JP5043731B2 - 遮水壁の構築工法 - Google Patents
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Description
SMW工法において用いる多軸混練オーガー機としては様々な規格のものがあるが、最も標準的なものとしてφ550〜650mmオーガーを450mm間隔で3〜5軸としたものが多用されており、またより大型のものとしてφ850〜900mmオーガーを600mm間隔で3軸としたものも広く用いられている。φ650mm@450mmによるSMWの水平断面形状および有効壁厚(最小壁厚)を図15(a)に示し、φ850mm@600mmによるSMWの水平断面形状および有効壁厚(最小壁厚)を図15(b)に示す。
SMWはそのような高度の遮水性能を有する連続壁としても機能するものであり、したがってSMW工法はそのような遮水壁を構築する場合にも好適に採用可能である。
しかし、その場合、上述したような最も一般的な標準機(φ650mm@450mm)を用いることで構築される遮水壁は図15(a)に示すように有効壁厚(最小壁厚:斜線を付して示す)が469mmとなってしまい、上記のような施設における遮水壁に要求される「厚さ500mm以上」との基準を満たさないことになる。
但し、この種の遮水壁は山留壁を兼用する場合も多く、その場合は(c)に示すように遮水壁の中心位置に芯材としてのH形鋼を配置しておいて遮水壁を構築した後にその前面側を掘削することが一般的であるが、その際には芯材の表面を掘削面に露出させるために遮水壁の表層部も若干掘削されてしまうから、その結果として遮水壁としての有効壁厚はより小さくなる。図示例の場合には芯材としてH−400mmを用いていることから、掘削後における遮水壁の有効壁厚は501mmとなって必要壁厚ぎりぎりとなる。
また、特許文献1に示される装置は深さ方向で壁厚を変更することが可能なものの実質的に各軸をより大径のものにしたものであるし、特許文献2に示されるものは標準機に比べて装置全体が複雑化せざるを得ず汎用性に欠けるので一般的ではない。
たとえば、前記多軸混練オーガー機における固定翼式オーガーヘッドと拡翼式オーガーヘッドとを交互に配列したうえで、該多軸混練オーガー機の一方の端部においては固定翼式オーガーヘッドを隣り合わせて配置しておくことにより、先行エレメントと後行エレメントの双方に重複する前記セメント柱体を、先行エレメントの造成の際に固定翼式オーガーヘッドにより造成したうえで後行エレメントの造成の際に拡翼式オーガーヘッドにより拡大して再造成するか、もしくは、先行エレメントの造成の際に拡翼式オーガーヘッドにより拡大して造成したうえで後行エレメントの造成の際に固定翼式オーガーヘッドにより再造成することによっても、双方のエレメントにより造成される一連のソイルセメント壁体における各ソイルセメント柱体の径寸法を1本おきに拡大造成することができる。
したがって、SMW工法における汎用機に対して簡易な改良を加えることのみで通常よりも有効壁厚を合理的に拡大することが可能であり、それにより実質的に小径のオーガーによる標準機を用いる場合と同等の工程とコストで有効壁厚を拡大することが可能であって施工効率化とコスト軽減に大きく寄与することができる。
図1は本実施形態の工法により構築された遮水壁の一例を示す。これは、上述した最も標準的な多軸混練オーガー機φ650mm@450mm(650mm径のオーガーを450mm間隔で配列した構成のもの)を用いることを基本としつつ、一部のオーガーに簡易な改良を加えることのみで、各オーガーによる造成されるソイルセメント柱体の径寸法を1本おきに若干拡大し、それにより遮水壁全体の有効壁厚を拡大するようにしたものである。
逆転拡翼式ビット3はその基端部が攪拌翼4にピン5により回転自在に連結されていて、この拡翼式オーガーヘッド2Bの回転方向が変更されることで自ずと出没するものとされている。すなわち、実線で示す正転時には逆転拡翼式ビット3は攪拌翼4の回転半径内に自ずと収納(縮翼状態)されていてその際には攪拌翼4のみによる通常の攪拌半径(つまりφ650mm)での攪拌がなされるが、逆転時には地盤からの抵抗を受けて先端側が攪拌翼4の外周より半径方向外側に突出するように回転して拡翼状態となり、その際の突出寸法が50mmに設定されていることにより拡翼状態における攪拌半径は750mmとなるようにされているものである。
なお、上記の「正転」「逆転」とはオーガー本来の回転方向のことではなく、逆転拡翼式ビット3が収納されてソイルセメント柱体が拡大されない方向の回転を「正転」といい、逆転拡翼式ビット3が突出してソイルセメント柱体を拡大する方向の回転を「逆転」という。
以下、その基本的な作業手順を図3〜図6を参照して具体的に説明するが、これはあくまで従来一般のSMW工法を基本とし、かつ通常のSMW工法における汎用の装置類を用いることを基本とするものであるので、本実施形態に特有の工程や手順以外については通常のSMW工法の基本的な工程や手順をそのまま踏襲することを原則とする。
なお、上部の遮水壁W1も下部の山留壁W2と同様に山留壁としての機能を併せもつものであり、したがってこれは遮水機能を有する山留壁というべきものであるが、ここでは単に遮水壁W1という。また、以下の説明では上部の遮水壁W1と下部の山留壁W2の全体を併せて単に遮水壁W1という場合がある。勿論、遮水壁W1の下部に山留壁W2を設ける必要がなければ山留壁W2は省略して差し支えない。
(b)に示すように装置下端を山留壁W2の下端位置まで貫入させた後、各オーガー11a〜11eをそのまま正転させつつ、かつセメントスラリーを吐出しつつ、装置全体を引き抜いていく。そして、(c)に示すように装置下端が遮水壁W1の下部(山留壁W2の上部)の位置に達したら、この時点で全てのオーガー11a〜11eを同期して逆転させ、それ以降は逆転させつつ引き抜くこととする。これにより遮水壁W1の造成範囲においては拡翼式オーガーヘッド2Bにおける逆転拡翼式ビット3が自ずと突出して拡翼状態となり、攪拌半径が自ずと拡大される。
したがって(d)に示すように引き抜きが完了して1エレメントのソイルセメント壁体が造成された時点では、下部の山留壁W2の部分においては通常のSMW(各ソイルセメント柱体1Aの径がいずれも650mm、したがって有効壁厚は469mm)が造成され、その上部の遮水壁W1の部分においてはソイルセメント柱体の径が1本おきに拡大されて650mm径のソイルセメント柱体1Aと750mm径のソイルセメント柱体1Bとが交互に配列されたものとなり、そこでの有効壁厚は533mmとなる。
その際、(b)の段階においては第1エレメントと第2エレメントとの間にソイルセメント柱体の3本分に相当する間隔を確保しておき、(c)の段階では両側のオーガー11a,11eをそれぞれ造成済みの第1,第2エレメントの端部のソイルセメント柱体に対して挿入することにより、第3エレメントの両側の端部をそれぞれ第1、第2エレメントの双方の端部に対して重複(斜線を付して示す)させた状態で造成するものである。
以降は同様の手順を繰り返して、図示しているように第4エレメント、第5エレメント・・・を造成していくことにより、遮水壁全体を完全に隙間無く一体化させた状態で構築することができる。
したがって本発明工法は、特に廃棄物処分場等の施設において高度の遮水性能が要求される有効壁厚500mm以上の遮水壁を構築する場合の工法として極めて合理的であり最適である。
また、上記実施形態では引抜き時に各オーガーを逆転させることでソイルセメント柱体を拡大するようにしたが、それとは逆に貫入時に逆転させて拡大することでも良いし、あるいは貫入時と引抜き時の双方で逆転させて拡大することでも良い。
図7〜図8は両端の2軸(オーガー11a,11e)および中央の1軸(オーガー11c)を通常の固定翼式オーガーヘッド2Aとしてこれにより通常の650mm径のソイルセメント柱体1Aを造成し、それらの間の2軸(オーガー11b,11d)を拡翼式オーガーヘッド2Bとして750mm径に拡大したソイルセメント柱体1Bを造成する場合の例であって、そのこと以外は上記実施形態と同様に構成したものであり、上記実施形態の場合と同様の構造の遮水壁を全く同様の手順により構築することができる。
これは、図3に示したように両端2軸と中央1軸とを拡翼式オーガーヘッド2Bとした多軸混練オーガー機10を基本として、その一方の端部に位置するオーガーヘッド(オーガー11eに対応するもの)を固定翼式オーガーヘッド2Aに変更したものであり、したがって5軸のうちの2軸(オーガー11a、11c)のみを拡翼式オーガーヘッド2Bとして一方の端部においては固定翼式オーガーヘッド2Aが2本連続して並ぶようにしたものである。
あるいは、図6に示した手順(第1エレメントと第2エレメントとの間に第3エレメントを造成する)により各エレメントを造成することによっても、図10(a)〜(c)に示すように重複部において拡大されない状態で先行造成されたソイルセメント柱体1Aが後行エレメントの造成により自ずと再造成されて拡大され、かつ、重複部において既に拡大された状態で先行造成されたソイルセメント柱体1Bに対してはその内側に拡大されないソイルセメント柱体1Aがさらに再造成されることになり、結局は同様の遮水壁を造成することができることになる。
そして、固定翼式オーガーヘッド2Aと拡翼式オーガーヘッド2Bとをそのような配列とすることにより、上記実施形態のような5軸型の場合のみならず、以下に示す3軸型の場合や、あるいは7軸以上のさらに多軸型の場合においても同様の配列による同様の作業手順の採用が可能となる。
図11は3軸のうちの両端2軸を拡翼式オーガーヘッド2Bとして中央軸を固定翼式オーガーヘッド2Aとしたもの(5軸型の場合における図5に相当するもの)であり、図12は逆に中央軸を拡翼式オーガーヘッド2Bとして両側2軸を固定翼式オーガーヘッド2Aとしたもの(同、図8に相当するもの)であり、図13は一方の端部において固定翼式オーガーヘッド2Aを並べ、他方の端部に拡翼式オーガーヘッド2Bを配置したもの(同、図9に相当するもの)である。これらはいずれも(a)〜(c)に示す手順によって各ソイルセメント柱体1A,1Bを1本おきに拡大して有効壁厚500mm以上を満足する遮水壁を造成することができる。
但し、その場合には従来と同様に遮水壁の前面側を掘削する際に遮水壁の表層部を芯材の表面まで掘削してしまうことになるので、その分だけ遮水壁の有効壁厚が小さくならざるを得ず、したがってそのような掘削分を見込んでたとえば図14に示すように芯材の寸法や配置位置を設定すれば良い。
そのような不具合を解決するためには芯材20としてより大断面のH形鋼を配置することが考えられ、たとえば図14(b)に示すように芯材20としてH形鋼H-500を用いれば遮水壁W1の前面側の切除分が削減されて有効壁厚が516mmとなり、所要壁厚500mm以上との基準は満足する。
すなわち、図14(c)に示すように、(a)の場合と同様に芯材20としてH形鋼H-400を用いることとしてその芯材20をソイルセメント柱体1A,1Bの中心位置に配置するのではなく前面側(掘削側)に偏心させて配置するのであり、この場合は(b)と同様の有効壁厚を確保しつつ芯材20の断面縮小が可能となっている。
つまり、通常のように芯材20を単に遮水壁の中心位置に配置した場合には有効壁厚を無駄に小さくしてしまうことになるが、本例のように芯材20を掘削側に偏心させて配置することによりそのような無駄を最小限とでき、芯材20の断面節約と有効壁厚の確保とを両立させることができる。
なお、いずれにしても、遮水壁W1に芯材20を配置する場合には、図示例のようにソイルセメント柱体1A,1Bの全てに芯材20を配置することでも良いが、拡大したソイルセメント柱体1Bにのみ芯材20を配置したり、それとは逆に拡大していないソイルセメント柱体1Aにのみ芯材20を配置したり、さらにはソイルセメント柱体の径の大小とは無関係に、任意の位置に任意断面の芯材20を最適配置することでも勿論良い。
1B ソイルセメント柱体(拡大)
2A 固定翼式オーガーヘッド
2B 拡翼式オーガーヘッド
3 逆転拡翼式ビット
4 攪拌翼
5 ピン
10 多軸混練オーガー機
11a〜11e オーガー
20 芯材(H形鋼)
W1 遮水壁
W2 山留壁
Claims (4)
- 先端部にオーガーヘッドを備える複数のオーガーを一列をなすように配列して隣合うオーガーヘッドの回転軌跡をラップさせた構成の多軸混練オーガー機を用いて、該多軸混練オーガー機で原地盤を削孔しつつその先端よりセメントスラリーを吐出して混練することにより、各軸のオーガーによりそれぞれ造成されるソイルセメント柱体を相互にラップさせた状態で1エレメントのソイルセメント壁体を順次造成し、該ソイルセメント壁体を連続的に一体造成することによって所定壁厚の遮水壁を構築する工法であって、
先行エレメントにより先行造成したソイルセメント壁体の端部に位置するソイルセメント柱体と、後行エレメントにより後行造成するソイルセメント壁体の端部に位置するソイルセメント柱体とを重複させることによって、双方のソイルセメント壁体を連続的に一体造成するとともに、
前記多軸混練オーガー機における各軸のオーガーの先端部に備えられているオーガーヘッドとして、攪拌半径が一定の固定翼式オーガーヘッドと、該固定翼式オーガーヘッドよりも攪拌半径を拡大可能な拡翼式オーガーヘッドとを併用して、それら固定翼式オーガーヘッドと拡翼式オーガーヘッドとを交互に配列しておくことにより、該多軸混練オーガー機により造成する各ソイルセメント柱体の径寸法を1本おきに拡大造成することを特徴とする遮水壁の構築工法。 - 請求項1記載の遮水壁の構築工法であって、
前記多軸混練オーガー機における固定翼式オーガーヘッドと拡翼式オーガーヘッドとを交互に配列したうえで、該多軸混練オーガー機の一方の端部においては固定翼式オーガーヘッドを隣り合わせて配置しておくことにより、
先行エレメントと後行エレメントの双方に重複する前記セメント柱体を、先行エレメントの造成の際に固定翼式オーガーヘッドにより造成したうえで後行エレメントの造成の際に拡翼式オーガーヘッドにより拡大して再造成するか、もしくは、先行エレメントの造成の際に拡翼式オーガーヘッドにより拡大して造成したうえで後行エレメントの造成の際に固定翼式オーガーヘッドにより再造成することによって、双方のエレメントにより造成される一連のソイルセメント壁体における各ソイルセメント柱体の径寸法を1本おきに拡大造成することを特徴とする遮水壁の構築工法。 - 請求項1または2記載の遮水壁の構築工法であって、
前記拡翼式オーガーヘッドを、正転時には収納され逆転時には径方向外側に突出して攪拌半径を拡大する逆転拡翼式ビットを備えた構成として、各軸のオーガーを同期して正転させた際には各ソイルセメント柱体の径寸法を均等に造成可能とし、
該多軸混練オーガー機を原地盤に貫入した後の引き抜き工程において各軸のオーガーを同期して逆転させることにより、前記拡翼式オーガーヘッドが備える逆転拡翼式ビットを突出せしめて該拡翼式オーガーヘッドにより造成されるソイルセメント柱体の径寸法を拡大することを特徴とする遮水壁の構築工法。 - 請求項1,2または3記載の遮水壁の構築工法であって、
構築するべき遮水壁を山留壁としても機能させるべく、1エレメントのソイルセメント壁体を造成した後、該ソイルセメント壁体にH形鋼からなる芯材を挿入して、遮水壁の造成後にその前面側を前記芯材の表面の位置まで掘削することとし、
前記芯材をソイルセメント壁体に対して挿入するに際してはその挿入位置を遮水壁の厚さ方向中心位置よりも前面側に偏心させておくことを特徴とする遮水壁の構築工法。
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