JP3877369B2 - 研磨シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、不織布製の研磨シート、特には、精密機器、例えば、磁気記録媒体を製造する際のテクスチャー加工に使用することのできる研磨シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気ディスクのような磁気記録媒体を製造する場合には、アルミニウム合金などの基材にアルマイト処理やニッケル−リンメッキなどの非磁性メッキ処理を施して非磁性メッキ基材を形成し、その非磁性メッキ基材表面にテクスチャー加工を行ってから、その上に、順次、下地層(一般にクロムなどからなる)、磁性薄膜層(一般にコバルト系合金などからなる)、及び保護層(一般に炭素質などからなる)を被覆する。こうして製造される磁気記録媒体では、磁気ディスクと磁気ヘッドとの間隔(すなわち、浮上量)をますます小さくすることが要請されているので、磁気ディスク表面に突起が存在しないように、平滑化することが必要である。
一方、磁気ディスク面の平滑化が進み過ぎると、磁気ディスク面に磁気ヘッドが吸着して浮上しない現象が起きる。これを防止するため、前記の非磁性メッキ基材に微細な溝を形成するテクスチャー加工を実施することが一般的に行われている。すなわち、テクスチャー加工とは、前記の非磁性メッキ基材の表面を研磨して、微細な傷跡(テクスチャー)を均一に形成する工程である。
このテクスチャー工程で使用する研磨材としては、従来、繊維径3μm前後の繊維をウレタン樹脂で固定した不織布や、繊維径5μm程度の繊維からなる織物や、あるいは、繊維径14μm程度の繊維を植毛した植毛シートなどがあった。しかしながら、繊維径3μm前後の繊維をウレタン樹脂で固定した不織布は、繊維に自由度がないためか、表面研磨の際に基材表面に大きな傷をつけてしまったり、ウレタン樹脂が脱落して基材に付着してしまい、かえって基材表面を不均一にしてしまうものであった。また、繊維径5μm前後の繊維からなる織物も繊維に自由度がないためか、基材表面に大きな傷をつけてしまうものであり、更に、植毛シートは基材表面に対して垂直に繊維が配列しているため、基材表面に大きな傷をつけやすいものであった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の問題点を解決するためになされたものであり、基材表面に大きな傷をつけることなく、均一に研磨することができると共に、微細なテクスチャーを形成することのできる研磨シートを提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、繊維径10μm以下の繊維を80%以上含む、絡合不織布及びメルトブロー不織布からなる群から選んだ、樹脂で固定していない不織布の層を、少なくとも片面に有すること、及び補強層を有することを特徴とする、研磨シートに関する。
本明細書において繊維の「繊維径」とは、繊維が異形断面形状を有する場合には、円形断面に換算した値をいう。また、繊維径10μm以下の繊維の比率が80%以上とは、不織布層を構成する繊維の任意の100点における繊維の繊維径を測定し、その80点以上において繊維径が10μm以下であることを意味する。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の研磨シートは、繊維径10μm以下の繊維を80%以上(好ましくは90%以上)含む絡合不織布層を、少なくとも片面に有するものである。すなわち、少なくとも一方の表面に前記の不織布層が露出している研磨シートであり、その露出表面(以下、研磨面と称することがある)を、例えば、前記の非磁性メッキ基材表面のテクスチャー加工に用いることができる。この研磨面を構成する絡合不織布層は、絡合により形態を保っており、樹脂で固定していないため樹脂の脱落という問題が生じず、しかも繊維が強固に固定されている訳ではないので、繊維に融通性があり、研磨粒子を強引に基材表面に押圧しないので、基材表面に大きな傷をつけにくい。また、研磨面の絡合不織布層を構成するのが、主として繊維径10μm以下の繊維であり、微細な研磨粒子の保持性に優れているため、基材表面を均一に研磨し、微細なテクスチャーを形成することができる。
【0006】
本発明の別の研磨シートは、繊維径10μm以下の繊維を80%以上(好ましくは90%以上)含むメルトブロー不織布層を、少なくとも片面に有するものである。すなわち、少なくとも一方の表面に前記の不織布層が露出している研磨シートであり、その露出表面(すなわち、研磨面)を、例えば、前記の非磁性メッキ基材表面のテクスチャー加工に用いることができる。この研磨面を構成するメルトブロー不織布は構成繊維同士の融着によって形態を保っており、樹脂で固定していないため樹脂の脱落という問題は生じず、しかも繊維は未延伸で、繊維自体が柔らかく、研磨粒子を強引に基材表面に押圧しないので、基材表面に大きな傷をつけにくい。また、メルトブロー不織布層を構成するのが、主として繊維径10μm以下の繊維であり、微細な研磨粒子の保持性に優れているため、基材表面を均一に研磨し、微細なテクスチャーを形成することができる。
【0007】
本発明の研磨シートの少なくとも研磨面を構成する不織布の構成繊維は、繊維径10μm以下の繊維80%以上からなり、微細な研磨粒子の保持性に優れているため、基材表面を均一に研磨し、微細なテクスチャーを形成することができる。この繊維の繊維径が10μmを越えると、微細な研磨粒子の保持性が著しく低下して、均一に基材表面を研磨し、微細なテクスチャーを形成できなかったり、繊維の剛性が大きくなるために、基材表面に大きな傷をつけやすくなる。この繊維の繊維径が小さければ小さいほど、研磨粒子の保持性により優れているため、繊維径は、8μm以下であるのが好ましく、6μm以下であるのがより好ましく、1μm以下であるのが最も好ましい。他方、基材表面との摩擦によって繊維自体が破断して基材表面に付着しないように、繊維径が0.01μm以上であるのが好ましい。
【0008】
本発明による研磨シートの研磨面を構成する不織布の繊維は、繊維径の点において2種類以上からなるのが好ましく、2種類の場合、繊維径が1〜5μm(好ましくは2〜3μm)の繊維(以下、極細繊維ということがある)を、繊維本数において、0.1〜5%、好ましくは1〜3%と、繊維径が0.8μm以下(好ましくは0.5μm以下)の繊維(以下、超極細繊維ということがある)を、繊維本数において、95〜99.9%、好ましくは97〜99%とからなるのが好ましい。
【0009】
本発明で用いる繊維、特には細繊維(例えば、前記の極細繊維及び前記の超極細繊維)は、例えば、物理的及び/又は化学的処理によって、より細い繊維に分割可能な分割性繊維を分割して得るか、又はメルトブロー法により得ることができる。物理的処理としては、例えば、ニードルパンチ処理、水流などの流体流、及び/又はカレンダー処理などの処理があり、化学的処理としては、例えば、除去剤による樹脂成分の除去や、膨潤させる処理などがある。また、本発明で用いる繊維は、繊維径及び/又は樹脂成分の点で1種類の繊維からなるだけでなく、2種類又はそれ以上の繊維からなることができる。
【0010】
前者の分割性繊維から細繊維を発生させる場合に使用することのできる分割性繊維としては、例えば、図1に繊維断面模式図を示すように、除去剤で除去可能なA成分中に、このA成分の除去剤に難除去性のB成分を島状に配置した海島型繊維があり、この海島型繊維のA成分を除去することにより、B成分からなる細繊維を発生させることができる。また、A成分を物理的作用により分割することができる(好適にはA成分とB成分とをその物理的作用によって分離することができる)場合には、物理的作用を施すことにより、A成分からなる細繊維、B成分からなる細繊維、及び/又はA成分とB成分とが混在する細繊維を発生させることができる。また、島成分は1種類の樹脂成分からなる必要はなく、2種類以上の樹脂成分からなっていることもできる。なお、分割性繊維のB成分は、A成分内に、長さ方向に連続した、あるいは、断続的な繊維として存在することもできる。
【0011】
除去剤としては、樹脂成分によって異なるが、例えば、溶剤、酵素、又は微生物などを挙げることができ、これらの中でも、溶剤は除去速度が速く、取り扱いが容易なので好適に使用することができる。この溶剤の中でも、水系溶剤は、より扱いやすく、処理しやすいので、好適に使用することができる。本発明における除去可能とは、樹脂成分の95mass%以上を除去可能であることをいい、難除去性とは、除去剤で除去可能な樹脂成分を除去する際の条件下に、ある樹脂成分をさらした場合に、この樹脂成分の質量低下が30%以下であることを意味する。
【0012】
本発明で使用することのできる別の分割性繊維としては、例えば、図2に繊維断面模式図を示すように、A成分と、A成分とは貧相溶性のB成分とを交互に層状に積層した多重バイメタル型繊維があり、この多重バイメタル型繊維に物理的作用を施せば、A成分からなる細繊維とB成分からなる細繊維との2種類の細繊維を形成させることができる。なお、図2には分割性繊維が2種類の樹脂成分からなる場合を示すが、3種類又は4種類の樹脂成分からなる多重バイメタル型繊維を使用すれば、それぞれ3種類又は4種類の細繊維を形成させることができる。なお、除去剤に対する除去性の異なる複数の樹脂成分を組み合わせた場合には、除去剤によっていずれかの樹脂成分を除去することにより細繊維を発生させることができる。
【0013】
本発明で使用することのできる別の分割性繊維としては、例えば、図3及び図4に繊維断面模式図を示すように、A成分を繊維の内部(好適には繊維軸)から繊維表面に伸びる、A成分とは貧相溶性のB成分で分割した菊花型繊維があり、この菊花型繊維に物理的作用を施せば、A成分からなる細繊維とB成分からなる細繊維との2種類の細繊維を形成させることができる。なお、図3及び図4には分割性繊維が2種類の樹脂成分からなる場合を示すが、3種類又は4種類の樹脂成分からなる菊花型繊維を使用すれば、それぞれ3種類又は4種類の細繊維を形成させることができる。なお、除去剤に対する除去性の異なる複数の樹脂成分を組み合わせた場合には、除去剤によっていずれかの樹脂成分を除去することにより細繊維を発生させることができる。
【0014】
更に、本発明で使用することのできる別の分割性繊維としては、例えば、図5に示すように、海島型繊維の少なくとも1つの島成分Bが、更に海成分aと島成分bとの海島型になっているもの、海島型繊維の少なくとも1つの島成分が多重バイメタル型になっているもの(図示せず)、更に、海島型繊維の少なくとも1つの島成分が菊花型になっているもの(図示せず)、図6に示すように、多重バイメタル型繊維の少なくとも1つの樹脂成分(A成分又はB成分)が海成分aと島成分bとの海島型になっているもの、多重バイメタル型繊維の少なくとも1つの樹脂成分が多重バイメタル型又は菊花型になっているもの(図示せず)、図7に示すように、菊花型繊維の少なくとも1つの樹脂成分(A成分又はB成分)が海成分aと島成分bとの海島型になっているもの、あるいは、菊花型繊維の少なくとも1つの樹脂成分が多重バイメタル型又は菊花型になっているもの(図示せず)、などがある。これらの分割性繊維を使用すれば、より繊維径の小さい細繊維を形成させることができるので、本発明において好適に使用することができる。
【0015】
繊維径が1〜5μm(好ましくは2〜3μm)の極細繊維と、繊維径が0.8μm以下(好ましくは0.5μm以下)の超極細繊維との2種類の細繊維を含む不織布を、分割性繊維から形成する場合には、極細繊維を形成できる分割性繊維と超極細繊維を形成できる分割性繊維の2種類の分割性繊維から形成することもできるが、各細繊維の分散性が優れる点で1種類の分割性繊維から極細繊維及び超極細繊維を形成するのが好ましい。すなわち、図8に示すような断面形状を有する分割性繊維を使用するのが好ましい。
【0016】
前記の分割性繊維を構成する樹脂成分は、繊維形成能があり、物理的及び/又は化学的処理により分割可能な、2種類以上の樹脂成分の組み合わせからなることができる。例えば、ポリアミド、例えば、ナイロン6、ナイロン66、又はポリアミド系共重合体;ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート系共重合体、ポリブチレンテレフタレート、又はポリブチレンテレフタレート系共重合体;ポリオレフィン、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はポリメチルペンテン;ポリウレタン;ポリアクリロニトリル;ビニル重合体;あるいは、脂肪族ポリエステル系重合体、例えば、ポリグリコール酸、グリコール酸共重合体、ポリ乳酸、又は乳酸共重合体;この脂肪族ポリエステル系重合体に脂肪族アミド(例えば、カプラミド、テトラメチレンアジパミド、ウンデカナミド、ラウロラクタミド、又はヘキサメチレンアジパミド)を共重合させた脂肪族ポリエステルアミド系共重合体などの樹脂を適宜組み合わせて使用することができる。
【0017】
樹脂成分としては、耐磨耗性及び親水性を有する点でポリアミドが好ましい。構成繊維が親水性を有すると、研磨シートで研磨する際に、研磨粒子を含む水性スラリー液を用いる場合に、研磨粒子が凝集しにくくなり、基材表面に大きな傷をつけにくくなるので好ましい。また、強度、耐磨耗性及び弾性に優れるポリプロピレンやポリエステルからなる樹脂成分も好ましい。
従って、複数の樹脂成分を用いる場合には、ポリアミドと、ポリプロピレンと、ポリエステルとを適宜組み合わせるのが好ましい。例えば、ポリアミドと、ポリプロピレンとの組み合わせ、ポリアミドとポリエステルとの組み合わせが好ましい。例えば、繊維径が1〜5μm(好ましくは2〜3μm)の極細繊維と、繊維径が0.8μm以下(好ましくは0.5μm以下)の超極細繊維との2種類の細繊維を形成する分割性繊維の場合には、繊維断面において径が1〜5μm(好ましくは2〜3μm)のポリアミドと、径が0.8μm以下(好ましくは0.5μm以下)のポリプロピレンとの組み合わせが好ましい。単一成分からなる場合、径が1〜5μm(好ましくは2〜3μm)のポリプロピレンと、径が0.8μm以下(好ましくは0.5μm以下)のポリプロピレンとの組み合わせが好ましい。
【0018】
本発明で使用することのできる前記の分割性繊維は、常法の複合紡糸法、混合紡糸法、あるいはこれらを適宜組み合わせることにより、容易に紡糸することができる。また、紡糸性や繊維強度を低下させない範囲内で、難燃剤、帯電防止剤、吸湿剤、着色剤、染色剤、導電剤、及び/又は親水化剤などを混合することもできる。
【0019】
本発明による研磨シートの研磨面を構成する不織布層は、繊維径10μm以下の繊維以外の繊維を20%以下(好ましくは10%以下)の量で含むことができる。繊維径10μm以下の繊維以外の繊維としては、例えば、絹、羊毛、綿、麻などの天然繊維、レーヨン繊維などの再生繊維、アセテート繊維などの半合成繊維、ポリアミド繊維、ポリビニルアルコール繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリウレタン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、芳香族ポリアミド繊維などの合成繊維がある。繊維径10μm以下の繊維以外の繊維の繊維径は、特に限定されるものではないが、15μm以下であることが好ましい。
【0020】
本発明の研磨シートの研磨面を構成する不織布層は、絡合不織布層又はメルトブロー不織布層である。絡合不織布層は、例えば、繊維ウエブにニードルパンチ処理や水流などの流体流を作用させることによって形成することができる。これらの中でも、流体流で絡合すれば、より均一な絡合不織布を形成できるので、基材表面をより均一に研磨し、微細なテクスチャーを形成することができ、しかもより低目付で薄い絡合不織布とすることができ、研磨シートを巻回する場合には、同一半径で巻長さを長くすることができるのでより好適である。
【0021】
また、メルトブロー不織布層は、常法のメルトブロー法により得られるものである。この不織布を構成する繊維の樹脂成分としては、例えば、ポリプロピレン、ポリアミド、又はポリエチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂を挙げることができる。樹脂成分としては、耐磨耗性及び親水性を有する点でポリアミドが好ましい。また、ポリプロピレンやポリエチレンテレフタレートも、強度、耐磨耗性及び弾性に優れる点で好ましい。なお、このメルトブロー不織布にニードルパンチ処理や流体流を作用させて、絡合させて形成される絡合メルトブロー不織布を使用することもできる。
【0022】
本発明による研磨シートを構成する不織布層においては、前記の繊維径以外の物性は特に限定されるものではないが、目付は好ましくは30〜300g/m2 、より好ましくは60〜200g/m2 であり、厚さは、好ましくは0.1〜1.5mm、より好ましくは0.2〜1mmである。目付が30g/m2 未満になると不織布層における繊維の均一分散性を損なうことがあり、300g/m2 を越えると湿式研磨の場合、スラリー液の注液量が多くなり、不必要に多量のスラリー液を使用することになる場合がある。また、厚さが0.1mm未満になるとクッション性に欠け、基材表面に大きな傷をつけることがあり、1.5mmを越えると湿式研磨の場合、スラリー液の注液量が多くなり、不必要に多量のスラリー液を使用することになる場合があり、更に巻長さが短くなることがある。
【0023】
本発明の研磨シートは、上記のような不織布層を少なくとも片面、すなわち研磨面に有する。従って、この不織布層からなる研磨面で基材表面を研磨すれば、大きな傷をつけることなく、均一に研磨し、微細なテクスチャーを形成することができる。本発明による研磨シートは、不織布層を両表面に有していることもできるし、上記のような不織布のみからなっていることもできる。
【0024】
本発明の研磨シートを使用する方法として、研磨粒子を含むスラリー液を用いるのが好適である。この場合、研磨粒子を分散させている水の量が少なくなると、研磨粒子が凝集して基材表面に大きな傷をつけやすくなるため、前記の研磨面を構成する不織布層以外に、親水性繊維を含む層、例えば、親水性繊維を含む不織布や編織物の親水性層を、本発明の研磨シートに設けるのが好ましい。ここで親水性繊維とは公定水分率が5%以上の繊維を意味し、例えば、レーヨン繊維、ポリノジック繊維、キュプラ繊維、アセテート繊維、又はテンセル繊維(溶剤抽出法により得られるセルロース繊維)などの繊維を使用することができる。これらの中でもレーヨン繊維やテンセル繊維は湿潤時に柔らかくなり、より研磨粒子を基材表面に強引に押圧しないので、好適に使用することができ、テンセル繊維は湿潤時の強度低下が小さいため、より好適に使用することができる。なお、この親水性繊維は、親水性層中に20mass%以上の量で含まれているのが好ましい。また、この親水性層は、前記の研磨面を構成する不織布層に水分を供給することができるように、前記の研磨面を構成する不織布層に隣接しているのが好ましい。
更に、前記の親水性繊維を、前記の研磨面を構成する不織布層に混入させて、その不織布層それ自体に親水性を付与することができる。この場合には、繊維径10μm以下の親水性繊維を混入させることが好ましい。
【0025】
本発明の研磨シートで基材表面を研磨する際に寸法変化が生じると、基材表面を均一に研磨することができないので、研磨シートに形態安定性を付与するために、補強層を設ける。この補強層は、以下のテストによる形態安定性を満足するものであることが好ましい。すなわち、補強層を含む5cm幅の研磨シートを、10cm間隔を有するチャック間に固定し、この研磨シートを両チャック側から2kgfの荷重によって引っ張った時に、研磨シートの中央部(チャック間の中央部)における、研磨シートの幅の減少が2mm以下となる形態安定性を研磨シートに付与することのできる補強層であることが好ましい。
【0026】
このような補強層としては、例えば、糸、ネット、織物、熱可塑性繊維により固定した不織布又は編織物、あるいはフィルムなどを使用することができる。これらの中でも、フィルムは厚みが均一で、しかも強度的に優れているため、好適に使用することができる。なお、本発明による研磨シートが、前記の不織布層以外に、親水性層と補強層とを有する場合には、上述のように、親水性層が不織布層に隣接しているのが好ましいので、この補強層の上に親水性層を設け、更にその親水性層の上に不織布層を設けるのが好ましい。また、親水性繊維と熱可塑性繊維とからなり、熱可塑性繊維で熱融着して固定した不織布層又は編織物層を、親水性層であると同時に補強層でもある親水性補強層として用いることもできる。
【0027】
本発明の研磨シートは、例えば、以下の製造方法によって製造することができる。
まず、分割性繊維を使用して、繊維径10μm以下の繊維を80%以上含む絡合不織布層を形成する方法としては、前述のような分割性繊維を含む繊維ウエブを、例えば、カード法、エアレイ法、メルトブロー法、又はスパンボンド法などの乾式法や、湿式法により形成した後、ニードルパンチ処理及び/又は流体流(特に水流)によって、分割性繊維を絡合する。物理的作用により分割可能な分割性繊維を用いる場合には、前記の処理によって同時に分割する。なお、繊維ウエブの形成方法によって繊維長が異なる。すなわち、カード法又はエアレイ法により形成する場合には、20〜110mm長の繊維を使用し、湿式法により形成する場合には、1〜30mm長の繊維を使用する。また、分割性繊維の繊度は、分割性繊維が均一に分散するように、また、繊維径10μm以下の繊維を発生しやすいように、1〜5デニールであるのが好ましい。
【0028】
絡合不織布層を形成する好適な方法である流体流絡合の条件としては、例えば、ノズル径0.05〜0.3mm、好適には0.08〜0.2mm、ピッチ0.2〜3mm、好適には0.4〜2mmで一列以上に配列したノズルプレートを使用し、圧力10〜300kg/cm2 、好適には50〜250kg/cm2 の流体流を噴出する。なお、流体流の圧力を変化させたり、ノズルプレートを揺動又は振動させることもできる。また、流体流で絡合する際に、繊維ウエブを搬送するネットや多孔板などの支持体の開孔部が大きいと、外観上、孔を有する不織布層を形成することができ、支持体の開孔部が小さいと、外観上、孔のない均一な不織布層を形成することができる。本発明による研磨シートを磁気記録媒体製造用研磨シートとして使用する場合には、基材表面をより均一に研磨し、より微細なテクスチャーを形成することができるように、支持体として線径0.25mm以下の細いワイヤーからなる、50メッシュ以上の目の細かいネットや、これに相当する多孔板を使用するのが好ましい。
【0029】
なお、物理的処理のみによって分割性繊維を分割する場合には、本発明による研磨シートの不織布層が、繊維径10μm以下の繊維を80%以上含んでいる必要があるため、繊維ウエブの片面又は両面に流体流を2回以上噴出して、分割性繊維を十分に分割するのが好ましい。なお、分割性繊維を十分に分割するために、繊維ウエブの目付が25〜100g/m2 程度の低目付の繊維ウエブに対して、流体流を作用させるのが好ましい。この場合、低目付であるがために厚みもなくなり、研磨している際に、不織布層に隣接する層、例えば親水性層の繊維が研磨シートの表面に露出する可能性がある。従って、低目付の繊維ウエブに流体流を作用させる場合には、研磨面を構成する低目付の繊維ウエブをそれ単独で少なくとも1回流体流で処理した後、その処理ウエブを、分割性繊維を主体とする繊維ウエブ上に積層し、それ以降の流体流を作用させて、研磨面を構成する低目付の繊維ウエブを十分に分割すると共に、研磨面不織布層の下にある分割性繊維を主体とする繊維ウエブの分割性繊維も分割して、仮に後者の不織布層内部の繊維が研磨面に露出したとしても、基材表面に大きな傷をつけないようにするのが好ましい。このようにして得られる複合不織布層は、繊維径10μm以下の繊維を80%以上含む層と、この層よりも繊維径10μm以下の繊維の量が少ない層との2層からなる。なお、同様の操作を繰り返して、繊維径10μm以下の繊維を含む層を3層以上とすることもできる。
分割性繊維が化学的に分割可能なものであったり、分割性繊維の分割が不十分な場合には、絡合処理の後に、除去剤により樹脂成分を溶解除去したり、樹脂成分を膨潤させて分割したり、カレンダー処理により十分に分割するのが好ましい。
【0030】
分割性繊維を用いて、最初に物理的処理を実施し、続いて化学的処理を実施すると、最初の物理的処理によって分割性繊維が、物理的に分割された状態又は分割されていない状態で絡合し、続いて、その絡合状態を実質的に維持したままで除去可能な成分が除去される。従って、残留する繊維は、複数の繊維からなる繊維束を単位として絡合した状態となる。本発明の絡合不織布層は、前記の繊維束内に繊維径の点において複数種の繊維を含む状態で絡合した不織布からなるのが好ましく、繊維径1〜5μm(好ましくは2〜3μm)の極細繊維と繊維径0.8μm以下(好ましくは0.5μm以下)の超極細繊維とが同一繊維束内に存在している不織布からなるのがより好ましい。
【0031】
メルトブロー法により、繊維径10μm以下の繊維を主体とする不織布層を形成する場合には、例えば、オリフィス径が0.1〜0.5mmで、ピッチ0.6〜1.2mmで配置されたノズルピースを使用し、温度220〜350℃に加熱したノズルピースから、1つのオリフィス当り0.05〜1.5g/minで繊維を吐出する。この吐出した繊維に対して、230〜360℃に加熱した空気を、標準状態で0.1〜12m3 /min量で作用させて、繊維を極細化する。この極細化した繊維は5〜30メッシュ程度のネットや、これに相当する多孔板で捕集して、メルトブロー不織布層を形成することができる。
【0032】
親水性繊維を含む親水性層は、不織布や編織物からなることができる。親水性不織布層の形成方法としては、ニードルパンチ処理や流体流によって絡合する方法、バインダーによって固定する方法、あるいは親水性繊維以外の成分として含まれる熱可塑性繊維の融着により固定する方法などがある。分割性繊維を含む繊維ウエブ(研磨面不織布層となるウエブ)に親水性繊維を含む繊維ウエブを積層し、分割性繊維を含む繊維ウエブの絡合と同時に、親水性繊維を含む繊維ウエブも絡合すると、不織布層と親水性層とを一体化する工程を省略することができるので好適な親水性層の形成方法である。但し、この方法により親水性層を形成する場合には、親水性層を構成する繊維が、研磨面として形成される不織布層表面に露出しないように、分割性繊維を含む繊維ウエブ側からのみ流体流を作用させるのが好ましい。なお、この親水性層は、親水性繊維と混綿された熱可塑性繊維の可塑化(親水性層が補強層でもある)により、あるいは、別のバインダーにより研磨面不織布層と一体化することができる。この別のバインダーにより一体化する場合には、親水性層から研磨面不織布層への水分の移行を妨げないように部分的に接着するのが好ましい。
【0033】
本発明に係る研磨シートの補強層は、例えば、糸、ネット、織物、熱可塑性繊維により固定した不織布又は編織物、あるいはフィルムなどからなることができ、例えば、熱可塑性繊維により固定した不織布は、乾式法及び/又は湿式法により形成した繊維ウエブを、熱カレンダーロール間を通すことによって可塑化し、固定して形成することができる。なお、この補強層と、研磨面不織布層及び場合により更に親水性層とを一体化する方法としては、分割性繊維を含む繊維ウエブ(研磨面不織布層となるウエブ)、及び場合により更に親水性繊維を含む繊維ウエブ(親水性層となるウエブ)に、補強層となる層を積層し、分割性繊維を含む繊維ウエブの絡合と同時に、補強層を一体化することができる。また、バインダーにより一体化したり、補強層となる層の熱可塑性を利用して一体化する方法もある。なお、補強層がフィルムからなる場合には、溶融押出したフィルムを不織布層又は親水性層に積層し、必要であれば加圧して、容易に一体化することができる。
【0034】
このようにして得られる研磨シートは、基材表面に大きな傷をつけることなく、均一に研磨し、微細なテクスチャーを形成することができるため、精密機器、特には、磁気ディスク(例えば、ハードディスク)用基材から磁気記録媒体を製造する際の研磨工程、特にテクスチャー加工において、好適に使用することができる。特に、磁気ディスク用非磁性メッキ基材のテクスチャー加工に、好適に使用することができる。
【0035】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
図3に示すような、ポリエステル成分(A)を、繊維の軸中心から繊維表面に向かって放射状に伸びるポリアミド成分(B)で8区分に分割した、菊花型の断面形状を有する分割性繊維(繊度=2デニール;繊維長=38mm;ポリエステル成分からなる繊維径4.2μmの極細繊維と、ポリアミド成分からなる繊維径6.1μmの繊維と、ポリアミド成分からなる繊維径3.1μmの極細繊維を発生可能)100%をカーディングした一方向性繊維ウエブと、この一方向性の繊維ウエブと同様にして形成したもう1つの一方向性繊維ウエブをクロスレイヤーにより交差させた交差繊維ウエブとを、質量比1:4で積層して積層繊維ウエブを形成した。この積層繊維ウエブを線径0.15mmのワイヤーからなる100メッシュのネットに載置した後、ノズルプレート(径=0.15mm;ピッチ=0.6mm)から、圧力95kg/cm2 で水を噴出して、積層繊維ウエブの両面を2度ずつ交互に作用させて、分割性繊維を分割すると共に絡合し、絡合不織布(目付=100g/m2 ;厚さ=0.5mm)を形成した。この絡合不織布の100点における繊維径を測定したところ、繊維径が4.2μmの地点が76、繊維径が6.1μmの地点が10、そして繊維径が3.1μmの地点が9で、繊維径10μm以下の繊維の合計が95%であった。この絡合不織布をそのまま研磨シートとした。
【0036】
【実施例2】
未延伸ポリエステル繊維(繊度=5デニール;繊維長=38mm)30mass%と、延伸ポリエステル繊維(繊度=3デニール;繊維長=64mm)70mass%とを混綿し、カーディングして一方向性の繊維ウエブを形成した。次いで、この一方向性繊維ウエブを、実施例1と同じ方法で製造した絡合不織布(一方向性繊維ウエブ側)上に積層し、カレンダーロール(温度=200℃;線圧=60kg/cm)間を通すことにより、一方向性の繊維ウエブを結合すると同時に、絡合不織布と接着一体化して、研磨シート(目付=170g/m2 ;厚さ=0.5mm)を形成した。なお、絡合不織布を構成している繊維は融着していなかった。また、この研磨シートから5cm幅の試験テープを作成し、10cm間隔を有するチャック間に固定し、試験テープを両チャック側から2kgfの荷重によって引っ張った時に、研磨シートの中央部(チャック間の中央部)における、研磨シートの幅の減少は0mmであった。
【0037】
【実施例3】
オリフィス径が0.3mmで、ピッチ0.9mmで配置されたノズルピースを使用し、温度300℃に加熱したノズルピースから、1つのオリフィス当り0.2g/minでポリアミド繊維を吐出し、この吐出したポリアミド繊維に対して、320℃に加熱した空気を7m3 /min(標準状態)量で作用させて、ポリアミド繊維を極細化し、16メッシュのネットで、このポリアミド繊維を捕集して、メルトブロー不織布(目付=100g/m2 ;厚さ=0.9mm)を形成した。このメルトブロー不織布の100点における繊維径を測定したところ、3〜7μmの繊維が95%含まれていた。
次いで、このメルトブロー不織布の上に、共重合ポリアミド樹脂(融点=110℃)からなるクモの巣状の不織布を積層し、更に、このクモの巣状の不織布の上に実施例1と同様にして形成した絡合不織布(一方向性繊維ウエブ側がクモの巣状の不織布と接触)を積層した後、ローラープレス(温度=120℃;圧力=1kg)間を通すことにより、クモの巣状の不織布を融着させて、メルトブロー不織布と絡合不織布とを一体化した研磨シート(目付=220g/m2 ;厚さ=1.2mm)を形成した。なお、絡合不織布を構成している繊維及びメルトブロー不織布を構成している繊維は、いずれも融着していなかった。
【0038】
【実施例4】
実施例3と同様に形成したメルトブロー不織布上に、実施例3と同様のクモの巣状不織布を積層し、更に、このクモの巣状の不織布の上に、実施例2と同様に形成した研磨シートの絡合不織布面がクモの巣状不織布と接触するように積層した後、ローラープレス(温度=120℃;圧力=1kg)間を通すことによって、クモの巣状の不織布を融着させて、メルトブロー不織布と実施例2と同様に形成した研磨シートとを一体化した研磨シート(目付=290g/m2 ;厚さ=1.3mm)を形成した。なお、絡合不織布を構成している繊維及びメルトブロー不織布を構成している繊維は、いずれも融着していなかった。また、この研磨シートから5cm幅の試験テープを作成し、10cm間隔を有するチャック間に固定し、試験テープを両チャック側から2kgfの荷重によって引っ張った時に、研磨シートの中央部(チャック間の中央部)における、研磨シートの幅の減少は0mmであった。
【0039】
【実施例5】
未延伸ポリエステル繊維(繊度=5デニール;繊維長=38mm)30mass%と、レーヨン繊維(繊度=1.5デニール;繊維長=38mm)70mass%とを混綿し、カーディングした一方向性の繊維ウエブを形成した。次いで、実施例1と同じ方法で製造した絡合不織布上(絡合不織布の一方向性繊維ウエブ側)に、この一方向性繊維ウエブを積層し、カレンダーロール(温度=200℃;線圧=60kg/cm)間を通すことにより、一方向性の繊維ウエブを結合すると同時に、絡合不織布と接着一体化して、研磨シート(目付=170g/m2 ;厚さ=0.5mm)を形成した。なお、絡合不織布を構成している繊維は融着していなかった。また、この研磨シートから5cm幅の試験テープを作成し、10cm間隔を有するチャック間に固定し、試験テープを両チャック側から2kgfの荷重によって引っ張った時に、研磨シートの中央部(チャック間の中央部)における、研磨シートの幅の減少は0mmであった。
【0040】
【実施例6】
実施例1と同様に形成した絡合不織布の一方向性繊維ウエブ側に、溶融押し出ししたポリプロピレンフィルム(厚さ=0.05mm)を積層し、直ちに、室温下、線圧60kg/cmで回転するカレンダーロール間を通すことにより、絡合不織布とフィルムとを一体化して、研磨シート(目付=145g/m2 ;厚さ=0.4mm)を形成した。この研磨シートから5cm幅の試験テープを作成し、10cm間隔を有するチャック間に固定し、試験テープを両チャック側から2kgfの荷重によって引っ張った時に、研磨シートの中央部(チャック間の中央部)における、研磨シートの幅の減少は0mmであった。
【0041】
【実施例7】
実施例3と同様に形成したメルトブロー不織布(目付=100g/m2 ;厚さ=0.9mm)を、線径0.15mmのワイヤーからなる100メッシュのネットに載置した後、ノズルプレート(径=0.15mm;ピッチ=0.6mm)から、圧力95kg/cm2 で水を噴出して、メルトブロー不織布の両面を2度ずつ交互に作用させて絡合し、絡合メルトブロー不織布(目付=100g/m2 ;厚さ=0.6mm)を形成した。次いで、この絡合メルトブロー不織布上に、共重合ポリアミド樹脂(融点=110℃)からなるクモの巣状の不織布を積層し、更に、このクモの巣状の不織布の上に、実施例1と同じ方法で製造した絡合不織布(一方向性繊維ウエブ側がクモの巣状の不織布と接触)を積層した後、ローラープレス(温度=120℃;圧力=1kg)間を通すことにより、クモの巣状の不織布を融着させて、絡合メルトブロー不織布と絡合不織布とを一体化した研磨シート(目付=220g/m2 ;厚さ=1.0mm)を形成した。なお、絡合不織布を構成している繊維及び絡合メルトブロー不織布を構成している繊維は、いずれも融着していなかった。
【0042】
【実施例8】
常法の海島型繊維の複合紡糸装置において、島部分となる樹脂を押し出すノズルから6ナイロン[宇部興産(株)製;1013B]を押し出すと共に、海成分となる樹脂を押し出すノズルから、共重合成分として5−スルホイソフタル酸及びポリエチレングリコールを含むポリエチレンテレフタレート60重量部とポリプロピレン(MI=3.5)40重量部とをペレット状態で混合したものを、ギヤポンプ比4.1:10で押し出し、300℃で複合紡糸して、繊度8.2デニールの巻き取り糸を得た。次いで、この巻き取り糸を90℃で2.7倍に延伸した後、巻縮を付与し、裁断して、断面円形の海島型繊維(繊度=3.2デニール;繊維長=51mm;巻縮数=0.8個/mm)を形成した。この海島型繊維は、図8に示すように、6ナイロンからなる太い島成分(C)21個と、ポリプロピレンからなる細い島成分(B)約1500個とが分散した断面形状を有していた。なお、太い島成分(C)は海成分(A)との相溶性が高いため、不定形であった。
【0043】
次いで、この海島型繊維を100%使用し、カード機により形成した一方向繊維ウエブを、クロスレイヤーにより繊維ウエブの進行方向に対して交差させて交差繊維ウエブを形成した。
次いで、この交差繊維ウエブを線径0.15mmのワイヤーからなる目開き0.147mmのネットに載置し、ネットを1分間に5m移動させながら、径0.13mm、ピッチ0.6mmのノズルプレートから両面交互に、圧力75kg/cm2 、115kg/cm2 、及び115kg/cm2 の水流を噴出することにより、海島型繊維を絡合し、乾燥して、絡合不織布(目付=127g/m2 ;厚さ=0.64mm)を形成した。
次いで、この絡合不織布を80℃、10mass%水酸化ナトリウム水溶液に20分間浸漬し、海成分である共重合ポリエチレンテレフタレートを分解除去し、ナイロン6からなる極細繊維と、ポリプロピレンからなる超極細繊維からなる繊維束が絡合した研磨シート(目付=76g/m2 ;厚さ=0.36mm)を得た。
この研磨シート100点における繊維径を測定したところ、繊維径約2.3μmナイロン極細繊維(本数で2%)と繊維径約0.31μmのポリプロピレン超極細繊維(本数で98%)のみ(100%)が含まれていた。
【0044】
【比較例1】
レーヨン繊維とポリエステル繊維との混紡糸からなる平織物(目付=200g/m2 )に、ポリアミドパイル(繊維径=13.7μm;長さ=0.6mm)を静電植毛した植毛シートを、研磨シートとした。
【0045】
【比較例2】
図1に示すような海島型の分割性繊維を使用して繊維ウエブを形成し、絡合した後、分割性繊維の海成分を溶解除去して形成したナイロン繊維(繊維径=2.5〜3.5μm)からなる絡合繊維ウエブを、40g/m2 量程度のウレタン樹脂で固定した不織布(目付=100g/m2 ;厚さ=0.5mm)[東レ(株)製;エクセーヌ]を研磨シートとした。
【0046】
【比較例3】
ポリエステル繊維(繊維径=5.1μm)を主体とした平織物(目付=200g/m2 ;厚さ=0.3mm)[鐘紡(株)製;ザヴィーナ]を研磨シートとした。
【0047】
【比較例4】
延伸ポリエステル繊維(繊維径=12.4μm;繊維長=38mm)を使用したこと以外は、実施例1と全く同様にして、交差繊維ウエブを形成し、そして水流により絡合して、絡合不織布(目付=100g/m2 ;厚さ=0.5mm)を形成した。この絡合不織布を研磨シートとした。
【0048】
【研磨特性の評価】
実施例1〜8及び比較例1〜4の研磨シートから、幅50mmに裁断して製造した試験テープを使用し、平均粒径0.3μmのダイヤモンドスラリー(砥粒濃度=0.4重量%)を図9に示すスラリー供給ノズル11から供給して、市販のNi−Pメッキ処理を施したアルミニウム製ディスク基板12のテクスチャー加工を実施した。矢印Aの方向へ回転するディスク基板12の表面に、試験テープ13を押し当てローラ14によって接触させながら、矢印Bの方向へ送ってテクスチャー加工を実施した。加工処理条件は、ディスク基板の回転数:250rpm、押しあてローラ14のオシレーション数:2000回/分、試験テープのディスク基板への押し圧:2.0kg/cm2 、試験テープの送り速度5mm/秒、研磨時間:50秒、スラリー供給量:10ml/分とした。このテクスチャー加工後の表面状態は表1に示す通りであった。
【0049】
【表1】
【0050】
【発明の効果】
本発明の研磨シートは、繊維径10μm以下の繊維を80%以上含む絡合不織布層を、少なくとも片面に有するものである。このように、絡合により形態を保っており、樹脂で固定していないため樹脂の脱落という問題が生じず、しかも繊維が強固に固定されている訳ではないので、繊維に融通性があり、研磨粒子を強引に基材表面に押圧しないので、基材表面に大きな傷をつけにくい。また、絡合不織布を構成するのが、主として繊維径10μm以下の繊維であり、微細な研磨粒子の保持性に優れているため、基材表面を均一に研磨し、微細なテクスチャーを形成することができる。
【0051】
本発明の別の研磨シートは、繊維径10μm以下の繊維を80%以上含むメルトブロー不織布層を、少なくとも片面に有するものである。このメルトブロー不織布は構成繊維同士の融着によって形態を保っており、樹脂で固定していないため樹脂の脱落という問題は生じず、しかも繊維は未延伸で、繊維自体が柔らかく、研磨粒子を強引に基材表面に押圧しないので、基材表面に大きな傷をつけにくい。また、メルトブロー不織布を構成するのが、主として繊維径10μm以下の繊維であり、微細な研磨粒子の保持性に優れているため、基材表面を均一に研磨し、微細なテクスチャーを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による研磨シートの不織布層を構成する、繊維径10μm以下の繊維を形成することのできる分割性繊維の一例の断面形状を模式的に示す断面図である。
【図2】別の分割性繊維の断面形状を模式的に示す断面図である。
【図3】更に別の分割性繊維の断面形状を模式的に示す断面図である。
【図4】更に別の分割性繊維の断面形状を模式的に示す断面図である。
【図5】更に別の分割性繊維の断面形状を模式的に示す断面図である。
【図6】更に別の分割性繊維の断面形状を模式的に示す断面図である。
【図7】更に別の分割性繊維の断面形状を模式的に示す断面図である。
【図8】更に別の分割性繊維の断面形状を模式的に示す断面図である。
【図9】本発明による研磨シートを用いて非磁性メッキ基材をテクスチャー加工している状態を示す説明図である。
【符号の説明】
11・・・スラリー供給ノズル;12・・・ディスク基板;
13・・・試験テープ;14・・・押し当てローラ
Claims (7)
- 繊維径10μm以下の繊維を80%以上含む、絡合不織布及びメルトブロー不織布からなる群から選んだ、樹脂で固定していない不織布の層を、少なくとも片面に有すること、及び補強層を有することを特徴とする、研磨シート。
- 不織布層が、繊維径1〜5μmの極細繊維と繊維径0.8μm以下の超極細繊維とを含む、請求項1に記載の研磨シート。
- 不織布層において、前記極細繊維が、繊維本数で0.1〜5%であり、前記超極細繊維が、繊維本数で95〜99.9%である、請求項2に記載の研磨シート。
- 前記極細繊維がポリアミド繊維又はポリプロピレン繊維であり、前記超極細繊維がポリプロピレン繊維である、請求項2又は3に記載の研磨シート。
- 前記極細繊維と前記超極細繊維とが同一繊維束内に存在している、請求項2〜4のいずれか一項に記載の研磨シート。
- 親水性繊維を含む層を更に有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の研磨シート。
- 磁気記録媒体製造用である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の研磨シート。
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