JP2023004921A - 樹脂組成物、成形品、積層フィルム、包装容器 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐衝撃性、溶着強度に優れる包装容器を製造することが可能な樹脂組成物、成形品、積層フィルム、および包装容器を提供することを課題とする。【解決手段】樹脂成分が、ポリエステル系樹脂と、ポリエチレン系樹脂と、エポキシ基を有する相溶化剤と、を含有する樹脂組成物であって、前記ポリエステル系樹脂が、ジアルキル置換を有するジオールで変性されたポリエチレンテレフタレート樹脂であることを特徴とする樹脂組成物を提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂組成物、成形品、積層フィルム、包装容器に関する。
特許文献1には、多層パリソンが、オレフィン系樹脂の外層と、実質上非晶質の共重合ポリエステルの内層と、接着剤樹脂の中間層との積層体からなり、底部ヒートシール部は内層同士が融着されて実質上非晶質である絞り出し容器が記載されている。
特許文献2には、ガラス転移温度が約50℃以上の非結晶性ないしは低結晶性のポリエステル樹脂と、ガラス転移温度が約40℃以下のポリエステル樹脂とがブレンドされてなる樹脂組成物が記載されている。また、特許文献2では、ポリエステル樹脂の代わりにポリアミド樹脂も使用可能とされている。
特許文献3には、胴部の少なくとも最内層は、ガラス転移温度が約50℃以上で、固有粘度が約0.7以上の非結晶性ないしは低結晶性のポリエステル樹脂を用い、頭部はガラス転移温度が約40℃以下のポリエステル樹脂を用いたチューブ容器が記載されている。
特開2002-96847号公報 特開平5-156144号公報 特開平4-352646号公報
容器の最内層または全ての層がポリエステルから形成される場合、低温条件下での耐衝撃性や落下強度が劣る欠点がある。特に、頭部の強度や、頭部と胴部との溶着強度が低い。ポリエステル樹脂の代わりにポリアミド樹脂を使用した容器は、内容物が水分を含む液体の場合、吸水により膨潤し、強度低下を招く欠点がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、耐衝撃性、溶着強度に優れる包装容器を製造することが可能な樹脂組成物、成形品、積層フィルム、および包装容器を提供することを課題とする。
本発明は、下記の態様を含む。
本発明の第1の態様は、樹脂成分が、ポリエステル系樹脂と、ポリエチレン系樹脂と、エポキシ基を有する相溶化剤と、を含有する樹脂組成物であって、前記ポリエステル系樹脂が、ジアルキル置換を有するジオールで変性されたポリエチレンテレフタレート樹脂であることを特徴とする樹脂組成物である。
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記ジアルキル置換を有するジオールが、ネオペンチルグリコールまたは2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールである。
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様において、前記エポキシ基を有する相溶化剤が、エチレン-グリシジルメタクリレートである。
本発明の第4の態様は、第1~3のいずれか1の態様の樹脂組成物から成形されていることを特徴とする成形品である。
本発明の第5の態様は、最内面のシーラントが第1~3のいずれか1の態様の樹脂組成物から形成されていることを特徴とする積層フィルムである。
本発明の第6の態様は、口部または底部の少なくとも一方が、第4の態様の成形品から形成されていることを特徴とする包装容器である。
本発明の第7の態様は、第5の態様の積層フィルムから形成された胴部を有することを特徴とする包装容器である。
本発明の第8の態様は、ポリエステル系樹脂と、ポリエチレン系樹脂とを含有し、前記ポリエステル系樹脂が海部を構成し、前記ポリエチレン系樹脂が島部を構成する海島構造を形成し、前記ポリエステル系樹脂は、ジアルキル置換を有するジオールで変性されたポリエチレンテレフタレート樹脂であることを特徴とする樹脂組成物である。
本発明の第9の態様は、樹脂組成物の断面をミクロトームで切削して得た薄片を四酸化ルテニウムで染色し、電界放出型走査電子顕微鏡を用いて、20,000倍で観察して画像を取得し、画像解析ソフトを用いて海島構造の島部を円又は楕円の形状として抽出した際の海島構造部分全体に対する島部が占める面積比率が5~40%である第8の態様の樹脂組成物である。
本発明の第10の態様は、前記ポリエチレン系樹脂が構成する島部は、画像解析ソフトを用いて海島構造の島部を円又は楕円の形状として抽出した際の島部の平均粒径が0.1~2.0μmである第8または第9の態様の樹脂組成物である。
本発明の第11の態様は、さらに、相溶化剤を含有する又は/及び相溶化剤が樹脂に付加している第8~10のいずれか1の態様の樹脂組成物である。
本発明の第12の態様は、前記相溶化剤は、(メタ)アクリル酸又は/及び(メタ)アクリル酸エステルと、エチレンの共重合鎖を含有する第11の態様の樹脂組成物である。
本発明の第13の態様は、前記共重合鎖が、エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート共重合鎖である第12の態様の樹脂組成物である。
本発明の第14の態様は、第8~13のいずれか1の態様の樹脂組成物から成形されていることを特徴とする成形品である。
本発明の第15の態様は、最内面のシーラントが第8~13のいずれか1の態様の樹脂組成物から形成されていることを特徴とする積層フィルムである。
本発明の第16の態様は、口部または底部の少なくとも一方が、第14の態様の成形品から形成されていることを特徴とする包装容器である。
本発明の第17の態様は、第15の態様の積層フィルムから形成された胴部を有することを特徴とする包装容器である。
本発明によれば、耐衝撃性、溶着強度に優れる包装容器を製造することが可能な樹脂組成物、成形品、積層フィルム、および包装容器を提供することができる。
第1実施形態の包装容器を例示する概略図である。 第2実施形態の包装容器を例示する概略図である。 第3実施形態の包装容器を例示する概略図である。 海島構造の一例を示す電子顕微鏡写真である。
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。本明細書において、主成分とは、最大の割合を有する成分である。主成分の割合は、全体の50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上であってもよい。
実施形態の樹脂組成物は、ポリエステル系樹脂と、ポリエチレン系樹脂とを含有する。ポリエステル系樹脂が海部を構成し、ポリエチレン系樹脂が島部を構成する海島構造を形成する。ポリエステル系樹脂は、ジアルキル置換を有するジオールで変性されたポリエチレンテレフタレート樹脂である。この樹脂組成物は、さらに、相溶化剤を含有してもよく、又は/及び、相溶化剤が樹脂に付加していてもよい。
本明細書において、「又は/及び」は、「及び/又は」と同様に、当該字句の前に記載される第1の選択肢と、当該字句の後に記載される第2の選択肢との少なくとも一方が選択されることを意味する。つまり、当該字句を含む文言は、(1)第1の選択肢が選択されて、第2の選択肢が選択されない場合、(2)第1の選択肢が選択されずに、第2の選択肢が選択される場合、(3)第1の選択肢および第2の選択肢の双方が選択される場合の(1)~(3)からなる3とおりを包含する。
実施形態の樹脂組成物は、樹脂成分が、ポリエステル系樹脂と、ポリエチレン系樹脂と、エポキシ基を有する相溶化剤と、を含有する。この樹脂組成物に含有されるポリエステル系樹脂は、ジアルキル置換を有するジオールで変性されたポリエチレンテレフタレート樹脂である。
実施形態の樹脂組成物に用いられるポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸とジオールとを主成分とするポリエステル原料の縮合重合によって得られる線状ポリエステル樹脂である。ジカルボン酸成分は、テレフタル酸を主成分とする。また、ジオール成分は、エチレングリコールを主成分とし、ジアルキル置換を有するジオールをさらに含有する。
実施形態の樹脂組成物において、ポリエステル系樹脂のカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン-1,4-ジカルボン酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、トリメリット酸等のトリカルボン酸等が挙げられる。
実施形態の樹脂組成物において、ポリエステル系樹脂のジオール成分としては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサメチレンジオール等の直鎖状ジオール;シクロペンタンジメタノール、シクロヘキサンジメタノール等の環状ジオール;ネオペンチルグリコール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジプロピル-1,3-プロパンジオール、2-プロピル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-プロピル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-イソプロピル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-イソプロピル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール等の分枝状ジオールが挙げられる。
分枝状ジオールは、直鎖状ジオールが2個の水酸基を含む主鎖のみを有するのに対して、主鎖から分岐する側鎖として、1個以上のアルキル基を有する。ジアルキル置換を有するジオールは、分枝状ジオールの側鎖に2個のアルキル基を有する。これらの分枝状ジオールをジオール成分の一部に用いてポリエチレンテレフタレート樹脂を変性することにより、ポリエステル系樹脂の結晶性を低下させ、非晶質または低結晶性とすることができる。これにより、ポリエステル系樹脂の耐衝撃性を向上し、溶着強度を高めることができる。
ジアルキル置換ジオールは、一般式がHO(CHOHで表される炭素数nの直鎖状ジオールにおいて、合計2n個の水素原子のうち、2個の水素原子がアルキル基で置換されている。主鎖の炭素数nは、例えば1~6の範囲内である。アルキル基で置換される炭素原子の位置a,bは、それぞれ独立して1以上n以下の範囲内から選択することが可能である。
ジオールのジアルキル置換の位置aまたはbが1またはnに等しい場合、水酸基が第2級アルコールまたは第3級アルコールになるため、ポリエステルの合成に際して、カルボン酸成分との縮合反応が進行しにくくなるおそれがある。このため、アルキル基置換の位置a,bは、1より大きく、nより小さいことが好ましい。
アルキル基置換の位置a,bが等しい場合、ジアルキル置換ジオールの一般式は、HO(CHa-1C(R)(R)(CHn-aOHで表される。RおよびRは、それぞれ、炭素数が例えば1~6のアルキル基である。アルキル基としては、炭素数1のメチル基、炭素数2のエチル基、炭素数3のプロピル基またはイソプロピル基、炭素数4のブチル基、イソブチル基等、炭素数5のペンチル基、イソペンチル基等が挙げられる。
ジアルキル置換ジオールの主鎖の炭素数nは3~4がより好ましく、アルキル基RおよびRの炭素数は1~4がより好ましい。例えば、ネオペンチルグリコールまたは2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールの場合は、n=3かつa=b=2である。ネオペンチルグリコールすなわち2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールでは、RおよびRがメチル基である。2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールでは、RおよびRがそれぞれブチル基およびエチル基である。
実施形態の樹脂組成物において、ポリエステル系樹脂は、ジアルキル置換を有するジオールで変性されたポリエチレンテレフタレート樹脂を主成分として、他のポリエステル系樹脂または熱可塑性樹脂をさらに含有してもよい。
実施形態の樹脂組成物において、ポリエステル系樹脂の極限粘度(IV)は、0.60~0.85dl/gであることが好ましい。本発明における極限粘度は、JIS K 7367-5に準じ、フェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン(質量比1/1)混合溶媒中、30℃で測定される値である。これにより、非吸着性等の性能と、樹脂の成形性を両立しやすくなる。
実施形態の樹脂組成物において、ポリエチレン系樹脂は、樹脂組成物の耐衝撃性を向上し、溶着強度を高めることができる。ポリエチレン系樹脂は、ポリエチレンの単独共重合体でもよく、エチレンとエチレン以外のモノマーとの共重合体でもよい。エチレン以外のモノマーとしては、プロピレン、炭素数4個のオレフィン(1-ブテン等)、炭素数6個のオレフィン(1-ヘキセン等)、炭素数8個のオレフィン(1-オクテン等)等が挙げられる。ポリエチレン系樹脂は、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)のように、酢酸ビニル等の極性モノマーを含まない、炭化水素系モノマーのみを重合させたポリマーであってもよい。ポリエチレン系樹脂の具体例としては、特に限定されないが、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等が挙げられる。
実施形態の樹脂組成物において、相溶化剤は、ポリエチレン系樹脂との相溶性を有するとともに、ポリエステル系樹脂の末端基である水酸基(-OH)またはカルボキシル基(-COOH)と反応することが可能な官能基として、エポキシ基(>O)を有する。このような相溶化剤としては、エチレン等のオレフィンと、エポキシ基を有するモノマー(エポキシ基含有モノマー)を少なくとも含む共重合体が挙げられる。
エポキシ基含有モノマーとしては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基を有する不飽和エステル系モノマー;ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基を有する不飽和エーテル系モノマー;3,4-エポキシ-1-ブテン、4,5-エポキシ-1-ペンテン、5,6-エポキシヘキセン等のエポキシオレフィンなどが挙げられる。
相溶化剤となる前記共重合体は、エポキシ基以外の官能基を有するモノマーを更に共重合させてもよい。このようなモノマーとしては、アクリル酸エチルやアクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル、アクリル酸等の不飽和カルボン酸等が挙げられる。相溶化剤は、エチレンを主成分とし、エポキシ基含有モノマーとして、少なくともグリシジルメタクリレート(GMA)を共重合した共重合体が好ましい。このような共重合体としては、エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体が挙げられる。エポキシ基を有する共重合体におけるエポキシ基含有モノマーの含有率は、特に限定されないが、例えば、2~30重量%が好ましく、5~20重量%がより好ましい。
相溶化剤は、(メタ)アクリル酸又は/及び(メタ)アクリル酸エステルと、エチレンの共重合鎖を含有してもよい。共重合鎖が、エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート共重合鎖であってもよい。これらの共重合鎖は、共重合体の主鎖又は/及び側鎖であってもよい。ここで、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸又は/及びメタクリル酸を意味する。また、(メタ)アクリレートは、アクリレート又は/及びメタクリレートを意味する。
実施形態の樹脂組成物は、相溶化剤を含有してもよく、又は/及び、相溶化剤が樹脂に付加していてもよい。ここで、相溶化剤が樹脂に付加しているとは、例えば、相溶化剤に含まれる官能基が、樹脂に含まれる官能基に共有結合している状態であってもよいし、樹脂と水素結合や疎水性相互作用、π-π相互作用等で付加している状態であってもよい。
実施形態の樹脂組成物は、ポリエステル系樹脂を主成分とし、さらには、前記ジアルキル置換を有するジオールで変性されたポリエチレンテレフタレート樹脂を主成分とすることが好ましい。ポリエステル系樹脂と、ポリエチレン系樹脂と、エポキシ基を有する相溶化剤との配合比としては、実施形態の樹脂組成物または樹脂成分の合計を100重量部として、例えば、ポリエステル系樹脂50~90重量部、ポリエチレン系樹脂3~35重量部、相溶化剤1~20重量部などの割合が挙げられる。
ポリエステル系樹脂の割合は、例えば、60重量部、70重量部、75重量部、80重量部、85重量部などでもよい。ポリエチレン系樹脂の割合は、例えば、5重量部、10重量部、15重量部、20重量部、25重量部、30重量部などでもよい。相溶化剤の割合は、例えば、3重量部、5重量部、10重量部、15重量部などでもよい。
実施形態の樹脂組成物は、樹脂組成物の目的を損なわない範囲で、樹脂成分以外に、適宜の添加剤を添加することができる。添加剤としては、例えば酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、着色剤等の少なくとも1種が挙げられる。これらの添加剤は、それぞれ独立して、樹脂組成物に含有させるか否かを選択することができる。
実施形態の樹脂組成物は、ポリエステル系樹脂と、ポリエチレン系樹脂とが海島構造を形成していてもよい。この海島構造は、ポリエステル系樹脂が海部を構成し、ポリエチレン系樹脂が島部を構成する海島構造であってもよい。実施形態の樹脂組成物は、ポリエステル系樹脂と、ポリエチレン系樹脂とが、相溶化剤等を介して相溶することにより、海島構造を形成することができる。
海島構造を観察する方法は特に限定されないが、樹脂組成物の断面をミクロトームで切削して得た薄片を四酸化ルテニウムで染色し、電界放出型走査電子顕微鏡を用いて、20,000倍で観察して画像を取得し、画像解析ソフトを用いて海島構造の島部を円又は楕円の形状として抽出してもよい。
画像解析ソフトを用いて海島構造の島部を円又は楕円の形状として抽出した際の海島構造部分全体に対する島部が占める面積比率は、5~40%であることが好ましく、10~30%であることがより好ましい。これらの島部は、ポリエチレン系樹脂から構成される。ここで、「島部を円又は楕円の形状として抽出」とは、画像における島部の形状が円でも楕円でもない場合も、円又は楕円の形状に換算して面積を算出することを意味する。例えば、各々の島部を円又は楕円の形状として取り出し、前記円又は楕円の面積を合計して、面積比率を算出することができる。また、「海島構造部分全体」とは、「画像を取得した海島構造の部分」の全体を意味する。海島構造の海部が占める面積比率と島部が占める面積比率との合計は100%となる。つまり、上述の場合は、海部が占める面積比率が60~95%又は70~90%になる。
画像解析ソフトを用いて海島構造の島部を円又は楕円の形状として抽出した際の島部の平均粒径は、0.1~2.0μmであることが好ましい。これらの島部は、ポリエチレン系樹脂から構成される。ここで、「島部を円又は楕円の形状として抽出」とは、画像における島部の形状が円でも楕円でもない場合も、円又は楕円の形状に換算して直径を算出することを意味する。例えば、各々の島部を円又は楕円の形状として取り出し、前記円の直径、前記楕円の長径と短径の平均値を求め、それらの平均値を算出することができる。
実施形態の樹脂組成物は、成形品を成形するために用いることができる。成形品の成形方法は特に限定されず、射出成形、押出成形、ブロー成形、インモールド成形等が挙げられる。成形品は、実施形態の樹脂組成物を単独で用いた樹脂成形品であってもよく、実施形態の樹脂組成物からなる樹脂成形部と他の樹脂とを積層した樹脂成形品であってもよい。成形品は、実施形態の樹脂組成物を、他の樹脂から形成した成形品の上で成形する方法により作製することもできる。
実施形態の樹脂組成物を用いて、積層フィルムを成形することもできる。実施形態の樹脂組成物は、耐衝撃性、溶着強度に優れるため、積層フィルムの最内層に使用されるシーラントとしても好適である。
積層フィルムは、シーラント以外の樹脂層として、基材を設けることができる。基材としては、耐熱性や強度などの機械的特性、印刷適性に優れた樹脂フィルムが好ましく、具体的には、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ナイロンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリオレフィンフィルム等を挙げることができる。基材の樹脂フィルムが、延伸フィルムであってもよい。積層フィルムにおける基材の厚さは特に限定されないが、例えば10~50μmであってもよい。
積層フィルムよりも厚いシート状の積層体を、包装容器の製造に用いてもよい。積層体が、柔軟で、可撓性を有してもよい。積層体の厚さは、特に限定されないが、1000μm以下、あるいは、1~3mm程度であってもよい。1種または2種以上の基材が、2層以上積層されてもよい。
シーラントと基材との間など、積層体を形成する各層の間には、必要に応じて、アンカー剤または接着剤の層が介在されてもよい。シーラントを押出ラミネート法で形成する場合には、シーラントに接してアンカー剤層が形成される。シーラントがポリエステル系樹脂を主成分とし、基材がポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルムである場合には、アンカー剤層を用いなくともよい。あらかじめフィルム状の成形品として作製したシーラントをドライラミネート法によって基材と接着する場合には、シーラントの内側に接して接着剤層が形成される。また、共押出法を用いる場合は、シーラントと基材との間に酸変性ポリオレフィンなどの接着性樹脂を用いてもよい。
前記アンカー剤層を構成するアンカー剤としては、ポリウレタン系、ポリエーテル系、アルキルチタネート(有機チタン化合物)系等、一般的に押出ラミネート法に使用されるアンカー剤が使用できる。前記接着剤層を構成する接着剤としては、ポリウレタン系、ポリエーテル系等、一般的にドライラミネート法に使用される接着剤が使用できる。
積層体の基材は、2種以上の樹脂層を有してもよく、樹脂層以外の無機材料層を有してもよい。無機材料層としては、アルミニウム等の金属、アルミナやシリカ等の酸化物等が挙げられる。無機材料層は、材料に応じて、金属箔、蒸着膜、スパッタ膜などとして形成することができる。
第1実施形態の包装容器は、図1に示すように、筒状の胴部11の両端にそれぞれ口部12と底部13が接合された筒状容器10である。口部12または底部13の少なくとも一方が、実施形態の樹脂組成物から成形されてもよい。胴部11が、実施形態の樹脂組成物をシーラントに有する積層フィルムから形成されてもよい。胴部11は、円筒状に形成されてもよい。
第2実施形態の包装容器は、図2に示すように、チューブ状の胴部21の一端に口部22が接合され、胴部21の他端が封止部23により封止されたチューブ容器20である。口部22が、実施形態の樹脂組成物から成形されてもよい。胴部21が、実施形態の樹脂組成物をシーラントに有する積層フィルムから形成されてもよい。封止部23は、胴部21の他端を潰して内面同士を接合することにより形成されている。
第3実施形態の包装容器は、図3に示すように、包装フィルムから形成された袋状の胴部31の周縁の少なくとも1箇所に、口部32が接合されたパウチ容器30であってもよい。口部32が、実施形態の樹脂組成物から成形されてもよい。胴部31が、実施形態の樹脂組成物をシーラントに有する積層フィルムから形成されてもよい。パウチ状の胴部31の形態は特に限定されないが、三方袋、四方袋、合掌貼り袋、ガゼット袋、スタンディングパウチ等が挙げられる。胴部31が、例えばバッグインボックス用の内袋など大型の包装袋であってもよい。
パウチ容器30が、胴部31またはその一部の切断により開封される場合は、パウチ容器30の口部32を省略してもよい。この場合は、特に図示しないが、胴部31の全周にわたって包装フィルムの内面同士を対向させてシール部を形成してもよい。胴部31の開封を容易にするため、開封箇所の端部にノッチ等の切込みを入れたり、開封箇所に沿ってハーフカット溝等の易開封線を形成したりしてもよい。胴部31の開封箇所が、内容物を収容した部分より突出した先細り状に形成されてもよい。
実施形態の包装容器は、胴部と接合される成形品または胴部のシーラントの少なくとも一方にポリエステル系樹脂を含有するため、低分子量成分の非吸着性およびバリア性にも優れている。さらに、胴部と接合される成形品または胴部のシーラントの少なくとも一方が、実施形態の樹脂組成物から形成されているため、耐衝撃性、溶着強度にも優れている。例えば、包装容器の落下、衝突等に際しても、接合部等の破損、劣化を抑制し、落下強度等の耐久性を向上させることができる。
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
(樹脂組成物)
表1~表2に示す割合で原料樹脂を配合し、溶融混練して樹脂組成物のペレットを作製した。続けて、ペレットを熱プレス機で0.5mmの厚さに成形し、単層のプレスシートのサンプルを得た。
表1~表2で樹脂の組成を示す際、下記の原料樹脂の記号の右に、配合比の数値を重量部として添えた。例えば、「A-1 80」は、樹脂A-1を80重量部の割合で使用したことを表す。表1~表2に示す原料樹脂は、次のとおりである。
(A)ポリエステル系樹脂
「A-1」:非晶性のネオペンチルグリコール(NPG)変性ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂(密度ρ=1.29g/cm、融点Tmなし、IV=0.83)
「A-2」:非晶性の2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール(BEPD)変性ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂(融点Tmなし、IV=0.75)
(B)ポリエチレン系樹脂
「B-1」:メタロセン触媒重合C6-LLDPE(密度ρ=0.915g/cm、融点Tm=121℃、MFR=1g/10min(190℃、2.16kgf))
(C)相溶化剤
「C-1」:エチレン-グリシジルメタクリレート(EGMA)共重合体(融点Tm=105℃、MFR=3g/10min、GMA6重量%)
作製したペレットまたはプレスシートのサンプルを用いて、次の方法により、試験を実施した。
(1)メルトフローレート(MFR)
メルトフローレート(MFR)は、樹脂組成物のペレットを用いて、試験温度260℃または280℃、公称荷重2.16kgにおける値(g/10min)を測定した。
(2)折り曲げ試験
プレスシートを幅15mmに裁断して作製したサンプルを用いて、MIT耐折度試験機(テスター産業(株)製)を用いて、1.5kgf、角度135°で折り曲げ試験を実施し、破断するまでの折り曲げ回数を測定した。
(3)シール強度
JIS Z 1526に準じて、プレスシートを幅15mmに裁断して作製した2枚のサンプルを対向させて熱溶着し、サンプルのシール強度(15mm/N)を引張速度300mm/分、幅15mmにて測定した。熱溶着条件は、180℃を中心として選択した表1~表2に示す温度で、圧力0.2MPa、加熱時間1秒とした。
以上の結果を表1~表2に示す。
Figure 2023004921000001
Figure 2023004921000002
実施例1~6の樹脂組成物から形成した成形品のサンプルは、耐衝撃性および溶着強度に優れていることが分かった。相溶化剤のエポキシ基によるポリエステル系樹脂の架橋が進むと、粘度が上昇し、MFRが低下する傾向がみられた。
比較例1~2のサンプルは、折り曲げ試験による折り曲げ回数が低く、耐衝撃性が低かった。
(非吸着性の評価)
表1に示す実施例1,6の樹脂組成物を用いて成形した厚さ0.5mmのプレスシートを、幅7mm×長さ30mmに裁断して、非吸着性の評価用サンプルを作製した。同様にして、次のポリエチレン系樹脂を用いて、非吸着性の評価用サンプルを成形した。ポリエチレン系樹脂B-2を用いた場合を比較例3とし、ポリエチレン系樹脂B-3を用いた場合を比較例4とした。
(B)ポリエチレン系樹脂
「B-2」:メタロセン触媒重合LLDPE(密度ρ=0.924g/cm、融点Tm=120℃、MFR=2.2g/10min(190℃、2.16kgf))
「B-3」:HDPE(密度ρ=0.949g/cm、融点Tm=130℃、MFR=1.1g/10min(190℃、2.16kgf))
非吸着性の評価用サンプルを用いて、次の方法により、非吸着性の評価を実施した。
(4)酢酸トコフェロール残存率の測定方法
非吸着性の評価用サンプルとともに、有効成分として酢酸α-トコフェロール(ビタミンEアセテート)を含む市販の化粧水3mlを3ml褐色瓶に入れ、キャップをして密封した。密封した褐色瓶を40℃、90%RHで2ヶ月保管した後に開封し、化粧水中の酢酸α-トコフェロールの残存量を高速液体クロマトグラフィ法で定量し、前記残存量をもとに、酢酸トコフェロール残存率(%)を算出した。
酢酸トコフェロール残存率の測定結果は次のとおりである。
実施例1:97.2%
実施例6:97.3%
比較例3:59.6%
比較例4:61.0%
実施例1,6の樹脂組成物を用いた場合は、酢酸トコフェロール残存率が高かった。なお、特に測定結果を示さないが、実施例2~5の樹脂組成物を用いる場合も、実施例1,6と同様に、高い酢酸トコフェロール残存率が得られると推測される。
(海島構造の観察)
実施例1~6の樹脂組成物から形成した成形品のサンプルの断面をミクロトームで切削して得た薄片を四酸化ルテニウムで染色し、電界放出型走査電子顕微鏡を用いて、20,000倍で観察して画像を取得し、画像解析ソフトを用いて海島構造の島部を円又は楕円の形状として抽出した。海島構造部分全体に対する島部が占める面積比率および島部の平均粒径を求め、表3に示す。平均粒径は、抽出した円の直径と、抽出した楕円の長径と短径の平均値とを求め、これらの平均値を平均粒径とした。
Figure 2023004921000003
また、海島構造を表す電子顕微鏡写真の一例を図4に示す。ただし、図4は元の画像から寸法が変更されている可能性があり、倍率が20,000倍であるとは限らない。
10…筒状容器、11…筒状容器の胴部、12…筒状容器の口部、13…筒状容器の底部、20…チューブ容器、21…チューブ容器の胴部。22…チューブ容器の口部、23…チューブ容器の封止部、30…パウチ容器、31…パウチ容器の胴部、32…パウチ容器の口部。

Claims (17)

  1. 樹脂成分が、ポリエステル系樹脂と、ポリエチレン系樹脂と、エポキシ基を有する相溶化剤と、を含有する樹脂組成物であって、
    前記ポリエステル系樹脂が、ジアルキル置換を有するジオールで変性されたポリエチレンテレフタレート樹脂であることを特徴とする樹脂組成物。
  2. 前記ジアルキル置換を有するジオールが、ネオペンチルグリコールまたは2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記エポキシ基を有する相溶化剤が、エチレン-グリシジルメタクリレートであることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物。
  4. 請求項1または2に記載の樹脂組成物から成形されていることを特徴とする成形品。
  5. 最内面のシーラントが請求項1または2に記載の樹脂組成物から形成されていることを特徴とする積層フィルム。
  6. 口部または底部の少なくとも一方が、請求項4に記載の成形品から形成されていることを特徴とする包装容器。
  7. 請求項5に記載の積層フィルムから形成された胴部を有することを特徴とする包装容器。
  8. ポリエステル系樹脂と、ポリエチレン系樹脂とを含有し、
    前記ポリエステル系樹脂が海部を構成し、前記ポリエチレン系樹脂が島部を構成する海島構造を形成し、
    前記ポリエステル系樹脂は、ジアルキル置換を有するジオールで変性されたポリエチレンテレフタレート樹脂であることを特徴とする樹脂組成物。
  9. 樹脂組成物の断面をミクロトームで切削して得た薄片を四酸化ルテニウムで染色し、電界放出型走査電子顕微鏡を用いて、20,000倍で観察して画像を取得し、画像解析ソフトを用いて海島構造の島部を円又は楕円の形状として抽出した際の海島構造部分全体に対する島部が占める面積比率が5~40%である請求項8に記載の樹脂組成物。
  10. 前記ポリエチレン系樹脂が構成する島部は、画像解析ソフトを用いて海島構造の島部を円又は楕円の形状として抽出した際の島部の平均粒径が0.1~2.0μmである請求項9に記載の樹脂組成物。
  11. さらに、相溶化剤を含有する又は/及び相溶化剤が樹脂に付加している請求項8に記載の樹脂組成物。
  12. 前記相溶化剤は、(メタ)アクリル酸又は/及び(メタ)アクリル酸エステルと、エチレンの共重合鎖を含有する請求項11に記載の樹脂組成物。
  13. 前記共重合鎖が、エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート共重合鎖である請求項12に記載の樹脂組成物。
  14. 請求項8または9に記載の樹脂組成物から成形されていることを特徴とする成形品。
  15. 最内面のシーラントが請求項8または9に記載の樹脂組成物から形成されていることを特徴とする積層フィルム。
  16. 口部または底部の少なくとも一方が、請求項14に記載の成形品から形成されていることを特徴とする包装容器。
  17. 請求項15に記載の積層フィルムから形成された胴部を有することを特徴とする包装容器。
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