JP5042020B2 - メタノール燃料電池カートリッジ - Google Patents

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Description

本発明は、直接型メタノール燃料電池(DMFC)の燃料タンクや詰め替え用容器等として好適に用いられる、携帯可能なメタノール燃料電池カートリッジに関する。
メタノールを燃料とする直接型メタノール燃料電池(DMFC)は、ノートパソコン、携帯電話等のモバイル機器用の電源として注目され、種々のタイプのものが知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。
特開2004−265872号公報 特開2004−259705号公報 特開2004−152741号公報
そして、これらの燃料電池では電池の小型化を図るために、燃料となるメタノールを収納する燃料タンク(カートリッジ)を小型化、軽量化することが求められ、種々提案されている(例えば、特許文献3、4参照)。
特開2004−155450号公報
しかしながら、メタノールを収納するカートリッジを樹脂材料により構成した場合には、樹脂材料中に含まれる酸化防止剤や滑剤等の低分子量有機化合物が不純物としてメタノール中に溶出し、燃料電池の起電圧が低下し長時間の連続発電が困難になるという欠点がある。
一方、不純物による燃料電池の発電性能の低下を防止するために、フィルターを設けたり、燃料電池に供給される燃料や酸化剤ガスに含まれる不純物をキレート化剤を含む不純物捕集器により捕集する等の技術が提案されている(例えば、特許文献5参照)。燃料電池にこのような機器を付加した場合には、燃料電池の小型化や軽量化が困難になるとともに、コストアップを招くといった問題点がある。
特開2004−227844号公報
したがって、メタノール燃料電池の発電性能が低下せずに長時間の連続運転が可能となるとともに、小型化、軽量化することのできるメタノール燃料電池カートリッジを低コストで提供することを目的とする。
本発明では、上記課題を解決するために、次の1〜7の構成を採用する。
1.縦15mm、横40mm、厚さ1mmの樹脂フイルム8枚をメタノール50mL中に60℃で7日間浸漬した後に、該メタノールを常温で蒸溜水で2倍に希釈した液の波長300nmにおいて測定した光線透過率が10%以上である樹脂により構成された内層樹脂層を有することを特徴とするメタノール燃料電池カートリッジ。
2.内層樹脂層が、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン系重合体、環状ポリオレフィン共重合体、ポリアミド、フッ素系樹脂、ポリエチレンテレフタレート又はポリエチレンナフタレートから選ばれた樹脂により構成されたものであることを特徴とする1に記載のメタノール燃料電池カートリッジ。
3.内層樹脂層を構成する樹脂が、酸化クロム系触媒を用いたPhillips法によって重合された高密度ポリエチレン;又はメタロセン触媒を用いた重合法によって重合された直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン系重合体から選ばれた樹脂により構成されたものであることを特徴とする2に記載のメタノール燃料電池カートリッジ。
4.さらに、環状ポリオレフィン共重合体からなるメタノールバリア層を有することを特徴とする1〜3のいずれかに記載のメタノール燃料電池カートリッジ。
5.メタノール燃料電池カートリッジが、回収樹脂を含むポリオレフィン系樹脂により構成された主層を含有することを特徴とする1〜4のいずれかに記載のメタノール燃料電池カートリッジ。
6.メタノール燃料電池カートリッジが、注出口に漏洩防止のためのバルブ機構を有することを特徴とする1〜5のいずれかに記載のメタノール燃料電池カートリッジ。
7.メタノール燃料電池カートリッジが、剛性材料により構成された外側ケース内に収納されていることを特徴とする1〜6のいずれかに記載のメタノール燃料電池カートリッジ。
本発明によれば、メタノール燃料電池の発電性能が低下せずに長時間の連続運転が可能となるメタノール燃料電池カートリッジを低コストで得ることができる。本発明のメタノール電池カートリッジは、小型化、軽量化することができ、DMFCの燃料タンクや詰め替え用の容器として好適に用いられる。
(光線透過率)
本発明では、樹脂フイルムをメタノール中に60℃で7日間浸漬した後に、該メタノールを常温で蒸留水で体積比にて2倍に希釈した液の300nmにおける光線透過率が10%以上である樹脂により、メタノール燃料電池カートリッジの内層樹脂層を構成する。
この光線透過率は、縦15mm、横40mm、厚さ1mmの樹脂フイルム8枚を、和光純薬工業製メタノール(精密分析用:メタノール含量99.8%)50mL中に60℃で7日間浸漬した後に、該メタノールを常温で蒸溜水で体積比にて2倍に希釈した液について、日立ハイテクノロジーズ社製の分光光度計U−3310を使用して、波長300nmにおいて測定した値を意味する。
本発明のメタノール燃料電池カートリッジの内層樹脂層を構成する樹脂としては、該樹脂が上記した光線透過率を有するものであれば特に制限はないが、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン系重合体、環状ポリオレフィン共重合体、ポリアミド、フッ素系樹脂、ポリエチレンテレフタレート又はポリエチレンナフタレートから選ばれた樹脂を使用することが好ましい。これらの樹脂は、単独で或いは2種以上をブレンドして使用することができる。
特に好ましい樹脂としては、酸化クロム系触媒を用いたPhillips法によって重合された高密度ポリエチレン;又はメタロセン触媒を用いた重合法によって重合された直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン系重合体が挙げられる。
本発明のメタノール燃料電池カートリッジの層構成としては、カートリッジの内層に上記した樹脂層を有するものであれば特に制限はなく、例えば、内層樹脂層となる樹脂からなる単層構成のカートリッジとすることができる。また、上記内層樹脂層の外側に少なくとも1層の樹脂或いは他の材料により構成された層を有する、多層構成のカートリッジとすることができる。
多層構成のカートリッジとする場合には、メタノールバリア層、特に40℃におけるメタノール蒸気透過係数が15μg・mm/m・hr以下であるメタノールバリア層や、カートリッジを製造する際に発生するバリや不良品等からなる回収樹脂を含むポリオレフィン系樹脂により構成された主層、を設けることが好ましい。
このようなメタノールバリア層を構成する材料としては、例えば、環状オレフィン系樹脂やポリエステル系樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、無延伸で、或いは適宜1軸又は2軸延伸して使用することができる。
環状オレフィン系樹脂としては、ボトルを構成する材料として公知の環状オレフィン系重合体(COP)、又はエチレンと環状オレフィンとの共重合体(COC:cycloolefin copolymer)を使用することができる。COCとしては、実質的に全体がCOCからなるもののほかに、COCに他のポリオレフィン類をブレンドしたものでもよい。
COCとしては、10〜50モル%、特に15〜48モル%の環状オレフィンと残余のエチレンとから誘導され、5〜200℃、特に40〜190℃のガラス転移点を有する非晶質乃至低結晶性の共重合体が好適に使用される。また、環状オレフィンと共重合されるエチレンの一部を、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、3−メチル−1−ペンテン、1−デセン等の炭素数3〜20程度の他のα−オレフィンで置換した共重合体を使用してもよい。
環状オレフィンとしては、エチレン系不飽和結合とビシクロ環とを有する脂環族炭化水素化合物が好ましく、特にノルボルネン構造を有する繰り返し単位を構成するものとしては、例えば8−エチル−テトラシクロ〔4.4.0.1.2,5.12,5.17,10〕−ドデカ−3−エン、8−エチリデン−テトラシクロ〔4.4.0.1.2,5.17,10〕−ドデカ−3−エン、8−メチル−テトラシクロ〔4.4.0.1.2,5.17,10〕−ドデカ−3−エン等が挙げられる。また、ノルボルネン構造を有しない繰り返し単位を構成するものとしては、5−エチリデン−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、5−エチル−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、テトラシクロ〔7.4.0.02,7.110,13〕−トリデカ−2,4,6,11−テトラエン等が例示される。
ポリエステル樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)のように、テレフタル酸、イソフタル酸、p−β−オキシエトキシ安息香酸、ナフタレン2,6−ジカルボン酸、ジフエノキシエタン−4,4’−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸またはこれらのアルキルエステル誘導体などのジカルボン酸成分やトリメリット酸等の多価カルボン酸成分と;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキシレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフエノールAのエチレンオキサイド付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのグリコール成分を反応させて得られるポリエステル単独重合体又は共重合体が挙げられる。また、ポリ乳酸のようにヒドロキシカルボン酸を反応させて得られる単独重合体又は共重合体を使用してもよい。これらのポリエステル類は、単独で又は2種以上をブレンドして用いることができる。
他のポリエステル樹脂としては、ポリグリコール酸樹脂等の密度が1.5以上の高密度ポリエステル樹脂が挙げられる。
ポリグリコール酸はヒドロキシ酢酸の重合体であり、例えば米国特許第2,676,945号明細書に示されているように、エステル結合間の炭素数が1のポリエステルである。ポリグリコール酸は、通常の熱可塑性ポリエステルに比較して緻密な結晶構造を持つために高い密度を有し、ポリエステル類の中では低い透湿度を示す。また、ポリグリコール酸の単独重合体のみならず、グリコール酸の一部が他の共重合成分で置換された共重合体も使用することができる。
メタノール不透過性層を構成する他の材料としては、無機質被膜を有する樹脂類を使用することができる。無機質被膜としては、ダイヤモンド様炭素被膜、変性炭素被膜等の各種炭素被膜;酸化チタン被膜;酸化珪素(シリカ)被膜;酸化アルミニウム(アルミナ)被膜;セラミック被膜;炭化珪素被膜;窒化珪素被膜などが挙げられる。これらの被膜を形成する樹脂類としては特に制限はなく、通常プラスチック容器を製造するのに用いられる熱可塑性樹脂類は、いずれも使用することができる。
好適な無機質被膜を有する樹脂としては、例えば、シリカ蒸着ポリエステルフイルム、アルミナ蒸着ポリエステルフイルム、シリカ蒸着ナイロンフイルム、アルミナ蒸着ナイロンフイルム、アルミナ蒸着ポリプロピレンフイルム、炭素膜蒸着ポリエステルフイルム、炭素膜蒸着ナイロンフイルムが挙げられる。さらに、アルミナ及びシリカをポリエステルフイルムやナイロンフイルム等のベースフイルムに同時蒸着した2元蒸着フイルム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
無機質被膜を有する樹脂層は、フイルム又はシート状の樹脂表面に、化学蒸着、プラズマ蒸着、スパッタリング等によりあらかじめ無機質被膜を形成したものとして使用することができる。
本発明のメタノール燃料電池カートリッジを多層構成とする場合には、さらに、容器の中間層、あるいは外層等を構成する材料として、ヒートシール性を有し又は有さない熱可塑性樹脂類を使用することができる。
このような熱可塑性樹脂としては、例えば結晶性ポリプロピレン、結晶性プロピレン−エチレン共重合体、結晶性ポリブテン−1、結晶性ポリ4−メチルペンテン−1、低−、中−、或いは高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、EVAケン化物、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)等のポリオレフィン類;ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体等の芳香族ビニル共重合体;ポリ塩化ビニル、塩化ビニリデン樹脂等のハロゲン化ビニル重合体;ポリアクリル系樹脂;アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体の如きニトリル重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート等のポリエステル類;各種ポリカーボネート;フッ素系樹脂;ポリオキシメチレン等のポリアセタール類等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。これらの熱可塑性樹脂は単独で又は二種以上をブレンドして使用することができる。また、これらの熱可塑性樹脂に各種の添加剤を配合して使用してもよい。
多層構成容器の各層の間には、必要に応じて接着樹脂を介在させる。このような接着樹脂としては特に制限はなく、通常プラスチック容器の製造に用いられるポリウレタン系樹脂、酸変性エチレン・α−オレフィン共重合体、酢酸ビニル系樹脂等はいずれも使用することができる。
酸変性エチレン・α−オレフィン共重合体としては、エチレンとプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン等の炭素数10までのα−オレフィンを共重合させたエチレン・α−オレフィン共重合体をアクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸又はこれらの無水物でグラフト変性した樹脂を使用することが好ましい。これらの接着樹脂のグラフト変性率は、0.05〜5重量%程度とすることが好ましい。これらの酸変性エチレン・α−オレフィン共重合体は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。また、予め高濃度の酸で変性したエチレン・α−オレフィン共重合体と;未変性の低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体、高密度ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;を配合し、樹脂全体としての酸変性率を0.05〜5重量%程度に調整したブレンド物を接着樹脂として使用することも好ましい。
本発明のメタノール燃料電池カートリッジを構成する樹脂層中には、必要に応じてオレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド等の高級脂肪酸アミド等からなる滑剤や;プラスチック容器中に通常添加される結晶核剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤;顔料等の着色剤;酸化防止剤及び中和剤等の添加剤を配合することができる。
本発明のメタノール燃料電池カートリッジの形状に制限はなく、ボトル、カートリッジ、カップ等の中空容器の他、平パウチ、スタンディングパウチ等各種の形状にすることができる。
容器の製造方法としては通常の方法を採用することができ、例えばボトル、カートリッジ、カップ等の中空容器は、射出成形、ダイレクトブロー又は2軸延伸ブロー成形等のブロー成形、真空・圧空成形等の方法により製造することができるが、2軸延伸ブロー成形を採用することが好ましい。また、平パウチ、スタンディングパウチ等のパウチ類は、最内層にヒートシール性樹脂層を有する多層フイルムをヒートシールすることにより製造することができる。これらの容器類には、スクリューキャップ、スパウト等の注出口形成手段を設けることが好ましい。また、メタノール燃料電池カートリッジの注出口には、漏洩防止のためのバルブ機構を設けることが、特に好ましい。
本発明のメタノール燃料電池カートリッジの寸法にも特に制限はないが、ノートパソコン、携帯電話等の電源として用いられるDMFCの燃料タンクや、詰め替え用の容器とする場合には、内容量が1〜500ml、特に10〜200ml程度とすることが好ましい。
本発明のメタノール燃料電池カートリッジは、単層或いは多層構成の容器として製造することができる。また、得られた容器を、金属、繊維強化プラスチック等の剛性材料からなる外側ケースに収納した形態とすることもできる。
容器を多層構成とする場合の好ましい層構成としては、例えば、容器の内層側から順に、高密度ポリエチレン(HDPE)/接着樹脂(Ad)/環状ポリオレフィン共重合体(COC)/Ad/HDPE;HDPE/HDPE+回収樹脂(Reg)/Ad/COC/Ad/HDPE;低密度ポリエチレン(LDPE)/Ad/COC/Ad/HDPE/;LDPE/HDPE+Reg/Ad/COC/Ad/HDPE;LDPE/Ad/COC/Ad/ポリプロピレン(PP);LDPE/Ad/COC/Ad/PP+Reg/PP;メタロセン触媒重合直鎖状低密度ポリエチレン(m−LLDPE)/Ad/COC/Ad/PP;m−LLDPE/Ad/COC/Ad/PP+Reg/PP;HDPE/Ad/COC/Ad/HDPE+Reg/HDPE;HDPE/Ad/COC/Ad/PP;HDPE/PP+Reg/Ad/COC/Ad/PP;HDPE/Ad/COC/Ad/PP+Reg/PP;HDPE+m−LLDPE/Ad/COC/Ad/HDPE+m−LLDPE;HDPE+m−LLDPE/HDPE+Reg/Ad/COC/Ad/HDPE+m−LLDPE;HDPE+m−LLDPE/Ad/COC/Ad/HDPE+Reg/HDPE+m−LLDPE;HDPE+m−LLDPE/Ad/COC/Ad/PP;HDPE+m−LLDPE/PP+Reg/Ad/COC/Ad/PP;HDPE+m−LLDPE/Ad/COC/Ad/PP+Reg/PP等が挙げられる。(ここで、「A+B」は、樹脂Aと樹脂Bをブレンドした樹脂を意味する。)
次に、実施例により本発明をさらに説明するが、以下の具体例は本発明を限定するものではない。以下の実施例において、樹脂フイルムの光線透過率及びメタノール燃料電池の発電性能は、次のようにして測定した。
(光線透過率)
縦15mm、横40mm、厚さ1mmの樹脂フイルム8枚を、和光純薬工業製メタノール(精密分析用:メタノール含量99.8%)50mL中に60℃で7日間浸漬した後に、該メタノールを常温で蒸溜水で体積比にて2倍に希釈した液を試料とする。この試料の光線透過率を、日立ハイテクノロジーズ社製の分光光度計U−3310を使用して、波長300nmにおいて測定する。
(発電性能)
燃料カートリッジに和光純薬工業製メタノール(精密分析用:メタノール含量99.8%)50mLを充填し、テトラフルオロエチレン製パッキンを内包するキャップにより密封して、60℃で168時間保存する。保存後のメタノールを燃料として、マイクロ燃料電池試験装置を用いて発電を行なった際の、初期起電圧に対して起電圧が20%低下するのに要した時間を求めた。その時間が100時間以下であるものを×とし、100時間を超えて500時間以下のものを○とし、500時間を超えるものものを◎と判定した。
(実施例1)
容器を構成する樹脂として、光線透過率が93%であって、190℃におけるMFRが0.5g/10min、密度0.929g/cmのLDPE(添加剤無添加)を使用した。この樹脂を定法により押出して得られたパリソンを、ロータリーブロー成形機でダイレクトブローすることによって、層厚500μm、満注時の内容量60mL、質量10gのLDPE単層構成のボトル型燃料カートリッジを製造した。
(実施例2)
容器を構成する樹脂として、光線透過率が87%であって、190℃におけるMFRが0.9g/10min、密度0.908g/cmのm−LLDPE(添加剤無添加)を使用した以外は、実施例1と同様にして、同様のm−LLDPE単層構成の燃料カートリッジを製造した。
(実施例3)
容器を構成する樹脂として、光線透過率が26%であって、190℃におけるMFRが0.25g/10min、密度0.951g/cmのZiegler系触媒を用いて重合した高密度ポリエチレン(z−HDPE:添加剤としてIrganox1010を150ppm、Irgafos168を200ppm、アーモスリップ310を2000ppm、ステアリン酸カルシウムを1000ppm含有)を使用した以外は、実施例1と同様にして、同様のz−HDPE単層構成の燃料カートリッジを製造した。
(実施例4)
容器を構成する樹脂として、光線透過率が94%であって、190℃におけるMFRが0.3g/10min、密度0.946g/cmのPhillips系触媒を用いて重合した高密度ポリエチレン(p−HDPE:添加剤無添加)を使用した以外は、実施例1と同様にして、同様のp−HDPE単層構成の燃料カートリッジを製造した。
(実施例5)
容器を構成する樹脂として、光線透過率が97%であって、190℃におけるMFRが0.35g/10min、密度0.959g/cmのメタロセン系触媒を用いて重合した高密度ポリエチレン(m−HDPE:添加剤無添加)を使用した以外は、実施例1と同様にして、同様のm−HDPE単層構成の燃料カートリッジを製造した。
(実施例6)
容器を構成する樹脂として、光線透過率が10%であって、230℃におけるMFRが1.7g/10min、密度0.9g/cmのZiegler系触媒を用いて重合したプロピレン系ランダム共重合体(z−ランダムPP:添加剤としてIrganox1010を2000ppm、エルカ酸アミドを1000ppm、ステアリン酸カルシウムを1000ppm、ハイドロタルサイトを1000ppm含有)を使用した以外は、実施例1と同様にして、同様のz−ランダムPP単層構成の燃料カートリッジを製造した。
(実施例7)
容器を構成する樹脂として、光線透過率が82%であって、230℃におけるMFRが2.0g/10min、密度0.9g/cmのメタロセン系触媒を用いて重合したプロピレン系ランダム共重合体(m−ランダムPP:添加剤としてIrganox1010を200ppm含有)を使用した以外は、実施例1と同様にして、同様のm−ランダムPP単層構成の燃料カートリッジを製造した。
(実施例8)
容器を構成する樹脂として、光線透過率が83%であって、相対粘度(96%HSO溶液)4.05、融点196℃のナイロン6/66共重合体(ナイロン66含量15mol%:添加剤としてステアリン酸カルシウム300ppm含有)を使用した以外は、実施例1と同様にして、同様のナイロン6/66共重合体単層構成の燃料カートリッジを製造した。
(実施例9)
容器を構成する樹脂として、光線透過率が99%であって、372℃で5kgf荷重におけるMFRが2g/10min、融点305℃のフッ素系樹脂(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体:添加剤無添加)を使用した以外は、実施例1と同様にして、同様のフッ素系樹脂単層構成の燃料カートリッジを製造した。
(比較例1)
容器を構成する樹脂として、光線透過率が8%であって、190℃におけるMFRが0.75g/10min、密度0.922g/cmのZiegler系触媒を用いて重合した直鎖状低密度ポリエチレン(z−LLDPE:添加剤としてIrganox1010を330ppm、Irgafos168を670ppm含有)を使用した以外は、実施例1と同様にして、同様のz−LLDPE単層構成の燃料カートリッジを製造した。
(比較例2)
容器を構成する樹脂として、光線透過率が5%であって、230℃におけるMFRが1.1g/10min、密度0.9g/cmのZiegler系触媒を用いて重合したプロピレン系ブロック共重合体(z−ブロックPP:添加剤としてIrganox1010を5400ppm、Irgafos168を1000ppm、エレクトロストリッパーEAを2300ppm、チヌビン326を540ppm、ステアリン酸カルシウムを1600ppm含有)を使用した以外は、実施例1と同様にして、同様のz−ブロックPP単層構成の燃料カートリッジを製造した。
上記実施例1〜9及び比較例1、2で得られた各燃料カートリッジについて、発電性能試験を行ない、その結果を表1に記載した。
Figure 0005042020
以下の例では、溶融張力が低いために単層でのダイレクトブローが困難な樹脂を内層に用いて、定法により多層多重ダイスを使用して共押出ししてパリソンを得た。得られたパリソンを、ロータリーブロー成形機でダイレクトブローすることによって、2種3層構成(総層厚み:500μm)のボトル型燃料カートリッジを製造した。
(実施例10)
カートリッジの内層を構成する樹脂として、光線透過率が93%であって、260℃におけるMFRが15g/10minであるCOC、エチレン・テトラシクロドデセン共重合体(エチレン含有量82mol%:添加剤としてステアリン酸カルシウム3000ppm含有)、接着樹脂として60meq/100gのカルボニル基を含有する無水マレイン酸変性ポリエチレン、外層を構成する樹脂として比較例2で使用したz−ブロックPPを使用し、定法により共押出ししてパリソンを得た。得られたパリソンを、ロータリーブロー成形機でダイレクトブローすることによって、内層から順に、COC(膜厚150μm)/Ad(膜厚20μm)/z−ブロックPP(膜厚330μm)からなる2種3層構成で、満注時の内容量60mL、質量10gの燃料カートリッジを製造した。
(比較例3)
内層を構成する樹脂として、光線透過率が7%であって、固有粘度(IV)0.75dl/g、密度1.27g/cmの非晶性ポリエチレンテレフタレート系共重合体(PETG:添加剤無添加)を使用した以外は、実施例10と同様にして、内層から順に、PETG(膜厚150μm)/Ad(膜厚20μm)/z−ブロックPP(膜厚330μm)からなる2種3層構成で、満注時の内容量60mL、質量10gの燃料カートリッジを製造した。
上記実施例10及び比較例3で得られた各燃料カートリッジについて、発電性能試験を行ない、その結果を表2に記載した。
Figure 0005042020
以下の例では、ポリエステル樹脂を用いてプリフォームを射出成形した。このプリフォームを2軸延伸ブロー成形機(日精ASB機械工業製:日精ASB−50H)により、縦方向2.6倍、横方向2.2倍に2軸延伸ブロー成形することにより、単層ボトル型燃料カートリッジを製造した。
(実施例11)
プリフォームを構成するポリエステル樹脂として、光線透過率が91%であって、ゲルマニウム系触媒を用いて重合した固有粘度(IV)0.75dl/g、密度1.40g/cm、融点252℃のポリエチレンテレフタレート(PET:添加剤無添加)を使用した。得られたプリフォームを2軸延伸ブロー成形することにより、満注時の内容量60mL、質量10g、平均肉厚0.45mmの単層燃料カートリッジを製造した。
(実施例12)
ポリエステル樹脂として、光線透過率が94%であって、アンチモン系触媒を用いて重合した固有粘度(IV)0.70dl/g、密度1.33g/cm、融点265℃のポリエチレンナフタレート(PEN:添加剤無添加)を使用した以外は、実施例11と同様にして、満注時の内容量60mL、質量10g、平均肉厚0.45mmの単層燃料カートリッジを製造した。
(実施例13)
ポリエステル樹脂として、実施例11で使用したPETと実施例12で使用したPENを、PET含有率が30重量%となるようにブレンドした樹脂を使用した以外は、実施例11と同様にして、満注時の内容量60mL、質量10g、平均肉厚0.45mmの単層燃料カートリッジを製造した。
上記実施例11〜13で得られた各燃料カートリッジについて、発電性能試験を行ない、その結果を表3に記載した。
Figure 0005042020
以下の例では、多層カートリッジのいずれか1層にメタノールバリア性を有するCOCを用いて、定法により多層多重ダイスを使用して共押出ししてパリソンを得た。得られたパリソンをロータリーブロー成形機でダイレクトブローすることによって、総層厚み500μmの多層ボトル型燃料カートリッジを製造した。
(実施例14)
最内層及び最外層を構成する樹脂として実施例4で用いたp−HDPE、主層を構成する樹脂として回収樹脂を含む同じくp−HDPE、中間層を構成する樹脂として実施例10で用いたCOC、接着樹脂として実施例10で用いた接着樹脂を使用し、定法により共押出ししてパリソンを製造した。得られたパリソンを、ロータリーブロー成形機でダイレクトブローすることによって、内層から順に、p−HDPE(膜厚100μm)/Ad(膜厚20μm)/COC(膜厚150μm)/Ad(膜厚20μm)/p−HDPE+Reg(膜厚135μm)/p−HDPE(膜厚75μm)からなる4種6層構成で、満注時の内容量60mL、質量10gの多層燃料カートリッジを製造した。
(実施例15)
最内層を構成する樹脂として実施例1で用いたLDPE、最外層を構成する樹脂として比較例2で用いたz−ブロックPP、主層を構成する樹脂として回収樹脂を含む同じくz−ブロックPPを使用した以外は、実施例14と同様にして、内層から順に、LDPE(膜厚100μm)/Ad(膜厚20μm)/COC(膜厚150μm)/Ad(膜厚20μm)/z−ブロックPP+Reg(膜厚135μm)/z−ブロックPP(膜厚75μm)からなる5種6層構成で、満注時の内容量60mL、質量10gの多層燃料カートリッジを製造した。
(実施例16)
最内層を構成する樹脂として実施例2で用いたm−LLDPEを使用した以外は、実施例15と同様にして、内層から順に、m−LLDPE(膜厚100μm)/Ad(膜厚20μm)/COC(膜厚150μm)/Ad(膜厚20μm)/z−ブロックPP+Reg(膜厚135μm)/z− ブロックPP(膜厚75μm)からなる5種6層構成で、満注時の内容量60mL、質量10gの多層燃料カートリッジを製造した。
(実施例17)
最内層を構成する樹脂として実施例4で用いたp−HDPEを70重量%と実施例2で用いたm−LLDPE30重量%とをブレンドした樹脂を使用した以外は、実施例15と同様にして、内層から順に、p−HDPE(70重量%)+m−LLDPE(30重量%)(膜厚100μm)/Ad(膜厚20μm)/COC(膜厚150μm)/Ad(膜厚20μm)/z−ブロックPP+Reg(膜厚135μm)/z− ブロックPP(膜厚75μm)からなる5種6層構成で、満注時の内容量60mL、質量10gの多層燃料カートリッジを製造した。
上記実施例14〜17、ならびに実施例1〜3及び10で得られた各燃料カートリッジについて、発電性能試験と下記のメタノール減量試験を行ない、その結果を表4に記載した。
(メタノール減量試験)
燃料カートリッジに、和光純薬工業製メタノール(精密分析用:メタノール含量99.8%)50mLを充填し、テトラフルオロエチレン製パッキンを内包するキャップをして、40℃で24時間保存後、燃料カートリッジの重量を測定し、初期重量(W)とする。
初期重量測定後、さらに40℃で14日間保存した後の燃料カートリッジの重量(W)を測定し、減量値(W−W)を求め、1日当りのメタノール減量を算出する。
Figure 0005042020

Claims (7)

  1. 縦15mm、横40mm、厚さ1mmの樹脂フイルム8枚をメタノール50mL中に60℃で7日間浸漬した後に、該メタノールを常温で蒸溜水で2倍に希釈した液の波長300nmにおいて測定した光線透過率が10%以上である樹脂により構成された内層樹脂層を有することを特徴とするメタノール燃料電池カートリッジ。
  2. 内層樹脂層が、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン系重合体、環状ポリオレフィン共重合体、ポリアミド、フッ素系樹脂、ポリエチレンテレフタレート又はポリエチレンナフタレートから選ばれた樹脂により構成されたものであることを特徴とする請求項1に記載のメタノール燃料電池カートリッジ。
  3. 内層樹脂層を構成する樹脂が、酸化クロム系触媒を用いたPhillips法によって重合された高密度ポリエチレン;又はメタロセン触媒を用いた重合法によって重合された直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン系重合体から選ばれた樹脂により構成されたものであることを特徴とする請求項2に記載のメタノール燃料電池カートリッジ。
  4. さらに、環状ポリオレフィン共重合体からなるメタノールバリア層を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のメタノール燃料電池カートリッジ。
  5. メタノール燃料電池カートリッジが、回収樹脂を含むポリオレフィン系樹脂により構成された主層を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のメタノール燃料電池カートリッジ。
  6. メタノール燃料電池カートリッジが、注出口に漏洩防止のためのバルブ機構を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のメタノール燃料電池カートリッジ。
  7. メタノール燃料電池カートリッジが、剛性材料により構成された外側ケース内に収納されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のメタノール燃料電池カートリッジ。
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