JP5043057B2 - 電極式製パン用工程紙及び電極式製パン法 - Google Patents
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特に、本発明は、電極式製パン法により生パン粉用のパンを製造する焼成工程で、製パン容器内面とパン生地間に配置して使用することができるとともに、焼成後の熟成工程を経た焼き上がりパンからの剥離性に優れた面を有する未晒片艶紙からなる電極式製パン工程での使用に適した工程紙及びその工程紙を使用した電極式製パン法に関する。
パン粉の原料となるパンの製造法としては、焙焼式製パン法、電極式製パン法、高周波を利用したクラッカータイプのパンを製造する製パン法等が挙げられるが、生パン粉は電極式製パン法で製造される場合が多い。生パン粉は、パンを所望の粒度に粉砕したもので、白パン粉とも称されるように白色度が高く、水分が30〜35質量%含まれていて食感のソフトさがあり、冷凍食品用として使用されることが多い。
このような用途に使用できるクッキングシートとして市販されているものは、紙に剥離剤処理が施されているものである。剥離剤処理は、紙にシリコーンやワックス等を塗布する処理であり、シリコーン塗工が一般的である。このような剥離剤処理したクッキングシートの多くはグラシン紙系原紙にシリコーン塗布したものであり、両面使用できるように、両面にシリコーン塗工しているタイプのものや、印刷で表裏を表示して片面のみにシリコーン加工しているタイプのものがある。他に、上質紙系原紙にシリコーン塗布したものもあり、このタイプのものとしては、上質紙系原紙にシリコーンを含浸させているものや、シリコーンを塗工したものがあるが、原紙内へのシリコーンの浸み込みを抑制するために原紙に目止め処理が施されているのが一般的である。これらのクッキングシートは、いずれも地色が白色系であるものが大半を占めている。
また、目止め処理とは、原紙表面にシリコーンを塗工する際に、原紙層内部へのシリコーンの浸透を抑制するために施される処理であり、PVA(ポリビニルアルコール)や澱粉等の水溶性樹脂を原紙面に塗工するか又は含浸させる処理が普通である。
クッキングシートに関しては、既に数多くの特許文献、たとえば、特許文献1〜6等が提案されているが、電極式製パン法による生パンの製造工程に使用できるクッキングシートに関する文献は見当たらない。
本発明は、上記したような焼成容器の洗浄等に要する労力の問題や、歩留りが悪いという問題を改善し、コストを削減することを可能とする電極式製パン法用の工程紙を提供することを目的とするものである。
上記熟成工程は、焼き上がったパンを恒温・恒湿条件下で静置してパン内の澱粉を硬化させるための工程であり、例えば、24時間かけて調湿するような工程である。熟成工程を経たパンは、粉砕工程で粉砕し易い状態となる。
また、そのような透湿度と吸水性を備えた紙基材のパン生地と接触する面に適度の易剥離性を付与することにより、焼成工程での焼き上がり状態がよく、かつ、引き続く熟成工程でパンから剥がさずにそのままパンの熟成処理に供することができ、熟成処理後には生成白パンから綺麗に剥がし取ることができる工程紙が得られることの知見を得て本発明を完成した。
(1)未晒パルプ又は半晒パルプをベースとして抄造されている、密度が0.6〜1.0g/m3で、JIS Z 0208に基づいて測定される透湿度が2800g/m2・24hr以上であり、かつ、JIS P 8140に基づいて測定されるコブ吸水度が2.5g/m2以上である無サイズ中性紙からなる片艶紙であって、その艶面が易剥離処理面であることを特徴とする、電極式製パン用工程紙。
(2)JIS P 8113に基づいて測定される引き裂き強さ(縦/横)が200/200mN以上であることを特徴とする、(1)項記載の電極式製パン用工程紙。
(3)前記易剥離処理面が、シリコーン剥離剤塗布面であることを特徴とする(1)項又は(2)項に記載の電極式製パン用工程紙。
また、原紙が未晒パルプ又は半晒パルプをベースとして抄造されている無サイズ中性紙で耐熱性にも富むこと、及び工程紙の片艶面が易剥離性であって熟成後の生パンから綺麗に剥離されることから再利用が可能となるし、複数回使用した工程紙は、RPF(Refuse Paper & Plastic Fuel:固形燃料)として最終的にボイラーの燃料原料として利用することができる利点もある。
また、該易剥離性面の剥離力は、パン生地と接する工程紙面の剥離力が軽くなりすぎる場合に焼成工程で生起するケービングを防止することができるように調整されている。
さらに、作業に際しての紙切れを防止できる引き裂き強さを備えている。
また、食品に求められる安全性の面から、工程紙から溶出する恐れのある目止め剤を使用していないことが好ましい。
<透湿度>:2800g/m2・24hr以上(JIS Z 0208)
透湿度は、水分の通過力を示し、電極式焼成容器内での電気伝導率に関連するため、パンの焼成時間に影響する。透湿度の数値が低くなるほど、電極間で電流が流れにくく、焼成時間は長くなる。本発明の工程紙については、工程紙を配置しない従来の焼成時間と同等の時間内で生産するためには、2800g/m2・24hr以上であることが必要であり、好ましくは6000g/m2・24hr以上である。
吸水度は、水分の浸透力を示し、電極式焼成容器内での電気伝導率に関連するためパンの焼成時間に影響する。吸水度が低くなるほど焼成時間が長くなり、時にはパンの焼成が不十分となる。本発明の工程紙については、工程紙を配置しない従来の焼成時間と同等の時間内で生産するためには、コブ吸水度は2.5g/m2以上であることが必要であり、好ましくは9.0g/m2以上である。
引裂強さは、パン焼き容器に入れる作業や生成したパンから工程紙を剥がす作業時の破れ難さが求められる本発明の工程紙については、縦、横共に200mN以上であることが好ましく、さらに好ましくは、縦、横共に250mN以上である。
電極式製パン法で製造される生パンは基本的に白いため、紙が同色の場合は、パンに工程紙の紙片が付着した場合に識別しにくい。識別を容易にするために工程紙用の紙基材を着色することも考えられるが、パルプ繊維を着色すると染料が溶出することがあるし、コスト高ともなるので、品質的にも経済的にも得策ではない。本発明の工程紙では、未晒パルプや半晒のパルプをベースとする紙基材としたが、100%バージンパルプの未晒パルプを使用している紙基材が特に好ましい。
易剥離性は、製造したパンから工程紙を剥がす場合の剥がし易さである。剥離性が良過ぎると焼成工程で容器中のパンがケービングを起こし、十分に膨らむことが出来ないことがある。逆に、剥離性が悪いと工程紙面にパンが貼り付いてパン表面が剥がれるためパンの歩留まりが悪くなる。なお、ケービングとは、焼成容器の中で縦方向(Z軸方向)へパンが膨らむ際、十分に膨らまず縮んだ状態になる現象で、ここでは壁面(パン生地と接している易剥離性工程紙面)剥離性が良すぎる場合に壁面(工程紙面)とパン生地の壁面の界面が滑るために発生する不具合である。
<剥離力の測定例>
離型性工程紙を幅方向230mm×流れ方向320mmの大きさに切る。ガラス板の上に剥離力測定面を上にして置き、Wet塗布厚さが150μmなるように固定式150μmアプリケーターを用い粘着剤「オリバインBPS8170」〔東洋インキ製造(株)〕を塗布する。次いで、これを100℃の熱風循環式乾燥機に入れて3分間乾燥する。
次に、室温にて放冷後、ガラス板の上に粘着剤塗布面を上にして置き、厚さ25μmのPETフィルム(東レ社製、「ルミラーS10」)をハンドゴムローラーで貼り合わせる。貼り合わせたセパレート紙を温度23℃、湿度50%環境下にて24時間シーズニングする。
次に、貼り合わせたセパレート紙を幅方向200mm×流れ方向50mmの大きさにカットし、引張試験機(ORIENTEC製 型式:RTC−1210A)を用いてPETフィルム側を180°に折り返して、引張速度0.3m/minで剥離力を測定する。
乾燥温度は、50〜200℃が好ましい。また、製造ライン速度は、100〜500m/分が好ましい。
先ず、電極式の容器中の電極板の内側となるように工程紙を挿入する。工程紙は容器内空間側が易剥離性面となるように挿入される。この時、予め工程紙を水に浸しておくと容器内面との接着状態がよくなり導電性の面で効果的である。
次に、パン生地を工程紙の易剥離性面上に投入し、その状態で通電される。交流電流計の表示が下がった時が焼き上がりとなる。例えば、200Vの電圧で交流電流計の表示が13〜14A(アンペア)であったものが3〜4Aに下がった時が焼き上がりとなる。ここまでが約14分の工程となる。
焼き上がった生パンを容器から取り出す時は、工程紙に包み込んだ状態で取り出し、そのまま熟成工程に搬送して熟成棚に載置する。
熟成後、生パンから工程紙を剥がし取り、可能であれば再利用に供する。取り出された生パンは粉砕機にかけられ、所望の粒子径のパン粉が調製される。
工程紙用の紙基材として、米坪37.2g/m2の中性未晒片艶原紙を抄造した。
別に、信越化学工業株式会社製のシリコーン主剤〔商品名「KS−778E」〕と硬化剤〔商品名「PL−56」〕を100:1の割合で混合し、トルエンで濃度が8質量%になるように希釈して塗布液を調製し、該塗布液を原紙の艶面に乾燥質量1.1g/m2となるように塗布して易剥離性面を有する工程紙を作成した。
工程紙用の紙基材として、米坪38.6g/m2の中性未晒片艶原紙を抄造した。
この原紙の艶面に、目止め剤〔日本合成化学製、商品名「ゴーセナールT330」〕を温水で希釈して濃度7.5質量%に調製した塗布液を乾燥質量1.25g/m2となるように塗布して目止め層を形成した。この目止め層を形成した艶面に実施例1と同様に調製した剥離剤塗布液を乾燥質量1.1g/m2となるように塗布して易剥離性面を有する工程紙を製造した。
工程紙用紙基材として、染料着色グラシン紙〔米坪81.7g/m2、王子特殊紙(株)製、商品名「特SLブルー」〕を用意した。この紙基材の片面に実施例1と同様の易剥離処理剤をトルエンで希釈して調製した濃度10質量%の塗布液を乾燥質量0.95g/m2となるように塗布して易剥離性面を有する工程紙を製造した。
工程紙用紙基材としてグラシン紙〔米坪31.8g/m2、王子特殊紙(株)製、商品名「厚口グラシン」〕を用意した。この紙基材の片面に、実施例1で使用したものと同様の易剥離処理剤をトルエンで希釈して調製した濃度8質量%の塗布液を乾燥質量0.65g/m2となるように塗布して易剥離性面を有する工程紙を製造した。
工程紙用紙基材としてのグラシン紙〔米坪41.6g/m2、王子特殊紙(株)製、商品名「クリスラップ」〕を用意した。この紙基材の片面に、実施例1で使用したものと同様の易剥離処理剤をトルエンで希釈して調製した濃度8質量%の塗布液を乾燥質量0.65g/m2となるように塗布して易剥離性面を形成した工程紙を製造した。
工程紙用紙基材としてのグラシン紙〔米坪43.7g/m2、王子特殊紙(株)製、商品名「クリスラップ」〕を用意した。この紙基材の片面に、実施例1で使用したものと同様の易剥離処理剤をトルエンで希釈して調製した濃度11質量%の塗布液を乾燥質量0.45g/m2となるように塗布して易剥離性面を形成した工程紙を製造した。
工程紙用紙基材としてのグラシン紙〔米坪45.7g/m2、王子特殊紙(株)製、商品名「クリスラップ」〕を用意した。この紙基材の片面に、実施例1で使用したものと同様の易剥離処理剤をトルエンで希釈して調製した濃度11質量%の塗布液を乾燥質量0.95g/m2となるように塗布して易剥離性面を形成した工程紙を製造した。
次に、打ち抜き工程で直径2mmの穴を前後左右30mmピッチにて穴をあけて、易剥離性面を形成した工程紙を製造した。
工程紙用紙基材として板紙〔米坪420.6g/m2、王子特殊紙(株)製、商品名「ファインプレス原紙(S)」〕を用意した。この紙基材の片面に、実施例1で使用したものと同様の易剥離処理剤をトルエンで希釈して調製した濃度12質量%の塗布液を乾燥質量1.8g/m2となるように塗布して易剥離性面を形成した工程紙を製造した。
上質紙〔厚さ:118μm、王子特殊紙(株)製、商品名「SPE110」〕の片面に、熱可塑性樹脂としてポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン株式会社製 「ノバテックLC607K」)をエクストルージョンラミネート法(Tダイ押出し機)によりラミネートしてラミネート紙を得た。
このラミネート紙の片面に、実施例1で使用したものと同様の易剥離処理剤をトルエンで希釈して調製した濃度7質量%の塗布液を乾燥質量0.45g/m2となるように塗布して易剥離性面を形成した工程紙を製造した。
次いで、焼成容器から焼き上がりパンを工程紙に包み込んだ状態で取り出し、熟成棚にそのまま載置して24時間熟成処理を行い、熟成処理終了後にパンから工程紙を剥離して製品パンを得た。
実施例及び各比較例の工程紙の物性値、それらを電極式製パン機用の工程紙として使用した場合の評価結果を表1に示す。
測定面は易剥離処理面の反対面(電極板に触れる面)とした。
(2)透湿度:JIS Z 0208に準じて測定した。
(3)引裂き強さ:JIS P 8113に準じて測定した。
熟成が終了したパンを工程紙が包んでいる状態で、パンから工程紙を剥離した際の製品パンの表面状態及び工程紙の易剥離性面の状態の良し悪しを目視評価し、工程紙面にパン表面が剥離して付着しているか、又は工程紙側の破損部がパン表面に付着していることが全く認めされないものを○とし、付着が認められるものを×とした。
工程紙に使用されている着色剤や目止め剤等の薬品が溶出して焼き上がりパンに付着しているかどうかを工程紙面とパンの外面状態を目視評価し、溶出していると判断できないものを○とし、溶出していると判断できるものを×とした。
熟成工程後にパンから剥離した工程紙の状態を目視評価し、紙基材自体の破れ箇所が全くないものを○、わずかでも認められるものを×とした。
熟成工程後にパンから剥離した工程紙の表面に色調が、焼き上がりパンの表面の色調と明確に区別できるものである場合を○とし、同色系統である場合を×とした。
焼成工程で、200Vの電圧で交流電流計の表示が最初14A(アンペア)であったものが14分後に4Aに下がる変化を示す場合を導電性がよい標準状態で焼成が行われたものとして○とし、交流電流計の表示が標準状態となるまでの時間が14分を超えて長くなる場合を×評価とした。
業務用の電極式パン焼き機(角谷鉄工所製)でテストを実施し、200Vの電圧で交流電流計の表示を最初14A(アンペア)として設定して焼成を行い、電流計の表示が4Aとなるまでの時間を測定した。
1.原料計量
2.原料前処理
3.生地混合
4.第一発酵
5.分割
6.丸め
7.ベンチ(ベンチタイム とも言う。生地を休ませ回復させる)
8.成型
9.第二発酵
10.焼成(通電加熱、工程紙ごと焼成生パンの取り出し)
11.熟成(工程紙ごとの焼成パンの冷却)
12.粉砕
また、紙基材が着色剤や目止め剤を使用している場合(比較例1)は、それらの物質が焼成工程や熟成工程における雰囲気下で溶出して製品パンを汚染する原因となるという不都合がある。
Claims (4)
- 未晒パルプ又は半晒パルプをベースとして抄造されている、密度が0.6〜1.0g/m3で、JIS Z 0208に基づいて測定される透湿度が2800g/m2・24hr以上であり、かつ、JIS P 8140に基づいて測定されるコブ吸水度が2.5g/m2以上である無サイズ中性紙からなる片艶紙であって、その艶面が易剥離処理剤塗布面であることを特徴とする、電極式製パン用工程紙。
- JIS P 8113に基づいて測定される引き裂き強さ(縦/横)が200/200mN以上であることを特徴とする、請求項1記載の電極式製パン用工程紙。
- 前記易剥離処理剤塗布面が、シリコーン剥離剤塗布面であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電極式製パン用工程紙。
- 電極式製パン機により生パンを製造する方法であって、容器内面に一対の電極板を有する電極式製パン用焼成容器内に、未晒パルプ又は半晒パルプをベースとして抄造されている、密度が0.6〜1.0g/m3で、JIS Z 0208に基づいて測定される透湿度が2800g/m2・24hr以上であり、かつ、JIS P 8140に基づいて測定されるコブ吸水度が2.5g/m2以上である無サイズ中性紙からなる片艶紙であってその艶面が易剥離処理剤塗布面である電極式製パン用工程紙を敷き詰め、該工程紙の易剥離処理剤塗布面上にパン生地を投入して通電し、ジュール熱によりパン生地を加熱焼成する工程、該焼成工程から焼き上がりパンを工程紙に包んだ状態で一緒に取り出して焼き上がりパンの熟成工程に移送する移送工程、該工程紙に包んだ状態の焼き上がりパンをそのままの状態で熟成処理する熟成工程、該熟成工程から工程紙に包んだ状態の熟成済みパンを取り出し、熟成済パンから工程紙を剥ぎ取る工程、からなる、電極式製パン法による生パンの製造方法。
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