JP4527423B2 - 活物質層用塗工組成物、非水電解液二次電池用電極板、及び非水電解液二次電池 - Google Patents

活物質層用塗工組成物、非水電解液二次電池用電極板、及び非水電解液二次電池 Download PDF

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Description

本発明は、リチウムイオン二次電池に代表される非水電解液二次電池用の活物質層用塗工組成物、電極材、及び当該電極材を用いた非水電解液二次電池に関する。
近年、電子機器や通信機器の小型化および軽量化が急速に進んでおり、これらの駆動用電源として用いられる二次電池に対しても小型化および軽量化が要求されている。このため、従来のアルカリ蓄電池に代わり、高エネルギー密度で高電圧を有する非水電解液二次電池、代表的にはリチウムイオン二次電池が提案されている。
非水電解液二次電池の正極用電極板(正極板)は、マンガン酸リチウムやコバルト酸リチウム等の複合酸化物を正極活物質として用い、そのような正極活物質と結着材(バインダー)とを適当な湿潤剤(溶剤)に分散または溶解させてスラリー状の塗工組成物を調製し、当該塗工組成物を金属箔からなる集電体上に塗工して正極活物質層を形成することにより作製される。
一方、非水電解液二次電池の負極用電極板(負極板)は、充電時に正極活物質層から放出されるリチウムイオン等の陽イオンを吸蔵できるカーボン等の炭素質材料を負極活物質として用い、そのような負極活物質と結着材(バインダー)とを適当な湿潤剤(溶剤)に分散または溶解させてスラリー状の塗工組成物を調製し、当該塗工組成物を金属箔からなる集電体上に塗工して負極活物質層を形成することにより作製される。
そして、正極電極板と負極電極板それぞれに電流を取り出すための端子を取り付け、両電極板の間に短絡を防止するためのセパレータを挟んで巻き取り、非水電解質溶液を満たした容器に密封することにより二次電池が組み立てられる。
近年さらに、より高容量の非水電解液二次電池が要求されてきており、活物質層中における直接電池容量に起因する活物質の配合量を増加するため、活物質を集電体上に固定するための結着材や導電性を確保するための導電材等、直接電池容量に関わらない材料を、活物質層用塗工組成物からできるだけ減らすことがなされている。また、使用する導電材を工夫して、サイクル特性や放電特性の向上を図る試みがなされている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
特開平7−296794号公報 特開平11−40139号公報 特開2002−343362号公報
高容量化のため塗膜の中に存在する導電材を極端に減らすと、導電パスの形成が不十分となり、塗膜の抵抗が上がり、サイクル特性の悪化及び内部抵抗の上昇といった電池性能が悪化する問題が、特に正極において生じており、導電材を極端に減らすことにより活物質の配合割合を増加して電池容量を上げることに限界が生じていた。一方、導電材の配合割合が少ない活物質層用塗工組成物は、保存安定性が悪く、数日放置しておくと体積抵抗率が上昇するという問題もあった。
本発明は上記の実状に鑑みて成し遂げられたものであり、その第一の目的は、保存安定性が良く、高い電池容量の非水電解液二次電池用電極板を安定して製造し得る活物質層用塗工組成物を提供することにある。
本発明は上記の実状に鑑みて成し遂げられたものであり、その第二の目的は、高い電池容量を実現し、サイクル特性の悪化及び内部抵抗の上昇といった問題が生じ難い非水電解液二次電池用電極板を提供することにある。
また、本発明の第三の目的は、上記電極板を用いて、高い電池容量でありながら、サイクル特性の悪化及び内部抵抗の上昇といった電池性能が悪化する問題が生じ難い非水電解液二次電池を提供することにある。
本発明に係る活物質層用塗工組成物は、活物質100重量部に対して導電材を1.5〜2重量部含有し、フタル酸ジブチルの吸油量が250〜320ml/100gで且つBET比表面積が50〜100m /gであるカーボンブラックを全導電材中に50重量%以上含有する。
本発明においては、フタル酸ジブチルの吸油量が250〜320ml/100gで且つBET比表面積が50〜100m /gであるカーボンブラックを全導電材中に50重量%以上含有するため、カーボンブラック等の導電材が均一に分散した状態が安定に保持される。このため、活物質100重量部に対して導電材を1.5〜2重量部と少量含有する活物質層用塗工組成物でありながら、導電性が確保されて体積抵抗率が低い値を有し、その上保存安定性が良い。活物質100重量部に対して導電材を1.5〜2重量部と少量しか含有しないため、高い電池容量の非水電解液二次電池用電極板を安定して製造し得る。
本発明に係る活物質層用塗工組成物は、調製後25℃で7日静置した後の体積抵抗率が150Ω・cm以下であることが好ましい。
本発明に係る非水電解液二次電池用電極板は、集電体の一面側又は両面に、活物質100重量部に対して導電材を1.5〜2重量部含有し、フタル酸ジブチルの吸油量が250〜320ml/100gで且つBET比表面積が50〜100m /gであるカーボンブラックを全導電材中に50重量%以上含有する活物質層を設けてなることを特徴とする。
本発明に係る非水電解液二次電池用電極板は、フタル酸ジブチルの吸油量が250〜320ml/100gで且つBET比表面積が50〜100m /gであるカーボンブラックを全導電材中に50重量%以上含有する活物質層を設けてなるため、活物質100重量部に対して導電材を1.5〜2重量部と少量含有する活物質層でありながら、カーボンブラック等の導電材が均一に分散した状態が安定に保持され、導電性が確保されて体積抵抗率が低い値を有する活物質層が得られる。活物質100重量部に対して導電材を1.5〜2重量部と少量しか含有しないため活物質層中に存在する活物質の割合が高くなり、高い電池容量を実現し、また、導電材が均一に分散した状態が安定に保持されるため、サイクル特性の悪化及び内部抵抗の上昇といった問題が生じ難い。
前記活物質層の体積抵抗率は、サイクル特性の悪化及び内部抵抗の上昇といった問題が生じ難い点から、150Ω・cm以下であることが好ましい。また、前記活物質層は、調製後25℃で7日静置した後の体積抵抗率が150Ω・cm以下である活物質層用塗工組成物を用いて形成されたものであることが、低い体積抵抗率の実現の点から好ましい。
次に、本発明に係る非水電解液二次電池は、上記本発明に係る非水電解液二次電池用電極板を備えることを特徴とする。この二次電池は、内部に装填された電極板が、導電材を少量含有する活物質層でありながら、該活物質層の体積抵抗率が低い値を有するため、高い電池容量でありながら、サイクル特性が良く、内部抵抗が低い。
本発明の活物質層用塗工組成物は、カーボンブラック等の導電材が均一に分散した状態
が安定に保持され、活物質100重量部に対して導電材を1.5〜2重量部と少量含有する活物質層用塗工組成物でありながら、導電性が確保されて体積抵抗率が低い値を有し、その上保存安定性が良い。活物質100重量部に対して導電材を1.5〜2重量部と少量しか含有せず、活物質の配合割合が多いため、高い電池容量の非水電解液二次電池用電極板を安定して製造し得る。
本発明に係る非水電解液二次電池用電極板は、活物質100重量部に対して導電材を1.5〜2重量部と少量しか含有せず、活物質の配合割合が多いため、高い電池容量を実現し、また、導電材が均一に分散した状態が安定に保持されるため、サイクル特性の悪化及び内部抵抗の上昇といった問題が生じ難い。
また、本発明に係る非水電解液二次電池は、内部に装填された電極板が、導電材を少量含有する活物質層でありながら、該活物質層の体積抵抗率が低い値を有するため、高い電池容量でありながら、サイクル特性が良く、内部抵抗が低い。
<活物質層用塗工組成物>
本発明に係る活物質層用塗工組成物は、活物質100重量部に対して導電材を2重量部以下含有し、フタル酸ジブチルの吸油量が250ml/100g以上で且つBET比表面積が50〜150m2/gであるカーボンブラックを全導電材中に50重量%以上含有することを特徴とする。
ここで、フタル酸ジブチルの吸油量(以下、DBP吸油量と略記する場合がある)は、JIS−K6221「ゴム用カーボンブラックの試験方法」6.1.1項により求めることができる。また、BET比表面積は、窒素吸着法によるBET比表面積をいう。
本発明に係る活物質層用塗工組成物は、正極用であっても負極用であってもいずれでも良い。正極用活物質層塗工組成物は、少なくとも正極活物質、導電材及び通常は結着材を含有する。一方、負極用活物質層塗工組成物は、少なくとも負極活物質、導電材及び通常は結着材を含有する。
正極活物質としては、従来から非水電解液二次電池の正極活物質として用いられている材料を用いることができ、例えば、LiMn24(マンガン酸リチウム)、LiCoO2(コバルト酸リチウム)若しくはLiNiO2(ニッケル酸リチウム)等のリチウム酸化物、または
TiS2、MnO2、MoO3もしくはV25等のカルコゲン化合物を例示することができる。特に、LiCoOを正極用活物質として用い、炭素質材料を負極用活物質として用いることにより、4ボルト程度の高い放電電圧を有するリチウム系2次電池が得られる。
正極活物質は、塗工層中に均一に分散させるために、1〜100μmの範囲の粒径を有し、且つ平均粒径が3〜30μmの粉体であることが好ましい。これらの正極用活物質は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
一方、負極活物質としては、従来から非水電解液二次電池の負極活物質として用いられている材料を用いることができ、例えば、天然グラファイト、人造グラファイト、アモルファス炭素、カーボンブラック、または、これらの成分に異種元素を添加したもののような炭素質材料が好んで用いられる。溶媒が有機系の場合には金属リチウムまたはリチウム合金のようなリチウム含有金属が好適に用いられる。
負極活物質の粒子形状は特に限定されないが、例えば、鱗片状、塊状、繊維状、球状のものが使用可能である。負極活物質は、塗工層中に均一に分散させるために、1〜100μmの範囲の粒径を有し、且つ平均粒径が3〜30μmの粉体であることが好ましい。これらの負極用活物質は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
塗工組成物中の正極又は負極活物質の配合割合は、溶剤を除く配合成分を基準(固形分基準)とした時に、高い電池容量を実現とサイクル特性とのバランスの点から90〜98.5重量%とすることが好ましく、更に96〜98.5重量%とすることが好ましい。
本発明において正極又は負極用活物質層塗工組成物には、活物質100重量部に対して導電材を2重量部以下含有し、フタル酸ジブチルの吸油量が250ml/100g以上で且つBET比表面積が50〜150m2/gであるカーボンブラックを全導電材中に50重量%以上含有するように導電材を添加する。フタル酸ジブチルの吸油量が250ml/100g以上で且つBET比表面積が50〜150m2/gであるカーボンブラックを全導電材中に50重量%以上含有するようにすると、導電材が均一に分散した状態が安定に保持される。このため、活物質100重量部に対して導電材を2重量部以下と少量含有する活物質層用塗工組成物でありながら、導電性が確保されて体積抵抗率が低い値を有し、その上保存安定性が良い。活物質100重量部に対して導電材を2重量部以下と少量しか含有しないため、高い電池容量の非水電解液二次電池用電極板を安定して製造し得る。
フタル酸ジブチルの吸油量が250ml/100g以上で且つBET比表面積が50〜150m2/gであるカーボンブラックは、分散安定性の点から、さらに好ましくはフタル酸ジブチルの吸油量が250〜320ml/100gで且つBET比表面積が50〜100m2/gであるカーボンブラックを用いることが好ましい。上記性状を示すカーボンブラックとしては、例えば、MMMCarbon製SuperP(フタル酸ジブチルの吸油量が290ml/100g、BET比表面積が62m2/g)が挙げられる。フタル酸ジブチルの吸油量が250ml/100g以上で且つBET比表面積が50〜150m2/gであるカーボンブラックを全導電材中に50重量%以上含有するようにすると、導電性が確保されて体積抵抗率が低い値を有し、その上保存安定性が良くなるが、更に体積抵抗率が低くなる点から、上記性状を示すカーボンブラックは多く含まれるほど好ましく、全導電材中に60重量%以上、更に70重量%以上配合されることが好ましい。
フタル酸ジブチルの吸油量が250ml/100g以上で且つBET比表面積が50〜150m2/gであるカーボンブラックと共に用いられる他の導電材としては、特に制限されず、例えば、グラファイト、フタル酸ジブチルの吸油量とBET比表面積が上記範囲外のカーボンブラックまたはアセチレンブラック等の炭素質材料が用いられる。
また、正極又は負極用活物質層塗工組成物には、通常、結着材が添加される。結着材としては従来から用いられているもの、例えば、熱可塑性樹脂、より具体的にはポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリビニル樹脂、PTFEやポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂、または、ポリイミド樹脂あるいはスチレンブタジエンゴム等のゴム系樹脂等を使用することができる。この際、反応性官能基を導入したアクリレートモノマーまたはオリゴマーを結着材中に混入させることも可能である。そのほかにも、ゴム系の樹脂や、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂、アクリレートモノマー、アクリレートオリゴマー或いはそれらの混合物からなる電離放射線硬化性樹脂、上記各種の樹脂の混合物を使用することもできる。
塗工組成物中の結着材の配合割合は、固形分基準で通常は0.5〜10重量%、好ましくは0.9〜4重量%とする。
正極又は負極用活物質層塗工組成物を調製する溶剤としては、トルエン、メチルエチルケトン、N−メチル−2−ピロリドン或いはこれらの混合物のような有機溶剤を用いることができる。塗工組成物中の溶剤は、通常は固形分が組成物全体に対して40〜85重量%、好ましくは50〜80、さらに好ましくは60〜80重量%となるように配合し、塗工液をスラリー状に調製する。
正極又は負極活物質層用塗工組成物は、適宜選択した正極又は負極活物質、導電材、通常結着材、及び他の配合成分を適切な溶剤中にいれ、ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル、ロールミルまたはプラネタリーミキサ等の分散機により混合分散して、スラリー状に調製できる。
本発明に係る活物質層用塗工組成物は、調製後25℃で7日静置した後の体積抵抗率が150Ω・cm以下であることが、保存安定性、及び低い体積抵抗率の活物質層を実現し、電池のサイクル特性を良好にする点から好ましい。なお、体積抵抗率は、100μmのPETフィルム上の一面側に活物質層塗工組成物を乾燥後の塗膜が100μmとなるように塗布、乾燥し、得られた塗膜について、抵抗率計(例えば、三菱化学製、ロレスタ−EP)を用いて四端子四探針法にて測定したものをいう。
<非水電解液二次電池用電極板>
本発明に係る非水電解液二次電池用電極板は、集電体の一面側又は両面に、活物質100重量部に対して導電材を2重量部以下含有し、フタル酸ジブチルの吸油量が250ml/100g以上で且つBET比表面積が50〜150m2/gであるカーボンブラックを全導電材中に50重量%以上含有する活物質層を設けてなることを特徴とする。
本発明に係る非水電解液二次電池用電極板は、フタル酸ジブチルの吸油量が250ml/100g以上で且つBET比表面積が50〜150m2/gであるカーボンブラックを全導電材中に50重量%以上含有する活物質層を設けてなるため、活物質100重量部に対して導電材を2重量部以下と少量含有する活物質層でありながら、カーボンブラック等の導電材が均一に分散した状態が安定に保持され、導電性が確保されて体積抵抗率が低い値を有する活物質層が得られる。活物質100重量部に対して導電材を2重量部以下と少量しか含有しないため活物質層中に存在する活物質の割合が高くなり、高い電池容量を実現し、また、導電材が均一に分散した状態が安定に保持されるため、サイクル特性の悪化及び内部抵抗の上昇といった問題が生じ難い。
本発明に係る非水電解液二次電池用電極板は、正極板であっても負極板であってもいずれでも良い。正極板は、少なくとも正極活物質、導電材及び通常は結着材を含有する正極用活物質層塗工組成物を集電体の一面側又は両面に塗布して、正極活物質層を形成することによって作製される。一方、負極板は、少なくとも負極活物質、導電材及び通常は結着材を含有する負極用活物質層塗工組成物を集電体の一面側又は両面に塗布して、負極活物質層を形成することによって作製される。
電極板の活物質層は、少なくとも正極又は負極活物質、導電材、及び通常結着材を含有し、さらに必要に応じてその他の成分を含有してなるものであり、乾燥後の活物質層に含有される各成分の配合割合は、活物質層用塗工組成物の固形分基準での配合割合と同じである。従って、本発明に係る非水電解液二次電池用電極板は、活物質100重量部に対して導電材を2重量部以下含有し、フタル酸ジブチルの吸油量が250ml/100g以上で且つBET比表面積が50〜150m2/gであるカーボンブラックを全導電材中に50重量%以上含有する、上記本発明に係る活物質層用塗工組成物を用いて、集電体の一面側又は両面に塗布して、活物質層を形成することによって作製することができる。
正極板の集電体としては通常、アルミニウム箔が好ましく用いられる。一方、負極板の集電体としては、電解銅箔や圧延銅箔等の銅箔が好ましく用いられる。集電体の厚さは通常、5〜50μm程度とする。
正極又は負極活物質層用塗工組成物の塗布方法は、特に限定されないが、例えばスライドダイコート、コンマダイレクトコート、コンマリバースコート等のように、厚い塗工層を形成できる方法が適している。ただし、活物質層に求められる厚さが比較的薄い場合には、グラビアコートやグラビアリバースコート等により塗布してもよい。活物質層は、複数回塗布、乾燥を繰り返すことにより形成してもよい。
乾燥工程における熱源としては、熱風、赤外線、遠赤外線、マイクロ波、高周波、或いはそれらを組み合わせて利用できる。乾燥工程において集電体をサポート又はプレスする金属ローラーや金属シートを加熱して放出させた熱によって乾燥してもよい。また、乾燥後、電子線または放射線を照射することにより、結着材を架橋反応させて活物質層を得ることもできる。塗布と乾燥は、複数回繰り返してもよい。
更に、得られた正極又は負極活物質層をプレス加工することにより、活物質層の密度、集電体に対する密着性、均質性を向上させることができる。
プレス加工は、例えば、金属ロール、弾性ロール、加熱ロールまたはシートプレス機等を用いて行う。本発明においてプレス温度は、活物質層の塗工膜を乾燥させる温度よりも低い温度とする限り、室温で行っても良いし又は加温して行っても良いが、通常は室温(室温の目安としては15〜35℃である。)で行う。
ロールプレスは、ロングシート状の負極板を連続的にプレス加工できるので好ましい。ロールプレスを行う場合には定位プレス、定圧プレスいずれを行っても良い。プレスのライン速度は通常、5〜50m/min.とする。ロールプレスの圧力を線圧で管理する場合、加圧ロールの直径に応じて調節するが、通常は線圧を0.5kgf/cm〜1tf/cmとする。
また、シートプレスを行う場合には通常、4903〜73550N/cm(500〜7500kgf/cm)、好ましくは29420〜49033N/cm(3000〜5000kgf/cm)の範囲に圧力を調節する。プレス圧力が小さすぎると活物質層の均質性が得られにくく、プレス圧力が大きすぎると集電体を含めて電極板自体が破損してしまう場合がある。活物質層は、一回のプレスで所定の厚さにしてもよく、均質性を向上させる目的で数回に分けてプレスしてもよい。
正極又は負極活物質層の塗工量は通常、20〜350g/m2とし、その厚さは、乾燥、プレス後に通常10〜200μm、好ましくは50〜190μmの範囲にする。負極活物質層の密度は、塗工後は1.0g/cc程度であるが、プレス後は1.5g/cc以上(通常は1.5〜1.75g/cc程度)まで増大する。従って、プレス加工を支障なく行って体積エネルギー密度を向上させることにより、電池の高容量化を図ることが出来る。
前記活物質層の体積抵抗率は、導電性が確保されてサイクル特性の悪化及び内部抵抗の上昇といった問題が生じ難い点から、150Ω・cm以下であることが好ましい。活物質層の体積抵抗率は、集電体とは絶縁させて測定する必要があるため、導電性のない基材上に活物質層を作製して測定する。活物質層の体積抵抗率は、具体的には、上記活物質層塗工組成物の体積抵抗率と同様に、100μmのPETフィルム上の一面側に活物質層塗工組成物を乾燥後の塗膜が100μmとなるように塗布、乾燥し、得られた塗膜について、抵抗率計(例えば、三菱化学製、ロレスタ−EP)を用いて四端子四探針法にて測定したものをいう。
前記活物質層の体積抵抗率が150Ω・cm以下であるようにするためには、活物質層は、調製後25℃で7日静置した後の体積抵抗率が150Ω・cm以下である活物質層用塗工組成物を用いて形成されることが好ましい。
以上のようにして本発明に係る非水電解液二次電池用電極板が得られ、この電極板を用いて非水電解液二次電池を作製することができる。
本発明に係る電極板を用いて二次電池を作製する際には、電池の組立工程に移る前に活物質層中の水分及び/又は溶剤を除去するために、真空オーブン等で加熱処理や減圧処理等のエージングをあらかじめ行うことが好ましい。
上記したような方法により作製された正極板及び負極板を、ポリエチレン製多孔質フィルムのようなセパレータを介して渦巻状に巻き回し、外装容器に挿入する。挿入後、正極板の端子接続部(集電体の露出面)と外装容器の上面に設けた正極端子をリードで接続し、一方、負極板の端子接続部(集電体の露出面)と外装容器の底面に設けた負極端子をリードで接続し、外装容器に非水電解液を充填し、密封することによって、本発明に係る電極板を備えた非水電解液二次電池が完成する。
リチウム系二次電池を作製する場合には、溶質であるリチウム塩を有機溶媒に溶かした非水電解液が用いられる。リチウム塩としては、例えば、LiClO、LiBF、LiPF、LiAsF、LiCl、LiBr等の無機リチウム塩、または、LiB(C、LiN(SOCF、LiC(SOCF、LiOSOCF、LiOSO、LiOSO、LiOSO、LiOSO11、LiOSO13、LiOSO15等の有機リチウム塩等が用いられる。
リチウム塩を溶解するための有機溶媒としては、環状エステル類、鎖状エステル類、環状エーテル類、鎖状エーテル類等を例示できる。より具体的には、環状エステル類としては、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、ビニレンカーボネート、2−メチル−γ−ブチロラクトン、アセチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等を例示できる。
鎖状エステル類としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルブチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルブチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ブチルプロピルカーボネート、プロピオン酸アルキルエステル、マロン酸ジアルキルエステル、酢酸アルキルエステル等を例示できる。
環状エーテル類としては、テトラヒドロフラン、アルキルテトラヒドロフラン、ジアルキルテトラヒドロフラン、アルコキシテトラヒドロフラン、ジアルコキシテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、アルキル−1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキソラン等を例示できる。
鎖状エーテル類としては、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジエチルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル等を例示することができる。
(実施例1;非水電解液二次電池用電極板の作製)
正極用活物質としてLiCoO粉末を100重量部と、導電材としてMMMCarbon製SuperPを2重量部と、結着材としてポリフッ化ビニリデンを2重量部と、溶剤としてN−メチル−ピロリドン44重量部とを、プラネタリディスパで混合分散することにより、活物質層用塗工組成物の調製を行った。一面あたりの塗工量は約250g/m2とし、厚さ15μmのアルミ箔の一面側にダイコートを用いて活物質層用塗工組成物を塗工した。その後、乾燥し、ロールプレスにより圧延し、電極板を得た。評価結果を表1に示す。
(実施例2〜4、比較例1〜3)
表1に示した配合により、実施例1と同様に活物質層用塗工組成物の調製を行い、実施例1と同様に塗工し、乾燥し、圧延して電極板を得た。評価結果を表1に示す。
(評価)
(1)活物質層用塗工組成物の保存後体積抵抗率
活物質層用塗工組成物を調製後25℃で7日静置した後、100μmのPETフィルム上の一面側に活物質層塗工組成物を乾燥後の塗膜が100μmとなるように塗布、乾燥し、得られた塗膜について、抵抗率計(例えば、三菱化学製、ロレスタ−EP)を用いて四端子四探針法にて測定し、調製後25℃で7日静置した後の活物質層用塗工組成物の体積抵抗率により保存安定性を評価した。調製後25℃で7日静置した後の体積抵抗率が150Ω・cm以下であったものは○、150Ω・cmより大きいものは×とした。
(2)活物質層の体積抵抗率の測定
100μmのPETフィルム上の一面側に活物質層塗工組成物を乾燥後の塗膜が100μmとなるように塗布、乾燥し、得られた塗膜について、抵抗率計(例えば、三菱化学製、ロレスタ−EP)を用いて四端子四探針法にて測定した。
Figure 0004527423
本発明に係る活物質層用塗工組成物が調製された実施例1〜4では、調製後25℃で7日静置した後の体積抵抗率が150Ω・cm以下であり、保存安定性が良かった。また、本発明に係る活物質層用塗工組成物を用いて作製された本発明に係る電極板である実施例1〜4は、フタル酸ジブチルの吸油量が250ml/100g以上で且つBET比表面積が50〜150m2/gであるカーボンブラックを全導電材中に50重量%以上含有する活物質層を設けてなるため、活物質100重量部に対して導電材を2重量部以下と少量含有する活物質層でありながら、活物質層の体積抵抗率が150Ω・cmより低く、且つ、高い電池容量を実現した。一方、比較例では、活物質層用塗工組成物は、調製後25℃で7日静置した後の体積抵抗率が150Ω・cm以下より大きくなり、保存安定性が悪かった。また、比較例の電極板は、活物質100重量部に対して導電材を2重量部以下含有するため高い電池容量は実現するものの、活物質層の体積抵抗率が150Ω・cmより大きく、サイクル特性の悪化や内部抵抗の上昇といった電池性能を悪化させるものであった。

Claims (6)

  1. 活物質100重量部に対して導電材を1.5〜2重量部含有し、フタル酸ジブチルの吸油量が250〜320ml/100gで且つBET比表面積が50〜100m /gであるカーボンブラックを全導電材中に50重量%以上含有する、活物質層用塗工組成物。
  2. 調製後25℃で7日静置した後の体積抵抗率が150Ω・cm以下である、請求項1に記載の活物質層用塗工組成物。
  3. 集電体の一面側又は両面に、活物質100重量部に対して導電材を1.5〜2重量部含有し、フタル酸ジブチルの吸油量が250〜320ml/100gで且つBET比表面積が50〜100m /gであるカーボンブラックを全導電材中に50重量%以上含有する活物質層を設けてなる、非水電解液二次電池用電極板。
  4. 前記活物質層の体積抵抗率が150Ω・cm以下である、請求項3に記載の非水電解液二次電池用電極板。
  5. 前記活物質層が、調製後25℃で7日静置した後の体積抵抗率が150Ω・cm以下である活物質層用塗工組成物を用いて形成された、請求項3に記載の非水電解液二次電池用
    電極板。
  6. 前記請求項3乃至5に記載の非水電解液二次電池用電極板を備える、非水電解液二次電池。
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