JP2008173759A - 研磨布およびその製造方法 - Google Patents

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昭大 田辺
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Abstract

【課題】本発明の目的は、従来の極細繊維では達成し得なかった極めて緻密な表面状態、優れた平滑性および柔軟性を有する高性能研磨布およびその製造方法を提供することにある。
【解決手段】本発明の研磨布は、数平均による単繊維繊度が1×10−8〜1.4×10−3dtexであり、該単繊維繊度が1×10−8〜1.4×10−3dtexの範囲内の繊維の繊度比率が60%以上である極細繊維を表面に有する研磨布であって、乾燥時に対する湿潤時のタテ引張強力保持率が10〜50%であることを特徴とする研磨布である。
【選択図】なし

Description

本発明は磁気記録ディスクに用いるアルミニウム合金基板またはガラス基板などの基板を超高精度の仕上げでテクスチャー加工に代表される研磨加工および/またはクリーニング加工を施す際に好適に用いられ得る研磨布およびその製造方法に関し、ナノファイバーを表面に分散させ、優れた平滑性と柔軟性を兼ね備えた研磨布およびその製造方法に関するものである。
近年、磁気ディスクなどの磁気記録媒体は、高容量化、高記憶密度化に伴い、磁気ヘッドの浮上高さが著しく小さくなる傾向にある。そのため、磁気ディスク表面に突起が存在すると、磁気ヘッドと突起とが接触してヘッドクラッシュを起こし、ディスク表面に傷が発生する。また、ヘッドクラッシュには至らない程度の微小な突起であっても、磁気ヘッドとの接触により情報の読み書きの際に発生するエラーの原因となる。
従来より、硬質ポリウレタンフォームやポリウレタン含浸型の不織布からなる研磨パッドを用いたスラリー研削を行った後のディスク表面は、傷や微小な突起が多数存在し、平滑性が低いため、この傷や微小な突起を除去して平滑性を高める目的で、不織布や織物からなるテープ状の研磨布表面に遊離砥粒を付着させて研削を行っている。すなわち、研磨布をテープ状として用い、アルミニウム合金基板またはガラス基板を連続回転させた状態で、その研磨テープを基板に押し付けながら、基板の径方向に往復運動させ、連続的に研磨テープを走行させるものである。その際に、スラリーを研磨テープと基板との間に供給し、スラリー中に含まれる遊離砥粒が研磨テープを構成する繊維に微分散した状態で把持され、基板に接触し研磨を行う方法である。
中でも長手記録方式の磁気記録ディスク製造においては、テープ状の研磨布でのスラリー研削により、記録ディスクの基板表面に略同心円状に微細な条痕を形成させることにより、ディスク基板上に金属磁性層を形成する際、結晶成長の方向性を制御し、記録方向の抗磁力が向上し、高記録密度化させることが可能となる。このスラリー研削はテクスチャー加工と呼ばれている。また最近、磁気記録ディスクの記録方式が従来の長手記録方式から垂直記録方式に移行するに伴い、テープ状の研磨布を用いたスラリー研削および/またはスラリーを用いないクリーニング加工により、ディスク基板表面への微細な条痕の形成を抑制しながら平滑性を向上させる要求が高まってきている。
テープ状の研磨布を用いたスラリー研削および/またはクリーニング加工によって、磁気ヘッドの低浮上を満足するための表面処理を行う場合、最近の急激な高記録容量化のための高記録密度化に対応するためには、0.2nm以下の基板表面粗さを達成し、かつスクラッチ欠点と呼ばれる基板表面の傷を極少化することが要求されており、その要求に対応しうる研磨布が切望されている。基板表面粗さを小さくするため、不織布を構成する繊維を極細化し、基板表面への傷を極少化するため、クッション性を持たせるべく不織布に高分子弾性体を含浸させるという提案が種々なされている。
例えば、0.3dtex以下の極細繊維不織布に高分子エラストマーを含浸させた研磨布が提案されており、0.5nm程度の表面粗さを達成している(例えば、特許文献1参照)。
さらに、近年では海島型複合紡糸を用い、平均繊度0.001〜0.1dtexのポリアミド極細短繊維の不織布からなる研磨布(例えば、特許文献2参照)が提案されており、この研磨布では0.28nmの表面粗さを達成しているが、さらなる極細繊維として、ナノファイバーレベルの超極細繊維が求められている。しかしながら、従来の海島型複合紡糸技術では単繊維繊度が10−3dtexオーダーが限界であり、上記ニーズに充分に応えられるレベルではなかった。
また、ポリマーブレンド繊維により超極細繊維を得る方法が提案されており(例えば、特許文献3、4参照)、単繊維繊度は最も細いもので10−4dtexオーダーの超極細繊維が得られている。しかしながら、ここで得られる超極細繊維の単繊維繊度はポリマーブレンド繊維中での島ポリマーの分散状態で決定されるが、該特許文献で用いられるポリマーブレンド系では島ポリマーの分散が不十分であるため、得られる超極細繊維の単繊維繊度のばらつきは大きいものであった。
こうした背景において近年、繊度ばらつきが小さく、安定的に供給可能な超極細繊維を得る手段として、島成分がナノオーダーで海成分中に均一に微分散したポリマーアロイ繊維を用いたナノファイバーからなる人工皮革が提案されている(例えば、特許文献5参照)。該極細繊維は単繊維繊度が10−5dtexオーダーであり、従来にないレベルの超極細繊維であるが、該極細繊維はナノファイバー単位ではほとんど分散しておらず、海成分除去前のポリマーアロイ繊維由来の繊維束を形成している。そのため、繊維束としての性質が支配的となり、基板表面粗さの低減やスクラッチ欠点の極少化に充分寄与できるものではなかった。また、最近の垂直記録方式の磁気記録ディスクにて要求される平滑性、すなわちスクラッチ・突起の極少化を含めた微細な条痕の抑制を満足できるものではなかった。
特開2001−1252号公報 特開2002−273650号公報 特開平6−272114号公報 特許第3457478号公報 特開2004−256983号公報
本発明の目的は、従来の極細繊維では達成し得なかった極めて緻密な表面状態、優れた平滑性および柔軟性を有する高性能研磨布およびその製造方法を提供することにある。
本発明はかかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、
(1)数平均による単繊維繊度が1×10−8〜1.4×10−3dtexであり、該単繊維繊度が1×10−8〜1.4×10−3dtexの範囲内の繊維の繊度比率が60%以上である極細繊維を表面に有する研磨布であって、乾燥時に対する湿潤時のタテ引張強力保持率が10〜50%であることを特徴とする研磨布。
(2)数平均による極細繊維の繊維長が10〜500μmであることを特徴とする前記(1)に記載の研磨布。
(3)前記研磨布が極細繊維からなる不織布と高分子弾性体とで構成されていることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の研磨布。
(4)極細繊維がポリアミドからなることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の研磨布。
(5)表面に露出した単繊維繊度1×10−8〜1.4×10−3dtexの極細繊維間の交差点が、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて2000倍にて観測した0.01mmの範囲10ヶ所において、平均で500ヶ所以上存在することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の研磨布。
(6)スパンボンド法により製造された長繊維不織布から得られることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の研磨布。
(7)前記(1)〜(6)のいずれかの研磨布の裏面に、織編物、熱接着繊維を用いた不織布、フィルム状物のいずれかからなる補強材を配することを特徴とする研磨布。
(8)前記補強材が、厚み20〜50μmのフィルム状物であることを特徴とする前記(7)記載の研磨布。
(9)前記(1)〜(6)のいずれかに記載の研磨布を製造する方法であって、少なくとも易溶性ポリマーを含む溶剤に対する溶解性の異なるポリマーをアロイ化したポリマーアロイ溶融体を用いた複合繊維のウェブに絡合処理を施して不織布を作製した後、高分子弾性体を該不織布に付与し、該高分子弾性体を凝固し固化させ、起毛処理を施して表面に立毛を形成させ、次いで該複合繊維から易溶性ポリマーを溶解除去することにより極細繊維発生加工を行い、極細繊維発生加工前もしくは後に、110〜140℃の温度で湿熱処理を行うことを特徴とする研磨布の製造方法。
本発明によれば、従来の極細繊維では達成し得なかった極めて緻密な表面状態と優れた平滑性および柔軟性を有するため、記録ディスクの基板表面に対し、テープ状の研磨布を用いたスラリー研削および/またはスラリーを用いないクリーニング加工において、スクラッチおよび微小な突起の発生を極少化することが可能となり、また垂直記録方式の記録ディスクにて要求される微細な条痕の抑制を満足できる高性能研磨布およびその製造方法を提供できるものである。
以下、本発明について、望ましい実施の形態とともに詳細に説明する。
本発明の研磨布は、数平均による単繊維繊度が1×10−8〜1.4×10−3dtexであり、該単繊維繊度が1×10−8〜1.4×10−3dtexの範囲内の繊維の比率が60%以上である極細繊維を表面に有するシート状物であって、乾燥時に対する湿潤時のタテ引張強力保持率が10〜50%であることを特徴とする研磨布である。
本発明の研磨布は例えば、以下の工程を組み合わせることにより得られる。すなわち、2種類以上の溶剤に対する溶解性の異なるポリマーをアロイ化したポリマーアロイ溶融体を用い、複合繊維ウェブを作製、複合繊維ウェブに絡合処理を施して不織布を作製する工程、高分子弾性体を該不織布に付与し、該高分子弾性体を凝固し固化させる工程、起毛処理を施し表面に立毛を形成する工程、該複合繊維から易溶性ポリマーを溶解除去することにより極細繊維化する工程である。
ここで、本発明で用いる極細繊維は、単繊維の直径が1〜400nmのナノファイバーからなり、形態的にはその単繊維がバラバラに分散したものが大部分を占めるが、単繊維が部分的に結合しているもの、あるいは複数の単繊維が凝集した集合体などの全ての総称である。その断面形態は特に限定されない。
本発明では、このナノファイバーの単繊維繊度の平均値が重要である。これは極細繊維からなる研磨布の横断面を透過型電子顕微鏡(TEM)あるいは走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、同一横断面内で無作為に抽出した50本の単繊維直径を測定するものである。この観察を3ヶ所で行い、合計150本の単繊維直径を測定することによって求めることができる。このとき400nm(ナイロン6(比重1.14g/cm)の場合では1.4×10−3dtex)相当を超える他の繊維は除き、それ以下の1〜400nmの範囲内の単繊維直径のものだけを無作為に選び測定するものである。なお、単繊維繊度の範囲は、より好ましくは1×10−8〜6×10−4dtex(ナイロン6の場合では1〜250nm)である。
ここで、単繊維繊度の平均値は以下の方法で求めることができる。すなわち、測定した単繊維直径から繊度を計算し、平均値を求める。これを本発明では「数平均による単繊維繊度」という。本発明では、数平均による単繊維繊度が1×10−8〜1.4×10−3dtex(単繊維直径で1〜400nm相当)であることが重要である。これは従来の海島型複合紡糸による極細繊維に比べ1/10〜1/1000という細さであり、従来の極細繊維では得られなかった緻密な表面、平滑性をもつ研磨布を得ることができる。
また、本発明の研磨布を構成するナノファイバーの単繊維繊度ばらつきは、以下のようにして評価する。
すなわち、研磨布中のナノファイバーそれぞれの単繊維繊度をdtとしその総和を総繊度(dt+dt+…+dt)とする。また、同じ単繊維繊度を持つナノファイバーの頻度(個数)を数え、その積を総繊度で割ったものをその単繊維繊度の繊度比率とする。これは、不織布中に含まれるナノファイバー全体に対する各単繊維繊度成分の重量分率(体積分率)に相当し、この値が大きい単繊維繊度成分が研磨布の性質に対する寄与が大きいことになる。
なお、本発明においては、かかるナノファイバーの単繊維繊度ばらつきは、前述の単繊維繊度の平均値を求めるのと同様に、ナノファイバーを少なくとも一部に含むシート状物の横断面を透過型電子顕微鏡(TEM)あるいは走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、同一横断面内で無作為に抽出した50本のナノファイバーの単繊維直径を測定する。そして、これを3カ所で行い、合計150本の単繊維直径を測定することで求めるものであり、前述の単繊維繊度の平均値を求めるのと同様のn数として求めればよいものである。
本発明では繊度比率の60%以上が1×10−8〜1.4×10−3dtex(単繊維直径で1〜400nm相当)の範囲にあることが重要である。ここで、繊度比率の60%以上が1×10−8〜1.4×10−3dtexの範囲にあることとは、繊度比率の100%が1×10−8〜1.4×10−3dtexの範囲にあることを含むものである。これにより、ナノファイバー研磨布の性能を充分に発揮し、砥粒を均一に把持することが可能となり、ハードディスクの基板表面の平滑性を向上させることができ、結果として基板表面粗さを下げ、スクラッチ点数を大幅に減少させることができる。なお、単繊維繊度の範囲は、より好ましくは1×10−8〜6×10−4dtex(ナイロン6の場合では単繊維直径で1〜250nm相当)である。
本発明の研磨布は、乾燥時に対する湿潤時のタテ引張強力保持率が10〜50%であることが特に重要である。より好ましくは15〜50%、さらに好ましくは20〜50%である。この研磨布の乾燥時に対する湿潤時のタテ引張強力保持率は、研磨加工またはクリーニング加工に供する際の湿潤状態の研磨布において、研磨布を構成する極細繊維及び/または極細繊維束の凝集性、結束性、絡合性を示し、研磨布表面の極細繊維の分散性、布帛としての柔軟性を表す指標であり、前記タテ引張強力保持率を前述の範囲に制御することで、研磨加工時に研磨布表面に微分散した極細繊維により、砥粒を均一に微分散させ、且つ極細繊維及び/または極細繊維束が過度に凝集、結束していない柔軟な構造体により、基板表面に対し過度の圧力をかけることなく、均一に砥粒を押し付けることが可能となり、所望の表面粗さ、スクラッチや微小な突起の抑制を達成できるものである。尚、前記タテ引張強力保持率が10%未満の場合、形態安定性に乏しく均一な研磨および/またはクリーニング加工を施せないだけでなく、テープ状として加工を行う際、テープの破断が発生しやすいため好ましくない。また、50%を越える場合、研磨布の湿潤状態における布帛としての剛性、すなわち剛軟度、表面硬さが高い傾向となるため、研磨および/またはクリーニング加工を行う際、スクラッチや微小な突起が発生しやすく、かつ垂直記録方式の記録ディスク基板に要求される微細な条痕の発生を十分に抑制できないため好ましくない。
ここでいうタテ引張強力は次の方法で測定した値をいう。すなわち、JISL1096 8.12.1(1999)に準拠して、試料長さ方向をタテ方向とし、タテ方向にて長さ20cm、幅2.5cmのサンプルを採取し、つかみ間隔(試長)10cmで定速伸長型引張試験機にて、引張速度10cm/分にて伸長させて試料破断時の荷重を求め、得られた値から幅1cm当たりの荷重を算出後、その値から厚み1mmあたりの荷重を算出し、引張強力(単位:N/cm幅/mm厚)とした。乾燥時のタテ引張強力は、採取した前記試料を温度20℃、湿度60%のデシケータに12時間以上放置し、その後デシケータよりサンプルを取り出し前述の方法で測定した値をいう。また、湿潤時のタテ引張強力は、得られた前記試料を25℃の蒸留水中に30分間浸漬した後、試料表面の水分を軽く拭き取り、湿潤状態の試料を得、その試料を前述の方法で測定した値をいう。乾燥時に対する湿潤時のタテ引張強力保持率とは、湿潤時のタテ引張強力を乾燥時のタテ引張強力にて割った値を百分率(%)にて表示した値を指す。すなわち、
乾燥時に対する湿潤時のタテ引張強力保持率(%)=(湿潤時のタテ引張強力/乾燥時のタテ引張強力)×100
である。
なお、研磨布製造および研磨布を用いた研磨加工、クリーニング加工の安定性、加工後の基板表面のスクラッチや微小な突起の抑制の観点から、上記の測定方法にて求められる研磨布の湿潤時のタテ引張強力は10〜100N/cm幅/mm厚であることが好ましい。より好ましくは10〜70N/cm幅/mm厚である。
前記研磨布の乾燥時に対する湿潤時のタテ引張強力保持率を得るためには、研磨布を構成する極細繊維の数平均による繊維長は10〜500μmであることが好ましい。10μm未満の場合は、研磨布製造時および研磨加工、クリーニング加工に供する際に、極細繊維の脱落が激しく、著しい強度低下を引き起こし均一加工が行えないため好ましくない。一方、500μmを越える場合には、極細繊維同士の凝集が強くなりやすい傾向となり、湿潤状態における研磨布の布帛としての剛性が高くなりやすく、スクラッチや微小な突起の発生を抑制できないため好ましくない。また、極細繊維同士の凝集が強いことにより、研磨布表面における極細繊維の分散が不十分となり、スラリー研削時に砥粒の凝集によるスクラッチが発生しやすく好ましくない。
研磨布を構成する極細繊維の数平均による繊維長の測定方法としては、極細繊維を少なくとも一部に含むシート状物より極細繊維のみを取り出し、エタノールなどの有機溶媒に分散させた後、濾紙などを用いて極細繊維を漉き取り、得られた極細繊維を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、任意の30本の極細繊維の繊維長を測定し、その平均値を繊維長とする。
本発明の研磨布を構成するナノファイバーは、静電紡糸法などの公知のナノファイバー製造法を用いて得ることもできるし、ポリマーアロイ繊維から得ることもできるが、前述のタテ引張強力保持率、繊維長の観点から、ポリマーアロイ繊維から得る方法が好ましい。ポリマーアロイ繊維から得る場合は、ナノファイバーの前駆体であるポリマーアロイ繊維は、2種類以上の溶剤に対する溶解性の異なるポリマーをアロイ化したポリマーアロイペレットを作製後、該ペレットを用い溶融紡糸して得た海島型繊維であることが好ましい。このポリマーアロイ繊維中では、易溶解性ポリマーが海(マトリックス)、難溶解性ポリマーが島(ドメイン)をなし、その島サイズを制御することが重要である。ここで、島サイズとは、ポリマーアロイ繊維の横断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、直径換算で評価したものである。前駆体中での島サイズによりナノファイバーの直径がほぼ決定されるため、島サイズの分布は極細繊維の直径分布に準じて設計される。ここで、ポリマーアロイペレット中における島成分のポリマーの平均分散径は1nm〜4μmの範囲で分散していると、製糸過程で島成分の直径が1〜400nmの範囲のナノファイバーを得やすいため好ましい。このため、アロイ化するポリマーの混練が非常に重要であり、混練押出機や静止混練機などによって高混練することが好ましい。ポリマーアロイペレット中における島成分のポリマーの平均分散径の測定方法としては、ポリマーアロイペレットサンプルの超薄切片を切り出し、必要に応じ金属染色したものを透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、同一横断面内で無作為に抽出した50カ所の島成分ポリマーの直径を測定し、その平均値を島成分のポリマーの平均分散径とする。なお、単純なチップブレンド(特許文献3、4)では混練が不足するため、島成分を均一に微分散させることは極めて困難である。具体的には、混練を行う際の目安としては、組み合わせるポリマーにもよるが、混練押出機を用いる場合には、2軸押出混練機を用いることが好ましく、静止混練器を用いる場合は、その分割数は100万以上とすることが好ましい。
島ドメインを円形に近づけるためには、ポリマーの組み合わせも重要となる。島成分ポリマーと海成分ポリマーは非相溶であることが好ましいが、単なる非相溶ポリマーの組み合わせでは島成分ポリマーが充分超微分散化し難い。このため、組み合わせるポリマーの相溶性を最適化することが好ましいが、このための指標の一つが溶解度パラメーター(SP値)である。ここで、SP値とは(蒸発エネルギー/モル容積)1/2で定義される物質の凝集力を反映するパラメータであり、SP値が近いもの同士では相溶性が良いポリマーアロイが得られる可能性がある。SP値は種々のポリマーで知られているが、例えば「プラスチック・データブック」旭化成アミダス株式会社/プラスチック編集部共編、189ページ等に記載されている。2つのポリマーのSP値の差が1〜9(MJ/m1/2であると、非相溶化による島成分の円形化と超微分散化が両立させやすく好ましい。例えば、ナイロン6とポリエチレンテレフタレートはSP値の差が6(MJ/m1/2程度であり好ましい例であるが、ナイロン6とポリエチレンはSP値の差が11(MJ/m1/2程度であり好ましくない例として挙げられる。
さらに、溶融粘度も重要であり、島を形成するポリマーの溶融粘度を海に比べて低く設定すると剪断力による島ポリマーの変形が起こりやすいため、島成分ポリマーの微分散化が進みやすく超極細化の観点からは好ましい。ただし、島成分ポリマーを過度に低粘度にすると海化しやすくなり、繊維全体に対するブレンド比を高くできないため、島成分ポリマー粘度は海成分ポリマー粘度の1/10以上とすることが好ましい。ここで、本発明の研磨布の極細繊維を構成するポリマーとしては、ポリエステルやポリアミド、ポリオレフィン、ポリフェニレンスルフィド(PPS)などが挙げられるが、中でも繊維の柔軟性と水系スラリーとの親和性、耐熱性、前記研磨布の乾燥時に対する湿潤時のタテ引張強力保持率の観点から、ポリアミドが好ましい。また、ポリマーには粒子、難燃剤、帯電防止剤などの添加剤を含有させても良いし、ポリマーの性質を損なわない範囲で他の成分が共重合されていても良い。
本発明の研磨布において、ポリマーアロイ繊維から海成分を除去した後の極細繊維束の数平均による直径は、5〜40μmの範囲であることが好ましく、10〜30μmの範囲であることがより好ましい。極細繊維束の直径が40μmを越える場合、極細繊維束自体の強力が高く、乾燥時に対する湿潤時のタテ引張強力保持率が高くなりすぎる傾向となるため、研磨加工、クリーニング加工において、スクラッチや微小な突起の発生を十分に抑えきれないため好ましくない。また、5μm未満の場合、製糸過程における著しい加工性の悪化につながるため好ましくない。
本発明の研磨布を構成するシート状物を得る方法としては特に限定されるものではないが、単成分紡糸や海島複合紡糸、分割複合紡糸または静電紡糸法などにより得られたものなどを用いることができる。また、シート状物の構成としては、紡糸、延伸、捲縮、カットを経て得られた短繊維をカード、クロスラッパーを用いて幅方向に配列させた積層ウェブを形成させた後にニードルパンチを施して得られる短繊維不織布や、スパンボンドやメルトブロー法などから得られる長繊維不織布、抄紙法で得られる不織布および、支持体上にナノファイバーを静電紡糸法などにより噴霧、浸漬、あるいはコーティングして付着させたもの、織編物などが好適に用いられる。中でも、シート状物の引張強力や製造コストなどの点からスパンボンド法により得られる長繊維不織布が好ましい。スパンボンド法とは、特に限定されるものではないが、溶融したポリマーをノズルより押し出し、これを高速吸引ガスにより吸引延伸した後、移動コンベア上に繊維を捕集して繊維ウェブとする方法を用いることができる。さらに連続的に熱接着、絡合などを施すことにより一体化されたシートを得る方法が好ましい。繊維ウェブの絡合方法は特に限定されるものではないが、ニードルパンチやウォータジェットパンチなどの方法を適宜組み合わせることができる。
ニードルパンチ処理のパンチング本数としては、繊維の高絡合化による緻密な表面状態の達成および前記の乾燥時に対する湿潤時のタテ引張強力保持率を満足させるという観点から1000〜10000本/cmであることが好ましい。1000本/cm未満では表面繊維の緻密性に劣ることにより、所望の高精度の仕上げを得ることができず、10000本/cmを越えると、加工性の悪化を招くとともに繊維損傷が大きく、強度低下につながるため好ましくない。ニードルパンチング後の複合繊維不織布の繊維密度は、表面繊維本数の緻密化および前記の乾燥時に対する湿潤時のタテ引張強力保持率を満足させるという観点から、0.20g/cm以上であることが好ましい。ウオータージェットパンチング処理を行う場合には、水は柱状流の状態で行うことが好ましい。柱状流を得るには、通常、直径0.05〜1.0mmのノズルから圧力1〜60MPaで噴出させる方法が好適に用いられる。このようにして得られた複合繊維不織布は、緻密化の観点から、乾熱または湿熱、あるいはその両者によって収縮させ、さらに高密度化させる方法を採用しても良い。
前述の極細繊維の繊維長を満足するためには、島成分のポリマーの平均分散径が1nm〜4μmの範囲で分散しているポリマーアロイペレットを用いて溶融紡糸を行うことが重要であり、スパンボンド法にてポリマーアロイ長繊維を形成後、ナノファイバーを作製する場合には、溶融したポリマーアロイをノズルから押し出し、これを高速吸引ガスにより吸引延伸する速度が2500〜4500m/分であることが好ましく、より好ましくは3000〜4000m/分である。一方、紡糸、延伸、捲縮、カットを経てポリマーアロイ短繊維を形成後、ナノファイバーを作製する場合には、溶融したポリマーアロイをノズルから押し出し、紡糸し未延伸糸を引き取る速度が600〜1500m/分であることが好ましく、より好ましくは800〜1300m/分である。また、引き取った未延伸糸を延伸処理する際の延伸倍率は2.5〜4.5倍であることが好ましく、より好ましくは2.7〜4.0倍である。
さらに、紡糸ドラフトは100〜2000であることが好ましく、200〜1500であることがより好ましい。
本発明の研磨布において、前記ポリマーアロイ繊維からなる不織布に高分子弾性体を付与させる。ここで、ポリマーアロイ繊維からなる不織布を極細繊維化処理する前に、高分子弾性体を付与させることが好ましい。不織布に高分子弾性体を付与した後に極細繊維化処理を行うことにより、極細繊維と高分子弾性体との間に空隙を形成させることが可能であり、極細繊維の大部分が高分子弾性体と非接着となるため、極細繊維化処理した際に、極細繊維の均一分散性を高めることが可能となると共に、高分子弾性体と極細繊維とが過度に接着していないことにより、湿潤状態における布帛としての剛性を高くなりすぎないようにできるため、研磨加工、クリーニング加工においてスクラッチや微小な突起の発生を抑えることが可能となる。
また、極細繊維化処理前に高分子弾性体を付与することにより、極細繊維化処理後に発現する極細繊維束を高分子弾性体が包み込むような分布をとる傾向となるため、繊維束を包み込む高分子弾性体の拘束力により、極細繊維が研磨布から抜け落ちるのを防止し、表面に露出したときに均一に分散することが可能となる。
なお、研磨布表面における極細繊維の均一分散性を高め、湿潤状態における布帛の柔軟性を高める観点から、繊維と高分子弾性体との接着を緩和する目的で、高分子弾性体を付与する前にポリビニルアルコールに代表される水溶性樹脂を付与し、高分子弾性体を凝固させた後に該水溶性樹脂を水洗除去する方法を採用しても良い。さらに、スラリー研削の際の研磨布のスラリー保持性および湿潤状態における柔軟性の点から、不織布内部に存在する高分子弾性体自体が多孔質状態であることが好ましい。
本発明で用いる高分子弾性体は特に限定はない。例えば、ポリウレタン、ポリウレア、ポリウレタン・ポリウレアエラストマー、ポリアクリル酸樹脂、アクリロニトリル・ブタジエンエラストマー、スチレン・ブタジエンエラストマーなどを用いることができる。中でもポリウレタン、ポリウレタン・ポリウレアエラストマーなどのポリウレタン系エラストマーが好ましい。
ポリウレタンは、ポリオール成分にポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系のジオール、もしくはこれらの共重合物を用いることができる。また、ジイソシアネート成分としては、芳香族ジイソシアネート、脂環式イソシアネート、脂肪族系イソシアネートなどを使用することができる。高分子弾性体を付与させる際に用いる溶媒としてはN,N’−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどを好ましく用いることができる。また、水中にエマルジョンとして分散させた水系ポリウレタンを用いてもよい。溶媒に溶解した高分子弾性体溶液に不織布を浸漬するなどして高分子弾性体を不織布に付与し、その後、乾燥することによって高分子弾性体を実質的に凝固し固化させる。乾燥にあたっては不織布および高分子弾性体の性能が損なわない程度の温度で加熱してもよい。
ポリウレタンの重量平均分子量は50,000〜300,000が好ましく、より好ましくは100,000〜300,000、さらに好ましくは150,000〜250,000である。重量平均分子量を50,000以上とすることにより、得られるシート状物の強度を保持し、また極細繊維の脱落を防ぐことができる。また、300,000以下とすることで、ポリウレタン溶液の粘度の増大を抑えて不織布への含浸を行いやすくすることができる。
また、高分子弾性体は、主成分としてポリウレタンを用いることが好ましいが、バインダーとして性能や立毛繊維の均一分散状態を損なわない範囲で、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリオレフィン系などのエラストマー樹脂、アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂などが含まれていても良い。さらに、必要に応じて着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤、分散剤、柔軟剤、凝固調整剤、難燃剤、抗菌剤、防臭剤などの添加剤が配合されていてもよい。
本発明の研磨布において、高分子弾性体の含有率は、不織布の繊維の総重量に対し、5重量%以上200重量%以下であることが好ましい。含有量によって研磨布の表面状態、クッション性、硬度、強度などを適宜調節することができる。5重量%以上とすれば繊維脱落を少なくでき、200重量%以下とすれば、加工性および生産性が向上するとともに、表面上において極細繊維が均一分散した状態を得ることができる。また、前記の乾燥時に対する湿潤時のタテ引張強力保持率を満足させるという点から好ましくは20〜100重量%の範囲であり、より好ましくは30〜80重量%の範囲である。
本発明の研磨布は、表面に露出した単繊維繊度が1×10−8〜1.4×10−3dtexの極細繊維間の交差点が、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて2000倍にて観測した表面0.01mmの範囲10ヶ所において、平均で500ヶ所以上存在していることが好ましい。また上限は特に限定されないが、好ましい上限値としては10000カ所である。ここで表面繊維の分散性は以下の方法で求めることができる。すなわち、極細繊維を含む研磨布の表面をSEMで観察、加速電圧20kV、ワーキングディスタンス8mm、倍率2000倍で撮影した表面写真において、明らかな欠点ヶ所は除いて無作為に表面0.01mmの範囲を抽出し、研磨布の表面に露出した単繊維繊度が1×10−8〜1.4×10−3dtexの(1〜400nmの単繊維直径を有する)極細繊維の繊維間の交差点をカウントする。合計10枚の表面写真を測定し、各写真についてカウントを行い、10ヶ所の平均を求め小数点第一位で四捨五入するものである。このとき、表面にポリウレタンなどの高分子弾性体が露出し、極細繊維が存在しない部分や、ニードルパンチなどにより大きな穴を形成している部分は避け、判定に用いないものとする。ここでいう極細繊維間の交差点とは、分散した極細繊維の1本と1本が交差する点であり、交差角の鋭角が20°以上である交差点である。繊維が部分的に合流している箇所や、交差せずに並行している部分、フィブリル化した部分は除くものとする。また、極細繊維が2本以上凝集して形成される束同士の交差点、あるいは束状部分と極細繊維1本の間の交差点もカウントしない。なお、極細繊維が数百本単位で凝集した束の表面で、部分的に分散した極細繊維間の交差点についてはカウントするものとする。ここで、研磨布の極細繊維を含む表面0.01mmの極細繊維間の交差点は写真10枚平均で500ヶ所以上存在することが好ましく、より好ましくは1000ヶ所以上である。ナノファイバーが表面に分散することで、従来の極細繊維では達成し得なかった極めて緻密な表面状態と優れた平滑性が得られるからである。
本発明の研磨布において、極細繊維が研磨布の表面で分散した状態となるためには、ポリマーアロイ繊維不織布と高分子弾性体とからなるシート状物の少なくとも片面に、ポリマーアロイ繊維からなる立毛面を形成させた後に、ポリマーアロイ繊維を極細繊維化する方法が好ましい。ポリマーアロイ繊維からなる立毛部分が表面に分散した状態で極細繊維化が起こり、極細化の工程で表面に分散し、これを乾燥せしめることで表面を覆うようにして均一に分散させることができるからである。なお、静電紡糸法を用いた場合は、より簡便にナノファイバーが表面に分散した状態を形成させることが可能である。
本発明でいう研磨布の立毛は、バッフィング処理により得られる。ここでいうバッフィング処理とは、サンドペーパーやロールサンダーなどを用いて表面を研削する方法などにより施すのが一般的である。特に、表面をサンドペーパーにより、起毛処理することにで均一かつ緻密な立毛を形成することができる。さらに、研磨布の表面に均一な立毛を形成させるためには、研削負荷を小さくすることが好ましい。研削負荷を小さくするためには、バフ段数、サンドペーパー番手などを適宜調整することが好ましい。中でも、バフ段数は3段以上の多段バッフィングとし、各段に使用するサンドペーパーの番手をJIS規定の150番〜600番の範囲とすることがより好ましい。
次に、立毛させたポリマーアロイ繊維から極細繊維を発現せしめる方法、すなわち、極細繊維発生加工の方法は、除去する成分(易溶解性ポリマーからなる海成分)の種類に依存する。例えば、除去する成分がポリエチレンやポリスチレンなどのポリオレフィンであれば、トルエンやトリクロロエチレンなどの有機溶媒、ポリ乳酸や共重合ポリエステルであれば、水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液で浸漬・窄液を行う方法を好ましく用いることができる。
また、極細繊維発生加工の際に極細繊維を研磨布表面に分散させ、本発明の研磨布表面の緻密化、平滑化を達成するためには、極細繊維発生加工中、もしくは発生加工後、液中にて物理的刺激を加えることが好ましい。物理的刺激としては特に限定されるものではないが、ウオータージェットパンチング処理などの高速流体流処理や、液流染色機、ウィンス染色機、ジッガー染色機、タンブラー、リラクサーなどを用いた揉み処理、超音波処理などを適宜組み合わせて実施してもよい。ウオータージェットパンチング処理を行う場合には、水は柱状流の状態で行うことが好ましい。柱状流を得るには、通常、直径0.05〜1.0mmのノズルから圧力1〜60MPaで噴出させる方法が好適に用いられる。
本発明の研磨布の乾燥時に対する湿潤時のタテ引張強力保持率を満足させるために、極細繊維発生加工前もしくは後に、110〜140℃の温度で湿熱処理を行うことが好ましい。本発明における湿熱処理は特に限定されず、例えば液流染色機、連続スチーマー、ジッガー染色機、ビーム染色機などの公知の処理装置を用いることができる。なお、極細繊維発生加工前もしくは後に、コンベア式乾燥機、ピンテンター、クリップテンター、カレンダーなどを用いて、150〜200℃の温度で乾熱処理を施した場合、極細繊維同士の凝集が強くなりすぎるため、本発明の要件である乾燥時に対する湿潤時のタテ引張強力保持率が高くなりすぎる傾向となるため好ましくない。
本発明の研磨布に用いられる極細繊維不織布において、不織布の強度補強やクッション性の向上の点から、主体をなすナノファイバー以外にも、単繊維繊度が1.4×10−3dtex以上のナイロン6、ナイロン66、ナイロン12および共重合ナイロンなどのポリアミド類からなる極細繊維を混合して使用してもよい。ただし、研磨布表面の平滑性の点から混合量としては、繊維総重量に対して、好ましくは30重量%以下、より好ましくは10重量%以下が採用される。
本発明の研磨布をテープ状として、研磨加工、クリーニング加工を施す際に、寸法変化が生じると、基板表面を均一に研磨することができない。そこで、研磨布の形態安定性の点から、本発明に用いられる研磨布の目付は100〜600g/mであることが好ましく、150〜300g/mであることがより好ましい。また、同様の観点から本発明の研磨布は厚みが0.1〜10mmの範囲が好ましく、0.3〜5mmの範囲がより好ましい。なお、本発明の研磨布の密度については特に限定されるものではないが、均一な加工性および前記の乾燥時に対する湿潤時のタテ引張強力保持率を得るためには0.1〜1.0g/cmの範囲が好適である。より好ましくは0.2〜0.6g/cmの範囲である。
さらに、加工時のテープ伸びによる加工ムラ、スクラッチ欠点の発生を抑える点から、本発明においては、研磨布の極細繊維を有する面の裏面に補強材を接着する方法が好適に用いられる。
補強材としては、織編物や熱接着繊維を用いた不織布、フィルム状物を用いることが好ましい。中でも、高精度の加工を行うには、厚みや物理特性において均一なフィルム状物を使用することがより好ましい。
ここでいうフィルムとなる素材としては、ポリオレフィン系、ポリエステル系およびポリフェニルサルファイド系などのフィルム形状を有するものであれば使用可能である。汎用性を考えた場合、ポリエステルフィルムを使用することが好ましい。フィルムからなる補強材を本発明の研磨布に接着する場合には、研磨加工、クリーニング加工時の研磨布の形態安定性、クッション性および基板表面へのフィット性を全て満足させる必要があるため、研磨布との厚みバランスをとることが重要である。研磨布の仕上がり厚みとしては0.4mm以上であることが好ましく、生産性の点からより好ましくは0.4〜1.5mmの範囲である。研磨布の厚みが0.4〜1.5mmの範囲である場合、補強材であるフィルムの厚みは20〜100μmとすることが好ましい。より好ましくは20〜50μmである。フィルム層の厚みが20μm未満であると、加工時の寸法変化を抑えられず、100μmを超えると、研磨布全体の剛性が高くなりすぎ、結果としてスクラッチなどの発生を抑えることができないため好ましくない。
本発明の研磨布に補強材を接着する方法としては、熱圧着法、フレームラミ法、補強材と研磨布との間に接着層を設けるいずれの方法を採用してもよい。接着層としては、ポリウレタン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルブタジエン(NBR)、ポリアミノ酸およびアクリル系接着剤などゴム弾性を有するものが使用可能である。コストや実用性を考えると、NBRやSBRのような接着剤が好ましい。接着剤の付与方法としては、エマルジョンや、ラテックス状態でシート状物に塗布する方法が好適に用いられる。
本発明の研磨布を用いて、研磨加工、クリーニング加工を行う方法としては、かかる研磨布を加工効率と安定性の観点から、30〜50mm幅のテープ状にカットして、加工用テープとして用いる。
該加工テープと遊離砥粒を含むスラリーとを用いて、アルミニウム合金磁気記録ディスクまたはガラス磁気記録ディスクの研磨加工を行う方法、該加工テープと水系洗浄剤とを用いて前記ディスクのクリーニング加工が好適な方法である。研磨条件として、スラリーは、ダイヤモンド微粒子、コロイダルシリカなどの砥粒を水系分散媒に分散したものが好ましく用いられる。砥粒の保持性と分散性の観点から、本発明の研磨布を構成する極細繊維に適合した1次砥粒径としては1〜200nmが好ましく、より好ましくは1〜100nmである。また、1次砥粒がクラスター化した2次粒子からなる砥粒を用いても良い。
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また実施例で用いた評価法とその測定条件について以下に説明する。
(1)ポリマーの溶融粘度
東洋精機製作所(株)製キャピラログラフ1Bにより、ポリマーの溶融粘度を測定した。なお、サンプル投入から測定開始までのポリマーの貯留時間は10分とした。
(2)融点
パーキンエルマー社(Perkin Elmaer)製DSC−7を用いて2nd runでポリマーの溶融を示すピークトップ温度をポリマーの融点とした。このときの昇温速度は16℃/分、サンプル量は10mgとした。
(3)TEMによるシート状物(研磨布)横断面観察
シート状物(研磨布)をエポキシ樹脂で包埋し、横断面方向に超薄切片を切り出して下記の透過型電子顕微鏡(TEM)でシート状物(研磨布)横断面を観察した。また、必要に応じて金属染色を施した。
TEM装置:(株)日立製作所製 H−7100FA型
(4)極細繊維の数平均による単繊維繊度、直径
極細繊維を含むシート状物(研磨布)の横断面を下記の透過型電子顕微鏡(TEM)あるいは下記の走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、同一横断面内で無作為に抽出した50本の単繊維直径を測定した。測定は、TEMあるいはSEMによるシート状物(研磨布)の横断面写真を画像処理ソフト(WINROOF)を用いて単繊維直径および繊度を求め、これを3ヶ所で行い、合計150本の単繊維の直径を測定することで求めた。このとき、400nm(ナイロン6(比重1.14g/cm)の場合では1.4×10−3dtex)を超える他の繊維は除き1〜400nmの単繊維直径のものだけを無作為に選び測定した。なお、シート状物(研磨布)を構成するナノファイバーが異形断面の場合、まず単繊維の断面積を測定し、その面積を仮に断面が円の場合の面積とした。その面積から直径を算出することによって単繊維直径を求めた。単繊維繊度の平均値は、以下のようにして求めた。まず、単繊維直径をnm単位で小数点の一桁目まで測定し、小数点以下を四捨五入する。その単繊維直径から単繊維繊度を算出し、単純な平均値を求めた。本発明では、これを「数平均による単繊維繊度」とした。
単繊維の数平均による直径、単繊維繊度についても同様の統計手法にて求めた。
SEM装置:(株)キーエンス製 VE−7800型
TEM装置:日立社製H−7100FA型
(5)ナノファイバーの数平均による単繊維繊度ばらつき(繊度比率)
研磨布を構成するナノファイバーの単繊維繊度ばらつきは、本文中にも記載をしたように、以下のようにして評価した。すなわち、研磨布中のナノファイバーそれぞれの単繊維繊度を有効数字1桁で求め、その値をdtとしその総和を総繊度(dt+dt+…+dt)とした。また、先ほど有効数字1桁で求めた同じ単繊維繊度を持つナノファイバーの頻度(個数)を数え、その積を総繊度で割ったものをその単繊維繊度の繊度比率とした。これは研磨布中に含まれるナノファイバー全体に対する各単繊維繊度成分の重量分率(体積分率)に相当し、この値が大きい単繊維繊度成分が研磨布の性質に対する寄与が大きいことになる。
なお、本発明においては、かかるナノファイバーの単繊維繊度ばらつきは、上述の単繊維繊度の平均値を求めるのと同様に、ナノファイバーを少なくとも一部に含むシート状物(研磨布)の横断面を透過型電子顕微鏡(TEM)あるいは走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、同一横断面内で無作為に抽出した50本のナノファイバーの単繊維直径を測定し、これを3カ所で行い、合計150本の単繊維直径を測定することで求め、上述の単繊維繊度の平均値を求めるのと同一のn数と同一のデータを用いて求めた。
(6)乾燥時に対する湿潤時のタテ引張強力保持率
タテ引張強力は、JISL1096 8.12.1(1999)に準拠して、試料長さ方向をタテ方向とし、タテ方向にて長さ20cm、幅2.5cmのサンプルを採取し、つかみ間隔(試長)10cmで定速伸長型引張試験機にて、引張速度10cm/分にて伸長させて試料破断時の荷重を求めた。得られた値から幅1cm当たりの荷重を算出後、その値から厚み1mm当たりの荷重を算出し、引張強力(単位:N/cm幅/mm厚)とした。乾燥時のタテ引張強力は、採取した前記試料を温度20℃、湿度60%のデシケータに12時間以上放置後、デシケータよりサンプルを取り出し前述の方法で測定した値であり、湿潤時のタテ引張強力は、得られた前記試料を25℃の蒸留水中に30分間浸漬した後、試料表面の水分を軽く拭き取り、湿潤状態の試料を得た後、前述の方法で測定した値である。乾燥時に対する湿潤時のタテ引張強力保持率とは、湿潤時のタテ引張強力を乾燥時のタテ引張強力にて割った値を百分率(%)にて表示した値を示す。
(7)極細繊維の分散性(交差点数)
極細繊維を含むシート状物(研磨布)の表面を(株)キーエンス社製 VE−7800型SEMで観察、加速電圧20kV、ワーキングディスタンス8mm、倍率2000倍で撮影した表面写真において、明らかな欠点ヶ所は除いて無作為に表面0.01mmの範囲を抽出し、シート状物(研磨布)表面に露出した1〜400nmの単繊維直径を有する極細繊維の繊維同士が交差する点をカウントする。合計10枚以上の表面写真を測定し、各写真についてカウントを行い、10ヶ所の平均を求め小数点第一位で四捨五入するものである。このとき、表面にポリウレタンなどの高分子弾性体が露出し、極細繊維が存在しない部分や、ニードルパンチなどにより大きな穴を形成している部分は避け、判定に用いないものとする。ここでいう極細繊維間の交差点とは、分散した極細繊維の1本と1本が交差する点であり、交差角の鋭角が20°以上である交差点である。繊維が部分的に合流している箇所や、交差せずに並行している部分、フィブリル化した部分は除くものとする。また、極細繊維が2本以上凝集して形成される束同士の交差点、あるいは束状部分と極細繊維1本の間の交差点もカウントしない。なお、極細繊維が数百本単位で凝集した束の表面で、部分的に分散した極細繊維間の交差点についてはカウントするものとする。
シート状物(研磨布)の極細繊維を含む表面0.01mm中に平均で500ヶ所以上存在した場合を、分散性良好とした。
(8)ポリマーペレット中の島成分の平均分散径
ポリマーアロイペレットサンプルの超薄切片を切り出し、必要に応じ金属染色したものを透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、同一横断面内で無作為に抽出した50カ所の島成分ポリマーの直径を測定し、その平均値を島成分のポリマーの平均分散径とする。
(9)基板表面粗さ
JIS B0601(2001年度版)に準拠して、シュミットメジャーメントシステム社(Schmitt Measurement Systems,Inc)製TMS−2000表面粗さ測定器を用いて、テクスチャー加工後のディスク基板サンプル表面の任意の10カ所について平均粗さを測定し、10カ所の測定値を平均することにより基板表面粗さを算出した。数値が低いほど高性能であることを示す。
(10)スクラッチ点数
テクスチャー加工後の基板5枚の両面、すなわち計10表面の全領域を測定対象として、Candela5100光学表面分析計を用いて、深さ3nm以上の溝をスクラッチとし、スクラッチ点数を測定し、10表面の測定値の平均値で評価した。数値が低いほど高性能であることを示す。
(実施例1)
溶融粘度310poise(240℃、剪断速度121.6sec−1)、融点220℃のナイロン6(N6)(40重量%)、と重量平均分子量12万、溶融粘度720poise(240℃、剪断速度121.6sec−1)、融点170℃のポリ乳酸(PLA)(光学純度99.5%以上)(60重量%)を2軸押出混練機にて220℃で混練して、N6平均分散径800nmのポリマーアロイチップを得た。ここでPLAの重量平均分子量は、以下の方法を用いて求めた。すなわち、試料のクロロホルム溶液にテトラヒドロフランを混合し測定溶液とし、これをWaters社製ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)Waters2690を用いて、25℃で測定し、ポリスチレン換算で求めた。測定は各試料につき3点行い、その平均値を重量平均分子量とした。
スパンボンド法により、上記ポリマーアロイチップを紡糸温度240℃で細孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸ドラフト350、紡糸速度4000m/分で紡糸し、移動するネットコンベアー上に捕集し、圧着率16%のエンボスロールで、温度80℃、線圧20kg/cmの条件で熱圧着し、単繊維繊度2.0dtex、目付170g/mの長繊維不織布を得た。
該ポリマーアロイ繊維からなる不織布に油剤(SM7060EX:東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)を繊維重量に対し2重量%付与し、4枚積層し、バーブ数1、バーブ深さ0.06mmのニードルを用いて、ニードルパンチを5000本/cmで施すことで、目付700g/mのポリマーアロイ繊維からなる不織布を得た。
この不織布を液温約85℃、濃度約12%のポリビニルアルコール溶液に含浸させ、ニップロールで窄液し、ポリマーアロイ繊維重量に対して固形分で20重量%のポリビニルアルコールを付与した後、乾燥した。次に、濃度約12%のポリエステル・ポリエーテル系のポリウレタンのDMF溶液に含浸、ニップロールで窄液し、繊維重量に対して固形分で20重量%のポリウレタンを付与し、液温35℃の30%DMF水溶液でポリウレタンを凝固させ、約85℃の熱水でDMFおよびポリビニルアルコールを除去した。その後、表面をJIS#180番のサンドペーパーにて研削し立毛を形成させた。
最後に、液流染色機(ユニエースFLR型)にて80mmのノズルを用い、浴比1/27において、80℃の4%水酸化ナトリウム水溶液にて30分処理した後水洗4回行い、乾燥させることで、海成分であるPLAを溶出させ、N6からなる極細繊維を発生させた。このシート状物中のN6のみをTEM写真から解析した結果、N6極細繊維束の平均直径が15μm、N6の数平均による単繊維直径は120nm(1.3×10−4dtex)、N6の数平均による繊維長は34μmであった。また、単繊維繊度が1×10−8〜1.4×10−3dtexの繊度比率は95%であった。なお、後述の実施例についても同様の範囲で繊度比率を求めた。
該溶出工程を液流染色機中にて揉み処理を行うことにより、シート状物に物理的刺激を付与し、表面に極細繊維を分散させ、研磨布を得た。
得られた研磨布の厚みは1.26mm、2000倍のSEM写真にて極細繊維間の交差点を数えたところ、表面0.01mm中に平均で1200ヶ所あり、分散性良好であった。また、湿潤時のタテ引張強力は15N/cm幅/mm厚であり、研磨布の乾燥時に対する湿潤時のタテ引張強力保持率は10%であった。
次いで、NBR(二トリルゴム)を主体とする接着剤を研磨布裏面に塗布し、補強材として厚み50μmのポリエステルフィルム(東レ(株)製“ルミラー”S10 品番#50)を圧着した。
研磨布にポリエステルフィルムを圧着したものを40mm幅のテープとし、以下の条件でテクスチャー加工を行った。
アルミニウム基板にNi−Pメッキ処理した後、ポリッシング加工し平均表面粗さ0.2nmに制御したディスクを用い、研磨布表面に1次粒子径1〜10nmのダイヤモンド結晶からなる遊離砥粒スラリーを滴下し、テープ走行速度を5cm/分の条件で10秒間研磨を実施した。
テクスチャー加工後のディスクは、表面粗さが0.12nm、スクラッチ点数は10であり、緻密でかつ均一な略同心円状のテクスチャー痕が形成された加工面であり、加工性も良好であった。
(実施例2)
実施例1で得られた研磨布に実施例1と同一の補強材を接着したものを40mm幅のテープとし、以下の条件で研磨加工を行った。
アルミニウム基板にNi−Pメッキ処理した後、ポリッシング加工し平均表面粗さ0.2nmに制御したディスクを用い、研磨布表面に平均粒子径50nmのコロイダルシリカからなる遊離砥粒スラリーを滴下し、テープ走行速度を5cm/分の条件で30秒間研磨を実施した。
研磨加工後のディスクは、表面粗さが0.1nm、スクラッチ点数は5であり、略同心円状のテクスチャー痕が形成されていない平滑性に優れた加工面であり、加工性も良好であった。
(実施例3)
実施例1で得られた研磨布に実施例1と同一の補強材を接着したものを40mm幅のテープとし、以下の条件でクリーニング加工を行った。アルミニウム基板にNi−Pメッキ処理した後、ポリッシング加工し平均表面粗さ0.2nmに制御したディスクを用い、研磨布表面に有機酸系洗浄剤の水溶液を滴下し、テープ走行速度を5cm/分の条件で30秒間クリーニング加工を実施した。
クリーニング加工後のディスクは、表面粗さが0.17nm、スクラッチ点数は3であり、略同心円状のテクスチャー痕が形成されていない平滑性に優れた加工面であり、加工性も良好であった。
(実施例4)
極細繊維発生加工にて、液流染色機でPLAを溶出させた後、125℃にて20分間湿熱処理を行ったこと以外は、実施例1と同様の方法により研磨布を得た。この研磨布中のN6のみをTEM写真から解析した結果、N6極細繊維束の平均直径が15μm、N6の数平均による単繊維直径は120nm(1.3×10−4dtex)、N6の数平均による繊維長は34μmであった。また、単繊維繊度が1×10−8〜1.4×10−3dtexの繊度比率は95%であった。
該溶出工程を液流染色機中にて揉み処理を行うことにより、研磨布に物理的刺激を付与し、表面に極細繊維を分散させた。
2000倍のSEM写真にて極細繊維間の交差点を数えたところ、表面0.01mm中に平均で1000ヶ所あり、分散性良好であった。また、研磨布の乾燥時に対する湿潤時のタテ引張強力保持率は41%であった。
該研磨布を用いて、補強材を接着しないこと以外は実施例1と同一の方法によりテクスチャー加工を実施した。テクスチャー加工後のディスクは表面粗さが0.15nm、スクラッチ点数は20であり、加工性は良好であった。
(実施例5)
実施例1と同一のN6/PLAポリマーアロイチップを用いて、スパンボンド法により紡糸温度240℃で細孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸ドラフト1200、紡糸速度4500m/分で紡糸し、移動するネットコンベアー上に捕集し、圧着率16%のエンボスロールで、温度80℃、線圧20kg/cmの条件で熱圧着し、単繊維繊度2.0dtex、目付150g/mの長繊維不織布を得た。
該ポリマーアロイ繊維からなる不織布に油剤(SM7060EX:東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)を繊維重量に対し2重量%付与し、4枚積層し、バーブ数1、バーブ深さ0.06mmのニードルを用いて、ニードルパンチを5000本/cmで施すことで、目付650g/mのポリマーアロイ繊維からなる不織布を得た。
この不織布を液温約85℃、濃度約12%のポリビニルアルコール溶液に含浸させ、ニップロールで窄液し、ポリマーアロイ繊維重量に対して固形分で20重量%のポリビニルアルコールを付与した後、乾燥した。次に、濃度約12%のポリエステル・ポリエーテル系のポリウレタンのDMF溶液に含浸、ニップロールで窄液し、繊維重量に対して固形分で20重量%のポリウレタンを付与し、液温35℃の30%DMF水溶液でポリウレタンを凝固させ、約85℃の熱水でDMFおよびポリビニルアルコールを除去した。その後、表面をJIS#180番のサンドペーパーにて研削し立毛を形成させた。
最後に、液流染色機(ユニエースFLR型)にて80mmのノズルを用い、浴比1/27において、80℃の4%水酸化ナトリウム水溶液にて30分処理した後水洗4回行い、乾燥させることで、海成分であるPLAを溶出させ、N6からなる極細繊維を発生させた。次いで、125℃にて20分間湿熱処理を行い、研磨布を得た。このシート状物中のN6のみをTEM写真から解析した結果、N6極細繊維束の平均直径が15μm、N6の数平均による単繊維直径は50nm(2.3×10−5dtex)、N6の数平均による繊維長は130μmであった。また、単繊維繊度が1×10−8〜1.4×10−3dtexの繊度比率は99%であった。なお、後述の実施例についても同様の範囲で繊度比率を求めた。
該溶出工程を液流染色機中にて揉み処理を行うことにより、シート状物に物理的刺激を付与し、表面に極細繊維を分散させた。
得られた研磨布の厚みは1.4mmであり、2000倍のSEM写真にて極細繊維間の交差点を数えたところ、表面0.01mm中に平均で1500ヶ所あり、分散性良好であった。また、研磨布の湿潤時のタテ引張強力は60N/cm幅/mm厚であり、乾燥時に対する湿潤時のタテ引張強力保持率は45%であった。
該研磨布を用いて、補強材を接着しないこと以外は実施例1と同一の方法によりテクスチャー加工を実施した。テクスチャー加工後のディスクは、表面粗さが0.17nm、スクラッチ点数は30であり、緻密でかつ均一な略同心円状のテクスチャー痕が形成された加工面であり、加工性も良好であった。
(実施例6)
極細繊維発生加工にて、液流染色機でPLAを溶出させた後、115℃にて20分間湿熱処理を行ったこと以外は、実施例1と同様の方法により研磨布を得た。この研磨布中のN6のみをTEM写真から解析した結果、N6極細繊維束の平均直径が15μm、N6の数平均による単繊維直径は120nm(1.3×10−4dtex)、N6の数平均による繊維長は34μmであった。また、単繊維繊度が1×10−8〜1.4×10−3dtexの繊度比率は95%であった。
該溶出工程を液流染色機中にて揉み処理を行うことにより、研磨布に物理的刺激を付与し、表面に極細繊維を分散させた。
2000倍のSEM写真にて極細繊維間の交差点を数えたところ、表面0.01mm中に平均で1050ヶ所あり、分散性良好であった。また、研磨布の乾燥時に対する湿潤時のタテ引張強力保持率は24%であった。
該研磨布を用いて、補強材を接着しないこと以外は実施例1と同一の方法によりテクスチャー加工を実施した。テクスチャー加工後のディスクは表面粗さが0.15nm、スクラッチ点数は17であり、加工性は良好であった。
(実施例7)
研磨布の裏面に圧着するポリエステルフィルムの厚みを23μmとする(東レ(株)製“ルミラー”S10 品番#25)以外は、実施例1と同一の方法を用いて研磨布を得た。得られた研磨布を40mm幅のテープとし、実施例1と同一の方法によりテクスチャー加工を実施した。テクスチャー加工後のディスクは、表面粗さが0.12nm、スクラッチ点数は8であり、緻密でかつ均一な略同心円状のテクスチャー痕が形成された加工面であり、加工性も良好であった。
(実施例8)
研磨布の裏面に圧着するポリエステルフィルムの厚みを100μmとする(東レ(株)製“ルミラー”S10 品番#100)以外は、実施例1と同一の方法を用いて研磨布を得た。得られた研磨布を40mm幅のテープとし、実施例1と同一の方法によりテクスチャー加工を実施した。テクスチャー加工後のディスクは、表面粗さが0.14nm、スクラッチ点数は25であり、緻密でかつ均一な略同心円状のテクスチャー痕が形成された加工面であり、加工性も良好であった。
(実施例9)
研磨布の裏面に圧着するポリエステルフィルムの厚みを210μmとする(東レ(株)製“ルミラー”S10 品番#210)以外は、実施例1と同一の方法を用いて研磨布を得た。得られた研磨布を40mm幅のテープとし、実施例1と同一の方法によりテクスチャー加工を実施した。テクスチャー加工後のディスクは、表面粗さが0.17nm、スクラッチ点数は45であり、緻密でかつ均一な略同心円状のテクスチャー痕が形成された加工面であり、加工性も良好であった。
(比較例1)
実施例1で用いたN6/PLA=40/60のポリマーアロイチップを島成分、2−エチルヘキシルアクリレートを22%共重合したポリスチレンを海成分とし、島/海重量比率=60/40重量%、島数36島の海島型複合紡糸口金を通して、紡糸ドラフト1200、紡糸速度1000m/分の条件で海島型複合繊維を得た。次いで、該複合繊維を延伸温度85℃、延伸倍率2.0倍の条件で延伸、捲縮、カットを経て、複合単繊維繊度5.0dtex、カット長約51mm、捲縮数14山/2.54cmの海島型複合繊維の原綿を得た。次いで、該原綿を用いてカード、クロスラッパーの工程を経てウェブを作製し、次いで、実施例1で用いたニードルにてニードルパンチを3000本/cmで施して目付950g/mのフェルトを作製した。
このフェルトを液温約85℃、濃度約12%のポリビニルアルコール溶液に含浸させ、ニップロールで窄液し、島(ポリマーアロイ)成分に対して固形分で20重量%のポリビニルアルコールを付与した後、乾燥した。この後、約30℃のトリクロロエチレンにて海成分(共重合ポリスチレン)を除去し、単繊維繊度約0.08dtexのポリマーアロイ繊維からなる不織布を得た。
この不織布をポリエステル・ポリエーテル系のポリウレタンのDMF溶液に含浸、ニップロールで窄液し、繊維重量に対して固形分で20重量%のポリウレタンを付与し、液温35℃の30%DMF水溶液でポリウレタンを凝固させ、約85℃の熱水でDMFおよびポリビニルアルコールを除去した。次に、表面を実施例1と同様にサンドペーパーにて研削し立毛を形成させた。
最後に、実施例1と同様に80℃の4%水酸化ナトリウム水溶液にて30分処理し、ポリマーアロイ中のPLAを溶出させ、N6からなる極細繊維を発生させた際、シート状物の部分破断が発生し、記録ディスクの加工に供するシートを採取することができなかった。なお、このシート状物中のN6のみをTEM写真から解析した結果、N6極細繊維束の平均直径が3μm、N6の数平均による単繊維直径は500nm(2.3×10−3dtex)、単繊維繊度が1×10−8〜1.4×10−3dtexの繊度比率は20%、N6の数平均による繊維長は7μmであった。
シート状物の厚みは0.6mmであり、2000倍のSEM写真にて極細繊維間の交差点を数えたところ、表面0.01mm中に平均で1400ヶ所あり、分散性は良好であった。また、該シート状物の湿潤時のタテ引張強力は4N/cm幅/mm厚であり、乾燥時に対する湿潤時のタテ引張強力保持率は5%であった。
(比較例2)
溶融粘度1500poise(262℃、剪断速度121.6sec−1)、融点220℃のN6と溶融粘度1450poise(262℃、剪断速度121.6sec−1)、融点105℃のPEとをN6のブレンド比率を30重量%となるようにそれぞれのポリマーを計量しながら2軸押出混練機にて260℃にて混練して紡糸口金温度285℃で細孔より紡出した後、紡糸ドラフト800、紡糸速度800m/分の条件で海島型複合繊維を得た。次いで、該複合繊維を延伸倍率3.0倍の条件で延伸、捲縮、カットを経て、複合単繊維繊度4.0dtex、カット長約51mm、捲縮数12山/2.54cmの海島型複合繊維の原綿を得た。次いで、該原綿を用いてカード、クロスラッパーの工程を経てウェブを作製し、次いで、実施例1で用いたニードルにてニードルパンチを1000本/cmで施して目付900g/mのフェルトを作製した。
このフェルトを液温約85℃、濃度約12%のポリビニルアルコール溶液に含浸させ、ニップロールで窄液し、ポリマーアロイ繊維重量に対して固形分で20重量%のポリビニルアルコールを付与した後、乾燥した。次に、ポリエステル・ポリエーテル系のポリウレタンのDMF溶液に含浸、ニップロールで窄液し、繊維重量に対して固形分で20重量%のポリウレタンを付与し、液温35℃の30%DMF水溶液でポリウレタンを凝固させ、約85℃の熱水でDMFおよびポリビニルアルコールを除去した。その後、表面をJIS#240、320、600番のサンドペーパーにて研削し立毛を形成させた。
最後に、85℃の熱トルエンにて1時間処理し、乾燥させることで、海成分であるPEを溶出させ、N6からなる極細繊維を発生させた。この研磨布のN6のみをTEM写真から解析した結果、N6極細繊維束の平均直径は20μm、単繊維直径が300nm〜1000nm(単繊維繊度約5×10−4〜1×10−2dtex)の極細繊維が生成しており、N6の数平均による単繊維直径は480nm(単繊維繊度2.2×10−3dtex)であり、ばらつきが大きいものであった。なお、N6の数平均による繊維長は約1mmであり、単繊維繊度が1×10−8〜1.4×10−3dtexの繊度比率は25%であった。
該溶出工程を液流染色機中にて揉み処理を行うことにより、研磨布に物理的刺激を付与し、表面に極細繊維を分散させた。
得られた研磨布の厚みは0.6mmであり、2000倍のSEM写真にて極細繊維間の交差点を数えたところ、表面0.01mm中に平均で400ヶ所あり、分散性不良であった。また、該研磨布の湿潤時のタテ引張強力は137N/cm幅/mm厚であり、乾燥時に対する湿潤時のタテ引張強力保持率は90%であった。
該研磨布を用いて、補強材を接着しないこと以外は実施例1と同一の方法によりテクスチャー加工を実施した。テクスチャー加工後のディスクは、表面粗さが0.23nm、スクラッチ点数は130であり、スクラッチ点数が極めて多いものであった。
(比較例3)
極細繊維発生加工にて、液流染色機でPLAを溶出させた後、170℃にて5分間乾熱処理を行ったこと以外は、実施例1と同様の方法により研磨布を得た。この研磨布中のN6のみをTEM写真から解析した結果、N6極細繊維束の平均直径が15μm、N6の数平均による単繊維直径は130nm(1.4×10−4dtex)、N6の数平均による繊維長は34μmであった。また、単繊維繊度が1×10−8〜1.4×10−3dtexの繊度比率は93%であった。
該溶出工程を液流染色機中にて揉み処理を行うことにより、研磨布に物理的刺激を付与し、表面に極細繊維を分散させた。
得られた研磨布の厚みは1.15mm、2000倍のSEM写真にて極細繊維間の交差点を数えたところ、表面0.01mm中に平均で900ヶ所あり、分散性良好であった。また、該研磨布の湿潤時のタテ引張強力は127N/cm幅/mm厚であり、乾燥時に対する湿潤時のタテ引張強力保持率は62%であった。
該研磨布を用いて、補強材を接着しないこと以外は実施例1と同一の方法によりテクスチャー加工を実施した。テクスチャー加工後のディスクは表面粗さが0.2nm、スクラッチ点数は70であり、スクラッチ点数がやや多いものであった。加工性については非常に良好であった。
Figure 2008173759
表1には、実施例および比較例で得られた研磨布の特性および研磨布を用いた加工評価結果を示す。
本発明の研磨布は、従来の極細繊維では達成し得なかった極めて緻密な表面状態と優れた平滑性および柔軟性を有するため、記録ディスクの基板表面に対し、テープ状の研磨布を用いたスラリー研削および/またはスラリーを用いないクリーニング加工において、スクラッチおよび微小な突起の発生を極少化することが可能となり、また垂直記録方式の記録ディスクにて要求される微細な条痕の抑制を満足できる高性能研磨布を提供できるものである。

Claims (9)

  1. 数平均による単繊維繊度が1×10−8〜1.4×10−3dtexであり、該単繊維繊度が1×10−8〜1.4×10−3dtexの範囲内の繊維の繊度比率が60%以上である極細繊維を表面に有する研磨布であって、乾燥時に対する湿潤時のタテ引張強力保持率が10〜50%であることを特徴とする研磨布。
  2. 数平均による極細繊維の繊維長が10〜500μmであることを特徴とする請求項1に記載の研磨布。
  3. 前記研磨布が極細繊維からなる不織布と高分子弾性体とで構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の研磨布。
  4. 極細繊維がポリアミドからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の研磨布。
  5. 表面に露出した単繊維繊度1×10−8〜1.4×10−3dtexの極細繊維間の交差点が、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて2000倍にて観測した0.01mmの範囲10ヶ所において、平均で500ヶ所以上存在することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の研磨布。
  6. スパンボンド法により製造された長繊維不織布から得られることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の研磨布。
  7. 請求項1〜6のいずれかの研磨布の裏面に、織編物、熱接着繊維を用いた不織布、フィルム状物のいずれかからなる補強材を配することを特徴とする研磨布。
  8. 該補強材が、厚み20〜50μmのフィルム状物であることを特徴とする請求項7記載の研磨布。
  9. 請求項1〜6のいずれかに記載の研磨布を製造する方法であって、少なくとも易溶性ポリマーを含む溶剤に対する溶解性の異なるポリマーをアロイ化したポリマーアロイ溶融体を用いた複合繊維のウェブに絡合処理を施して不織布を作製した後、高分子弾性体を該不織布に付与し、該高分子弾性体を凝固し固化させ、起毛処理を施して表面に立毛を形成させ、次いで該複合繊維から易溶性ポリマーを溶解除去することにより極細繊維発生加工を行い、極細繊維発生加工前もしくは後に、110〜140℃の温度で湿熱処理を行うことを特徴とする研磨布の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2010201531A (ja) * 2009-03-02 2010-09-16 Fujibo Holdings Inc 研磨布
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JP2017185566A (ja) * 2016-04-01 2017-10-12 富士紡ホールディングス株式会社 研磨パッド

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