以下、本発明について、望ましい実施の形態とともに詳細に説明する。
本発明の研磨布は、数平均による単繊維繊度が1×10−8〜1.4×10−3dtexであり、単繊維繊度が1×10−8〜1.4×10−3dtexの範囲内の繊維の比率が60%以上である熱可塑性ポリマーからなる極細繊維を表面に有するシート状物であって、表面に露出した単繊維繊度1×10−8〜1.4×10−3dtexの極細繊維間の交差点が、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて2000倍にて観測した0.01mm2の範囲50ヶ所において、平均で500ヶ所以上存在することを特徴とする研磨布である。本発明の研磨布の表面の一例を図1に示す。
ここで、本発明で言う極細繊維とは、単繊維の直径が1〜400nmのナノファイバーからなり、形態的にはその単繊維がバラバラに分散したものが大部分を占めるが、単繊維が部分的に結合しているもの、あるいは複数の単繊維が凝集した集合体などの全ての総称である。その繊維長や断面形態などは限定されない。
本発明では、このナノファイバーの単繊維繊度の平均値が重要である。これは極細繊維からなる研磨布の横断面を透過型電子顕微鏡(TEM)あるは走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、同一横断面内で無作為に抽出した50本以上の単繊維直径を測定するものである。この観察を3ヶ所以上で行い、少なくとも合計150本以上の単繊維直径を測定することによって求めることができる。このとき400nm(ナイロン6(比重1.14g/cm3)の場合では1.4×10−3dtex)相当を超える他の繊維は除き、それ以下の1〜400nmの範囲内の単繊維直径のものだけを無作為に選び測定するものである。なお、単繊維繊度の範囲は、より好ましくは1×10−8〜6×10−4dtex(ナイロン6の場合では1〜250nm)である。
ここで、単繊維繊度の平均値は以下の方法で求めることができる。すなわち、測定した単繊維直径から繊度を計算し、平均値を求める。これを本発明では「数平均による単繊維繊度」という。本発明では、数平均による単繊維繊度が1×10−8〜1.4×10−3dtex(単繊維直径で1〜400nm相当)であることが重要である。これは従来の海島型複合紡糸による極細繊維に比べ1/10〜1/1000という細さであり、従来の極細繊維では得られなかった緻密な表面、平滑性をもつ研磨布を得ることができる。
また、本発明の研磨布を構成するナノファイバーの単繊維繊度ばらつきは、以下のようにして評価する。
すなわち、研磨布中のナノファイバーそれぞれの単繊維繊度をdtiとしその総和を総繊度(dt1+dt2+…+dtn)とする。また、同じ単繊維繊度を持つナノファイバーの頻度(個数)を数え、その積を総繊度で割ったものをその単繊維繊度の繊度比率とする。これは、不織布中に含まれるナノファイバー全体に対する各単繊維繊度成分の重量分率(体積分率)に相当し、この値が大きい単繊維繊度成分が研磨布の性質に対する寄与が大きいことになる。
なお、本発明においては、かかるナノファイバーの単繊維繊度ばらつきは、前述の単繊維繊度の平均値を求めるのと同様に、ナノファイバーを少なくとも一部に含むシート状物の横断面を透過型電子顕微鏡(TEM)あるいは走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、同一横断面内で無作為に抽出した50本以上のナノファイバーの単繊維直径を測定する。そして、これを3カ所以上で行い、少なくとも合計150本以上の単繊維直径を測定することで求めるものであり、前述の単繊維繊度の平均値を求めるのと同様のn数として求めればよいものである。
本発明では繊度比率の60%以上が1×10−8〜1.4×10−3dtex(単繊維直径で1〜400nm相当)の範囲にあることが重要である。これにより、ナノファイバー研磨布の性能を充分に発揮し、砥粒を均一に把持することが可能となり、ハードディスクの基板表面の平滑性を向上させることができ、結果として基板表面粗さを下げ、スクラッチ点数を大幅に減少させることができる。なお、単繊維繊度の範囲は、より好ましくは1×10−8〜6×10−4dtex(ナイロン6の場合では単繊維直径で1〜250nm相当)である。
本発明でいうシート状物は短繊維をカード、クロスラッパーを用いて幅方向に配列させた積層ウェブを形成させた後にニードルパンチを施して得られる短繊維不織布や、スパンボンドやメルトブロー法などから得られる長繊維不織布、抄紙法で得られる不織布および、支持体上にナノファイバーを静電紡糸法などにより噴霧、浸漬、あるいはコーティングして付着させたもの、織編物などが好適に用いられる。中でも、シート状物の引張強力や製造コストなどの点からスパンボンド法により得られる長繊維不織布が好ましい。
本発明の研磨布は、表面に露出した単繊維繊度が1×10−8〜1.4×10−3dtexの極細繊維間の交差点が、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて2000倍にて観測した表面0.01mm2の範囲50ヶ所において、平均で500ヶ所以上存在していることが重要である。ここで表面繊維の分散性は以下の方法で求めることができる。すなわち、極細繊維を含む研磨布の表面をSEMで観察、加速電圧20kV、ワーキングディスタンス8mm、倍率2000倍で撮影した表面写真において、明らかな欠点ヶ所は除いて無作為に表面0.01mm2の範囲を抽出し、研磨布の表面に露出した単繊維繊度が1×10−8〜1.4×10−3dtexの(1〜400nmの単繊維直径を有する)極細繊維の繊維間の交差点をカウントする。合計50枚の表面写真を測定し、各写真についてカウントを行い、50ヶ所の平均を求め小数点第一位で四捨五入するものである。このとき、表面にポリウレタンなどの高分子弾性体が露出し、極細繊維が存在しない部分や、ニードルパンチ等により大きな穴を形成している部分は避け、判定に用いないものとする。ここでいう極細繊維間の交差点とは、分散した極細繊維の1本と1本が交差する点であり、交差角の鋭角が20°以上である交差点である。繊維が部分的に合流している箇所や、交差せずに並行している部分、フィブリル化した部分は除くものとする。また、極細繊維が2本以上凝集して形成される束同士の交差点、あるいは束状部分と極細繊維1本の間の交差点もカウントしない。なお、極細繊維が数百本単位で凝集した束の表面で、部分的に分散した極細繊維間の交差点についてはカウントするものとする。ここで、研磨布の極細繊維を含む表面0.01mm2の極細繊維間の交差点は写真50枚平均で500ヶ所以上存在することが必要であり、より好ましくは1000ヶ所以上である。ナノファイバーが表面に分散することで、従来の極細繊維では達成し得なかった極めて緻密な表面状態と優れた平滑性が得られるからである。
本発明の研磨布を構成する熱可塑性ポリマーとしては、ポリエステルやポリアミド、ポリオレフィン、ポリフェニレンスルフィド(PPS)等が挙げられるが、ポリエステルやポリアミドに代表される重縮合系ポリマーは融点が高いものが多く、より好ましい。ポリマーの融点は165℃以上であると、極細繊維の耐熱性が良好となるため好ましい。例えば、PETは255℃、N6は220℃、ポリ乳酸(PLA)は170℃である。また、ポリマーには粒子、難燃剤、帯電防止剤等の添加剤を含有させても良いし、ポリマーの性質を損なわない範囲で他の成分が共重合されていても良い。
本発明の研磨布を構成するナノファイバーは、静電紡糸法などの公知のナノファイバー製造法を用いることもできるし、ポリマーアロイ繊維から得ることもできる。ポリマーアロイ繊維から得る場合は、ナノファイバーの前駆体であるポリマーアロイ繊維は、2種類以上の溶剤に対する溶解性の異なるポリマーをアロイ化したポリマーアロイ溶融体を用いて得た海島型繊維であることが好ましい。このポリマーアロイ繊維中では、易溶解性ポリマーが海(マトリックス)、難溶解性ポリマーが島(ドメイン)をなし、その島サイズを制御することが重要である。ここで、島サイズとは、ポリマーアロイ繊維の横断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、直径換算で評価したものである。前駆体中での島サイズによりナノファイバーの直径がほぼ決定されるため、島サイズの分布は極細繊維の直径分布に準じて設計される。このため、アロイ化するポリマーの混練が非常に重要であり、混練押出機や静止混練機等によって高混練することが好ましい。なお、単純なチップブレンド(特許文献3、4)では混練が不足するため、数十nmレベルで島を分散させることは困難である。
具体的には、混練を行う際の目安としては、組み合わせるポリマーにもよるが、混練押出機を用いる場合には、2軸押出混練機を用いることが好ましく、静止混練器を用いる場合は、その分割数は100万以上とすることが好ましい。
島ドメインを円形に近づけるためには、ポリマーの組み合わせも重要となる。島成分ポリマーと海成分ポリマーは非相溶であることが好ましいが、単なる非相溶ポリマーの組み合わせでは島成分ポリマーが充分超微分散化し難い。このため、組み合わせるポリマーの相溶性を最適化することが好ましいが、このための指標の一つが溶解度パラメーター(SP値)である。ここで、SP値とは(蒸発エネルギー/モル容積)1/2で定義される物質の凝集力を反映するパラメータであり、SP値が近いもの同士では相溶性が良いポリマーアロイが得られる可能性がある。SP値は種々のポリマーで知られているが、例えば「プラスチック・データブック」旭化成アミダス株式会社/プラスチック編集部共編、189ページ等に記載されている。2つのポリマーのSP値の差が1〜9(MJ/m3)1/2であると、非相溶化による島成分の円形化と超微分散化が両立させやすく好ましい。例えば、ナイロン6とポリエチレンテレフタレートはSP値の差が6(MJ/m3)1/2程度であり好ましい例であるが、ナイロン6とポリエチレンはSP値の差が11(MJ/m3)1/2 程度であり好ましくない例として挙げられる。
さらに、溶融粘度も重要であり、島を形成するポリマーの溶融粘度を海に比べて低く設定すると剪断力による島ポリマーの変形が起こりやすいため、島成分ポリマーの微分散化が進みやすく超極細化の観点からは好ましい。ただし、島成分ポリマーを過度に低粘度にすると海化しやすくなり、繊維全体に対するブレンド比を高くできないため、島成分ポリマー粘度は海成分ポリマー粘度の1/10以上とすることが好ましい。
本発明の研磨布に用いられる極細繊維不織布において、不織布の強度補強やクッション性の向上の点から、主体をなすナノファイバー以外にも、単繊維繊度が1.4×10−3dtex以上のナイロン6、ナイロン66、ナイロン12及び共重合ナイロンなどのポリアミド類からなる極細繊維を混合して使用してもよい。ただし、研磨布表面の平滑性の点から混合量としては、繊維総重量に対して、好ましくは30重量%以下、より好ましくは10重量%以下が採用される。
本発明で用いる高分子弾性体は特に限定はない。例えば、ポリウレタン、ポリウレア、ポリウレタン・ポリウレアエラストマー、ポリアクリル酸樹脂、アクリロニトリル・ブタジエンエラストマー、スチレン・ブタジエンエラストマーなどを用いることができる。中でもポリウレタン、ポリウレタン・ポリウレアエラストマーなどのポリウレタン系エラストマーが好ましい。
ポリウレタンは、ポリオール成分にポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系のジオール、もしくはこれらの共重合物を用いることができる。また、ジイソシアネート成分としては、芳香族ジイソシアネート、脂環式イソシアネート、脂肪族系イソシアネートなどを使用することができる。
ポリウレタンの重量平均分子量は50,000〜300,000が好ましく、より好ましくは100,000〜300,000、さら好ましくは150,000〜250,000である。重量平均分子量を50,000以上とすることにより、得られるシート状物の強度を保持し、また極細繊維の脱落を防ぐことができる。また、300,000以下とすることで、ポリウレタン溶液の粘度の増大を抑えて不織布への含浸を行いやすくすることができる。
また、高分子弾性体は、主成分としてポリウレタンを用いることが好ましいが、バインダーとして性能や立毛繊維の均一分散状態を損なわない範囲で、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリオレフィン系などのエラストマー樹脂、アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂などが含まれていても良い。さらに、必要に応じて着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤、分散剤、柔軟剤、凝固調整剤、難燃剤、抗菌剤、防臭剤などの添加剤が配合されていてもよい。
本発明の研磨布において、高分子弾性体の含有率は、不織布の繊維の総重量に対し、5重量%以上200重量%以下であることが好ましい。含有量によって研磨布の表面状態、クッション性、硬度、強度などを適宜調節することができる。5重量%以上とすれば繊維脱落を少なくでき、200重量%以下とすれば、加工性及び生産性が向上するとともに、表面上において極細繊維が均一分散した状態を得ることができる。好ましくは20〜100重量%の範囲であり、より好ましくは30〜80重量%の範囲である。
本発明の研磨布をテープ状として、テクスチャー加工を施す際に、寸法変化が生じると、基板表面を均一に研磨することができない。そこで、研磨布の形態安定性の点から、本発明に用いられる研磨布の目付は100〜600g/m2であることが好ましく、150〜300g/m2であることがより好ましい。また、同様の観点から本発明の研磨布は厚みが0.1〜10mmの範囲が好ましく、0.3〜5mmの範囲がより好ましい。なお、本発明の研磨布の密度については特に限定されるものではないが、均一な加工性を得るためには0.1〜1.0g/cm3の範囲が好適である。
更に、テクスチャー加工時のテープ伸びによる加工ムラ、スクラッチ欠点の発生を抑える点から、本発明においては、研磨布の極細繊維を有する面の裏面に補強層を接着する方法が好適に用いられる。
補強層としては、織編物や熱接着繊維を用いた不織布、フィルム状物を用いることが好ましい。中でも、高精度のテクスチャー加工を行うには、厚みや物理特性において均一なフィルム状物を使用することがより好ましい。
ここでいうフィルムとなる素材としては、ポリオレフィン系、ポリエステル系およびポリフェニルサルファイド系などのフィルム形状を有するものであれば使用可能である。汎用性を考えた場合、ポリエステルフィルムを使用することが好ましい。フィルムからなる補強層を設ける場合には、テクスチャー加工時の研磨布の形態安定性、クッション性および基板表面へのフィット性を全て満足させる必要があるため、不織布からなるシート状物との厚みバランスをとることが重要である。不織布からなるシート状物の仕上がり厚みとしては0.4mm以上であることが好ましく、生産性の点からより好ましくは0.4〜1.5mmの範囲である。そのため、フィルムの厚みは20〜100μmとすることが好ましい。不織布からなるシート状物の厚みが0.4mm未満の場合、テクスチャー加工時の寸法変化を抑えるため補強層が必要である。一方、フィルム層の厚みが20μm未満であると、テクスチャー加工時の寸法変化を抑えられず、100μmを超えると、研磨布全体の剛性が高くなりすぎ、結果としてスクラッチなどの発生を抑えることができないため好ましくない。
次に、本発明の研磨布の製造方法について詳細に記述する。
本発明の研磨布は例えば、以下の工程を組み合わせることにより得られる。すなわち、2種類以上の溶剤に対する溶解性の異なるポリマーをアロイ化したポリマーアロイ溶融体を用い、複合繊維ウェブを作製、複合繊維ウェブに絡合処理を施して不織布を作製する工程、高分子弾性体を該不織布に付与し、該高分子弾性体を実質的に凝固し固化させる工程、起毛処理を施し表面に立毛を形成する工程、該複合繊維から易溶性ポリマーを溶解除去することにより極細繊維化する工程である。
数平均による単繊維繊度が1×10−8〜1.4×10−3dtexであり、単繊維繊度が1×10−8〜1.4×10−3dtexの範囲内の繊維の比率が60%以上である極細繊維から直接不織布を製造するのは困難なので、静電紡糸法などの公知のナノファイバーの製造法を用いてもよいし、前述のように、まず、2種類以上の溶剤に対する溶解性の異なるポリマーをアロイ化したポリマーアロイ溶融体を用いて得たポリマーアロイ繊維で不織布を製造し、このポリマーアロイ繊維から極細繊維を発生させるという工程を経てもよい。
本発明の研磨布を構成する不織布を得る方法としては特に限定されるものではないが、単成分紡糸や海島複合紡糸、分割複合紡糸または静電紡糸法などにより得られたものなどを用いることができる。またスパンボンド、メルトブローなど紡糸から直接形成する長繊維不織布、抄紙法で得られる不織布および、支持体上に静電紡糸法などによりナノファイバーを噴霧、浸漬、あるいはコーティングして付着させたもの、織編物などが好適に用いられる。中でも、シート状物の引張強力や製造コストなどの点からスパンボンド法により得られる長繊維不織布が好ましい。
スパンボンド法とは、特に限定されるのもではないが、溶融したポリマーをノズルより押し出し、これを高速吸引ガスにより2500〜8000m/分の速度で吸引延伸した後、移動コンベア上に繊維を捕集して繊維ウェブとする方法を用いることができる。さらに連続的に熱接着、絡合等を施すことにより一体化されたシートを得る方法が好ましい。
また、海島複合繊維の海成分を易溶性ポリマー、島成分を本発明のナノファイバー前駆体であるポリマーアロイとし、ここから易溶性ポリマーを溶出する方法を用いることもできる。ここで、紡糸される繊維として、2種類以上の溶剤に対する溶解性の異なるポリマーをアロイ化したポリマーアロイ溶融体を用いて得たポリマーアロイ繊維、すなわち、海成分を易溶解性ポリマー、島成分をナノファイバー前駆体である難溶解性ポリマーとした海島複合繊維を用いる。
繊維ウェブの絡合方法は特に限定されるものではないが、ニードルパンチやウォータジェットパンチなどの方法を適宜組み合わせることが出来る。
ニードルパンチ処理のパンチング本数としては、繊維の高絡合化による緻密な表面状態の達成の観点から1000〜10000本/cm2であることが好ましい。1000本/cm2未満では表面繊維の緻密性に劣ることにより、所望の高精度の仕上げを得ることができず、10000本/cm2を越えると、加工性の悪化を招くとともに繊維損傷が大きく、強度低下につながるため好ましくない。ニードルパンチング後の複合繊維不織布の繊維密度は、表面繊維本数の緻密化の観点から、0.20g/cm3以上であることが好ましい。
ウオータージェットパンチング処理を行う場合には、水は柱状流の状態で行うことが好ましい。柱状流を得るには、通常、直径0.05〜1.0mmのノズルから圧力1〜60MPaで噴出させる方法が好適に用いられる。
このようにして得られた複合繊維不織布は、緻密化の観点から、乾熱または湿熱、あるいはその両者によって収縮させ、さらに高密度化することが好ましい。
本発明の研磨布は、前記ポリマーアロイ繊維からなる不織布を極細繊維化処理する前に、ポリウレタンを主成分とする高分子弾性体を付与させることが好ましい。高分子弾性体のバインダー効果により、極細繊維が研磨布から抜け落ちるのを防止し、表面に露出したときに均一に分散することが可能となるためである。
なお、繊維と高分子弾性体との接着を緩和する目的で、高分子弾性体を付与する前にポリビニルアルコールを付与し、繊維を保護してもよい。
使用する高分子弾性体については前述の通りであるが、高分子弾性体を付与させる際に用いる溶媒としてはN,N’−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等を好ましく用いることができる。また、水中にエマルジョンとして分散させた水系ポリウレタンを用いてもよい。溶媒に溶解した高分子弾性体溶液に不織布を浸漬する等して高分子弾性体を不織布に付与し、その後、乾燥することによって高分子弾性体を実質的に凝固し固化させる。乾燥にあたっては不織布及び高分子弾性体の性能が損なわない程度の温度で加熱してもよい。
本発明において、高分子弾性体の付与量は、固形分として対極細繊維重量比で5〜200重量%の範囲が好ましい。
高分子弾性体には必要に応じて着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤、分散剤、柔軟剤、凝固調整剤、難燃剤、抗菌剤、防臭剤などの添加剤が配合されていてもよい。
本発明の研磨布において、極細繊維が研磨布の表面で分散した状態となるためには、ポリマーアロイ繊維不織布と高分子弾性体とからなるシート状物の少なくとも片面に、ポリマーアロイ繊維からなる立毛面を形成させた後に、ポリマーアロイ繊維を極細繊維化することが重要である。ポリマーアロイ繊維からなる立毛部分が表面に分散した状態で極細繊維化が起こり、極細化の工程で表面に分散し、これを乾燥せしめることで表面を覆うようにして均一に分散させることができるからである。なお、静電紡糸法を用いた場合は、より簡便にナノファイバーが表面に分散した状態を形成させることが可能である。
本発明でいう研磨布の立毛は、バッフィング処理により得られる。ここでいうバッフィング処理とは、サンドペーパーやロールサンダーなどを用いて表面を研削する方法などにより施すのが一般的である。特に、表面をサンドペーパーにより、起毛処理することにで均一かつ緻密な立毛を形成することができる。さらに、研磨布の表面に均一な立毛を形成させるためには、研削負荷を小さくすることが好ましい。研削負荷を小さくするためには、バフ段数、サンドペーパー番手などを適宜調整することが好ましい。中でも、バフ段数は3段以上の多段バッフィングとし、各段に使用するサンドペーパーの番手をJIS規定の150番〜600番の範囲とすることがより好ましい。
次に、立毛させたポリマーアロイ繊維から極細繊維を発現せしめる方法、すなわち、極細繊維発 生加工の方法は、除去する成分(易溶解性ポリマーからなる海成分)の種類に依存する。例えば、除去する成分がPEやポリスチレン等のポリオレフィンであれば、トルエンやトリクロロエチレン等の有機溶媒、PLAや共重合ポリエステルであれば、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液で浸漬・窄液を行う方法を好ましく用いることができる。
また、極細繊維発生加工の際に極細繊維を研磨布表面に分散させ、本発明の研磨布表面の緻密化、平滑化を達成するためには、極細繊維発生加工中、もしくは発生加工後、液中にて物理的刺激を加えることが重要である。物理的刺激としては特に限定されるものではないが、ウオータージェットパンチング処理などの高速流体流処理や、液流染色機、ウィンス染色機、ジッガー染色機、タンブラー、リラクサー等を用いた揉み処理、超音波処理等を適宜組み合わせて実施してもよい。
本発明の研磨布の湿潤時の強力向上、寸法安定性を得るために、極細繊維発生加工前もしくは後に、湿熱または乾熱処理、あるいはその両者を行っても良い。本発明における湿熱処理は特に限定されず、例えば液流染色機、連続スチーマー、ジッガー染色機、ビーム染色機などの公知の処理装置を用いることができる。乾熱処理方法についても特に限定されず、例えばコンベア式乾燥機、ピンテンター、クリップテンター、カレンダーなど通常のプロセスで用いられる公知の方法を適用することができる。
本発明の研磨布に補強層を接着する方法としては、熱圧着法、フレームラミ法、補強層とシート状物との間に接着層を設けるいずれの方法を採用してもよい。接着層としては、ポリウレタン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルブタジエン(NBR)、ポリアミノ酸およびアクリル系接着剤などゴム弾性を有するものが使用可能である。コストや実用性を考えると、NBRやSBRのような接着剤が好ましい。接着剤の付与方法としては、エマルジョンや、ラテックス状態でシート状物に塗布する方法が好適に用いられる。
本発明の研磨布を用いて、テクスチャー加工を行う方法としては、かかる研磨布を加工効率と安定性の観点から、30〜50mm幅のテープ状にカットして、テクスチャー加工用テープとして用いる。
該研磨テープと遊離砥粒を含むスラリーとを用いて、アルミニウム合金磁気記録ディスクのテクスチャー加工を行う方法が好適な方法である。研磨条件として、スラリーは、ダイヤモンド微粒子などの高硬度砥粒を水系分散媒に分散したものが好ましく用いられる。
砥粒の保持性と分散性の観点から、本発明の研磨布を構成する極細繊維に適合した砥粒径としては0.2μm以下が好ましいものである。
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また実施例で用いた評価法とその測定条件について以下に説明する。
(1)ポリマーの溶融粘度
東洋精機製作所(株)製キャピラログラフ1Bにより、ポリマーの溶融粘度を測定した。なお、サンプル投入から測定開始までのポリマーの貯留時間は10分とした。
(2)融点
パーキンエルマー社(Perkin Elmaer)製DSC−7を用いて2nd runでポリマーの溶融を示すピークトップ温度をポリマーの融点とした。このときの昇温速度は16℃/分、サンプル量は10mgとした。
(3)TEMによるシート状物(研磨布)横断面観察
シート状物(研磨布)をエポキシ樹脂で包埋し、横断面方向に超薄切片を切り出して透過型電子顕微鏡(TEM)でシート状物(研磨布)横断面を観察した。また、必要に応じて金属染色を施した。
TEM装置 : (株)日立製作所製 H−7100FA型
(4)極細繊維の数平均による単繊維繊度、直径
極細繊維を含むシート状物(研磨布)の横断面を透過型電子顕微鏡(TEM)あるいは走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、同一横断面内で無作為に抽出した50本以上の単繊維直径を測定する。測定は、TEMあるいはSEMによるシート状物(研磨布)の横断面写真を画像処理ソフト(WINROOF)を用いて単繊維直径および繊度を求めるものであり、これを3ヶ所以上で行い、少なくとも合計150本以上の単繊維の直径を測定することで求められるものである。このとき、400nm(ナイロン6(比重1.14g/cm3)の場合では1.4×10−3dtex)を超える他の繊維は除き1〜400nmの単繊維直径のものだけを無作為に選び測定する。なお、シート状物(研磨布)を構成するナノファイバーが異形断面の場合、まず単繊維の断面積を測定し、その面積を仮に断面が円の場合の面積とする。その面積から直径を算出することによって単繊維直径を求めるものである。単繊維繊度の平均値は、以下のようにして求める。まず、単繊維直径をnm単位で小数点の一桁目まで測定し、小数点以下を四捨五入する。その単繊維直径から単繊維繊度を算出し、単純な平均値を求める。本発明では、これを「数平均による単繊維繊度」とする。
単繊維の数平均による直径、単繊維繊度についても同様の統計手法にて求める。
SEM装置 : (株)キーエンス製 VE−7800型
(5)ナノファイバーの数平均による単繊維繊度ばらつき(繊度比率)
研磨布を構成するナノファイバーの単繊維繊度ばらつきは、本文中にも記載をしたように、以下のようにして評価する。すなわち、研磨布中のナノファイバーそれぞれの単繊維繊度を有効数字1桁で求め、その値をdtiとしその総和を総繊度(dt1+dt2+…+dtn)とする。また、先ほど有効数字1桁で求めた同じ単繊維繊度を持つナノファイバーの頻度(個数)を数え、その積を総繊度で割ったものをその単繊維繊度の繊度比率とする。これは研磨布中に含まれるナノファイバー全体に対する各単繊維繊度成分の重量分率(体積分率)に相当し、この値が大きい単繊維繊度成分が研磨布の性質に対する寄与が大きいことになる。
なお、本発明においては、かかるナノファイバーの単繊維繊度ばらつきは、上述の単繊維繊度の平均値を求めるのと同様に、ナノファイバーを少なくとも一部に含むシート状物(研磨布)の横断面を透過型電子顕微鏡(TEM)あるいは走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、同一横断面内で無作為に抽出した50本以上のナノファイバーの単繊維直径を測定するが、これを3カ所以上で行い、少なくとも合計150本以上の単繊維直径を測定することで求めるものであり、上述の単繊維繊度の平均値を求めるのと同一のn数と同一のデータを用いて求める。
(6)極細繊維の分散性(交差点数)
極細繊維を含むシート状物(研磨布)の表面を(株)キーエンス社製 VE−7800型SEMで観察、加速電圧20kV、ワーキングディスタンス8mm、倍率2000倍で撮影した表面写真において、明らかな欠点ヶ所は除いて無作為に表面0.01mm2の範囲を抽出し、シート状物(研磨布)表面に露出した1〜400nmの単繊維直径を有する極細繊維の繊維同士が交差する点をカウントする。合計50枚以上の表面写真を測定し、各写真についてカウントを行い、50ヶ所の平均を求め小数点第一位で四捨五入するものである。このとき、表面にポリウレタンなどの高分子弾性体が露出し、極細繊維が存在しない部分や、ニードルパンチ等により大きな穴を形成している部分は避け、判定に用いないものとする。ここでいう極細繊維間の交差点とは、分散した極細繊維の1本と1本が交差する点であり、交差角の鋭角が20°以上である交差点である。繊維が部分的に合流している箇所や、交差せずに並行している部分、フィブリル化した部分は除くものとする。また、極細繊維が2本以上凝集して形成される束同士の交差点、あるいは束状部分と極細繊維1本の間の交差点もカウントしない。なお、極細繊維が数百本単位で凝集した束の表面で、部分的に分散した極細繊維間の交差点についてはカウントするものとする。
シート状物(研磨布)の極細繊維を含む表面0.01mm2中に平均で500ヶ所以上存在した場合を、分散性良好とした。
(7)基板表面粗さ
JIS B0601(2001年度版)に準拠して、シュミットメジャーメントシステム社(Schmitt Measurement Systems,Inc)製TMS−2000表面粗さ測定器を用いて、テクスチャー加工後のディスク基板サンプル表面の任意の10カ所について平均粗さを測定し、10カ所の測定値を平均することにより基板表面粗さを算出した。数値が低いほど高性能であることを示す。
(8)スクラッチ点数
テクスチャー加工後の基板5枚の両面、すなわち計10表面の全領域を測定対象として、Candela5100光学表面分析計を用いて、深さ3nm以上の溝をスクラッチとし、スクラッチ点数を測定し、10表面の測定値の平均値で評価した。数値が低いほど高性能であることを示す。
(実施例1)
溶融粘度310poise(240℃、剪断速度121.6sec−1)、融点220℃のN6(40重量%)、と重量平均分子量12万、溶融粘度720poise(240℃、剪断速度121.6sec−1)、融点170℃のポリ乳酸(PLA)(光学純度99.5%以上)(60重量%)を2軸押出混練機にて220℃で混練してポリマーアロイチップを得た。ここでPLAの重量平均分子量は、以下の方法を用いて求めた。すなわち、試料のクロロホルム溶液にテトラヒドロフランを混合し測定溶液とし、これをWaters社製ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)Waters2690を用いて、25℃で測定し、ポリスチレン換算で求めた。測定は各試料につき3点行い、その平均値を重量平均分子量とした。
スパンボンド法により、上記ポリマーアロイチップを紡糸温度240℃で細孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度4500m/分で紡糸し、移動するネットコンベアー上に捕集し、圧着率16%のエンボスロールで、温度80℃、線圧20kg/cmの条件で熱圧着し、単繊維繊度2.0dtex、目付150g/m2の長繊維不織布を得た。
該ポリマーアロイ繊維からなる不織布に油剤(SM7060EX:東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)を繊維重量に対し2重量%付与し、4枚積層し、バーブ数1、バーブ深さ0.06mmのニードルを用いて、ニードルパンチを5000本/cm2で施すことで、目付658g/m2のポリマーアロイ繊維からなる不織布を得た。
この不織布を液温約85℃、濃度約12%のポリビニルアルコール溶液に含浸させ、ニップロールで窄液し、ポリマーアロイ繊維重量に対して固形分で20重量%のポリビニルアルコールを付与した後、乾燥した。次に、濃度約12%のポリエステル・ポリエーテル系のポリウレタンのDMF溶液に含浸、ニップロールで窄液し、繊維重量に対して固形分で20重量%のポリウレタンを付与し、液温35℃の30%DMF水溶液でポリウレタンを凝固させ、約85℃の熱水でDMFおよびポリビニルアルコールを除去した。その後、表面をJIS#180番のサンドペーパーにて研削し立毛を形成させた。
最後に、液流染色機(ユニエースFLR型)にて80mmのノズルを用い、浴比1/27において、80℃の4%水酸化ナトリウム水溶液にて30分処理した後水洗4回行い、乾燥させることで、海成分であるPLAを溶出させ、N6からなる極細繊維を発生させた。このシート状物中のN6のみをTEM写真から解析した結果、N6の数平均による単繊維直径は94nm(7.9×10−5dtex)であった。また、単繊維繊度が1×10−8〜1.4×10−3dtexの繊度比率は99%であった。なお、後述の実施例についても同様の範囲で繊度比率を求めた。
該溶出工程を液流染色機中にて揉み処理を行うことにより、研磨布に物理的刺激を付与し、研磨布表面に極細繊維を分散させた。
2000倍のSEM写真にて極細繊維間の交差点を数えたところ、表面0.01mm2中に平均で1295ヶ所あり、分散性良好であった。
該研磨布を40mm幅のテープとし、以下の条件でテクスチャー加工を行った。
アルミニウム基板にNi−Pメッキ処理した後、ポリッシング加工し平均表面粗さ0.2nmに制御したディスクを用い、研磨布表面に1次粒子径1〜10nmのダイヤモンド結晶からなる遊離砥粒スラリーを滴下し、テープ走行速度を5cm/分の条件で10秒間研磨を実施した。
テクスチャー加工後のディスクは、表面粗さが0.12nm、スクラッチ点数は15であり、緻密でかつ均一なテクスチャー痕が形成された加工面であり、加工性も良好であった。
(実施例2)
溶融粘度1200poise(262℃、剪断速度121.6sec−1)、融点225℃のPBT(20重量%)、と重量平均分子量12万、溶融粘度300poise(240℃、剪断速度121.6sec−1)、融点170℃のポリ乳酸(PLA)(光学純度99.5%以上)(80重量%)を2軸押出混練機にて250℃で混練してポリマーアロイチップを得た。
スパンボンド法により、上記ポリマーアロイチップを紡糸温度250℃で細孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度4000m/分で紡糸し、移動するネットコンベアー上に捕集し、圧着率16%のエンボスロールで、温度90℃、線圧20kg/cmの条件で熱圧着し、単繊維繊度2.0dtex、目付150g/m2の長繊維不織布を得た。
該ポリマーアロイ繊維からなる不織布に油剤(SM7060EX:東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)を繊維重量に対し2重量%付与し、4枚積層し、バーブ数1、バーブ深さ0.06mmのニードルを用いて、ニードルパンチを5000本/cm2で施すことで、目付648g/m2のポリマーアロイ繊維からなる不織布を得た。
この不織布を液温約85℃、濃度約12%のポリビニルアルコール溶液に含浸させ、ニップロールで窄液し、ポリマーアロイ繊維重量に対して固形分で20重量%のポリビニルアルコールを付与した後、乾燥した。次に、濃度約11%のポリエステル・ポリエーテル系のポリウレタンのDMF溶液に含浸、ニップロールで窄液し、繊維重量に対して固形分で18重量%のポリウレタンを付与し、液温35℃の30%DMF水溶液でポリウレタンを凝固させ、約85℃の熱水でDMFおよびポリビニルアルコールを除去した。その後、表面を実施例1と同様にサンドペーパーにて研削し立毛を形成させた。
最後に、実施例1と同様に80℃の4%水酸化ナトリウム水溶液にて30分処理し、乾燥させることで、海成分であるPLAを溶出させ、N6からなる極細繊維を発生させた。このシート状物中のN6のみをTEM写真から解析した結果、PBTの数平均による単繊維直径は86nm(7.6×10−5dtex)であった。また、単繊維繊度が1×10−8〜1.4×10−3dtexの繊度比率は99%であった。
該溶出工程を液流染色機中にて揉み処理を行うことにより、研磨布に物理的刺激を付与し、研磨布表面に極細繊維を分散させた。
2000倍のSEM写真にて極細繊維間の交差点を数えたところ、表面0.01mm2中に平均で1513ヶ所あり、分散性良好であった。
該研磨布を用いて、実施例1と同一の方法によりテクスチャー加工を実施した。
テクスチャー加工後のディスクは、表面粗さが0.17nm、スクラッチ点数は30であり、加工性は良好であった。
(実施例3)
溶融粘度530poise(262℃、剪断速度121.6sec−1)、融点220℃のN6(20重量%)と溶融粘度3100poise(262℃、剪断速度121.6sec−1)、融点225℃のイソフタル酸を8mol%、ビスフェノールAを4mol%共重合した融点225℃の共重合PET(80重量%)を2軸押出混練機にて260℃で混練してポリマーアロイチップを得た。
このポリマーアロイチップを用いて、特開2004−162244号公報の実施例1に記載の公知の手法を用い、120dtex、12フィラメントの3.2倍延伸糸を得た。
このポリマーアロイ繊維を捲縮数14山/2.54cm、カット長51mmにて捲縮付与、カットを行い、ポリマーアロイ原綿を得た。得られたポリマーアロイ原綿にカーディング、クロスラッピングを施してウェブを作製し、次いで、ニードルパンチを針密度3000本/cm2にて施して、目付610g/m2のポリマーアロイ原綿からなる不織布を得た。
この不織布を液温約85℃、濃度約12%のポリビニルアルコール溶液に含浸させ、ニップロールで窄液し、繊維重量に対して固形分で20重量%のポリビニルアルコールを付与した後、乾燥した。次に、濃度約10%のポリエステル・ポリエーテル系のポリウレタンのDMF溶液に含浸、ニップロールで窄液し、繊維重量に対して固形分で14重量%のポリウレタンを付与し、液温35℃の30%DMF水溶液でポリウレタンを凝固させ、約85℃の熱水でDMFおよびポリビニルアルコールを除去した。その後、表面を実施例1と同様にサンドペーパーにて研削し立毛を形成させた。
最後に、実施例1と同様に80℃の4%水酸化ナトリウム水溶液にて30分処理し、乾燥させることで、海成分であるPLAを溶出させ、N6からなる極細繊維を発生させた。このシート状物中のN6のみをTEM写真から解析した結果、N6の数平均による単繊維直径は58nm(3.0×10−5dtex)であった。また、単繊維繊度が1×10−8〜1.4×10−3dtexの繊度比率は99%であった。
該溶出工程を液流染色機中にて揉み処理を行うことにより、研磨布に物理的刺激を付与し、研磨布表面に極細繊維を分散させた。
2000倍のSEM写真にて極細繊維間の交差点を数えたところ、表面0.01mm2中に平均で1621ヶ所あり、分散性良好であった。
該研磨布を用いて、実施例1と同一の方法によりテクスチャー加工を実施した。
テクスチャー加工後のディスクは、表面粗さが0.14nm、スクラッチ点数は20であり、加工性は良好であった。
(実施例4)
実施例1で得られた研磨布に、NBR(二トリルゴム)を主体とする接着剤を裏面に塗布し、厚み50μmのポリエステルフィルムを圧着し、ナノファイバー研磨布とポリエステルフィルムからなる張り合わせシート状物を得た。
該研磨布を用いて、実施例1と同一の方法によりテクスチャー加工を実施した。
研磨布の伸びによる加工ムラが抑制されたため、テクスチャー加工後のディスクは表面粗さが0.11nm、スクラッチ点数は10であり、加工性は非常に良好であった。
(実施例5)
実施例1で用いたN6/PLA=40/60のポリマーアロイチップを島成分、2−エチルヘキシルアクリレートを22%共重合したポリスチレンを海成分とし、島/海重量比率=80/20重量%、島数36島、複合単繊維繊度3.5dtex、カット長約51mm、捲縮数14山/2.54cmの海島型複合繊維の原綿を用い、カード、クロスラッパーの工程を経てウェブを作製し、次いで、実施例1で用いたニードルにてニードルパンチを3000本/cm2で施して目付700g/m2のフェルトを作製した。
このフェルトを液温約85℃、濃度約12%のポリビニルアルコール溶液に含浸させ、ニップロールで窄液し、島(ポリマーアロイ)成分に対して固形分で20重量%のポリビニルアルコールを付与した後、乾燥した。この後、約30℃のトリクロロエチレンにて海成分(共重合ポリスチレン)を除去し、単繊維繊度約0.08dtexの極細繊維からなる不織布を得た。
この不織布をポリエステル・ポリエーテル系のポリウレタンのDMF溶液に含浸、ニップロールで窄液し、繊維重量に対して固形分で18重量%のポリウレタンを付与し、液温35℃の30%DMF水溶液でポリウレタンを凝固させ、約85℃の熱水でDMFおよびポリビニルアルコールを除去した。次に、表面を実施例1と同様にサンドペーパーにて研削し立毛を形成させた。
最後に、実施例1と同様に80℃の4%水酸化ナトリウム水溶液にて30分処理し、乾燥させることで、ポリマーアロイ中のPLAを溶出させ、N6からなる極細繊維を発生させた。この研磨布中のN6のみをTEM写真から解析した結果、N6の数平均による単繊維直径は320nm(9.2×10−4dtex)であり、単繊維繊度が1×10−8〜1.4×10−3dtexの繊度比率は65%であった。
該溶出工程を液流染色機中にて揉み処理を行うことにより、研磨布に物理的刺激を付与し、表面に極細繊維を分散させた。
2000倍のSEM写真にて極細繊維間の交差点を数えたところ、表面0.01mm2中に平均で1589ヶ所あり、分散性良好であった。
該研磨布を用いて、実施例1と同一の方法によりテクスチャー加工を実施した。テクスチャー加工後のディスクは表面粗さが0.18nm、スクラッチ点数は42であり、加工性は非常に良好であった。
(実施例6)
溶融粘度1200poise(262℃、剪断速度121.6sec−1)、融点225℃のPBT(40重量%)と、重量平均分子量12万、溶融粘度300poise(262℃、剪断速度121.6sec−1)、融点170℃のポリ乳酸(PLA)(光学純度99.5%以上)(60重量%)を2軸押出混練機にて250℃で混練してポリマーアロイチップを得た。
上記ポリマーアロイチップを島成分、実施例5で用いた共重合ポリスチレンを海成分とし、島/海比率=80/20重量%、島数36島、複合単繊維繊度3.5dtex、カット長約51mm、捲縮数14山/2.54cmの海島型複合繊維の原綿を用い、カード、クロスラッパーの工程を経てウェブを作製し、次いで、実施例1で用いたニードルにて、ニードルパンチを3000本/cm2で施して目付700g/m2のフェルトを作製した。
このフェルトを液温約85℃、濃度約12%のポリビニルアルコール溶液に含浸させ、ニップロールで窄液し、島(ポリマーアロイ)成分に対して固形分で20重量%のポリビニルアルコールを付与した後、乾燥した。この後、約30℃のトリクロロエチレンにて海成分(共重合ポリスチレン)を除去し、単繊維繊度約0.08dtexの極細繊維からなる不織布を得た。
この不織布をポリエステル・ポリエーテル系のポリウレタンのDMF溶液に含浸、ニップロールで窄液し、繊維重量に対して固形分で19重量%のポリウレタンを付与し、液温35℃の30%DMF水溶液でポリウレタンを凝固させ、約85℃の熱水でDMFおよびポリビニルアルコールを除去した。その後、表面を実施例1と同様にサンドペーパーにて研削し立毛を形成させた。
立毛を形成させた後、実施例1と同様に80℃の4%水酸化ナトリウム水溶液にて30分処理し、乾燥させることで、ポリマーアロイ中のPLAを溶出させ、N6からなる極細繊維を発生させた。この研磨布中のPBTのみをTEM写真から解析した結果、PBTの数平均による単繊維直径は290nm(8.6×10−4dtex)であり、単繊維繊度が1×10−8〜1.4×10−3dtexの繊度比率は68%であった。
該溶出工程を液流染色機中にて揉み処理を行うことにより、研磨布に物理的刺激を付与し、表面に極細繊維を分散させた。
2000倍のSEM写真にて極細繊維間の交差点を数えたところ、表面0.01mm2中に平均で1690ヶ所あり、分散性良好であった。
該研磨布を用いて、実施例1と同一の方法によりテクスチャー加工を実施した。
テクスチャー加工後のディスクは表面粗さが0.20nm、スクラッチ点数は64であり、加工性は非常に良好であった。
(実施例7)
極細繊維発生加工にて、液流染色機でPLAを溶出させた後、125℃にて20分間湿熱処理を行ったこと以外は、実施例1と同様の方法により研磨布を得た。この研磨布中のN6のみをTEM写真から解析した結果、N6の数平均による単繊維直径は125nm(1.4×10−4dtex)であり、単繊維繊度が1×10−8〜1.4×10−3dtexの繊度比率は99%であった。
該溶出工程を液流染色機中にて揉み処理を行うことにより、研磨布に物理的刺激を付与し、表面に極細繊維を分散させた。
2000倍のSEM写真にて極細繊維間の交差点を数えたところ、表面0.01mm2中に平均で1053ヶ所あり、分散性良好であった。
該研磨布を用いて、実施例1と同一の方法によりテクスチャー加工を実施した。湿熱処理により研磨布の寸法安定性が向上し、テクスチャー加工後のディスクは表面粗さが0.11nm、スクラッチ点数は13であり、加工性は非常に良好であった。
得られた研磨布の特性は表2に示したとおりであるが、実施例1〜7の研磨布は2000倍のSEM写真にて観測した表面0.01mm2における極細繊維間の交差点が、いずれも平均で500ヶ所以上であり、分散性良好であった。また、テクスチャー加工後に磁性層を成膜した基板はハードディスクドライブテストにおいて、基板表面粗さ、スクラッチ点数ともに優れるものであった。
(比較例1)
実施例1と同様の方法で、N6/PLA=40/60のポリマーアロイチップを用い、スパンボンド法にて紡糸、製布後、ニードルパンチによる積層により、目付610g/m2のポリマーアロイ不織布を得た。この不織布を液温約85℃、濃度約12%のポリビニルアルコール溶液に含浸させ、ニップロールで窄液し、ポリマーアロイ繊維重量に対して固形分で20重量%のポリビニルアルコールを付与した後、乾燥した。その後、濃度約12%のポリエステル・ポリエーテル系のポリウレタンのDMF溶液に含浸、ニップロールで窄液し、繊維重量に対して固形分で20重量%のポリウレタンを付与し、液温35℃の30%DMF水溶液でポリウレタンを凝固させ、約85℃の熱水でDMFおよびポリビニルアルコールを除去した。
次に、実施例1と同様に80℃の4%水酸化ナトリウム水溶液にて30分処理し、乾燥させることで、海成分であるPLAを溶出させ、N6からなる極細繊維を発生させた。このシート状物中のN6のみをTEM写真から解析した結果、N6の数平均による単繊維直径は94nm(7.9×10−5dtex)であった。
最後に、表面を実施例1と同様にサンドペーパーにて研削したが、表面の極細繊維は束状に凝集しているために分散せず、荒れた表面であった。
2000倍のSEM写真にて極細繊維間の交差点を数えたところ、表面0.01mm2中に平均で134ヶ所であり、分散性は不良であった。
該研磨布を用いて、実施例1と同一の方法によりテクスチャー加工を実施した。テクスチャー加工後のディスクは、表面粗さが0.22nm、スクラッチ点数は105であった。また、テクスチャー加工面全体を観察すると、表面のうねりが大きく、テクスチャー痕の均一性に欠けるものであった。
(比較例2)
実施例3と同様の方法で、N6/共重合PET=20/80のポリマーアロイチップを用い、120dtex、12フィラメントの短繊維からなる目付610g/m2のポリマーアロイ不織布を得た。
この不織布を約95℃の熱水により収縮させた。その後、実施例1と同様に80℃の4%水酸化ナトリウム水溶液にて30分処理し、乾燥させることで、海成分であるPLAを溶出させ、N6からなる極細繊維を発生させた。この不織布中のN6のみをTEM写真から解析した結果、N6の数平均による単繊維直径は58nm(3.0×10−5dtex)であった。
この不織布に濃度約12%のポリエステル・ポリエーテル系のポリウレタンのDMF溶液に含浸、ニップロールで窄液し、繊維重量に対して固形分で21重量%のポリウレタンを付与し、液温35℃の30%DMF水溶液でポリウレタンを凝固させ、約85℃の熱水でDMFを除去した。その後、表面を実施例1と同様にサンドペーパーにて研削し立毛を形成させた。表面の極細繊維はほとんどが束状となっており、極細繊維単位で分散していなかった。
2000倍のSEM写真にて極細繊維間の交差点を数えたところ、表面0.01mm2中に平均で142ヶ所であり、分散性は不良であった。
該研磨布を用いて、実施例1と同一の方法によりテクスチャー加工を実施した。テクスチャー加工後のディスクは、表面粗さが0.26nm、スクラッチ点数は100であり、スクラッチ点数の多いものであった。
(比較例3)
実施例6と同様にして得たPBT/PLA=40/60のポリマーアロイチップを島成分、実施例5で用いた共重合ポリスチレンを海成分とし、島/海比率=80/20重量%、島数36島、複合単繊維繊度3.5dtex、カット長約51mm、捲縮数14山/2.54cmの海島型複合繊維の原綿を用い、カード、クロスラッパーの工程を経てウェブを作製し、次いで、実施例1で用いたニードルにて、ニードルパンチを4000本/cm2で施して目付700g/m2のフェルトを作製した。
このフェルトを液温約85℃、濃度約12%のポリビニルアルコール溶液に含浸させ、ニップロールで窄液し、島成分に対して固形分で20重量%のポリビニルアルコールを付与した後、乾燥した。この後、約30℃のトリクロロエチレンにて海成分を除去し、単繊維繊度約0.08dtexの極細繊維からなる不織布を得た。
この不織布をポリエステル・ポリエーテル系のポリウレタンのDMF溶液に含浸、ニップロールで窄液し、繊維重量に対して固形分で18重量%のポリウレタンを付与し、液温35℃の30%DMF水溶液でポリウレタンを凝固させ、約85℃の熱水でDMFおよびポリビニルアルコールを除去した。その後、実施例1と同様に80℃の4%水酸化ナトリウム水溶液にて30分処理し、乾燥させることで、海成分であるPLAを溶出させ、PBTからなる極細繊維を発生させた。この研磨布中のPBTのみをTEM写真から解析した結果、PBTの数平均による単繊維直径は290nm(8.6×10−4dtex)であり、単繊維繊度が1×10−8〜1.4×10−3dtexの繊度比率は68%であった。
最後に、表面を実施例1と同様にサンドペーパーにて研削し立毛を形成させた。表面の極細繊維は束状に凝集しているために分散せず、極細繊維の束が立毛した表面であった。
2000倍のSEM写真にて極細繊維間の交差点を数えたところ、表面0.01mm2中に平均で230ヶ所であり、分散性は不良であった。
該研磨布を用いて、実施例1と同一の方法によりテクスチャー加工を実施した。テクスチャー加工後のディスクは、表面粗さが0.49nm、スクラッチ点数は264であり、スクラッチ点数の多いものであった。
(比較例4)
溶融粘度1500poise(262℃、剪断速度121.6sec−1)、融点220℃のN6と溶融粘度1450poise(262℃、剪断速度121.6sec−1)、融点105℃のPEとをN6のブレンド比率を20重量%となるようにそれぞれのポリマーを計量しながら2軸押出混練機にて260℃にて混練して紡糸口金温度285℃で細孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度3500m/分で紡糸し、移動するネットコンベアー上に捕集し圧着率16%のエンボスロールで、温度90℃、線圧20kg/cmの条件で熱圧着し、単繊維繊度2.0dtex、目付200g/m2の長繊維不織布を得た。
該ポリマーアロイ繊維からなる不織布に油剤(SM7060EX:東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)を繊維重量に対し2.0重量%付与し、3枚積層し、バーブ数1、バーブの深さ0.06mmのニードルを用いて、ニードルパンチを6000本/cm2で施すことで、目付648g/m2のポリマーアロイ繊維からなる不織布を得た。
この不織布を液温約85℃、濃度約12%のポリビニルアルコール溶液に含浸させ、ニップロールで窄液し、ポリマーアロイ繊維重量に対して固形分で20重量%のポリビニルアルコールを付与した後、乾燥した。次に、ポリエステル・ポリエーテル系のポリウレタンのDMF溶液に含浸、ニップロールで窄液し、繊維重量に対して固形分で18重量%のポリウレタンを付与し、液温35℃の30%DMF水溶液でポリウレタンを凝固させ、約85℃の熱水でDMFおよびポリビニルアルコールを除去した。その後、表面をJIS#240、320、600番のサンドペーパーにて研削し立毛を形成させた。
最後に、85℃のトルエンにて1時間処理し、乾燥させることで、海成分であるPEを溶出させ、N6からなる極細繊維を発生させた。この研磨布のN6のみをTEM写真から解析した結果、単繊維直径が200nm〜1100nm(単繊維繊度約4×10−4〜1×10−2dtex)の極細繊維が生成しており、N6の数平均による単繊維直径は517nm(単繊維繊度2.4×10−3dtex)であり、ばらつきが大きいものであった。なお、単繊維繊度が1×10−8〜1.4×10−3dtexの繊度比率は12%であった。
該溶出工程を液流染色機中にて揉み処理を行うことにより、研磨布に物理的刺激を付与し、表面に極細繊維を分散させた。
2000倍のSEM写真にて極細繊維間の交差点を数えたところ、表面0.01mm2中に平均で457ヶ所あり、分散性不良であった。
該研磨布を用いて、実施例1と同一の方法によりテクスチャー加工を実施した。テクスチャー加工後のディスクは、表面粗さが0.37nm、スクラッチ点数は173であり、スクラッチ点数の多いものであった。得られた研磨布の特性は表1に示したとおりであるが、比較例1〜4の研磨布は2000倍のSEM写真にて観察した表面0.01mm2における極細繊維間の交差点が、いずれも平均で500ヶ所未満であり、分散性不良であった。また、テクスチャー加工後に磁性層を成膜した基板はハードディスクドライブテストにおいて、エラーが発生した。
表1には、実施例1〜7及び比較例1〜4で得られた研磨布を示す。
表2には、実施例1〜7及び比較例1〜4で得られた研磨布の評価結果を示す。