス加工して該負極活物質層の密度を1.5g/cc以上にする、非水電解液二次電池用負極板の製造方法。
  2. 請求項1に記載の製造方法を用いて、集電体の一面または両面に負極活物質層を設けてなる、非水電解液二次電池用負極板。
  3. 請求項2に記載の非水電解液二次電池用負極板を備える、非水電解液二次電池。
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