JP5042261B2 - ゲル状食品およびその製造方法 - Google Patents
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Description
また、均質なゲル中に不均質なゲルが分散していることで、ザクザクとした食感を有するグミキャンディーが知られている(特許文献1参照。)。このグミキャンディーは、初めに不均質ゲルを作り、この不均質ゲルを含む溶液にゲル化剤を添加して均質にゲル化させるという2段階の工程を経て作製されるものであり、均質ゲルが形成する連続層の内部にザクザク感を与える不均質ゲルが分散している。
〔架橋ゼラチン〕
本発明で用いる架橋ゼラチンは、ゼラチンを架橋することにより不溶化率が2〜30重量%となるように調整されたものである。不溶化率が2重量%未満であると、不溶成分に基づくつぶつぶ感が充分に得られず、不溶化率が30重量%を超えると、酸性多糖類と反応する可溶成分の量が少なくなるために所望のゲルが得られなくなるとともに、架橋ゼラチンの不溶成分に基づくつぶつぶが硬く異物感を生じる。なお、本発明における不溶化率の値は、後述の実施例に記載の方法で測定される値とする。
前記架橋ゼラチンの原料となるゼラチンとしては、牛や豚などの哺乳動物の骨、皮部分や、サメやティラピアなどの魚類の骨、皮、鱗部分などのコラーゲンを含有する材料から従来公知の方法で得ることができる。アルカリ処理ゼラチン、酸処理ゼラチンのいずれでも良い。
ゼラチンを架橋させるための処理としては、伝導熱や輻射熱などの外部加熱やマイクロ波加熱などの内部加熱により約50〜200℃で加熱硬化させる方法、紫外線照射や遠赤外線照射する方法などの物理的方法と、グルタールアルデヒド、タンニン、明バン、硫酸アルミニウムなどで処理する方法などの化学的方法が採用される。中でも、外部加熱によることが好ましく、140〜170℃で45〜60分加熱することが好ましい。温度が低すぎたり時間が短すぎたりするとゼラチンを十分に架橋させることが困難となり、温度が高すぎたり時間が長すぎたりすると焦げや褐変を生じるおそれがある。
〔酸性多糖類〕
酸性多糖類としては、カルボキシル基、硫酸基、酢酸基などの酸性基を有する多糖類であればよく、具体的には、例えば、カラギーナン、寒天、ペクチン、キサンタンガム、ジェランガム、ネイティブジェランガム、ローカストビーンガム、サイリウムシードガム、タマリンドシードガム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アラビアガム、グアーガム、カードラン、プルランなどが挙げられる。
本発明にかかるゲル状食品は、全体がザクザクとした果肉様の食感であり、しかも、所々で、架橋ゼラチンの不溶成分由来のつぶつぶ食感が得られるものである。前記果肉様の食感とは、具体的には、例えば、完熟した桃や杏のような食感であり、架橋ゼラチンの不溶化率などを調整することにより、食感に変化を持たせることもできる。
上記ゲル状食品は、前記架橋ゼラチンの可溶成分と酸性多糖類の混合物をゲル化させてなり、その内部に前記架橋ゼラチンの不溶成分を包含するものである。
このような構造を有するゲル状食品は、例えば、不溶化率2〜30重量%の架橋ゼラチンと酸性多糖類を、前記架橋ゼラチンおよび酸性多糖類の可溶温度に調整した水中で共存させることで得ることができる。
架橋ゼラチンの可溶成分と酸性多糖類の混合物をゲル化させる際には、本発明の目的とする果肉様食感の強弱を調整するために、例えば、溶液のpHを調整することができる。具体的には、架橋ゼラチンの可溶成分は、分子中に酸性基と塩基性基を有する両性化合物であるので、酸性基および塩基性基の電離度は、架橋ゼラチンの可溶成分の等電点と溶液のpHに依存する。したがって、架橋ゼラチンの可溶成分の等電点に応じてpHを調整することで、塩基性基の電離度を高める場合には、酸性多糖類と反応する割合が高くなるので、前記反応により得られるゲルに基づく本発明の目的とする果肉様食感が強くなり、塩基性基の電離度を低くする場合には、酸性多糖類と反応する割合が低くなるので、架橋ゼラチンの可溶成分と酸性多糖類のそれぞれ単独のゲルに基づく食感が強くなる。なお、架橋ゼラチンの可溶成分と酸性多糖類の反応により得られるゲルに対して架橋ゼラチンの可溶成分と酸性多糖類のそれぞれ単独のゲルの割合が相対的に多くなると、果肉様食感は弱くなるが、酸性多糖類のゲルが有する独特のコリコリとした食感と架橋ゼラチンの可溶成分のゲルが有する特有の噛み応えを併せ持ち、その内部に架橋ゼラチンの不溶成分に由来するつぶつぶが感じられる点で、やはり、従来にない新規な食感が得られる。
架橋ゼラチンと酸性多糖類の使用比率としては、重量基準で、1:3〜1:1であることが好ましい。この範囲よりも、架橋ゼラチンの割合が多いと(酸性多糖類の割合が少ないと)、酸性多糖類との反応量が増え、食感がべた付くおそれがあり、架橋ゼラチンの割合が少ないと(酸性多糖類の割合が多いと)、酸性多糖類を単独で用いた場合の食感に近づくおそれがある。
このようなゲル状食品としては、特に限定するわけではないが、例えば、グミキャンディー、ケーキのデコレーションなどが挙げられる。
本実施例において架橋ゼラチンの不溶化率は、下記の方法で算出される値である。
<不溶化率>
架橋ゼラチン4gを水200mlに投入し、室温で1時間静置したのち、湯煎により液温90℃で10分間維持する。その後、直ちに、遠心分離機で遠心分離(10000rpm、15分)し、沈降した不溶性物を回収し、ろ紙上に置いて、105℃で12時間以上加熱乾燥して、沈降乾燥物重量を測定する。このようにして測定された不溶性物量と試験前の試料の絶乾重量とから、下式より不溶化率(重量%)を求める。
〔グミキャンディーの実施例〕
<実施例1>
酸処理豚皮ゼラチン200gタイプ(商品名「APH−200」、新田ゼラチン社製)を、コンベクションオーブンを用いて150℃で45分加熱することにより、60メッシュJIS標準篩は通過しないが10メッシュJIS標準篩は通過する架橋ゼラチンを得た。前記架橋ゼラチンの不溶化率は4%であった。この架橋ゼラチン1部に対して水5部を用いて水戻しした。
<実施例2>
実施例1において、架橋ゼラチンを得る際の加熱時間を40分としたこと以外は同様にして実施例2にかかるグミキャンディーを得た。架橋ゼラチンの不溶化率は2重量%であった。
実施例1において、架橋ゼラチンを得る際の加熱時間を80分としたこと以外は同様にして実施例3にかかるグミキャンディーを得た。架橋ゼラチンの不溶化率は28重量%であった。
<実施例4>
実施例1において、カラギーナン1.5部に代えてキサンタンガム・ローカストビーンガム製剤(商品名「FCG−310」、新田ゼラチン社製)1部を用いたこと以外は同様にして、実施例4にかかるグミキャンディーを得た。
実施例1において、カラギーナン、糖、水の混合液に水戻し後の架橋ゼラチンの膨潤物を投入し煮詰める工程に代えて、カラギーナン、糖、水の混合液を煮詰めたのちに、80℃で保温した水戻し後の架橋ゼラチンの膨潤物を投入したこと以外は同様にして、実施例5にかかるグミキャンディーを得た。
<比較例1>
実施例1において、架橋ゼラチンに代えて未架橋の酸処理豚皮ゼラチン200gタイプ「APH−200」を用いたこと以外は同様にして比較例1にかかるグミキャンディーを得た。
実施例1において、架橋ゼラチンを得る際の加熱時間を90分としたこと以外は同様にして比較例2にかかるグミキャンディーを得た。架橋ゼラチンの不溶化率は33.2重量%であった。
<比較例3>
比較例1において、未架橋の酸処理豚皮ゼラチン200gタイプ「APH−200」1部を0.5部に代え、カラギーナン1.5部を1.8部に代えたこと以外は同様にして比較例3にかかるグミキャンディーを得た。
各ゲル状食品について、10人のパネラーに試食してもらい、下記基準に基づき評価してもらい、その平均点を算出した。いずれにおいても、3が最も優れた食感であり、2〜4の評価であれば合格とする。
(果肉様食感)
5:カラギーナンの食感に近い。
4:3よりも劣るが、果肉様食感はある。
3:完熟した桃あるいは杏の果肉様のザクザクとした食感がある。
1:べた付いている。
(つぶつぶ感)
5:かなり硬く、石のような異物感がある。
4:3よりも硬いが、異物感はない。
3:適度な柔らかさのつぶつぶが感じられる。
2:つぶつぶ感はあるが、やや少ない。
1:つぶつぶ感が全く感じられない。
一方、比較例1や比較例3のグミキャンディーは、ゼラチンと酸性多糖類が強く反応しており、ゲル強度が低くて安定性にかけ、べた付きを生じてしまうために、所望の果肉様食感が得られず、また、架橋ゼラチンのように不溶成分がないためにつぶつぶ食感も得られなかった。
また、比較例2のグミキャンディーでは、カラギーナンの食感が強くて所望の果肉様食感が得られず、また、架橋ゼラチンの不溶成分が多すぎて、つぶつぶが目立ちすぎ、違和感のあるものであった。
<実施例6>
実施例1において、乾燥後の糖度が70%となるようにしたこと以外は同様にして実施例6にかかるケーキ用デコレーション素材を得た。
上記グミキャンディーの評価と同様に評価し、結果を表1に併せて示した。
表1に見るように、やはり、果肉様食感とつぶつぶ食感の両方が楽しめるものであることが分かる。
Claims (6)
- 不溶化率2〜30重量%の架橋ゼラチンの可溶成分と酸性多糖類の混合物をゲル化させてなり、その内部に前記架橋ゼラチンの不溶成分を包含する、ゲル状食品。
- 前記架橋ゼラチンが、60メッシュJIS標準篩は通過しないが10メッシュJIS標準篩は通過するものである、請求項1に記載のゲル状食品。
- 前記酸性多糖類がカラギーナンである、請求項1または2に記載のゲル状食品。
- グミキャンディーである、請求項1から3までのいずれかに記載のゲル状食品。
- 請求項1から4までのいずれかに記載のゲル状食品を製造する方法であって、不溶化率2〜30重量%の架橋ゼラチンと酸性多糖類を、前記架橋ゼラチンおよび酸性多糖類の可溶温度に調整した水中で共存させ、架橋ゼラチンの可溶成分と酸性多糖類の混合物をゲル化させるとともに、前記ゲルの内部に架橋ゼラチンの不溶成分を包含させることを特徴とする、ゲル状食品の製造方法。
- 前記架橋ゼラチンと酸性多糖類の使用割合が重量基準で1:3〜1:1である、請求項5に記載のゲル状食品の製造方法。
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